(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粉末化触媒でありこの細孔容積が少なくとも0.68ml/gであるか、造形触媒であり直径10nm以上の細孔の細孔容積の割合が少なくとも65%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の触媒。
ニッケルイオン源およびチタンイオン源を含むが鉄を実質的に含まない金属塩溶液を、ナトリウム水ガラス溶液と、pH8から9.5および温度70℃から100℃で反応させて、触媒物質を共沈させ、共沈した触媒物質を回収してシリカ担持ニッケル触媒を得、次いで乾燥、焼成、および還元すること、を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のシリカ担持ニッケル触媒の調製プロセス。
適した反応条件下、不飽和炭化水素を加えて、請求項1から9のいずれか一項に記載の触媒の少なくとも1つと接触させ、水素化した炭化水素を得る、不飽和炭化水素の水素化プロセス。
【背景技術】
【0002】
芳香族の触媒的水素化は周知である。EP0 290 100は、芳香族含有炭化水素の水素化用の、5から40重量%ニッケル含有成形ニッケル−シータAl
2O
3触媒を開示している。用いられた触媒担体は2.0nm未満の細孔を実質的に有さない。触媒の平均細孔半径は、7.4から10.3nmの範囲にある。ニッケル含浸はアンモニア性溶液で行われる。
【0003】
EP0 398 446は、硫黄化合物に高い耐性を持つ、溶媒および白色油中での芳香族の水素化触媒系を開示する。触媒は、担体上に別々に水素化成分および金属酸化物を含有する。金属としては、Cu、Ni、Pt、Pd、Rh、Ru、Co、またはこれら金属の混合物、金属酸化物成分としてはAg、La、Sb、V、Ni、Bi、Cd、Pb、Sn、V、Ca、Sr、Ba、Co、Cu、W、Zn、Mo、Mn、Feの酸化物、またはこれら酸化物の混合物を開示している。触媒担体は、Al
2O
3、SiO
2、Al
2O
3・SiO
2、TiO
2、ZrO
2、およびMgOからなるものが可能である。
【0004】
EP0 974 637に従って、新規金属含有担持触媒、金属酸化物含有触媒、およびNi−SiO
2触媒を組み合わせることによりさらに硫黄耐性を高めることができる。例えば、反応器の頭部にPt/Pd担持触媒を配し、この真下にZnO押出し物とNi−SiO
2押出し物の混合物を配する。
【0005】
JP3076706は、Pd担持触媒による不飽和重合体の水素化を記載しており、ここでは20から50nmの細孔直径を持つSiO
2担体が用いられている。しかしながらこのプロセスでは、触媒消費量が非常に多い。
【0006】
US5,028,665は、不飽和重合体の水素化用の金属担持触媒を開示し、この担体は細孔直径が45nmより大きい細孔を主に有する。この触媒はオレフィン化合物を90から100%水素化するが、芳香族では25%未満にしかならない。Pd、Pt、およびRhを水素化活性金属として記載している。
【0007】
US5,612,422は、平均分子量100000の重合体の水素化用の金属−SiO
2担持触媒を記載しており、この担体の有する細孔容積において、細孔直径が60nmより大きい細孔が少なくとも98%を占める。PtおよびRhを好適な水素化活性金属として記載している。
【0008】
樹脂の水素化用の触媒は、WO 01/36093 A1に記載があるが、この触媒はSiO
2(14から45重量%)に担持されたNi45から85%、Al
2O
3(1から15重量%)、およびFe0.25から4重量%を含有し、2から60nmの細孔直径範囲で少なくとも0.35ml/gの細孔容積を有する。
【0009】
EP1 262 234は、亀裂分解の傾向が低い、芳香族の水素化触媒を記載し、この触媒は、MgO含量が25から50重量%であるSiO
2−MgO担体に担持された第8亜族の貴金属を0.1から2.0重量%含有する。細孔直径が4.0nmより大きい細孔の容積は0.3から0.6ml/gの範囲になければならず、0.7から2nmの細孔直径では0.2から0.3ml/gの範囲になければならない。少なくとも200nmの細孔半径のものの細孔容積は0.05ml/gを越えてはならない。
