(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明によるエレベータの制御盤の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0013】
第1実施形態
図1は、本実施形態によるエレベータの制御盤を示す正面図である。この実施形態では、制御盤は、リニューアル用の制御盤として構成されている。この制御盤は、従来のように1つの筐体にすべての回路を実装するのではなく、主要機能別に回路を分割して、各回路単位に個別に筐体に実装することで、ユニット化を図っている。
【0014】
この実施形態では、制御盤は、エレベータを動かす電力を受電する受電回路を内蔵した受電ユニット10と、フィルタ回路または絶縁トランスを内蔵したフィルタユニット11と、巻き上げ機のモータ12の速度を制御するインバータ装置を含む主回路を内蔵した主回路ユニット13と、制御基板およびリレー、コンタクタを含むエレベータの制御回路を内蔵した制御回路ユニット14と、エレベータにオプションで付加される機能を実現する回路を内蔵したオプション回路ユニット15と、停電時着床装置を含み予備電源としてのバッテリーを内蔵したバッテリーユニット16と、抵抗を内蔵した抵抗ユニット17と、とに分割されている。
【0015】
主回路ユニット13と、制御回路ユニット14とは、信号をやり取りとするための信号用ハーネス18によってユニット間が接続されている。同様に、制御回路ユニット14とオプション回路ユニット15とは信号用ハーネス19によって接続され、制御回路ユニット14とバッテリーユニット16とは信号用ハーネス20によって接続されている。
【0016】
このように分割構成された各ユニット、すなわち受電ユニット10、フィルタユニット11、主回路ユニット13、制御回路ユニット14、オプション回路ユニット15、バッテリーユニット16、抵抗ユニット17は、エレベータ機械室の壁に敷設されている、制御盤取付用のレール22a、22b、22c、22dに沿って横に並べるようにして取り付けられている。この場合、各ユニットの配列方向は、レール22a、22b、22c、22dの延びる方向である。
【0017】
この実施形態では、レール22a、22b、22cは、3相交流電源(R、S、T)と電気的に接続されているブスバー(bus bar)からなる。このブスバーは、長方形の中実断面を有する細長い導電体からなり、電源供給線としての機能も担うようになっている。レール22dはアース用のブスバーであり、アース線を兼用する。
【0018】
次に、
図2は、リニューアル用制御盤を構成する各ユニットの筐体24の側面に取り付けられている爪を示す。この実施形態では、受電ユニット10、フィルタユニット11、主回路ユニット13、制御回路ユニット14、オプション回路ユニット15、バッテリーユニット16、抵抗ユニット17の各ユニット間で、筐体24は共通化されており、同じ大きさに統一されている。
【0019】
各ユニットの筐体24の背面には、レール22a乃至レール22dのそれぞれに対応して固定されるL字形の爪部材25a、25b、25c、25dが上下4段に取り付けられている。各段の爪部材25a、25b、25c、25dはいずれも4つ一組で構成されている。これらの爪部材25a、25b、25c、25dは、いずれも先端は直角に下向きに屈曲するようになっている。また、爪部材25a、25b、25c、25d、導電性の良好な金属を材料としており、ブスバーからなるレール22a乃至レール22dと電気的に接続される端子の役割も担っている。
【0020】
次に、
図3は、レール22a乃至22dのエレベータ機械室の壁26に対する取り付け構造を示す。壁26には、複数のアンカーボルト28が固定されている。アンカーボルト28は、それぞれ各段のレールに対して複数個固定されている。アンカーボルト28には、それぞれカラー29が装着されており、各レール22a乃至22dは、ねじ30によってカラー29に締結されている。
【0021】
次に、
図4は、リニューアル用制御盤を構成している各ユニットの筐体24をレール22a乃至22dに掛けて固定した状態を示す図である。
【0022】
それぞれ爪部材25は、ねじ32を締め込むことで、各レール22a乃至22dに締結固定されている。
【0023】
本実施形態によるエレベータの制御盤は、以上のように構成されるものであり、次に、その作用並びに効果について説明する。
【0024】
エレベータの既設の制御盤をリニューアルするに際して、エレベータ機械室において既設の制御盤が設置されている位置とは異なる位置にある任意の壁に、
図1で示されるブスバーからなるレール22a乃至22dを敷設しておく。他方、既設の制御盤は、リニューアル用制御盤の設置が完了するまでは存置したままにしておき、既設のエレベータの運転制御は、既設の制御盤によって行うようにする。
【0025】
そこで、リニューアル用の制御盤を構成している、受電ユニット10、フィルタユニット11、主回路ユニット13、制御回路ユニット14、オプション回路ユニット15、バッテリーユニット16、抵抗ユニット17をエレベータ機械室に搬入して、各ユニットを、
図1に示されるように、レール22a乃至22dに沿って並べて固定する。
【0026】
本実施形態では、制御盤を回路の主要機能ごとに分割してユニット化しているので、受電ユニット10、フィルタユニット11、主回路ユニット13、制御回路ユニット14、オプション回路ユニット15、バッテリーユニット16、抵抗ユニット17といった個々のユニットは、すべての回路を1つの筐体に実装した従来の制御盤に較べて、大幅に小型化することが可能になる。個々のユニットは軽量となり外形も小さくなるので、狭い搬入通路での搬入が容易になり、また、レール22a乃至22dに取り付ける作業も少人数で容易に行えるようになり、作業の安全性も高まる。
