(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源部からの光を格子板に照射し、該格子板を透過した光を前記被測定物上に格子像として投影し、該格子像を撮影して格子像の歪みから前記被測定物の3次元形状を数値化するフリンジ投影法による形状測定方法であって、前記三次元形状の数値化が、高調波の空間周波数を含んだ前記格子像の画像データ取り込みステップ、取り込んだ画像データの二次元フーリエ変換ステップ、複数のピーク信号の中から、前記格子像のピッチに相当する周波数の整数倍付近に現れたn次(ただし、n=1を除く)のピーク信号の1つを取り出す取り出しステップ、該取り出しステップによって取り出された、前記格子像の歪み分布である位相分布を含む前記n次のピーク信号の逆フーリエ変換ステップ、及び三次元形状数値化ステップをその順で含むことを特徴とする形状測定方法。
光源部と、該光源部からの光を透過させる格子板と、透過した光を前記被測定物に投影するレンズと、前記被測定物上の格子像を撮影する撮像装置と、該撮像装置で得た格子像の歪みから前記被測定物の3次元形状を数値化する演算装置とを有するフリンジ投影法による形状測定装置であって、前記演算装置が、高調波の空間周波数を含んだ前記格子像の画像データ取り込みステップ、取り込んだ画像データの二次元フーリエ変換ステップ、複数のピーク信号の中から、前記格子像のピッチに相当する周波数の整数倍付近に現れたn次(ただし、n=1を除く)のピーク信号の1つを取り出す取り出しステップ、該取り出しステップによって取り出された、前記格子像の歪み分布である位相分布を含む前記n次のピーク信号の逆フーリエ変換ステップ、及び三次元形状数値化ステップをその順で含むことを特徴とする形状測定装置。
被測定物の表面に格子パターンを印刷し、その被測定物に応力を加えた後に該格子パターンを撮影し、その格子パターンの変形から前記被測定物に加わった歪みを数値化する歪み測定方法であって、前記歪みの数値化が、高調波の空間周波数を含んだ前記変形した格子パターンの画像データ取り込みステップ、取り込んだ画像データの二次元フーリエ変換ステップ、複数のピーク信号の中から、前記格子パターンのピッチに相当する周波数の整数倍付近に現れたn次(ただし、n=1を除く)のピーク信号の1つを取り出す取り出しステップ、該取り出しステップによって取り出された、前記格子パターンの歪み分布である位相分布を含む前記n次のピーク信号の逆フーリエ変換ステップ、及び歪みの数値化ステップをその順で含むことを特徴とする歪み測定方法。
光源部と、該光源部からの光を物体光と参照光とに分ける分光部と、前記物体光の光路内に配置される被測定物と、該被測定物の透過光と参照光とからなる干渉縞を撮影する撮像装置と、該撮像装置で得た干渉縞から前記被測定物の歪みを計算する演算装置とを有する歪み測定装置であって、前記演算装置が、高調波の空間周波数を含んだ前記干渉縞の画像データ取り込みステップ、取り込んだ画像データの二次元フーリエ変換ステップ、複数のピーク信号の中から、前記干渉縞のピッチに相当する周波数の整数倍付近に現れたn次(ただし、n=1を除く)のピーク信号の1つを取り出す取り出しステップ、該取り出しステップによって取り出された、前記干渉縞の歪み分布である位相分布を含む前記n次のピーク信号の逆フーリエ変換ステップ、及び歪みの数値化ステップをその順で含むことを特徴とする歪み測定装置。
【背景技術】
【0002】
従来、光学素子のレンズ面、反射面、透過面等の形状を測定するために、被測定面と参照面とに光束を照射して、それぞれを反射又は透過した光による干渉縞画像を取得し、干渉縞画像を解析して被測定面の面形状を計測する干渉計が種々知られている。干渉縞画像の解析方法としては、被測定面と参照面とを相対移動することで光路長差の位相をシフトさせて複数の干渉縞画像を取得し、各干渉縞画像の同一位置における輝度値の変化から測定光の参照光に対する位相を測定し、被測定面の形状を算出する表面形状の測定方法が知られている(特許文献1〜4参照)。
【0003】
特許文献1には、被測定面と参照面との距離をπ/2の位相に対応するλ/8ずつ変化させ、π/2ずつ位相が異なる7枚の干渉縞画像を取得し、それぞれの同一位置の強度データから位相θを算出し、被測定面の各位置での位相θを求めることで波面を算出する表面形状測定方法が記載されている。この技術には、被測定面と参照面との間の光路長差を正確に変化させることができる場合には、高精度に波面を算出することができるものの、光路長差の変化量がλ/8に対して誤差を有する場合には測定誤差が大きくなるという問題があった。