【0010】
US6,376,622は、平均分子量40000から120000を有する重合体のオレフィン部分および芳香族水素化用の金属−SiO
2担持触媒を開示し、ここで用いる担体は表面積30から120m
2/gを有し、細孔容積の95%は細孔直径30から100nmを有する細孔で形成され、細孔直径が20nm未満の細孔の容積の割合は4%未満である。水素化成分はNi、Co、Rh、Ru、Pd、Pt、またはこれらの組合せである。
【0011】
US5,149,893は、ベンゼン水素化用のNiまたはCoアルミン酸カルシウム触媒を開示する。
【0012】
こうした触媒系は、低分子量芳香族の水素化に好適であるか、もっと分子量の大きい芳香族化合物の水素化の方が圧倒的に適しているかのいずれかである。
【0013】
EP1 331 033は、芳香族物質の水素化に有用な球状金属担体触媒の製造プロセスを開示する。
【0014】
DE19909177は、有機化合物の官能基水素化用の、ジルコニウム含量が高いニッケル担持触媒を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
従って、本発明は、この技術的課題を、詳細には、担持触媒の提供により解決する。好適な実施形態において、この担持触媒は、ケイ酸ニッケル相を有し、この組成の特定の組合せ、細孔容積分布、ならびに微結晶サイズおよび分布によって特徴付けられる。驚くべきことに、このような触媒は従来の触媒とは対照的に、顕著に高くなった活性をもたらし、この利用可能性の幅広さ、詳細には高分子量低分子量両方の芳香族化合物という幅広さによる利点を有する。
【0019】
本明細書で用いられる重量%の値は、特に記載がない限り、乾燥した触媒全体での重さを示す。本発明の文脈において、触媒の成分は全体で100重量%を越えないように選択されることになる。
【0020】
本発明は、鉄を含まないシリカ担持ニッケル水素化触媒を提供する。本発明の文脈において、「鉄を含まない」という用語は、触媒が実質的な量の鉄を含有しない、詳細には、0.20重量%を越えるFe(Feとして計算)を含有しないことを示す。より好適な実施形態において、鉄を含有しない触媒の鉄含量は最大0.1、より好ましくは最大0.05重量%(Feとして計算)である。特に好適な実施形態において、触媒中には検出可能な量で鉄は存在しない、好ましくはまったく鉄は存在しない。
【0021】
さらに好適な実施形態において、触媒のナトリウム含量は低く、好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.5重量%未満、詳細には0.2重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満である(ROIに対するNa
2Oとして計算)。
【0022】
細孔容積は、BJH法(Barrett,Joyner and Halenda)に従って求める。各細孔容積とこの割合の決定について、特に記載がない限り、直径1.7から300nmの細孔を対象とする。
【0023】
特に好適な実施形態において、ニッケル含量は40から80重量%である(全触媒重量におけるNiOとして計算)。
【0024】
さらに好適な実施形態において、ケイ素含量は15から40重量%である(全触媒重量におけるSiO
2として計算)。
【0025】
本発明の好適な実施形態において、本発明の触媒中のニッケルの還元レベルは、金属ニッケル対全ニッケルの比で表され、52から80%である。
【0026】
本発明の好適な実施形態において、触媒は、ニッケルと、シリカと、チタンと、ならびにアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、クロム、およびジルコニウムからなる群より選択される元素1種以上、好ましくはこの酸化物の形のものとを含み、詳細にはこれらを主成分とし、さらに好ましくはこれらで構成されるものである。好適な実施形態において、触媒は、ニッケルおよびSiO
2に加えて、アルミニウムおよびチタン、またはこれらの酸化物を含み、好ましくは主成分として含み、特にはこれらで構成されるものである。
【0027】
本発明の最も好適な実施形態において、触媒はアルミニウム含量が2から10重量%である(全触媒重量における酸化アルミニウムAl
