特許第5743524号(P5743524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743524
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】燃料集合体用管端栓
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/10 20060101AFI20150611BHJP
   G21C 21/02 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   G21C3/10 A
   G21C21/02 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-280095(P2010-280095)
(22)【出願日】2010年12月16日
(65)【公開番号】特開2012-127830(P2012-127830A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165697
【氏名又は名称】原子燃料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】武田 透
(72)【発明者】
【氏名】田内 一人
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆典
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−273580(JP,A)
【文献】 特開平09−168865(JP,A)
【文献】 特開平06−249994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/10
G21C 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉用燃料集合体に配置される各要素を構成する円管または角管部材の端部に抵抗溶接される円柱状または角柱状の端栓であって、
前記管部材の端部開口への挿入方向を軸方向として、端部開口側の前方先端からその後方側へ軸方向に沿って、該軸方向と直交する断面積が順次大きくなる3段階の外径または外幅部分を備え、
前記3段階のうちの第1の段階部分として、前記管部材の端部開口の内径または内幅より小さい外径または外幅を有して該端部開口に挿入される端栓先端部と、
前記3段階のうちの第2の段階部分として、前記端部開口の外径または外幅より小さく該端部開口の内径または内幅より大きい外径または外幅を持ち、前記端部開口の平坦な端面に全周に亘って当接する環状面を前記軸方向と直交する垂直面内にある前記第1の段階部分との段差面に有し、抵抗溶接時に前記端面と環状面との当接面から後方の投影領域である外側部分が溶融する円柱または角柱体状溶融部と、
前記3段階のうちの第3の段階部分として、前記円柱または角柱体状溶融部の後方に位置する端栓フランジ部と、を備えたことを特徴とする燃料集合体用管端栓。
【請求項2】
前記柱体状溶融部の軸方向の長さが、前記管部材の厚み寸法より大きいことを特徴とする請求項1に記載の燃料集合体用管端栓。
【請求項3】
前記柱体状溶融部と端栓フランジ部との境界にテーパ状に後方に向かって外径または外幅が拡大する領域を有することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料集合体用管端栓。
【請求項4】
前記端栓は、前記管部材としての円管のジルコニウム合金製被覆管に抵抗溶接によ溶接されるためのものであり、ジルコニウム合金製であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料集合体用管端栓。
【請求項5】
前記被覆管内面にジルコニウムライナ層が内張されているとき、前記柱体状溶融部は円柱状でその外径が前記ジルコニウムライナ層による円管の外径より大きく、前記端栓先端部の外径が前記ジルコニウムライナ層による円管の内径より小さいことを特徴とする請求項4に記載の燃料集合体用管端栓。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の端栓が管部材に抵抗溶接されてなる構成要素を有することを特徴とする燃料集合体。
