特許第5743325号(P5743325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743325
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】エレベータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20150611BHJP
   B66B 1/32 20060101ALI20150611BHJP
   B66B 1/34 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   B66B5/02 W
   B66B1/32
   B66B1/34 C
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-250578(P2011-250578)
(22)【出願日】2011年11月16日
(65)【公開番号】特開2013-103828(P2013-103828A)
(43)【公開日】2013年5月30日
【審査請求日】2014年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】武田 泰明
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−168392(JP,A)
【文献】 特開2012−180205(JP,A)
【文献】 特開2003−306279(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/112240(WO,A1)
【文献】 特開2010−052849(JP,A)
【文献】 特開2009−126676(JP,A)
【文献】 特開2011−057347(JP,A)
【文献】 特開2011−037600(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/136114(WO,A1)
【文献】 特開2008−207898(JP,A)
【文献】 特開2007−137621(JP,A)
【文献】 特開2005−126183(JP,A)
【文献】 特開2002−362848(JP,A)
【文献】 特開平10−265140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 − 1/52
B66B 5/00 − 5/28
B66B 11/00 − 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き上げ機の多巻線モータの各巻線に電源からの電力を供給する複数のインバータと、前記巻き上げ機用の複数のブレーキと、前記各インバータと前記電源との間に設けられたインバータ用コンタクタと、前記各ブレーキとブレーキ用電源との間に設けられたブレーキ用コンタクタと、の動作を制御する主制御部と、
前記複数のブレーキのうちの一部のブレーキと、前記一部のブレーキと前記ブレーキ用電源との間に設けられた前記ブレーキ用コンタクタと、前記複数のインバータのうちの一部のインバータと、前記一部のインバータと前記電源との間に設けられたインバータ用コンタクタと、の異常を検出する第1の保護装置と、
前記複数のブレーキのうちの他のブレーキと、前記他のブレーキと前記ブレーキ用電源との間に設けられた前記ブレーキ用コンタクタと、前記複数のインバータのうちの他のインバータと、前記他のインバータと前記電源との間に設けられたインバータ用コンタクタと、の異常を検出する第2の保護装置と、
を備えたエレベータの制御装置において、
前記第1の保護装置と前記第2の保護装置とは、前記複数のブレーキと前記複数のブレーキ用コンタクタのうちの少なくとも1つの異常を検出すると、前記主制御部に前記ブレーキ用コンタクタと前記インバータ用コンタクタの全てを開放させる、
ことを特徴とするエレベータの制御装置。
【請求項2】
前記複数のインバータそれぞれと前記巻き上げ機との間にインバータ切り離し用コンタクタが設けられており、
前記第1の保護装置と前記第2の保護装置とは、前記複数のインバータと前記インバータ用コンタクタとの少なくとも1つが異常であることを検出すると、異常のあるインバータ及びインバータ用コンタクタと前記巻き上げ機との間に設けられたインバータ切り離し用コンタクタを開放することを特徴とする、
請求項1記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
前記第1の保護装置と前記第2の保護装置は、それぞれ異常を検出すると、異常を示す信号を前記主制御部に向かって出力するとともに、
前記第1の保護装置が出力した異常を示す信号には、前記第1の保護装置が出力したことを示す第1の識別情報が含まれ、前記第2の保護装置が出力した異常を示す信号には、前記第2の保護装置が出力したことを示す第2の識別情報が含まれていることを特徴とする、
請求項1又は請求項2記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
前記第1の保護装置と前記第2の保護装置は、それぞれ基板とこの基板上に実装された回路部品とを備え、前記第1の保護装置と前記第2の保護装置は、基板の少なくとも一部が互いに間隔をあけて重ねられていることを特徴とする、
請求項1〜請求項3のうちいずれかに記載のエレベータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータは、乗客を収容する乗りかごが昇降路内を移動することにより、乗りかごを任意の階床に移動させて、乗客を任意の階床間に移動させる。エレベータは、巻き上げ機のブレーキと、ブレーキと電源との間に設けられたブレーキ用コンタクタと、巻き上げ機に電源からの電力を供給するインバータと、インバータと電源との間に設けられたコンタクタと、これらの動作を制御する制御装置を備えている。制御装置は、前述したブレーキと、ブレーキ用コンタクタと、インバータと、インバータ用コンタクタとの動作を制御する主制御部と、ブレーキとブレーキ用コンタクタとインバータとインバータ用コンタクタの異常を検出する保護装置などを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−154988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術においては、ビルの高層化に伴い輸送力を増加させるために巻上機の大容量化を図る必要があるがそれに付随して、前述したブレーキと、ブレーキ用コンタクタと、インバータと、インバータ用コンタクタを複数設ける傾向である。エレベータでは、ブレーキなどを複数設けても、これらの動作を制御する安価な制御装置が求められている。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、エレベータにブレーキと、ブレーキ用コンタクタと、インバータと、インバータ用コンタクタ等が複数設けられても、安価なエレベータの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエレベータの制御装置は、主制御部と第1の保護装置と第2の保護装置を備えている。主制御部は、複数のインバータと巻き上げ機用の複数のブレーキとインバータ用コンタクタとブレーキ用コンタクタとの動作を制御する。