(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
低温液化ガスを貯蔵する低温液化ガス容器の内部に設けられたフロートの上下動が、上記フロートに接続されたフロート軸で上方の液面表示部に伝達され、上記液面表示部に低温液化ガス容器内の液量レベルが表示されるように構成された低温液化ガス容器の液面表示機構であって、
上記低温液化ガス容器の低温液化ガス貯留空間に上記フロートの上下動をガイドするガイド部材が固定され、上記フロートは、少なくとも液面レベルの変化による上下動によってガイド部材と擦接しうる表面に母材よりも硬い硬化層が形成され、
上記硬化層の形成範囲は、少なくとも液面のエンプティ位置からフル位置までの液面レベル範囲の長さからフロートの長さを差し引いた距離であり、
上記低温液化ガス貯留空間には、内部の低温液化ガスを取り出す液体取出管が上下に延びるように配置され、
上記ガイド部材は、液体取出管の途中部に固定されていることを特徴とする低温液化ガス容器の液面表示機構。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの産業で、窒素、アルゴン、酸素、炭酸ガス等の無機系ガスや天然ガス、エチレン等の有機系ガスが液化されたいわゆる低温液化ガスを貯蔵し、必要に応じてこれら低温液化ガスを気化させてガス状で取り出すことのできる低温液化ガス容器が広く使用されている。
【0003】
このような低温液化ガス容器には、大型の定置式低温液化ガス貯槽のほかに、比較的小型の可搬式低温液化ガス容器がある。このような可搬式の低温液化ガス容器には、例えば、下記の特許文献1および特許文献2に開示されたようなものがある。
【0004】
図1は、従来の一般的な低温液化ガス容器を示す図である。
【0005】
この低温液化ガス容器1は、外容器2の内部に内容器3が上部サポート4によって支持されている。外容器2と内容器3の間には真空断熱空間が形成されており、内容器の外面は断熱材(図示せず)で被覆されている。この種の低温液化ガス容器1には、内部に貯蔵されている低温液化ガスの残量を表示するための液面計Lが設けられている。このような液面計Lとしては、下記の特許文献2に開示されたものが使われている。
【0006】
図2(a)および
図2(b)は、上記の液面計Lの詳細構造を示す図である。
【0007】
上記液面計Lは、低温液化ガス容器1の中心軸に沿って配置され、内容器3内の低温液化ガスの量に応じて上下するフロート20を備えている。上記フロート20の上部には、容器から上方の液面計本体内部まで伸びるフロート軸21が設けられている。このフロート軸21の先端部には内部マグネット25が取り付けられていて、この内部マグネット25が液面計L本体の外周部に設けられたプラスチック製の表示筒5内を上下するようになっている。一方、上記表示筒5には磁性体の表示リング6が上下動自在に収納されている。この表示リング6は、内部マグネット25の磁力により内部マグネット25の上下動に従って上下動し、内部マグネット25の高さ位置に常時保持される。この表示リング6の位置を外部から目視することにより、内容器3内の低温液化ガスのレベルを知ることができるようになっている。
【0008】
ここで、上記フロート20には、主としてアルミニウム棒が用いられる。アルミニウムは、他の金属と比較して比重が小さいうえ、入手も容易で安価なため、低温液化ガス用のフロート20の素材として広く採用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記フロート20は、低温液化ガス容器1内で容器の中心軸に沿って上下動するようになっているものであるが、低温液化ガス容器1の搬送中の振動等の外力によって、中心軸から外れてしまうと、正常に動作しなくなって精度が低下するおそれがある。これを防ぐため、
図1(b)に示すように、内容器3内に何らかの方法でステンレス製のガイド部材22を固定し、ガイド部材22に設けた挿通穴23にフロート20を挿通させ、フロート20がガイド部材22の挿通穴23内で上下動するように構成することが行われている。
【0012】
