【実施例1】
【0020】
本発明の調剤支援システムの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、(a)が調剤支援システム10を調剤台4に設置したところの正面図、(b)が調剤支援システム10のハードウェアの概要ブロック図、(c)が情報処理装置13のソフトウェアの機能ブロック図、(d)が薬品マスタのデータ構造図、(e)が調剤指示のデータ構造図である。また、
図2〜
図4は、情報処理装置13による調剤支援の典型的な手順を示すフローチャートである。なお、そのフローチャートは主要な手順の一例であり、細部や例外的な手順さらには異常処理やエラー処理などは省かれている。
【0021】
調剤支援システム10は(
図1(a),(b)参照)、プログラマブルな情報処理装置13と、情報処理装置13の入力機器として情報処理装置13に信号ケーブル等で接続されたリーダ11と電子秤12と操作入力装置15と、情報処理装置13の出力機器として情報処理装置13に信号ケーブル等で接続された通知装置14とを具えたものであり、この例では、それら総てが調剤台4に装備されている。なお、情報処理装置13は、処方箋の内容・情報を電子データ化した処方箋データから支援対象部分すなわち情報処理装置13の処理対象部分を抽出した調剤指示データを入力するために、外部の処方解析システム17とも通信ケーブルや無線LAN等で接続されている。
【0022】
処方解析システム17は、調剤指示データを有線通信や無線通信で情報処理装置13に送信するものであり、典型例としては、調剤支援システム10にて処理可能と予め登録されたデータ部分を処方箋データからRP単位(処方単位)や施用単位で探索抽出する基本的なものや、固形薬剤や液状薬剤の有無等をパラメータとする幾つかの調剤パターンを予めデータ保持していて処方箋データに応じて調剤手順まで決定するようになったもの(例えば特許文献1参照)が挙げられる。処方解析システム17で処理する処方箋データは、医師が電子端末を操作する処方オーダエントリシステム16や、印刷された処方箋を読み取って電子データ化する処方箋受付装置などで作成されるが、情報処理装置13が処方箋データを入力して自ら調剤指示データを作成しても良いので、処方解析システム17は本願発明の実施に必須のものではない。
【0023】
調剤台4は、混注に係る調剤作業を、特に固形薬剤や濃厚液剤の入っている供給容器6に溶解剤収容器7の溶解剤を注入することで注射薬を調製した後に供給容器6から必要量の注射薬を手動式吸入器具8で抜き取る調剤作業を、調剤者が遂行する作業台であり、調剤支援システム10を設置して調剤作業が行えれば、簡素な平机でも良く、作業板の付いた調剤棚でも良く、単独で設置できる設備でも良く、他の設備に付属した設備でも良く、病院に設置されることが多いが(例えば特許文献1参照)、その他の所に設置されていても良く、大気圧下でも良く、陽圧や陰圧の環境に置かれても良く(例えば特許文献2参照)、クリーンルームやクリーンベンチ等の清浄区間の内外いずれに置かれても良い。
【0024】
調剤台4の作業面の上には、リーダ11と電子秤12が定常的に置かれており、調剤作業時には供給容器6と溶解剤収容器7と手動式吸入器具8も置かれる。
また、調剤台4のうち調剤者の視認しやすい部位に通知装置14が設置され、調剤台4のうち調剤者の操作しやすい部位に操作入力装置15が設置されている。
なお、この例では、情報処理装置13も調剤台4に設置されているが、調剤者が直に知覚や操作するものではない情報処理装置13等は調剤台4とは別の所に設置されていても良い。
【0025】
供給容器6は、溶解してから注射薬として使用される固形薬剤や濃厚液剤を収容して密封した容器であり、典型例としてバイアルやボトルが挙げられる。固形薬剤としては溶けやすい散薬や顆粒剤にされた固形抗ガン剤が挙げられ、濃厚液剤としては液状抗ガン剤が挙げられる。溶解剤収容器7は、溶解剤を収容して密封した容器であり、典型例としてボトルやバッグが挙げられる。溶解剤としては、錠剤や散薬を液化する溶解液や,濃厚液剤を薄める希釈液が挙げられ、具体例としては生理食塩水点滴用輸液などが挙げられる。
【0026】
