特許第5743320号(P5743320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743320
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
   B66B5/02 R
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-46365(P2011-46365)
(22)【出願日】2011年3月3日
(65)【公開番号】特開2012-184041(P2012-184041A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2013年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】文屋 雅弘
【審査官】 葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−234778(JP,A)
【文献】 特開平07−182579(JP,A)
【文献】 特開2006−290501(JP,A)
【文献】 特開2002−049975(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/107952(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/082650(WO,A1)
【文献】 特開平02−138700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを有し、建物内の複数個所に設置された火災検出装置と、
これら火災検出装置からの火災検出信号及び前記カメラが撮映した映像信号に基づき、火災発生時における前記建物内のエレベータホールでの人の有無、及び各階床での煙又は炎の有無を検出し、これらの検出結果に基づき救出階を決定して、エレベータ乗りかごを救出階へ移動させ救出運転手段とを備え、
前記救出運転手段は、前記カメラが撮映した映像信号によりエレベータホールに設けられた防火戸の開閉状態を判断し、この開閉状態を前記救出階決定の判断要素に加える、
ことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記救出運転手段は、エレベータホールに設けられた火災検出装置からの映像信号から人が検出され、かつ、この人が検出されたエレベータホールと同じ階床で、このエレベータホール以外に設けられた火災検出装置からの映像信号から煙または炎が検出された場合、エレベータ乗りかごを第1優先で当該階床へ救出に向わせることを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記救出運転手段は、エレベータホールからの映像信号により、当該エレベータホールの防火戸が閉まっていると判断された場合は戸開可能と判断し、救出運転対象階に到達したエレベータに戸開指示を与えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
発生中の火災が初期段階の火災か延焼段階の火災かを判断する火災状況判断手段をさらに有し、前記救出運転手段は、エレベータホールからの映像信号により、当該エレベータホールに人が存在し、かつ、このエレベータホールの防火戸が閉まっていると判断された場合は、火災状況判断手段により延焼段階と判断された場合でも、当該階床にエレベータを救出に向わせる決定を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、火災発生時に、エレベータによる救出運転を可能としたエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物内において火災が発生した場合、一刻も早く建物内から人員を避難させる必要がある。この建物からの避難を効果的に行う手段として、建物に備えられているエレベータを活用することが考えられている。エレベータを用いた避難関係の提案として、火災が発生すると、火災発生階が含まれるゾーンをサービスするエレベータ群を最優先して火災管制運転をし、次に火災発生階の属するゾーンに隣接する上階のゾーンをサービスするエレベータ群を優先して火災管制運転するようにしたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、火災が発生すると、火災が発生した階以外の階へかごを誘導して、かご内の乗客を避難させるようにしたものも開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−8954号公報
