【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、ポリエーテル共重合体を電気化学分野等の種々の分野において好適に用いることができるように種々検討したところ、ペレット化等の加工性がポリエーテル共重合体において重要な技術的意義を有することに着目した。そして、合成されるポリエーテル共重合体の機械物性がその加工性を大きく変えることとなり、降伏応力や破断応力といった特定の物性において加工性を優れたものとするポリエーテル共重合体としての最適範囲を見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。当該最適範囲は、ポリエーテル共重合体がどの程度の加工性を持てば不具合を充分に抑制して加工できるようになるのかの指標となり、これまで想定されていなかったものである。また、当該ポリエーテル共重合体は、シート化、ペレット化せずに用いる場合であっても、引張強度のより高いポリエーテルと比較して、粘度が比較的低い為、合成設備仕様が特殊なものとならず軽微で済む点、配管での輸送、出荷容器への充填の際液切れ性が良く、取扱い性に優れる点、ユーザーでの加工性が良い点などにおいて、優れたものとなるものである。特に、高分子電解質等の電気化学デバイス用途においては、シート化、ペレット化せずに用いる場合又はそのような場合でなくても、ポリエーテル共重合体を加工して用いるに際して高い精度、品質を達成することができるものである。
【0009】
すなわち本発明は、温度20℃での引張試験における降伏応力が、1.0〜8.0MPaであることを特徴とするポリエーテル共重合体である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明のポリエーテル共重合体は、温度20℃での引張試験における降伏応力が、1.0〜8.0MPaであるものである。ポリエーテル共重合体をペレット化する工程においては、シート状もしくはストランド状のポリエーテル共重合体に張力を掛けて造粒装置に導入する場合、降伏応力の値が本発明のポリエーテル共重合体における値の下限よりも低いと、引張りに対する強度が低いために、シートもしくはストランドが切れたり、たわんだりする恐れがある。また、降伏応力の大きいものは分子量や粘度が高いものとなっている場合が多く、降伏応力の値が本発明のポリエーテル共重合体における値の上限よりも高いポリエーテル共重合体は、引張りには強いが成形しにくいものであるため好ましくない。更には、降伏応力の値が本発明のポリエーテル共重合体における値の上限よりも高いポリエーテル共重合体は、ごわごわとしたような硬い性状となるため、シート化した際にロールで巻き取りにくくなったり、ペレット化する際にペレタイザーの歯が欠けて異物混入の原因となったりする恐れがある。一方で、上記特定の範囲内の降伏応力を有するポリエーテル共重合体は、適度な強度を持ち、加工性に優れたものである。上記温度20℃での引張試験における降伏応力としては、1.5〜7.5MPaであることが好ましく、より好ましくは、2.0〜7.0MPa、更に好ましくは、3.0〜5.0MPaである。
なお、上記降伏応力は、インストロン万能試験機(製品名「1185型試験機」、インストロン社製)を用いた、温度20℃、引張速度20mm/分の条件下での引張試験により後述する実施例と同様にして測定することができる。試験に用いる試験片としては、長さ5〜10cm、幅1〜2cm、厚さ150〜200μmのものを用いることが好適である。
【0011】
上記ポリエーテル共重合体は、温度20℃での引張試験における破断応力が、4.0〜20MPaであることが好ましい。破断応力の値がこのような範囲であるポリエーテル共重合体は、更に高い加工性を有するものであり、シート化、ペレット化して用いる用途により好適に用いることができる。上記温度20℃での引張試験における破断応力としては、4.5〜18.0MPaであることが好ましく、より好ましくは、5.0〜15.0MPa、更に好ましくは、5.0〜12.0MPaである。
なお、上記破断応力は、上述した降伏応力と同様の引張試験を行うことにより測定することができる。
このように、本発明のポリエーテル共重合体は、加工性、取扱い性に優れ、高分子電解質等の電気化学デバイス用途に好適なものであるが、後述するようなシート化工程及びそれに続くペレット化工程により加工するのに特に適したポリエーテル共重合体である。
【0012】
本発明のポリエーテル共重合体は、上述したように、温度20℃での引張試験における降伏応力が特定の範囲にあるものであり、そのような特性を有するポリエーテル共重合体であればその構造は特に制限されないが、下記一般式(1);
AxByCz (1)
(式中、Aは、−CH
2CH
2O−を表す。Bは、−CH
2CH(R
1)O−を表し、R
1は、−Re−Rf−R
3を表す。Reは、−(CH
2CH
2O)p−を表し、pは、同一又は異なって、0〜10の整数を表す。Rfは、−(CH
2O)q−を表し、qは、同一又は異なって、0又は1を表す。R
3は、同一若しくは異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜16のアルキル基、炭素数3〜16のシクロアルキル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数7〜16のアラルキル基、又は、炭素数2〜16のアシロキシ基を表す。Cは、−CH
2CH(R
2)O−を表し、R
2は、−Re−Rf−R
4を表す。R