手動式吸入器具8は、人手で操作することにより供給容器6から水剤を抜き取って内部空間に吸入できる器具であり、典型例として、注射針を装着した注射器や,注射針の着いていないシリンジが、挙げられる(例えば特許文献2参照)。なお、この例では、手動式吸入器具8が供給容器6から注射薬を抜き取ることにだけ用いられるようになっており、溶解剤収容器7から溶解剤を抜き取って供給容器6に注入するのに用いる器具には、図示しない他の注射器などが割り当てられるものとするが、本願発明の実施態様としては、両抜取に手動式吸入器具8を共用することが、排除される訳ではない。
【0027】
リーダ11は、供給容器6や,溶解剤収容器7,手動式吸入器具8に付された識別情報を読み取って情報処理装置13に送信する装置であり、バーコードリーダや,カラービットコードリーダ,OCR等が挙げられる(例えば特許文献1,2参照)。
電子秤12は、薬剤を収容している供給容器6の重量を精度良く測定しうる精密な秤であって、測定重量すなわち測定結果の重量値を情報処理装置13に送信するようになっている(例えば特許文献1,2参照)。
【0028】
操作入力装置15は、人の操作にて所望の情報を情報処理装置13に入力するためのものであり、手指で操作するタッチパネルや,マウス,キーボードが典型例であるが(例えば特許文献1,2参照)、足で操作するフットスイッチ等であっても良い。
通知装置14は、薬剤入り供給容器6に溶解剤収容器7の溶解剤を注入して更に供給容器6から必要量の注射薬を手動式吸入器具8で抜き取る調剤作業を遂行している調剤者に支援情報を提示するためのものであり、視覚利用の液晶パネル製ディスプレイといった表示器が典型的であるが(例えば特許文献1,2参照)、それと併用される又はそれに代わる聴覚利用のスピーカといった音響機器やプリンタ等の印刷装置でも良い。
【0029】
情報処理装置13は(
図1(a)〜(c)参照)、民生用のパーソナルコンピュータや産業用のマイクロプロセッサシステムといったプログラマブルな汎用のハードウェアと、それにインストールされたプログラム及びデータとを具えている(例えば特許文献1,2参照)。主なデータとして薬品マスタと調剤指示データがあり、これらのデータは内蔵メモリや外付けハードディスク等の記憶装置に保持されるが、薬品マスタはキー検索等に適したデータベースで構成され、調剤指示データは、トランザクションデータ的なもので、複数個貯まることもあれば全く無くなることもあるので、それを保持するデータ領域は、先入れ先出し処理に適したキュー形式やテーブル形式で構成されている。また、プログラムは適宜なプログラムモジュールやサブルーチンで構成されていて、調剤指示データ取得手段と測定重量入力手段と支援手段とを具現化している。
【0030】
薬品マスタは(
図1(c),(d)参照)、各種の薬剤に係る薬品コードと薬品名と容量単位と比重と供給容器の種類と供給容器の収容薬剤の規定量といった情報をデータ保持しているが(例えば特許文献1,2参照)、更に各種の薬剤に係る供給容器の収容薬剤の量について、供給容器の収容薬剤の規定量(以下、単に規定量と呼ぶ)に加えて、供給容器の収容薬剤の実充填量(以下、単に実充填量と呼ぶ)も、データ保持しうるようになっている。実充填量が規定量と同じ薬剤については規定量をデータ保持していれば実充填量はデータ保持していてもいなくても良いが、実充填量が規定量と異なる薬剤については規定量に加えて実充填量もデータ保持している。なお、後で詳述するが、規定量データも実充填量データも薬剤収容量データとして用いられるが、実充填量の方が優先される。
【0031】
また、薬品マスタは供給容器の初期重量データもデータ保持しうるようになっており、供給容器の初期重量の値としては供給容器と収容薬剤とを合わせた重量値が直接的なものであるが、薬剤を収容した未使用状態の重量が分かれば足りるので、薬剤収容量データが薬品マスタに保持されていることを考慮すると、容器重量(容器単体の重量値)がデータ保持されていても良い。何れのデータ保持態様であれ、供給容器の初期重量データは、一定の測定値が安定して得られた薬剤入り供給容器についてデータ保持されていれば良く、未測定や重量不定の薬剤についてはデータ保持されない。
なお、容量単位は、体積単位ではmLが多用され、質量単位・重量単位ではgやmgが多用され、両者の換算のために比重がデータ保持されている。
【0032】
調剤指示データは(