【特許文献2】特開平10−182029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物は所定の床面積ごとに防火区画されており、火災は各防火区画から他の防火区画へ延焼することはないようになっている。また、火災は被害を増大させることがある反面、スプリンクラ消火装置が作動して大事に至らない場合も多い。
【0005】
このように、建物の火災は多様性を有しているので、火災時のエレベータのサービスを予め画一的に設定しておくことは建物火災の実態に適さない。通常、火災警報器のような検出手段では、火災発生の事実は検出できるが、火災現場の状況がどのようになっているかを明確に把握することができない。このため、火災時におけるエレベータのサービスを画一的に定めておくだけでは、適切かつ安全な救出を行うことが困難であった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、火災現場の状況を把握した上でエレベータを救出運転させることができるエレベータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態によるエレベータシステムは、カメラを有し、建物内の複数個所に設置された火災検出装置と、これら火災検出装置からの火災検出信号及び前記カメラが撮映した映像信号に基づき、火災発生時における前記建物内のエレベータホールでの人の有無、及び各階床での煙又は炎の有無を検出し、これらの検出結果に基づき救出階を決定して、エレベータ乗りかごを救出階へ移動させ救出運転手段とを備え、前記救出運転手段は、前記カメラが撮映した映像信号によりエレベータホールに設けられた防火戸の開閉状態を判断し、この開閉状態を前記救出階決定の判断要素に加えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、火災検出装置に設けられたカメラにより撮映された映像信号により現場の状況を把握できるので、エレベータを適切かつ安全に救出運転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係るエレベータシステムの全体構成を示す図である。
図2】本発明の一実施の形態における要部構成を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態における火災状況エレベータ救出運転可能範囲との関係を示すタイムチャートである。
図4】本発明の一実施の形態における全体的な動作を説明するフローチャートである。
図5】本発明の一実施の形態における全体的な動作の変形例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1はこの実施の形態に係るエレベータシステムの全体構成を示している。図1において、建物11内には昇降路12が設けられ、この昇降路12内にはエレベータ乗りかご(以下、単に乗りかごと呼ぶ)13が昇降可能に設けられている。この乗りかご13は、図示は省略したが昇降路12内において釣合錘とロープにより釣瓶状に接続されており、このロープが巻き掛けられた巻き上げ機の回転により、ガイドレールに沿って相互に昇降駆動される。
【0012】
この実施の形態では建物11は7階建てとし、各階床1F〜7Fのエレベータホール15は、防火戸16により他の居住区画(通路部分を含む事務室、居室等)17と区分されている。この防火戸16は、平常時は開放しており、火災発生時は自動的に閉じる構成のものである。各階床のエレベータホール15には、図示は省略したが、ホール呼び登録装置がそれぞれ設けられ、また、乗りかご12内には、乗客の操作により目的階を指定するかご呼び登録装置が設けられている。
【0013】
運転制御装置19は、上述した図示しない各階のホール呼び登録装置及びかご呼び登録装置とそれぞれ接続しており、これらからの呼びに応じて乗りかご13を目的階に移動させる。
【0014】
建物11の各階床1F〜7Fには、それらのエレベータホール15及び他の居住区画17のそれぞれに火災検出装置20が設置されている。この火災検出装置20は、煙や熱を感知して火災を検出する一般的なものであるが、図2で示すように周囲を撮映可能なカメラ21を有する。これら各火災検出装置20は、それぞれ運転制御装置19と接続しており、火災検出信号及びカメラ21で撮映した映像信号は、運転制御装置19に入力される。