インバータは、巻き上げ機の多巻線モータの各巻線に電源からの電力を供給する。インバータ用コンタクタは、各インバータと電源との間に設けられている。ブレーキ用コンタクタは、各ブレーキとブレーキ用電源との間に設けられている。第1の保護装置は、前記複数のブレーキのうちの一部のブレーキと、ブレーキ用コンタクタと、前記複数のインバータのうちの一部のインバータと、インバータ用コンタクタと、の異常を検出する。ブレーキ用コンタクタは、前記一部のブレーキとブレーキ用電源との間に設けられている。インバータ用コンタクタは、前記一部のインバータと電源との間に設けられている。第2の保護装置は、他のブレーキと、他のブレーキとブレーキ用電源との間に設けられたブレーキ用コンタクタと、他のインバータと、他のインバータと電源との間に設けられたインバータ用コンタクタとの異常を検出する。前記第1の保護装置と前記第2の保護装置とは、前記複数のブレーキと前記複数のブレーキ用コンタクタのうちの少なくとも1つの異常を検出すると、前記主制御部に前記ブレーキ用コンタクタと前記インバータ用コンタクタの全てを開放させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態1に係るエレベータの全体の構成を模式的に示すブロック図である。
図2図2は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1の保護装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1の保護装置の戸開走行を監視するフローチャートである。
図4図4は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1及び第2の保護装置のコンタクタの異常を監視するフローチャートである。
図5図5は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1及び第2の保護装置のブレーキの異常を監視するフローチャートである。
図6図6は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1及び第2の保護装置のインバータの異常を監視するフローチャートである。
図7図7は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1及び第2の保護装置の異常を検出した時のフローチャートである。
図8図8は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1及び第2の保護装置が出力する異常を示す信号を示す説明図である。
図9図9は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の構成を示す正面図である。
図10図10は、図9に示されたエレベータの制御装置の保護装置の側面図である。
図11図11は、実施形態2に係るエレベータの全体の構成を模式的に示すブロック図である。
図12図12は、実施形態2に係るエレベータの制御装置の第1及び第2の保護装置の異常を検出した時のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るエレベータの全体の構成を模式的に示すブロック図、図2は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1の保護装置の構成を示すブロック図、図3は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1の保護装置の戸開走行を監視するフローチャート、図4は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1及び第2の保護装置のコンタクタの異常を監視するフローチャート、図5は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1及び第2の保護装置のブレーキの異常を監視するフローチャート、図6は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1及び第2の保護装置のインバータの異常を監視するフローチャート、図7は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1及び第2の保護装置の異常を検出した時のフローチャート、図8は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の第1及び第2の保護装置が出力する異常を示す信号を示す説明図、図9は、実施形態1に係るエレベータの制御装置の構成を示す正面図、図10は、図9に示されたエレベータの制御装置の保護装置の側面図である。
【0009】
図1に示す実施形態1のエレベータ1は、建造物(建築物ともいう)の昇降路内に設置されて、乗りかご内の操作装置の各種のボタン及び各階の乗り場に設けられた操作盤の呼びボタンの操作による呼び登録に基づいて乗客などを建造物の所望の階に運搬する。
【0010】
昇降路は、建造物の複数の階に亘って設けられ、かつ鉛直方向に沿って直線状に延びている。また、昇降路の内部のエレベータ停止階となる各階には、各階の所定の着床位置に乗りかごが停止したことを検出するかご着床検出装置16(図1に示す)がそれぞれ設けられている。各かご着床検出装置16は、乗りかごの設けられた図示しない検知板により、各階の着床位置に乗りかごが停止したことを検出すると、着床位置検出信号を制御装置3の後述する第1の保護装置21に向かって出力する。
【0011】
エレベータ1は、図1に示すように、図示しない乗りかごと、図示しないカウンタウェイトと、駆動機構2と、制御装置3とを備えている。
【0012】
乗りかごは、内側に乗客を収容可能な箱状に形成されている。乗りかごは、昇降路内でかご用ガイドレールにより鉛直方向に移動自在に設けられている。乗りかごには、乗客を出入り可能とする出入り口を開閉する開閉ドアが取り付けられている。また、各階の乗り場にも、乗客を出入り可能とする出入り口を開閉する開閉ドアが取り付けられている。乗りかごには、開閉ドアの開閉動作を検出するドアスイッチ15(図1に示す)が取り付けられている。乗り場にも、開閉ドアの開閉動作を検出するドアスイッチ15(図1に示す)が取り付けられている。これらのドアスイッチ15は、開閉ドアの開閉動作を検出して、検出した結果を制御装置3の後述する第1の保護装置21に向かって出力する。なお、図1では、乗りかご及び各階の乗り場のドアスイッチ15を一つにまとめて示している。
【0013】
カウンタウェイトは、昇降路内でウェイト用ガイドレールにより鉛直方向に移動自在に収容されている。乗りかごには、中央部が駆動機構2の後述する駆動シーブ11に掛け渡されたメインロープの一端が取り付けられ、カウンタウェイトには、メインロープの他端が取り付けられて、乗りかごとカウンタウェイトとが互いに上下反対方向に昇降するように設けられている。即ち、エレベータ1は、所謂、つるべ式のエレベータとなっている。このように、メインロープは、巻き上げ機4により移動されることで、乗りかごとカウンタウェイトとを釣瓶式に昇降させる。
【0014】
