(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743349
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】エレベータ用パネル
(51)【国際特許分類】
B66B 11/02 20060101AFI20150611BHJP
B66B 13/30 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
B66B11/02 G
B66B13/30 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-204351(P2013-204351)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-67429(P2015-67429A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2013年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隼人
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−167639(JP,A)
【文献】
実開平05−044974(JP,U)
【文献】
欧州特許出願公開第02239224(EP,A1)
【文献】
特開2007−153500(JP,A)
【文献】
発明協会公開技報公技番号89−8880
【文献】
特開2012−188033(JP,A)
【文献】
特開2000−318525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/02
B66B 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状パネルの端縁部を、そのパネル面に対して直角を成す側面部、この側面部に対して直角を成し前記パネル面と平行な背面縁部からなる横断面をコ字形に形成したパネル本体と、
このパネル本体の裏面に一体的に設けられる補強材と、
前記補強材の長さ方向と交差する方向に沿い、かつ前記パネル裏面と接合して配置され、両端部が前記パネル本体の前記背面縁部上に一体的に取り付けられる支持部材とを備え、
前記補強材は、前記パネル面の裏面に、弾性を有し、部品加工誤差を吸収できる両面テープにより固着され、その一端は前記支持部材上に締結され、他端は前記パネル本体の前記背面縁部上に一体的に取り付けられ、
前記背面縁部の、前記補強材の端部及び前記支持部材の端部が取り付けられる接合部は、この補強材及び支持部材の端部の、前記パネル本体の裏面からの高さとほぼ一致する深さにエンボス加工されている
ことを特徴とするエレベータ用パネル。
【請求項2】
平板状パネルの端縁部を、そのパネル面に対して直角を成す側面部、この側面部に対して直角を成し前記パネル面と平行な背面縁部からなる横断面をコ字形に形成したパネル本体と、
このパネル本体の裏面に一体的に設けられる補強材とを備え、
この補強材は、前記パネル面の裏面に、弾性を有し、部品加工誤差を吸収できる両面テープにより固着され、その両端部は、前記背面縁部上に一体的に取り付けられており、
前記背面縁部の、前記補強材の両端部が取り付けられる接合部は、この補強材の端部の、前記パネル本体の裏面からの高さとほぼ一致する深さにエンボス加工されている
ことを特徴とするエレベータ用パネル。
【請求項3】
平板状パネルの端縁部を、そのパネル面に対して直角を成す側面部、この側面部に対して直角を成し前記パネル面と平行な背面縁部からなる横断面をコ字形に形成したパネル本体と、
このパネル本体の裏面に一体的に設けられる補強材と、
前記補強材の長さ方向と交差する方向に沿い、かつ前記パネル裏面と接合して配置され、両端部が前記パネル本体の前記背面縁部上に一体的に取り付けられ、複数本、互いに間隔を保ってほぼ平行に配置されている支持部材とを備え、
前記補強材は、前記パネル面の裏面に、弾性を有し、部品加工誤差を吸収できる両面テープにより固着され、その両端部はそれぞれ前記支持部材上に締結され、前記背面縁部の、前記支持部材の端部が取り付けられる接合部は、この支持部材の端部の、前記パネル本体の裏面からの高さとほぼ一致する深さにエンボス加工されている
ことを特徴とするエレベータ用パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ乗りかごの内壁や、乗降口のドアなどに用いられるエレベータ用パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ乗りかごの内壁や、乗降口のドアなどには、金属材によるパネルが用いられている。このエレベータ用のパネルは、パネル本体と、このパネル本体の裏面に一体的に設けられる補強材とで構成される。パネル本体は、平板状のパネル面の端縁部を、パネル面に対して直角を成す側面部、この側面部に対して直角を成し前記パネル面の裏面と平行な背面縁部からなる横断面にコ字形に形成している。このようなエレベータ用パネルの製造に関しては、補強材の取り付けに関する特許提案がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述したパネルは、エレベータの仕様により各種の厚さのものが用いられる。パネルの厚さとは、パネル本体の表面から背面縁部表面までの側面部の寸法を言う。補強材は、横断面がコ字形の部分を有する長尺状のもので、コ字形の横断面を形成する二脚の端部がパネル本体の裏面と接し、この二脚間の底辺部の長尺方向両端部に形成した取り付け部を、前述したパネル本体の背面縁部上に接合させ、この接合部間をリベットにより締結することで、パネル本体の裏面に一体的に取り付けている。