2O
3として計算)。
【0028】
本発明の好適な実施形態において、触媒はマグネシウム含量が0.1から3.0重量%である(全触媒重量における酸化マグネシウムMgOとして計算)。
【0029】
本発明の好適な実施形態において、触媒は亜鉛含量が0.1から4.0重量%である(全触媒重量における酸化亜鉛ZnOとして計算)。
【0030】
本発明の好適な実施形態において、触媒はクロム含量が0.1から0.3重量%である(全触媒重量における酸化クロムCr
2O
3として計算)。
【0031】
本発明の好適な実施形態において、触媒はジルコニウム含量が0.1から3.0重量%である(全触媒重量における二酸化ジルコニウムZrO
2として計算)。
【0032】
好適な実施形態において、触媒は、少なくとも0.15、好ましくは少なくとも0.20、さらに好ましくは少なくとも0.25kg/dm
3、なおさらに好ましくは0.25から0.35kg/dm
3の緻密になった容積密度を有する。
【0033】
さらに好適な実施形態において、BET表面積は、少なくとも150、好ましくは少なくとも200、さらに好ましくは少なくとも250m
2/gである。さらに好適な実施形態において、ニッケル金属表面積は、少なくとも15、好ましくは少なくとも20、さらに好ましくは少なくとも23m
2/gである。
【0034】
特に好適な実施形態において、
シリカ担体は、ケイ酸マグネシウム、アルモシリケート(Al
2O
3・SiO
2)、TiO
2、チタン酸ニッケル、ZrO
2、ジルコン酸ニッケル、およびZnOからなる群より選択される化合物をさらに1種以上含有する。特に好適な実施形態において、触媒は、ニッケル40から80重量%(NiOとして計算)、ケイ素15から40重量%(SiO
2に基づき計算)、アルミニウム2から10重量%(Al
2O
3に基づき計算)、チタン0.5から5.0重量%(TiO
2として計算)、およびマグネシウム0.1から3.0重量%(MgOとして計算)を含み、好ましくはこれらを主成分とし、特にはこれらで構成される。この実施形態において、触媒のニッケルは還元レベル52から80%を有し、触媒は還元された触媒の平均微結晶サイズ1.5から3.5nmで単峰性微結晶サイズ分布を有し、直径1.7から300nmの細孔について触媒の細孔容積は、少なくとも0.60ml/gであり、直径10nm以上の細孔の割合は少なくとも55%である。
【0035】
このように、本発明はこの技術的課題を、詳細には、ケイ酸ニッケル相を基礎とする鉄を含まない触媒を提供することにより解決する。この触媒は、(元素の酸化物として記載して)NiOを40から85重量%、好ましくは40から80重量%と、SiO
2を15から60重量%、好ましくは15から40重量%と、TiO
2を0.5から5重量%とを含み、詳細にはこれらを主成分として含有し、特にはこれらで構成され、この触媒はAl
2O
32から10重量%、ZrO
20.1から3.0重量%、MgO0.1から3.0重量%、ZnO0.1から4.0重量%、およびCr
2O
30.1から0.3重量%からなる群より選択される成分を少なくとも1種含有し、触媒のニッケルは還元レベル52から80%を有し、この触媒は還元された触媒の平均微結晶サイズ1.5から3.5nmで単峰性微結晶サイズ分布を有し、直径1.7から300nmの細孔について触媒の細孔容積は、少なくとも0.60ml/gであり、直径10nm以上の細孔の割合は少なくとも55%である。本発明は、好ましくは、上記で定義されるようなニッケル含有シリカ担持触媒を提供し、このシリカ担体は、ケイ酸マグネシウム、アルモシリケート、TiO
2、チタン酸ニッケル、ZrO
2、ジルコン酸ニッケル、およびZnOからなる群より選択される化合物を含み、好ましくはニッケルはTiO
2でケイ酸ニッケルおよびアルモシリケートに担持されている。
【0036】
本発明はさらに、この触媒が、好適な実施形態においては、粉末状の、詳細には懸濁液またはスラリー水素化反応に用いる触媒であることを見越している。本発明の好適な実施形態において、本発明の触媒は粉末化触媒であり、この細孔容積は少なくとも0.68ml/gである。さらに好適な実施形態において、粉末状の触媒の粒子サイズは2から50μm、好ましくは2から22μmの範囲にあり、どちらも好ましくは4から15μm、好ましくは4から10μmのd