駆動機構2は、図1に示すように、例えば、昇降路の上部に設けられた機械室又は昇降路内の上部などに設けられ、巻き上げ機4と、ブレーキ用電源5と、第1のブレーキ系統6と、第2のブレーキ系統7と、電源としての電動機用電源8と、第1の電源系統9と、第2の電源系統10とを備えている。
【0015】
巻き上げ機4は、例えば、巻線を複数備えた多巻線モータと、この多巻線モータの出力軸に取り付けられかつメインロープが掛け渡された駆動シーブ11と、図示しないロータリエンコーダなどを備えている。本実施形態では、巻き上げ機4の多巻線モータは、巻線を二つ備えている。ロータリエンコーダは、駆動シーブ11の回転を検出するものであり、乗りかごの速度に関する速度情報としての駆動シーブ11の回転数を検出して、検出した結果を制御装置3の後述する主制御部20、第1及び第2の保護装置21,22に向かって出力する。巻き上げ機4は、多巻線モータの各巻線に第1及び第2の電源系統9,10を介して電動機用電源8からの電力が供給されると、多巻線モータが駆動シーブ11を回転駆動して、メインロープを移動させて、乗りかごとカウンタウェイトとを釣瓶式に移動させる。ブレーキ用電源5は、第1のブレーキ系統6及び第2のブレーキ系統7に電力を供給する。
【0016】
第1のブレーキ系統6は、複数(本実施形態では、二つ)の巻き上げ機4用のブレーキ12aと、互いに直列に接続された複数(本実施形態では、二つ)のブレーキ用コンタクタ13a,13bとを備えている。ブレーキ12aには、二つのブレーキ用コンタクタ13a,13bを介して、ブレーキ用電源5からの電力が供給される。ブレーキ用コンタクタ13a,13bは、制御装置3の主制御部20により開閉動作が制御される。
【0017】
ブレーキ12aは、例えば、電磁ブレーキであり、制御装置3の主制御部20により巻き上げ機4を制動する制動状態あるいは巻き上げ機4を開放する開放状態のいずれかに動作制御される。ブレーキ12aは、乗りかごが各階に着床するとブレーキ用電源5からの電力が遮断され、制動状態となり、乗りかごの昇降中にはブレーキ用電源5からの電力が供給されて、開放状態となる。
【0018】
また、前述した第1のブレーキ系統6の各ブレーキ12aには、図示しない動作感知器が取り付けられている。動作感知器は、検出した結果を制御装置3の主制御部20と第1の保護装置21との双方に向かって出力する。例えば、ブレーキ12aが釈放状態即ち制動状態である場合には、動作感知器は、オン信号を出力し、ブレーキ12aが開放状態である場合には、動作感知器は、オフ信号を出力する。
【0019】
第2のブレーキ系統7は、複数(本実施形態では、二つ)の巻き上げ機4用のブレーキ12bと、互いに直列に接続された複数(本実施形態では、二つ)のブレーキ用コンタクタ14a,14bとを備えている。ブレーキ12bには、二つのブレーキ用コンタクタ14a,14bを介して、ブレーキ用電源5からの電力が供給される。
【0020】
ブレーキ12bは、第1のブレーキ系統6のブレーキ12aと構成が等しいので、説明を省略する。第2のブレーキ系統7の各ブレーキ12bには、図示しない動作感知器が取り付けられている。動作感知器は、検出した結果を制御装置3の主制御部20と第2の保護装置22との双方に向かって出力する。例えば、ブレーキ12bが釈放状態即ち制動状態である場合には、動作感知器は、オン信号を出力し、ブレーキ12bが開放状態である場合には、動作感知器は、オフ信号を出力する。
【0021】
電動機用電源8は、後述するインバータ17a,17bを介して、巻き上げ機4の多巻線モータの各巻線に電力を供給する。
【0022】
第1の電源系統9は、一つのインバータ17aと、一つのインバータ用コンタクタ18aとを備えている。インバータ17aは、巻き上げ機4の多巻線モータの巻線に接続している。インバータ17aには、インバータ用コンタクタ18aを介して、電動機用電源8
からの電力が供給される。インバータ17aは、インバータ用コンタクタ18aを介して供給された電動機用電源8からの電力を巻き上げ機4の多巻線モータの巻線に供給して、巻き上げ機4を駆動して、乗りかごとカウンタウェイトとを釣瓶式に移動させる。インバータ用コンタクタ18aは、制御装置3の主制御部20により、オン、オフが制御される。
【0023】
第2の電源系統10は、一つのインバータ17bと、一つのインバータ用コンタクタ18bとを備えている。インバータ17bは、巻き上げ機4の多巻線モータの巻線に接続している。インバータ17bには、インバータ用コンタクタ18bを介して、電動機用電源8からの電力が供給される。インバータ17bは、インバータ用コンタクタ18bを介して供給された電動機用電源8からの電力を巻き上げ機4の多巻線モータの巻線に供給して、巻き上げ機4を駆動して、乗りかごとカウンタウェイトとを釣瓶式に移動させる。インバータ用コンタクタ18bは、制御装置3の主制御部20により、オン、オフが制御される。
【0024】
制御装置3は、前述した機械室又は昇降路内の上部などに設けられ、図1に示すように、制御盤19(図9に示す)と、主制御部20と、第1の保護装置21と、第2の保護装置22とを備えている。制御盤19は、平板状に形成され、前述した機械室又は昇降路内の上部などに設置されている。
【0025】
主制御部20は、かご着床検出装置16と、ドアスイッチ15と、駆動機構2などと接続して、これらの動作を制御して、エレベータ1全体の運転制御を行う。主制御部20は、図1に示すように、制御盤19上に設けられた主制御部20は、主制御装置23と、回路部24とを備えている。
【0026】
主制御装置23は、図示しないRAM、ROM、CPU、入出力ポート及び記憶装置を備えた演算装置である。
【0027】
回路部24は、図1に示すように、安全回路25と、複数(本実施形態では、四つ)の停止用リレー26a,26b,26c,26dと、安全回路リレー27とを備えている。安全回路25は、エレベータ1の各所に設置された安全装置の接点信号を直列に接続して、全ての安全装置が正常であればオンとなり、複数の安全装置のうちのいずれか一つが動作してオフとなると、オフとなる。複数の停止用リレー26a,26b,26c,26dは、互いに接点が直列に接続しており、一方の端の停止用リレー26aが安全回路25の最終段の安全装置に接続している。他方の端の停止用リレー26dが安全回路リレー27に接続されて、安全回路リレー27が、主制御装置23に接続することで、主制御装置23が安全回路25の状態を検出できる。なお、複数の停止用リレー26a,26b,26c,26dと安全回路リレー27は、制御盤19上に設置されている。
【0028】
また、安全回路リレー27には、前述した互いに直列に接続された複数の停止用リレー26a,26b,26c,26dを介して、第1及び第2のブレーキ系統6,7のブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bが接続している。これにより、安全回路25がオフとなると、安全回路リレー27がオフとなり、ブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bがオフとなる。ブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bがオフとなることで、ブレーキ12a,12bへの電力の供給が遮断されて、全てのブレーキ12a,12bが釈放されて、乗りかごが停止する。こうして、主制御部20の主制御装置23は、ブレーキ12a,12bの開放、釈放動作を制御する。