4は、同一若しくは異なって、炭素数2〜16のアルケニル基、炭素数3〜16のシクロアルケニル基、又は、(メタ)アクリロイル基を表す。xはAの、yはBの、zはCのモル分率をそれぞれ表し、xは、0.80〜0.98であり、yは、0.02〜0.20であり、zは、0〜0.05である。)で表される構造を有するものであることが好ましい。
このような構成を持つポリエーテル共重合体は、上記降伏応力や破断応力を満たすことができる共重合体の好適な実施形態の1つである。
【0013】
上記一般式(1)におけるBは、−CH
2CH(R
1)O−を表し、R
1は、−Re−Rf−R
3を表すものである。上記Reは、−(CH
2CH
2O)p−を表し、pは、同一又は異なって、0〜10の整数を表す。上記pとして好ましくは、0〜5であり、より好ましくは、0〜3である。特に好ましくは、0である。上記Rfは、−(CH
2O)q−を表し、qは、同一又は異なって、0又は1を表す。上記R
3は、同一若しくは異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜16のアルキル基、炭素数3〜16のシクロアルキル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数7〜16のアラルキル基、又は、炭素数2〜16のアシロキシ基を表す。上記R
3における置換基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜16のアシロキシ基が挙げられる。これらの中でも上記R
3としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数2〜10のアシロキシ基が好ましく、より好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数7〜9のアラルキル基、炭素数2〜6のアシロキシ基である。更に好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基であり、特に好ましくは、炭素数1又は2のアルキル基である。
なお上記Bにおいて、R
1を構成する炭素原子と、R
1以外の2つの炭素原子とで環構造が形成されていてもよい。
【0014】
上記Bとして具体的に好ましい形態としては、ポリエーテル共重合体中に上記Bを導入するために用いられる原料単量体で例示すると、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシへキサン、1,2−エポキシオクタン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、エチレングリコールメチルグリシジルエーテルが挙げられる。これらの中でも、メチルグリシジルエーテル、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2−エポキシペンタンがより好ましく、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが更に好ましい。
【0015】
上記一般式(1)におけるCは、−CH
2CH(R
2)O−を表し、R
2は、−Re−Rf−R
4を表す。上記Re及びRfは、上述したRe及びRfと同様である。上記R
4は、同一若しくは異なって、炭素数2〜16のアルケニル基、炭素数3〜16のシクロアルケニル基、又は、(メタ)アクリロイル基を表す。上記R
4における置換基としては、炭素数2〜16のアルケニル基、炭素数3〜16のシクロアルケニル基、−(OCH
2CH
2)r−O−Rgで表される基(rは、0〜10の整数を表す。Rgは、炭素数2〜16のアルケニル基を表す。)等が挙げられる。このように、上記R
4は架橋性官能基であり、これらの中でも、上記R
4としては、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、(メタ)アクリロイル基が好ましく、より好ましくは、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜7のシクロアルケニル基、(メタ)アクリロイル基であり、特に好ましくは、炭素数3〜6のアルケニル基である。
なお上記Cにおいて、R
2を構成する炭素原子と、R
2以外の2つの炭素原子とで環構造が形成されていてもよい。
【0016】
上記Cとして具体的に好ましい形態としては、ポリエーテル共重合体中に上記Cを導入するために用いられる原料単量体で例示すると、エポキシブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロへキセン、1,2−エポキシ−5−シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、グリシジル−4−ヘキサノエート、又は、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α−テルペニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、4−ビニルベンジルグリシジルエーテル、4−アリルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールアリルグリシジルエーテル、エチレングリコールビニルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールビニルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールビニルグリシジルエーテル、オリゴエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、オリゴエチレングリコールビニルグリシジルエーテルが挙げられる。これらの中でも、エポキシブテン、アリルグリシジルエーテルがより好ましく、アリルグリシジルエーテルが更に好ましい。
