(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743385
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】シールラビリンスのための少なくとも1つのアブレイダブルリングを含む、長手方向軸回りの回転体を構成する熱機械的部品
(51)【国際特許分類】
F01D 25/00 20060101AFI20150611BHJP
F16J 15/453 20060101ALI20150611BHJP
F01D 11/02 20060101ALI20150611BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20150611BHJP
F02C 7/28 20060101ALI20150611BHJP
F04D 29/12 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
F01D25/00 M
F16J15/453
F01D25/00 L
F01D11/02
F02C7/00 C
F02C7/28 B
F02C7/28 E
F04D29/12 Z
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2009-103683(P2009-103683)
(22)【出願日】2009年4月22日
(65)【公開番号】特開2009-275700(P2009-275700A)
(43)【公開日】2009年11月26日
【審査請求日】2012年4月13日
(31)【優先権主張番号】0852718
(32)【優先日】2008年4月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】スネクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100140523
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 千尋
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100103920
【弁理士】
【氏名又は名称】大崎 勝真
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(72)【発明者】
【氏名】マテユー・コーシユトウー
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・ガルサン
(72)【発明者】
【氏名】ジヤン−ピエール・ロンバール
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・トリコネ
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−25804(JP,A)
【文献】
特開2002−228013(JP,A)
【文献】
実開平3−7575(JP,U)
【文献】
特開2006−144575(JP,A)
【文献】
特開平11−13699(JP,A)
【文献】
特開平6−248902(JP,A)
【文献】
特開昭59−150903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F01D 11/02
F02C 7/00
F02C 7/28
F04D 29/12
F16J 15/453
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸(X−X’)回りの回転体を形成し、ロータおよびステータアセンブリのロータまたはステータを構成し、ロータおよびステータアセンブリのラビリンスシール(60)のための少なくとも1つのアブレイダブルリング(58、49、58’、49’)を含むターボ機械の熱機械的部品(56、48)であって、アブレイダブルリング(58、49、58’、49’)が、隣接する角度セクタの組間で異なる剛性を呈する角度セクタ(581、582、491、492、581’、582’、491’、492’)からなり、アブレイダブルリング(58、58’)の所与の剛性の角度セクタ(581、582、581’、582’)の数がロータの抑止されるべき振動モードの波数の倍数に等しくないことを特徴とする、熱機械的部品。