【0015】
運転制御装置19は、図2で示すように、映像処理部23、火災状況判断手段24、救出運転手段25、エレベータ制御手段26を有する。
【0016】
映像処理部23は、各火災検出装置20と接続しており、これらから火災検出信号及びカメラ21が撮映した映像信号がそれぞれ入力される。そして、この映像信号を画像処理することで、避難者検出手段31により人(避難者)の有無を検出する。また、煙/炎検出手段32により煙又は炎の有無を検出する。さらに、防火戸閉検出手段33により防火戸16が閉じているかを検出する。
【0017】
ここで、火災検出装置20は、エレベータホール15及び居住区画17にそれぞれ設けられているが、各火災検出装置20に、例えば、固有のIDを設定し、運転制御装置19に入力される火災検出信号及び映像信号にこのIDを付加すれば、運転制御装置19では、どの火災検出装置20及びカメラ21からの火災検出信号及び映像信号かを識別できる。したがって、各火災検出装置20が設けられた各位置の状況を、運転制御装置19において、映像処理部23の処理映像から把握することができる。
【0018】
火災状況判断手段24は、発生中の火災が初期段階の火災か延焼段階の火災かを判断する。すなわち、火災の状況は、図3で示すように、火災発生時点からある時間までを初期段階と呼び、比較的小規模の火災状況である。これに対して、初期段階を越えて火災が継続した段階を延焼段階と呼び、比較的大規模で危険性も高くなる。エレベータによる救出運転は、火災の規模等にもよるが、火災発生から初期段階の間は条件がそろえば可能である。延焼段階では救出運転が不可の場合が多いが、ある特定の条件がそろった場合は可能となる場合がある。この延焼段階を越えて火災が継続した場合は、全焼又は全焼に近い状況に至る段階であり、エレベータの救出運転はまったく不可である。そこで、エレベータ救出運転を行う場合は、火災が初期段階か延焼段階かを判断する必要がある。
【0019】
火災が初期段階か延焼段階かの判断基準は、例えば、火災発生時からの火災継続時間とする。すなわち、この火災状況判断手段24には、各火災検出装置20からの火災検出信号及び映像信号がそれぞれ入力されているので、火災発生時からの火災継続時間を測定することができる。したがって、この火災継続時間が予め設定した時間内であれば初期段階の火災と判断し、予め設定した時間を越えた場合は延焼段階の火災と判断する。
【0020】
なお、この火災状況判断手段24の判断基準は、上述した火災継続時間に限らず、例えば、火災を検出した火災検出装置20の数により初期段階か延焼段階かを判断してもよい。すなわち、この火災状況判断手段24には、各火災検出装置20からの火災検出信号及び映像信号がそれぞれ入力されるので、例えば、火災発生時に1つの火災検出装置20が火災を検出していたが、時間の経過と共に複数の火災検出装置20が火災を感知した場合、或いは複数の火災検出装置20に設けられたカメラ21が煙又は炎を撮映したことにより火災を検出した場合は、それぞれ延焼段階と判断する。したがって、前述のように、火災を検出した火災検出装置20の数により初期段階か延焼段階かを判断することができる。
【0021】
救出運転手段25は、映像処理部23の処理結果に基づき、火災発生時における各エレベータホール15での人の有無、各階床での煙又は炎の有無、及びエレベータホール15に設けられた防火戸16の開閉状態を判断要素とし、さらには、火災状況判断手段24による初期段階か延焼段階かの判断結果を判断要素として救出階を決定し、エレベータ乗りかご13を決定された救出階に向わせる。例えば、詳細は後述するが、エレベータホール15に設けられた火災検出装置20のカメラ(ホールカメラと呼ぶ)21からの映像信号から人が検出され、かつ、この人が検出されたエレベータホール15と同じ階床で、このエレベータホール15以外の居住区画に設けられた火災検出装置20のカメラ(フロアカメラと呼ぶ)21からの映像信号から煙または炎が検出された場合、第1優先で当該階床を救出階と決定し、エレベータ乗りかご13を当該階床へ救出に向わせる。
【0022】
また、この救出運転手段25は戸開判断手段35を持っている。この戸開判断手段35は、救出運転対象階のエレベータホール15からの映像信号により、救出運転対象階に到達したエレベータ乗りかご13の戸を開けても安全と判断される場合、救出運転対象階に到達したエレベータ乗りかご13に戸開指示を与える。例えば、当該エレベータホール15に煙または炎が存在しないと判断された場合、或いは当該エレベータホール15の防火戸16が閉まっている場合は、戸開可能と判断し、救出運転対象階に到達したエレベータに戸開指示を与える。
