特許第5743417号(P5743417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743417
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】酸化チタンナノ粒子集合体
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/053 20060101AFI20150611BHJP
   H01M 14/00 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   C01G23/053
   H01M14/00 P
【請求項の数】23
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2010-81148(P2010-81148)
(22)【出願日】2010年3月31日
(65)【公開番号】特開2011-213505(P2011-213505A)
(43)【公開日】2011年10月27日
【審査請求日】2012年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 浩規
(72)【発明者】
【氏名】松好 弘明
【審査官】 武重 竜男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−367512(JP,A)
【文献】 特開2007−230824(JP,A)
【文献】 特開2001−294426(JP,A)
【文献】 特開2006−256896(JP,A)
【文献】 特開2007−128895(JP,A)
【文献】 特開2006−278023(JP,A)
【文献】 特開2010−024135(JP,A)
【文献】 特開2010−024132(JP,A)
【文献】 特開平09−002818(JP,A)
【文献】 Yoshitake MASUDA et al.,Nanocrystal Assembled TiO2 Particles Prepared from Aqueous Solution,Cryst. Growth Des.,米国,2008年 7月26日,Vol.8, No.9,p.3213-3218
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G1/00−99/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均1次粒子径が20nm以下の酸化チタンナノ粒子(A)からなり、
平均直径が300〜400nmである、
酸化チタンナノ粒子集合体(ただし、粒子状酸化チタンが連なってなる棒状、管状又は繊維状の酸化チタン構造体は含まない)。
【請求項2】
平均1次粒子径が20nm以下の酸化チタンナノ粒子(A)からなり、
平均直径が300〜400nmであり、且つ、球状である、
酸化チタンナノ粒子集合体。
【請求項3】
多結晶体である、請求項1又は2に記載の酸化チタンナノ粒子集合体。
【請求項4】
少なくともアナターゼ型の結晶を有する、請求項1〜のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体。
【請求項5】
800℃において少なくともアナターゼ型の結晶を有する、請求項1〜のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体。
【請求項6】
チタン原子及びフッ素原子を有する化合物を0.1mol/L未満含む溶液からの析出反応により、酸化チタンナノ粒子集合体を析出させる工程
を備える、請求項1〜のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
【請求項7】
チタン原子及びフッ素原子を有する化合物が、チタンフルオロ錯体である、請求項に記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
【請求項8】
チタン原子及びフッ素原子を有する化合物が、式(1):
TiF
(式中、2個のXは同じか又は異なり、いずれもNH、H、Na又はKである)
で示される、請求項又はに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
【請求項9】
前記溶液中に、さらに、フッ素イオン捕捉剤を含む、請求項のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
【請求項10】
溶液中のフッ素イオン捕捉剤の濃度が、チタン原子及びフッ素原子を有する化合物の濃度の1.5倍(モル比)以上である、請求項に記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
【請求項11】
フッ素イオン捕捉剤が、ほう酸又はアルミニウムである、請求項又は10に記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
【請求項12】
前記溶液中に、さらに、分子中に水酸基を有する有機化合物を含む、請求項11のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
【請求項13】
分子中に水酸基を有する有機化合物が、水酸基及びオキシアルキレン基を有する化合物である、請求項12に記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
【請求項14】
分子中に水酸基を有する有機化合物が、エチレングリコール及び/又はポリエチレングリコールである、請求項12又は13に記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
【請求項15】
析出反応の温度が10〜95℃である、請求項14のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体又は請求項15のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法により得られる酸化チタンナノ粒子集合体を含む、多孔質酸化チタン被膜。
【請求項17】
さらに、平均1次粒子径が5〜100nmの酸化チタンナノ粒子(B)を含む、請求項16に記載の多孔質酸化チタン被膜。
【請求項18】
少なくとも、酸化チタンナノ粒子(B)を含む層と、酸化チタンナノ粒子集合体を含む層の2層を有し、
最表面が酸化チタンナノ粒子集合体を含む層である、請求項17に記載の多孔質酸化チタン被膜。
【請求項19】
導電性基板上に、色素が担持された請求項1618のいずれかに記載の多孔質酸化チタン被膜が形成されている電極。
【請求項20】
前記多孔質酸化チタン被膜が、少なくとも、酸化チタンナノ粒子(B)を含む層と、酸化チタンナノ粒子集合体を含む層の2層を有し、
酸化チタンナノ粒子集合体を含む層が最表面になるように形成されている、請求項19に記載の電極。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の電極を備える、色素増感太陽電池。
【請求項22】
溶液中のチタン原子及びフッ素原子を有する化合物の濃度を0.1mol/L未満とすることにより、該溶液からの析出反応により得られる酸化チタンナノ粒子集合体の平均直径を制御する方法。
【請求項23】
