(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743343
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】取付台座
(51)【国際特許分類】
E05B 15/02 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
E05B15/02 M
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-104348(P2013-104348)
(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公開番号】特開2014-224406(P2014-224406A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2014年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503229775
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】岸田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】竹内 啓二
【審査官】
川島 陵司
(56)【参考文献】
【文献】
実開平6−47544(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア(12)に固定される樹脂製の台座本体(18)と、その台座本体(18)の表面を覆うように取り付けられる金属製のカバー(20)とからなる取付台座において、
上記台座本体(18)が、その側面に突設されて上記カバー(20)の側壁(20b)に係止される爪部(18a)と、上記台座本体(18)における上記爪部(18a)の背後にて上記台座本体(18)の外縁に沿って穿設されたスリット状の貫通孔(18b)と、上記台座本体(18)の裏側表面における上記爪部(18a)に隣接する位置に設けられた工具差込用の凹所(18c)とを備える、
ことを特徴とする取付台座。
【請求項2】
前記工具差込用の凹所(18c)が、前記台座本体(18)の外周方向にて前記爪部(18a)に隣接し、上記台座本体(18)の肉を厚み方向全体にて切り欠いた切欠部分で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の取付台座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアにレバーハンドルやノブ或いは鍵などを取り付けるための取付台座に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、取付台座として種々のものが提案されており、その構造としては特許文献1及び2に示されているように、ドアに固定される樹脂製の台座本体と、この台座本体に嵌め合わされる金属製のカバーとで構成されたものが主流である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2855319号公報
【特許文献2】特許第2864360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この取付台座においては、生産工場での製造時やドア組み立て現場での施工前などに、台座本体とカバーとを嵌め合わせる所謂「検品嵌合」や「試し嵌合」(以下、単に「試し嵌合等」ともいう。)が行なわれる場合がある。従来の取付台座では、この試し嵌合等を行なった後、台座本体とカバーとの嵌合を解除する際に、例えばマイナスドライバーなどの工具を台座本体とカバーとの間に無理矢理差し込み、両者を抉じ開けるようにして分離させていた。このため、一旦嵌合させた台座本体とカバーとの分離が困難であるのに加え、力の係り具合によっては、台座本体又はカバーの少なくとも何れか一方に傷が付くようになるという問題が有った。
【0005】
また、試し嵌合等を行なった後の台座本体とカバーとの分離を容易にするような特殊な嵌合構造を採用する際には、台座本体及びカバーの嵌合強度と両者の嵌合解除のし易さといった相反する2つの事象をバランスさせるため、台座本体及びカバーにある程度以上の厚みが必要となり、意匠性に制限が加わるようになるといった問題も有った。
【0006】
それゆえに、本発明の主たる課題は、台座本体とカバーとが十分な嵌合強度を有すると共に、生産工場における「検品嵌合」やドア組み立て現場での施工前の「試し嵌合」の後に台座本体及びカバーを傷付けることなく両者を容易に分離させることができる、薄型化が可能な取付台座を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、
図1から
図4に示すように、取付台座を次のように構成した。
【0008】
取付台座10は、ドア12に固定される樹脂製の台座本体18と、その台座本体18の表面を覆うように取り付けられる金属製のカバー20とからなる。上記台座本体18は、その側面に突設されて上記カバー20の側壁20bに係止される爪部18aと、上記台座本体18における上記爪部18aの背後にて上記台座本体18の外縁に沿って穿設されたスリット状の貫通孔18bと、上記台座本体18の裏側表面における上記爪部18aに隣接する位置に設けられた工具差込用の凹所18cとを備える。
【0009】
この発明では、樹脂製の台座本体18における爪部18aの背後に台座本体18の外縁に沿ってスリット状の貫通孔18bが穿設されているので、爪部18aが台座本体18中心方向へ移動する際に必要な応力が軽減される一方で、台座本体18に嵌合させたカバー20の脱出に必要な応力、つまり、爪部18aがカバー20の側壁20bに係止された際の両者の係合力は十分に確保されている。
【0010】
また、台座本体18の裏側表面における爪部18aに隣接する位置にマイナスドライバーなどの工具差込用の凹所18cが設けられているので、この凹所18cに差し込んだ工具と上記の貫通孔18bとが協働することによって、試し嵌合等を行なった取付台座10の台座本体18から、簡単にカバー20を取り外すことができるようになる。勿論、その際に台座本体18及びカバー20を傷付ける心配もない。
【0011】
さらに、台座本体18に設けるカバー20との嵌合・係止構造を上記のような爪部18aと貫通孔18bと凹所18cとで構成しているので、台座本体18ひいては取付台座10全体を薄型化することも可能になる。
【0012】