50値を持つ。
【0037】
さらに好適な実施形態において、本発明の触媒は、成形または型成形触媒(本明細書中、造形触媒とも称する)であり、詳細には固定床または流動床水素化反応で用いるものである。好適な実施形態において、造形触媒は、例えば、球状、粒状、タブレット状、ペレット状、または押出し物の形が可能である。
【0038】
本発明の好適な実施形態において、触媒は造形触媒であり、細孔直径が10nm以上の細孔の細孔容積割合は少なくとも65%である。
【0039】
本発明は、本明細書中定義されるとおりのシリカ担持ニッケル触媒の調製プロセスも提供し、このプロセスでは、触媒成分を共沈させる。
【0040】
本発明は、シリカ担持ニッケル触媒の調製プロセスも提供し、このプロセスは、ニッケルイオン源およびチタンイオン源を含む金属塩溶液を、ナトリウム水ガラス溶液と、pH8.0から9.5、温度70℃から100℃、好ましくは85℃から100℃で反応させて触媒物質を共沈させ、共沈した触媒物質を回収してシリカ担持ニッケル触媒を得ることを含む。
【0041】
本発明のプロセスで用いられる反応物はどれも、得られる触媒が0.20重量%を越える鉄(Feとして計算)を含有しないように、実質的に鉄を含んではならない。
【0042】
特に好適な実施形態において、上記で特定される溶液は、沈殿容器に同時に入れられてもよく、1つずつ順番に入れられてもよい。
【0043】
本発明の文脈において、水ガラスは、SiO
2源である化合物を意味する。従って、詳細には、本発明の文脈において、水ガラスは、例えば、水溶性アルカリケイ酸塩、SiO
2、SiO
2とアルカリイオン、アルカリ塩、または酸化物との混合物、水素ケイ酸塩、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ナトリウム)などである。
【0044】
本発明の文脈において、ナトリウム水ガラス溶液は、水ガラスとナトリウムの混合物を含有する溶液、好ましくは水溶液を意味するものとして受け取られ、ナトリウムは、例えば、NaOHまたはNa
2CO
3(ソーダ)の形である。
【0045】
本発明の好適な実施形態において、金属塩溶液は、Ni
2+と、TiO
2+と、ならびにAl
3+、Cr
3+、Mg
2+、Zn
2+、およびZrO
2+の1種以上とを含む。本発明の好適な実施形態において、金属塩溶液は酸性溶液である。本発明の好適な実施形態において、金属塩溶液は硝酸塩溶液である。
【0046】
本発明の好適な実施形態において、ナトリウム水ガラス溶液は、Al(OH)
4−、TiO
2、Zn、およびZrO
2の1種以上を含む。さらに本発明の好適な実施形態において、ナトリウム水ガラス溶液はアルカリ溶液である。
【0047】
本発明の好適な実施形態において、pH値は沈殿が完了するまで8.0から9.5に一定して保たれる。本発明の好適な実施形態において、沈殿時間およびその後の撹拌時間はそれぞれ1時間から3時間、好ましくはそれぞれ1.5から2.5時間、特にはそれぞれ2時間である。特に好適な実施形態において、沈殿は撹拌しながら行われる。特に好適な実施形態において、沈殿完了時または完了後のpH値は9.0以上、好ましくは9.1以上であり、最大で9.5である。
【0048】
好適な実施形態において、本発明は上記に記載されるとおりのプロセスを提供し、このプロセスにおいて、沈殿後、得られた触媒沈殿物を濾過する。好適な実施形態において、濾過した触媒沈殿物、即ち、得られたフィルターケーキを好ましくはNa含量が0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満になるまで洗う。
【0049】
本発明の好適な実施形態において、フィルターケーキ(好ましくは洗ったもの)を、続いて、例えば従来の乾燥装置でフラッシュ乾燥、噴霧乾燥、または単なる乾燥により乾燥させる。
【0050】
粉末状の触媒の製造については、フィルターケーキを噴霧乾燥で加工処理することが好ましい。
【0051】
特に好適な実施形態において、乾燥した触媒は、好ましくは結合剤成分および/または水と一緒に、造粒などによりさらに加工処理してもよい。好適な実施形態において、造粒した触媒は乾燥して焼成してもよい。