請求項1〜のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体又は請求項15のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法により得られる酸化チタンナノ粒子集合体を加熱することにより、酸化チタンナノ粒子集合体を構成する酸化チタンナノ粒子(A)の平均1次粒子径を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池等の光電変換素子に用いられる酸化チタンナノ粒子集合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは、色素増感太陽電池、光触媒等に用いられている。特に、色素を修飾した酸化チタン等を活性電極に用いた色素増感太陽電池(例えば、特許文献1参照)は、安価で容易に製造できる太陽電池として注目を集めている。
【0003】
色素増感太陽電池の性能の向上のために、酸化チタンとしてサブミクロン粒子を光拡散粒子として補助的に使用することがある。ただし、サブミクロン粒子は、比表面積が小さく、それ自体がほとんど色素を吸着しないため、発電性能を持たない。また、サブミクロン粒子を作製するためには、高温での反応又は大粒子の破砕等多大なエネルギーを使用することが必要であった。
【0004】
また、色素増感太陽電池の負極に主材料として使用される粒子径の小さい酸化チタンナノ粒子は、比表面積が大きく、また、ポアサイズが小さくなる。このため、電解液の拡散が不充分であったり、色素溶液が充分に浸透しなかったりする。
【0005】
一方、平均1次粒子径が小さい(比表面積が大きい)酸化チタンナノ粒子は、凝集が激しく、塗膜の強度が弱いという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平8−15097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、比表面積が高く、色素増感太陽電池に使用される場合には電解液及び色素溶液の浸透性が高い酸化チタンナノ粒子集合体を、常温で簡易に合成できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
項1.平均1次粒子径が20nm以下の酸化チタンナノ粒子(A)からなり、
平均直径が200〜400nmである、
酸化チタンナノ粒子集合体(ただし、粒子状酸化チタンが連なってなる棒状、管状又は繊維状の酸化チタン構造体は含まない)
項2.平均1次粒子径が20nm以下の酸化チタンナノ粒子(A)からなり、
平均直径が200〜400nmであり、且つ、球状、円柱状、多角形柱状、立方体状、又は直方体状である、
酸化チタンナノ粒子集合体。
項3.平均直径が300〜400nmである、項1又は2に記載の酸化チタンナノ粒子集合体。
.多結晶体である、項1〜3のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体。
.少なくともアナターゼ型の結晶を有する、項1〜4のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体。
.800℃において少なくともアナターゼ型の結晶を有する、項1〜のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体。
.チタン原子及びフッ素原子を有する化合物を0.1mol/L未満含む溶液からの析出反応により、酸化チタンナノ粒子集合体を析出させる工程
を備える、項1〜のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
.チタン原子及びフッ素原子を有する化合物が、チタンフルオロ錯体である、項に記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
.チタン原子及びフッ素原子を有する化合物が、式(1):
TiF
(式中、2個のXは同じか又は異なり、いずれもNH、H、Na又はKである)
で示される、項又はに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
10.前記溶液中に、さらに、フッ素イオン捕捉剤を含む、項のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
11.溶液中のフッ素イオン捕捉剤の濃度が、チタン原子及びフッ素原子を有する化合物の濃度の1.5倍(モル比)以上である、項10に記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
12.フッ素イオン捕捉剤が、ほう酸又はアルミニウムである、項10又は11に記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
13.前記溶液中に、さらに、分子中に水酸基を有する有機化合物を含む、項12のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
14.分子中に水酸基を有する有機化合物が、水酸基及びオキシアルキレン基を有する化合物である、項13に記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
15.分子中に水酸基を有する有機化合物が、エチレングリコール及び/又はポリエチレングリコールである、項13又は14に記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
16.析出反応の温度が10〜95℃である、項15のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法。
17.項1〜のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体又は項16のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法により得られる酸化チタンナノ粒子集合体を含む、多孔質酸化チタン被膜。
18.さらに、平均1次粒子径が5〜100nmの酸化チタンナノ粒子(B)を含む、項17に記載の多孔質酸化チタン被膜。
19.少なくとも、酸化チタンナノ粒子(B)を含む層と、酸化チタンナノ粒子集合体を含む層の2層を有し、
最表面が酸化チタンナノ粒子集合体を含む層である、項18に記載の多孔質酸化チタン被膜。
20.導電性基板上に、色素が担持された項1719のいずれかに記載の多孔質酸化チタン被膜が形成されている電極。
21.前記多孔質酸化チタン被膜が、少なくとも、酸化チタンナノ粒子(B)を含む層と、酸化チタンナノ粒子集合体を含む層の2層を有し、
酸化チタンナノ粒子集合体を含む層が最表面になるように形成されている、項20に記載の電極。
22.項20又は21に記載の電極を備える、色素増感太陽電池。
23.溶液中のチタン原子及びフッ素原子を有する化合物の濃度を0.1mol/L未満とすることにより、該溶液からの析出反応により得られる酸化チタンナノ粒子集合体の平均直径を制御する方法。