【請求項7】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の端栓を管部材に抵抗溶接により溶接することを特徴とする燃料集合体構成要素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料集合体を構成する各要素の被覆管や水管等の管部材の端部に抵抗溶接法で溶接される端栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軽水炉用燃料集合体を構成する燃料棒は、ジルコニウム合金製の被覆管の内部に燃料ペレットが充填され、その被覆管の両端に嵌め込まれた端栓が溶接固定することにより密封されて成る。具体的には、被覆管の一端側に端栓を溶接固定してから、被覆管内に燃料ペレットおよびプレナムスプリング等の内装品を挿入すると共に加圧したヘリウムガスを導入した後、他端側に端栓を溶接固定して密封されるものである。また高速増殖炉や黒鉛減速炉、その他の実験炉では、被覆管および端栓の材質としてステンレス鋼やマグネシウム合金、アルミニウム合金なども使われている。
【0003】
一般に、被覆管に端栓を溶接する方法としては、TIG(タングステン不活性ガス)溶接や抵抗溶接が用いられており、日本国内ではTIG溶接が最も実績のある方法として多く採用されている。
【0004】
被覆管内に不活性ガスを導入して密封溶接する際には、不活性ガス加圧雰囲気下で端栓をTIG溶接する方法や、予めガス導入口を設けた端栓を減圧または常圧の不活性ガス雰囲気下でTIG溶接した後にガス導入口から不活性ガスを加圧導入し加圧雰囲気下でガス導入口を密封溶接する方法が採られる。
【0005】
密封溶接をTIG溶接法で行った場合には、安定した品質が得られるものの、加圧雰囲気下で電極棒からアークを飛ばして管を回転させながら周囲を溶接するため装置が複雑になること、溶接部への入熱量が大きいため溶接後に冷却時間が必要になること、さらに、加圧された不活性ガス中ではアークが飛びにくく電極の消耗が激しいこと、などの難点がある。
【0006】
一方、抵抗溶接法は、端栓の溶接に要する時間が短縮できることから、効率的な核燃料棒の製造方法として着目されている。端栓の溶接を抵抗溶接法で行う場合には、被覆管と端栓を突き合わせて押圧しながら両者の間に瞬間的に大電流を流すことにより端栓と被覆管との接触部を発熱させ、短時間で容易に溶接することが可能である(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−194474号公報
【特許文献2】特開平7−306295号公報
【特許文献3】特開平10−58160号公報
【特許文献4】特開平9−225644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、被覆管との抵抗溶接に用いられる端栓の形状としては、管の端面を端栓側のテーパ部で受ける形状のものが提案されているが、被覆管と端栓の溶着が生じる部位は管の端面近傍に限られることから充分な密封性を担保するのが難しく、非常に高い密封性能を求められる燃料棒の溶接において抵抗溶接法を適用することが困難であった。
また、溶接後の密封性を担保するために端栓と被覆管の長手方向の接触領域を予め長くして溶着部位を拡大しようとした場合には、接触領域での電流密度が低下するために溶融に必要な発熱量を得ることが困難であった。
【0009】
沸騰水型原子炉用核燃料要素には、燃料ペレットと被覆管の機械的相互作用を軽減するためにジルコニウム合金管の内面に純ジルコニウムが内張されたジルコニウムライナ付被覆管が用いられている。このジルコニウムライナ付被覆管と端栓の両者を軸方向に強く押し付けながら抵抗溶接すると、管内面に内張されたジルコニウムライナ層が燃料要素の外面側に膨出してしまうことが懸念される。万一、ジルコニウムライナ層が燃料要素の外面側に膨出した場合、ジルコニウムライナ層はジルコニウム合金管に比べて原子炉内の使用環境における耐食性が劣るため、ジルコニウムライナ層が燃料要素の外表面に露出したままでは、該露出部分を基点にして燃料要素の破損や腐食が進展し、密封性を損なう危険性があった。
【0010】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、原子炉用燃料集合体を構成する核燃料要素および水管の製造工程において、各要素の管部材との抵抗溶接法による溶接の際に、管部材の軸方向に沿って充分な溶融領域を形成でき、溶接部に良好な密封性を確保して安定した高品質の核燃料要素及び水管を製造できる端栓を提供し、また溶接部が強固で密封性の高い燃構成要素からなる燃料集合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る燃料集合体用管端栓は、原子炉用燃料集合体に配置される各要素を構成する円管または角管部材の端部に抵抗溶接される円柱状または角柱状の端栓であって、