【0052】
本発明の好適な実施形態において、上記のプロセスに従って得られた触媒、詳細には乾燥した触媒を、例えば温度120℃から350℃で焼成する。さらに好適な実施形態において、乾燥して焼成した触媒を、好ましくは触媒の不活性化工程後に、還元する。
【0053】
さらに好適な実施形態において、乾燥した触媒を、好ましくは流動床で、好ましくは水素流中、好ましくは温度300℃から600℃、特に340℃から500℃で、還元する。しかしながら、別の好適な実施形態において、この還元は、回転オーブン、円筒回転炉、または別の適した設備で行うことも可能である。さらに好適な実施形態において、還元された触媒は、例えば、窒素/空気、CO
2/窒素/O
2、または窒素/O
2雰囲気中で、安定化させる。
【0054】
本発明の特に好適な実施形態において、粉末化触媒は、触媒沈殿物を噴霧乾燥またはフラッシュ乾燥し、続いて加工処理する、詳細には焼成および還元することにより製造することができる。
【0055】
本発明のさらに好適な実施形態において、本発明の触媒は、乾燥した沈殿生成物を造形し、続いてこの物質を還元および安定化し、続いて還元および安定化した触媒を粉砕してスクリーニングすることにより、粉末状で製造することができる。
【0056】
造形触媒の製造は、既知の造形プロセスにより実行することができる。本発明によると、好ましくは押出しおよび液滴形成が特に有利であることが分かっている。
【0057】
本発明は、上記に特定される製造プロセスによって得られるか、または得ることが可能な触媒も提供する。
【0058】
本発明は、本発明による触媒を用いた、不飽和炭化水素、詳細には芳香族の水素化プロセスも提供する。
【0059】
本発明の好適な実施形態において、適した反応条件下、不飽和炭化水素に本発明の教示による触媒の少なくとも1種を加えて接触させることにより水素化炭化水素が得られる。
【0060】
本発明の不飽和炭化水素水素化プロセスを行うのに適した温度および圧力は、当業者により決定することができる。好適な実施形態において、適した反応温度は、70℃から350℃、好ましくは250℃から350℃である。さらに好適な実施形態において、例えば、1から250bar、好ましくは1から150bar、好ましくは30から140barの部分水素圧を用いることができる。本発明の水素化プロセスは、固定床反応器、流動床反応器、スラリー反応器、ループ反応器などで行うことができる。
【0061】
本発明に従って好ましく水素化され得る芳香族の例として、ケロセン、白色油、芳香族溶媒、およびベンゼンが挙げられる。
【0062】
本発明の利点は、以下の実施例により示されるだろう。
【0063】
実施例1(本発明によるもの)
撹拌器を取り付けた加熱可能な沈殿容器に水5lを入れ、それから酸化チタンを硫酸チタニル酸性溶液の形で加える。この溶液を撹拌しながら温度80℃から90℃に加熱する。この温度に到達したら、金属硝酸塩溶液と沈殿剤水溶液を平行して加え始める。金属硝酸塩溶液は、ニッケルの他にマグネシウム、アルミニウム、およびクロムを含有する。沈殿剤溶液は、ソーダ(Na
2CO
3)の他に、溶解した二酸化ケイ素化合物を含有する。沈殿させている間、pH値は8から8.5で一定に保つ。沈殿時間およびその後の撹拌時間はそれぞれ2時間である。
【0064】
ニッケル対SiO
2、Al
2O
3、Cr
2O
3、MgO、およびTiO
2のモル比は、1:0.5:0.04:0.0085:0.055:0.016である。
【0065】
沈殿完了後、懸濁液を濾過して、フィルターケーキのNa
2O含量が0.2%未満になるまでアルカリを含まない水で洗う。Na
2O含量は、800℃に加熱したフィルターケーキの強熱残分(ROI)に基づくものである。
【0066】
濾過および洗浄後、得られたフィルターケーキを水に再懸濁させ、それから市販の噴霧乾燥機に噴霧する。得られた粉末物質は粒子サイズが6μmである。次いで、生成物を350℃で2時間焼成し、不活性化してから、水素流中400℃で6時間還元し、酸素含量0.1から1体積%のCO
2/窒素流中80℃より低い温度で安定化する。
【0067】
