特許第5743346号(P5743346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5743346エレベータシステム、およびこれに利用するエレベータ制御装置、エレベータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743346
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】エレベータシステム、およびこれに利用するエレベータ制御装置、エレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-164976(P2013-164976)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-34076(P2015-34076A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2013年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】徐 秀坤
(72)【発明者】
【氏名】村山 智洋
【審査官】 葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−196428(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/056398(WO,A1)
【文献】 登録実用新案第3176548(JP,U)
【文献】 特開2010−023929(JP,A)
【文献】 特開2000−203774(JP,A)
【文献】 特開2014−133619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め注意箇所として設定された、エレベータの巻上げ機におけるロープの巻き込み開始点、または前記エレベータの昇降路内において乗りかごまたはカウンタウェイトが最下位置に移動したときの当該乗りかごまたはカウンタウェイトの底部が到達する位置を含む監視エリアを撮影する監視カメラ装置と、
前記監視カメラ装置で撮影された撮像情報を解析することで前記監視エリア内にいる作業員を検出し、検出した作業員と前記注意箇所との距離を算出する解析装置と、
前記解析装置で算出された、前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が予め設定された第1閾値以下であるときに警報情報を生成し、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるときに、前記エレベータの巻上げ機を停止させた状態を維持する制御装置と、
前記昇降路内に設置され、前記制御装置で生成された警報情報を出力する警報装置と
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
予め注意箇所として設定された、エレベータの制御装置内の電源部を含む監視エリアを撮影する監視カメラ装置と、
前記監視カメラ装置で撮影された撮像情報を解析することで前記監視エリア内にいる作業員を検出し、検出した作業員と前記注意箇所との距離を算出する解析装置と、
前記解析装置で算出された、前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が、予め設定された第1閾値以下であるときに警報情報を生成し、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるときに、前記電源部からの電力供給を遮断させるかまたは電源投入を制限する設定を行う制御装置と、
前記エレベータの昇降路内に設置され、前記制御装置で生成された警報情報を出力する警報装置と
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
予め注意箇所として設定された、エレベータの巻上げ機におけるロープの巻き込み開始点、または前記エレベータの昇降路内において乗りかごまたはカウンタウェイトが最下位置に移動したときの当該乗りかごまたはカウンタウェイトの底部が到達する位置を含む監視エリアを撮影する監視カメラ装置と、前記昇降路内に設置された警報装置とに接続されたエレベータ制御装置において、
前記監視カメラ装置で撮影された撮像情報を解析することで前記監視エリア内にいる作業員を検出し、検出した作業員と前記注意箇所との距離を算出する解析部と、
前記解析部で算出された、前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が予め設定された第1閾値以下であるか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部において、前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が前記第1閾値以下であると判定されたときに、警報情報を生成して前記警報装置から出力させる警報制御部と、
前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下になったか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部において、前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が前記第2閾値以下であると判定されたときに、前記エレベータの巻上げ機を停止させた状態を維持する運転制御部と