【0004】
このような構造であるため、パネルの厚さがが異なると、このパネルの厚さに対応した形状の補強材を用意しなければならない。すなわち、厚さが大きいパネルの場合、厚さが小さいパネル用の補強材を用いようとしても、コ字形の横断面を形成する二脚の端部がパネル本体の裏面と接した状態では、この二脚の底辺部までの長さが足りないため、底辺部の長尺方向両端部に形成した取り付け部を、パネル本体の背面縁部上に接合させることができない。
【0005】
このため、パネルの厚さの種類分、対応する形状の補強材を用意しなければならず、部品を共通化できなかった。
【0006】
また、補強材をパネル本体裏面に接合する場合、これまでは接着剤を用いて接着していた。しかし、接着剤は乾くまでに時間がかかるので、製造工程上多くの時間を要する問題があった。特に、最近は組み立て機械による自動組み付けが行われる場合が多いが、乾くまでに時間を要する接着剤の使用は、自動組み付けには適さなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2013/076838公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来のエレベータ用パネルの構造では、厚さが異なるパネルに対して、このパネルの厚さに対応した補強材をそれぞれ用意しなければならず、部品の共用化が難しかった。また製造工程中に時間を要する工程が含まれ、製造時間の短縮化が困難であった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、部品の共用化が可能で、製造時間の短縮化も可能となるエレベータ用パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態に係るエレベータ用パネルは、平板状パネルの端縁部を、そのパネル面に対して直角を成す側面部、この側面部に対して直角を成し前記パネル面と平行な背面縁部からなる横断面
をコ字形に形成したパネル本体と、このパネル本体の裏面に一体的に設けられる補強材と、
前記補強材の長さ方向と交差する方向に沿い、かつ前記パネル裏面と接合して配置され、両端部が前記パネル本体の前記背面縁部上に一体的に取り付けられる支持部材とを備え、前記補強材は、前記パネル面の裏面に、弾性を有し、部品加工誤差を吸収できる両面テープにより固着され、その一端は前記支持部材上に締結され、他端は前記パネル本体の前記背面縁部上に一体的に取り付けられ、前記背面縁部の、前記補強材の端部及び前記支持部材の端部が取り付けられる接合部は、この補強材及び支持部材の端部の、前記パネル本体の裏面からの高さとほぼ一致する深さにエンボス加工されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエレベータ用パネルを裏面側から示す斜視図である。
【
図4】
図3のA−A矢視図に相当する補強材の締結部を示す図である。
【
図5】厚さ寸法の大きなエレベータ用パネルについて、
図4で示した部分に対応する部分を示す図である。
【
図6】
図4で示した補強材の締結部分の斜視図である。
【
図7】
図2で示したパネル本体の背面縁部同士の締結部を示す斜視図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係るエレベータ用パネルを裏面側から示す斜視図である。
【
図9】本発明のさらに他の実施形態に係るエレベータ用パネルを裏面側から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1はエレベータの乗りかごの内壁や、乗降口のドアなどに用いられパネルを裏面側から示しており、
図2はその上部、
図3はその下部を拡大して示している。
図1で示すエレベータ用のパネルは、乗降口のドア用のもので、パネル本体11と、このパネル本体11の裏面に一体的に設けられる補強材12及び補強材を兼ねる支持部材13とで構成される。パネル本体11は、平板状のパネル面の端縁部を、
図4及び
図5で示すように、横断面がコ字形となるように形成している。すなわち、パネル面に対して直角を成す側面部11a、及びこの側面部11aに対して直角を成しパネル面と平行な背面縁部11bにより、断面コ字形に形成している。なお、
図4で示すパネル本体11の、横断面コ字形の端縁部外面には、意匠上の観点から目地15を一体的に取り付けている。
【0014】
補強材12は、縦方向に設けられその下端部は支持部材13上に取り付けられている。支持部材13は、パネル本体11の下部に幅方向に沿って設けられている。
【0015】
支持部材13は、横断面がコ字形の部分を有する長尺状のもので、前述のように補強材12の長さ方向と交差する幅方向に沿い、かつパネル本体11の裏面と接合して配置されている。そして、その両端部は、この両端部に形成された取り付け部13aを介して、パネル本体11の前述した背面縁部11bに一体的に取り付けられる。また、コ字形の横断面を形成する二脚13bの端部は、
