特許第5743319号(P5743319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5743319-エレベータシステム 図000002
  • 特許5743319-エレベータシステム 図000003
  • 特許5743319-エレベータシステム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743319
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20150611BHJP
   B66B 1/26 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   B66B5/02 W
   B66B1/26
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-45414(P2011-45414)
(22)【出願日】2011年3月2日
(65)【公開番号】特開2012-180205(P2012-180205A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2013年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎史
【審査官】 葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−207898(JP,A)
【文献】 特開平01−288590(JP,A)
【文献】 特開2010−208778(JP,A)
【文献】 特開2008−156092(JP,A)
【文献】 特開2005−206325(JP,A)
【文献】 特開2010−100427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/26
B66B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上機と、前記巻上機を制動するブレーキと、前記ブレーキの異常を検出するブレーキ異常検出手段とを有するブレーキ装置と、前記巻上機の回転状態を検出する回転検出手段と、前記ブレーキ装置の動作制御および前記検出された回転状態に基づいて前記巻上機の運転制御を行う制御装置と、を有し、前記ブレーキ装置は、少なくとも2以上であり、前記ブレーキ異常検出手段は、前記ブレーキが開放状態であると前記制御装置にブレーキ開放信号を出力する接点スイッチであり、前記制御装置は、前記ブレーキ異常検出手段のうち、いずれかの前記ブレーキ異常検出手段により前記ブレーキが開放状態において前記ブレーキ開放信号が出力されないことで前記ブレーキの異常が検出された場合、前記巻上機を制動する制動状態にすべての前記ブレーキを動作制御した状態で、前記巻上機を所定回転トルク以上の回転トルクを発生するように運転制御し、前記回転検出手段により前記巻上機回転していることが検出されると、前記ブレーキの異常を検出した前記ブレーキ異常検出手段に対応する前記ブレーキ自体が異常である判断することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータシステムにおいて、前記制御装置は、前記巻上機が回転しない場合に、前記ブレーキの異常を検出した前記ブレーキ異常検出手段自体が異常であると判断するエレベータシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベータシステムにおいて、前記制御装置は、前記ブレーキの異常を検出した前記ブレーキ異常検出手段自体が異常であると判断すると、前記巻上機を開放する開放状態に異常である前記ブレーキ異常検出手段に対応する前記ブレーキを動作制御し、再び異常である前記ブレーキ異常検出手段により前記ブレーキの異常が検出されたか否かを判断するエレベータシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベータシステムにおいて、前記制御装置は、異常である前記ブレーキ異常検出手段に対応する前記ブレーキを前記開放状態に動作制御する際に、異常である前記ブレーキ異常検出手段に供給される電圧または電流を通常時における電圧または電流に対して変更し、再び異常である前記ブレーキ異常検出手段により前記ブレーキの異常が検出されたか否かを判断するエレベータシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のエレベータシステムにおいて、前記制御装置は、電圧または電流の変更は、通常時における電圧または電流よりも増加することであるエレベータシステム。
