(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、異なる物件(建物)の間で、複数の部材の形状および性能が同一となる場合がある。このような場合、物件毎に個別に工場に発注すると、同一形状で同一性能であるにもかかわらず、別個の工程で切断加工することとなり、建物を構成する構造部材の製作コストが高くなる。
【0005】
本発明は、建物を構成する部材の製作コストを低減できる建物部材管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の建物部材管理システム(例えば、後述の建物部材管理システム1)は、既存建物を構成する部材のうち使用頻度の高いものを抽出して、共通部材(例えば、後述の共通部材70A〜70E)として記憶しておく記憶手段(例えば、後述の記憶装置6)と、新築建物(例えば、後述の新築建物20)を構成する部材(例えば、後述の構造部材41〜44、51〜54、61〜66)の加工形状、性能、および本数を求める部材算定手段(例えば、後述の部材算定手段10)と、当該新築建物を構成する部材のうち、加工形状および性能が同一でかつ所定数量以上のもの(例えば、後述の構造部材80D)を抽出する登録対象部材抽出手段(例えば、後述の登録対象部材抽出手段12)と、当該抽出した部材を、既に記憶した共通部材に加えて前記記憶手段に記憶する登録手段(例えば、後述の登録手段13)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項
1に記載の建物部材管理システムは、当該新築建物を構成する部材のうち、前記記憶手段で既に記憶した共通部材と形状および性能が同一であるものを抽出し、当該新築建物に割り当てる共通部材抽出手段(例えば、後述の共通部材割り当て手段11)をさらに備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、形状とは、例えば、端部や中間部の形状、断面形状、および長さなどを意味し、性能とは、例えば構造耐力を意味する。
【0009】
この発明によれば、使用頻度の高い部材を共通部材として記憶手段に記憶しておき、この記憶した共通部材は、まとめて大量に製作し、その他の部材つまり一般部材は、個別に加工図に従って個別に製作する。共通部材は、多くの物件で用いられる形状であるので、大量に製作しておいても、無駄になることはない。
共通部材をまとめて大量に製作してストックしておくことにより、共通部材の製作コストを一般部材の製作コストに比べて大幅に下げることができるので、建物を構成する部材の製作コストを低減できる。
【0010】
また、共通部材を製作してストックしておき、一般部材のみを加工図に従って個別に製作すればよいので、建物を構成する部材を、短納期で施工現場に納入できる。
また、形状および性能が同一の部材を共通部材として記憶手段に記憶したので、記憶するデータが重複するのを防止できるから、記憶手段が記憶するデータ量を大幅に削減できる。
【0011】
請求項3に記載の建物部材管理システムは、前記記憶手段は、前記共通部材に、形状および性能に基づく識別番号(例えば、後述の形状識別番号C85〜C89、C120)を付して記憶することを特徴とする。
【0012】
従来では、木造建物においては、建物を構成する各部材は、配置図に従って取り付け位置が定められている。具体的には、各部材には、取り付け位置を識別するための番号(位置識別番号)が付されており、施工現場では、この位置識別番号に基づいて、各部材を配置図に定められた位置に取り付ける。
【0013】
ところで、一つの建物において、形状および性能が同一であるが取付け位置の異なる部材が複数存在する場合がある。特に、大規模な建築現場では、同一形状でかつ同一性能となる部材が大量に存在する。
この場合、所定の位置に部材を取り付けるためには、建築現場に搬入された大量の部材の中から、当該位置の位置識別番号が付された部材を探し出す必要がある。また、工場においても、部材の取付け順序に従って、部材の梱包および出荷を行う必要があり、手間がかかっていた。
【0014】
そこで、本発明によれば、共通部材に、形状および性能に基づく識別番号(形状識別番号)を付した。したがって、形状および性能が同一の部材同士であれば、入れ替えて取り付けることができ、施工現場にて円滑な施工が可能となる。