ここで、液面計Lのフロート20に用いられるアルミニウムは、一般に純アルミニウム(JIS A1050)であるが、これを丸穴である挿通穴23があいたガイド部材22のなかで上下することにより、挿通穴23の内周面とフロート20の外周面が擦れ、長期間使用することによりフロート20の周面が削れられてしまうという問題がある。特に、内部の低温液化ガスが空になった低温液化ガス容器1を搬送する際には、振動等の外力により容器内部でフロート20が激しく振動するおそれがある。
【0013】
このようにフロート20が削れられると、それによって発生したアルミニウム粉は、低温液化ガス中に混入したり、低温液化ガス容器1に設けられているバルブを内側から詰まらせて不具合を発生させたりする原因となる。また、経時的にフロート20の重量減少が起こるため、液面計Lのレベル表示精度が低下する要因になる。
【0014】
上記低温液化ガス容器に充填される低温液化ガスの一例として、例えば医療用酸素がある。これは、手術中や治療中に自己呼吸が十分出来ない患者に対し、専用のマスクを介して呼吸用として投与されるものである。また、上記低温液化ガス容器に充填される低温液化ガスとして窒素ガスがあり、食品の酸化防止のために食品の容器や袋内にパージして導入される。また、炭酸ガスもあり、ビールや清涼飲料の飲用感を向上させるために広く用いられている。
【0015】
これらのように、医療用や食品用に用いられるガスは、用途の性格上人体に導入される場合があり、ガスの不純物としてアルミニウムが混入していると、それを同伴して人体に取り込まれる可能性がある。
【0016】
アルミニウムは、食品添加物として認可されてはいるものの、上記非特許文献1によれば、特に腎機能に障害がある人や排泄機能が完成していない乳幼児では体内に蓄積しやすい傾向がある。また、上記非特許文献2によれば、体内に導入されたアルミニウムが何らかの異変で塩化アルミニウムに変換された場合には急毒性を引き起こすおそれも指摘されている。したがって、このような人体に導入される可能性のあるガスにはアルミニウムの混入を防止することが望ましい。
【0017】
一方、可搬式の低温液化ガス容器1には、
図3に一例を示すように、上部充填弁7、放出弁9、液体取出弁8、保圧調節弁10、内容器安全弁11等、複数のバルブが備え付けられている。しかしながら、上述したように、アルミニウム粉が液化ガスに混入していると、ガス使用時等の内部での低温液化ガスの移動等にともなってアルミニウム粉が移動し、これらのバルブの内側に溜まってしまい、結果的にバルブを詰まらせてしまい、使用に支障をきたすこととなる。
【0018】
また、アルミニウム棒であるフロート20は、結果的に経時的な重量減少が起こるため、液面計L自体の測定精度が徐々に低下することとなる。
【0019】
このように、可搬式の低温液化ガス容器1のユーザーは、液面計Lのフロート20由来のアルミニウムによる人体への影響、バルブの詰まり、液面計の精度低下等の影響があるにもかかわらず、これらを無視して使用しなければならなかったのが実情である。
【0020】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであり、フロートの経時的な削れを防止し、人体への影響、バルブの詰まり、液面計の精度低下等を防止する低温液化ガス容器の液面表示機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、本発明の低温液化ガス容器の液面表示機構は、低温液化ガスを貯蔵する低温液化ガス容器の内部に設けられたフロートの上下動が、上記フロートに接続されたフロート軸で上方の液面表示部に伝達され、上記液面表示部に低温液化ガス容器内の液量レベルが表示されるように構成された低温液化ガス容器の液面表示機構であって、
上記低温液化ガス容器の低温液化ガス貯留空間に上記フロートの上下動をガイドするガイド部材が固定され、上記フロートは、少なくとも液面レベルの変化による上下動によってガイド部材と擦接しうる表面に母材よりも硬い硬化層が形成され、
上記硬化層の形成範囲は、少なくとも液面のエンプティ位置からフル位置までの液面レベル範囲の長さからフロートの長さを差し引いた距離であ
り、
上記低温液化ガス貯留空間には、内部の低温液化ガスを取り出す液体取出管が上下に延びるように配置され、
上記ガイド部材は、液体取出管の途中部に固定されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記低温液化ガス容器の低温液化ガス貯留空間に上記フロートの上下動をガイドするガイド部材が固定され、上記フロートは、少なくとも液面レベルの変化による上下動によってガイド部材と擦接しうる表面に母材よりも硬い硬化層が形成されている。