【請求項6】
請求項4または5に記載のエレベータシステムにおいて、前記制御装置は、異常である前記ブレーキ異常検出手段により前記ブレーキの異常が検出されないと判断すると、変更された電圧または電流を通常時の電圧または電流とするエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータシステムは、巻上機を制動するブレーキ装置を備える。ブレーキ装置は、巻上機に電力が供給されなくなった場合などの非常時に、乗りかごを停止させるものであるため、その異常を検出する必要がある。従来、ブレーキ装置は、異常を種々の方法で検出していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−133096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、安全性のさらなる向上を目的として、ブレーキ装置を複数有するエレベータシステムが提案されている。例えば、2つのブレーキ装置を有するエレベータシステムでは、一方のブレーキ装置が異常となっても、他方のブレーキ装置が正常であれば、非常時に乗りかごを停止させることができる。ブレーキ装置は、巻上機を制動するブレーキと、ブレーキの異常を検出するブレーキ異常検出手段を有し、ブレーキ異常検出手段がブレーキの異常を検出することで、ブレーキ装置の動作制御を行う制御装置により、ブレーキ装置が異常であると判断される。しかしながら、ブレーキが正常に動作可能であっても、ブレーキ異常検出手段自体が異常であると、制御装置がブレーキの異常であると判断することとなる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ブレーキ自体が異常であるか否かを正確に判断することができるエレベータシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエレベータシステムは、巻上機と、2つのブレーキ装置と、回転検出手段と、制御装置とを備える。2つのブレーキ装置は、巻上機を制動するブレーキと、ブレーキの異常を検出するブレーキ異常検出手段とをそれぞれ有する。回転検出手段は、巻上機の回転状態を検出する。ブレーキ異常検出手段は、ブレーキが開放状態であると制御装置にブレーキ開放信号を出力する接点スイッチである。制御装置は、2つのブレーキ装置の動作制御および検出された回転状態に基づいて巻上機の運転制御を行う。制御装置は、ブレーキ異常検出手段のうち、いずれかのブレーキ異常検出手段によりブレーキが開放状態においてブレーキ開放信号が出力されないことでブレーキの異常が検出された場合、巻上機を制動する制動状態にすべてのブレーキを動作制御した状態で、巻上機を所定回転トルク以上の回転トルクを発生するように運転制御し、回転検出手段により巻上機回転していることが検出されると、ブレーキの異常を検出したブレーキ異常検出手段に対応するブレーキ自体が異常である判断する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るエレベータシステムによるブレーキ装置の異常検出方法を示すフロー図である。
図3図3は、実施形態に係るエレベータシステムによるブレーキ装置の異常検出方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施形態では、ブレーキ装置を2つ有するエレベータシステムについて説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。エレベータシステム1は、巻上機2と、2つのブレーキ装置3A,3Bと、パルスジェネレータ4と、制御装置5とを含んで構成されている。
【0010】
巻上機2は、回転することで図示しないメインロープを巻上げ、メインロープに連結された図示しない乗りかごおよび釣り合いおもりを釣瓶式に図示しない昇降路内で昇降させるものである。巻上機2は、制御装置5と電気的に接続されており、制御装置5から供給される電力により運転制御が行われる。
【0011】
2つのブレーキ装置3A,3Bは、巻上機2を制動するものである。つまり、ブレーキ装置3A,3Bは、巻上機2を制動することで、乗りかごを停止させるものである。ブレーキ装置3A,3Bは、ブレーキ31A,31Bと、スイッチ32A,32Bとを含んで構成されている。
【0012】