還元して安定化した触媒は、全触媒に基づいて、約55%ニッケルを含有する。この触媒は、金属ニッケル対全ニッケルの比で表して、約70%のニッケル還元レベルを有する。この触媒は単峰性Ni微結晶サイズ分布を示した。180℃でさらに還元した触媒の平均ニッケル一次粒子サイズ(即ち、還元した触媒の平均微結晶サイズ)は約3nmである。XRDスペクトルにより、ケイ酸ニッケル相が存在することを確認する。細孔容積は0.73ml/gである。直径10nm以上の細孔の細孔容積は0.42ml/gである。
【0068】
実施例2(本発明によるもの)
加熱可能な沈殿容器に水15lを入れ、それからSiO
2成分としての珪藻土および固形TiO
2(P25、Degussa Co.)を撹拌しながら加える。続いて水酸化ナトリウム水溶液(10%)を加える。溶液を85℃に加熱した後、混合金属硝酸塩溶液(ニッケルイオン、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、およびクロムイオンを含有)を計量しながら加える。ニッケル対SiO
2、Al
2O
3、MgO、TiO
2、Cr
2O
3、およびZnOのモル比は、1:0.4:0.038:0.05:0.016:0.004:0.006である。
【0069】
平均温度85℃での沈殿時間およびその後の撹拌時間は、それぞれ約2時間である。沈殿およびその後の撹拌後、pH値は約8.5である。濾過して洗浄した後、得られたフィルターケーキを再懸濁させて、市販の乾燥機に噴霧する。得られた粉末物質は平均粒子サイズが9μmである。乾燥生成物を不活性ガス流中350℃で焼成し、それから流動床中350℃で2時間、水素流中で還元する。還元後、生成物を窒素流中で冷やし、O
2含量が0.1から1容積%である窒素/空気/CO
2混合物中で安定化する。
【0070】
還元して安定化した触媒は、全触媒に基づいて、約58%ニッケルを含有する。この触媒は、金属ニッケル対全ニッケルの比で表して、約55%のニッケル還元レベルを有する。この触媒は単峰性Ni微結晶サイズ分布を示した。180℃でさらに還元した触媒の平均ニッケル一次粒子サイズ(即ち、還元した触媒の平均微結晶サイズ)は、2.7nmである。XRDスペクトルにより、ケイ酸ニッケル相が存在することを確認する。細孔容積は0.71ml/gである。直径10nm以上の細孔の細孔容積は0.40ml/gである。
【0071】
実施例3(本発明によるもの)
加熱可能な沈殿容器に水10lを入れ、それからアルミン酸ナトリウム溶液(40gのAl
2O
3/l溶液、100gのNaOH/l)および水ガラス溶液(50gのSiO
2/l溶液)を撹拌しながら加える。この溶液を90℃から95℃に加熱してから、ニッケル硝酸塩と、マグネシウム硝酸塩と、ジルコニウム硝酸塩との水溶液を、pH値の上限8.5で、計量しながら加える。金属硝酸塩溶液は、硫酸チタニル溶液の形でTiO
2をさらに含有する。pH値が約8.5に到達したら、残りのニッケル硝酸塩溶液およびNaOH水溶液(10%)を温度90℃から95℃で平行して加え始める。沈殿時間は1時間、続く撹拌時間は約2時間である。
【0072】
ニッケル対SiO
2、Al
2O
3、MgO、TiO
2、およびZrO
2のモル比は、1:0.39:0.038:0.036:0.016:0.01である。
【0073】
実施例1に記載したように触媒をさらに加工処理する。還元は温度420℃で行う。
【0074】
還元して安定化した触媒は、全触媒に基づいて、約60%ニッケルを含有する。この触媒は、約80%のニッケル還元レベルを有する。この触媒は単峰性Ni微結晶サイズ分布を示した。180℃でさらに還元した触媒の平均ニッケル一次粒子サイズ(即ち、還元した触媒の平均微結晶サイズ)は2.8nmである。XRDスペクトルにより、ケイ酸ニッケル相が存在することを確認する。細孔容積は0.77ml/gである。直径10nm以上の細孔の細孔容積は0.51ml/gである。
【0075】
実施例4(本発明によるもの)
加熱可能な沈殿容器に水5lおよび固形TiO
2(P25、Degussa Co.)を入れ、それから懸濁液を撹拌しながら温度90℃から95℃に加熱する。この温度に達したら、混合金属硝酸塩溶液(ニッケル、アルミニウム、およびマグネシウムを硝酸塩の形で含有)およびアルカリ溶液(沈殿剤ソーダおよび溶解したSiO
