特許第5743392号(P5743392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5743392手術用照明、カメラおよびモニタを備えた装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743392
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】手術用照明、カメラおよびモニタを備えた装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 19/00 20060101AFI20150611BHJP
   H04N 9/04 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   A61B19/00 504
   H04N9/04 B
【請求項の数】15
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-224406(P2009-224406)
(22)【出願日】2009年9月29日
(65)【公開番号】特開2010-82453(P2010-82453A)
(43)【公開日】2010年4月15日
【審査請求日】2012年8月3日
(31)【優先権主張番号】08017201.8
(32)【優先日】2008年9月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505072845
【氏名又は名称】トルンプフ メディツィーン ジステーメ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Medizin Systeme GmbH + Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ マルカ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク フリッツェ
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−112712(JP,A)
【文献】 独国実用新案第202007007054(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 19/00
H04N 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体外から患者に向かって照らす手術用照明(1)と、カメラ(10)とモニタ(3)とを有するシステムであって、
発光手段(4)としてLEDを有し、
前記手術用照明(1)から放射される光の色温度は、個々の発光手段(4)の出力データを制御装置(2)によって設定することによって変化し、
前記モニタ(3)に前記設定された色温度を伝送するための手段が設けられている、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記モニタ(3)は前記カメラ(10)の信号出力側と接続されている、
請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記色温度を検出するためのセンサが設けられている、
請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記モニタ(3)は、補正値を前記色温度に依存して格納するための手段を有している、
請求項1から3までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記モニタ(3)は、前記システムの搬送アームに配置されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記色温度設定の伝送または検出は、周期的に行われる、
請求項1から5までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記色温度設定の伝送または検出は、変化時に行われる、
請求項1から5までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
スタンバイモードからの前記モニタ(3)の自動起動を、前記システムによる前記カメラ(10)の識別時に行う、
請求項1から7までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
定された輝度を前記モニタ(3)へ伝送するための手段が設けられている、
請求項1から8までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項10】
前記モニタ(3)は、前記手術用照明(1)の制御装置(2)に、インタフェースおよび信号伝送区間(12)を介して接続されている、