上記硬化層の形成範囲は、少なくとも液面のエンプティ位置からフル位置までの液面レベル範囲の長さからフロートの長さを差し引いた距離である。
液面がエンプティ位置に下がったときに、液面レベルはフロートの下端部にあってフロートがすべて液面上に露呈した状態である。液面がフル位置に上がったときに、液面レベルはフロートの上端部にあってフロートがすべて液面下に隠れた状態である。このとき、例えば、内部の低温液化ガスが空の状態の低温液化ガス容器を搬送等する際に、振動や傾斜等の外力が加わってフロートとガイド部材が接触したとしても、上記硬化層の存在により、フロートの母材自体が削れて粉が発生することが防止できる。これにより、従来のようにフロートが削れた粉が低温液化ガスに混じって人体に導入されたり、低温液化ガス容器のバルブを詰まらせたり、あるいは経時的にフロートが重量減少して液面計の表示精度が低下するような不都合を防止できる。
【0023】
本発明において、上記硬化層は、ガイド部材を構成する素材と同等の素材から形成された薄板材を、フロートの表面に巻きつけることにより形成されたものである場合には、極めて簡単に硬化層を形成でき、しかもフロートの磨耗による削れを確実に防止できる。
本発明において、上記低温液化ガス貯留空間には、内部の低温液化ガスを取り出す液体取出管が上下に延びるように配置され、上記ガイド部材は、液体取出管の途中部に固定されている構成を採用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0026】
図4は、本発明の低温液化ガス容器の液面表示機構が適用された低温液化ガス容器の一実施形態の概略を示す図である。
図5は、上記低温液化ガス容器に備えられた液面計の詳細構造を示す断面図である。
【0027】
この低温液化ガス容器1は、外容器2の内部に内容器3が上部サポート4によって支持されている。外容器2と内容器3との間には真空断熱空間が形成されており、内容器3の外面は図示しない断熱材で被覆されている。
【0028】
上部サポート4はステンレス鋼製の筒状短管からなり、外容器2に一体的に設けられているステンレス鋼製のヘッド部材及び内容器頂部に溶接固着されている。
【0029】
外容器2のヘッド部材には充填口12と放出口13とが設けられている。上記充填口12は、液体取出口を兼ねており、液体取出管16が分岐するように接続されている。上記液体取出管16は、この例では、内容器3の中心軸近傍を上下に延びるように配置されている。また、上記充填口12から分岐して低温液化ガス導入用の散布管14が接続されている。
【0030】
内容器3の内部には液面計Lのフロート20が設けられている。フロート20の上部にはフロート軸21が取り付けられていて、このフロート軸21の上端部に内部ガイド15が螺着され、この内部ガイド15の上端部には内部マグネット25が取り付けられている。
【0031】
上記フロート軸21の上端部の内部ガイド15、内部マグネット25等は、液面計Lの本体30の芯部に設けられた中空部30aに昇降自在に嵌合する。したがって、この例では、フロート20、フロート軸21および内部マグネット25等を含む液面計Lは、内容器3の中心軸に沿って配置され、フロート20、フロート軸21および内部マグネット25等は上記中心軸に沿って上下動するようになっている。
【0032】
上記本体30は、六角ナット状の拡径部31と筒部32と表示筒嵌合部33と外周部にネジの切られた取付け部34とを備え、上記筒部32の外周部には表示筒5が外嵌されている。表示筒5は、下端部が本体30の拡径部31上に載置された状態で表示筒嵌合部33に無理嵌め式に気密に嵌合して固定されている。
【0033】
表示筒5の内面と上記筒部32の外周面との間には断面リング状の空間部36が設けられ、この空間部36の内部に表示リング6が上下動自在に収納されている。この表示リング6は磁性体で作られており、上記内部マグネット25の磁力によって吸引され、この内部マグネット25の移動とともに上下するようになっている。したがって、この表示リング6の上下位置によって内部マグネット25の上下位置を知ることができる。なお、上記表示筒5は透明プラスチック製で、その内部の表示リング6の位置を外側から観察することができる。上記筒部32の上端部の表示筒内部には乾燥剤37が収容されている。