また、工場においても、部材の取付け順序に従って部材の梱包や出荷を行う必要がなくなるので、効率を向上できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、使用頻度の高い部材を共通部材として記憶手段に記憶しておき、この記憶した共通部材は、まとめて大量に製作しておき、その他の部材つまり一般部材は、加工図に従って個別に製作する。共通部材をまとめて大量に製作してストックしておくことにより、共通部材の製作コストを一般部材の製作コストに比べて大幅に下げることができるので、建物を構成する部材の製作コストを低減できる。また、共通部材を製作してストックしておき、一般部材のみを加工図に従って個別に製作すればよいので、建物を構成する部材を、短納期で施工現場に納入できる。また、形状および性能が同一の部材を共通部材として記憶手段に記憶したので、記憶するデータが重複するのを防止できるから、記憶手段が記憶するデータ量を大幅に削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る建物部材管理システム1の構成を示すブロック図である。
建物部材管理システム1は、木造建物構成する構成部材を管理して、この木造建物の施工を支援するものである。具体的には、この建物部材管理システム1は、木造建物である新築建物20(
図4参照)を構成する構造部材を、使用頻度の高い共通部材と、使用頻度の低い一般部材と、に分けてリスト化する。
【0018】
ここでは、建物部材管理システム1の施工対象となる新築建物20は、複数本の長尺状の構造部材を接合金物で接合した木造軸組構造であり(
図4参照)、各構造部材には、ひき板を複数積層して構成された構造用集成材等が用いられる。
【0019】
建物部材管理システム1は、入力装置2、表示装置3、出力装置4、演算処理装置5、および記憶手段としての記憶装置6を備える。
【0020】
入力装置2は、演算処理装置5に情報を入力する装置であり、キーボードやマウスのほか、タッチパネルなどがある。
表示装置3は、入力装置2で入力された情報や演算処理装置5から出力された情報を表示する装置であり、例えばモニタである。
出力装置4は、出力された情報を紙媒体等で出力する装置であり、例えばプリンタである。
【0021】
記憶装置6は、種々の情報を記憶する装置であり、例えばハードディスクである。
この記憶装置6は、施工済の既存建物を構成する構造部材のうち使用頻度の高いものを抽出して、共通部材として記憶している。
【0022】
演算処理装置5は、コンピュータであり、記憶装置6に記憶されたプログラムを読み出して、動作制御を行うOS(Operating System)上に展開して実行するものである。
この演算処理装置5は、部材算定手段10、共通部材割り当て手段11、登録対象部材抽出手段12、登録手段13、およびリスト生成手段14を備える。
【0023】
部材算定手段10は、新築建物20の設計図に基づいて構造計算を行い、この新築建物20を構成する構造部材の加工形状、性能、および本数を算定する。
共通部材割り当て手段11は、新築建物20を構成する構造部材のうち、記憶装置6で既に記憶した共通部材と形状および性能が同一であるものを抽出し、この抽出した構造部材に共通部材を割り当てる。
【0024】
登録対象部材抽出手段12は、新築建物20を構成する構造部材から、共通部材割り当て手段11により共通部材を割り当てたものを除いた残りのうち、加工形状および性能が同一でかつ所定数量以上のものを抽出する。
登録手段13は、抽出した構造部材を、既に記憶した共通部材に加えて、記憶装置6に記憶する。
【0025】
リスト生成手段14は、新築建物20を構成する構造部材のうち、共通部材を用いるものをリスト化して、共通部材使用リスト90を生成する(
図8参照)。また、このリスト生成手段14は、構造部材から共通部材を除いた残りを一般部材としてリスト化して、一般部材使用リスト91を生成する(
図9参照)。
【0026】
以下、建物部材管理システム1により、新築建物20の構造部材を製作する手順について、
図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0027】