24.項1〜のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体又は項16のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法により得られる酸化チタンナノ粒子集合体を加熱することにより、酸化チタンナノ粒子集合体を構成する酸化チタンナノ粒子(A)の平均1次粒子径を制御する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、比表面積が高く、色素増感太陽電池に使用される場合には電解液及び色素溶液の浸透性が高い酸化チタンナノ粒子集合体を、常温で簡易に合成できる方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の酸化チタンナノ粒子集合体の表面形状を示す電子顕微鏡(SEM、30000倍)写真である。
図2】実施例1の酸化チタンナノ粒子集合体の表面形状を示す電子顕微鏡(TEM、50000倍)写真である。
図3】実施例1の酸化チタンナノ粒子集合体の表面形状を示す電子顕微鏡(TEM、1000000倍)写真である。
図4参考例1の酸化チタンナノ粒子集合体の表面形状を示す電子顕微鏡(SEM、30000倍)写真である。
図5】比較例1の酸化チタンナノ粒子集合体の表面形状を示す電子顕微鏡(SEM、5000倍)写真である。
図6】比較例3の酸化チタンナノ粒子集合体の表面形状を示す電子顕微鏡(SEM、5000倍)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.酸化チタンナノ粒子集合体
本発明の酸化チタンナノ粒子集合体は、平均1次粒子径が20nm以下の酸化チタンナノ粒子(A)からなり、平均直径が30〜500nmである。
【0012】
本発明において、「酸化チタン」とは、二酸化チタンのみを指すものではなく、三酸化二チタン(Ti);一酸化チタン(TiO);Ti、Ti等に代表される二酸化チタンから酸素欠損した組成のもの等も含むものである。また、末端OH基に代表されるように一部酸化チタンの合成に起因するTi−O−Ti以外の基を含んでいても良い。
【0013】
また、本発明において、「集合体」とは、凝集体、多結晶体等を含む概念であるが、比表面積が高い点、色素増感太陽電池に使用する際に電解液及び色素溶液が拡散できるという点から、多結晶体であることが好ましい。
【0014】
本発明の酸化チタンナノ粒子集合体を構成する酸化チタンナノ粒子(A)の平均1次粒子径は、20nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下である。このように、平均1次粒子径の小さい酸化チタンナノ粒子(A)を使用することで、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体の比表面積を大きくすることができる。なお、酸化チタンナノ粒子の平均1次粒子径の下限値は、特に制限されるわけではないが、通常1nm程度である。また、酸化チタンナノ粒子(A)の平均1次粒子径は、例えば、電子顕微鏡(SEM又はTEM)観察等により測定することができる。
【0015】
本発明の酸化チタンナノ粒子集合体の平均直径は、30〜500nmである。本発明の酸化チタンナノ粒子集合体の平均直径は、その用途に応じて適宜設定すればよい。例えば、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体を、色素増感太陽電池の電極の主材料として使用する場合には、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体の平均直径を30〜200nm程度、好ましくは40〜100nm程度とすれば、高比表面積と電解液及び色素溶液の拡散とを両立できる。一方、光拡散層の材料として本発明の酸化チタンナノ粒子集合体を使用する場合には、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体の平均直径を50〜500nm程度、好ましくは100〜500nm程度とすれば、高比表面積と光の拡散とを両立できる。
【0016】
本発明の酸化チタンナノ粒子集合体を構成する酸化チタンナノ粒子(A)は、アナターゼ型の酸化チタンであることが好ましい。また、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体は、少なくともアナターゼ型を示すことが好ましい。なお、通常の水熱反応等により得られる酸化チタンは、650℃程度でほとんど全てがルチル型を示し、アナターゼ型は示さないが、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体は、800℃程度の高温においても、少なくともアナターゼ型を示すものであることが好ましい。酸化チタンナノ粒子(A)又は酸化チタンナノ粒子集合体の結晶構造は、例えば、X線回折、電子線回折、ラマン分光分析等により測定することができる。
【0017】
本発明の酸化チタンナノ粒子集合体の形状は、球状、円柱状、多角形柱状、立方体状、直方体状等のいずれでもよい。ただし、一定の体積中により多くの集合体を配置できる点から、球状が好ましい。
【0018】
本発明の酸化チタン構造体は、色素を多量に担持し、入射した光を効率よく吸収する点から、比表面積は50m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましい。比表面積は、大きいほうが好ましく、上限値は特に制限されないが、3000m/g程度である。なお、比表面積は、BET法等により測定できる。
【0019】
本発明の酸化チタン構造体は、より大きな電流が得られる点から、10MPa下での粉体抵抗は3×10Ω・m以下が好ましく、1×10Ω・m以下がより好ましい。粉体抵抗は、小さいほうが好ましく、下限値は特に制限されないが、0.1Ω・m程度である。なお、酸化チタン構造体の粉体抵抗の測定方法は、特に限定されないが、例えば、10MPaの圧力で厚さ0.3mmの平板状に加工し、ペレット間に電圧1Vを印加して流れる電流値を測ることにより測定することができる。
【0020】
2.酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法
本発明の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法は、例えば、チタン原子及びフッ素原子を有する化合物を0.1mol/L未満含む溶液からの析出反応により、酸化チタンナノ粒子集合体を析出させる工程を備える。具体的には、チタン原子及びフッ素原子を有する化合物をチタン源として使用し、加水分解反応により、酸化チタンナノ粒子集合体を析出させる。これにより、比表面積が高く、色素増感太陽電池に使用される場合には電解液及び色素溶液の浸透性が高い酸化チタンナノ粒子集合体を、常温で簡易に合成できる。なお、チタンアルコキシドを原料とするゾルゲル法等公知の方法では、所望の平均直径を有する酸化チタンナノ粒子集合体を得られないうえに、高温でアナターゼ型を示すものは得られない。
【0021】
<チタン原子及びフッ素原子を有する化合物>
チタン原子及びフッ素原子を有する化合物は、酸化チタンナノ粒子集合体におけるチタン源として使用されるものであり、水溶性のものが好ましい。なかでも、チタンフルオロ錯体、特に、式(1):
TiF
(式中、2個のXは同じか又は異なり、いずれもNH、H、Na又はKである)
で示されるものが好ましい。
【0022】