【0004】
この問題に対し、特許文献2では、同一の光束を測定光と参照光とに分割し、複数の干渉縞を形成して、それぞれの干渉縞画像を取得し、位相差を測定することにより、被測定面の形状を算出する表面形状の測定方法であって、位相差を目標位相増分Δφずつずらして(2n+1)枚の被測定画像を取得する被測定画像取得工程と、各被測定画像内の一定位置の位置強度データgj(j=−n,…,0,…,n)から、被測定光の位相θを算出して波面形状を算出する波面形状算出工程とを備え、位相θの計算式に含まれる係数Ai、Bi(i=1,…,n)は、位置強度データgjが、目標位相増分Δφからの位相偏差εを誤差として含む場合に、位相偏差εの(2n−2)次以下の成分によらず一定となるように設定する表面形状測定方法を提案している。
【0005】
また、干渉縞の計測方法に関する技術として、特許文献3には、同一の光束を測定光と参照光とに分割して干渉縞画像を取得し、さらにこの状態から、位相増分Δφずつシフトして、合計n個(nは3以上の整数)の干渉縞画像を取得し、これらn個の干渉縞画像から被測定面の形状を算出するフリンジスキャン干渉縞計測方法であって、位相増分Δφを細分する位相量で0からΔφ・(n―1)までシフトさせてn個の干渉縞画像の候補画像を取得する候補画像取得工程(ステップS1)と、各候補画像の同一位置における位相変化を算出する位相変化算出工程(ステップS2)と、この位相変化に基づいて、候補画像のうちからn個の干渉縞画像を選択する画像選択工程(ステップS4)とを備える技術が提案されている。この技術によれば、簡素な構成を用いて、容易かつ高精度な形状測定を行うことができるとされている。
【0006】
一方、特許文献4には、ホログラム原器を用いた簡単な方法で正確に被験物体の形状を非接触で検査する技術が提案されている。この技術では、レーザー光源からのレーザー光がスリット状の平面波にされて被験物体に入射され、音響光学回折素子からなるホログラム原器にはそれに入力される電気信号を変化させることにより基準物体のホログラムの所定の行に対応する位相型格子パターンが形成される。被験物体を透過もしくは反射した物体光は、このホログラム原器に入射され、ホログラム原器で回折した光のうち、1次回折光が検出される。回折光の到達時間を、波面に垂直な方向に移動させながら検出し、その検出時刻の遅延時間から回折された時刻が分かるので、被験物体の形状の基準値に対する歪みを検出時刻の遅延により求めることができるというものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る形状測定方法及び装置並びに歪み測定方法及び装置について、図面を参照しつつ詳しく説明する。本発明の理解を容易にするために、先ず、ホログラム光学系について説明し、その後に、本発明に係るフリンジ投影法による形状測定方法及び装置を説明し、最後に歪み測定方法及び装置について説明する。
【0018】
[ホログラム光学系]
図1に示すホログラム光学系101は、被測定物105を配置した場合のホログラム撮影系であって、光源部103と、分光部104と、分光部104の光路内に配置された被測定物105と、ホログラム感光板120とで構成されている。ここで、光源部103は、光源(例えばHe−Neレーザー等のレーザー)111と、1/4波長板112,113と、レンズ114と、コリメーターレンズ115とで構成されている。分光部104は、2つのビームスプリッター116,117と、2つのミラー118,119と、ホログラム感光板120とで構成されている。被測定物105は、第1ミラー118と第2ビームスプリッター117との間に配置されている。
【0019】
この光学系101によるホログラム作製時、物体光131は被測定物105を透過してホログラム感光板120にθtの角度で入射する。一方、参照光132はホログラム感光板120にθrの角度で入射する。これらの光(物体光131と参照光132)は干渉してホログラム感光板120に干渉縞を形成する。干渉縞の強度Iの分布は下記式(1)で表され、ホログラム感光板120に記録される。
る。
【0021】