【0017】
上記一般式(1)におけるxはAの、yはBの、zはCのモル分率をそれぞれ表し、xは、0.80〜0.98であり、yは、0.02〜0.20であり、zは、0〜0.05である。これらのうちでも、xは、0.85〜0.97であり、yは、0.03〜0.15であり、zは、0〜0.03であることが好ましく、更に好ましくは、xは、0.90〜0.96であり、yは、0.04〜0.10であり、zは、0〜0.02であることである。
なお、上記一般式(1)において、A、B、及び、Cは、それぞれ1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。2種類以上である場合の結合状態としては、ブロック状であってもよいし、ランダム状であってもよいし、交互に結合するものであってもよい。また、A、B、及び、Cの結合状態としても、ブロック状であってもよいし、ランダム状であってもよいし、交互に結合するものであってもよい。なお、どのような結合状態とするかによって、得られるポリエーテル共重合体の融点を調整することが可能であることから、ポリエーテル共重合体を製造するための原料単量体の種類及び単量体混合物中の各単量体の配合割合に応じてそれらの結合状態を適宜設定することで、ポリエーテル共重合体の融点を後述するような好ましい範囲のものとすることができる。
【0018】
上記一般式(1)で表される構造を有するポリエーテル共重合体は、後述するように、例えば、一般式(1)におけるAを導入するために用いられるエチレンオキシド、上述した一般式(1)におけるBを導入するために用いられる原料単量体、及び、上述した一般式(1)におけるCを導入するために用いられる原料単量体を、一般式(1)におけるx、y、zのモル分率となるような割合で含む単量体混合物を溶媒中で攪拌重合することにより製造することができるものである。そのようにして得られた上記ポリエーテル共重合体においては、その末端構造は、上記単量体混合物に含まれる単量体のうち、末端部に結合している単量体、又は、単量体混合物を重合する際に用いられる反応開始剤の残基等に由来することとなり、例えばアルコキシ基、水酸基、−O
−Na
+等の水酸基のアルカリ金属塩などが挙げられる。なお、上記末端構造は、更に置換反応等により置換されていてもよく、該置換反応は、置換反応として通常用いられる試薬、反応条件等により行うことができる。
また更には、上記一般式(1)で表される構造を有するポリエーテル共重合体は、A、B及びCを導入するために用いられる原料単量体に加えて、それら原料単量体以外のその他の単量体成分を含む単量体混合物を重合して得られるものであってもよい。すなわち、上記一般式(1)で表される構造を有するポリエーテル共重合体は、上記A、B及びCで表される構造部位に加えて、上記その他の単量体成分に由来する構造部位を有していてもよい。
ただし、上記一般式(1)で表される構造を有するポリエーテル共重合体全体に対して、上記一般式(1)で表される構造部分の占める割合は、99〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、99.5〜100質量%であり、更に好ましくは、99.9〜100質量%である。
【0019】
上記ポリエーテル共重合体は、重量平均分子量が30,000〜500,000であることが好ましい。重量平均分子量がこのような範囲であると、ポリエーテル共重合体をストランド化もしくはシート化、ペレット化した際に適度な強度を与えることに寄与することができる。重量平均分子量としてより好ましくは、50,000〜300,000であり、更に好ましくは、50,000〜200,000、特に好ましくは80,000〜150,000である。
なお、上記ポリエーテル共重合体の重量平均分子量は、後述する実施例と同様の方法により測定することが可能である。
【0020】
上記ポリエーテル共重合体は、融点が35〜55℃であることが好ましい。融点がこのような範囲であると、ポリエーテル共重合体をシート化、ペレット化した際に適度な強度を与えることに寄与することができる。融点としてより好ましくは、35〜50℃であり、更に好ましくは、40〜50℃である。
なお、上記ポリエーテル共重合体の融点は、後述する実施例と同様の方法により測定することが可能である。
【0021】
また、上記ポリエーテル共重合体は、結晶化温度が12〜45℃であることが好ましい。結晶化温度がこのような範囲であると、ポリエーテル共重合体をシート化、ペレット化した際に適度な強度を与えることに寄与することができる。結晶化温度としてより好ましくは、13〜35℃であり、更に好ましくは、15〜30℃である。
なお、上記ポリエーテル共重合体の結晶化温度は、後述する実施例と同様の方法により測定することが可能である。
【0022】
上記ポリエーテル共重合体は、100℃で剪断速度が100(1/秒)以上500(1/秒)以下であるときのせん断粘度が10〜50,000Pa・sであることが好ましい。粘度がこのような範囲であると、ポリエーテル共重合体をストランド化またはシート化の際に適度な強度を与えることに寄与することができる。粘度としてより好ましくは、50〜10,000Pa・sであり、更に好ましくは、100〜5,000Pa・sである。