を備えることを特徴とするエレベータ制御装置
【請求項4】
予め注意箇所として設定された、エレベータの制御装置内の電源部を含む監視エリアを撮影する監視カメラ装置と、前記エレベータの昇降路内に設置された警報装置とに接続されたエレベータ制御装置において、
前記監視カメラ装置で撮影された撮像情報を解析することで前記監視エリア内にいる作業員を検出し、検出した作業員と前記注意箇所との距離を算出する解析部と、
前記解析部で算出された、前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が予め設定された第1閾値以下であるか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部において、前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が前記第1閾値以下であると判定されたときに、警報情報を生成して前記警報装置から出力させる警報制御部と、
前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下になったか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部において、前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が前記第2閾値以下であると判定されたときに、前記電源部からの電力供給を遮断させるかまたは電源投入を制限する運転制御部と
を備えることを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項5】
予め注意箇所として設定された、エレベータの巻上げ機におけるロープの巻き込み開始点、または前記エレベータの昇降路内において乗りかごまたはカウンタウェイトが最下位置に移動したときの当該乗りかごまたはカウンタウェイトの底部が到達する位置を含む監視エリアを撮影する監視カメラ装置と、前記昇降路内に設置された警報装置とに接続されたエレベータ制御装置が、
前記監視カメラ装置で撮影された撮像情報を解析することで前記監視エリア内にいる作業員を検出し、検出した作業員と前記注意箇所との距離を算出し、
前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が予め設定された第1閾値以下である判定すると、警報情報を生成して前記警報装置から出力させ、
前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下になった判定すると、前記エレベータの巻上げ機を停止させた状態を維持する
ことを特徴とするエレベータ制御方法
【請求項6】
予め注意箇所として設定された、エレベータの制御装置内の電源部を含む監視エリアを撮影する監視カメラ装置と、前記エレベータの昇降路内に設置された警報装置とに接続されたエレベータ制御装置が、
前記監視カメラ装置で撮影された撮像情報を解析することで前記監視エリア内にいる作業員を検出し、検出した作業員と前記注意箇所との距離を算出し、
前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が予め設定された第1閾値以下である判定すると、警報情報を生成して前記警報装置から出力させ、
前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下になった判定すると、前記電源部からの電力供給を遮断させるかまたは電源投入を制限する
ことを特徴とするエレベータ制御方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステム、およびこれに利用するエレベータ制御装置、エレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータが設置された建物において、エレベータの工事や調整、保守点検などを行う際に、作業員がエレベータの昇降路内で作業を行うことがある。
【0003】
エレベータの昇降路は、乗りかごや釣り合い錘が昇降することにより、壁面、床、または天井との間が部分的に非常に狭くなるため、作業の際には、このような箇所に挟まれたり接触したりしないように注意を払う必要がある。
【0004】
また、昇降路内に設置されているエレベータ制御装置にはエレベータ内に電力を供給するための電源装置が備えられているが、作業の際は感電防止のため、エレベータ制御装置に近づかないように注意を払う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−196428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような箇所について、通常、作業員は知識や経験により、または他の作業員からの注意喚起により、近づかないように注視をして作業を行っているが、作業中にエレベータ内の機器を誤操作する場合や、他の作業員からは死角になっている位置で作業する場合も考慮し、作業員の安全性を向上させることが望まれていた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、エレベータの昇降路で作業する作業員の安全を確保するための支援を行うエレベータシステム、およびこれに利用するエレベータ制御装置、エレベータ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータシステムは、監視カメラ装置と解析装置と制御装置と警報装置とを備える。