ブレーキ31A,31Bは、巻上機2に接触することで、巻上機2の回転を停止させるものである。ブレーキ31A,31Bは、例えば、電磁ブレーキであり、制御装置5により、巻上機2を制動する制動状態あるいは巻上機2を開放する開放状態のいずれかに動作制御される。ここで、制御装置5は、ブレーキ31A,31Bにそれぞれに対応する電磁開閉器6A,6BのON/OFF状態を制御することにより、ブレーキ31A,31Bの動作制御を行う。電磁開閉器6A,6Bは、ON状態でブレーキ電源7からの電力をブレーキ31A,31Bに供給し、OFF状態でブレーキ電源7からブレーキ31A,31Bへの電力供給を遮断する。ブレーキ31A,31Bは、電磁開閉器6A,6BがON状態で開放状態となり、OFF状態で制動状態となる。
【0013】
スイッチ32A,32Bは、ブレーキ異常検出手段であり、ブレーキ31A,31Bの異常を検出するものである。スイッチ32A,32Bは、ブレーキ31A,31Bにそれぞれ対応して設けられるものである。スイッチ32A,32Bは、接点スイッチであり、制御装置5に電気的に接続されている。スイッチ32A,32Bは、ブレーキ31A,31Bの開放状態で接点どうしが接触して通電状態、すなわちON状態となり、制動状態で接点どうしが離間して遮断状態、すなわちOFF状態となる。従って、スイッチ32A,32Bは、ブレーキ31A,31Bが開放状態であると、制御装置5にブレーキ開放信号を出力する。
【0014】
パルスジェネレータ4は、巻上機2の回転状態を検出するものである。パルスジェネレータ4は、制御装置5と電気的に接続されており、巻上機2の回転に伴った回転信号を出力する。ここで、制御装置5は、パルスジェネレータ4からの出力信号により、巻上機2の回転角度・回転速度などを取得することができる。
【0015】
制御装置5は、ブレーキ装置3A,3Bの動作制御および巻上機2の運転制御を行うものである。制御装置5は、通常運転として、電磁開閉器6A,6BをON状態としてブレーキ電源7からの電力をブレーキ31A,31Bに供給し、ブレーキ31A,31Bを開放状態で、呼び登録およびパルスジェネレータ4により検出された回転状態に基づいて、巻上機2の運転制御を行う。制御装置5は、図示は省略するがエレベータシステム1が設けられている構造物の管理室や、構造物の外に設けられた監視センターなどに設けられている監視装置8に電気的に接続されている。監視装置8は、制御装置5から出力されるエレベータシステム1の運転状態や異常状態を監視し、エレベータシステム1が異常状態であるとオペレータに警報を発する。
【0016】
制御装置5は、通常運転時に、2つのスイッチのいずれか一方により、対応するブレーキの異常が検出されると、すべてのブレーキを制動状態に動作制御した状態で、巻上機2を所定回転トルクTt以上の回転トルクTを発生するように運転制御し、パルスジェネレータ4により巻上機2が回転していることが検出された場合に、ブレーキ異常を検出したスイッチに対応するブレーキが異常であると判断し、巻上機2が回転しないことが検出された場合に、ブレーキ異常を検出したスイッチが異常であると判断する。ここで、所定回転トルクTtとは、本実施形態では、1つのブレーキが巻上機2に作用させる制動トルクよりも大きく、2つのブレーキが巻上機2に作用させる制動トルクよりも小さい値である。例えば、所定回転トルクTtは、1つのブレーキが巻上機2に作用させる制動トルクの1.5倍程度が好ましい。
【0017】
また、制御装置5は、ブレーキ異常を検出したスイッチが異常であると判断すると、異常であるスイッチに対応するブレーキを開放状態に動作制御するとともに、本実施形態では異常であるスイッチに供給する電流である検出電流を通常時における電流よりも増加して、再び異常であるスイッチによりブレーキの異常が検出されたか否かを判断し、異常であるスイッチによりブレーキの異常が検出されないと判断すると、検出電流を通常時の電流に戻す。
【0018】
次に、本実施形態に係るエレベータシステム1によるブレーキ装置の異常検出方法について説明する。図2は、実施形態に係るエレベータシステムによるブレーキ装置の異常検出方法を示すフロー図である。図3は、実施形態に係るエレベータシステムによるブレーキ装置の異常検出方法を示すフロー図である。なお、図2に示す「1」は、図3に示す「1」に繋がるものである。
【0019】
まず、制御装置5は、ブレーキ31A,31Bのうち、いずれかが異常であるか否かを判断する(ステップS1)。ここでは、制御装置5は、スイッチ32A,32Bのうち、いずれかからのブレーキ開放信号が出力されなくなったか否かを判断することで、ブレーキ装置3A,3Bのうち、いずれかが異常であるか否かを判断する。
【0020】