式(1)中、Ut、Urはそれぞれ物体光と参照光の振幅分布であり、αtとαrはそれぞれ物体光と参照光の振幅値であり、kは波数であり、ψ(x,y)は被測定物の内部歪で発生する物体光の光路長分布であり、θcはθt−θrであり、δtとδrはそれぞれ物体光と参照光の位相遅れである。
【0022】
図1に示す光学系において、被測定物105の内部歪で発生する物体光131の光路長分布ψ(x,y)は、ホログラム感光板120に干渉縞の歪みとして記録される。
【0023】
記録されたホログラム感光板120を現像してホログラム120’とする。入射した光量と現像後のホログラム120’の透過率とが線形性を持つならば、上記式(1)は正弦波関数なのでその透過率分布も正弦波状となる。こうしたホログラム120’に再生光を入射させると、±1次回折光のみが発生する。物体光は+1次回折光によって再生されるが、光路長分布ψ(x,y)がそのまま位相分布として再生光に乗っている。
【0024】
ところが、一般には感光剤は露光された光量に非線形に感光される。感光剤の感光特性はガンマγ値で表され、通常、γ>2.0であるため、ホログラム120’に再生光を入射させると、感光特性の非線形性によって高次の回折光も生ずることになる。例えばN次の回折光には、N倍のNψ(x,y)が重畳されることになる。
【0025】
次に、
図2に示すホログラム光学系102について説明する。このホログラム光学系102は、ホログラム120’に記録された干渉縞を撮像装置123で観察するための光学系であって、光源部103と、分光部104と、ホログラム120’と、撮像部106とで構成されている。光源部103と分光部104の基本構成は
図1に示すホログラム光学系101と同じであるが、被測定物が配置されていない点と撮像部106を有する点で異なっている。ここで、撮像部106は、レンズ121とピンホールプレート122と撮像装置(カメラ)123とで構成されている。
【0026】
この光学系102では、二つの光133,134をホログラム120’に入射させる。一方の光133は、ホログラム120’によって生ずるN次の回折光がホログラム120’に対して垂直の方向に進むような角度でホログラム120’に入射させる。他方の光134は。−N次の回折光がホログラム120’に対して垂直の方向に進むような角度でホログラム120’に入射させる。この両方の回折光は同じ方向に進み、干渉する。生じた干渉縞は、2Nψ(x,y)に比例して歪む。すなわち、被測定物105の内部歪を2N倍に拡大して読み取ることができる。
図2において、レンズ121によって2つの回折光を集光し、その焦点の位置にピンホールプレート122を置く。そうすると、余分な回折光を遮断して必要な回折光だけを通すことができ、鮮明度の良い干渉縞を得ることができる。この干渉縞を撮像装置(カメラ)123で観察する。
【0027】
[形状測定方法及び形状測定装置]
本発明に係る形状測定方法は、
図3に示すように、光源部11からの光22を格子板12に照射し、格子板12を透過した光23を被測定物14上に格子像として投影し、その格子像を撮影して格子像の歪みから被測定物14の3次元形状を数値化するフリンジ投影法による形状測定方法である。そして、その三次元形状の数値化が、格子像の画像データ取り込みステップ、取り込んだ画像データの二次元フーリエ変換ステップ、n次のピーク信号取り出しステップ、位相分布を含む信号の逆フーリエ変換ステップ、及び三次元形状数値化ステップをその順で含むことを特徴とする。
【0028】
同様に、本発明に係る形状測定装置1は、
図3に示すように、光源部11と、光源部11からの光22を透過させる格子板12と、透過した光23を被測定物14に投影するレンズ13と、被測定物14上の格子像を撮影する撮像装置15と、撮像装置15で得た格子像の歪みから被測定物14の3次元形状を計算する演算装置16とを有するフリンジ投影法による形状測定装置である。そして、演算装置16が、格子像の画像データ取り込みステップ、取り込んだ画像データの二次元フーリエ変換ステップ、n次のピーク信号取り出しステップ、位相分布を含む信号の逆フーリエ変換ステップ、及び三次元形状数値化ステップをその順で含むことを特徴とする。
【0029】