図3で示すように、前述のようにパネル本体11の裏面と接している。また、この二脚13b間の底辺部13cの長尺方向両端部には、前述した取り付け部13aが形成されている。すなわち、この取り付け部13aは、
図4及び
図6で示すように、パネル本体11の背面縁部11bに形成された接合部11c上に接合され、これらの接合部間は、リベット14により一体的に結合される。
【0016】
ここで、このエレベータ用パネルは、前述のように、エレベータの仕様により各種の厚さのものがある。例えば、
図4で示したパネル本体11の厚さはt1であるとする。これに対して
図5で示すパネル本体11の厚さは、より大きなt2とする。このような場合(t1<t2)、大きな厚さt2を有する
図5のパネル本体11に、
図4で示した小さな厚さt1のパネル本体11用の支持部材13を取り付けようとしても、
図5で示す背面縁部11cの高さが
図4で示す背面縁部11cの高さより高いため、従来の構造では、取り付け部13aを、
図5のパネル本体11の背面縁部11c上に接合させることができなかった。
【0017】
しかし、この実施の形態では、
図5で示す大きな厚さt2のパネル本体11の背面縁部11bの、支持部材13の取り付け部13aが取り付けられる接合部11cを、この取り付け部13aの高さ位置とほぼ一致する深さにエンボス加工する。すなわち、接合部11cの深さを、この接合部11cの上面が、小さな厚さt1のパネル部材11用の支持部材13の取り付け部13a下面の高さ位置とほぼ一致するようにエンボス加工する。
【0018】
このように構成することにより、
図4で示した、パネル本体11の厚さt1が比較的小さなパネル用の支持部材13を、
図5で示すように、パネル本体の厚さt2が大きなパネル本体11に対する支持部材13としても用いることが可能となる。すなわち、1種類の支持部材13を用意しておけば、厚さの異なるパネル本体11に対しても、接合部11cの高さを、取り付け部12Aa高さ位置に合せてエンボス加工することで適用可能となり、部品の共用化が図れる。
【0019】
一方、補強材12も、横断面がコ字形の部分を有する長尺状のもので、コ字形の横断面を形成する二脚12b間の底面部12cの長尺方向両端部には取り付け部12aが形成されている。また、この補強材12のコ字形の横断面を形成する二脚12bの端部は、さらに直角に折曲され、図示のように、パネル本体11の裏面との接合部12dとなる。この接合部12dとパネル本体11の裏面との間には
図4、
図5で示すように、両面テープ15が介在しており、これら両者を接着する。
【0020】
なお、この両面テープ15として、弾性を有するものを使用すると、その弾性により、部品加工誤差を吸収することができる。
【0021】
図示縦方向に設けられる補強材12の長尺方向両端部には、前述のように取り付け部12aが形成されており、その一方(図示下端)は、
図3で示すように、前述した支持部材13上にリベット14で一体的に締結されている。また、他方(図示上端)は、
図2で示すように、パネル本体11の上辺部に形成された断面コ字形を構成する背面縁部11bの接合部11c上にリベット14で結合する。
【0022】
この縦方向に設けられる補強材12についても1種類の形状の補強材12を用意しておけば、厚さの異なるパネル本体11に対して共用化することができる。すなわち、図示下端の取り付け部12aが取り付けられる相手は支持部材13の底面部13c上であり、パネル本体11の厚さにかかわらず一定の取り付け高さ位置となる。また、図示上端の取り付け部12aはパネル本体11の上辺の背面縁部11bに形成された接合部11cであるため、そのエンボス加工深さを調節することにより、常に一定の取り付け高さ位置となる。このため1種類の形状の補強材12を厚さの異なるパネル本体11に適用でき、共用化がはかれる。
【0023】
なお、パネル本体11の構造上、その端縁部である側辺部と上辺部に形成される断面コ字形部分の奥行き寸法が異ることがある。この場合、
図2及び
図7で示すように、それらの背面縁部11b間に隙間が生じる。従来はこの隙間にスペーサを挿入して状態で両者をリベット止していた。本実施の形態では、スペーサを用いずに、図示のように一方(側辺部)の背面縁部11bの締結部分(図示上端部分)を、エンボス加工することで両者を密着させ、リベットで締結している。このようにすればスペーサを省くことができ。部品点数を少なくすることができる。
【0024】
上記実施の形態では補強材12の上端部をパネル本体11の背面縁部11bに形成した接合面11cに取り付け、下端部を支持部材13の底面部13c状に取り付けているが、本発明はこのような構造に限定されるものではない。例えば、
図8で示すように、パネル本体11側の部材である支持部材13を用いずに、補強材12の下端部を、パネル本体11の部材である下辺の背面縁部11bに形成した接合部11c取り付けてもよい。或いは、
図9で示すように、支持部材13を、複数本、互いに間隔を保ってほぼ平行に配置し、補強材12の両端部を、それぞれ支持部材13上に締結するように構成してもよい。
【0025】
さらに、支持部材13の、パネル本体11法面との接合部に両面テープを介在させるように構成してもよい。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
11・・・パネル本体
11a・・・側面部
11b・・・背面縁部
12・・・補強材
12A・・・第1の部材
12B・・・第2の部材
15・・・両面テープ