図1(c),(e)参照)、各患者の処方箋データから、調剤作業時に調剤支援システム10で支援する対象となる部分を、抽出したものであり、基本的にRP単位・施用単位で纏められ、一つ又は複数のRP単位データが含まれている。このような調剤指示データには薬品名と処方量とが含まれており、特に、溶解にて注射薬を調製する調剤作業を指示する調剤指示データには、固形薬剤や濃厚液剤からなり注射薬の元になる薬剤と、それを溶解させる溶解剤とについて、それぞれ、一つ以上の薬品名と処方量とが含まれている。そのうち、薬品名には、名称文字列に供給容器公称全量値が付加されていることもあり、処方量には、指定の数量値に上述した容量単位たとえばmLやmgが付加されていることもあれば、供給容器単位たとえば個数や本数が付加されていることもある。
【0033】
調剤指示データ取得手段は(
図1(c)参照)、処方解析システム17からから調剤指示データを入力することで直ちに、あるいは操作入力装置15や,処方箋受付装置,処方オーダエントリシステム16から処方箋データを入力して更にその処方箋データから支援対象部分を抽出することで、調剤指示データを取得するものであり、取得した調剤指示データを次々とバッファリング用のデータ領域に記憶して蓄積するようになっている。取得した処方箋データに含まれているデータがRP単位・施用単位で一単位分のデータだけでありそれが調剤支援対象であれば、処方箋データがそのまま調剤指示データになるが、それを超えるデータが処方箋データに含まれている場合は、処方箋データの一部から一の調剤指示データが作成され、一の処方箋データから一の又は複数の調剤指示データが作成されるようになっている。
【0034】
測定重量入力手段は、電子秤12を用いて重量測定が行われ、それに応じて電子秤12から測定結果がデータ送信されて来ると、その測定値を入力し、測定値がゼロより大きな値で安定するの待って測定値を確定し、その確定した測定値を測定重量の入力があった旨の通知と共に次に詳述する支援手段に引き渡すようになっている。
【0035】
支援手段は(
図1(c),
図2〜
図4参照)、調剤指示データ取得手段にて取得した調剤指示データを順に受け取って、それぞれの調剤指示データ毎に、その指示内容に応じて、薬品マスタを適宜参照や検索しながら、剤種および調剤量や調剤手順といった調剤支援情報を通知装置14にて調剤者に通知するものであるが、その際に、供給容器6の重量測定を通知装置14にて調剤者に催促するとともに、電子秤12の測定値を測定重量入力手段にて取得するようになっている。調剤指示データで指示された薬剤が次に述べる溶解工程等を要するものでなければ、既に公知になっている通常の調剤支援を行うので(例えば特許文献1,2参照)、その煩雑な説明は割愛して、ここでは、薬剤を収容した供給容器6に溶解剤収容器7の溶解剤を注入することにより供給容器6の中で注射薬を調製する溶解工程と、その注射薬調製の後に供給容器6から手動式吸入器具8にて必要量の注射薬を抜き取る抜取工程と、を行う調剤作業についての支援内容を詳述する。
【0036】
支援手段は、先ず(
図2丸A参照)、上述した調剤指示データ取得手段によって取得蓄積された調剤指示データであって未だ処理されていないものが一つでもあれば(ステップS20)、その一覧を通知装置14に提示させる(ステップS21)。その際、それぞれの調剤指示データについて調剤作業の概要を調剤者が把握できるよう、薬剤の名称と処方内容を提示するようになっている。そして、その中から一つの調剤指示が調剤者による操作入力装置15の操作にて選択されるのを待ち(ステップS22)、何れかの調剤指示が選択されると(ステップS23)、その選択された調剤指示が薬剤入り供給容器6の中で溶解を行ってから注射薬を抜き取るものに該当しているか否かを調べて、該当しなければ詳細な説明は割愛するが通常の調剤支援を行って一つの調剤指示データの処理を終え、該当していれば以下の処理を行うようになっている(ステップS24〜S48)。
【0037】