次に、制御装置5は、ブレーキ装置3A,3Bのうち、いずれかが異常であると判断する(ステップS1肯定)と、すべてのブレーキ31A,31Bを制動状態とする(ステップS2)。ここでは、制御装置5は、すべての電磁開閉器6A,6BをON状態からOFF状態とし、ブレーキ電源7からブレーキ31A,31Bへの電力供給を遮断し、すべてのブレーキ31A,31Bを制動状態に動作制御する。つまり、制御装置5は、ブレーキ装置3A,3Bのうちいずれかに異常がある非常時と判断し、乗りかごを停止させるために、すべてのブレーキ装置3A,3Bにより巻上機2を制動する。また、制御装置5は、ブレーキ装置3A,3Bのうち、いずれも正常であると判断する(ステップS1否定)と、ブレーキ装置3A,3Bのうち、いずれかが異常となるまで、ステップS1を繰り返す。
【0021】
次に、制御装置5は、乗りかごが停止したか否かを判断する(ステップS3)。ここでは、制御装置5は、すべてのブレーキ装置3A,3Bにより巻上機2の回転が停止したか否かを判断することで、乗りかごが停止したか否かを判断する。
【0022】
次に、制御装置5は、乗りかごが停止したと判断する(ステップS3肯定)と、巻上機2が回転しているか否かを判断する(ステップS4)。ここでは、制御装置5は、パルスジェネレータ4より巻上機2が回転していることが検出されたか否かを判断することで巻上機2が回転しているか否かを判断する。なお、乗りかごが停止した直後は、巻上機2は回転していないので、制御装置5により巻上機2が回転してないと判断される(ステップS4否定)。また、制御装置5は、乗りかごが停止していないと判断する(ステップS3否定)と、乗りかごが停止するまでステップS3を繰り返す。
【0023】
次に、制御装置5は、巻上機2が回転していないと判断する(ステップS4否定)と、巻上機2の回転トルクTが所定回転トルクTt以上であるか否かを判断する(ステップS5)。なお、乗りかごが停止した直後は、制御装置5による巻上機2の運転は開始されていないので、制御装置5により回転トルクTが所定回転トルクTt以上でないと判断される(ステップS5否定)。
【0024】
次に、制御装置5は、巻上機2の回転トルクTが所定回転トルクTt以上でないと判断する(ステップS5否定)と、巻上機2の運転制御を行う(ステップS6)。ここでは、制御装置5は、巻上機2に電力を供給し、回転トルクTを発生させる。なお、乗りかごが停止した直後は、制御装置5による巻上機2の運転制御は開始されていないの、制御装置5による巻上機2の運転制御を開始する。ここで、制御装置5は、巻上機2の回転トルクTが段階的に増加するように、巻上機2の運転制御を行う。つまり、制御装置5は、巻上機2の回転トルクTを所定回転トルクTt以上となるように運転制御を行う。
【0025】
また、制御装置5は、巻上機2が回転していると判断する(ステップS4肯定)と、スイッチ32Aが異常を検出したか否かを判断する(ステップS7)。ここで、制御装置5により運転制御された巻上機2の回転トルクTが所定回転トルクTt以上となった場合において、巻上機2が回転している場合は、ブレーキ31A,31Bのうちいずれかが巻上機2に対して制動トルクを作用させていないこととなるので、ブレーキ31A,31Bのうちいずれかが異常であることが判断できる。
【0026】
次に、制御装置5は、スイッチ32Aが異常を検出したと判断する(ステップS7肯定)と、スイッチ32Aは正常であるがブレーキ31Aが異常であると判断し(ステップS8)、スイッチ32Aが異常を検出していないと判断する(ステップS7否定)と、スイッチ32Bは正常であるがブレーキ31Bが異常であると判断し(ステップS9)、エレベータシステム1を停止し、異常であると判断したブレーキを特定する情報とともに異常状態を監視装置8に出力する(ステップS10)。
【0027】
また、制御装置5は、巻上機2の回転トルクTが所定回転トルクTt以上であると判断する(ステップS5肯定)と、すべてのブレーキ31A,31Bが正常であると判断する(ステップS11)。ここでは、制御装置5により運転制御された巻上機2の回転トルクTが所定回転トルクTt以上となった場合において、巻上機2が回転していない場合は、すべてのブレーキ31A,31Bが巻上機2に対して制動トルクを作用させていることとなるので、すべてのブレーキ31A,31Bが正常であることが判断できる。
【0028】
次に、制御装置5は、スイッチ32Aが異常を検出したか否かを判断する(ステップS12)。
【0029】
次に、制御装置5は、スイッチ32Aが異常を検出したと判断する(ステップS12肯定)と、ブレーキ31Aは正常であるがスイッチ32Aが異常であると判断する(ステップS13)。
【0030】
次に、制御装置5は、スイッチ32Aの検出電流を増加する(ステップS14)。
【0031】