なお、上記ポリエーテル共重合体の粘度は、動的粘弾性測定装置(製品名「ARESレオメーター」、ティ エー インスツルメント社製)やキャピラリー粘度計(ROSAND社製)を用いて測定することができる。
【0023】
上記ポリエーテル共重合体を製造する方法としては、上述した構造を有するポリエーテル共重合体が得られれば特に制限されず、通常用いられる重合方法により行うことができる。上記製造方法としては、例えば、得られるポリエーテル共重合体に一般式(1)におけるAを導入するために用いられるエチレンオキシド、上述した一般式(1)におけるBを導入するために用いられる原料単量体、及び、上述した一般式(1)におけるCを導入するために用いられる原料単量体を一般式(1)におけるx、y、zのモル分率となるような割合で含む単量体混合物を、溶媒中で攪拌重合する方法等が挙げられる。重合方法としては、特に制限されず、溶液重合法、沈殿重合法、懸濁重合等が挙げられる。これらの中でも、ポリエーテル共重合体の生産性の観点から溶液重合法により行うことが好ましい。
なお、上記単量体混合物には、得られるポリエーテル共重合体が本発明の有する効果を発揮することができる範囲内で、エチレンオキシド及び上記原料単量体の他にその他の成分が含まれていてもよい。単量体混合物が上記その他の成分を含む場合には、単量体混合物100質量%におけるその他の成分の含有量は、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、40質量%以下であり、更に好ましくは、30質量%以下である。
【0024】
また、上記単量体混合物の反応系への添加方法としては、特に制限されないが、溶媒を仕込んだ反応系に単量体混合物を一括して供給してもよいし、連続的に又は断続的に供給する方法としてもよい。更に単量体混合物を連続的に又は断続的に供給する場合には、単量体混合物をあらかじめ調整しておいて供給してもよいし、単量体混合物に含まれる原料単量体等を各々独立して供給し、反応系中に添加された後に混合物となる形態であってもよい。
上述した製造方法の中でも、あらかじめ仕込んだ溶媒中に単量体混合物を連続的に供給しながら溶液重合を行う方法が、生産性、安全性の観点から、好ましい形態である。
【0025】
上記ポリエーテル共重合体の製造方法において、溶媒の存在下に重合反応を行う場合に用いられる溶媒としては、通常重合反応に用いられる溶媒を用いることができるが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘプタン、オクタン、n−へキサン、n−ペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルブチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメトキシエタン等のエチレングリコールジアルキルエーテル類の溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル系溶媒;等の有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、トルエン、キシレンが好ましい。
【0026】
上記溶媒の使用量としては、特に制限されず、反応に用いる単量体混合物の種類や、反応形態等に応じて適宜設定することができるが、例えば、単量体混合物の仕込み量100質量部に対して、溶媒を0〜300質量部使用することが好ましい。より好ましくは、10〜250質量部であり、更に好ましくは、50〜200質量部である。
【0027】
上記ポリエーテル共重合体の製造方法は、重合反応の際に通常用いられる反応開始剤、酸化防止剤、可溶化剤等を用いて行うことができる。
上記反応開始剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムアルコラート、ナトリウムアルコラート、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ性触媒;金属カリウム、金属ナトリウム等の金属;水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物、金属イオン添加酸化マグネシウム、焼成ハイドロタルサイト等のAl−Mg系複合酸化物触媒又はそれらを表面改質した触媒;バリウム酸化物、バリウム水酸化物、層状化合物、ストロンチウム酸化物、ストロンチウム水酸化物、カルシウム化合物、セシウム化合物、複合金属シアン化錯体、ルイス酸やフリーデルクラフツ触媒等の酸触媒;等が挙げられる。上記反応開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
反応開始剤の使用量は、合成されるポリエーテル共重合体の分子量に影響するため、上記反応開始剤の使用量としては、合成するポリエーテル共重合体の分子量に応じて適宜設定することができるが、例えば、単量体混合物の仕込み量100質量%に対して、反応開始剤を0.01〜1.0質量%使用することが好ましい。このような使用量とすることによって、上述した好ましい分子量を持ったポリエーテル共重合体を製造することができる。反応開始剤の使用量としてより好ましくは、単量体混合物の仕込み量100質量%に対して、0.01〜0.5質量%であり、更に好ましくは、0.02〜0.1質量%である。
【0029】
反応開始剤の添加方法としては、特に制限されず、単量体混合物を反応系中に供給する前に、溶媒と共に仕込んでいてもよいし、単量体混合物の供給を開始した後に一括して投入する、又は、連続的にあるいは断続的に供給することとしてもよい。