【0029】
さらに、安全回路リレー27には、前述した互いに直列に接続された複数の停止用リレー26a,26b,26c,26dを介して、第1及び第2の電源系統9,10のインバータ用コンタクタ18a,18bが接続している。これにより、安全回路25がオフとなると、安全回路リレー27がオフとなり、インバータ用コンタクタ18a,18bがオフとなる。こうして、主制御部20の主制御装置23は、巻き上げ機4の各巻線への電力の供給、停止を制御する。
【0030】
このように、ブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14b及びインバータ用コンタクタ18a,18bは、安全回路25や複数の停止用リレー26a,26b,26c,26dのうちのいずれか一つがオフとなると、主制御部20の主制御装置23の出力にかかわらず、オフとなる。
【0031】
第1の保護装置21及び第2の保護装置22は、それぞれ、一つのブレーキ系統6,7と電源系統9,10に対応している。即ち、第1の保護装置21は、第1のブレーキ系統6及び第1の電源系統9に対応し、第2の保護装置22は、第2のブレーキ系統7及び第2の電源系統10に対応している。第1の保護装置21及び第2の保護装置22は、開閉ドアが開いたまま乗りかごが昇降する戸開走行を検出し保護する機能と、戸開走行に至らないように周辺機器の異常を検出し保護する機能を有している。第1及び第2の保護装置21,22の構成は、略等しいので、以下、図2を参照して、第1の保護装置21を代表して説明する。
【0032】
第1の保護装置21は、図2に示すように、基板28(図9及び図10に示す)と、この基板28に実装された二つのCPU29、二つのWDT(Watch Dog Timer)回路30、二つの不揮発性メモリ31、入力回路32、出力回路33などを備えている。これらのCPU29、WDT回路30、不揮発性メモリ31、入力回路32及び出力回路33は、回路部品をなしている。基板28は、図10に示すように、制御盤19から立設したボスに取り付けられ、制御盤19と間隔をあけて平行に設けられている。第2の保護装置22の基板28が、制御盤19上に設けられ、第1の保護装置21の基板28が第2の保護装置22の基板28上に設けられている。第1の保護装置21の基板28と、第2の保護装置22の基板28は、少なくとも一部が互いに間隔をあけて平行に重ねられている。本実施形態では、図9に示すように、制御盤19の正面からみて、第2の保護装置22の基板28の上縁が第1の保護装置21の基板28の上縁から露出するように、第1の保護装置21の基板28により第2の保護装置22の基板28の上縁を除く大部分が覆われている。また、本実施形態では、第1の保護装置21の基板28と第2の保護装置22の基板28との間に、中間パネル34が設けられている。
【0033】
第1の保護装置21の二つのCPU29は、入力回路32を介して同じ信号が入力されて、同じ動作を行う。なお、本実施形態では、第1の保護装置21のCPU29には、かご着床検出装置16、ドアスイッチ15からの信号が入力され、第1の保護装置21のCPU29と第2の保護装置22のCPU29との双方には、各コンタクタ13a,13b,14a,14b,18a,18bがオフとなって、乗りかごを停止した後に、再度、乗りかごを昇降させるための静止状態解除スイッチ35からの信号が入力される。第1の保護装置21の一方のCPU29は、出力回路33を介して停止用リレー26aに接続し、他方のCPU29は、出力回路33を介して停止用リレー26bに接続している。第2の保護装置22の一方のCPU29は、出力回路33を介して停止用リレー26cに接続し、他方のCPU29は、出力回路33を介して停止用リレー26dに接続している。
【0034】
また、第1の保護装置21の二つのCPU29には、実際の安全回路リレー27のオン、オフを示す信号と、実際のブレーキ用コンタクタ13a,13bのオン、オフを示す信号と、実際のインバータ用コンタクタ18aのオン、オフを示す信号とが入力される。さらに、第2の保護装置22の二つのCPU29には、実際のブレーキ用コンタクタ14a,14bのオン、オフを示す信号と、実際のインバータ用コンタクタ18bのオン、オフを示す信号とが入力する。こうして、各保護装置21,22には、それぞれ、対応する各系統6,7,9,10のブレーキ12a,12bとブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bとインバータ17a,17bとインバータ用コンタクタ18a,18bが接続している。
【0035】
第1及び第2の保護装置21,22の二つのCPU29のWDT回路30による動作監視、これら二つのCPU29間の相互監視により、第1の保護装置21と第2の保護装置22とが相互監視する必要がなくなって、制御装置3全体の構成を簡潔にすることができる。また、前述した構成の主制御装置23と第1の保護装置21と第2の保護装置22とは、互いに必要な信号(情報、命令など)を双方向に通信する。
【0036】
第1の保護装置21は、かご着床検出装置16からの信号により、乗りかごが所定の着床位置に位置していることを検知する。第1の保護装置21は、ドアスイッチ15からの信号により、乗り場の開閉ドアや乗りかごの開閉ドアの開閉状態を検知する。第1の保護装置21は、図3に一例が示されるフローチャートを繰り返し実行する。図3に示されたフローチャートは、乗りかごの戸開走行を監視するためのフローチャートである。
【0037】
図3に示されたフローチャートのステップS301では、まず、第1の保護装置21は、ドアスイッチ15からの信号に基いて、開閉ドアが開いているか否かを判定し、開閉ドアが閉じていると、フローチャートを終了し、開閉ドアが開いていると、ステップS302に進む。ステップS302では、第1の保護装置21は、かご着床検出装置16からの信号に基いて、乗りかごが着床位置外に移動したか否かを判定し、着床位置外へ移動していないと、フローチャートを終了し、乗りかごが着床位置外に移動したと判定すると、ステップS303に進む。ステップS303では、第1の保護装置21は、乗りかごの戸開走行を検出して、ステップS304に進む。ステップS304では、図7に一例が示されたフローチャートのように、第1の保護装置21は、この第1の保護装置21に接続している停止用リレー26a,26bをオフにし(開放し)、安全回路25を遮断し、異常を示す信号ES(図8に示す)を不揮発性メモリ31に記憶し、異常を示す信号ESを主制御部20の主制御装置23に向かって出力する。
【0038】
こうして、第1の保護装置21は、かご着床検出装置16からの信号により乗りかごが着床位置から離間し、ドアスイッチ15により開閉ドアが開いていることを検知すると、CPU29に接続した停止用リレー26a,26bをオフにし、安全回路25を遮断する。第1の保護装置21は、主制御部20の回路部24に接続したブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14b及びインバータ用コンタクタ18a,18bをオフにして、インバータ17a,17bから巻き上げ機4の多巻線モータの巻線への電力の供給を停止し、ブレーキ12a,12bを釈放状態即ち制動状態して、乗りかごを停止する。
【0039】