次に、制御装置5は、ブレーキ31Aを開放状態とする(ステップS15)。ここでは、制御装置5は、電磁開閉器6AをOFF状態からON状態とし、ブレーキ電源7からブレーキ31Aへの電力供給を再開し、ブレーキ31Bが制動状態のまま、ブレーキ31Aを開放状態に動作制御する。従って、スイッチ32Aは、検出電流が増加した状態で、接点どうしが接触することとなる。ここで、スイッチ32Aが異常である場合は、例えば接点表面に絶縁被膜が形成されたり、接点間に埃が介在したりすることで、接点どうしの偶発的な接触不良により通電できず、ブレーキ開放信号が制御装置5に出力されない場合がある。そこで、検出電流を通常時の電流よりも増加することで、接点間で火花が散り、接点表面に形成された絶縁被膜や接点間に介在する埃を除去することができる可能性がある。また、正常であるブレーキ31Aを制動状態から開放状態に移行させることで、スイッチ32Aも実際にOFF状態からON状態へ動作することとなり、接点間に介在する埃などを除去することができる可能がある。つまり、制御装置5は、検出電流を増加した状態で、ブレーキ31Aを開放状態とすることで、スイッチ32Aに対するクリーニング動作を実行する。
【0032】
次に、制御装置5は、スイッチ32Aが異常を検出したか否かを判断する(ステップS16)。
【0033】
次に、制御装置5は、スイッチ32Aが異常を検出したと判断する(ステップS16肯定)と、カウンタnに1を加える(ステップS17)。ここでは、制御装置5は、スイッチ32Aに対するクリーニング動作を実行した回数をカウントする。
【0034】
次に、制御装置5は、カウンタnが所定回数ntとなったか否かを判断する(ステップS18)。ここで、所定回数ntは、任意の値でよく、例えば数回から十数回程度に設定される。
【0035】
次に、制御装置5は、カウンタnが所定回数ntとなっていないと判断する(ステップS18否定)と、ブレーキ31Aを制動状態とする(ステップS19)。ここでは、電磁開閉器6AをON状態から再びOFF状態とし、ブレーキ電源7からブレーキ31Aへの電力供給を遮断し、ブレーキ31Bが制動状態のまま、ブレーキ31Aを制動状態に動作制御する。従って、制御装置5は、ブレーキ31Aが制動状態で、スイッチ32Aが異常を検出し続けると、カウンタnが所定回数ntとなるまで、スイッチ32Aの検出電流を通常時よりも増加した状態で、ブレーキ31Aを開放状態と制動状態とを繰り返すように動作制御する。
【0036】
また、制御装置5は、カウンタnが所定回数ntとなったと判断する(ステップS18肯定)と、エレベータシステム1を停止し、スイッチ32Aが異常である情報とともに異常状態を監視装置8に出力する(ステップS20)。
【0037】
また、制御装置5は、スイッチ32Aが異常を検出していないと判断する(ステップS16否定)と、スイッチ32Aの検出電流を通常時の電流に戻す(ステップS21)。ここでは、上記クリーニング動作によりスイッチ32Aの接触不良が解消され、ブレーキ31Aが開放状態で、ブレーキ開放信号を制御装置5に出力されていると判断すると、一時的に増加していたスイッチ32Aの検出電流を元に戻す。
【0038】
次に、制御装置5は、スイッチ32Aが異常状態から正常状態に復帰したと判断する(ステップS22)。
【0039】
次に、制御装置5は、スイッチ32Aが異常状態から正常状態に復帰した情報とともに異常状態を監視装置8に出力する(ステップS23)。
【0040】
次に、制御装置5は、エレベータシステム1を通常運転に復帰させる(ステップS24)。ここでは、制御装置5は、すべての電磁開閉器6A,6BをOFF状態からON状態とし、ブレーキ電源7からブレーキ31A,31Bへ電力を供給し、すべてのブレーキ31A,31Bを開放状態に動作制御して、呼び登録およびパルスジェネレータ4により検出された回転状態に基づいて、巻上機2の運転制御を行う。
【0041】
また、制御装置5は、スイッチ32Aが異常を検出していないと判断する(ステップS12否定)と、ブレーキ31Bは正常であるがスイッチ32Bが異常であると判断する(ステップS25)。
【0042】
次に、制御装置5は、スイッチ32Bの検出電流を増加する(ステップS26)。
【0043】
次に、制御装置5は、ブレーキ31Bを開放状態とする(ステップS27)。ここでは、制御装置5は、電磁開閉器6BをOFF状態からON状態とし、ブレーキ電源7からブレーキ31Bへの電力供給を再開し、ブレーキ31Aが制動状態のまま、ブレーキ31Bを開放状態に動作制御する。制御装置5は、検出電流を増加した状態で、ブレーキ31Bを開放状態とすることで、スイッチ32Bに対するクリーニング動作を実行する。
【0044】
次に、制御装置5は、スイッチ32Bが異常を検出したか否かを判断する(ステップS28)。
【0045】
次に、制御装置5は、スイッチ32Bが異常を検出したと判断する(ステップS28肯定)と、カウンタnに1を加える(ステップS29)。ここでは、制御装置5は、スイッチ32Bに対するクリーニング動作を実行した回数をカウントする。