すなわち、支援手段は、薬剤入り供給容器6のコード読取を通知装置14の提示にて調剤者に催促し(ステップS24)、選択された薬剤の薬品コードがリーダ11で読み取られるを待つことで(ステップS25)、調剤者が適切な供給容器6を溶解用容器に採択したことを確認する。供給容器6の確認が済むと溶解工程に係る調剤支援に移行し、選択された薬剤について薬品マスタに供給容器の初期重量データがデータ保持されているか否かを調べて(ステップS26)、データ保持されていなければ(ステップS26,「無」)、薬剤入り供給容器6の初期重量の測定を通知装置14の提示にて調剤作業に催促して(ステップS27)、電子秤12から測定値が入力されるのを待ち(ステップS28)、測定値が入力されたらそれを溶解前重量値に採用するようになっている(ステップS29,丸C,
図3へ)。
【0038】
一方、選択された薬剤について薬品マスタに供給容器の初期重量データがデータ保持されているときには(
図2ステップS26,「有」,丸B,
図3へ)、該当する初期重量データから直ちに或いはそれと薬剤収容量データとの演算等から間接的に薬剤入り供給容器6の初期重量に相当するデータ値を取得して、それを溶解前重量値とするように(ステップS30)、支援手段ができている。これにより、支援手段は、薬剤を収容した未使用状態の供給容器6の重量の把握を終え、調剤指示データの指示量だけ溶解剤収容器7から溶解剤をシリンジ等で抜き取って供給容器6に注入する作業と(ステップS31)、溶解剤を注入した後の供給容器6について電子秤12を用いて重量測定を行う作業とを(ステップS32)、通知装置14の提示にて調剤者に催促するようになっている。
【0039】
それから、支援手段は、電子秤12から測定値が入力されるのを待ち(ステップS33)、測定値が入力されたらそれを溶解後重量値とし(ステップS34)、さらに、選択された薬剤について薬品マスタに実充填量データが保持されているか否かを調べて(ステップS35)、実充填量データが有れば薬剤収容量データに実充填量データを採用するが(ステップS36)、実充填量データが無ければ薬剤収容量データに規定量データを採用する(ステップS36)。これにより、支援手段は、演算等に薬剤収容量データを使用する際、薬剤収容量として規定量よりも実充填量を優先的に取得するものとなっている。
【0040】
これで、抜取目標値の算出に必要なデータが揃うので、支援手段は(ステップS38)、溶解後重量値から溶解前重量値を引いて溶解剤量計測値を算出し、薬剤収容量と溶解剤量計測値とを足して注射薬全量値とし、溶解対象薬剤の処方量すなわち供給容器6に予め収容されていた薬剤に係る処方量とその薬剤に係る供給容器公称全量値とを調剤指示データから求めてから処方量を供給容器公称全量値で割って抜取割合とし、注射薬全量値に抜取割合を掛けて重量単位の抜取目標値を算出し、その抜取目標値を比重で割って容積単位の抜取目標値とするようになっている。
【0041】
その際、混合による体積変化がないとすれば、上記の比重は、薬剤の比重及び量と溶解剤の比重及び量とから公知の演算式で算出されるが、大抵は溶解剤の比重を採用することができる。また、フローチャート(ステップS38)では省略したが、支援手段が薬剤収容量に実充填量を採用したときには、実充填量と規定量との相違によって演算結果に差が生じるが、その差に応じて抜取目標値を調製するか否かが支援手段の動作モード設定で選択できるようになっており、調剤者が支援手段の動作モードを実充填量採用時調製実行に設定すると、支援手段は、抜取目標値の算出過程で、供給容器公称全量値を[実充填量/規定量]倍するか、あるいは所定割合を[規定量/実充填量]倍するか、何れかで抜取目標値を調整することも行うようになっている。
【0042】
それから、支援手段は、抜取工程に係る調剤支援に移行し(
図4丸D参照)、算出した容積単位の抜取目標値を通知装置14にて調剤者に提示して、溶解した注射薬の入っている供給容器6から注射薬を目標量だけ抜き取ることを調剤者に催促するとともに(ステップS40)、注射薬を抜き取った後の供給容器6の重量測定を調剤者に催促する(ステップS41)。そして電子秤12から測定値が入力されるのを待ち(ステップS42)、測定値が入力されたらそれを抜取後重量値とし(ステップS43)、さらに、溶解後重量値から抜取後重量値を減じて注射薬の抜取量を算出し(ステップS44)、その抜取量が重量単位の抜取目標値と比較して例えば±5%の許容範囲に収まっているか否かを調べることで注射薬抜取量の適否を判定するようになっている(ステップS45)。
【0043】