監視カメラ装置は、予め注意箇所として設定された、エレベータの巻上げ機におけるロープの巻き込み開始点、または昇降路内において乗りかごまたはカウンタウェイトが最下位置に移動したときの当該乗りかごまたはカウンタウェイトの底部が到達する位置を含む監視エリアを撮影する。解析装置は、前記監視カメラ装置で撮影された撮像情報を解析することで前記監視エリア内にいる作業員を検出し、検出した作業員と前記注意箇所との距離を算出する。制御装置は、前記解析装置で算出された、前記検出された作業員と前記注意箇所との距離が予め設定された第1閾値以下であるときに警報情報を生成し、第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるときに、エレベータの巻上げ機を停止させた状態を維持する。警報装置は、前記昇降路内に設置され、前記制御装置で生成された警報情報を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態によるエレベータシステムの構成を示す全体図。
図2】第1実施形態によるエレベータシステムの構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態によるエレベータシステムの動作を示すフローチャート。
図4】第2実施形態によるエレベータシステムの構成を示す全体図。
図5】第2実施形態によるエレベータシステムの構成を示すブロック図。
図6】第2実施形態によるエレベータシステムの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《第1実施形態》
〈第1実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の第1実施形態によるエレベータシステムの構成について、図1および図2を参照して説明する。
【0011】
本実施形態によるエレベータシステム1aは、エレベータ20を管理するシステムであり、エレベータ20の昇降路21内に設置された監視カメラ装置11−1、11−2、11−3と、映像解析装置12と、警報装置13−1、13−2とを備える。
【0012】
監視カメラ装置11−1、11−2、11−3は、昇降路21内の壁面または天井に設置され、予め設定された、作業員が注意すべき注意箇所を含む監視エリアを撮影する。
【0013】
本実施形態において注意箇所は、エレベータ20の巻上げ機22のシーブ22aにおけるロープ23の巻き込み開始点である位置A1、昇降路21内において乗りかご24またはカウンタウェイト25が最下位置に移動したときに当該乗りかご24またはカウンタウェイト25の底部が到達する位置B1である。位置A1は、巻上げ機22が稼動しているときに作業員が近づくと、巻上げ機22のシーブ22aとロープ23との間に手足等が挟まれる恐れがあることから注意箇所としている。また位置B1は、乗りかご24やカウンタウェイト25が最下位置に降下したときに昇降路21下部のピットに作業員がいると、乗りかご24やカウンタウェイト25が作業員に接触する恐れがあるために注意箇所としている。
【0014】
また、監視カメラ装置11−1は位置A1を含む監視エリアAを撮影するように設置され、監視カメラ装置11−2、11−3は位置B1を含む監視エリアBを撮影するように設置されている。
【0015】
映像解析装置12は、映像情報受信部121と、解析部122と、距離算出部123とを有する。
【0016】
映像情報受信部121は、監視カメラ装置11−1〜11−3で撮像された映像情報を受信する。
【0017】
解析部122は、受信された映像情報を解析することで、監視エリアA、B内にいる作業員を検出する。
【0018】
距離算出部123は、解析部122において検出された作業員と、該当する監視エリアの注意箇所との距離を算出する。
【0019】
警報装置13−1、13−2は、エレベータ20から送信された警報情報を出力する。警報装置13−1は監視カメラ装置11−1や監視エリアAの近くに設置され、注意箇所A1に関する警報情報を出力する。また、警報装置13−2は監視カメラ装置11−2、11−3や監視エリアBの近くに設置され、注意箇所B1に関する警報情報を出力する。
【0020】
エレベータ20は、昇降路21内の巻上げ機22のシーブ22aに掛け渡されたロープ23の一端に乗りかご24が吊り下げられ、ロープ23の他端にはカウンタウェイト25が吊り下げられて構成されている。
【0021】
また昇降路21には、エレベータシステム1a内の機器の動作を制御するエレベータ制御装置26aが設置されている。
【0022】
エレベータ制御装置26aは、図2に示すように、第1判定部261と、出力制御部262と、第2判定部263と、運転制御部264とを有する。
【0023】
第1判定部261は、映像解析装置12で算出された、検出された作業員と該当する監視エリアの注意箇所との距離が予め設定された第1閾値以下であるか否かを判定する。
【0024】