まず、ステップS1では、施工済の既存建物を構成する構造部材のうち使用頻度の高いものを抽出して、共通部材として記憶装置6に記憶しておく。
具体的には、施工済の建物の構造部材のうち、加工形状および性能が同一でかつ所定数量以上のものを共通部材とし、記憶装置6は、これら共通部材をリスト化したものを、共通部材リスト70として記憶している。
【0028】
図3は、記憶装置6に記憶された共通部材リスト70を示す図である。
各共通部材には、加工形状および性能に基づいて、形状識別番号が付されている。
この共通部材リスト70では、例えば、5つの共通部材70A〜70Eが示されており、形状識別番号「C85」〜「C89」が付されている。
【0029】
ここで、加工形状としては、断面形状、端部形状、中間部形状、長さがある。
断面形状とは、共通部材の矩形状の断面寸法であり、例えば、105mm×105mm、105mm×210mm、120mm×120mm、120mm×300mmなどがある。
端部形状は、他の構造部材に接合するために施す加工である。例えば、接合金物が挿入されるスリットを形成するスリット加工や、接合金物を取り付けるためのドリフトピンが挿通される穴開け加工、ほぞを形成するほぞ加工などがある。
【0030】
中間部形状とは、梁部材に中間柱を設ける場合など、長さ方向の中間部に他の構造部材に接合するために施す加工である。例えば、接合金物を取り付けるためのボルト穴加工や、ほぞが嵌合されるほぞ穴を形成するほぞ穴加工などがある。
【0031】
また、性能としては、集成材等の樹種、種類、および強度性能がある。
種類は、ひき板の積層方法に応じて、同一等級構成、対称構成、特定対称構成、非対称構成などの区分がある。
強度性能は、日本農林規格および建築基準法によって定められており、具体的には、樹種および等級により、圧縮強さ、曲げ強さ、せん断強さの値が定められている。
【0032】
ステップS2では、部材算定手段10が、新築建物20の設計図に基づいて構造計算を行い、この新築建物20を構成する構造部材の加工形状、性能、および本数を算定する。
【0033】
図4は、今回の施工対象となる新築建物20の軸組を示す斜視図である。
この新築建物20の軸組は、基礎30の上に設けられた1階部分40と、この1階部分40の上に設けられた2階部分50と、2階部分50の上に設けられた屋根部分60と、を備える。
1階部分40は、土台41、大引42、通し柱43、および管柱44を備える。
2階部分50は、2階床大梁51、2階床小梁52、キャンチ梁53、および管柱54を備える。
屋根部分60は、小屋梁(桁行方向)61、小屋梁(梁間方向)62、小屋束63、登り梁64、棟木65、母屋66などを備える。
【0034】
部材算定手段10は、以上の構造部材41〜44、51〜54、61〜66について、加工形状、性能、および本数を求めて、これら構造部材をリスト化して候補部材リスト80を生成する。
【0035】
図5は、部材算定手段10により生成された候補部材リスト80を示す図である。
この候補部材リスト80では、例えば、新築建物20に用いられる構造部材80A〜80Dが示されている。
【0036】
ステップS3では、共通部材割り当て手段11が、新築建物20を構成する構造部材のうち、記憶装置6で既に記憶した共通部材と形状および性能が同一であるものを抽出し、この抽出した構造部材に共通部材を割り当てる。
なお、抽出した構造部材に共通部材を割り当てる際、最低限の本数や、土台、大引、柱、梁等の部材区分といった所定の条件を満たす構造部材のみに、共通部材を割り当ててもよい。
【0037】
具体的には、
図6に示すように、共通部材割り当て手段11は、候補部材リスト80の中から、共通部材70B、70Eと形状および性能が同一である構造部材80B、80Cを抽出し、これら構造部材80B、80Cに、共通部材70B、70Eの形状識別番号「C86」、「C89」を付す。
【0038】
ステップS4では、登録対象部材抽出手段12が、新築建物20を構成する構造部材から、共通部材割り当て手段11により共通部材を割り当てたものを除いた残りのうち、加工形状および性能が同一でかつ所定数量以上のものを抽出する。
【0039】
具体的には、
