(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、工業用プロセスでプロセス変数を感知するために用いられるタイプのトランスミッタに関する。特に、本発明は、そのようなプロセスの圧力を測定するように構成された圧力トランスミッタに関する。
【0002】
発明の背景
トランスミッタは、工業用プロセスのさまざまなプロセス変数を測定するために、プロセス監視制御システムで用いられる。一つのタイプのトランスミッタは、プロセス内のプロセス流体の圧力を測定する。圧力は、そのまま用いることができ、もしくは、他のプロセス変数、たとえば流量を判定するために用いることができる。流れを測定するために用いられる一つの手法は、プロセス流体内で発生する差圧に基づくものである。差圧と流量との間には、既知の関係がある。しかし、この関係は、差圧のみに依存するものではない。さらなるプロセス変数を測定して、温度とともに、絶対圧力またはライン圧力を含む流量をより正確に判定し得る。ライン圧力を測定するために用いられる一つの手法は、別個のライン圧力センサを有することである。別の手法は、本出願と同一譲受人に譲渡された同時継続出願番号第11/140,681号に記載されている。
【0003】
上述のような、ライン圧力を測定するための代替の方法を有することに加え、他に、ライン圧力を測定することが望ましい状況がある。これらは、一次センサの診断に用いるための、直接圧力測定センサのための、または他のプロセス変数の判定に用いるための、二次的なライン圧力測定を含む。
【0004】
発明の概要
トランスミッタは、工業用プロセスのプロセス変数を測定するように構成され、流体の圧力に結合し、プロセス圧力に関する出力を提供するように構成された圧力センサを含む。音響検出器は、流体から音響信号を受信するように構成される。測定回路は、圧力センサと音響検出器とに結合され、流体の圧力に関する出力を有する。
【0005】
別の構成では、音響信号に基づいてライン圧力を測定するか、または既知の圧力状態下の音響信号を用いて、プロセス流体の温度を判定するライン圧力センサを含むトランスミッタが提供される。
【0006】
詳細な説明
発明の背景の項で述べられたように、圧力センサは、圧力ベースのトランスミッタによるさまざまな工業プロセスおよび監視用途で用いられる。多くの異なる技術を用いて、圧力を測定する。たとえば、可撓性のダイヤフラムに加えられる圧力は、ダイヤフラムと電極との間で測定された静電容量の電荷に基づいて測定することができる。他の測定技術は、たとえば、構成要素の応力または他の特性の測定を用い、これらの特性は加えられた圧力に応じて変化する。
【0007】
本発明は、圧力センサを提供し、これは、圧力下の流体を通して伝わる音響信号の変化に基づいて、加えられた圧力を測定する。音響入力または音響源は流体に結合されて、音響信号が伝送される。音響検出器または受信器は、信号を受信する。受信された信号に基づいて、流体の圧力に関する出力を提供するように、測定回路を構成することができる。
【0008】
本発明は、流体を通る音響信号の速さと、流体の温度および圧力との間の既知の関係を利用する。たとえば、海水中での音の速さは、水の温度、塩分、および圧力に依存することは既知である。
図1は、そのような媒体内における深さ対速さのグラフである。
図1のグラフでは、音響信号の速さは、最初は深さが増加するに従って低下する。これは、水温の低下によるものである。しかし、より深いところで水温が一定になると、深さ(圧力)が増加するに従って、速さが増加し始める。水中では、音の速さは、およそ1400〜1570メートル/秒(4593〜5151フィート/秒)の間におよぶ。これは、およそ1.5キロメートル/秒(1マイル/秒をわずかに下回る)であり、すなわち音が空気中を伝わるよりも、およそ4倍速い。
【0009】
さらに、水等の分散媒では、音の速さは周波数の関数である。このことは、伝播している音響外乱が継続的に変化するのは、各周波数成分がそれぞれ独自の位相速度で伝播するのに対し、外乱エネルギは群速度で伝播するためであることを意味する。一方で、空気は非分散媒であり、音の速さは周波数に依存しない。したがって、空気中では、エネルギ移動の速さと、音の伝播は同じである。
【0010】
図2は、一つの実施形態による圧力センサ10の簡略化された図である。圧力センサ10は、プロセス流体の圧力における流体を包含する圧力包含ストラクチャ12を含む。これは、プロセス流体そのものか、またはプロセス流体と同じ圧力がかけられる分離流体かにしてもよい。音響入力または音響源14は、圧力包含ストラクチャ12に結合され、圧力包含ストラクチャ12内の流体を通して音響信号16を伝送するように構成される。音響検出器または受信器18は音響信号16を受信し、応答的に出力を提供する。音響入力14および音響検出器18は、測定回路20に結合される。測定回路20は、流体の圧力と、音響信号16の変化との間の既知の関係に基づいて、圧力包含ストラクチャ内の流体の圧力を判定する。また、測定回路20に温度信号を提供する、任意の温度センサ22が示されている。測定回路20によってこの温度信号を用いて、流体と圧力包含ストラクチャ12との温度に基づいて、圧力に関する出力24を補償することができる。
【0011】