請求項1から9までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項11】
前記信号伝送区間(12)は信号ケーブルである、
請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記信号伝送区間(12)は赤外線区間である、
請求項10記載のシステム。
【請求項13】
前記信号伝送区間(12)は無線区間である、
請求項10記載のシステム。
【請求項14】
前記カメラ(10)は前記制御装置(2)と接続されている、
請求項1から13までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項15】
前記制御装置(2)、前記カメラ(10)および前記モニタ(3)は1つのバスを介して接続されている、
請求項1から14までのいずれか1項記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術用照明、カメラおよび画像処理機器から成るシステムに関する。ここでこの手術用照明の色温度は制御装置によって調整可能である。
【背景技術】
【0002】
LED技術の照明装置では、種々異なる組織タイプをより良好に区別するために、出力される光の色温度が、固定領域において調整される。これによって、種々異なる組織の種類をより良好に区別することができる。
【0003】
LED技術における手術用照明は例えばEP−A−1722157号から知られている。ここでは出力される光の色温度は、異なるスペクトルを放射する光源を異なって重み付けすることによって生成される。色温度の変化は、3,500K〜5,000Kの領域において可能である。どの色温度が放射されるかという情報は、手術用照明の制御部内にある。色温度を変える際には、照明の照明強度はほぼ一定のままである。手術用照明の照明手段とその駆動制御ユニットは次のように校正される。すなわち、色温度に関する制御部の目標設定が正確に実際値に変えられるように校正される。
【0004】
電子カメラでは、入射光はセンサ(CCDまたはCMOS)によって電圧信号に変えられる。カラーの画像を検出するために、光は色固有に、異なるセンサによって捕らえられる。これによってその後それぞれ、色固有の電圧信号が得られる。電子的に撮影される画像またはビデオシーケンスを表示する際には、白色調整(Weissabgleich)を行うことが必要である。これによって、表示される画像または表示されるビデオシーケンスが実際の色であらわされる。
【0005】
手術用照明の色温度の設定に応じて、白色調整が行われない場合には、青から赤の色味がかかった画像が生じてしまう。通常の電子カメラで用いられているような自動的な白色調整は、このような使用領域での使用は不可能である。従って、設定された色温度に関する情報が、手術用照明からカメラに伝送される。
【0006】
請求項1の上位概念に記載されたシステムはDE−202007007054U1号から公知である。この文献では照明体とカメラとの間の通信は、校正値を用いて行われる。この値は、バスシステムによって、照明体からカメラへ伝送される。校正値は、経験的に定められる。このようなデータ伝送によって、カメラは自身の白色調整パラメータを相応に設定することができる。これによって、結像された手術領域の色の正しい再現が保証される。この画像信号はカメラの制御装置に転送され、制御装置の信号出力側で、この画像信号は画像処理機器またはモニタのために取り出される。照明体で色温度を調整することによって、カメラの適合調整が、画像信号を画像処理機器またはモニタへ伝送する間に行われ、これによって、画像の色が忠実に再現される。
【0007】
しかしこの場合には、このような調製手段を備えたカメラを使用することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP−A−1722157号公報
【特許文献2】DE−202007007054U1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、任意のカメラを使用した場合に、画像処理機器の白色調整を自動的に行うことを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題は、手術用照明と、カメラと画像処理機器とを有するシステムであって、前記手術用照明の色温度は、制御装置によって設定される形式のものにおいて、前記画像処理機器に、前記設定された色温度を伝送するための手段を設けることによって解決される。
【0011】
本発明の発展形態は従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】手術用照明1、制御装置2および画像処理機器3(ここではモニタ)からなるシステムの概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
