(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドの消火ノズルの縦断面図である。消火ノズルの下部にはデフレクタや弁体を支持する感熱分解機構等が組み込まれるフレームが接続され、上部には外周にネジ部を有し、配管に接続される。
消火ノズルの本体1の内部には、消火液が通る放水流路2が形成されている。放水流路2は、放水流路2の流入口1aから略同径の円柱状に形成された上流側流路20と、上流側流路20の下流に形成され、放水流路2を通過する消火液の流れに抵抗を与える抵抗流路10とを有している。
【0011】
抵抗流路10は、上流側流路20の下流端の内面壁から内側に向けて水平方向に環状に延出された環状部11と、環状部11の先端から上流方向に突出した堰部12とを有する抵抗部13によって構成され、抵抗部13の内周面が放水流路2内において最も小径の最小直径流路14となっている。抵抗部13の堰部12は、上流側流路20の下流端側から最小直径流路14へと向かう消火液の流れを一部堰き止め、消火液の流れに対する抵抗を高める役割を有している。抵抗流路10では、抵抗部13によって消火液の流れに抵抗を与えることにより、放水流路2からの放出流の流水断面直径(以下、流水直径という)を変化させる。なお、堰部12は
図1では円筒状に形成されているが、全体として筒状であれば良い。
【0012】
次に、このように構成された消火ノズルにおける消火液の流れについて説明する。
流入口1aから放水流路2内に流入した消火液は、上流側流路20を経て抵抗流路10を通過する際、抵抗流路10の抵抗を受けて流水直径が小さくなる。そして、流水直径が小さくなった消火液は、最小直径流路14を経て放出口1bから放出される。
【0013】
ここで、消火液の放水圧に応じた抵抗流路10の作用について説明する。
図2(a)は、低圧の場合の消火液の流れを示し、
図2(b)は、高圧の場合の消火液の流れを示している。ここで言う低圧とは、例えば0.3MPa以下を指し、高圧とは、例えば0.3MPa以上を指す。
低圧の場合、流入口1aから放水流路2内に流入した消火液は、上流側流路20を経て抵抗流路10を通過する際、抵抗流路10の抵抗を受けて流水直径を調整後、最小直径流路14に流入する。最小直径流路14に流入した低圧の消火液の流れは、
図2(a)に示すように、最小直径流路14の内壁面に接触した状態で最小直径流路14を通過し、放出口1bから放出される。すなわち低圧の場合、消火液の流水直径Aは最小直径流路14の直径に等しくなる。
【0014】
高圧の場合、流入口1aから放水流路2内に流入した消火液の流れのうち、放水流路2の中心部付近の流れW1Aは何の抵抗もなく最小直径流路14に流入する。一方、放水流路2の周縁側の流れは上流側流路20の内面を沿って流れ(w1)、抵抗流路10を通過する際、抵抗部13の環状部11に高圧状態で衝突し、堰部12によって一部堰き止められて上方に向かう(w2)。上方への流れw2が、下方への流れw1と衝突すると、水平方向で外側方向の流れw3と、水平方向で内側方向の流れw4が生じる。流れw3周辺は比較的高圧になるため、w4よりも小さい力となる。また、流れw3は下方への流れw1に巻き込まれる。結果として、放水流路2の周縁側の消火液の流れは抵抗部13によって放水流路2の中心側へ押し寄せる、水平方向への力を持った流れW2Aとなる。高圧になるほど、流れW2Aの放水流路2の中心側へ押し寄せる力は強くなる。よって、高圧時には、放水流路2の中心部付近の流れW1Aと、水平方向への力が低圧時より強い流れW2Aが最小直径流路を通ることになる。消火液の放水圧が一定以上の高圧になり、流れW2Aの水平方向の力が一定以上の強さになった時に、流れW1AとW2Aの力の合力により、最小直径流路の流れW3Aは、最小直径流路の内壁から剥離する。これにより低圧時よりも流水直径が小さくなる。そして、抵抗流路10である程度流水直径が調節された高圧の消火液は、最小直径流路14に流入する。この際、高圧の消火液の流れは、
図2(b)に示すように、最小直径流路14の内壁面から剥離した状態で最小直径流路14を通過し、放出口1bから放出される。
このように、高圧になるほど、流路の中心に向かう流れW2Aが強くなり、下方に向かう流れW1Aを中心方向に押し寄せるように作用するので、結果として最小直径流路14内においては、内壁面から剥離した状態の水流となる。
【0015】