【0034】
これらの表示筒5、内部マグネット25、表示リング6および空間部36等により本発明の液面表示部が構成されている。
【0035】
本体30の下部に設けられている取付け部34の内外にはネジが切られていて、内側のネジにスプリング取付け金具42が螺着されている。スプリング取付け金具42はフランジ部42aを備え、このフランジ部42aの下側の筒部42bにスプリング(コイルバネ)45が取り付けられている。
【0036】
一方、上記フロート軸21の中間部にはスプリング止め金具46がカシメにより固着されていて、上記スプリング45の下端部がこのスプリング止め金具46によって固定されている。このため、フロート軸21は、スプリング45によって常時上向きに付勢されている。
【0037】
図6にフロート20とスプリング45の力学的関係を含む液面計の動作を示す。
【0038】
上記スプリング45の上向き付勢力は、液面がエンプティ位置Eに下がったときに、フロート20の重量と釣り合うようになっている。そして、容器内に液が満たされ、液面がフル位置Fになったときに、フロート20の浮力によってフロート軸21が押し上げられる。このため、フロート軸21の上端に設けられた内部マグネット25が液量に追随して上下動するようになっている。
【0039】
このような構成により、低温液化ガスを貯蔵する低温液化ガス容器1の内部に設けられたフロート20の上下動が、上記フロート20に接続されたフロート軸21で上方の液面表示部に伝達され、上記液面表示部に低温液化ガス容器1内の液量レベルが表示されるように構成されている。
【0040】
一方、フロート20の上部に接続されているフロート軸21は複数(図示例では上部材21aと下部材21bの2個)に分割されており、上部材21aの下端部と下部材21bの上端部にはそれぞれ連結リング21c,21dが一体に形成されている。これら二つの連結リング21c,21dは、互いに傾動自在に係合して自在継ぎ手部を構成している。このため、フロート軸21はこの部分で任意の方向へ自在に屈曲することができる。なお、フロート軸21の下端部はフロート20に螺着されている。
【0041】
液面計Lの本体30は、外容器2の頂部に溶接又はネジで固着したステンレス鋼製のアダプタ55にネジで取り付けられる。この例では、筒状のアダプタ55が外容器2に溶接固定(ネジで螺着してもよい)され、このアダプタ55の内ネジに本体30の取付け部34が螺着されている。アダプタ55の高さは数十mm、例えば30mm程度である。この高さが低過ぎると所期の熱伝導防止効果が得られず、高すぎると液面計が上方に突出し過ぎるため取扱上の問題が生じる。なお、液面計Lには気密を保つためのシール材が適所に設けられている。
【0042】
この低温液化ガス容器1は、液面計Lがステンレス鋼製のアダプタ55を介して容器本体に取り付けられているので、容器内部の低温液化ガスによって表示筒5が超低温に冷やされにくく、従来のように表示筒5にクラックが生じる等の問題が起こりにくい。また、液面計Lのフロート20に設けられているフロート軸21は、中間部に自在継ぎ手部が存在するので、この部分で自在に屈曲することができる。このため、従来の直線状の1本の軸と異なり、取扱中に無理な力が加わってもこの部分の屈曲によってその力が逃がされ、軸自体が屈曲させられることはない。なお、この自在継ぎ手部は、常時はほぼ直線状に保持されてフロート20の浮力とスプリング45による押し上げ力を伝達する。
【0043】
上述したように、この液面計Lは、フロート軸21とフロート20を含むフロート部を備えている。
【0044】
この例では、上記フロート20として純アルミニウム(JIS A1050)の棒材を用いており、例えば175リットル容器において外径φ11mm、長さ910mm程度に設定される。
【0045】
そして、本実施形態では、上記低温液化ガス容器1の低温液化ガス貯留空間に、上記フロート20の上下動をガイドするガイド部材22が固定されている。この例では、上記ガイド部材22は、液体取出管16の途中部に溶接等によって固定されている。上記ガイド部材22は、この例では、四角形の板状部材の中央にフロート20が挿通するガイド穴である挿通穴23が形成されて構成されている。この例では、上記ガイド部材22は、ステンレス鋼からなり、例えばSUS304を用いることができる。
【0046】