冒頭に記載した様式のシステムが、設定された色温度を画像処理機器に伝送する手段が設けられるように構成されている。手術用照明の選択された色温度に関する情報は、画像処理器へ伝送される。この画像処理機器は、自身の白色調整パラメータを相応に呼び出すことができる。
【0014】
本発明の別の特徴および有利な点を実施例に基づいて、添付の図面を参照して説明する。
【実施例】
【0015】
照明用装置1は、図示されていない搬送システムによって、部屋の天井、壁部または移動可能なスタンドに固定されている。従って、行動領域内に、手術用照明1を位置付け、配向することができ、これによって、外科的介入時に手術箇所を最適に照明することができる。搬送システムのアーム部分にモニタ3が固定されている。しかしモニタ3を、医療的供給ユニット、台架または機器台車に取り付けることもできる。
【0016】
手術用照明1は発光手段4を有している。ここでこの発光手段は、反射体を有するLEDによって構成されている。これは、光ビーム5を形成することによって、手術箇所上の照明フィールド8を照明する。各発光手段4は、照明フィールド8全体を照明するように構成されている。種々異なる色の発光手段4(暖色系の白、寒色系の白、シアン、ブルー)が特定数使用され、自然な日中光のスペクトルが生成される。個々の発光手段4の出力データを設定することによって、放射される光の色温度は3,500K〜5,000の間で変わる。
【0017】
発光手段4は、6つの外部モジュール6と、1つの内部モジュール7内に配置されている。ここで、小さい縁部領域を除いて光出射面を形成するモジュール6、7の下面は、光出射面全体の上で、発光手段4によって満たされている。外部モジュール6は、内部モジュール7に対して可動に固定されている。これによって、光ビーム5は手術用照明1に対して種々異なる間隔で、手術箇所上の照明フィールド8上に焦点合わせされる。
【0018】
内部モジュール7の中心にはグリップ9が配置されている。これによって、手術用照明1の無菌で位置付けすることが可能になる。グリップ9は、無菌化可能なプラスチックから成るスリーブによって構成されている。これは、ロッキングノブ(Rastknopf)を伴うグリップキャッチ上に、回転可能に固定される。グリップ9を、約20°だけ、異なる回転方向に回転させることによって、それぞれ1つのスイッチが操作され、駆動モータを介して、外部モジュール6が上方か、または下方に傾けられる。これによって、外部モジュール6が、照明フィールド8上に焦点合わせされる。グリップ9のスリーブの下面には、透明なガラス層が設けられる。これによって、グリップ9のスリーブ内にあるカメラ10が透けて見える。
【0019】
グリップスリーブ9内のカメラ10は、CCDカメラとして構成されている。これはバヨネット接続を介して、手術用照明1のハウジングに固定されている。手術用照明1のハウジングに固定することによって自動的に、供給および信号線路13の図示されていない区間接続部とビデオ線路11とが接続される。
【0020】
撮影された画像は、カメラ10のCCDセンサによって、電気信号に変えられる。この電気信号はその後、相応に増幅され、信号出力側から区間接続部およびビデオ線路11を介して、手術用照明1のハウジングおよび搬送システムを通って、画像処理機器、この場合にはモニタ3へ導かれる。
【0021】
カメラ10内にはモータが設けられている。ここでこのモータは機能「ズーム」、「フォーカシング」および「画像配向(Bildaufrichten)」を可能にする。「ズーム」機能は、特定の拡大領域ないし縮小領域における画像部分の選択を可能にし、「フォーカシング」機能は、撮影される画像のシャープネス設定を可能にする。「画像配向」機能は、手術用照明1の回転に応じて、画像をモニタ3上に次のように配向する。すなわち、画像が再び標準配向(例えばオペレーターの視線方向)を有するように配向する。
【0022】
制御装置2は、手術用照明1の照明機能およびカメラ10の機能を制御するというタスクを有している。このために、制御装置2は、カメラ10と、供給および信号線路13を介して接続されており、手術用照明1と、制御線路14を介して接続されている。
【0023】
制御装置2には、操作部材が設けられている。ここでこの操作部材は、手術用照明1のスイッチオンおよびスイッチオフ、調光、すなわち輝度の調整、色温度の調整、カメラ10のズーム機能の調整および「画像配向」のためのモータの駆動制御を行う。制御装置2内には、図示されてない電子制御部が設けられている。操作部材は電子制御部と接続されており、信号を電子制御部に与える。ここでこの電子制御部はその後、アクチュエータ、カメラ10のモータおよび手術用照明1の発光手段4の出力制御部材に対して相応する命令を形成する。
【0024】
制御装置2はここでは別個の構造グループとして示されている。しかし手術用照明1内に組み込み、線路の長さを短くすることが可能である。
【0025】
制御装置2は画像処理機器3と、信号伝送区間、ここでは信号線路12を介して接続されており、信号をインタフェース(ここではRS232)を介してモニタ3に転送する。