【0046】
次に、制御装置5は、カウンタnが所定回数ntとなったか否かを判断する(ステップS30)。ここで、所定回数ntは、任意の値でよく、例えば数回から十数回程度に設定される。
【0047】
次に、制御装置5は、カウンタnが所定回数ntとなっていないと判断する(ステップS30否定)と、ブレーキ31Bを制動状態とする(ステップS31)。ここでは、電磁開閉器6BをON状態から再びOFF状態とし、ブレーキ電源7からブレーキ31Bへの電力供給を遮断し、ブレーキ31Aが制動状態のまま、ブレーキ31Bを制動状態に動作制御する。従って、制御装置5は、ブレーキ31Bが制動状態で、スイッチ32Bが異常を検出し続けると、カウンタnが所定回数ntとなるまで、スイッチ32Bの検出電流を通常時よりも増加した状態で、ブレーキ31Bを開放状態と制動状態とを繰り返すように動作制御する。
【0048】
また、制御装置5は、カウンタnが所定回数ntとなったと判断する(ステップS30肯定)と、エレベータシステム1を停止し、スイッチ32Bが異常である情報とともに異常状態を監視装置8に出力する(ステップS32)。
【0049】
また、制御装置5は、スイッチ32Bが異常を検出していないと判断する(ステップS28否定)と、スイッチ32Bの検出電流を通常時の電流に戻す(ステップS33)。ここでは、上記クリーニング動作によりスイッチ32Bの接触不良が解消され、ブレーキ31Bが開放状態で、ブレーキ開放信号を制御装置5に出力されていると判断すると、増加していたスイッチ32Bの検出電流を元に戻す。
【0050】
次に、制御装置5は、スイッチ32Bが異常状態から正常状態に復帰したと判断する(ステップS34)。
【0051】
次に、制御装置5は、スイッチ32Bが異常状態から正常状態に復帰した情報とともに異常状態を監視装置8に出力する(ステップS35)。
【0052】
次に、制御装置5は、エレベータシステム1を通常運転に復帰させる(ステップS36)。
【0053】
以上のように、本実施形態に係るエレベータシステム1では、スイッチ32A,32Bのいずれかが異常を検出すると、すべてのブレーキ31A,32Bを制動状態に動作制御した状態で、巻上機2を所定回転トルクTt以上となるまで運転制御を行い、巻上機2が回転する場合は異常を検出したスイッチに対応するブレーキが巻上機2に対して制動トルクを作用させていないこととなるので、異常を検出したスイッチに対応するブレーキが異常であることが判断できる。また、巻上機2が回転しない場合は異常を検出したスイッチに対応するブレーキが巻上機2に対して制動トルクを作用させていることとなるので、異常を検出したスイッチが異常であることが判断できる。つまり、仮にブレーキ31A,31Bのうちいずれかが故障していたとしても、すべてのブレーキ31A,32Bを制動状態に動作制御することで、巻上機2に対して制動トルクを作用させた状態で、ブレーキ自体の異常かスイッチ自体の異常かを確実に判断することができる。
【0054】
また、本実施形態に係るエレベータシステム1では、スイッチ32A,32Bのいずれかが異常であると判断されると異常であるスイッチの検出電流を一時的に増加するクリーニング動作を実行する。従って、スイッチ32A,32Bのいずれかが異常であると判断されても、異常の原因が偶発的な接触不良などの場合にクリーニング動作を実行することで、異常であると判断されたスイッチの接触状態が改善される場合があり、改善されればエレベータシステム1の通常運転を再開することができる。従って、エレベータシステム1を停止することによるサービスの低下を抑制することができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、クリーニング動作を異常であると判断されたスイッチの検出電流を通常時よりも増加したが、本発明はこれに限定されるものではなく、異常であると判断されたスイッチの検出電圧を増加しても良い。
【0056】
また、上記実施形態において、エレベータシステム1の通常運転時に、例えば乗りかごが停止している際に、上記クリーニング動作を行っても良い。エレベータシステム1の通常運転時に、クリーニング動作を行うことで、偶発的な接触不良によりスイッチが異常と判断されることを抑制することができる。従って、スイッチの保守点検頻度を低減することができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 エレベータシステム
2 巻上機
3A,3B ブレーキ装置
31A,31B ブレーキ
32A,32B スイッチ
4 パルスジェネレータ
5 制御装置
6A,6B 電磁開閉器
7 ブレーキ電源
8 監視装置
図1
図2
図3