特許第5743547号(P5743547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5743547排煙物質を浮遊流硫酸塩化するための方法、及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743547
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】排煙物質を浮遊流硫酸塩化するための方法、及び装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/46 20060101AFI20150611BHJP
   B01D 53/34 20060101ALI20150611BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   B01D53/34 120A
   B01D53/34ZAB
   B01D53/34 134A
   B01D53/34 134C
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-534386(P2010-534386)
(86)(22)【出願日】2008年10月24日
(65)【公表番号】特表2011-504412(P2011-504412A)
(43)【公表日】2011年2月10日
(86)【国際出願番号】EP2008008998
(87)【国際公開番号】WO2009065481
(87)【国際公開日】20090528
【審査請求日】2010年7月8日
(31)【優先権主張番号】102007056580.3
(32)【優先日】2007年11月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509305321
【氏名又は名称】カールスルーアー・インスティトゥート・フュア・テヒノロギー
【氏名又は名称原語表記】Karlsruher Institut fuer Technologie
(74)【復代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ハンス フンズィンガー
【審査官】 近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−196931(JP,A)
【文献】 特開2002−147722(JP,A)
【文献】 特開2001−286726(JP,A)
【文献】 特開2006−015179(JP,A)
【文献】 特表2002−539402(JP,A)
【文献】 特表2009−533208(JP,A)
【文献】 特開平11−166187(JP,A)
【文献】 特開平08−219427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/38〜53/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの燃焼室(1)及び排ガス焼却帯域(5)を有する燃焼装置内で、酸素含有排煙(19)の硫酸塩化可能な排煙物質を浮遊流硫酸塩化するための方法であって、この際、酸素含有排煙(19)が排ガス焼却帯域(5)の通過後、温度の低下により温度調節され、そして硫酸塩化帯域(22)を通じて誘導され、当該帯域で酸素含有排煙(19)が4〜20秒間の時間にわたって700〜900℃の温度区域にある温度推移を通過し、硫酸塩化可能な排煙物質が、酸素含有排煙(19)中に存在するSO2及び/又はSO3と共に硫酸塩化帯域(22)の貫流の際に固体硫酸塩含有粒子(24)に移行され、かつ硫酸塩化帯域の後の灰堆積物中の金属ハロゲン化物濃度が低減され、
前記硫酸塩化可能な排煙物質が、アルカリ金属の、及び/又はアルカリ土類金属の、及び/又はこれら以外の金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物、及び/又は水酸化物であり、
硫黄含有化合物(8)を燃料に添加することにより、又は
硫黄含有燃料の共同燃焼により、又は
硫黄若しくは硫黄含有化合物の添加により(これにより熱分解によってSO2及び/又はSO3が形成される)、又は
SO2及び/又はSO3及び/又はH2SO4を、硫酸塩化帯域(22)前で排ガスに計量供給することによって、
排煙(19)中のSO2及び/又はSO3濃度を、硫酸塩化可能な排煙物質の完全な反応が保証されているように調整する、前記方法。
【請求項2】
前記排煙が、2〜10秒の時間の間、硫酸塩化帯域(22)で800〜880℃の温度区域での温度推移に導かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記排煙が、滞留時間後に硫酸塩化帯域(22)から出て、そして熱交換器(11−13)、又は蒸気発生器に供給され、これによって前記排煙が冷却される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記排煙が、滞留時間後に硫酸塩化帯域(22)から出て、そして固体硫酸塩含有灰粒子(24)が排煙から分離される、前請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