出力制御部262は、第1判定部261において、検出された作業員と該当する監視エリアA1の注意箇所との距離が第1閾値以下であると判定されたときに、当該作業員に注意喚起するための警報情報を生成して警報装置13−1に送信する。また、検出された作業員と該当する監視エリアB1の注意箇所との距離が第1閾値以下であると判定されたときに、当該作業員に注意喚起するための警報情報を生成して警報装置13−2に送信する。
【0025】
第2判定部263は、第1判定部261で作業員との距離が第1閾値以下であると判定された注意箇所に関し、当該距離が、第1閾値よりも小さい第2閾値以下になったか否かを判定する。
【0026】
運転制御部264は、第2判定部263において、検出された作業員と該当する注意箇所との距離が第2閾値以下であると判定されたときに、巻上げ機22の運転を停止させた状態を維持する。
【0027】
〈第1実施形態によるエレベータシステムの動作〉
本実施形態におけるエレベータシステム1aの動作について説明する。一例として、昇降路21内において、作業員Xが乗りかご24の天井の上で作業を行っており、作業員Yがピット内で作業を行っている場合を例に説明する。
【0028】
本実施形態において、監視カメラ装置11−1では注意箇所A1を含む監視エリアAが撮影され、監視カメラ装置11−2および11−3では注意箇所B1を含む監視エリアBが撮影される。監視カメラ装置11−1〜11−3で撮影された映像情報は、映像解析装置12に逐次送信される。
【0029】
監視カメラ装置11−1〜11−3で撮影された映像情報を用いて、映像解析装置12およびエレベータ制御装置26aで実行される処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
監視カメラ装置11−1〜11−3から送信された映像情報は、映像解析装置12の映像情報受信部121で受信される。受信された映像情報は、所定時間間隔で解析部122において解析処理が施され、監視エリアA、B内にいる作業員が検出される(S1)。この解析処理では既知の映像解析処理技術が用いられ、予め作業員を検出するためにデータベースに格納された情報(例えば肌の色や作業着の色、大きさ、形状等)が用いられて、映像情報内の移動物体が作業員であるかが判定される。
【0031】
解析処理により、映像情報内に作業員に該当する被写体が検出されると(S2の「YES」)、当該映像情報から、検出された作業員と該当する監視エリアの注意箇所との距離が算出される。この作業員と注意箇所との距離の算出は、検出された作業員に該当する画像上の位置と、注意箇所として予め設定された画像上の位置との最短距離から算出される。
【0032】
ここでは、監視カメラ装置11−1で撮影された映像情報から、検出された作業員Xと該当する監視エリアAの注意箇所A1との距離が算出され、監視カメラ装置11−2および11−3で撮影された映像情報から、検出された作業員Yと該当する監視エリアBの注意箇所B1との距離が算出される。
【0033】
検出された作業員Xと該当する監視エリアAの注意箇所A1との距離、および検出された作業員Yと該当する監視エリアBの注意箇所B1との距離に関する情報は、エレベータ制御装置26aに送信される(S3)。
【0034】
エレベータ制御装置26aでは映像解析装置12から送信された情報が受信され(S4)、第1判定部261において、作業員Xと注意箇所A1との距離、および作業員Yと注意箇所B1との距離がそれぞれ、予め設定された第1閾値以下であるか否かが判定される(S5)。この第1閾値は、注意箇所が近いことを当該作業員に注意喚起が必要であるか否かを判定するために設定された値である。
【0035】
作業員との距離が第1閾値以下となる注意箇所があった場合(S5の「YES」)には、当該作業員に注意喚起するための警報情報が出力制御部262で生成され、対応する警報装置に送信される(S6)。
【0036】
具体的には、作業員Xと注意箇所A1との距離が第1閾値以下であると判定された場合は、出力制御部262で生成された警報情報が警報装置13−1に送信され、作業員Yと注意箇所B1との距離が第1閾値以下であると判定されたが場合は、出力制御部262で生成された警報情報が警報装置13−2に送信される。
【0037】
各警報装置13−1、13−2では、エレベータ制御装置26aから警報情報が受信されると出力され、作業員に注意喚起するための情報が報知される。
【0038】
次に、第1判定部261で作業員との距離が第1閾値以下であると判定された注意箇所に関し、第2判定部263において、当該作業員と注意箇所との距離が、第1閾値よりも小さい第2閾値以下になったか否かが判定される(S7)。この第2閾値は、当該作業員の、注意箇所に対する接近限界を示す値である。
【0039】
当該作業員と注意箇所との距離が第2閾値以下になった場合(S7の「YES」)は、運転制御部264により、巻上げ機22が動作中であるか否かが判定される(S8)。
【0040】
ここで、巻上げ機22が動作中であるときには(S8の「YES」)、巻上げ機22の運転が停止される(S9)。また、動作中でないときには(S8の「NO」)、巻上げ機22の動作を制限する設定が行われる(S10)。巻上げ機22の動作を制限する設定とは具体的には、当該作業員と注意箇所との距離が第2閾値以下である間はエレベータ20で呼びが発生しても巻上げ機22を動作させないように停止状態を維持する設定である。
【0041】
以上の第1実施形態によれば、エレベータの昇降路内で作業を行っている作業員が接触注意箇所に近づいたことを検知したときに当該作業員に注意喚起を行い、作業員がさらに当該注意箇所に接近して接近限界を超えたときに、巻上げ機を停止させた状態を維持することができる。