このフリンジ投影法による形状測定方法及び装置では、被測定物14の表面(「被測定物表面」ともいう。)が完全な平面である場合は、被測定物表面に投影された格子像は格子板12の格子線群そのままとなる。しかし、被測定物表面が完全な平面ではない場合は、光軸(格子投影光軸)24に対して被測定物表面が傾いており、投影される格子像の線間隔が変わってくる。例えば被測定物表面が曲面の場合、格子像の線間隔はそれぞれ異なり、歪んだ曲線群になる。本発明では、この曲線群の歪みをホログラム上の干渉縞の歪みと等価であるとして、その歪んだ曲線を画像データとして取り込み、その画像データを計算して被測定物14の形状を測定したものである。具体的には、取り込んだ画像データを二次元フーリエ変換し、格子像のピッチに相当する周波数の整数倍付近に現れたピーク信号を取り出す。そして、格子像の歪み分布を信号の位相分布として捕らえ、その位相分布を含む信号を逆フーリエ変換して三次元形状を数値化する。なお、三次元形状の数値化とは、データ化、グラフ化、画像化が含まれる。
【0030】
(装置構成)
光源部11は、少なくとも光源1を含み、必要に応じて各種のレンズ等を有している。光源1の種類は特に限定されないが、例えばハロゲンランプ等が用いられる。
図3に例示した光源部11は、光源1、減光(Neutral Density, ND)フィルター2、レンズ3、空間フィルター4及びレンズ5の順で構成されている。この例では、光源1を出射した可干渉光束21は、減光(Neutral Density, ND)フィルター2を透過した後、レンズ3、空間フィルター4及びレンズ5で構成されたコリメータを経て、拡大された平行光22となる。この平行光22は、格子板12に入射する。
【0031】
格子板12は、レンズ13の投影解像度以上の格子間隔を有し、例えば透過型液晶ディスプレイ(透過型LC空間光変調器)等を例示できる。格子板12を透過した透過光23はレンズ13によって被測定物14上に格子像を投影する。上述したように、被測定物表面が完全な平面である場合は、被測定物表面には、格子板12の格子線群がそのまま映し出される。しかし、被測定物表面が例えば曲面の場合は、光軸(格子投影光軸)24に対して被測定物表面が傾き、投影される格子線群は線間隔が歪んだ曲線群になる。
【0032】
被測定物14としては各種のものを採用できる。特に本発明では高感度且つ高精度の形状測定が可能となるので、精密部品の微細な表面形状、電子素子の微細な表面形状等の評価を行うことができる。
【0033】
撮像装置15は、演算装置(コンピューター)16に有線又は無線で接続(
図3中の符号17)され、撮像された曲線群を画像データとして撮影し、演算装置16で計算する。撮像装置15としては、CMOSカメラ等が好ましく用いられるが、それ以外のカメラであってもよく、特に限定されない。
【0034】
(解析原理)
上記した被測定物表面に映し出された曲線群の歪みは、ホログラム上の干渉縞の光路長分布ψ(x,y)(上記式(1)参照)による干渉縞歪みと等価である。本発明では、その歪んだ曲線(干渉縞歪み)を画像データとして撮像装置15によって取り込み(画像取り込みステップ)、その後、取り込んだ画像データを二次元フーリエ変換し(フーリエ変換ステップ)、その後、格子像のピッチに相当する周波数の整数倍付近に現れたピーク信号を取り出す(n次のピーク信号取り出しステップ)。その後、格子像の歪み分布を信号の位相分布として捕らえ、その位相分布を含む信号を逆フーリエ変換し(逆フーリエ変換ステップ)、その後、三次元形状を直接数値化して画像等にする(三次元形状数値化ステップ)。すなわち、被測定物表面に投影された格子像の画像データ取り込みステップ、取り込んだ画像データの二次元フーリエ変換ステップ、n次のピーク信号取り出しステップ、位相分布を含む信号の逆フーリエ変換ステップ、及び三次元形状数値化ステップをその順で含む方法である。この点、従来のホログラム法やモアレトポグラフィーとは異なる。
【0036】
図4は、本発明の測定原理についてのシミュレーション結果である。任意の被測定物の表面に映し出された歪んだ曲線(干渉縞歪み)を画像データとして撮像装置15によって取り込んだ場合において、歪んだ格子像の強度分布g(x,y)は下記式(2)で表せる。下記式(2)において、p(x,y)は2πの周期関数であり、h(x,y)は被測定物の三次元形状による格子像の歪み分布であり、αはcosθ/pでβはsinθ/pであり、これらのpは物体上の格子像のピッチであり、θは格子投影光軸24と観察光軸25との角度である。
【0038】