このように高圧時では、消火液は最小直径流路14の内壁面から剥離した状態で最小直径流路14を通過するため、高圧時の流水直径aは低圧時の流水直径Aに比べて小さくなる。よって、従来に比べて高圧時の放水量が減少する。消火液の最小直径流路14の内壁面からの剥離度合いは、高圧になるほど大きくなる。ところで、最小直径流路14の放水方向の長さが長すぎると、最小直径流路14の内壁面から剥離した消火液の流れが、最小直径流路14の下流側で内壁面に接する流れとなり、低圧時と同様に流水直径が最小直径流路14の直径と等しくなってしまう。このため、最小直径流路14の放水方向の長さは、最小直径流路14の直径の2倍以下に設定する。
【0016】
ここで、流水直径について従来の消火ノズル(放水流路が流入口から放出口に渡って略同径の円柱状に形成されたノズル)と比較すると、従来の消火ノズルでは、低圧時も高圧時も流水直径が変わらず、放水流路の直径に等しくなる。これに対し、本実施の形態1の消火ノズルでは、流入口1aから流入した消火液の流路が最小直径流路14によって絞られることに加え、高圧になると抵抗流路10の作用によって更に絞られて小さくなる。よって、放水量の低減度合いを高めることができる。
【0017】
図3は、本実施の形態1の消火ノズルによる放水圧と放水量との関係を示す図である。なお、
図3の点線は、比較のため従来の消火ノズルについて示したものである。
本実施の形態1の消火ノズルは、上述したように最小直径流路14によって流路が絞られるため、低圧時において従来よりも放水量が少なくなっている。そして、高圧になるにしたがって放水量は増加するが、本実施の形態1の消火ノズルは、高圧になると流水直径が次第に小さくなるため、放水量の増加度合いは従来に比べて少なくなる。言い換えれば、本実施の形態1の消火ノズルは、高圧になるほど従来に比べて放水量の低減度合いを高めることが可能となっている。
【0018】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、消火液の流れに対して抵抗を与える抵抗流路10を設けたので、高圧時の放水量を抑えることができる。また、抵抗流路10として堰部12を設けたため、高圧時の流水直径の縮小効果を効果的に発揮することができる。
【0019】
また、高圧時における無駄な放水を抑えることができるため、水損による被害を低減することができる。また、消火液の放水圧が高くなりすぎたときに起こる霧状の散水を防止することができる。
【0020】
なお、抵抗流路10を形成する抵抗部13の形状としては、高圧時の流水直径の縮小効果の面から、
図1に示したように堰部12を有する形状が好ましいが、次の
図4及び
図6に示す形状としてもよい。以下の各図において
図1と同一部分には同一符号を付す。
【0021】
図4は、抵抗流路を形成する抵抗部の他の形状例1を示す図である。
図5は、
図4の抵抗流路の作用説明図である。
この抵抗部13Aは、上流側流路20の下流端から内側に向けて環状に延出された環状部11の上流側の面を、下流に向かうに従って縮径するテーパー面12Aとし、その傾斜角度θを45°以上(
図4には45°の例を示している)としたものである。このように構成した場合、流入口1aから放水流路2内に流入した消火液の流れのうち、放水流路2の中心部付近の流れW1Bは何の抵抗もなく最小直径流路14に流入する。一方、放水流路2の周縁側の消火液の流れは上流側流路20を経て抵抗部13Aを通過する際、抵抗部13Aのテーパー面12Aに衝突し、テーパー面12Aによって一部堰き止められる。そして、テーパー面12Aに堰き止められた流れW2Bは放水流路2の中心側へ押し寄せる流れとなる。消火液が高圧になるほど、流れW2Bの放水流路2の中心側へ押し寄せる力は強くなる。よって、高圧時には、放水流路2の中心部付近の流れW1Bと、放水流路2の中心側へ押し寄せる力が低圧時より強い流れW2Bが最小直径流路を通ることになる。消火液の放水圧が一定以上の高圧になり、流れW2Bの放水流路2の中心側へ押し寄せる力が一定以上の強さになった時に、流れW1BとW2Bの力の合力により、最小直径流路の水の流れW3Bは最小直径流路の内壁から剥離する。これにより高圧時は低圧時よりも流水直径が小さくなる。つまり、
図5に示すように低圧時には流水直径Aが最小直径流路14の直径に等しくなり、高圧時には消火液の流れが最小直径流路14の内壁面から剥離するため、流水直径は低圧時よりも小さい流水直径aとなり、放水量を抑えることができる。なお、この場合も最小直径流路14の放水方向の長さは10mm以下とする。