【請求項2】
アブレイダブルリング(58、49)の2つの隣接する角度セクタ(581、582、491、492)が、異なるヤング率を有するアブレイダブル材料からなることを特徴とする、請求項1に記載の熱機械的部品(56、48)。
【請求項3】
アブレイダブルリング(58’、49’)の2つの隣接する角度セクタ(581’と582’、491’、492’)が、異なる厚さを有するアブレイダブル材料の層からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱機械的部品(56、48)。
【請求項4】
ターボ機械のロータ部を形成する熱機械的部品(48)であって、アブレイダブルリング(49、49’)が熱機械的部品(48)の外面に配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱機械的部品(48)。
【請求項5】
ターボ機械のステータ部を形成する熱機械的部品(56)であって、アブレイダブルリング(58、58’)が熱機械的部品(56)の内面に配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱機械的部品(56)。
【請求項6】
アブレイダブルリング(58、49、58’、49’)が、第1の剛性と第1の角度セクタ寸法とを有する第1のタイプの要素、および第1の剛性とは異なる第2の剛性と第1の角度セクタ寸法と同じである第2の角度セクタ寸法とを有する第2のタイプの要素を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱機械的部品(56、48)。
【請求項7】
アブレイダブルリング(58、49、58’、49’)が、第1の剛性と第1の角度セクタ寸法とを有する第1のタイプの要素、および第1の剛性とは異なる第2の剛性と第1の角度セクタ寸法とは異なる第2の角度セクタ寸法とを有する第2のタイプの要素を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱機械的部品(56、48)。
【請求項8】
長手方向軸(X−X’)回りの回転体を形成し、隣接する角度セクタの組間で異なる剛性を呈する角度セクタ(581、582、491、492、581’、582’、491’、492’)からなる少なくとも1つのアブレイダブルリング(58、49、58’、49’)を含む第1のターボ機械の熱機械的部品(56、48)を備えるロータおよびステータアセンブリであって、前記第1の熱機械的部品が、ステータおよびロータのうちの1つの部品を形成し、第2の熱機械的部品(56、48)が、ステータおよびロータのうちの他方の部品で、かつ前記アブレイダブルリング(58、58’、49、49’)と協働してラビリンスシールを形成する環状ワイパー(47)を含む回転体を形成する、ロータおよびステータアセンブリ。
【請求項9】
アブレイダブルリング(58、49)の2つの隣接する角度セクタ(581、582、491、492)が、異なるヤング率を有するアブレイダブル材料からなることを特徴とする、請求項8に記載のロータおよびステータアセンブリ。
【請求項10】
アブレイダブルリング(58’、49’)の2つの隣接する角度セクタ(581’、582’、491’、492’)が、異なる厚さのアブレイダブル材料の層からなることを特徴とする、請求項8に記載のロータおよびステータアセンブリ。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の熱機械的部品(56、48)を含む圧縮機。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に記載の熱機械的部品(56、48)を含むタービン。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか一項に記載の熱機械的部品(56、48)を含むターボ機械、特にターボジェット。
【請求項14】
ステータおよびロータのうちの1つに配置されるアブレイダブルリング(58、58’、49、49’)と、ステータおよびロータのうちの他方に配置される環状ワイパー(47)とからなるラビリンスシールを含む、ターボ機械のロータおよびステータアセンブリ内の接触時に現れる不安定を防止する方法であって、隣接する角度セクタの組間で異なる剛性を呈する角度セクタ(581、582、581’、582’、491、492、491’、492’)の形でアブレイダブルリング(58、58’、49、49’)を配置することを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