関連例の構成では、上述の温度、圧力および音響シグネチャ間の関係を、
図2に示す装置によって用いて、圧力包含ストラクチャ12内の流体の温度を判定する。そのような構成では、音響検出器18からの出力は、ストラクチャ12内の流体の温度に関する。ストラクチャ12内の流体の圧力が比較的一定である場合、測定回路20は、流体の温度に関する出力24を提供することができる。別の例の構成では、センサ22は、温度センサではなく、圧力センサを含むことができる。この構成では、測定回路20は、圧力センサ22を用いて感知された圧力に基づいて、温度出力を補償する。
【0012】
図1および2を参照して上述した装置および手法は、工業用の監視およびプロセス制御システムでの多くの用途に役立たせることができる。たとえば、差圧とライン圧力の両方を測定する圧力トランスミッタでは、通常2つの別個の圧力センサが必要とされる。一つの圧力センサが、差圧を測定するように構成されるのに対し、第二の圧力センサは、ライン圧力を測定するために用いられる。これにより正確な測定が提供されるが、高価であり、さらなる構成要素を必要とする。加えて、プロセス流体から圧力センサを分離するために用いられる分離充填流体間に不整合がある可能性があるため、性能もまた低下する可能性がある。この不整合は、プロセス流体に結合された差圧センサの2つの側面間で起こり得る。
図2の構成では、差圧を測定するために用いられるものと同じセンサを用いて、ライン圧力を測定することができる。具体的には、そのような構成では、圧力包含ストラクチャ12は、差圧センサ装置を含む。音響入力14および検出器18は、プロセス流体の圧力におけるシステム内の流体に結合される。たとえば、この流体は、圧力トランスミッタの分離ダイヤフラムと、圧力センサの中央ダイヤフラムとの間に及ぶ分離流体にすることができる。入力14および検出器18は、分離流体を運ぶ配管に結合するか、圧力センサそのものに直接取り付けることができる。
【0013】
別の例の構成では、圧力包含ストラクチャ12は、ラインまたはゲージ圧力センサデバイスの一部である。そのような構成では、音響信号16を用いて、ライン圧力センサの動作を診断することができる。たとえば、ライン圧力センサからの読み取り値を、音響信号16の予想された読み取り値と比較することができる。音響信号16が、予想された信号と同じではない場合、警告を提供して、デバイスが、予想されたとおりに作動しておらず、誤動作しているかもしれないことを示唆する。これは、実際の故障が生じる前に、そのような示唆を提供するように、すなわち、予防保全を考慮するように構成することができる。関連する構成では、測定されたライン圧力とともに音響信号を用いて、流体の温度の推定値を提供する。
【0014】
図3は、本発明を実施するように構成されたプロセス圧力トランスミッタ36を含むプロセス測定システム32の環境を概略的に示す。
図3は、プロセス圧力を測定するためのプロセス測定システム32に結合された、圧力下の流体を包含するプロセス配管30を示す。プロセス測定システム32は、配管30に接続されたインパルス配管34を含む。インパルス配管34は、プロセス圧力トランスミッタ36に接続される。一次エレメント33、たとえばオリフィス板、ベンチュリ管、フローノズル等は、プロセス配管30内のインパルス配管34のパイプの間の位置で、プロセス流体に接触する。一次エレメント33は、流体が一次エレメント33を通るとき、流体に圧力変化を引き起こす。
【0015】
トランスミッタ36は、インパルス配管34を通してプロセス圧力を受けるプロセス測定デバイスである。トランスミッタ36はプロセス差圧を感知し、それを、プロセス圧力の関数である標準化された伝送信号に変換する。
【0016】
プロセスループ38は、制御室40からのトランスミッタ36への電力信号と、双方向通信との両方を提供し、多くのプロセス通信プロトコルに従って構築することができる。図示された例では、プロセスループ38は2線式ループである。2線式ループを用いて、4−20mA信号による通常動作中、トランスミッタ36へのすべての電力と、トランスミッタ36への、およびトランスミッタ36からのすべての通信とを伝送する。モデム44または他のネットワークインターフェイスを通したコンピュータ42または他の情報ハンドリングシステムは、トランスミッタ36との通信に用いられる。リモート電圧電源46は、通常、トランスミッタ36に電力供給する。
【0017】
図4は、実例となる圧力トランスミッタ36の簡略化されたブロック図である。この例では、圧力トランスミッタ36は、データバス66を通して共に結合されたセンサモジュール52および電子基板72を含む。センサモジュール電子機器60は、加えられた差圧54を受ける圧力センサ56に結合される。データ接続58は、アナログ・ディジタル変換器62にセンサ56を結合させる。また、センサモジュールメモリ64とともに、任意の温度センサ63が図示されている。電子基板72は、マイクロコンピュータシステム74、電子メモリモジュール76、ディジタル・アナログ信号変換器78、およびディジタル通信ブロック80を含む。ディジタル・アナログ信号変換回路78は、センサ圧力に関する任意のタイプの出力を提供することができ、たとえば差圧に基づいて判定されたプロセス流体の流量を含む。他のタイプの出力は、プロセス圧力、診断出力、温度出力、または他の示唆を含む。