具体的には、(NHTiF、HTiF、NaTiF、KTiF等が好ましく、(NHTiF、HTiF等がより好ましい。なお、本発明では、上記のチタンフルオロ錯体以外にも、TiF、TiCl等をHF水溶液又はNHF・HF水溶液に溶解させ、これをチタン源として用いてもよい。また、これらのチタン原子及びフッ素原子を有する化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0023】
チタン原子及びフッ素原子を有する化合物を含む溶液中のチタン原子及びフッ素原子を有する化合物の濃度は、0.1mol/L未満、好ましくは0.001〜0.09mol/L、より好ましくは0.01〜0.08mol/Lである。チタン原子及びフッ素原子を有する化合物の濃度が高すぎると、酸化チタンナノ粒子集合体の平均直径が大きくなってしまい、所望の大きさの酸化チタンナノ粒子集合体が得られない。また、酸化チタンナノ粒子集合体の平均直径を制御することもできない。なお、チタン原子及びフッ素原子を有する化合物の濃度が低すぎても、所望の大きさの酸化チタンナノ粒子集合体は得られるが、生産効率を考慮し、0.001mol/L以上、特に0.01mol/L以上とすることが好ましい。
【0024】
<フッ素イオン捕捉剤>
チタン原子及びフッ素原子を有する化合物を含む溶液中には、フッ素イオン捕捉剤を含ませてもよい。本発明では、チタン原子及びフッ素原子を有する化合物を加水分解して酸化チタンナノ粒子集合体を生成するが、この際に発生するフッ素イオンを捕捉することにより、より速く反応を進め、生産効率を向上させることができる。
【0025】
このようなフッ素イオン捕捉剤としては、フッ素イオンと反応して安定な錯体を形成するものであれば特に制限はないが、例えば、ほう酸、アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。なかでも、ほう酸、アルミニウム等が好ましい。これらのフッ素イオン捕捉剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0026】
例えば、典型例として、チタン原子及びフッ素原子を有する化合物として(NHTiF、フッ素イオン捕捉剤としてほう酸を使用した場合には、以下の反応により酸化チタンが生成される。もちろん、本発明では、この組合せに限定されることはなく、様々な組合せのものが使用できる。
【0027】
(NHTiF+2HO → TiO+4HF+2NH
BO+4HF → HBF+3H
【0028】
チタン原子及びフッ素原子を有する化合物を含む溶液中のフッ素イオン捕捉剤の濃度は特に制限されないが、チタン原子及びフッ素原子を有する化合物の1.5倍(モル比)以上が好ましく、2倍(モル比)以上がより好ましく、3倍(モル比)以上がさらに好ましい。具体的には、フッ素イオン捕捉剤の濃度を0.1mol/L以上、好ましくは0.2mol/L以上とすればよい。このように、フッ素イオン捕捉剤の濃度をチタン原子及びフッ素原子を有する化合物の1.5倍(モル比)以上とすることで、酸化チタンの析出反応をより効率的に進めることができるようになる。なお、チタン原子及びフッ素原子を有する化合物を含む溶液中のフッ素イオン捕捉剤の濃度の上限値は、特に制限はないが、通常2.0mol/L程度である。
【0029】
<溶媒>
チタン原子及びフッ素原子を有する化合物を含む溶液中の溶媒としては、主として水を使用するが、チタン原子及びフッ素原子を有する化合物が溶解するものであれば、アルコール系溶媒、グリコール系溶媒等、他の溶媒を使用してもよい。
【0030】
<分子中に水酸基を有する有機化合物>
本発明では、酸化チタンナノ粒子集合体の平均直径を制御することを目的として、上記溶液中に、分子中に水酸基を有する有機化合物を含ませることが好ましい。分子中に水酸基を有する有機化合物を含ませることにより、酸化チタンナノ粒子の分散を促進し、酸化チタンナノ粒子集合体の成長速度を抑制できるため、小さいサイズ(平均直径が30〜500nm)の酸化チタンナノ粒子集合体を製造しやすくなる。なお、分子中に水酸基を有する有機化合物としては、分子中に水酸基及びオキシアルキレン基を有する化合物が特に好ましい。
【0031】
分子中に水酸基を有する有機化合物の具体例としては、例えば、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、PEG−PPG共重合体、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体、オキシアルキレン構造(ポリオキシエチレン構造、ポリオキシプロピレン構造等)を有する界面活性剤等が挙げられる。なかでも、コスト、使いやすさの点で、EG又はPEGが好ましい。
【0032】
<その他の成分>
他にも、上記溶液中には、本発明の効果を損なわない範囲で、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール、1−プロパノール、1-ブタノール、t−ブタノール)等を含ませてもよい。
【0033】
<反応条件>
析出反応の温度は10〜95℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。反応温度をこの範囲内とすることで、過度にエネルギーを使用することなく、30〜500nmの平均直径を有し、且つ、直径の揃った酸化チタンナノ粒子集合体を純度よく生成させることが容易となる。
【0034】
析出反応の時間は特に制限されないが、例えば、1〜72時間程度とすればよい。本発明の酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法によれば、1〜18時間というきわめて短時間でも、目的とする酸化チタンナノ粒子集合体を充分に得ることができる。
【0035】
析出反応中、攪拌は行っても行わなくてもよいが、静置したほうが、より直径の揃った酸化チタンナノ粒子集合体が得られ、経済的である。
【0036】
このようにして得られる酸化チタンナノ粒子集合体は、上記の「1.酸化チタンナノ粒子集合体」にて説明したような特性を有するものである。
【0037】
3.制御方法
<酸化チタンナノ粒子集合体の平均直径の制御方法>
本発明では、上記の「2.酸化チタンナノ粒子集合体の製造方法」のように、水溶液中のチタン原子及びフッ素原子を有する化合物の濃度を0.1mol/L未満とすることにより、該溶液からの析出反応により得られる酸化チタンナノ粒子集合体の平均直径を30〜500nm程度に制御できる。この際、大きい平均直径のものを作製するにはチタン原子及びフッ素原子を有する化合物の濃度を0.1mol/L以上とならない程度に大きくすればよく、小さい平均直径のものを作製するにはチタン原子及びフッ素原子を有する化合物の濃度を小さくすればよい。
【0038】
なお、分子中に水酸基を有する有機化合物を含ませれば、酸化チタンナノ粒子集合体の成長速度を抑制できるため、より小さいサイズの酸化チタンナノ粒子集合体を製造しやすくなる。また、反応温度を10〜95℃にすれば、より目的のサイズの酸化チタンナノ粒子集合体が得られる。
【0039】
このように、本発明では、所望の大きさの酸化チタンナノ粒子集合体を作り分けることができる。
【0040】
<酸化チタンナノ粒子集合体を構成する酸化チタンナノ粒子(A)の平均1次粒子径の制御方法>
本発明の酸化チタンナノ粒子集合体を熱処理すれば、構成する酸化チタンナノ粒子(A)の平均1次粒子径が大きくなり、さらに、結晶性が増す。このことから、熱処理条件を適宜設定すれば、酸化チタンナノ粒子集合体を構成する酸化チタンナノ粒子(A)の平均1次粒子径を制御できる。
【0041】
4.具体的な態様