前記管部材の端部開口への挿入方向を軸方向として、端部開口側の前方先端からその後方側へ軸方向に沿って、該軸方向と直交する断面積が順次大きくなる3段階の外径または外幅部分を備え、
前記3段階のうちの第1の段階部分として、前記管部材の端部開口の内径または内幅より小さい外径または外幅を有して該端部開口に挿入される端栓先端部と、
前記3段階のうちの第2の段階部分として、前記端部開口の外径または外幅より小さく該端部開口の内径または内幅より大きい外径または外幅を持ち、前記端部開口の平坦な端面に全周に亘って当接する環状面を前記軸方向と直交する垂直面内にある前記第1の段階部分との段差面に有し、抵抗溶接時に前記端面と環状面との当接面から後方の投影領域である外側部分が溶融する円柱または角柱体状溶融部と、
前記3段階のうちの第3の段階部分として、前記円柱または角柱体状溶融部の後方に位置する端栓フランジ部と、を備えたものである。
【0012】
請求項2に記載の発明に係る燃料集合体用管端栓は、請求項1に記載の燃料集合体用管端栓において、前記柱体状溶融部の軸方向の長さが、前記管部材の厚み寸法より大きいことを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明に係る燃料集合体用管端栓は、請求項1または2に記載の燃料集合体用管端栓において、前記柱体状溶融部と端栓フランジ部との境界にテーパ状に後方に向かって外径が拡大する領域を有することを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載の発明に係る燃料集合体用管端栓は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料集合体用管端栓において、前記端栓は、前記管部材としての円管のジルコニウム合金製被覆管に抵抗溶接によ溶接されるためのものであり、ジルコニウム合金製であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に記載の発明に係る燃料集合体用管端栓は、請求項4に記載の燃料集合体用管端栓において、前記被覆管内面にジルコニウムライナ層が内張されているとき、前記柱体状溶融部は円柱状でその外径が前記ジルコニウムライナ層による円管の外径より大きく、前記端栓先端部の外径が前記ジルコニウムライナ層による円管の内径より小さいことを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に記載の発明に係る燃料集合体は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の端栓が管部材に抵抗溶接されてなる燃料集合体構成要素を有することを特徴とするものである。
【0017】
請求項7に記載の発明に係る燃料集合体構成要素の製造方法は、前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の端栓を管部材に抵抗溶接により溶接することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、燃料集合体構成要素の管部材の端部に溶接される端栓において、管部材の端部開口の内寸より小さい外寸を有して該端部開口に挿入される端栓先端部と、該先端部の同軸上後方位置で段階的に拡径して前記端部開口の端面に全周に亘って当接する環状面を有し、前記端部開口の外寸より小さく内寸より大きい外寸を持つ柱体状溶融部と、該柱体状溶融部の同軸上後方位置でさらに外寸が拡大した端栓フランジ部と、を備えたものとしたため、被覆管や水管等の管部材と端栓とを同軸上で互いに押圧しながら抵抗溶接を行うと、柱体状溶融部が、その全長に亘って外側領域が溶融しながら管部材内部に挿入溶接されるため、従来より大きい充分な溶着領域を確保でき、溶接部が強固で密封性の高い良質な燃料集合体構成要素を製造できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例による被覆管用端栓の概略構成図であり、(a)は被覆管との当接前状態の部材構成を示す縦断面図、(b)は被覆管との当接状態を示す縦断面図である。