【0026】
モニタ3は、通常の表示装置の他に、LCDディスプレイ、およびLCDディスプレイ上の可視の画像に対するカメラ10からの画像信号を処理するための制御部、表示される画像の、色温度補正、白色調整のためのパラメータデータセット(セットアップ)を格納するための記憶領域を含んでいる。
【0027】
手術用照明1で色温度が個々に調整される場合の色温度補正のためのパラメータは、経験的に求められ、記憶領域内に格納される。このパラメータは、伝送されるビデオ信号の色位置と、撮影された画像点の実際の色位置との差をあらわしている。
【0028】
さらに、モニタ3はインタフェース(R323)を含んでいる。これによって、制御装置2から信号線路12を介して受信された、制御装置2で設定された色温度の信号を再び、モニタ3の制御部によって識別可能なデータセットに変える。
【0029】
この実施形態では、手術用照明1、制御装置2、カメラ10およびモニタ3は、RS232バスで接続されている。択一的な実施形態では、個々の構造グループが、別個のデータ線路とも接続される。
【0030】
作動中に、カメラ10はビデオ信号を、YUV信号の場合には画像点の輝度(Y)および色位置(UV座標系)をビデオ線路11を介してモニタ3に伝送する。受信された、色位置に対する画像信号は、設定された色温度に対する格納されている色補正値に相応して、モニタ3の制御部によって変えられる。ここでこの色補正値は、信号線路12を介して伝送された、設定色温度に関するデータに基づいて選択されている。
【0031】
設定された色温度は、R232に関する変化時にのみ、特別なプロトコルを介してモニタ3に伝送される。これによって、バスを通じて伝送されるデータ量が低減される。択一的にこの伝送が周期的に行われてもよい。これは、ノイズに対する安全性を高くする。
【0032】
制御装置2とモニタ3との間の信号伝送はここでは信号線路12を介して行われるが、データ伝送の別の形態を介して行われてもよく、例えば赤外線インタフェースまたは無線接続を介して行われてもよい。
【0033】
モニタ3の輝度は、図示されていない輝度調整部によって調整される。輝度調整の別の方法は、モニタ輝度を手術用照明1の輝度調整と結合することである。この場合には、制御装置2は信号線路12を介して、設定された輝度に相応する信号をモニタ3に送信する。モニタ3は、これに相応して、表示画像の輝度を変える。手術用照明1の照明が明るくなるほど、モニタ3の画像も明るく設定される。このような結合は、モニタ3の不所望の輝度変化を回避するために、オフ可能である。
【0034】
別の方法では、手術用照明1のエンド(Endo)モードにおける設定が区別されるだけである。エンドモードでは、手術用照明1は、自身の最大照明強度の僅か約10パーセントで作動される。これによって、オペレータは、モニタ3に表示される画像をより良好に識別することができる。制御部のこのような設定では、相応する信号が制御装置2から、信号線路12を介してモニタ3に供給され、モニタ3は低減された輝度で作動される。これによって、オペレータの眩惑が阻止される。エンドモードから、より高い照明強度へ戻る場合には、相応する信号が制御装置2からモニタ3へ供給され、モニタ3の画像が再びより明るく調整される。
【0035】
さらなる機能は、カメラ10の接続時のモニタ3の自動スイッチオンである。カメラが区間接続部を介して接続されると、カメラ10は供給および信号線路13を介して制御装置2へ相応する信号を出力する。これによって、制御装置2は、カメラ10が、手術用照明1に接続されていることを識別し、信号線路12を介して相応する信号をモニタ3へ転送する。この場合には、スタンバイモードからのモニタ3の自動起動、並びに印加信号による相応する入力への切り替えが行われる。
【0036】
手術用照明1がどの色温度で作動されるかの情報を伝送することに対して択一的に、放射された光の色温度を検出するためのセンサを設けることもできる。センサデータはこの場合には、制御装置2へ転送され、相応に処理され、信号線路12を介してモニタ3に供給される。モニタはこれによって色温度補正を行う。オプショナルで、色温度センサが、相応に処理された信号をモニタ3に送ることもできる。モニタはこれによって色温度補正を行う。
【0037】
カメラ10が必ずしも手術用照明1に固定されている必要はない。手術用照明1の搬送システムへの取り付け、または別個の台架上への取り付けが同じように可能である。
【0038】
任意のカメラ10の使用が可能である。なぜなら、カメラ10の白色調整は固定的に設定されたままで良く、照明される手術領域の色温度の変化が、直接的に手術用照明1から、モニタまたは画像処理機器3へ出力されるからである。
【符号の説明】
【0039】
1 手術用照明、 3 モニタ、 4 発光手段、 5 光ビーム、 6 外部モジュール、 7 内部モジュール、 9 グリップ、 10 カメラ、 11 ビデオ線路、 12 信号線路、 13 供給および信号線路、 14 制御線路
図1