抜取量が抜取目標値の許容範囲から外れていて判定結果が不適な場合は(ステップS45,「範囲外」)、注射薬の抜取の微調整と抜取後の重量測定の再実行を通知装置14の提示にて調剤者に提示し(ステップS46)、抜取後の測定重量の入力から遣り直すように(ステップS42)、支援手段がなっている。そして、支援手段は、抜取量が抜取目標値の許容範囲に収まって判定結果が適量になると(ステップS45,「範囲内」)、抜取の正常終了を示すメッセージ等に加えて薬剤の名称と処方量と目標量と抜取量などを通知装置14で調剤者に提示するとともに(ステップS47)、正常終了した薬剤に係る調剤指示データを選択可能な調剤指示データから外して(ステップS48)、一の調剤作業の支援を終えるようになっている(丸A)。
【0044】
このような実施例1の調剤支援システム10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図5は、調剤支援システム10を動作させておいて、その支援を受けながら調剤者が注射薬を溶解調製してから手動式吸入器具8で抜き取る調剤作業の概要フローチャートである。また、
図6は、その調剤作業の進行に伴って変化する供給容器6や手動式吸入器具8のイメージ図である。ここでは、製剤室で担当者が薬剤を取り揃え、無菌室の調剤台4の上で調剤者が調剤支援システム10を利用しながら薬剤を溶解させて注射薬を調製し更に必要量の注射薬を抜き取り、注射薬を製剤室へ戻して最終監査に供する、という作業例を説明する。
【0045】
処方箋が発行され更に処方解析システム17によって処方箋データから調剤指示データが作成され、その調剤指示データが製剤室や調剤支援システム10に配信されると、製剤室では、処方された薬品が自動払出や人手収集によって取り揃えられる。その際、抗ガン剤などの注射薬は、調剤指示データに従ってRP単位・施用単位で取り揃えられ、それらの薬品が、調剤指示を印刷した調剤指示箋と一緒にトレー等に収容され、トレー単位で纏められる。こうして、製剤室での薬品準備が完了し(
図5ステップS50)、準備された薬品は、トレー毎に或いは複数トレーが一緒に製剤室から無菌室に運び込まれる。
【0046】
一方、無菌室の調剤支援システム10では、配信された調剤指示データが情報処理装置13によって取得されて蓄積されるとともに(ステップS51)、通知装置14に選択可能な調剤指示が提示される。ここでは、処方箋データによって注射用エンドキサン100mgを50mg処方することが指示され、それに基づく調剤指示データによって、凍結乾燥製剤の注射用エンドキサン100mgを収容している供給容器6に溶解剤として5mLの生理食塩水を注入して供給容器6の中に注射薬を調製することと、溶解した注射薬を必要量50mg即ち0.5本分だけ供給容器6から手動式吸入器具8で抜き取ることとが指示されたとする。
【0047】
そうすると、その調剤指示が選択可能なものとして調剤支援システム10の通知装置14に提示されるので、調剤者が、その調剤指示を操作入力装置15で選択するとともに、運び込まれた薬品を受け取って(ステップS52)、供給容器6をリーダ11のコード読取にて確認する。そして、その確認がとれると、調剤支援システム10では、支援手段によって、供給容器6に収容されている薬剤6aである注射用エンドキサン100mgについて薬品マスタにおいて該当する供給容器の初期重量データに薬剤入り供給容器6の初期重量が登録されているか否かが調べられる。
【0048】
注射用エンドキサン100mgの緒元データについては(
図6(a)参照)、薬品名より或いは薬品マスタの該当規定量データより供給容器公称全量値が100mgであることが把握される他、薬品マスタに登録された該当データに基づいて抜取目標値の算出に必要なデータが把握され、具体的には、薬剤収容量データから供給容器6における薬剤6aの薬剤収容量が0.1069gであることが把握され、供給容器の初期重量データが登録されていればそのデータから薬剤入り供給容器6の初期重量が10.1069gであることが把握され、それらのことから空の供給容器6の重量が10gであることも把握されるが、ここでは、薬品マスタの初期重量データに登録が無いものとする。また、ここでは、説明の簡明化のため、情報処理装置13の支援手段の動作モードが実充填量採用時調製実行でなく実充填量採用時調製不実行に設定されているものとする。
【0049】