図2図1の端栓の溶接後の被覆管内状態を示す部分拡大縦断面図である。
図3図1とは異なる形態の本発明による被覆管用端栓の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、原子炉用燃料集合体を構成する各要素の製造工程において、該要素の管部材の端部に溶接される端栓として、管部材の端部開口の内寸より小さい外寸を有して該端部開口に挿入される端栓先端部と、該先端部の同軸上後方位置で段階的に外寸が拡大して前記端部開口の端面に全周に亘って当接する環状面を有し、前記端部開口の外寸より小さく内寸より大きい外寸を持つ柱体状溶融部と、該柱体状溶融部の同軸上後方位置でさらに外寸が拡大した端栓フランジ部と、を備えたものである。
【0021】
このため、溶接の際に、それぞれ電極を取り付けた管部材と端栓とを同軸上に配置して端栓先端部を管部材の端部開口から内部へ挿入しながら互いに当接させると、柱体状溶融部の環状面の内側領域が、管部材の開口端面の内側領域に全周に亘って当接する。この状態で両者を互いに軸方向に押圧しながら電極間に通電させれば、その当接部で発熱・溶融が生じ、柱体状溶融部ではその厚みのうち管部材の端部開口の内寸より外側の領域が、また管部材ではその厚みのうち柱体状溶融部の外寸より内側の領域が、互いに当接部を出発位置として溶融が軸方向で進み、柱体状溶融部が管部材の溶融部を管内に押込ながら管部材の内部へ相対的に進入する。
【0022】
そしてこの管部材と柱体状溶融部との相対的な溶融・進入は管部材の開口端部の溶融していない外側部が端栓フランジの拡寸部に到達するまで進めることができる。従って、本発明の端栓によれば、柱体状溶融部の軸方向全長に亘る外周領域を溶着領域とすることができるため、このような比較的長い距離で得られる強固な溶着領域により、従来困難であった抵抗溶接法での溶接でも、溶接部における密封性が高い高品質の燃料集合体構成要素を製造することが可能となる。
【0023】
本発明の端栓においては、上記のように柱体状溶融部の軸方向長さが溶接領域の距離となるため、該柱体状溶融部の軸方向長さが長いほどより強固な溶着部と密封性を確保できる。この強固な溶着部を得るため、柱体状溶融部の軸方向長さは管部材の厚み寸法より大きくすることが望ましい。
【0024】
また、溶接が進んで、管部材の内側領域と端栓の柱体状溶融部の外側領域との溶融部分は、管内に押し込まれて凝固するが、同時に一部分が管部材と端栓との隙間を埋めるようにしながら管部材の外側に押し出されることがある。そこで、柱体状溶融部と端栓フランジ部との境界をテーパ状拡径部で構成すれば、管外に押し出される溶融部は、該テーパ面上に沿って斜めに押し出されて凝固するため、この外側凝固部において端栓フランジ部との間に僅かな隙間を生じるこも回避される。
【0025】
本発明における燃料集合体構成要素の管部材として、まず、燃料棒の被覆管の場合、一般的にジルコニウム合金製であることが多いが、この場合、端栓もジルコニウム合金製として、抵抗溶接法で上記のように充分な溶着領域で良好に被覆管端部に溶接することができる。また、被覆管が円管であれば、これに対応して溶融部は円柱形状とすればよい。
【0026】
なお、ジルコニウム合金製の被覆管には、燃料ペレットとの機械的相互作用を軽減するために被覆管内面に純ジルコニウムからなるジルコニウムライナ層が内張されている場合があるが、この場合、ジルコニウムライナ層の溶接部への巻き込みを防止するためには、端栓の前記柱体状溶融部の外径は、このジルコニウムライナ層の外径より大きければよい。これによって、端栓の抵抗溶接の際には、柱体状溶融部の被覆管端面への当接部分が被覆管内面側でジルコニウムライナ層の溶融した部分を管内側に押し戻すため、ジルコニウム合金に比べて強度及び耐食性に劣るジルコニウムライナ層の溶接部への巻き込みや管外側への露出を確実に防止できる。
【0027】
また、本発明における燃料集合体構成要素の管部材としては、被覆管に限らず、例えば水管となる管部材もある。この水管用管部材への端栓溶接においても、本発明の端栓を用いることにより、管部材の軸方向に対して充分な溶融領域を形成でき、良好な機械的強度を有した水管を製造することができる。また、水管が角管からなる場合、これに対応して溶融部は角柱形状とすれば良い。
【0028】
以上のような構成を有する本発明の端栓を管部材に溶接してなる燃料集合体構成要素は、溶接部が強固で密封性の高いものであるため、このような構成要素を配置してなる燃料集合体も安定した品質のものである。