【0027】
また、リニューアル用制御盤は、既設の制御盤の設置位置とは異なる任意の壁側位置にレール22a乃至22dを介して設置されるので、既設のエレベータの運転を既設の制御盤によって継続したままで、リニューアル用制御盤の設置工事を並行して進めること可能になり、エレベータのサービス中断を最低限にすることができる。また、電源ラインやアースラインをブスバーで接続することで、ノイズ耐量を向上させることができる。
【0028】
これらの分割した各ユニット間の配線作業は、信号用ハーネス18、19、20などの配線を行うだけで済み、分割した構成でありながら現地での配線作業の工数が増えることを防止することができる。
【0029】
第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態によるエレベータの制御盤について、
図5を参照しながら説明する。なお第1実施形態の
図1と同様の構成要素には同一の参照番号を付してその詳細な説明は省略する。
第1実施形態の制御盤では、受電ユニット10、フィルタユニット11、主回路ユニット13、制御回路ユニット14、オプション回路ユニット15、バッテリーユニット16、抵抗ユニット17の各ユニットを長いレール22a乃至22dに沿ってほぼ等しい短い間隔で並べているが、エレベータ機械室によっては、レールの長さに制約を受け、レールを複数の位置に分散させて敷設しなければならないことがある。第2実施形態は、このようなレールの敷設に制約を受ける場合の実施形態である。
【0030】
図5に示されるように、エレベータ機械室が狭いため、レールを第1のレール40a乃至40dと、第2のレール42a乃至42dの2箇所に分散させて敷設したとする。この場合、第1のレール40a乃至40dと、第2のレール42a乃至42dは、便宜上横並びに配置されているが、実際は、別の壁に分けて分散させたり、上下に分散させたりというようにさまざまな分散の態様が考えられる。なお、第1のレール40a乃至40dと、第2のレール42a乃至42cは、第1実施形態と同様にブスバーから構成されている。
【0031】
このうち、第1のレール40a乃至40dには、制御盤を構成するユニットのうち、受電ユニット10、フィルタユニット11、主回路ユニット13、制御回路ユニット14、オプション回路ユニット15が取り付けられている。第2のレール42a乃至42cには、残りのバッテリーユニット16、抵抗ユニット17が取り付けられている。
【0032】
第1のレール40a乃至40dと第2のレール42a乃至42dの各レールの間は、ハイバロン電線44などの電線で電気的に接続されている。
【0033】
以上のような第2実施形態によれば、エレベータの機械室の狭さなどの制約から、数ヵ所にレールを分散させなければならない場合でも、各レール間をハイバロン電線などの電設で接続することによって、レールに取り付けた制御盤の各ユニットに給電したりアースをとることができるので、機械室の制約を受けずに、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0034】
第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態によるエレベータの制御盤について、
図6を参照しながら説明する。なお第1実施形態の
図1と同様の構成要素には同一の参照番号を付してその詳細な説明は省略する。
この第3実施形態は、第1実施形態の制御盤をさらに改良して、主電源やアースラインをブスバーで接続するだけでなく、追加電源や、共通の信号線をブスバーを用いて制御盤に接続するようにした実施形態である。
【0035】
図6は、エレベータ機械室の壁26に設置されているリニューアル制御盤を上からみた平面図である。
【0036】
制御盤を構成する各ユニットの筐体24には、共通の筐体が用いられており、レール22a乃至22dに横並びに取り付けると、各構成ユニットの筐体24の上面は同じ高さに揃うことになる。
【0037】
そこで、例えば、追加電源を接続するため、ブスバー44a乃至44fを各構成ユニットの上面に配設方向に敷設する。ここで、ブスバー44a、44bは、照明用100V電源と接続されている。ブスバー44c、44dは、制御用110V電源と接続され、ブスバー44e、44fは、制御用24V電源と接続されている。これらのブスバー44a乃至44fによって、制御盤には、追加電源との配線接続がなされている。なお、
図6では示していないが、共通の信号線についても、同様にブスバーを用いて配線接続を行うことができる。
【0038】
以上のような第3実施形態によれば、現地での電源、信号線の追加にあたり、筐体に敷設したブスバーによって配線することができ、分割していながら現地での配線作業の工数が増えることを防止することができる。
【0039】
以上、本発明に係るエレベータの制御盤について、リニューアル用の制御盤に適用した実施形態を挙げて説明したが、本発明は、リニューアル用に限らず、新設のエレベータ制御盤にも適用することができる。
【0040】
また、これらの実施形態は、例示として挙げたもので、発明の範囲の制限を意図するものではない。もちろん、明細書に記載された新規な装置、方法およびシステムは、様々な形態で実施され得るものであり、さらに、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、種々の省略、置換、変更が可能である。請求項およびそれらの均等物の範囲は、発明の主旨の範囲内で実施形態あるいはその改良物をカバーすることを意図している。