その場合、無菌室では、調剤支援システム10によって供給容器6の重量測定が催促されるので(
図5ステップS53)、それに応じて調剤者は薬剤入り供給容器6の初期重量を電子秤12で測定する(ステップS54)。そうすると、測定結果が電子秤12から情報処理装置13に送られるので、情報処理装置13は、薬品マスタからデータ取得できななかった薬剤入り供給容器6の初期重量を実測にて取得することができ、その実測値を溶解前重量値とするので、溶解前重量値は10.1069gになる。それから、調剤支援システム10によって、調剤者に対して、調剤指示データに基づき溶解剤として5mLの生理食塩水を溶解剤収容器7から抜き取って供給容器6に注入することと、注入後の供給容器6の全重量を測定することとが、催促される(ステップS55)。
【0050】
それに応じて調剤者がXgの溶解剤を供給容器6に注入すると、供給容器6の中は(
図6(b)参照)、溶解した薬効成分のエンドキサン0.1069gと溶解させた溶解剤Xgとを合わせた[Xg+0.1069g]の注射薬6bが収容された状態になり、溶解剤注入後の供給容器6の全重量は、[Xg+10.1069g]になる。この供給容器6の重量を調剤者が電子秤12を用いて測定すると(
図5ステップS56)、その測定結果が電子秤12から情報処理装置13に送られ、調剤支援システム10では、入力した測定値を溶解後重量値とするので、溶解後重量値は[Xg+10.1069g]になる。
【0051】
溶解前重量値と溶解後重量値が把握できると、調剤支援システム10では(
図6(c)参照)、情報処理装置13の支援手段によって、溶解後重量値[Xg+10.1069g]から溶解前重量値[10.1069g]を引いて溶解剤量計測値が[Xg]と算出され、薬剤収容量[0.1069g]に溶解剤量計測値[Xg]を足して供給容器6の中の注射薬全量値Yが[Xg+0.1069g]と算出され、処方量[50mg]を供給容器公称全量値[100mg]で割って抜取割合Zが0.5(本)と算出され、注射薬全量値Yに抜取割合Zを掛けて重量単位の抜取目標値Wが[Y×Z]=[(X/2)g+0.05345g]と算出され、これを簡便のため注射薬の比重に代えて溶解剤の比重1.006で割って容積単位の抜取目標値Mが[W/比重]=[(X/2.012)+0.05313]mLと算出される。
【0052】
こうして、抜取目標値が決まると、調剤支援システム10によって、調剤者に対して、情報処理装置13にて抜取目標値が提示されるとともに、供給容器6から手動式吸入器具8にて提示量の注射薬を抜き取ることと、抜取後の供給容器6の全重量を測定することとが、催促される(
図5ステップS57)。
そして、それに応じて調剤者が抜取目標値Mになっている思う量だけ注射薬を供給容器6から手動式吸入器具8にて抜き取り、抜取後の供給容器6の重量を調剤者が電子秤12を用いて測定すると(
図5ステップS58)、その測定結果が電子秤12から情報処理装置13に送られる。
【0053】
その抜取作業に際して、手動式吸入器具8で抜き取った注射薬6bが抜取目標値Wから誤差Δだけ異なっていて[W+Δ]gになっていたとすると(
図6(c)参照)、抜取後の供給容器6の中には(
図6(d)参照)、注射薬6bが[Y−W−Δ]gだけ残っているので、抜取後の供給容器6の全重量は[10+Y−W−Δ]gとなる。そして、その測定値が、電子秤12から情報処理装置13に入力されると、情報処理装置13の支援手段によって抜取後重量値とされる。さらに、調剤支援システム10では、溶解後重量値[Xg+10.1069g]から抜取後重量値[10+Y−W−Δ]gを引いて注射薬6bの抜取量計測値が [Xg+10.1069g]−[10+Y−W−Δ]g =
[X+10.1069−10−X−0.1069+(X/2)+0.05345+Δ]g = [(X/2)+0.05345+Δ] = [W+Δ] と算出され、実際の抜取量が的確に把握される。
【0054】
それから、支援手段によって、その抜取量について適否が判定され(