本発明の具体的な態様を以下に例示する。以下の説明では、簡便のために、チタン原子及びフッ素原子を有する化合物として(NHTiF、フッ素イオン捕捉剤としてほう酸、分子中に水酸基を有する有機化合物としてポリエチレングリコール(PEG)を含む水溶液を使用する場合について説明する。なお、本発明は、この具体的な態様のみに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0042】
まず、(NHTiFと、必要に応じてほう酸及びPEGを含む混合水溶液を作製する。これら3成分の混合水溶液を作製する際には、いずれかの成分を含む水溶液に残りの成分を投入してもよいし、それぞれの成分の水溶液を混合してもよい。ただし、(NHTiFとほう酸とを混合すると、直ちに(10〜60秒程度)反応が開始することがあるため、(NHTiFの水溶液又はほう酸水溶液のいずれかに、PEGをあらかじめ溶解させておくことが好ましい。
【0043】
反応後は、酸化チタンナノ粒子集合体の沈殿をろ過、遠心分離等により単離し、その後水で洗浄し、過剰のほう酸、PEG、反応によって生成した物質等を除去することが好ましい。
【0044】
この後、酸化チタンナノ粒子集合体を乾燥してもよいし、酸化チタンナノ粒子集合体に熱処理を加えてもよい。また、酸化チタンナノ粒子集合体を乾燥せずにコーティング配合液等、必要な形態に加工してもよい。
【0045】
5.多孔質酸化チタン被膜
本発明の多孔質酸化チタン被膜は、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体を含むものである。なお、本発明の多孔質酸化チタン被膜は、必ずしも本発明の酸化チタンナノ粒子集合体のみからなる必要はなく、例えば、平均1次粒子径が1〜500nmの酸化チタンナノ粒子(B);公知の酸化チタンナノチューブ;酸化チタンナノロッド;酸化チタンナノファイバー;酸化チタンナノ粒子のチューブ状集合体等の高アスペクト比を有する酸化チタン構造体等を含んでいてもよい。
【0046】
なお、本発明の多孔質酸化チタン被膜中に、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体と他の成分とを含ませる場合には、本発明の多孔質酸化チタン被膜は、「本発明の酸化チタンナノ粒子集合体と他の成分とを含む層からなるもの」であってもよいし、「他の成分を含む層と、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体を含む層の2層からなるもの」であってもよい。もちろん、3層以上の構成を有していてもよい。なかでも、「他の成分を含む層と、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体を含む層の少なくとも2層を有する多孔質酸化チタン被膜」とし、最表面を本発明の酸化チタンナノ粒子集合体を含む層とすれば、色素増感太陽電池を形成した際に導電ガラス側(皮膜の最下層側)から入射した光を反射・拡散できるため、光電変換効率を向上させることができる。
【0047】
本発明の多孔質酸化チタン被膜中に、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体とその他の成分とを含ませる場合、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体の光拡散作用と高比表面積を活かすという点から、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体の含有量を、1〜99重量%程度、好ましくは2〜95重量%程度とすればよい。なお、反射(光を通さない)作用が要求される場合は100重量%に近いほうが好ましいが、光を透過させつつ適度に拡散させることが要求される場合は2〜3重量%程度が最も好ましい場合もある。これらの点から、要求特性に応じて、適宜設定すればよい。
【0048】
本発明の多孔質酸化チタン被膜の製造方法としては、特に制限されるわけではないが、例えば、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体を含む被膜形成用組成物を作製し、適当な基板上に当該被膜形成用組成物を塗布及び乾燥させればよい。また、乾燥させた後、得られた被膜に、必要に応じて加熱処理を施して焼成させてもよい。
【0049】
基板としては、特に制限はなく、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。使用できる基板の具体例としては、例えば、各種ガラス;PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等の透明樹脂等が挙げられる。また、色素増感太陽電池用の負極材料として本発明の多孔質酸化チタン被膜を用い、かつ対極側から光を取り入れる構造の場合は必ずしも基板が透明である必要はなく、導電性のあるアルミニウム、チタン、クロム、ステンレス等を使用しても良い。
【0050】
塗布方法は特に制限はなく、スクリーン印刷、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、スキージ法等の常法を採用すればよい。
【0051】
また、乾燥条件及び焼成条件は特に制限はなく、乾燥温度を60〜250℃程度、焼成温度を250〜800℃程度とすればよい。
【0052】
本発明の多孔質酸化チタン被膜の作製に当たっては、得られる被膜の膜厚が0.5〜50μm程度となるように塗布すればよい。
【0053】
なお、本発明の多孔質酸化チタン被膜を、酸化チタンナノ粒子(B)を含む層と、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体を含む層の2層を有するものとする場合には、例えば、酸化チタンナノ粒子(B)を含む被膜形成用組成物を基板上に塗布及び乾燥した後、酸化チタンナノ粒子(B)を含む層の上に、本発明の酸化チタンナノ粒子集合体を含む被膜形成用組成物を塗布及び乾燥すればよい。もちろん、3層以上からなる多孔質酸化チタン被膜を形成する場合には、塗布及び乾燥工程を3回以上に分けて行えばよい。
【0054】
また、本発明の多孔質酸化チタン被膜の製造方法は、上述の塗布方法に限られることはなく、反応液中に基板を浸漬して反応を行い、基板の表面に本発明の多孔質酸化チタン被膜を析出させることによっても製造できる。
【0055】
6.電極
色素増感太陽電池用の電極を形成する際には、上述の多孔質酸化チタン被膜を、樹脂基板又はガラス基板の上に形成する。
【0056】
樹脂基板としては、導電性の樹脂基板であれば特に制限されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート樹脂基板(PEN樹脂基板)、ポリエチレンテレフタレート樹脂基板(PET樹脂基板)等のポリエステル;ポリアミド;ポリスルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンサルファイド;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリメチルメタクリレート;ポリスチレン;トリ酢酸セルロース;ポリメチルペンテン等が挙げられる。
【0057】
ガラス基板としても特に制限はなく、公知又は市販のものを使用すればよく、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等のいずれでもよい。