アブレイダブルリング(58、58’)がステータ(56)に配置されること、かつアブレイダブルリング(58、58’)の同じ剛性を有する角度セクタ(581、582、581’、582’)の数が、ロータ(48)の抑止されるべき振動モードの波数の倍数に等しくないことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールラビリンスのための少なくとも1つのアブレイダブルリングを含む、長手方向軸回りの回転体を構成する熱機械的部品に関する。本発明は、ターボ機械、特に、航空機エンジンの熱機械的部品に関する。
【背景技術】
【0002】
シールラビリンスは、ラビリンスシールとしても知られているが、フィン(またはワイパー)とアブレイダブル材料のライニングまたは高温に耐えることができるハニカム構造で覆われた固定穴とを有する回転部を備える。
【0003】
エンジンがスタートすると、シールのフィンがライニングを軽く擦り、ライニングに食い込み、このために間隔が最小になる。この隙間は、さまざまな周期の間に、部品の膨張や可動部分の自然な可撓性に応じて変わる。
【0004】
ラビリンスワイパーは、異なる圧力の空気を含むエンクロージャ間の空気力学的な封止を行う働きをする。一般に、ラビリンスワイパーは、アブレイダブル材料のライニングの形で覆われたステータ部に対向するロータ部に位置する。ラビリンスワイパーは、主に、連続的で円周方向に区分された環状の「ブレード」で構成され、半径方向の内側または外側に向けられている。
【0005】
特に、ブレードが連続形状の場合、ワイパーは一定の動作形態においてステータと接触しやすい。このような状態で、ワイパーが破損されるのを避けるために、ステータは、界面を形成し「アブレイダブル」として知られている被覆が取り付けられる。このような状況で、ワイパーのアブレイダブルライニングへの通常の連続した進入は、軸方向運動(旋削式加工)に付随して半径方向の切り込みを作ることになる。
【0006】
上述したように、ラビリンスシールワイパーは回転部またはロータ上で形成されるが、ラビリンスシールワイパーが固定部またはステータ上で形成される場合もあることが推測される。この場合、対向するアブレイダブルリングはロータに位置する。
【0007】
ワイパーと対向するアブレイダブルリングとの接触時に、ロータおよびステータにより構成されるシステムを振動の点で不安定にする特定の形態が存在する。
【0008】
図1は、アブレイダブルリングがラビリンスシールに使用され、ワイパーに対向して配置される一実施形態を示す。この実施形態は、燃焼チャンバ106から下流側に位置する高圧タービンを通気する回路に関係する。
【0009】
特に、軸X−X’回りに回転可能なロータホイールを有するタービン108である。
【0010】
タービン108のロータは、ブレード42を取り付けられたタービンディスク40と、ディスク40から上流側に位置するウェブ44とを備える。ディスク40およびウェブ44はそれぞれ、ディスク40用上流フランジ40aおよびウェブ用上流フランジ44aを有し、このことによりディスク40およびウェブ44がタービン108のロータにより駆動される高圧圧縮機の下流側48の下流側端部46に締結されるのを可能にする。
【0011】
冷却回路のこの構成は、3つの連続抽気ラビリンスを有する。
【0012】
第1の抽気ラビリンス60は、チャンバ端壁からウェブ44を分離するエンクロージャ52から上流側、かつ燃焼チャンバ106の内側ケーシング50から高圧圧縮機の下流側コーン48を分離するエンクロージャ54から下流側に形成される。この第1の抽気ラビリンス60は、下流側コーン48および内側ケーシング50に固定されるウェブ56の端部に取り付けられたアブレイダブル材料のリング58上に形成されるワイパー47を備える。
【0013】
第2の抽気ラビリンス62は、エンクロージャ52から下流側のインジェクタ64の下に位置する。この第2の抽気ラビリンス62は、ウェブ44のワイパー44bおよびインジェクタ64に取り付けられたアブレイダブル材料のリング64aからなる。
【0014】