【0022】
図6は、抵抗流路を形成する抵抗部の他の形状例2を示す図である。
図7は、
図6の抵抗流路の作用説明図である。
この抵抗部13Bは、言わば
図1の抵抗流路10の抵抗部13から堰部12を削除した構成に相当し、環状部11の上流側の面が、上流側流路20の下流端から上流側流路20の内側に向けて垂直に延びる環状面12Bとなっている。このように構成した場合、流入口1aから放水流路2内に流入した消火液の流れのうち、放水流路2の中心部付近の流れW1Cは何の抵抗もなく最小直径流路14に流入する。一方、放水流路2の周縁側の流れは上流側流路20を経て抵抗部13Bを通過する際、抵抗部13Bの環状面12Bに衝突し、環状面12Bによって一部堰き止められる。そして、環状面12Bに堰き止められた流れW2Cは放水流路2の中心側へ押し寄せる、水平方向への力を持った流れとなる。消火液が高圧になるほど、水の流れW2Cの放水流路2の中心側へ押し寄せる力は強くなる。よって、高圧時には、放水流路2の中心部付近の流れW1Cと、水平方向への力が低圧時より強い流れW2Cが最小直径流路を通ることになる。消火液の放水圧が一定以上の高圧になり、流れW2Cの水平方向の力が一定以上の強さになった時に、流れW1CとW2Cの力の合力により、最小直径流路の流れW3Cは最小直径流路の内壁から剥離する。これにより高圧時は低圧時よりも流水直径が小さくなる。つまり、
図7に示すように低圧時には流水直径Aが最小直径流路14の直径に等しくなり、高圧時には低圧時よりも小さい流水直径aとなり、放水量を抑えることができる。なお、この場合も最小直径流路14の放水方向の長さは、最小直径流路14の直径の2倍以下とする。
【0023】
実施の形態2.
実施の形態2は、放水流路2の途中に抵抗流路を有する点は実施の形態1と同様であり、抵抗流路及び上流側流路の形状が実施の形態1と異なるものである。
【0024】
図8は、本発明の実施の形態2に係るスプリンクラヘッドの消火ノズルの縦断面図である。
消火ノズルの本体101の内部には、消火液が通る放水流路102が形成されている。放水流路102は、放水流路102の流入口101aから内径寸法が徐々に縮小するテーパー状の上流側流路120と、上流側流路120の下流に形成され、放水流路102を通過する消火液の流れに抵抗を与える抵抗流路110とを有している。なお、上流側流路120は、テーパー状に限られたものではない。
【0025】
抵抗流路110は、上流側流路120の下流端から下流方向に同径で延び、放水流路102内において最も小径の円柱状の最小直径流路111を有している。抵抗流路110は更に、最小直径流路111の下流端から内径寸法が徐々に拡大するテーパー状のテーパー状流路112を有している。そして、
図8の例では、テーパー状流路112の更に下流側に円筒状の流路113が形成されているが、この流路113は必須の流路ではなく、省略可能の流路である。また、テーパー状流路112のテーパー面の傾斜角度θは、放水流路102の流入口101aに作用する放水圧が低圧時には消火液の流れがテーパー状流路112の内壁面に接する流れとなり、高圧時には消火液の流れがテーパー状流路112の内壁面から剥離する流れとなるように、テーパー状流路112の傾斜角度が調整されており、その傾斜角度は10°以下となっている。
【0026】
次に、このように構成された消火ノズルにおける消火液の流れについて説明する。
流入口101aから放水流路102内に流入した消火液は、上流側流路120を経て抵抗流路110を通過する際、最小直径流路111にて流路が絞られることにより消火液の流れに対して抵抗が与えられ、流水直径を調節する。そして、最小直径流路111にて流水直径を調節された消火液は、テーパー状流路112及び流路113を経て放出口101bから放出される。
【0027】
ここで、消火液の放水圧に応じた抵抗流路110の作用について説明する。
図9(a)は、低圧の場合の消火液の流れを示し、
図9(b)は、高圧の場合の消火液の流れを示している。
図10は、
図8の点線部分の拡大図で、低圧、中圧及び高圧の場合それぞれの流水直径をまとめて示した図である。また、
図10のPA、Pb、Paは放水圧を示しており、それぞれ流水直径a、b、Aに対応している。