投影される格子は光を周期的にオンオフするだけであるから、正弦波状の透過率分布は持たず、いわゆる矩形状に近い黒化度分布になっている。したがって、式(2)中のg(x,y)は2値に近いものとなっている。それ故、撮像装置(カメラ)15で取り込まれた格子像パターンの空間周波数には、高次の項が含まれている。さらに、撮像装置15の感度特性自体も、
図1で説明したホログラム感光剤と同様に非線形性を持っている。ここで、歪んだ格子像の強度分布であるg(x,y)は下記のように展開できる。
【0040】
強度分布g(x,y)をグラフに表すと
図4(B)に示すようになる。この強度分布g(x,y)は、種々の高調波を含む式であり、演算装置(コンピューター)16でフーリエ変換すると、
図4(C)に示すように幾つかのピークが得られる。
図4(C)の中央(空間周波数:0Hz)にはゼロ次のピーク信号であり、その両側にプラスとマイナスの一次のピーク信号がある。プラス一次のピーク信号を取り出すと、その信号は下記式のようになる。
【0042】
これにより、三次元形状の情報(格子像の歪み分布)h(x,y)が取り出せたことになる。これから算出した歪み分布h(x,y)のグラフが、
図4(A)に示すものとなる。
【0043】
ここで、第n次のピーク信号を取り出すと、下記式のようになる。
【0045】
この式には、h(x,y)がn倍された関数が含まれている。
図4(D)のグラフが、n=2の時の得られたnh(x,y)グラフである。このように、シミュレーション結果によっても、1次のピーク信号から算出した
図4(A)のグラフと2次のピーク信号から算出した
図4(D)のグラフの縦軸値を比べると、形状値が2倍になっていることが分かる。このように、格子像を三次元物体に投影し、そのパターンを演算装置(コンピューター)16に取り込み、フーリエ変換し、第n次の高次ピーク信号を取り出して解析すれば、形状測定の感度をn倍高めることができる。
【0046】
[実験例]
図5〜
図8は、本発明に係るフリンジ投影法による形状測定方法及び装置を用いた実験例である。
図5は被測定物の表面に投影された格子像であり、
図6は
図5の格子像のA−A方向でのフーリエスペクトルである。また、
図7は
図6のフーリエスペクトルの1次ピークから求めた形状画像であり、
図8は
図6のフーリエスペクトルの4次ピークから求めた形状画像である。
【0047】
被測定物としては、石膏彫刻を用い、その表面を測定した。格子板は、ピッチ0.8mmのスリットが設けられた透過型液晶ディスプレイ(透過型LC空間光変調器:Translucent LC Spatial Light Modulator)を用いた。光源としてハロゲンランプを用い、他の光源部の構成部材も
図3に示すものを用いた。
図5の格子像は、格子板を透過した光が石膏彫刻の表面に現れたものをカメラで画像データとして取り込んだものである。この画像データをフーリエ変換して得られた
図6のグラフはノイズを含んでいるが、このデータから0次〜高次のピーク信号を抽出し、
図7と
図8に示すように画像化した。
【0048】
図7では、ほぼ平坦な面として現れているが、
図8では、複数の縞が現れている。
図8で現れる縞間隔は0.4mm毎の等高線を表しており、
図7の感度に比べて少なくとも4倍感度が向上していることがわかる。なお、濃淡は、白から黒に向かうほど高くなり、例えば白と黒の境界線が0.4mm毎の等高線であり、等高線に到達すると白くなり、徐々に高さが増すにしたがって黒く移行していく。
【0049】
この実験例では、0次のピーク信号と4次のピーク信号とを用いて比較したが、どの程度の感度で表面形状を計測するかによって、抽出するn次のピーク信号を任意に選択することができる。
【0050】
(変形例)
上記の例では、被測定物の表面に格子像を投影しているが、格子像を得る手段としては、回折格子、透明板又は反射板に描かれた格子状パターン、あるいは液晶デスプレイデバイス素子(透過型LC空間光変調器等)等がある。いずれの素子も同様な効果を得ることができる。特に液晶デスプレイデバイス素子は、コンピュータと電子システムとしての親和性があり、装置として操作性がよいが、格子密度を高くすることには限界がある。一般に格子密度の高い格子像を投影するほど測定精度は高まる。液晶デスプレイデバイス素子からの格子像は2値画像に限りなく近く、強い非線形性を持つ。そのため、本発明で液晶デスプレイデバイス素子を用いたときは、高精度を保ちつつ、操作性のよい三次元測定置を実現できる。