図5ステップS59)、抜取量計測値[W+Δ]が抜取目標値Wを基準とした例えば±5%の許容範囲に入っているか否かが調べられる。上述したように抜取目標値の決定に際しては溶解剤注入量Xの多寡に拘わらず薬効成分の薬剤6aのうち調剤指示対応の所定割合Zが抜き取った注射薬6bに含まれるように抜取目標値W,Mが算出されているため、言い換えると抜取目標値W,Mが処方量と供給容器公称全量値との比で決まり濃度に依存しなくなっているため、更に上記数値例で言えば薬効成分量が0.5本分といった容器単位で表した個数・係数になっているため、抜取量の変動比率と薬効成分の変動比率とが比例することから、抜取目標値Wに対して誤差Δが許容範囲に収まっていれば、手動式吸入器具8で抜き取った薬効成分の量も許容範囲に収まっていることになるので、必要量の注射薬6bが的確に抜き取られたことを確認することができる。
【0055】
こうして、一の調剤指示データで指示された調剤作業が終了し、他の調剤指示データが有れば、上述したのと同様にして、調剤者は調剤支援システム10による支援を受けながら容易かつ的確に調剤作業を進めることができる。そして、調剤作業の完了した薬品は無菌室から製剤室に戻されて最終監査に付される。
なお、上述の説明では、薬品マスタの初期重量データに登録が無い場合を述べたが、薬品マスタの初期重量データに登録が有ると、上述した供給容器6の初期重量の測定催促(ステップS53)とそれに応じた重量測定作業(ステップS54)が省かれるので、その分だけ、調剤作業が短縮され作業負担が軽減される。
【0056】
また、上述の説明では、支援手段の動作モードが実充填量採用時調製不実行に設定されている場合を述べたが、支援手段の動作モードを実充填量採用時調製実行に設定すると、抜取目標値の算出過程で、供給容器公称全量値が[実充填量/規定量]倍される或いは所定割合が[規定量/実充填量]倍されるので、供給容器6に収容されている注射用エンドキサン100mgの規定量が100mgで実充填量が106.9mgとすると、抜取目標値Wが上述の[(X/2)+0.05345]gから[100/106.9]倍の[(X/2.138)+0.05]gに修正される。
【0057】
[その他]
上記実施例では、情報処理装置13の支援手段が、電子秤12から供給容器6の重量測定値を入力できたら直ちにそれを用いた演算や次の催促などを行うようになっていたが、重量測定値の入力後に電子秤12の上から供給容器6の取り去りを催促するとともに、その取り去り完了を電子秤12の測定状態にて確認してから次の処理を行うようにしても良い。
【0058】
上記実施例では、一覧表示した調剤指示の中から何れかが選択されてから、供給容器に対するコード読取を催促して確認するようになっていたが、それに代えて又はそれと並行して、供給容器に対するコード読取が行なわれたときに、そのコードが一覧表示の調剤指示や処理可能な調剤指示の何れかの薬品コードに一致していれば、指示選択とコード確認が纏めて実行されたとして自動進行するようにしても良い。
【0059】
上記実施例では、薬剤6aも溶解剤も一種類の場合しか説明しなかったが、マルチドーズバイアル等のように薬品が複数の場合や,複数の溶解剤を注入する場合も、調剤指示データで指示された薬剤等の個数だけ支援を繰り返すように拡張することで、調剤支援システム10を使用することができる。
上記実施例では、薬剤6aが溶解剤に完全に溶解され、溶解後にも体積が変化しないとして、演算が行われたが、溶解によって体積が変化するような場合は、薬品毎の体積変化係数を用いる等のことで、適切な演算結果を得ることができる。
【0060】
上記実施例では、供給容器6から手動式吸入器具8で注射薬6bを抜き取るところまでの調剤支援しか説明しなかったが、調剤支援システム10は、抜き取った注射薬6bを手動式吸入器具8から支給容器へ注入するときにも調剤支援を行うように拡張しても良い(特許文献1参照)。
上記実施例では抜取量の許容範囲として±5%を例示したが、許容範囲は±7%や±10%といった他の数値であっても良く、例えば薬品マスタに許容範囲の数値を登録しておく等のことにより、特定の薬剤や各薬剤毎に許容範囲が設定できるようにしても良い。
【0061】
上記実施例では、秤量や算出で得た測定重量値や,計測値,中間算出値,目標値が判定や提示といった即時の処理にしか利用されていなかったが、それらの物理量をデータロガー等に記録蓄積しておいて後の解析や検討などに供給するようにしても良い。
上記実施例では、麻薬や抗ガン剤などの調剤に適した無菌室に調剤支援システムが設置されていたが、これは必須でなく、本発明の調剤支援システムは開放的な場所に設置して使用しても良い。