【0030】
上記ポリエーテル共重合体を製造する重合反応時の反応温度としては、50〜150℃であることが好ましい。より好ましくは、60〜120℃であり、更に好ましくは、70〜110℃である。また、反応時間は、1〜24時間であることが好ましい。より好ましくは、2〜20時間であり、更に好ましくは、3〜15時間である。
また、上記重合反応時の反応系中の雰囲気は、不活性ガス雰囲気であることが好ましい。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスが好ましい。
なお、上記ポリエーテル共重合体の製造方法は、上述した重合反応を行う工程に引き続いて熟成工程を行ってもよいし、更には反応系から溶媒成分を蒸発させ、ポリエーテル共重合体を精製回収する工程を行ってもよい。
【0031】
また、上記ポリエーテル共重合体の製造方法は、上述した重合反応を行う工程の後に、又は、該重合反応工程に引き続いて上記熟成工程を行う場合には、該熟成工程の後に、酸化防止剤を添加することが好ましい。このように、上記ポリエーテル共重合体の重合反応を終えた後に、酸化防止剤を添加することにより、該共重合体の熱安定性が改善され、ストランド化、シート化、ペレット化工程に供した際に、強度低下を改善することができ、もって、ストランド化、シート化、ペレット化工程等を含めたストランド、シート、ペレットの製造全般における作業環境の管理負担を軽減することが可能となる。
このように、本発明のポリエーテル共重合体と酸化防止剤とを含むポリエーテル共重合体含有組成物もまた、本発明の1つである。
【0032】
上記酸化防止剤としては、通常酸化防止剤として用いられるものであれば、特に制限されないが、フェノール系酸化防止剤、ジフェニルアミン系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤を用いることが好ましい。
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第三ブチルフェノール)、4,4−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
【0033】
上記ジフェニルアミン系酸化防止剤としては、例えば、ジフェニルアミン、p,p’−ジブチルジフェニルアミン、p,p’−ジ第三ブチルジフェニルアミン、p,p’−ジペンチルジフェニルアミン、p,p’−ジヘキシルジフェニルアミン、p,p’−ジヘプチルジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、p,p’−ジノニルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン、炭素数4〜9の混合アルキルジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、4−n−ブチルアミノフェノール、4−ブチリルアミノフェノール、4−ノナノイルアミノフェノール、4−ドデカノイルアミノフェノール、4−オクタデカノイルアミノフェノール、ジ(4−メトキシフェニル)アミン、2,6−ジ−第三ブチル−4−ジメチルアミノメチルフェノール、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ジ[(2−メチルフェニル)アミノ]エタン、1,2−ジ(フェニルアミノ)プロパン、(o−トリル)ニグアニド、ジ[4−(1’,3’−ジメチルブチル)フェニル]アミン、第三オクチル化N−フェニル−1−ナフチルアミン、スチレン化ジフェニルアミン、フェノチアジン、10−メチルフェノチアジン、2−メチルフェノチアジン、2−トリフルオロメチルフェノチアジン、フェノザジン等が挙げられる。
【0034】
上記ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ・ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)−1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(炭素数12〜15の混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラトリデシル−4,4’−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン−トリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、トリス(2−[(2,4,7,9−テトラキス第三ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]エチル)アミン、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール−2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト、テトラキス(2−第三ブチル−4−メチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ第三アミルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチル−5−メチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2−第三ブチル−4,6−ジメチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