高圧の場合、上流側流路120を経て抵抗流路110に流入した消火液は、抵抗流路110を通過する際、抵抗流路110の抵抗を受けて低圧時よりも流水直径が小さくなる。そして、抵抗流路110で流水直径が調節された高圧の消火液は、テーパー状流路112に流入する。この際、高圧の消火液の流れは、
図9(b)に示すようにテーパー状流路112の内壁面から剥離した状態となってテーパー状流路112を通過し、流路113を経て放出口101bから放出される。最小直径流路111を通って流水直径が調節された消火液がテーパー状流路112でよどみW5を生じさせて、流路113を通る(
図12参照)。この際、よどみW5が生じるエリアは高圧になるほど大きくなり、よどみW5が生じるエリアが放水口101b内に収まらなくなると、消火液の流路とテーパー状流路112の間に空気が侵入し、空気層が形成される。この空気層によって、最小直径流路111を通って流水直径が調節された消火液は、そのままの直径で放水口101bを通ることになる。このように、高圧時では、消火液はテーパー状流路112の内壁面から剥離した状態でテーパー状流路112を通過するため、流水直径aは低圧時の流水直径Aに比べて小さくなり、最小直径流路111の直径に等しくなる。
【0028】
低圧の場合、上流側流路120を経て抵抗流路110に流入した消火液は、抵抗流路110の抵抗を受けて流水直径が調節された後、
図9(a)に示すように表面張力等によりテーパー状流路112の内壁面に沿って流れ、流路113を経て放出口101bから放出される。テーパー状流路112で生じるよどみW5のエリアは、高圧時に比べて小さく、よどみW5が生じるエリアが放水口101b内に収まっているため、消火液の流路とテーパー状流路112の間に空気が侵入せず、空気層が形成されない。空気層が形成されないため、最小直径流路111を通って流水直径が調節された消火液は、テーパー状流路112の内壁を沿うこととなる。すなわち、低圧の場合は、消火液の流水直径Aは、テーパー状流路112の下流端の直径に等しいものとなる。
【0029】
また、中圧の場合は、
図10に示すように低圧時に比べて小さく且つ高圧時に比べて大きい流水直径bとなる。このように、低圧から中圧、更には高圧といったように圧力が高くなるにつれて流水直径は小さくなり、高圧時の最小流水直径は最小直径流路111の直径に等しくなる。
【0030】
図11は、本実施の形態2の消火ノズルによる放水圧と放水量との関係を示す図である。なお、
図11の点線は、比較のため従来の消火ノズルについて示したものである。また、
図11のPA、Pb、Paは、
図10のPA、Pb、Paにそれぞれ対応している。PAは、消火液の流れがテーパー状流路112の内壁面から剥離し始めるときの放水圧(低圧)である。Paは、消火液の流れの流水直径が最小直径流路111の直径に等しくなるときの放水圧(高圧)である。Pbは、その中間の放水圧である。
図11より、本実施の形態2の消火ノズルは流水直径Aの従来の消火ノズルと比較すると何れの放水圧においても放水量が低減されるが、その低減度合いは、高圧になるほど大きくなることがわかる。すなわち、高圧になるほど放水量の低減効果が高くなる。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態2によれば、消火液の流れに対して抵抗を与える抵抗流路110を設けたので、高圧時の放水量を抑えることができる。また、抵抗流路110として最小直径流路111の下流側に、低圧時には消火液の流れが接し、放水圧が高くなるにしたがって消火液の流れが剥離するように傾斜角度を調整したテーパー状流路112を設けたので、高圧時の流水直径の縮小効果を効果的に発揮することができる。
【0032】
また、高圧時における無駄な放水を抑えることができるため、水損による被害を低減することができる。また、消火液の放水圧が高くなりすぎたときに起こる霧状の散水を防止することができる。
【0033】
また、放水流路102の上流側流路120はテーパー状でなく、最小直径流路111と同じ直径の円柱状の流路を形成しても良い。つまり、放水流路102内において最も小径の最小直径流路111と、最小直径流路111の下流端から内径寸法が徐々に拡大するテーパー状流路112とを有し、最小直径流路111を経てテーパー状流路112に流入した消火液の流れが、放水流路102の流入口101aに作用する放水圧が低圧の場合には、前記テーパー状流路112の内壁面に接する流れとなり、高圧の場合には、前記テーパー状流路112の内壁面から剥離する流れとなるように、前記テーパー状流路の傾斜角度が調整されている。