また、この実施形態では、上記フロート20は、少なくとも液面レベルの変化による上下動によってガイド部材22と擦接しうる表面に、母材よりも硬い硬化層17が形成されている。
【0047】
より詳しく説明すると、この例では、フロート20は純アルミニウムが用いられ、ステンレスのガイド部材22に擦れる可能性のある箇所に、ステンレス製(例えばSUS304)からなる薄板材からなるカバーを取り付けている。これにより、ガイド部分においてフロート20がガイド部材22に擦れても、フロート20の母材であるアルミニウムが削れないようにしている。
【0048】
すなわち、上記硬化層17は、ガイド部材22を構成する素材と同等の素材から形成された薄板材を、フロート20の表面に巻きつけることにより形成している。
【0049】
つぎに、上述したようにして形成したフロート20が、フロートとして支障なく使用できるものであることを検証した。
【0050】
例えば、フロート20として純アルミニウム(JIS A1050)の棒で硬化層17を形成しないものを使用した場合、その比重は2.7g/cm
3である。低温液化ガスとして窒素を使用するとしたとき、液化窒素の液比重は0.808kg/リットルである。ここで、フロート20のアルミニウム棒の外径をφ11mm、長さは910mmに設定した。このときのフロート20の重量は233.5gであり、フロート軸21およびスプリング45の重量200gを合わせたフロート部の全重量は433.5gである。
【0051】
図6に示すように、液面がエンプティ位置Eに下がったときに、上記スプリング45の上向き付勢力がフロート部の重量433.5gと釣り合うようになっている。そして、液面がフル位置Fになって、フロート20の浮力によってフロート軸21が押し上げられた状態で、フロート部の重量433.5gが、スプリング45の上向き付勢力とフロート20の浮力69.9gが合わさった力と釣り合うようになっている。
【0052】
このとき、上記スプリング45のバネ定数は0.017N/mmであり、内部マグネット25すなわち表示リング6の上下動のストローク(液面表示ストローク)が40mmになるように設定している。
【0053】
また、液面がエンプティ位置Eに下がったときに、液面レベルはフロート20の下端部にあってフロート20がすべて液面上に露呈した状態である。液面がフル位置Fに上がったときに、液面レベルはフロート20の上端部にあってフロート20がすべて液面下に隠れた状態である。したがって、フロート20の上下動範囲は、液面のエンプティ位置Eからフル位置Fまでの液面レベル範囲の長さから、フロート20の長さを差し引いた距離ということになる。
【0054】
上記硬化層17は、フロート20がガイド部材22と摺接しうる範囲に形成され、その形成範囲は少なくともフロート20の上下動範囲(液面のエンプティ位置Eからフル位置Fまでの液面レベル範囲の長さからフロート20の長さを差し引いた距離)とする。
【0055】
図7は、上記の構成における、純アルミニウムのフロート20と液面との位置関係を示す計算結果である。
【0056】
この結果から、純アルミニウムのフロート20により、液面レベルを950mmまで測定でき、上述した液面レベル範囲は950mmである。このときのフロート位置は40mmであり、内部マグネット25すなわち表示リング6の上下動のストローク(液面表示ストローク)が40mmである。このときのスプリング45の変移量は250mm程度となっている。
【0057】
図8は、フロート20として、アルミニウム棒にステンレスSUS304のカバー部材である硬化層17を取り付けたものを使用した実施例の計算結果を示す。
【0058】
この実施例では、アルミニウム棒の外径をφ10.3mm、長さ910mmとした。ステンレスの硬化層17の厚みは1.2mm、長さを150mmとした。ここで、SUS304の密度は、7.93g/cm
3である。このときのアルミニウム棒の重量は273.9g、ステンレスの硬化層17の重量は51.6gである。フロート軸21およびスプリング45の重量200gを合わせたフロート部の全重量は473.9gである。上記スプリング45としては
図7で使用したものと同じバネ定数は0.017N/mmのものを用いた。
【0059】
液面がエンプティ位置Eに下がったときに、上記スプリング45の上向き付勢力がフロート部の重量473.9gとほぼ釣り合うようになっている。そして、液面がフル位置Fになって、フロート20の浮力によってフロート軸21が押し上げられた状態で、フロート部の重量473.9gが、スプリング45の上向き付勢力とフロート20の浮力66.5gが合わさった力とほぼ釣り合うようになっている。