なお、第1の保護装置21は、図7に一例が示されたフローチャートのステップS701即ちステップS303のように戸開走行などの異常を検出しないと、ステップS702に進み、異常を検出すると、ステップS703に進む。ステップS702では、第1の保護装置21は、停止用リレー26a,26bをオンの状態に維持して、フローチャートを終了する。ステップS703では、第1の保護装置21は、停止用リレー26a,26bをオフとし、安全回路25を遮断し、ブレーキ用コンタクタ13a,13b及びインバータ用コンタクタ18a,18bをオフとして、ステップS704に進む。ステップS704では、第1の保護装置21は、異常を示す信号ESを不揮発性メモリ31に記憶し、ステップS705に進む。ステップS705では、第1の保護装置21は、異常を示す信号ESを主制御部20の主制御装置23に向かって出力して、ステップS706に進む。ステップS706では、第1の保護装置21は、静止状態解除スイッチ35から乗りかごの静止状態を解除する信号が入力したか否かを判定し、静止状態を解除する信号が入力するまでステップS706を繰り返し、静止状態を解除する信号が入力されると、ステップS707に進む。ステップS707では、第1の保護装置21は、ステップS703でオフとした停止用リレー26a,26bをオンにして、安全回路25を復帰し、乗りかごの静止状態を解除して、フローチャートを終了する。こうして、第1の保護装置21は、戸開走行を検出すると、この第1の保護装置21に接続している停止用リレー26a,26bをオフにし、安全回路25を遮断し、異常を示す信号ESを不揮発性メモリ31に記憶し、異常を示す信号ESを主制御部20の主制御装置23に向かって出力する。
【0040】
第1及び第2の保護装置21,22は、図5に一例が示されるフローチャートを繰り返し実行する。図5に示されたフローチャートは、第1及び第2の保護装置21,22それぞれが、接続しているブレーキ系統6,7のブレーキ12a,12bの異常を監視するためのフローチャートである。
【0041】
図5に示されたフローチャートのステップS501では、まず、第1及び第2の保護装置21,22は、主制御部20の主制御装置23が、ブレーキ12a,12bに電力を供給するための信号を出力しているか否かを判定し、信号を出力していないとステップS502に進み、信号を出力しているとステップS503に進む。ステップS502では、第1及び第2の保護装置21,22は、動作感知器からの信号に基いて、ブレーキ12a,12bが開放状態であるか否かを判定し、開放状態でないとフローチャートを終了し、開放状態であると判定すると、ステップS504に進む。ステップS503では、第1及び第2の保護装置21,22は、動作感知器からの信号に基いて、ブレーキ12a,12bが釈放状態即ち制動状態であるか否かを判定し、制動状態であるとステップS505に進み、釈放状態即ち制動状態ではないと判定すると、フローチャートを終了する。ステップS504では、第1及び第2の保護装置21,22は、主制御部20の主制御装置23が、ブレーキ12a,12bにブレーキ用電源5からの電力を供給していないにもかかわらず、ブレーキ12a,12bが開放状態となる異常開放であると検出して、ステップS506に進む。ステップS505では、第1及び第2の保護装置21,22は、主制御部20の主制御装置23が、ブレーキ12a,12bにブレーキ用電源5からの電力を供給しているにもかかわらず、ブレーキ12a,12bが釈放状態即ち制動状態となる異常制動であると検出して、ステップS506に進む。ステップS506では、図7に一例が示されたフローチャートのように、第1及び第2の保護装置21,22は、これらの第1及び第2の保護装置21,22に接続している停止用リレー26a,26b,26c,26dをオフにし、安全回路25を遮断し、異常を示す信号ESを不揮発性メモリ31に記憶し、異常を示す信号ESを主制御部20の主制御装置23に向かって出力する。
【0042】
第1及び第2の保護装置21,22は、図4に一例が示されるフローチャートを繰り返し実行する。図4に示されたフローチャートは、第1及び第2の保護装置21,22それぞれが、接続しているブレーキ系統6,7のブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bの異常を監視するためのフローチャートである。
【0043】
図4に示されたフローチャートのステップS401では、まず、第1及び第2の保護装置21,22は、主制御部20の主制御装置23が、ブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bをオフとするための信号を出力しているか否かを判定し、信号を出力していないとフローチャートを終了し、オフとするための信号を出力していると、ステップS402に進む。ステップS402では、第1及び第2の保護装置21,22は、動作感知器からの信号に基いて、ブレーキ12a,12bが開放状態であるか否かを判定し、開放状態ではないとフローチャートを終了し、開放状態であると判定すると、ステップS403に進む。ステップS403では、第1及び第2の保護装置21,22は、主制御部20の主制御装置23がブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bをオフしようとするにもかかわらず、ブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bがオンであるブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bの異常故障を検出して、ステップS404に進む。ステップS404では、図7に一例が示されたフローチャートのように、第1及び第2の保護装置21,22は、これらの第1及び第2の保護装置21,22に接続している停止用リレー26a,26b,26c,26dをオフにし、安全回路25を遮断し、異常を示す信号ESを不揮発性メモリ31に記憶し、異常を示す信号ESを主制御部20の主制御装置23に向かって出力する。
【0044】
こうして、第1及び第2の保護装置21,22は、図4及び図5に示されたフローチャートを繰り返し実行することにより、動作感知器からの信号、主制御部20の主制御装置23の制御信号及び実際のブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bのオン、オフを示す信号などに基いて、ブレーキ12a,12bとブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bのうちの少なくとも一つの異常を検出すると、それぞれのCPU29に接続した停止用リレー26a,26b,26c,26dをオフにし、安全回路25を遮断する。第1及び第2の保護装置21,22は、主制御部20に、ブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14b及びインバータ用コンタクタ18a,18bの全てをオフにさせて(開放させて)、インバータ17a,17bから巻き上げ機4の多巻線モータの巻線への電力の供給を停止し、ブレーキ12a,12bを釈放状態即ち制動状態して、乗りかごを停止する。
【0045】