第3の抽気ラビリンス66は、インジェクタ64の上方に位置し、ウェブ44の傾斜部44dに形成された3つの連続ワイパー44cと、内側ケーシング68に取り付けられたアブレイダブルシールリング68aとを備える。
【0015】
以下では、本発明を説明するために、第1の抽気ラビリンス60についてのみ言及するが、この説明は第2の抽気ラビリンス62および/または第3の抽気ラビリンス66についても同様に言えることである。
【0016】
アブレイダブルリング58とワイパー47との接触が生じると、下流側コーン48が振動性の高いレベルの応力を受ける場合があり、このことが1つ以上の共振モードの振動を引き起こす可能性があることは理解できる。このような状況では、振動のレベルは非常に速く高くなり、下流側コーン48に接続された可動部品からなるロータを疲れ限度を越えやすいレベルで変形させてしまう。このことは、さらにアブレイダブルリング58を損傷させ、場合によっては、ロータの1つ以上の部品を損傷させ、またロータ破損にさえつながる。
【0017】
一般に、外部的事象(ロータの回転速度の変化、熱過渡性、...)がこの現象を止めるために、あるいは損傷したロータの共振周波数が異なり、それによりロータおよびステータシステムがチューニングしなくなるために、この現象は一時的なものである。
【0018】
一般に、このような損傷を制限するために、適切なアブレイダブル材料と共に、固有な形状または他のいくらかのワイパー数のワイパーが選択され、あるいは、アブレイダブル材料のリング58を支持するステータ部(ウェブ56)の剛性が変更される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、先行技術の欠点を克服できる解決策、特に、ロータおよびステータアセンブリの振動リスクを避けるのを可能にする解決策を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的を達成するために、本発明は、隣接する角度セクタの組間で異なる剛性を呈する角度セクタからなるアブレイダブルリングを提供する。
【0021】
このようにして、本発明により、アブレイダブルリングの循環対称性が崩され、幾何学的に同じである一連のセクタを示さなくなることは理解できる。アブレイダブルリングは、異なる剛性のセクタを交互にするか、または異なる剛性のセクタを不規則に連続したものとなる。
【0022】
この解決策はさらに、既存の装置に適用できるように、アブレイダブルリングを担持するステータ(またはロータ)部を適応させるだけで、また隣接する部品に何の影響も与えずに、結合現象のリスクを低減できるさらなる利点を有する。
【0023】
好ましくは、上記不安定防止装置を形成するために、アブレイダブルリングは、第1の剛性を呈する第1のタイプの角度セクタと、第1の剛性とは異なる第2の剛性を呈する第2のタイプの角度セクタとを有する。第1のタイプの角度セクタは第1の角度寸法を呈し、第2のタイプの角度セクタは第2の角度寸法を呈する。
【0024】
モデリングや構造を簡潔にするために、第1のタイプの要素と第2のタイプの要素とが同一の角度範囲を有するように、第1の角度セクタ寸法と第2の角度セクタ寸法とは同じであることが好ましい。
【0025】
しかし、本発明の第1の角度セクタと本発明の第2の角度セクタとが異なる構成を想定することも可能である。
【0026】
本発明はまた、上記不安定防止装置において、アブレイダブルリングが第1のタイプの角度セクタと第2のタイプの角度セクタだけでなく、他の剛性を呈する角度セクタも含むことにより、不安定防止装置がアブレイダブルリングの外周にわたって3種類以上の異なる剛性を有する場合にも適用される。
【0027】
同様に、本発明は、ステータおよびロータのうちの1つの第1の熱機械的部品と、ステータおよびロータのうちの他方の部品である回転体を形成し、ラビリンスシールを形成するために上記アブレイダブルリングと協働するための環状ワイパーを含む第2の熱機械的部品とを形成する上述の熱機械的部品を備えるロータおよびステータアセンブリを提供する。
【0028】
本発明はまた、ロータまたはステータ内に、上述したような熱機械的部品を含む、低圧、中間圧力または高圧で動作する軸流圧縮機、または実際には遠心圧縮機を提供する。
【0029】
本発明はまた、ロータまたはステータ内に、上述したような熱機械的部品を含む、低圧、中間圧力または高圧で動作するタービンに関する。