【0058】
この樹脂基板又はガラス基板としては、板厚が0.05〜10mm程度のものを使用すればよい。
【0059】
本発明では、多孔質酸化チタン被膜は、樹脂基板又はガラス基板の表面上に直接形成されていてもよいが、透明導電膜を介して形成されていてもよい。
【0060】
透明導電膜としては、例えば、スズドープ酸化インジウム膜(ITO膜)、フッ素ドープ酸化スズ膜(FTO膜)、アンチモンドープ酸化スズ膜(ATO膜)アルミニウムドープ酸化亜鉛膜(AZO膜)、ガリウムドープ酸化亜鉛膜(GZO膜)等が挙げられる。これらの透明導電膜を介することで、発生した電流を外部にとりだすことが容易となる。これらの透明導電膜の膜厚は、0.02〜10μm程度とするのが好ましい。
【0061】
本発明の電極としては、例えば、以下に示す2態様が挙げられる。
【0062】
<態様1>
樹脂基板又はガラス基板上に、本発明の多孔質酸化チタン被膜を、透明導電膜を介して形成し、本発明の電極とすることができる。なお、樹脂基板、ガラス基板及び透明導電膜は上述したとおりのものである。
【0063】
具体的には、以下のように、電極を形成すればよい。
【0064】
まず、樹脂基板又はガラス基板上に、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、ゾル−ゲル法、ナノ粒子コンポジット等により透明導電膜を形成する。これにより得られる基板の表面抵抗は、50Ω/sq.以下とすることが好ましい。
【0065】
そして、その上に、上述の被膜形成用組成物を塗布及び乾燥し、必要に応じて加熱させればよい。樹脂基板を使用する場合には、乾燥条件及び加熱条件は、150℃以下とすればよい。
【0066】
この際、得られる被膜の膜厚が2〜40μm程度となるように塗布することが、クラック抑制及び基板との密着性の観点から好ましい。
【0067】
<態様2>
樹脂基板又はガラス基板上に、本発明の多孔質酸化チタン被膜を直接形成し、さらにその上に、多孔質金属膜を形成して本発明の電極としてもよい。なお、樹脂基板及びガラス基板は上述したとおりのものである。また、樹脂基板又はガラス基板上に、本発明の多孔質酸化チタン被膜を形成する際には、上記態様1と同様の方法を採用することができる。
【0068】
態様2で使用できる多孔質金属膜としては、ヨウ素イオン、臭素イオン等の電解液中に含まれるイオンに侵されない(反応しない)金属であれば特に限定されないが、例えば、チタン、タングステン、白金、金等が挙げられる。これらの多孔質金属膜を形成することで、発生した電流を外部にとりだすことが容易となる。これらの多孔質金属膜の表面抵抗は、特に限定されないが、10Ω/sq.以下であれば良く、膜厚も特に限定されないが、150nm以上とするのが好ましい。
【0069】
樹脂基板又はガラス基板上に形成された多孔質酸化チタン被膜のさらに上に、多孔質金属膜は、スパッタ法などの薄膜形成法により形成すればよい。
【0070】
7.光電変換素子及び色素増感太陽電池
本発明の光電変換素子は、本発明の電極の多孔質酸化チタン被膜の上に対向電極(対極)を形成し、これら電極間を電解液で満たすことにより得られる。
【0071】
対極は、導電性材料からなる単層構造でもよいし、導電層と基板とから構成されていてもよい。基板としては、特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、樹脂でも良い。かかる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテン等が挙げられる。また、電荷輸送層上に直接導電性材料を塗布、メッキ又は蒸着(PVD、CVD)して対極を形成しても良い。
【0072】
導電性材料としては、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀、タングステン等の金属や、炭素材料、導電性有機物等の比抵抗の小さな材料が用いられる。
【0073】
また、対極の抵抗を下げる目的で金属リードを用いても良い。金属リードは白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀、タングステン等の金属からなるのが好ましく、アルミニウム又は銀からなるのが特に好ましい。
【0074】
本発明では、対極を形成する前に、本発明の電極の光吸収効率を向上すること等を目的として、多孔質酸化チタン被膜に色素を担持(吸着、含有など)させることが好ましい。
【0075】
色素は、可視域や近赤外域に吸収特性を有し、半導体層の光吸収効率を向上(増感)させる色素であれば特に限定されないが、金属錯体色素、有機色素、天然色素、半導体等が好ましい。また、多孔質酸化チタン被膜への吸着性を付与するために、色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、ホスホニル基、カルボキシルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホニルアルキル基、ホスホニルアルキル基等の官能基を有するものが好適に用いられる。
【0076】
金属錯体色素としては、例えば、ルテニウム、オスミウム、鉄、コバルト、亜鉛、水銀の錯体(例えば、メリクルクロム等)や、金属フタロシアニン、クロロフィル等を用いることができる。また、有機色素としては、例えば、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、金属フリーフタロシアニン系色素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。色素として用いることができる半導体としては、i型の光吸収係数が大きなアモルファス半導体や直接遷移型半導体、量子サイズ効果を示し、可視光を効率よく吸収する微粒子半導体が好ましい。通常、各種の半導体や金属錯体色素や有機色素の一種、又は光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため、二種類以上の色素を混合することができる。また、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように、混合する色素とその割合を選ぶことができる。
【0077】
色素を多孔質酸化チタン被膜に吸着させる方法としては、例えば、溶媒に色素を溶解させた溶液を、多孔質酸化チタン被膜上にスプレーコートやスピンコート等により塗布した後、乾燥する方法により形成することができる。この場合、適当な温度に基板を加熱しても良い。また、多孔質酸化チタン被膜を溶液に浸漬して吸着させる方法を用いることもできる。浸漬する時間は色素が充分に吸着すれば特に制限されることはないが、好ましくは10分〜30時間、より好ましくは1〜20時間である。また、必要に応じて浸漬する際に溶媒や基板を加熱しても良い。溶液にする場合の色素の濃度としては、1〜1000mmol/L、好ましくは10〜500mmol/L程度である。
【0078】
用いる溶媒は特に制限されるものではないが、水及び有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル等のニトリル類;ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、2−ブタノン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリへキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0079】