第1及び第2の保護装置21,22は、図6に一例が示されるフローチャートを繰り返し実行する。図6に示されたフローチャートは、第1及び第2の保護装置21,22のそれぞれが、接続している電源系統9,10のインバータ17a,17bの異常を監視するためのフローチャートである。
【0046】
図6に示されたフローチャートのステップS601では、まず、第1及び第2の保護装置21,22は、主制御部20の主制御装置23が、インバータ17a,17bを動作するための信号を出力しているか否かを判定し、信号を出力していないとステップS602に進み、信号を出力しているとステップS603に進む。ステップS602では、第1及び第2の保護装置21,22は、駆動機構2のロータリエンコーダからの信号に基いて、巻き上げ機4が駆動中であるか否かを判定し、駆動中ではないとフローチャートを終了し、駆動中であると判定すると、ステップS604に進む。ステップS603では、第1及び第2の保護装置21,22は、駆動機構2のロータリエンコーダからの信号に基いて、巻き上げ機4が駆動中であるか否かを判定し、駆動中ではないとステップS605に進み、駆動中であると判定すると、フローチャートを終了する。ステップS604及びステップS605では、インバータ17a,17bの異常を検出して、ステップS606に進む。ステップS606では、図7に一例が示されたフローチャートのように、第1及び第2の保護装置21,22は、これらの第1及び第2の保護装置21,22に接続している停止用リレー26a,26b,26c,26dをオフにし、安全回路25を遮断し、異常を示す信号ESを不揮発性メモリ31に記憶し、異常を示す信号ESを主制御部20の主制御装置23に向かって出力する。
【0047】
こうして、第1及び第2の保護装置21,22は、ロータリエンコーダからの信号及び主制御部20の主制御装置23の制御状態とに基いて、インバータ17a,17bの異常を検知、異常なインバータ17a,17bを特定すると、それぞれのCPU29に接続した停止用リレー26a,26b,26c,26dをオフにし、安全回路25を遮断する。第1及び第2の保護装置21,22は、主制御部20の回路部24に接続したブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14b及びインバータ用コンタクタ18a,18bをオフにして、インバータ17a,17bから巻き上げ機4の多巻線モータの巻線への電力の供給を停止し、ブレーキ12a,12bを釈放状態即ち制動状態して、乗りかごを停止する。
【0048】
また、第1及び第2の保護装置21,22は、インバータ用コンタクタ18a,18bの異常の検出を、図4に示すブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bの異常の検出と同様のフローチャートを実行することにより行う。この際、主制御部20の主制御装置23の制御信号及び実際のインバータ用コンタクタ18a,18bのオン、オフを示す信号とに基いて、インバータ用コンタクタ18a,18bの異常を検出するとともに、異常なインバータ用コンタクタ18a,18bを特定する。
【0049】
なお、第1及び第2の保護装置21,22は、図7に一例が示されたフローチャートのステップS701即ちステップS403、ステップS504、ステップS505、ステップS604、ステップS605のように、各コンタクタ13a,13b,14a,14b,18a,18b、インバータ17a,17b及びブレーキ12a,12bの異常を検出しないと、ステップS702に進み、異常を検出すると、ステップS703に進む。ステップS702では、第1及び第2の保護装置21,22は、停止用リレー26a,26b,26c,26dをオンの状態に維持して、フローチャートを終了する。ステップS703では、第1及び第2の保護装置21,22は、停止用リレー26a,26b,26c,26dをオフとして、安全回路25を遮断し、ブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14b及びインバータ用コンタクタ18a,18bをオフとして、ステップS704に進む。ステップS704では、第1及び第2の保護装置21,22は、異常を示す信号ESを不揮発性メモリ31に記憶し、ステップS705に進む。ステップS705では、第1及び第2の保護装置21,22は、異常を示す信号ESを主制御部20の主制御装置23に向かって出力して、ステップS706に進む。ステップS706では、第1及び第2の保護装置21,22は、静止状態解除スイッチ35から乗りかごの静止状態を解除する信号が入力したか否かを判定し、静止状態を解除する信号が入力するまでステップS706を繰り返し、静止状態を解除する信号が入力すると、ステップS707に進む。ステップS707では、第1及び第2の保護装置21,22は、ステップS703でオフとした停止用リレー26a,26b,26c,26dをオンにして、安全回路25を復帰し、乗りかごの静止状態を解除して、フローチャートを終了する。こうして、第1及び第2の保護装置21,22は、各コンタクタ13a,13b,14a,14b,18a,18b、インバータ17a,17b及びブレーキ12a,12bの異常を検出すると、これらの第1及び第2の保護装置21,22に接続している停止用リレー26a,26b,26c,26dをオフにし、安全回路25を遮断し、異常を示す信号ESを不揮発性メモリ31に記憶し、異常を示す信号ESを主制御部20の主制御装置23に向かって出力する。
【0050】
こうして、各保護装置21,22は、それぞれ、一系統のブレーキ系統6,7と電源系統9,10の動作を監視し、各々の保護装置21,22が個別に安全回路25を遮断できるように構成されている。
【0051】
実施形態1において、第1の保護装置21から主制御部20の主制御装置23に向かって出力される異常を示す信号ESと、第2の保護装置22から主制御部20の主制御装置23に向かって出力される異常を示す信号ESとは、図8に示すように、識別情報IIと、異常情報EIとを備えている。識別情報IIは、異常を示す信号ESを出力した保護装置が第1の保護装置21であるか、第2の保護装置22であるかを示す情報である。即ち、第1の保護装置21が出力した異常を示す信号ESには、第1の保護装置21が出力したことを示す第1の識別情報IIが含まれ、第2の保護装置22が出力した異常を示す信号ESには、第2の保護装置22が出力したことを示す第2の識別情報IIが含まれている。例えば、第1の保護装置21が出力した第1の識別情報IIが「01」であると、第2の保護装置22が出力した第1の識別情報IIが「10」である。異常情報EIは、異常である箇所(異常なブレーキ12a,12b、インバータ17a,17b、ブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14b、インバータ用コンタクタ18a,18b)を示す情報である。
【0052】