固体硫酸塩含有灰粒子(24)の分離が、500℃〜800℃の温度範囲で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
固体硫酸塩含有灰粒子(24)の分離が、蒸気発生器の蒸気過熱工程へ入る前に行われる、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
固体硫酸塩含有灰粒子(24)の分離が、熱交換器(11−13)又は蒸気発生器の通過後に行われる、請求項4から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
分離された固体硫酸塩含有灰粒子(24)が、熱的に遮断された処理工程(29)で900〜1300℃の硫酸塩分解温度に加熱され、この際にSO2及び/又はSO3が放出される、請求項4から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
硫酸塩含有灰粒子(24)が、加熱前にSiO2及び/又はAl23を含む粒子状の固体物と混合される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
放出されるSO2及び/又はSO3が、硫酸塩化帯域(22)の前で排煙に混入される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
測定されるSO2濃度によって、熱交換器(11−13)の通過後、50〜2000mg/Nm3のSO2値になるように、硫黄含有化合物を燃料又は排ガスに添加する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの燃焼室(1)を有する燃焼装置内で、酸素含有排煙(19)の硫酸塩化可能な排煙物質を浮遊流硫酸塩化するための、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法を実施するための装置であって、排ガス焼却帯域(5)と、当該排ガス焼却帯域の後方に接続された硫酸塩化帯域(22)を有し、前記硫酸塩化帯域(22)の後方に、熱交換器(11−13)が接続されている、前記装置。
【請求項13】
前記硫酸塩化帯域(22)の後方に、熱ガスフィルタ(23)が接続されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記熱交換器の後方に、熱ガスフィルタ(23)が接続されている、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
前記熱交換器が、一体化された熱ガスフィルタを含む、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項16】
前記硫酸塩化帯域(22)が、熱遮断部としてのジャケットを有する、請求項12から15までのいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1若しくは請求項14に記載の少なくとも1つの燃焼室を有する燃焼装置内で排煙物質を浮遊流硫酸塩化するための方法、及び装置に関する。
【0002】
火格子燃焼、流動層燃焼、及び回転炉燃焼における固体燃料の燃焼は、たいていは2工程で行われる。たいてい化学量論未満の一次空気供給は、第一工程、固体物焼却でまず行われる。この際、固体燃料は部分工程乾燥、揮発性成分の脱気、並びに固定炭素の焼却を通過する。
【0003】
固体物焼却の際に形成される高熱価のガスは、第二の燃焼工程で化学量論を越える二次空気添加のもと、高温で混合され、かつこれによって焼却される。
【0004】
塩素及び硫黄含有燃料、例えば家庭ゴミ又はバイオマス(例えば木材及び藁)の燃焼の際、塩酸(HCl)、及び硫黄酸化物(SO2及びSO3)が発生する。SO3の含分はSO2に比較してたいていは非常に少ない。硫黄酸化物(SO2+SO3)の総濃度に対して、SO3含分はたいてい5%未満である。家庭用ゴミ、及びとりわけまた特定の廃棄物は、塩素化合物の他にまた、他のハロゲン化合物、例えば臭素化合物及びヨウ素化合物も含むことがある。臭素化合物、及びヨウ素化合物は、燃焼の際に塩素化合物と似た挙動を示し、かつ似た問題を引き起こす。
【0005】
とりわけ燃料に含まれているアルカリ金属(カリウム及びナトリウム)、及び他の金属は、固体物焼却の間に部分的に塩化物を形成する。燃焼床に存在する高温下では、アルカリ金属塩化物、及び金属塩化物は、比較的高い蒸気圧を有しており、従って著しい範囲に気体状態で排ガスへと放出される。
【0006】
熱い燃焼ガス及び熱い燃焼排ガスの熱エネルギーはたいてい、蒸発釜の加熱のために考慮される。熱廃棄の際、これらの燃焼ガスと排ガスを冷却し、この際に揮発性無機化合物(アルカリ金属塩化物、及び金属塩化物)の飽和蒸気圧は下回っている。このことによって、これらの塩化物化合物が凝縮され、及び/又は再昇華され、そして排ガス中に含まれる不活性粒子及び炭素粒子と共に、塩化物含有浮遊灰を形成する。この浮遊灰は、一部蒸発釜の熱交換表面に堆積し、そして不所望の被覆を形成する。堆積された浮遊灰とは、基本的にケイ酸塩、硫酸塩、酸化物、炭酸塩、及び塩化物から成る複合混合物である。