【0023】
エレベータ制御手段26は、救出運転手段25の指示に基づき、エレベータ乗りかご13を救出階に移動させ、かつ、その戸の開閉を制御する。また、このエレベータ制御手段26は、図示しないが、前述したように、各階のホール呼び登録装置及びかご呼び登録装置とそれぞれ接続しており、これらからの呼びに応じて乗りかご13を目的階に移動させる機能を併せ持つ。
【0024】
次に、システム全体の動作を、運転制御装置19の処理内容を表す図4のフローチャートを用いて説明する。
【0025】
建物11内のいずれかの火災検出装置20が動作し、火災が検知されると(ステップ401)、建物11内のすべてのカメラ21からの映像を入力する(ステップ402)。これらのうち、エレベータホール15に設置されたホールカメラ21からの映像信号に人が映っているかを避難者検出手段31により判断する(ステップ403)。その結果、人が映っていない場合(ステップ403:No)は、エレベータは火災管制運転を行い、運転を打ち切る(ステップ404)。すなわち、火災管制運転は、エレベータ制御手段26に予め設定された運転プログラムにより、火災が発生すると、既存の呼びに拘わらず、乗りかご13を予め設定した避難階(外部に直接的に通じる避難用の階床、例えば1階)に移動させ、乗客を降ろした後、待機する運転である。したがって、各階床のエレベータホール15のホールカメラ21に人が映っていない(避難者が存在しない)場合は、この火災管制運転により乗りかご13の乗客を避難させた後、エレベータの運転を打ち切る。
【0026】
これに対し、エレベータホール15(例えば、階床6Fとする)に設置されたホールカメラ21からの映像信号に人が映っている場合(ステップ403:Yes)は、この人が映っていたホールカメラ21と同じ階床6Fのフロアカメラ(居住区画17に設けられたカメラ)21の画像を分析する(ステップ404)。そして、フロアカメラ21からの映像信号に煙又は炎が映っていた場合(ステップ406:Yes)は、救出運転手段25は、この階床6Fを救出対象階と決定し、エレベータの乗りかご13を第1優先で救出対象階6Fに向わせる(ステップ407)。
【0027】
すなわち、居住区画17のフロアカメラ21に煙又は炎が映っているということは、かなりの規模の火災がその階床6Fに発生していることであり、階床6Fのエレベータホール15にいる避難者を早急に救出する必要がある。したがって、第1優先でエレベータを当該階床に向わせる救出運転を行う。
【0028】
なお、このとき、図5で示すように、火災状況判断手段24による判断結果(ステップ501)を加えて救出対象階を決定してもよい。すなわち、フロアカメラ21からの映像信号に煙又は炎が映っていた場合(ステップ406:Yes)、火災状況が初期段階か延焼段階かを判断要素として加え、初期段階であれば(ステップ501:Yes)エレベータの乗りかご13を第1優先で救出対象階6Fに向わせる(ステップ407)。これに対して、延焼段階であれば(ステップ501:No)、救出運転を行わない応答不可(ステップ504)として処理する。これは、フロアカメラ21からの映像信号に煙又は炎が映っており、しかも延焼段階であれば、救出運転に向った乗りかご13が救出対象階に到達した時点で煙や炎がエレベータホール15まで達している可能性が考えられるためである。もし、煙や炎がエレベータホール15まで達していると、救出対象階に到達した乗りかご13を戸開することにより、昇降路を介して火災範囲が拡大することがあり、これを防止するためである。
【0029】
図4に戻って、フロアカメラ21からの映像信号に煙又は炎が映っていなかった場合(ステップ406:No)、エレベータホール15での避難者を検出した階床が火災発生階より上か(ステップ408)、及び火災発生階と同一階か(ステップ409)を判断する。
【0030】
火災発生階と同一階(ステップ409:Yes)であれば、この火災発生階(6Fとする)の防火戸16が閉まっているかを判断する(ステップ411)。その結果、防火戸16が閉まっていない場合(ステップ411:No)は、第2優先で乗りかご13を救出対象階6Fに向わせる(ステップ412)。すなわち、居住区画17のフロアカメラ17に煙又は炎が映っていなくても、火災発生階であり、しかも防火戸16が閉まっていない場合は、何時火災がエレベータホール15まで拡大するかがわからないので、出来るだけ早く火災発生階6Fのエレベータホール15にいる避難者を救出する必要があるため、第2優先でエレベータを当該階床6Fへ向わせる。