実施形態1にかかるエレベータ1の制御装置3によれば、ブレーキ12a,12bとブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bとインバータ17a,17bとインバータ用コンタクタ18a,18bの異常を検出する各保護装置21,22を複数設けている。さらに、各保護装置21,22には、それぞれ一つの系統6,7,9,10のブレーキ12a,12bとブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bとインバータ17a,17bとインバータ用コンタクタ18a,18bが接続している。このため、ブレーキ12a,12bとブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bとインバータ17a,17bとインバータ用コンタクタ18a,18bの増加に伴って、各保護装置21,22を増加することで、前述したブレーキ12a,12bなどの異常を確実に検出することができる。したがって、ブレーキ12a,12bとブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bとインバータ17a,17bとインバータ用コンタクタ18a,18bが増加しても、専用の保護装置を新規に設計、製造する必要がなく、従来から用いられてきた各保護装置21,22を増加させることで対応することができる。よって、各保護装置21,22を新規に設計、製造するために生じるコストの高騰を防止でき、エレベータ1にブレーキ12a,12bと、ブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bと、インバータ17a,17bと、インバータ用コンタクタ18a,18b等が複数設けられ、さらに増加しても、安価なエレベータ1の制御装置3を提供することができる。
【0053】
特に、多巻線モータと複数のブレーキ12a,12bを備えた大容量の乗りかごを備えた所謂大容量エレベータ1において、CPU29やWDT回路30を複数備えた略同一の構成の各保護装置21,22が、それぞれ、一系統のブレーキ系統6,7と電源系統9,10の動作を監視し、各々の保護装置21,22が個別に安全回路25を遮断できるように構成されているので、ブレーキ系統6,7と電源系統9,10の追加を各保護装置21,22の追加によって対応することができる。よって、各保護装置21,22同士の相互監視や回路の調停などの複雑な機能を設ける必要なく、ブレーキ系統6,7と電源系統9,10の追加に対応できるので、安価に簡潔なエレベータ1の制御装置3を提供することができる。
【0054】
第1の保護装置21が出力する異常を示す信号ESには第1の保護装置21が出力したことを示す第1の識別信号IIが含まれ、第2の保護装置22が出力する異常を示す信号ESには第2の保護装置22が出力したことを示す第2の識別信号IIが含まれている。このために、異常を示す信号ESを受信した主制御部20が、異常を出力した各保護装置21,22を識別することができる。したがって、異常箇所を容易に把握することができ、異常発生後の復旧作業を速やかに行うことができる。
【0055】
第1の保護装置21の基板28と、第2の保護装置22の基板28とが、互いに一部が間隔をあけて重なる位置に設けられているので、保護装置21,22を複数設けても、これら保護装置21,22の占めるスペースを抑制することができる。よって、制御盤19即ちエレベータ1の制御装置3の大型化を抑制することができる。
【0056】
[実施形態2]
以下、前述した実施形態2のエレベータの制御装置について説明する。なお、前述した実施形態1と同一部分には、同一符合を付して説明を省略する。図11は、実施形態2に係るエレベータの全体の構成を模式的に示すブロック図、図12は、実施形態2に係るエレベータの制御装置の第1及び第2の保護装置の異常を検出した時のフローチャートである。
【0057】
実施形態2では、エレベータ1の制御装置3は、図11に示すように、第1及び第2の電源系統9,10のそれぞれが、インバータ17a,17bと巻き上げ機4との間に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41a,41bを備えている。実施形態2では、制御装置3の第1及び第2の保護装置21,22は、図6に示されたフローチャートにより、故障したインバータ17a,17bが特定されると、故障したインバータ17a,17bを含んだ電源系統9,10に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41a,41bをオフにし、故障していないインバータ17a,17bを含んだ電源系統9,10に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41a,41bをオンにする。制御装置3の第1及び第2の保護装置21,22は、例えば、第1の電源系統9のインバータ17aが故障すると、第1の電源系統9に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41aをオフにし、第2の電源系統10に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41bをオンにする。また、第2の電源系統10のインバータ17bが故障すると、第2の電源系統10に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41bをオフにし、第1の電源系統9に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41aをオンにする。
【0058】
実施形態2では、主制御部20の主制御装置23は、前述したように、インバータ切り離し用コンタクタ41a,41bのオン、オフを切り替えられた後に、オフとされたインバータ切り離し用コンタクタ41a,41bを備えた電源系統9,10のインバータ用コンタクタ18a,18bをオフとする信号を出力する。主制御部20の主制御装置23は、例えば、第1の電源系統9に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41aがオフにされ、第2の電源系統10に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41bがオンにされると、第1の電源系統9のインバータ用コンタクタ18aをオフとし、第2の電源系統10のインバータ用コンタクタ18bをオンとする信号を出力する。主制御部20の主制御装置23は、例えば、第1の電源系統9に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41aがオンにされ、第2の電源系統10に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41bがオフにされると、第1の電源系統9のインバータ用コンタクタ18aをオンとし、第2の電源系統10のインバータ用コンタクタ18bをオフとする信号を出力する。
【0059】
すると、第1及び第2の保護装置21,22は、主制御部20の主制御装置23から出力されたインバータ用コンタクタ18a,18bのオン、オフ信号と、実際のインバータ用コンタクタ18a,18bのオン、オフ信号が整合することとなって、インバータ切り離し用コンタクタ41a,41bのうちの一方がオン、他方がオフであっても、正常なインバータ用コンタクタ18a,18bが異常であるという誤検出を防止する。第1及び第2の保護装置21,22は、正常な電源系統9,10のインバータ用コンタクタ18a,18bをオフとすることなく、停止用リレー26a,26b,26c,26dをオフとせずに、電源系統9,10のうちの一方の電力により、巻き上げ機4を駆動して、乗りかごを昇降することができる。
【0060】