2化合物の水溶液である)を平行して加える。沈殿させている間、pH値は、8.0から8.3で一定に調整される。沈殿およびその後の撹拌時間はそれぞれ約2時間である。
【0076】
ニッケル対SiO
2、Al
2O
3、MgO、およびTiO
2のモル比は、1:0.328:0.037:0.053:0.032である。
【0077】
沈殿完了後、沈殿懸濁液を濾過し、採取したフィルターケーキ重量に基づきNa
2O含量が0.05%未満になるまでフィルターケーキを純粋なコンデンセートで洗う。次いで、フィルターケーキを、強熱残分(800℃)が少なくとも70%になるまで、温度120℃から140℃で乾燥させて、それから350℃から380℃で焼成する。焼成完了後、焼成した物質の強熱残分は少なくとも90%ある。得られた生成物を、温度420℃から430℃で10時間、水素流中、適した単位で還元し、それからO
2含有窒素流中、周辺温度で安定化する。
【0078】
それから、還元して安定化した触媒を、保護雰囲気下、不活性ガスミル中、細かく粉砕する。
【0079】
完成した粉末触媒は、ニッケル含量が60%、還元レベルが約80%であり、180℃でさらに還元した触媒の平均微結晶サイズ(即ち、還元した触媒の平均微結晶サイズ)は、3.1nmである。この触媒は単峰性Ni微結晶サイズ分布を示した。触媒の平均粒子サイズは15μm、全細孔容積は0.70ml/g、直径10nm以上の細孔の細孔容積は0.39ml/gである。
【0080】
実施例5(本発明によるもの)
沈殿容器に水8lと硫酸チタニルを入れ、それから、ナトリウム水ガラス溶液を撹拌しながら30分間以内で加える。加えている間、所望の沈殿温度90℃に加熱する。この温度に達したら、ニッケル硝酸塩と、マグネシウム硝酸塩と、およびアルミニウム硝酸塩との混合溶液を加えてpH値を約8にし、それから混合物をさらに30分撹拌する。その後、水酸化ナトリウム溶液(150g/l)および残りの金属硝酸塩溶液を平行して計量しながら加えて、沈殿プロセスを続ける。沈殿させている間、温度は90℃で一定である。沈殿時間および続く撹拌時間はそれぞれ約1時間である。ニッケル対SiO
2、Al
2O
3、MgO、およびTiO
2のモル比は、1:0.65:0.038:0.05:0.016である。
【0081】
それから、沈殿懸濁液を濾過して、フィルターケーキを非常にきれいなコンデンセートで洗う。その後、フィルターケーキを水に再懸濁し、アルギネート法により滴形にする。130℃で乾燥して400℃で焼成した後、成型体を水素流中、温度420℃で、還元する。実施例1に記載したように安定化を行う。
【0082】
完成した触媒は、ニッケル含量が約52%、還元レベルが約70%であり、180℃でさらに還元した触媒の平均微結晶サイズ(即ち、還元した触媒の平均微結晶サイズ)は3.2nmであり、触媒の粒子サイズは2から3mmである。この触媒は単峰性Ni微結晶サイズ分布を示した。細孔容積は0.70ml/gであり、直径10nm以上の細孔の細孔容積は0.49ml/gである。
【0083】
実施例6(比較例)
沈殿容器に水10lを入れ、撹拌しながら80℃に加熱した。その後、一定温度80℃で撹拌しながら、混合金属硝酸塩溶液(ニッケル1.4kg、MgO0.050kg、Al
2O
30.050kg、およびFe0.0056kgを含有)とソーダ/水ガラス溶液(ソーダ2.9kgおよびSiO
20.345kgを含有)を、平行して加えた。沈殿させている間のpH値は7.5であった。沈殿プロセスは1時間後に完了した。沈殿完了後、懸濁液を濾過して洗った。それから、得られたフィルターケーキを110℃で乾燥し、細かく粉砕して、350℃で焼成した。流動相中、温度400℃で、遊離触媒物質の還元を行った。触媒を窒素/空気混合物中で安定化した後、完成した触媒は以下の組成を有した:ニッケル60%、SiO
218%、Al
2O
32.7%、MgO2%、およびFe
2O
30.3%。
【0084】
触媒のニッケル還元レベルは約65%、ニッケル一次粒子サイズは約3.5nmであった。細孔容積(2から60nmの直径を持つ細孔について)は0.35ml/gである。細孔容積は0.41ml/g、直径10nm以上の細孔の細孔容積は0.17ml/gである。
【0085】
実施例7(比較例)