【実施例】
【0029】
本発明の一実施例として、ジルコニウム合金製被覆管に抵抗溶接により溶接されるためのジルコニウム合金製の端栓を図1に示す。図1(a)は、溶接開始前状態における部材構成を示す縦断面図、(b)は溶接開始時の端栓当接状態における縦断面図である。
本実施例においては、被覆管10の内面に純ジルコニウムの内張によるジルコニウムライナ層12が設けられている場合を示す。従って、被覆管10の実質的な最小内径はこのジルコニウムライナ層12の内径となる。
【0030】
本端栓1は、被覆管10の端部開口から内側へ挿入される円柱状の端栓先端部2と、その同軸上後方で拡径する柱体(円柱)状溶融部3と、さらにその同軸上後方で段差状に拡径し、溶接後に被覆管端部開口を塞ぐことになるフランジ部5とを備えたものである。端栓先端部2の外寸(外径)は、挿入のためジルコニウムライナ層12の内径d1より小さければ良い。なお、端栓1における後方は、被覆管10に対して離反する方向を言う。
【0031】
円柱状溶融部3は、その外寸(外径)Lがジルコニウムライナ層12の外径d2より大きく被覆管10の外寸(外径)Dより小さい。これによって、端栓1を被覆管10に対して同軸状に配置した場合、円柱状溶融部3には、端栓先端部2の外周面に対して段差を形成して被覆管10の端面11に対面する環状面4が形成される。この環状面4は、溶接開始時に被覆管10の端面11の内側(中心軸側)領域に全周に亘って当接し、該当接部から溶融が開始される。
【0032】
即ち、被覆管側電極20Aを取り付けた被覆管10と、端栓側電極20Bを取り付けた端栓1とを、不活性ガス雰囲気とした溶接チャンバ−(不図示)内で同軸上に配置し、両者を、被覆管端面11と円柱状溶融部3の環状面4とで互いに当接した状態として、互いに軸方向に押圧しながら、両電極20A,20B間に通電する。
【0033】
すると、前記被覆管10の端面1と環状面4との当接部で発熱・溶融が起こる。この溶融は、円柱状溶融部3では、被覆管端面11との当接面から後方の投影領域である外側部分Xが、また被覆管10では、端面11のうち円柱状溶融部3の環状面4との当接面から奥方向の投影領域である内側部分(ジルコニウムライナ層12を含む)Zが、それぞれ軸方向に沿って溶融していき、同時に、円柱状溶融部3が溶融部を進行方向に押し込みながら相対的に被覆管10の内部へ進入していく。
【0034】
この溶融・進入は、被覆管端面11の溶融していない外側部がフランジ部5の拡径部に到達するまで進められ、結果として、円柱状溶融部3の軸方向の全長Yに亘る外周領域が溶着領域となる。従って、従来のほぼ被覆管端面のみの場合に比べて充分に大きい溶着領域が確保でき、溶接部は強固で密封性の高いものとなる。
【0035】
溶接後の被覆管10の内部は、図2の部分拡大縦断面図に示すように、円柱状先端部3と共に円柱状溶融部3が被覆管10の内部に挿入されていると共に、円柱状溶融部3の外側部分であった溶融部と、円柱状溶融部3の挿入領域に亘る被覆管10の内側部分の溶融部とが、管内に押し込まれ、その凝固部8が被覆管10と円柱状溶融部3とを一体にしている。このとき、被覆管10の内側部分と同時に溶融されたジルコニウムライナ層12も管内に押し込まれており、ジルコニウム合金に比べて強度、耐食性に劣る純ジルコニウムが外部に露出する恐れはない。
【0036】
なお、以上の図1に示した端栓1では、円柱状溶融部3とフランジ部5との境界が段差状の拡径部7となっている構成を示したが、図3に示すように、円柱状溶融部3とフランジ部5との境界をテーパ状拡径部7としても良い。
【0037】
被覆管10の内側部分と円柱状溶融部3の外側部分との溶融部のうち、一部が被覆管10と端栓1との間を埋めながら被覆管10の外側へ押し出されることもある。そこで、前記テーパ状拡径部7があれば、溶接の進行に伴って押し出される溶融部は、最終的にテーパ面上に沿って斜めに押し上げられてから凝固するため、この外側凝固部とフランジ部5との間にも僅かな隙間を生じることがない。
【符号の説明】
【0038】
1:端栓
2:端栓先端部
3:円柱状溶融部
4:環状面
L:溶融部の外径
Y:溶融部の全長
5:フランジ部
6:段差状拡径部
7:テーパ状拡径部
8:凝固部
10:被覆管
11:被覆管端面
12:ジルコニウムライナ層
d1:ジルコニウムライナ層の内径
d2:ジルコニウムライナ層の外径
D:被覆管の外径
20A,20B:電極
図1
図2
図3