【0030】
同様に、本発明はまた、上述したような熱機械的部品を含む、ターボ機械、特にターボジェットを提供する。
【0031】
最後に、本発明は、ステータおよびロータのうちの1つに配置されたアブレイダブルリングにより形成されるラビリンスシールと、ステータおよびロータのうちの他方に配置された環状ワイパーとを含むターボ機械のロータおよびステータアセンブリ内の接触時に現れる不安定を防止する方法を提供する。方法は、隣接する角度セクタの組間で異なる剛性を呈する角度セクタとして、外周にわたってアブレイダブルリングを配置するステップを含むことを特徴とする。
【0032】
アブレイダブルリングがステータ上に配置される時、アブレイダブルリング内の同じ剛性を有する角度セクタの数は、ロータの抑止されるべき振動モードの波数の倍数に等しくないのが好ましい。
【0033】
このように、アブレイダブルリングの位置でステータの剛性において方位非対称性を生じさせることが可能であり、この非対称性は、ロータとステータとの結合の現象を防止するために、ロータの所望の振動モードを抑止するように選択される。
【0034】
アブレイダブルリングがロータ上に配置される時、アブレイダブルリング内の同じ剛性を有する角度セクタの数を、部品(この場合は一般にワイパーを担持するステータである)の抑止されるべき振動モードの波数の倍数に等しくないように選択することが好ましい。
【0035】
本発明の他の利点および特徴は、以下の一例として挙げられた、添付図面を参照した説明を読めば明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】ターボジェットのタービンロータの軸方向の片側断面図であり、ウェブおよびシールラビリンスがメインインジェクタから上流側に配置される方法を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態のアブレイダブル層を示す、
図1のII−IIの方向に沿って見た断面図である。
【
図3】
図2のアブレイダブル層の材料の配置に対応する、波数4の波の方位表示である。
【
図4】本発明の第2の実施形態のアブレイダブル層を示す、
図1のII−IIの方向に沿って見た断面図である。
【
図5】アブレイダブルリングがロータ上にある時の
図3に対応する断面図である。
【
図6】アブレイダブルリングがロータ上にある時の
図4に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下で、循環対称性のある円形システムに適用するとき、用語「波数」または「節直径」または「振動モードの位相シフトインデックス」は、当該波の半径方向の正負の振幅の極大をそれぞれ表す山と谷の数を示す。節の数、すなわち、波の振幅が0である位置の数は、波数の2倍である。
【0038】
一例として、3つの節直径に対応する3つの波数を有する波は、6節の波である。
【0039】
したがって
図3では、波Wは、円筒状基準系(方位表示)で示されており、波Wの4つの谷と4つの山との間に位置する8つの振動節に関連して示されている4つの節直径D1からD4を有する。したがって、波Wは4つの波数を呈する。波Wは、4つの連続的な同一の正弦波形状からなり、
図3では、4つの空間周期W1からW4は、直径D1とD3とにより画定される。
【0040】
本発明の種々の実施形態を説明するために、本発明のアブレイダブルリング58が取り付けられたケーシング50であって、2つの異なる剛性を呈し、同じ角度寸法を有する一連の14個の要素に対応する2つのタイプの14個の角度セクタからなるアブレイダブルリングにより具現化された不安定防止装置を備えたケーシング50が選択された。隣接する2つの要素はいずれも異なる剛性を呈する要素である。
【0041】
したがって、本発明によれば、7(不安定防止装置の同じ剛性を有する角度セクタの要素の数)は、4(波Wの波数)の倍数ではない。
【0042】
より正確には、図示した、以下で説明される2つの実施形態の各々に関して、各々異なる剛性を有する2つのタイプの角度セクタのみが設けられている。
【0043】
図2に示された第1の実施形態では、本発明は、異なるヤング率のアブレイダブル材料AおよびBからなるアブレイダブルリング58内に隣接する角度セクタを有することにより、ウェブ56の環状自由端部の内面に不安定防止装置を作成するステップを含む。