水10l、および実施例6で用いたものと同じ組成のソーダ/水ガラス溶液を容器に入れて80℃に加熱した。その後、撹拌しながら一定温度80℃で、混合金属硝酸塩溶液(ニッケル1.4kg、Al
2O
30.050kg、およびFe0.0056kgを含有)を加えた。1時間の沈殿時間後、沈殿懸濁液のpH値は7.3であった。沈殿スラリーを濾過し、洗い、それから市販の噴霧乾燥機に噴霧した。噴霧した顆粒の平均粒子サイズは約10μmであった。焼成、還元、および安定化は、流動相で行った。
【0086】
完成した触媒は、以下の組成を有した:ニッケル62%、SiO
219%、Al
2O
33%、およびFe
2O
30.35%。
【0087】
触媒のニッケル還元レベルは約70%、ニッケル一次粒子サイズは約3.8nmであった。細孔容積(2から60nmの直径を持つ細孔について)は0.34ml/gである。細孔容積は0.39ml/g、直径10nm以上の細孔の細孔容積は0.13ml/gである。
【0088】
実施例8(比較例)
乾燥して粉砕したNi/SiO
2出発物質(平均粒子サイズ10μmおよび容積密度0.7kg/l)を結合剤としてのタイローズ(tylose)と混合し、コンデンセート水、硝酸、およびシリカゾルの溶液を加えて実験用混練機で分散した。この混練機のバッチの固形分に基づいて、加えたタイローズの量は2.5%であった。15分の混練時間後、全バッチ分を、切断デバイスを備えた実験用押出機で3mmの円筒状に押出し成形した。得られた湿潤押出し物を実験用整粒機(Caleva Co.,Model 120,England)でさらに加工処理して球状にした。それから、得られた球状物質を130℃で乾燥した。
【0089】
上記のように、出発物質を水素流中400℃で還元し、標準条件下で安定化した。
【0090】
完成した触媒は、約55%ニッケルを含有し、約75%の還元度を有する。平均ニッケル微結晶サイズは4.5nmである。触媒は2から4mmの直径で広い粒子サイズ分布を示す。細孔容積は0.30ml/gであり、直径10nmを越える細孔の割合は0.02ml/gにすぎない。
【0091】
実施例9(触媒作用比較)
以下の表1は、以下の比較分析に用いた、本発明による触媒と比較の触媒の組成を示す。
【0093】
触媒評価のため、以下の物理化学的特性を持つ市販の球状アルモシリケートニッケル触媒9も用いた:
【0095】
固定床プロセスでの芳香族水素化についての触媒評価に、本発明に従って製造した触媒5ならびに比較触媒8および9を用いた。
【0096】
Ni担持触媒の触媒特性決定のため、複合流動反応管(内径:25mm)を用いてケロセンの芳香族水素化を行った。組み込まれた触媒容積は50mlであった。触媒を10カ所にそれぞれ50mlずつ組み込み、10カ所それぞれSiCとの体積比1:1であった。触媒反応の前に、水素流中250℃で4時間かけて、触媒を再活性化した。供給物として、芳香族含量18重量%および硫黄含量1.1ppmのケロセンを用いた。その他の実験条件は以下のとおりであった:
反応圧:30bar
反応温度:85℃、反応時間:40時間
100℃、反応時間:80時間
LHSV:1.3
気体対生成物比:400lのH
2/lのケロセン
結果を表3に示す。
【0098】
触媒測定結果の比較は、本発明による触媒の優位性を示す。芳香族の水素化または分解の度合いは、ppm範囲においてまで、本発明による触媒を用いた方が従来の触媒を用いるよりも著しく高い。
【0099】
撹拌オートクレーブ(Autoclave Engineers Co.)を用いて粉末触媒の触媒特性決定を行った。樹脂210g(平均分子量:2750g)、シェルゾール(Shellsol)90g、および触媒1.8gをオートクレーブに入れ、不活性化した後、オートクレーブに4barの圧力で水素を投入した。次いで、オートクレーブ内容物を温度270℃に加熱した。この温度に到達したら、反応圧を90barにし、それから撹拌器を作動させた。撹拌速度は毎分2200回転であった。一定圧力下での水素消費量を反応時間の関数として測定した。反応開始の10分後から30分後までの水素消費量から計算したリットルH
2/時間g
catalyst単位での平均反応速度を活性尺度として用いた。
【0102】
表4のデータは、本発明による触媒が比較触媒の水素化活性よりも高い活性を有することを明らかに示す。