なお、本発明においては、工具差込用の凹所18cを、台座本体18の外周方向にて爪部18aに隣接し、台座本体18の肉を厚み方向全体にて切り欠いた切欠部分で構成することが好ましい。この場合、凹所18cへの工具の収まりがより一層良好になり、試し嵌合等を行なった取付台座10の台座本体18とカバー20との分離作業をより一層効率よく行なうことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、台座本体とカバーとが十分な嵌合強度を有すると共に、生産工場における「検品嵌合」やドア組み立て現場での施工前の「試し嵌合」の後に台座本体及びカバーを傷付けることなく両者を容易に分離させることができる、薄型化が可能な取付台座を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明における一実施例の取付台座の使用態様を示す説明図である。
【
図2】本発明における一実施例の取付台座を示す図で、(a)は取付台座を正面側から看た斜視図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【
図3】本発明における一実施例の取付台座を示す図で、(a)は台座本体の背面図、(b)はカバーの背面図、(c)は台座本体にカバーを取り付けた状態を示す背面図である。
【
図4】本発明における台座本体の爪部又は凹所のバリエーションを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。
図1は、本発明における一実施例の取付台座10の使用態様を示す図である。本発明の取付台座10は、ドア12表面の所定位置にレバーハンドル14や鍵16などを取り付ける際に使用する部材であって、
図2及び
図3で示すように、台座本体18とカバー20とで大略構成される。
【0016】
台座本体18は、ドア12の表面に直接固定される板状の部材で、ナイロンやポリオレフィン或いはポリエステル等の樹脂で形成される。ここで、図示実施例では、台座本体18(ひいては取付台座10)の正面形状として四角形状のものを示しているが、この台座本体18の正面形状はかかる形状に限定されるものではなく、例えば、円形状や四角形以外の多角形状であってもよい。
【0017】
この台座本体18には、
図3(a)で示すように、互いに対向する左右一組の側辺における高さ方向中央部に、台座本体18側面の正面(表面)側が突出して一対の爪部18aが形成されている。
【0018】
また、台座本体18における当該爪部18aの背後の位置に、この台座本体18の外縁に沿うようなスリット状の貫通孔18bが穿設されている。
【0019】
さらに、上記の爪部18aを挟んで上下に隣接する台座本体18の部分には、その肉が厚み方向全体にて切り欠かれて工具差込用の凹所18cが設けられている。
【0020】
なお、
図2及び
図3中における符号18dは、レバーハンドル14や鍵16などを取り付ける際に使用される軸孔であり、符号18eは、この台座本体18をドア12にネジ止め等する際にネジが挿通されるネジ孔である。
【0021】
カバー20は、上記の台座本体18の正面(表面)側からこれを覆うように取り付けられる部材で、亜鉛や真鍮などの金属を材料に、ダイカストなどを用いて成形される。このカバー20は、台座本体18の正面を覆う本体部20aと、該本体部20aの周縁に立設されて台座本体18の側面を覆う側壁20bとを有する。
【0022】
また、台座本体18にカバー20を取り付けた際、台座本体18の爪部18aに対応する側壁20bの位置には、当該爪部18aが係止される係止溝20cが凹設されている。
【0023】
さらに、台座本体18の軸孔18dに対応する本体部20aの位置に軸孔20dが穿設されている。
【0024】
以上のように構成された取付台座10について試し嵌合等を行なう際には、台座本体18の爪部18aとカバー20の係止溝20cとの位置が合うように位置決めした後、台座本体18をカバー20内に嵌め込む。すると、台座本体18の爪部18aがカバー20の側壁20bに当たり、これによって台座本体18の貫通孔18bが閉塞するように当該台座本体18が弾性変形し、爪部18aが側壁20bを乗り越えて係止溝20cに達すると、自身の弾性回復力によって台座本体18が元の形に戻り、爪部18aが係止溝20cに係止される。
【0025】
これに対し、試し嵌合等を行なった取付台座10の台座本体18とカバー20とを再び分離する際には、台座本体18の凹所18cにマイナスドライバーなどの工具の先を差し込み、当該工具の先を貫通孔18bに向けて押し込むようにする。そうすることで、貫通孔18bが閉塞するように台座本体18が変形してカバー20の係止溝20cから台座本体18の爪部18aが引き出される。そして、このように爪部18aと係止溝20cとの係合が解除された状態で、カバー20内から台座本体18を持ち上げることによって、両者を再分離させることができる。
【0026】
本実施形態の取付台座10によれば、樹脂製の台座本体18における爪部18aの背後に台座本体18の外縁に沿ってスリット状の貫通孔18bが穿設されているので、爪部18aが台座本体18中心方向へ移動する際に必要な応力が軽減される一方で、台座本体18に嵌合させたカバー20の脱出に必要な応力、つまり、爪部18aがカバー20の側壁20bに係止された際の両者の係合力は十分に確保されている。
【0027】
また、台座本体18には、工具差込用の凹所18cを設けているので、試し嵌合等を行なった取付台座10の台座本体18とカバー20とを傷付けることなく簡単に再分離させることができるようになる。
【0028】
さらに、台座本体18に設けるカバー20との嵌合・係止構造を上記のような爪部18aと貫通孔18bと凹所18cとで構成しているので、台座本体18ひいては取付台座10を薄型化することも可能になる。
【0029】
なお、上述の実施形態では、台座本体18側面の高さ方向中央部の1箇所に爪部18aを形成し、この爪部18aを挟んで上下に隣接する部分に工具差込用の凹所18cを設ける場合を示したが、爪部18a及び凹所18cの構成はかかるものに限定されるものではなく、例えば、
図4(a)で示すように、台座本体18側面の高さ方向の2箇所に爪部18aを形成すると共に、これらの爪部18aの間に1箇所の凹所18cを設けるようにしてもよいし、
図4(b)で示すように、台座本体18側面の高さ方向中央部の1箇所に爪部18aを形成し、この爪部18aと貫通孔18bとの間の台座本体18の裏側表面に工具差込用の凹所18cを設けるようにしてもよい。なお、これらの場合、カバー20に設ける係止溝20cを爪部18aの数や位置に合わせて設計する必要がある点については云うまでもない。
【0030】
また、上述の実施形態では、カバー20の側壁20bに設ける係止溝20cとして、爪部18aに対応する部分のみに係止溝20cを設ける場合を示したが、この係止溝20cは、台座本体18にカバー20を取り付けた際に、台座本体18の爪部18aをカバー20の側壁20bに係止できる態様であれば如何なるものであってもよく、側壁20bの内周面全周に亘って設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10…取付台座
12…ドア
14…レバーハンドル
16…鍵
18…台座本体
18a…爪部
18b…貫通孔
18c…凹所
20…カバー
20a…本体部
20b…側壁
20c…係止溝