【0044】
より正確には、アブレイダブルリング58は、アブレイダブル材料Aの層により構成される第1のタイプの角度セクタ581と、異なるヤング率を有するアブレイダブル材料Bの層により構成される第2のタイプの角度セクタ582とを交互に備える。
【0045】
簡潔にするために、第1のタイプの角度セクタ581と第2のタイプの角度セクタ582とは、同じ厚さであり、ウェブ56の環状自由端部の内面全体、すなわち、外周全体を覆うように選択される。
【0046】
実際には、材料Aからなる7個の第1のタイプの角度セクタ581と材料Bからなる7個の第2のタイプの角度セクタ582とを備える14個のセクタからなるこのセクタ化されたアブレイダブル層58を形成するために、使用される材料Aと材料Bとは同種であるが、その組成物を構成する材料の比率は、異なるヤング率、すなわち異なる剛性が得られるように変えられる。
【0047】
異なる種類の2つの材料AおよびBを使用して、第1の材料Aからなる第1のタイプの要素581と、第2の材料Bからなる第2のタイプの要素582にすることも可能である。
【0048】
例えば、第1の材料Aは、Metco(R)タイプの材料としてもよい。これは、粒子がアルミナシリカ粉末で覆われた(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの)ポリマーからなる微粉末と結合剤から得られる。このタイプの粉末は、一般にプラズマ溶射され、溶射でPETを気化して、高温に耐える一定の能力を有する多孔質堆積膜を形成する。
【0049】
一例として、第2の材料Bは、RTV(R)タイプの材料としてもよい。これは、すなわち、シリコーンゴム化合物であり、密度を高くするために圧力下で重合して得られるので、温度変化に耐える。あるいは、第2の材料Bは、Silastic(R)、すなわち、シリコーンエラストマーとしてもよい。
【0050】
このセクタ化されたアブレイダブル材料層120を堆積するのに使用される技術に変わりはなく、これらの技術は、当然、使用される特有の材料と結び付けて考えられる。
【0051】
例えば、ニッケル系、モリブデン系、クロム系の合金、特に、Hastelloy(R)タイプの合金を使用することも可能である。この合金は、プラズマ溶射により、または実際にはレーザ溶射(粉末がレーザビームにより生成された局部溶解槽に放出される)により堆積される。
【0052】
上述のようにして、セクタ化されたアブレイダブルリング58を作成することができる。アブレイダブルリング58では、ターボ機械の軸X−X’とセクタ化されたアブレイダブルリング58の内面との間の半径方向の距離R1は一定であり、ロータワイパー47の半径にほぼ等しい。
【0053】
波Wがロータの共振モードの1つに対応し、その結果、抑止することが望ましい波である状況を考える。
【0054】
図3に示されるように、波Wがケーシング50と
図2に示されるようなアブレイダブルリング58を担持するウェブ56とを含むステータに関係する場合、波の各空間周期は、アブレイダブルリング58がセクタ化されるので、異なる剛性のアブレイダブルリング58の対応する角度領域に関係する。
【0055】
具体的には、波Wの第1の空間周期W1は、アブレイダブルリング58の外周の最初の4分の1(
図3の右側)に関係する。この部分は、第1のタイプの2つの角度セクタ581(材料A)と、第2のタイプの1つの角度セクタ582(材料B)とを有し、これらの角度セクタは(右回りに)互いにABAの順に並ぶ。
【0056】
同様に、波Wの第2の空間周期W2は、アブレイダブルリング58の外周の第2番目の4分の1(
図3の上部)に関係し、この部分は、第1のタイプの2つ角度セクタ581(材料A)と、第2のタイプの2つの角度セクタ582(材料B)とを有し、これらの角度セクタは互いにABABの順に並ぶ。
【0057】
波Wの第3の空間周期W3およびアブレイダブルリング58の外周の第3番目の4分の1(
図3の左側)には、一連の材料BABがあり、波Wの第4の空間周期およびアブレイダブルリング58の外周の第4番目の4分の1(
図3の下)には、一連の材料BABAがある。
【0058】
したがって、このシステムから、波Wの各空間周期W1からW4は、アブレイダブルリング58の対応する角度部分の異なる剛性に関係することがわかる。その結果、波Wがロータとステータとの間で生じる接触現象時にアブレイダブルリング58に組み込まれないように、波Wの各空間周期W1からW4は異なる速度で伝播する。