図7に示すように、登録対象部材抽出手段12は、候補部材リスト80の残りの中から、本数が4本以上である構造部材80Dを抽出する。
【0040】
ステップS5では、登録手段13が、抽出した構造部材を、既に記憶した共通部材に加えて、記憶装置6に記憶する。
具体的には、
図7に示すように、抽出した構造部材80Dに、新たな形状識別番号C120を付して、共通部材リスト70に共通部材70Fとして加える。
【0041】
ステップS6Aでは、リスト生成手段14が、構造部材のうち共通部材を使用するものをリスト化して、共通部材使用リスト90を生成する。
具体的には、リスト生成手段14は、
図8に示すように、候補部材リスト80のうち共通部材を用いる構造部材80B〜80Dをリスト化して、共通部材使用リスト90を生成する。
【0042】
ステップS7Aでは、出力装置4により、共通部材使用リスト90およびこの共通部材使用リスト90を構成する各部材の加工データを出力し、この共通部材使用リスト90の部材をまとめて工場に発注する。
ステップS8Aでは、工場にて、共通部材使用リスト90の部材を大量に製作してストックしておき、このストックした在庫から現場に出荷する。
【0043】
ステップS6Bでは、リスト生成手段14が、構造部材のうち共通部材を用いないものを一般部材とし、この一般部材をリスト化して、一般部材使用リスト91を生成する。
具体的には、リスト生成手段14は、
図9に示すように、候補部材リスト80のうち共通部材としない構造部材80Aに取付け位置を示す位置識別番号「1F:い1」および部材区分「柱」を付して、一般部材としてリスト化し、一般部材使用リスト91を生成する。なお、一般部材使用リスト91では、各部材を取付け位置で識別しているので、同一形状であっても異なる部材として取り扱う。
【0044】
ステップS7Bでは、出力装置4により、一般部材使用リスト91およびこの一般部材使用リスト91を構成する各部材の加工データを出力して、この一般部材使用リスト91の部材を個別に工場に発注する。
ステップS8Bでは、工場にて、一般部材使用リスト91の部材を個別に製作して現場に出荷する。
【0045】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)使用頻度の高い部材を共通部材として記憶装置6に記憶しておき、この記憶した共通部材は、まとめて大量に製作し、その他の部材つまり一般部材は、加工図に従って個別に製作する。共通部材は、多くの物件で用いられる形状および性能であるので、大量に製作しておいても、無駄になることはない。
このように共通部材をまとめて大量に製作してストックしておくことにより、共通部材の製作コストを一般部材の製作コストに比べて大幅に下げることができるので、新築建物20を構成する構造部材41〜44、51〜54、61〜66の製作コストを低減できる。
【0046】
(2)共通部材を製作してストックしておき、一般部材のみを加工データに従って個別に製作すればよいので、新築建物20を構成する構造部材41〜44、51〜54、61〜65を、短納期で施工現場に納入できる。
【0047】
(3)形状および性能が同一の部材を共通部材とし、この共通部材をリスト化して記憶装置6に記憶したので、記憶するデータが重複するのを防止できるから、記憶装置6が記憶するデータ量を大幅に削減できる。
【0048】
(4)共通部材に、形状および性能に基づく形状識別番号「C85」〜「C89」、および「C120」を付した。したがって、形状および性能が同一の部材同士であれば、入れ替えて取り付けることができ、施工現場にて円滑な施工が可能となる。
また、工場においても、部材の取付け順序に従って部材の梱包や出荷を行う必要がなくなるので、効率を向上できる。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【解決手段】建物部材管理システム1は、既存建物を構成する部材のうち使用頻度の高いものを抽出して、共通部材として記憶しておく記憶装置6と、新築建物を構成する部材の加工形状、性能、および本数を求める部材算定手段10と、この新築建物を構成する部材のうち、加工形状および性能が同一でかつ所定数量以上のものを抽出する登録対象部材抽出手段12と、この抽出した部材を、既に記憶した共通部材に加えて記憶装置6に記憶する登録手段13と、を備える。