色素間の凝集等の相互作用を低減するために、界面活性剤としての性質を持つ無色の化合物を色素吸着液に添加し、多孔質酸化チタン被膜に共吸着させてもよい。このような無色の化合物の例としては、カルボキシル基やスルホ基を有するコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸等のステロイド化合物やスルホン酸塩類等が挙げられる。
【0080】
未吸着の色素は、吸着工程後、速やかに洗浄により除去するのが好ましい。洗浄は湿式洗浄槽中でアセトニトリル、アルコール系溶媒等を用いて行うのが好ましい。
【0081】
色素を吸着させた後、アミン類、4級アンモニウム塩、少なくとも1つのウレイド基を有するウレイド化合物、少なくとも1つのシリル基を有するシリル化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を用いて、多孔質酸化チタン被膜の表面を処理してもよい。好ましいアミン類の例としては、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。好ましい4級アンモニウム塩の例としては、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド等が挙げられる。これらは有機溶媒に溶解して用いてもよく、液体の場合はそのまま用いてもよい。
【0082】
本発明の色素増感太陽電池は、本発明の光電変換素子をモジュール化するとともに、所定の電気配線を設けることによって製造することができる。
【実施例】
【0083】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0084】
実施例1
(NHTiFを蒸留水に溶解させた0.25mol/Lの水溶液8gに、平均分子量200のポリエチレングリコール(PEG)を8g加え、あらかじめ作製した1.0mol/Lのほう酸水溶液10gと混合した。つまり、(NHTiFを0.077mol/L、ほう酸を0.385mol/Lとした。
【0085】
オイルバス中、35℃で16時間静置し、得られた白色沈殿を500mLの蒸留水で10回洗浄し、150℃で減圧乾燥を行った。
【0086】
得られた白色物質をSEM及びTEMで観察した結果、平均1次粒子径が3nm程度の酸化チタンナノ粒子(A)が集合した、平均直径350nm程度の球状の集合体が得られていることが観察された。SEM及びTEMの結果を図1〜3に示す。
【0087】
また、BET法により比表面積を測定した結果、200/gの大きい比表面積を有していた。
【0088】
参考例1
(NHTiFを蒸留水に溶解させた0.5mol/Lの水溶液2gに、平均分子量200のポリエチレングリコール(PEG)を6g加え、あらかじめ作製した1.0mol/Lのほう酸水溶液10gと混合した。つまり、(NHTiFを0.055mol/L、ほう酸を0.55mol/Lとした。
【0089】
オイルバス中、35℃で18時間静置し、得られた白色沈殿を500mLの蒸留水で10回洗浄し、150℃で減圧乾燥を行った。
【0090】
得られた白色物質をSEM及びTEMで観察した結果、平均1次粒子径が3nm程度の酸化チタンナノ粒子(A)が集合した、平均直径200nm程度の球状の集合体が得られていることが観察された。SEMの結果を図4に示す。
【0091】
また、BET法により比表面積を測定した結果、210/gの大きい比表面積を有していた。
【0092】
実施例2
(NHTiFを蒸留水に溶解させた0.125mol/Lの水溶液8gに、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG)を8g加え、あらかじめ作製した1.0mol/Lのほう酸水溶液10gと混合した。つまり、(NHTiFを0.038mol/L、ほう酸を0.385mol/Lとした。
【0093】
オイルバス中、35℃で18時間静置し、得られた白色沈殿を500mLの蒸留水で10回洗浄し、150℃で減圧乾燥を行った。
【0094】
得られた白色物質をSEM及びTEMで観察した結果、平均1次粒子径が3nm程度の酸化チタンナノ粒子(A)が集合した、平均直径300nm程度の球状の集合体が得られていることが観察された。
【0095】
また、BET法により比表面積を測定した結果、230/gの大きい比表面積を有していた。
【0096】
実施例3
(NHTiFの代わりに、HTiFを使用したこと以外は実施例1と同様に、実施例の酸化チタンナノ粒子集合体を作製した。
【0097】
得られた白色物質をSEM及びTEMで観察した結果、平均1次粒子径が3nm程度の酸化チタンナノ粒子(A)が集合した、平均直径400nm程度の球状の集合体が得られていることが観察された。
【0098】
また、BET法により比表面積を測定した結果、205/gの大きい比表面積を有していた。
【0099】
参考例2
(NHTiFを蒸留水に溶解させた0.1mol/Lの水溶液2gに、平均分子量200のポリエチレングリコール(PEG)を6g加え、あらかじめ作製した0.6mol/Lのほう酸水溶液10gと混合した。つまり、(NHTiFを0.011mol/L、ほう酸を0.33mol/Lとした。
【0100】
オイルバス中、35℃で16時間静置し、得られた白色沈殿を500mLの蒸留水で10回洗浄し、150℃で減圧乾燥を行った。
【0101】
得られた白色物質をSEM及びTEMで観察した結果、平均1次粒子径が2.5nm程度の酸化チタンナノ粒子(A)が集合した、平均直径50nm程度の球状の集合体が得られていることが観察された。
【0102】
比較例1
(NHTiFを蒸留水に溶解させた1.0mol/Lの水溶液3gに、水を6g加え、あらかじめ作製した1.0mol/Lのほう酸水溶液6gと混合した。つまり、(NHTiFを0.2mol/L、ほう酸を0.4mol/Lとした。
【0103】
オイルバス中、35℃で16時間静置し、得られた白色沈殿を500mLの蒸留水で10回洗浄し、150℃で減圧乾燥を行った。
【0104】
得られた白色物質をSEMで観察した結果、酸化チタンナノ粒子は凝集し、平均直径7μm程度、平均高さ4μm程度の円柱状であった。SEMの結果を図5に示す。
【0105】
比較例2
(NHTiFを蒸留水に溶解させた0.5mol/Lの水溶液3gに、水を6g加え、あらかじめ作製した0.5mol/Lのほう酸水溶液6gと混合した。つまり、(NHTiFを0.1mol/L、ほう酸を0.2mol/Lとした。
【0106】
オイルバス中、35℃で16時間静置し、得られた白色沈殿を500mLの蒸留水で10回洗浄し、150℃で減圧乾燥を行った。
【0107】
得られた白色物質をSEMで観察した結果、酸化チタンナノ粒子は凝集し、平均直径5μm程度、平均高さ3μm程度の八角柱状であった。
【0108】
比較例3
(NHTiFを蒸留水に溶解させた0.5mol/Lの水溶液3gに、平均分子量200のポリエチレングリコール(PEG)を6g加え、あらかじめ作製した0.5mol/Lのほう酸水溶液6gと混合した。つまり、(NHTiFを0.1mol/L、ほう酸を0.2mol/Lとした。
【0109】
オイルバス中、35℃で16時間静置し、得られた白色沈殿を500mLの蒸留水で10回洗浄し、150℃で減圧乾燥を行った。
【0110】