【0051】
[歪み測定方法及び装置]
本発明に係る歪み測定方法は、被測定物の表面に格子パターンを印刷し、その後、その被測定物に応力を加えた後に格子パターンを撮影し、その格子パターンの変形から被測定物に加わった歪みを数値化する方法である。歪みの数値化は、上記形状測定方法の場合と同じであり、変形した格子パターンの画像データ取り込みステップ、取り込んだ画像データの二次元フーリエ変換ステップ、n次のピーク信号取り出しステップ、位相分布を含む信号の逆フーリエ変換ステップ、及び歪みの数値化ステップをその順で含む。歪みの数値化には、データ化、グラフ化、画像化が含まれる。
【0052】
上記では形状測定方法及び装置を例にして説明したが、本発明の原理は、形状測定方法及び装置に限らず、格子像又は格子パターンを撮影カメラで撮影して行う測定一般に適応可能であり、この歪み測定方法にも同一の原理で応用できる。すなわち、被測定物に応力をかけると被測定物が歪むので、印刷した格子パターンもその歪みに従って変形することになる。そのため、格子パターンの変形を上記の形状測定方法及び装置と同等な手順で解析することにより、高感度な歪み測定を行うことができる。
【0053】
この歪み測定方法では、被測定物に予め格子パターンを印刷するが、予め印刷する格子パターンは厳密な精度を持ったパターンでなくてもよく、応力を加える前後の画像を撮影しておけば、両者の変形から計算することができる。格子パターンの印刷手段も特に限定されず、各種の印刷手段を採用できる。
【0054】
図9は、本発明に係る歪み測定装置の一例を示す模式的な構成図である。
図9に示す歪み測定装置30は、光源部41と、光源部41からの光を物体光43と参照光44とに分ける分光部42と、物体光43の光路内に配置される被測定物40と、被測定物40の透過光と参照光44とからなる干渉縞を撮影する撮像装置45と、撮像装置45で得た干渉縞から被測定物40の歪みを計算する演算装置46とで構成されている。そして、演算装置46が、干渉縞の画像データ取り込みステップ、取り込んだ画像データの二次元フーリエ変換ステップ、n次のピーク信号取り出しステップ、位相分布を含む信号の逆フーリエ変換ステップ、及び歪みの数値化ステップをその順で含む。歪みの数値化には、データ化、グラフ化、画像化が含まれる。
【0055】
光源部41は、光源(例えばHe−Neレーザー等のレーザー)31と、1/4波長板32と、レンズ33と、コリメーターレンズ34とで構成されている。分光部42は、光源部41からの光を物体光43と参照光44とに分ける光学系であり、2つのビームスプリッター36,37と、2つのミラー38,39とで構成されている。被測定物40は、第1ミラー38と第2ビームスプリッター37との間に配置されている。光源部41からの光は、第1ビームスプリッター36で分光され、一方は第1ミラー38で反射して被測定物40を透過する物体光となり、他方は第2ミラー39で反射する参照光44となる。その物体光43と参照光44とは、第2ビームスプリッター37で干渉縞を合成して撮像装置45に投影する。
【0056】
この歪み測定装置30は、
図1に示すホログラム光学系101からホログラム感光板120を取り除いて、その代わり撮像装置45を設け、その出力信号を演算装置46に入力させるように結合したものである。したがって、
図1においてホログラム感光板120を露光した干渉縞強度分布と同じ干渉縞強度分布が、撮像装置45の撮像面に入射することになる。
【0057】
撮像面に入射する干渉縞は、被測定物40の歪みに比例して位相分布を持ち、直線格子状からゆがんでいる。こうした干渉縞の強度分布は正弦波状であるが、撮像装置45の感度特性は一般にホログラム感光板と同様の非線形性を持つ。それ故、演算装置46に入力する信号も非線形性を持つ。この信号を上述した演算を行うと、干渉縞の中に含まれていた位相分布をn倍感度を向上させることができ、被測定物40の歪み分布を求めることができる。このようにすると、
図1で示すホログラム光学系101と同等の感度を持つ歪み測定を行うことができると同時に、感光板の現像とホログラム像再生の手間が必要なくなる。
【0058】
このように、格子像の強度分布が正弦波状であっても撮像装置の感度非線形性を用いれば同等の効果を得ることができる。