【0059】
本発明の第2の実施形態では、
図4に示されるように、セクタ化されたアブレイダブル材料層58’が使用され、アブレイダブルリング58’の2つの角度セクタ581’、582’は異なる厚さのアブレイダブル材料の層である。
【0060】
したがって、第1のタイプの角度セクタ581’と第2のタイプの角度セクタ582’とは、異なる厚さを有し、ウェブ56の環状自由端部の内面に角度セクタに配置されたアブレイダブル材料の層である。
【0061】
より正確には、同じ材料からなり、したがって、同じヤング率を有し、ウェブ56の環状自由端部の内面全体にわたって配置される第1のタイプの角度セクタ581’および第2のタイプの角度セクタ582’が選択される。
【0062】
このためには、確実に(ターボ機械の軸X−X’とセクタ化されたアブレイダブルリング58’の表面との間の)半径方向の距離R1’が一定であるように、刻み状の内面を有するウェブ56’が使用される。
【0063】
より正確には、ウェブ56’の内面は、一定間隔で離間した長手方向の溝562’を有する。この例では、溝間の距離は、各長手方向の溝562’の角度セクタに等しくなるように選択される。2つの隣接する長手方向の溝562’の間には、同じ角度範囲を有する長手方向のリブ561’が形成される。
【0064】
このように、本発明の第2の実施形態では、ウェブ56’の環状自由端部の内面は、長手方向のリブ561’と長手方向の溝562’とを交互に形成するように機械加工され、その後、アブレイダブル材料58’が堆積される。
【0065】
このためには、初めは一定の厚さを呈する、つまり、ウェブ56’の環状自由端部の内表面の像を構成する凹凸の刻み部分を呈する単一のアブレイダブル層58’を作製することが可能である。層は、その後、ウェブ56’の環状自由端部の半径R1’のハウジングが得られるように、表面機械加工される。
【0066】
あるいは、第1のタイプの角度セクタ581’および第2のタイプの角度セクタ582’を形成する材料をそれぞれ、ウェブ56’の環状自由端部の内表面の長手方向のリブ561’および長手方向の溝562’上に別々に堆積するのが可能であり、その後、第1のタイプの角度セクタ581’と第2のタイプの角度セクタ582’とで異なる厚さのまま堆積が行われる。具体的には、第1のタイプの角度セクタ581’と第2のタイプの角度セクタ582’との厚さの差は、長手方向の溝562’の深さに等しい。より具体的には、長手方向のリブ561’を覆う第1のタイプの角度セクタ581’は、長手方向の溝562’を覆う第2の角度セクタ582’とは同じ厚さではない。
【0067】
図2、
図3を参照して上述した本発明の第1、第2の実施形態は、ターボ機械のステータの一部を形成する熱機械的部品を形成するウェブ56/56’の内面に配置されるアブレイダブルリング58、58’に対応する。
【0068】
このような状況では、備えられる角度セクタの総数(この例では14個)は、タービンロータ108の抑止されるべき振動モードの波数(この例では4つ)の倍数に等しくないように選択される。
【0069】
したがって、ステータの熱機械的部品を形成する本発明のアブレイダブルリングに関しては、第1のタイプの角度セクタおよび第2のタイプの角度セクタの数をロータの抑止されるべき振動モードの波数の倍数に等しくないように選択することにより、ロータとステータとの間で生じる接触現象時にステータの上記振動モードの伝播が妨げられることが理解できる。
【0070】
これらの実施形態は、関連する不安定防止装置に対して、ある特定の(4つの波数を有する)波Wと、ある特定の第1のタイプおよび第2のタイプの角度セクタの数(すなわち、7個)にのみ関する。
【0071】
概して言えば、一連の第1のタイプの角度セクタと第2のタイプの角度セクタ、すなわち、それらの数と個々の角度範囲とを適応させて、妨げるのが望ましいロータの振動モードの波数に適応するパターンを有するアブレイダブルリングを作り上げることが必要である。
【0072】
本発明では、アブレイダブル材料は、「固体」の材料、または「ハニカム」として知られている多孔構造としてもよいことが理解されるべきである。
【0073】
したがって、