【0031】
また、火災発生階より上の階(ステップ408:Yes)であれば、やはり、この階床(7Fとする)の防火戸16が閉まっているかを判断する(ステップ410)。その結果、防火戸16が閉まっていない場合(ステップ410:No)は、第3優先で乗りかご13を救出対象階6Fに向わせる(ステップ413)。すなわち、火災発生階6Fより上の階であり、居住区画17のフロアカメラ17に煙又は炎が映っていなくても、何時階下の火災が拡大するかわからず、しかも防火戸16が閉まっていないため、出来るだけ早く階床7Fのエレベータホール15にいる避難者を救出する必要がある。このため、第3優先でエレベータを当該階床7Fへ向わせる。
【0032】
なお、前述した第1優先の場合と同様に、図5で示すように、火災状況判断手段24による判断結果(ステップ501)を加えて救出対象階を決定してもよい。すなわち、防火戸16が閉まっていない場合(ステップ410,411:Yes)、火災状況が初期段階か延焼段階かを判断要素として加え、初期段階であれば(ステップ502,503:Yes)エレベータの乗りかご13を、上述のように第2優先(ステップ412)又は第3優先(ステップ413)で救出対象階に向わせる。これに対して、延焼段階であれば(ステップ502,503:No)、救出運転を行わない応答不可(ステップ504)として処理する。これは、フロアカメラ21からの映像信号に煙又は炎が映っていなくても、延焼段階であり、しかも防火戸16が閉まっていなければ、救出運転に向った乗りかご13が救出対象階に到達した時点で煙や炎がエレベータホール15まで拡大している可能性が考えられるためである。
【0033】
図4に戻って、火災発生階より上の階(ステップ408:Yes)であっても、或いは、火災発生階と同一階(ステップ409:Yes)であっても、防火戸16が閉じている場合(ステップ410,411:Yes)は、防火戸16により煙及び炎を確実に遮断できるため、エレベータホール15に対する安全性は、防火戸16が開いている場合に比べ格段に向上する。したがって、火災発生階と同一階であっても第4優先で乗りかご13を救出対象階6Fに向わせ(ステップ414)、また、火災発生階より上の階の場合は、第5優先で乗りかご13を救出対象階7Fに向わせる(ステップ415)。このことは、火災状況が延焼段階でも同じであり、防火戸16が閉じていれば、延焼段階においてもエレベータ乗りかご13を救出運転させることが出来る。
【0034】
また、火災発生階より上の階ではなく(ステップ408:No)、火災発生階と同一階でもない(ステップ409:No)場合、すなわち、火災階より下の場合は、最も低い優先度(第6優先)で救出運転を行う(ステップ416)。
【0035】
このような救出運転(ステップ407,412,413,414,415,416)を行う際、既存の予備はすべてキャンセルする(ステップ417)。
【0036】
このような救出運転により、エレベータ乗りかご13が救出運転対象階に到達すると、戸開して避難者を収容するが、図2で示した戸開判断手段35は、その際、到達した階床のエレベータホール15の状態が戸を開けても安全かを確認し、安全と判断される場合はエレベータ乗りかご13に戸開指示を与える。すなわち、戸開判断手段35は、救出運転対象階のエレベータホール15からの映像信号により、例えば、当該エレベータホール15の防火戸16が閉まっている場合、或いは、煙や炎が検出されない場合は安全と判断し、救出運転対象階に到達したエレベータ乗りかご13に戸開指示を与える。このため、救出対象階に到達した乗りかご13の戸を開いても、煙や炎が戸開した乗りかご13から昇降路12に流れて火災が拡大することを確実に防止できる。
【0037】
なお、上記実施の形態では、すべての火災検出装置20にカメラ21を設けているが、必ずしもすべての火災検出装置にカメラ21を設ける必要はない。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
11・・・建物
12・・・昇降路
13・・・乗りかご
15・・・エレベータホール
16・・・防火戸
17・・・エレベータホール以外の居住区画
20・・・火災検出装置
21・・・カメラ
23・・・映像処理部
24・・・火災状況判断手段
25・・・救出運転手段
26・・・エレベータ制御手段
35・・・戸開判断手段
図1
図2
図3
図4
図5