【0035】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリルエステル、ジミリスチルエステル、ミリスチルステアリルエステル、ジステアリルエステルなどのジアルキルチオジプロピオンネート類; ペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)などのポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類;等が挙げられる。
【0036】
上記酸化防止剤としては、上述したものの中でも、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、4,4−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、フェノチアジン、10−メチルフェノチアジン、2−メチルフェノチアジン、2−トリフルオロメチルフェノチアジン、フェノザジンが好ましく、より好ましくは、4,4−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)である。
これら酸化防止剤としては1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0037】
上記酸化防止剤の使用量としては、例えば、合成されたポリエーテル共重合体100質量%に対して、酸化防止剤を0.01〜1.0質量%使用することが好ましい。このような使用量とすることによって、上述した酸化防止剤を添加することによる効果をより充分に発揮することが可能となる。酸化防止剤の使用量としてより好ましくは、合成されたポリエーテル共重合体100質量%に対して、0.05〜0.8質量%であり、更に好ましくは、0.1〜0.7質量%である。
【0038】
本発明のポリエーテル共重合体は、ストランド化工程、シート化工程やペレット化工程によりストランド、シートやペレットとした場合に、適度な強度を持つこととなり、高い加工性が得られるものであることから、ストランド化、シート化、ペレット化して用いることが好適なものである。すなわち、本発明のポリエーテル共重合体が、ストランド形成用ポリマー、シート形成用ポリマー、ペレット形成用ポリマーであることもまた、本発明の1つである。そして、そのようなストランド化、シート化されたポリエーテル共重合体の好ましい用途としては、現在注目を集めている二次電池の高分子電解質を挙げることができ、本発明のポリエーテル共重合体も高分子電解質として好適に用いることができるものである。このように、本発明のポリエーテル共重合体が、高分子電解質用ポリマーであることもまた、本発明の1つである。
なお、本発明のポリエーテル共重合体は、シート化して高分子電解質として用いることができるが、高分子電解質としては、シート化された形態に限らず、ストランド化工程、シート化工程を経ずストランド化、シート化されていない本発明のポリエーテル共重合体を高分子電解質として用いることも可能である。このようなストランド化、シート化されていない本発明のポリエーテル共重合体を高分子電解質用ポリマーとして用いることも本発明の範囲内である。
【0039】
上記本発明のポリエーテル共重合体をストランド化、シート化、ペレット化するための方法としては特に制限されないが、まずストランド化、シート化するための方法としては、例えば、合成されたポリエーテル共重合体を脱揮により揮発成分を除いた後、ストランドまたはシートに成形する方法が挙げられる。
【0040】
上記ポリエーテル共重合体をシート化する方法としては、シート化合成されたポリエーテル共重合体を溶融状態にして一定の厚みで押し出し、該共重合体の融点以下の温度に保持された金属面と接触させることで、溶融したポリエーテル共重合体を固化させシート化する方法等も挙げられる。
上記シート化方法において溶融状態のポリエーテル共重合体を押し出す際の該共重合体の温度としては、あまり高すぎると、冷却する際の効率が悪くなってしまうため、ポリエーテル共重合体の融点より200℃未満高い温度であることが好ましい。より好ましくは、150℃未満であり、更に好ましくは100℃未満である。
【0041】
上記シート化方法において、溶融状態のポリエーテル共重合体は、一定の厚みで押し出されることとなるが、得られるシートの厚さとしては、0.1〜5mmであることがましい。本発明のポリエーテル共重合体は、厚いシートとした場合であっても、適度な強度を持ち、高い加工性を有するものとなるために、厚いシートとした場合に、本発明のポリエーテル共重合体の効果がより顕著に発揮されるものとなる。シートの厚さとしてより好ましくは、0.2〜3mmであり、更に好ましくは、0.5〜2.5mmである。
また、ストランド化する方法としては、ストランドダイから押出す方法が最も一般的であるが、その太さは0.1mm〜20mmであることが好ましい。より好ましくは、0.5mm〜10mm、更に好ましくは1mm〜5mmである。
【0042】
上記金属面の温度をポリエーテル共重合体の融点以下の温度に保持するための方法としては、該温度を保持することができれば特に制限されないが、例えば、冷却エア、水、エチレングリコール等の冷媒によって冷却する方法が挙げられる。
【0043】
そして、上述のようにしてストランド化またはシート化されたポリエーテル共重合体をペレタイザーに導入して切断することによりペレット化することができる。上記ペレタイザーとしては、通常用いられるものを適宜使用することができる。