図2の第1の実施形態では、同じ厚さを有する第1のタイプの角度セクタ581および第2のタイプの角度セクタ582は、それぞれ異なるヤング率の2つのアブレイダブル材料AおよびBで、全剛性が異なるハニカム構造の材料からなることも可能である。例えば、異なる剛性のセクタは、ハニカム構造をつくるのに、異なる幾何学的構造のハニカム構造を使用することにより、または異なる弾性特性を有する材料を使用することにより得られることができる。
【0074】
アブレイダブル材料Aは「固体」材料であるが、アブレイダブル材料Bはハニカム構造材料であることも想定できる。
【0075】
同様に、
図4の第2の実施形態は、アブレイダブルリング58’の隣接する角度セクタ581’および582’の組間で異なる厚さを有するアブレイダブル材料のハニカム構造にするのが適していると理解されたい。
【0076】
図1では、アブレイダブルリング58は、ステータに配置され、ターボ機械の回転軸X−X’に向かって半径方向に面する。
【0077】
しかし、本発明は、回転軸X−X’から離れて半径方向に面するロータに配置されるアブレイダブルリングにも同じように十分に適用できることはすぐに理解される。このような状況では、アブレイダブルリングにおける所定の剛性の角度セクタの数を、部品、この場合は一般にワイパーを担持するステータの抑止されるべき振動モードの波数に等しくないように選択することが好ましい。
【0078】
したがって、本発明の第1および第2の実施形態の代替形態では、
図5、
図6に示されるように、アブレイダブルリングはターボ機械のロータの熱機械的部品の外面に配置される。
【0079】
この代替形態が
図1の第1の抽気ラビリンス60をつくるのに適用される場合、ワイパー47が取り付けられるのではなく、アブレイダブルリング49または49’の形で不安定防止装置が取り付けられるのは下流側コーン48の外面であるが、
図1のアブレイダブルリング58(または58’)はワイパーと交換される(図示せず)。
【0080】
図5では、下流側コーン48の外表面は、同じ角度範囲および同じ厚さを有し、材料Aからなる7個の第1のタイプの角度セクタ491と材料Bからなる7個の第2のタイプの角度セクタ492とが交互に区分けされた14個の角度セクタからなるセクタ化されたアブレイダブルリング49で覆われる。このアブレイダブルリング49は、ターボ機械の軸X−X’から半径方向の距離R2だけ離間した外面を有する。
【0081】
図6では、下流側コーン48の外表面は、14個の角度セクタに細分されたトラックにより刻み状である環状トラックを有し、各々の角度セクタは同じ角度範囲を有し、7個の長手方向のリブ481’と7個の長手方向の溝482’として交互に区分される。アブレイダブルリング49’の外面は、ターボ機械の軸X−X’から半径方向の距離R2の位置にある。
【0082】
アブレイダブルリング49’は、厚さのみが互いに異なる7個の第1のタイプの角度セクタ491’と7個の第2のタイプの角度セクタ492’とを交互に備え、その厚さの差は長手方向の溝482’の深さに等しく、長手方向のリブ481’を覆う第1のタイプの角度セクタ491’は長手方向の溝482’を覆う第2のタイプの角度セクタ492’より薄い。
【0083】
図面では、本発明の適用は、高圧軸流圧縮機の下流側部分に関して示されている。
【0084】
しかし、本発明はターボ機械の他の領域、特に、中間圧力の軸流圧縮機の他の部分、低圧軸流圧縮機、遠心圧縮機、または実際には高圧、低圧、中間圧力のタービンで使用できることは理解すべきである。
【符号の説明】
【0085】
40 ディスク
40a、44a フランジ
42 ブレード
44、56、56’ ウェブ
44b、47 ワイパー
44c 連続ワイパー
44d 傾斜部
46 下流側端部
48 下流側コーン
49、49’、58、64a、58’ アブレイダブルリング
50、68 内側ケーシング
52、54 エンクロージャ
60 第1の抽気ラビリンス
62 第2の抽気ラビリンス
64 インジェクタ
66 第3の抽気ラビリンス
68a アブレイダブルシールリング
106 燃焼チャンバ
108 タービン
481’、561’ 長手方向のリブ
482’、562’ 長手方向の溝
491、491’、581、581’ 第1のタイプの角度セクタ
492、492’、582、582’ 第2のタイプの角度セクタ
A、B アブレイダブル材料
W 波
R1、R1’、R2 半径方向の距離
X−X’ 軸