【0018】
Frickらの米国特許第6,295,875号に示された手法によれば、圧力トランスミッタ36は、差圧を感知する。しかし、本発明は、そのような構成に限定されない。
【0019】
図4は、ソース14に結合された音響源14と、圧力センサ56に結合された音響センサ18とをさらに図示している。ソース14からの音響信号16は、センサ56内の加圧された流体を通って伝わり、センサ18によって受信される。センサ18の出力は、アナログ・ディジタル変換器62に提供される。マイクロコンピュータシステム74は、センサ18からのディジタル化された信号を受信し、上述の手法を用いて、ライン圧力を判定する。
【0020】
図5は、圧力センサ56を示しているセンサモジュール52の、一つの実施形態の簡略化された断面図である。圧力センサ56は、キャビティ92からプロセス流体を分離する分離ダイヤフラム90を通してプロセス流体に結合する。キャビティ92は、インパルス配管94を通して、圧力センサモジュール56に結合する。実質的に非圧縮性の充填流体は、キャビティ92およびインパルス配管94を満たす。プロセス流体からの圧力は、ダイヤフラム90に対して加えられると、圧力センサ56に伝達される。
【0021】
圧力センサ56は、2つの圧力センサ半体114および116から形成され、好ましくは脆性の、実質的に非圧縮性の材料105で満たされる。ダイヤフラム106は、センサ56の内部に形成されたキャビティ132、134内部に架けられる。キャビティ132、134の外壁には、電極146、144、148および150が設けられている。一般的には、これらは、一次電極144および148、ならびに二次的な、すなわち二次電極146および150と呼ばれることがある。これらの電極は、可動ダイヤフラム106に対するコンデンサを形成する。さらに、コンデンサは、一次および二次コンデンサと呼ばれることがある。
【0022】
図5に図示されるように、センサ56のさまざまな電極が、電気接続103、104、108および110を通じて、アナログ・ディジタル変換器62に結合される。さらに、可撓性ダイヤフラム106は、接続109を通して、アナログ・ディジタル変換器62に結合される。米国特許第6,295,875号で述べられたように、センサ56に加えられた差圧は、電極144〜150を用いて測定することができる。
【0023】
図5は、上述の音響センサ18内の音響源14をさらに示している。音響センサ18からアナログ・ディジタル信号変換器62への電気接続170が提供される。音響源14は、独立して動作することができ、またはトランスミッタ内部の回路の制御下で作動することができる。たとえば、
図4のセンサモジュール52または電子基板72内部の回路によって、音響源14を制御することができる。
【0024】
図5に図示されるように、ソース14およびセンサ18の位置取りのために、音響信号16(
図5に図示せず)は、センサ56を横断し、センサキャビティ内で運ばれる充填流体を通して伝わる。この充填流体は加圧されるが、それはインパルス配管94および分離ダイヤフラム90を通したプロセス流体への接続のためである。
【0025】
図4および5は、可撓性ダイヤフラムを用いた差圧センサを図示しているが、本発明は、任意のタイプの圧力センサを用いて実施することができる。上述のように、本発明はまた、スタンドアローンの圧力センサで実施することもできる。加えて、音響信号は、加圧された流体が供給されるシステムの任意の点に結合することができる。たとえば、
図5に図示するように、毛細管94またはキャビティ92に、音響信号を結合することができる。上述のようなライン圧力の判定に加え、音響信号を用いて、高速なプロセスノイズを測定することもでき、これは、たとえば診断で用いることができる。音響信号を、単一の周波数に、変化する周波数に、または複数の周波数にして、測定特性を強化することができる。別の例の構成では、音響信号16は、プロセス自体の中のノイズから直接生成される。そのような構成では、上記で示されたエレメント14は、第二の音響センサを含むことができる。そのような構成では、ノイズ信号のセンサ14および18間の通過時間を用いて、ライン圧力を推測することができる。別の例では、2つのセンサを用いて、2点間のプロセスノイズの分散を測定する。その後、この情報を用いて、ライン圧力を推測することができる。別の例の構成では、
図5に図示されるような付加的な音響センサ200が設けられる。音響センサ200は、ソース14と受信器18との間の或る位置、たとえばキャビティ92の内部に挿入される。この付加的なセンサ200を用いて、モジュール内のプロセスノイズの遅延を検出することができる。たとえば、既存の圧力センサは、より低周波数のプロセスノイズを検出する能力がある。付加的なセンサ200を用いて、モジュール内部のプロセスノイズの遅延を検出することができ、センサ電極144または148によって検出された音響信号と比較することができる。
【0026】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者においては、本発明の本質および範囲から逸脱することなく、形態および細部に変更を加えてもよいことが認識されよう。