得られた白色物質をSEMで観察した結果、酸化チタンナノ粒子は凝集し、平均直径2.5μm程度、平均高さ2μm程度の円柱状であった。SEMの結果を図6に示す。
【0111】
実験例1
表面抵抗15Ω/sq.の導電性ガラス基板の上に、酸化チタン(日本アエロジル(株)製のP25、平均1次粒子径25nm)3.0g、酢酸0.5g、エチルセルロース1.5g及びα−テルピネオール10gを混合して得られた酸化チタンペーストを5mm角×厚み16μmに塗布し、125℃で乾燥した。
【0112】
その上に、実施例1で得られた酸化チタンナノ粒子集合体3.0g、酢酸0.5g、エチルセルロース1.5g及びα−テルピネオール10gを混合して得られた酸化チタンペーストを厚み5μmに塗布し、125℃で乾燥した。
【0113】
この2層の被膜を空気中、500℃にて1h焼成し、多孔質の酸化チタン膜を得た。
【0114】
得られた酸化チタン膜をルテニウム色素(Rutenium535-bisTBA: SOLARONIX社製)/t−ブタノール・アセトニトリル(1:1)溶液(濃度:3.0×10−4mol/L)に16時間浸漬し、酸化チタンに色素を担持させた。
【0115】
この導電ガラスを、Ptスパッタを行った導電ガラス(ジオマテック(株)製)に厚み25μmで酸化チタン被膜を囲うような形に切り抜いたアイオノマー製フィルムを介して張り合わせ、中に0.1mol/Lのヨウ化リチウム、0.03mol/Lのヨウ素及び0.5mol/Lの4−tert−ブチルピリジンをアセトニトリルに溶解させた電解液を封入した。
【0116】
セルに疑似太陽光(1kW/m)を照射し、電流電圧特性を測定したところ、6.9%の光電変換効率を得た。このことから、適度なサイズに起因する光の拡散作用、高い比表面積等により、高い変換効率が得られている。
【0117】
実験例2
表面抵抗15Ω/sq.の導電性ガラス基板の上に、酸化チタン(日本アエロジル(株)製のP25、平均1次粒子径25nm)2.7g、実施例1で得られた酸化チタンナノ粒子集合体0.3g、酢酸0.5g、エチルセルロース1.5g及びα−テルピネオール10gを混合して得られた酸化チタンペーストを5mm角×厚み16μmに塗布し、125℃で乾燥した。
【0118】
この被膜を空気中、500℃にて1h焼成し、多孔質の酸化チタン膜を得た。
【0119】
得られた酸化チタン膜をルテニウム色素(Rutenium535-bisTBA: SOLARONIX社製)/t−ブタノール・アセトニトリル(1:1)溶液(濃度:3.0×10−4mol/L)に16時間浸漬し、酸化チタンに色素を担持させた。
【0120】
この導電ガラスを、Ptスパッタを行った導電ガラス(ジオマテック(株)製)に厚み25μmで酸化チタン被膜を囲うような形に切り抜いたアイオノマー製フィルムを介して張り合わせ、中に0.1mol/Lのヨウ化リチウム、0.03mol/Lのヨウ素及び0.5mol/Lの4−tert−ブチルピリジンをアセトニトリルに溶解させた電解液を封入した。
【0121】
セルに疑似太陽光(1kW/m)を照射し、電流電圧特性を測定したところ、6.7%の光電変換効率を得た。このことから、適度なサイズに起因する光の拡散作用、高い比表面積等により、高い変換効率が得られている。
【0122】
比較実験例1
表面抵抗15Ω/sq.の導電性ガラス基板の上に、酸化チタン(日本アエロジル(株)製のP25、平均1次粒子径25nm)3.0g、酢酸0.5g、エチルセルロース1.5g及びα−テルピネオール10gを混合して得られた酸化チタンペーストを5mm角×厚み16μmに塗布し、125℃で乾燥した。
【0123】
この被膜を空気中、500℃にて1h焼成し、多孔質の酸化チタン膜を得た。
【0124】
得られた酸化チタン膜をルテニウム色素(Rutenium535-bisTBA: SOLARONIX社製)/t−ブタノール・アセトニトリル(1:1)溶液(濃度:3.0×10−4mol/L)に16時間浸漬し、酸化チタンに色素を担持させた。
【0125】
この導電ガラスを、Ptスパッタを行った導電ガラス(ジオマテック(株)製)に厚み25μmで酸化チタン被膜を囲うような形に切り抜いたアイオノマー製フィルムを介して張り合わせ、中に0.1mol/Lのヨウ化リチウム、0.03mol/Lのヨウ素及び0.5mol/Lの4−tert−ブチルピリジンをアセトニトリルに溶解させた電解液を封入した。
【0126】
セルに疑似太陽光(1kW/m)を照射し、電流電圧特性を測定したところ、5.0%の光電変換効率を得た。
【0127】
比較実験例2
表面抵抗15Ω/sq.の導電性ガラス基板の上に、酸化チタン(日本アエロジル(株)製のP25、平均1次粒子径25nm)3.0g、酢酸0.5g、エチルセルロース1.5g及びα−テルピネオール10gを混合して得られた酸化チタンペーストを5mm角×厚み16μmに塗布し、125℃で乾燥した。
【0128】
その上に、酸化チタン(石原産業(株)製のST−41、平均1次粒子径約200nm、比表面積10m/g)3.0g、酢酸0.5g、エチルセルロース1.5g及びα−テルピネオール10gを混合して得られた酸化チタンペーストを厚み5μmに塗布し、125℃で乾燥した。
【0129】
この2層の被膜を空気中、500℃にて1h焼成し、多孔質の酸化チタン膜を得た。
【0130】
得られた酸化チタン膜をルテニウム色素(Rutenium535-bisTBA: SOLARONIX社製)/t−ブタノール・アセトニトリル(1:1)溶液(濃度:3.0×10−4mol/L)に16時間浸漬し、酸化チタンに色素を担持させた。
【0131】
この導電ガラスを、Ptスパッタを行った導電ガラス(ジオマテック(株)製)に厚み25μmで酸化チタン被膜を囲うような形に切り抜いたアイオノマー製フィルムを介して張り合わせ、中に0.1mol/Lのヨウ化リチウム、0.03mol/Lのヨウ素及び0.5mol/Lの4−tert−ブチルピリジンをアセトニトリルに溶解させた電解液を封入した。
【0132】
セルに疑似太陽光(1kW/m)を照射し、電流電圧特性を測定したところ、5.5%の光電変換効率を得た。
【0133】
比較実験例3
表面抵抗15Ω/sq.の導電性ガラス基板の上に、酸化チタン(日本アエロジル(株)製のP25、平均1次粒子径25nm)2.7g、酸化チタン(石原産業(株)製のST−41、平均1次粒子径約200nm、比表面積10m/g)0.3g、酢酸0.5g、エチルセルロース1.5g及びα−テルピネオール10gを混合して得られた酸化チタンペーストを5mm角×厚み16μmに塗布し、125℃で乾燥した。
【0134】
この被膜を空気中、500℃にて1h焼成し、多孔質の酸化チタン膜を得た。
【0135】
得られた酸化チタン膜をルテニウム色素(Rutenium535-bisTBA: SOLARONIX社製)/t−ブタノール・アセトニトリル(1:1)溶液(濃度:3.0×10−4mol/L)に16時間浸漬し、酸化チタンに色素を担持させた。
【0136】
この導電ガラスを、Ptスパッタを行った導電ガラス(ジオマテック(株)製)に厚み25μmで酸化チタン被膜を囲うような形に切り抜いたアイオノマー製フィルムを介して張り合わせ、中に0.1mol/Lのヨウ化リチウム、0.03mol/Lのヨウ素及び0.5mol/Lの4−tert−ブチルピリジンをアセトニトリルに溶解させた電解液を封入した。
【0137】
セルに疑似太陽光(1kW/m)を照射し、電流電圧特性を測定したところ、5.3%の光電変換効率を得た。
図1
図2
図3
図4
図5
図6