【0060】
図8の結果から、液面高さ945mmまで測定でき、上述した液面レベル範囲は945mmである。このときのフロート位置は35.1mmであり、内部マグネット25すなわち表示リング6の上下動のストローク(液面表示ストローク)が35.1mmとなった。従って、
図7の液面表示ストローク40mmと完全には一致しないものの、上部の液面計測部において表示に支障のない範囲の上下動であることがわかる。また、このときのステンレス45の変移量は270mmであって、
図7の結果と比べてそれほど大きな差はなかった。
【0061】
図9は、フロート20として、ステンレスSUS304棒を使用した比較例の計算結果を示す。
【0062】
この例では、ステンレス棒の外径をφ4.0mm、長さを910mmとした。ここで、SUS304の密度は、7.93g/cm
3である。このときのステンレス棒の重量は90.7gである。フロート軸21およびスプリング45の重量200gを合わせたフロート部の全重量は290.7gである。上記スプリング45としては
図7で使用したものと同じバネ定数は0.017N/mmのものを用いた。
【0063】
図8の結果から、スプリング45の変移量が1000mmを超えてしまい、スプリング45の経時的な耐久性等を考慮した場合に非現実的な数値となった。
【0064】
これは、液面計としては現実問題として大きさの制限があることから、フロート位置すなわち液面表示ストロークを40mmにすることを優先し、それにあわせてステンレス棒の外経および重量を設定したため、一連の結果としてバネの変移量が1000mmを超えてしまうという不都合を招いたものである。
【0065】
このように、フロート20全てをステンレスにするには無理があり、アルミニウム棒をベースとしながら、ガイド部分22の擦れが生じるところだけにステンレスの硬化層17でカバーする方法が適当であることがわかる。
【0066】
以上のように、上記実施例によれば、フロート20であるアルミニウム棒の外周において、ガイド部分22に当たる箇所に所定長さのステンレス板を巻きつけて硬化層17を形成した。このように構成したフロート20が問題なく使用できることは、上記で検証したとおりである。
【0067】
以上のように、本実施形態によれば、上記低温液化ガス容器1の低温液化ガス貯留空間に上記フロート20の上下動をガイドするガイド部材22が固定され、上記フロート20は、少なくとも液面レベルの変化による上下動によってガイド部材22と擦接しうる表面に母材よりも硬い硬化層17が形成されている。このため、例えば、内部の低温液化ガスが空の状態の低温液化ガス容器1を搬送等する際に、振動や傾斜等の外力が加わってフロート20とガイド部材22が接触したとしても、上記硬化層17の存在により、フロート20の母材自体が削れて粉が発生することが防止できる。これにより、従来のようにフロート20が削れた粉が低温液化ガスに混じって人体に導入されたり、低温液化ガス容器1のバルブを詰まらせたり、あるいは経時的にフロート20が重量減少して液面計Lの表示精度が低下するような不都合を防止できる。
【0068】
また、上記硬化層17は、ガイド部材22を構成する素材と同等の素材から形成された薄板材を、フロート20の表面に巻きつけることにより形成したため、極めて簡単に硬化層17を形成でき、しかもフロート20の磨耗による削れを確実に防止できる。
【0069】
上記実施形態では、アルミニウム棒の外周にステンレス板を巻きつけることにより硬化層17を形成したが、アルミニウム棒の外周面を硬化させるものであれば、他の手段を採用して硬化層17を形成してもよい。例えば、陽極酸化法による硬質アルマイト層、硫酸アルマイトによるアルマイト層、無電解ニッケル系めっき皮膜、窒化処理による窒化層等による硬化層を形成することもできる。
【0070】
また、上記実施形態では、ガイド部材22を液体取出管16に溶接することにより固定したが、これに限定するものではなく、内容器3内に横方向に棒状の支持部材を渡して溶接等で固定し、この支持部材にガイド部材22を設けるようにすることもできる。ガイド部材22は、内容器3内の空間で何らかの手法によって固定されていればよく、その固定のための手法は特に限定しない趣旨である。