また、実施形態2では、制御装置3が、図11に示すように、第1及び第2の保護装置21,22に、オンとなることで、インバータ用コンタクタ18a,18bの指令信号を切り離す切り離しリレー42a,42bを接続し、これらの切り離しリレー42a,42bを主制御部20の主制御装置23内に設けられたリレー43a,43bなどを介して、主制御部20の主制御装置23に接続する。こうして、切り離しリレー42a,42bをオンとすることで、主制御部20の主制御装置23からインバータ用コンタクタ18a,18bへの指令信号を切り離す構成となっている。
【0061】
実施形態2では、制御装置3の第1及び第2の保護装置21,22は、図4に示されたフローチャートにより、故障したインバータ用コンタクタ18a,18bが特定されると、故障したインバータ用コンタクタ18a,18bを含んだ電源系統9,10に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41a,41bをオフにし、故障していないインバータ用コンタクタ18a,18bを含んだ電源系統9,10に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41a,41bをオンにして、主制御部20が故障したインバータ用コンタクタ18a,18bを含んだ電源系統9,10のインバータ17a,17bへの制御出力を行わない。そして、第1及び第2の保護装置21,22は、故障した電源系統9,10の監視を行う各保護装置21,22に接続した切り離しリレー42a,42bをオンとし、故障していない電源系統9,10の監視を行う各保護装置21,22に接続した切り離しリレー42a,42bをオフとする。出力される故障した電源系統9,10のインバータ用コンタクタ18a,18bへの制御信号を、オンとされた切り離しリレー42a,42bにより出力されることとなって、インバータ切り離し用コンタクタ41a,41bのうちの一方がオン、他方がオフであっても、正常なインバータ用コンタクタ18a,18bが異常であるという誤検出を防止する。第1及び第2の保護装置21,22は、正常な電源系統9,10のインバータ用コンタクタ18a,18bをオフとすることなく、停止用リレー26a,26b,26c,26dをオフとせずに、電源系統9,10のうちの一方の電力により、巻き上げ機4を駆動して、乗りかごを昇降することができる。このように、実施形態2のエレベータ1の制御装置3は、インバータ切り離し用コンタクタ41a,41bのうちの一方がオン、他方がオフであっても、正常なインバータ用コンタクタ18a,18bが異常であるという誤検出を防止する誤検出防止手段を備えている。
【0062】
実施形態2では、第1及び第2の保護装置21,22は、図12に示されたフローチャートのステップS701において、各コンタクタ13a,13b,14a,14b,18a,18b、インバータ17a,17b及びブレーキ12a,12bのいずれかに異常を検出すると、図12のステップS701aにおいて、第1の電源系統9のインバータ用コンタクタ18aと、第2の電源系統10のインバータ用コンタクタ18bとのうちの一方のみが故障しているか否かを判定して、一方のみが故障していない即ち双方のインバータ用コンタクタ18a,18bが故障していると、ステップS703以降に進む。インバータ用コンタクタ18a,18bの一方のみが故障していると判定すると、ステップS1201に進む。ステップS1201では、第1及び第2の保護装置21,22は、複数の停止用リレー26a,26b,26c,26dの全てをオフとして、安全回路25を遮断して、乗りかごを停止させて、ステップS1202に進む。ステップS1202では、第1及び第2の保護装置21,22は、異常を示す信号ESを主制御部20の主制御装置23に向かって出力するとともに不揮発性メモリ31に書き込んで、ステップS1203に進む。ステップS1203では、第1及び第2の保護装置21,22は、インバータ切り離し用コンタクタ41a,41b及び切り離しリレー42a,42bにより、故障した電源系統9,10のインバータ用コンタクタ18a,18bを切り離し、前述したように、電源系統9,10のうちの異常の無い一方の電力により、巻き上げ機4を駆動して、乗りかごを昇降させる。
【0063】
こうして、実施形態2のエレベータ1の制御装置3は、第1及び第2の保護装置21,22が、第1及び第2の電源系統9,10のインバータ17a,17bとインバータ用コンタクタ18a,18bの少なくとも1つが異常であることを検出すると、主制御部20の主制御装置23に異常なインバータ17a,17b、インバータ用コンタクタ18a,18bを備えた電源系統9,10に設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41a,41bを開放即ちオフさせる。
【0064】
実施形態2にかかるエレベータ1の制御装置3によれば、前述した実施形態1の効果に加え、第1及び第2の電源系統9,10のそれぞれに設けられたインバータ切り離し用コンタクタ41a,41bのうち、異常の生じた電源系統9,10のインバータ切り離し用コンタクタ41a,41bをオフとし、正常な電源系統9,10のインバータ切り離し用コンタクタ41a,41bをオンとして、正常な電源系統9,10のみにより巻き上げ機4の巻線に電力を供給して、乗りかごを昇降させる。このために、電源系統9,10のいずれか一方に異常が生じても、乗客を乗りかごに閉じ込めることを防止でき、乗りかご内の乗客をスムーズに救出することができる。
【0065】
前述した実施形態1及び実施形態2では、第1の電源系統9と、第2の電源系統10とを設けて、インバータ17a,17bと、インバータ用コンタクタ18a,18bとをそれぞれ二つ設けている。しかしながら、本発明では、インバータ17a,17bと、インバータ用コンタクタ18a,18bとをそれぞれ三つ以上、即ち、電源系統9,10を三つ以上設けても良い。
【0066】
また、前述した実施形態1及び実施形態2では、第1のブレーキ系統6と、第2のブレーキ系統7とを設けて、ブレーキ12a,12bと、ブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bとをそれぞれ四つ設けている。しかしながら、本発明では、ブレーキ12a,12bと、ブレーキ用コンタクタ13a,13b,14a,14bとをそれぞれ二つ以上即ち複数設ければ良い。さらに、本発明は、各保護装置21,22の基板28全体を互いに間隔をあけて重ねても良い。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 エレベータ
3 制御装置
4 巻き上げ機
5 ブレーキ用電源
8 電動機用電源(電源)
12a,12b ブレーキ
13a,13b,14a,14b ブレーキ用コンタクタ
17a,17b インバータ
20 主制御部
21 第1の保護装置
22 第2の保護装置
28 基板
29 CPU(回路部品)
30 WDT回路(回路部品)
31 不揮発性メモリ(回路部品)
32 入力回路(回路部品)
33 出力回路(回路部品)
41a,41b インバータ切り離し用コンタクタ
ES 異常を示す信号
II 識別情報(第1の識別情報、第2の識別情報)
EI 異常情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12