【0042】
このように処理を行うことにより、作業中にエレベータ内の機器を誤操作した場合や、他の作業員からは死角となっている位置で作業している場合にエレベータが不意に稼動したときにも作業員に注意喚起をすることができ、作業員の安全を確保することができる。
【0043】
このとき、作業員が注意箇所に近づいたか否かについて、監視エリア内を撮影した映像情報を詳細に解析して判断しているため、風で飛んできた葉やゴミなどの物体やネズミなどの小動物等の移動物が注意箇所に近づいたときに、これらを作業員と誤認識して警報装置で誤報を行ったり、不必要にエレベータを停止させたりする事態を回避することができる。また、監視エリアにいる作業員が検出されても、注意箇所から所定以上の距離が離れていると判断された場合には報知情報の出力やエレベータの停止処理は行なわず監視を継続することで、作業員の作業効率を低下させることなく、安全を確保することができる。
【0044】
《第2実施形態》
〈第2実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の第2実施形態によるエレベータシステムの構成について、図4および図5を参照して説明する。
【0045】
本実施形態によるエレベータシステム1bの構成は、エレベータ20のエレベータ制御装置26bが電源部265および電源遮断回路266を有する他は、第1実施形態において説明したエレベータシステム1aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分に関する詳細な説明は省略する。
【0046】
本実施形態において、監視カメラ装置11−1が撮影する監視エリアAには、注意箇所として、エレベータ20のエレベータ制御装置26b内の電源部265が設置された位置A2が含まれている。この位置A2は、接触すると感電の恐れがあることから注意箇所としている。
【0047】
また本実施形態においてエレベータ制御装置26bの運転制御部264は、第2判定部263において検出された作業員と該当する注意箇所A2との距離が第2閾値以下であると判定されたときに、電源遮断回路266により、エレベータ制御装置26b内の電源部265からエレベータ20内への電力供給を遮断させるかまたは電源投入を制限する設定を行う。
【0048】
〈第2実施形態によるエレベータシステムの動作〉
本実施形態におけるエレベータシステム1bの動作について説明する。本実施形態において、監視カメラ装置11−1では注意箇所A2を含む監視エリアAが撮影される。監視カメラ装置11−1で撮影された映像情報は、映像解析装置12に逐次送信される。
【0049】
監視カメラ装置11−1〜11−3で撮影された映像情報を用いて、映像解析装置12およびエレベータ制御装置26bで実行される処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0050】
図5において、ステップS11〜S17で実行される処理は、第1実施形態において説明したステップS1〜S7の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
本実施形態においてステップS17で、第1判定部261で作業員との距離が第1閾値以下であると判定された注意箇所に関し、第2判定部263において、当該作業員と注意箇所との距離が、第1閾値よりも小さい第2閾値以下になった場合(S17の「YES」)は、運転制御部264により、エレベータ20内へ電力を供給する電源部265が通電中であるか否かが判定される(S18)。
【0052】
ここで、当該電源が通電中であるときには(S18の「YES」)、電源遮断回路266により電力供給が遮断される(S19)。また、通電中でないときには(S18の「NO」)、当該作業員と注意箇所との距離が第2閾値以下である間は電源部265で電源が投入されないように設定される(S20)。
【0053】
以上の第2実施形態によれば、エレベータの昇降路内で作業を行っている作業員が感電注意箇所に近づいたことを検知したときに当該作業員に注意喚起を行い、作業員がさらに当該注意箇所に接近して接近限界を超えたときに、電力供給を遮断させるかまたは電源投入を制限することで、作業員の安全を確保することができる。
【0054】
上述した第1実施形態および第2実施形態においては、注意箇所が近いことを当該作業員に注意喚起が必要であるか否かを判定するための「第1閾値」が一定の場合について説明したが、注意箇所ごとや、注意箇所の注意の度合いごとに異なる値を設定し、さらに精度の高い制御を行うようにしてもよい。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1a、1b…エレベータシステム
11−1〜11−3…監視カメラ装置
12…映像解析装置
13−1、13−2…警報装置
20…エレベータ
21…昇降路
22…巻上げ機
22a…シーブ
23…ロープ
24…乗りかご
25…カウンタウェイト
26a、26b…エレベータ制御装置
121…映像情報受信部
122…解析部
123…距離算出部
261…第1判定部
262…出力制御部
263…第2判定部
264…運転制御部
265…電源部
266…電源遮断回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6