【0007】
この灰堆積物中の塩化物含分は、塩化された有機化合物、例えばダイオキシン(PCDD/F)の形成を基本的に不所望に促進し、そして付加的に、金属部材、とりわけ釜の著しい腐蝕被害を引き起こす。この際に、アルカリ金属塩化物(NaCl、及びKCl)が、燃料中、排煙中、及び灰堆積物中での高濃度が原因で、主要な役割を果たす。PCDD/F形成、及びまた金属釜材料の腐蝕は、釜表面上の浮遊灰堆積物の内部、及びその下部での塩素(Cl2)の形成に帰するべきである。釜表面にあるこれらの塩化物含有灰堆積物の内部及び下部では加えて、浮遊灰中に含まれる金属酸化物/金属塩化物(とりわけCu及びFe)の触媒作用によって、いわゆるジアコンプロセス(Deacon−Prozess)で排ガス中に含まれる塩酸(HCl)から、塩素(Cl2)が形成される。
【0008】
アルカリ金属塩化物と、たいてい鉄を含有する釜材料との直接反応は、同様に重大なCl2形成を引き起こす。発生するCl2は再度、灰堆積物中に存在する粒子状炭素(スス粒子)のオキシクロル化をもたらす。デノーボ(de−novo)合成として公知のこのPCDD/F形成経路は、廃棄物燃焼において、原料ガス中に存在するPCDD/Fに対して絶対的に支配的である。Cl2形成の回避によって、PCDD/F形成を効果的に抑制することができ、この結果、PCDD/F減少のための高コストの排ガス浄化方法は、ほとんど放棄することができる。
【0009】
塩化物を含む釜堆積物の内部及び下部で形成されるCl2は、金属製、及びとりわけ鉄含有釜材料に対してさらに非常に腐蝕性に作用する。いわゆる塩素誘発型の釜腐蝕は、金属材料から導かれる釜の壁面温度の上昇につれて、激しく増加する。高められた釜腐蝕は、著しいコストと結びついており、このことが再度、蒸気生成、とりわけ廃棄物燃焼における、蒸気パラメータ範囲(温度T、及び圧力p)を著しく制限する。従って、廃棄物燃焼装置及びバイオマス燃焼装置の釜はたいてい、T=400℃、p=40barという比較的低い蒸気品質で稼働させ、このことはまた、蒸気タービンを用いた電気的なエネルギー生成の際に生成可能な効率を非常に制限する。
【0010】
排ガス組成物次第、及び固体物焼却に後続する排ガス焼却帯域中、及び当該帯域後に存在する燃焼温度次第で、下記の反応式(1)及び(2)に従って、燃焼床から放出されるアルカリ金属塩化物から、部分的にアルカリ金属水酸化物が形成され得る。
KCl+H2O → KOH+HCl (1)
NaCl+H2O → NaOH+HCl (2)
【0011】
排ガス焼却帯域中、及び当該帯域後に、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム)は塩化物として、及び/又は水酸化物として存在していてよい。この際にアルカリ金属水酸化物の一部が、高温範囲で排ガス焼却帯域中、及び当該帯域後に、酸化性雰囲気内で、排ガス中に含まれるSO2と、及びまたHClと、以下の反応式に従ってさらに反応して塩化物及び硫酸塩になる:
2KOH+SO2+1/2O2 → K2SO4+H2O (3)
2NaOH+SO2+1/2O2 → Na2SO4+H2O (4)
KOH+HCl → KCl+H2O (5)
NaOH+HCl → NaCl+H2O (6)
【0012】
この際、排ガス焼却帯域中、及び当該帯域後のアルカリ金属塩化物、及び/又はアルカリ金属硫酸塩の形成は、SO2/HClの濃度比と、局所的なプロセス条件(温度、及び排ガスの冷却速度)に依存している。
【0013】
塩化物含有物質の形成、及びこのことにより生じる不所望の作用につながり得る、前述の不所望の化学反応を回避するために、燃焼ガス中のSO2濃度の向上が努力されてきた。排煙中のSO2濃度の向上による、燃焼プロセスでのダイオキシン形成の減少は、1986年に初めて、Griffin [Griffin R.D.A new theory of dioxin formation in municipal solid waste combustion; Chemosphere, Vol.15, Iss.9-12 (1986) S.1987-1990]により記載された。この中には、以下の均質気相反応を介して、SO2との反応によりCl2が低減される理論が提示されている。
Cl2+SO2+H2O → SO3+2HCl (7)
【0014】
SO2濃度の向上は、公知の燃焼システムで、燃焼に硫酸含有燃料、硫黄、又は硫黄化合物を添加することによって行う。比較的新しい調査では、浮遊灰の硫酸塩化、ひいては浮遊灰の、及び浮遊灰堆積物の塩化物含有体の減少が、Cl2形成の最少化若しくは低減のために重要な反応であることが証明されている。とりわけ高温では、塩化物を高い反応速度で排煙中に含まれるSO2によって硫酸塩化し、このことによって以下の式に従って硫酸塩が形成され、かつHClが放出される。
2NaCl+SO2+1/2O2+H2O → Na2SO4+2HCl (8)
2KCl+SO2+1/2O2+H2O → K2SO4+2HCl (9)
【0015】
US 4.793.270には、ダイオキシン形成速度を低減させるために、ゴミ焼却の領域で硫黄含有炭素の他に、CS2、CaS、及びSO2も、燃焼過程に導入される。
【0016】
同様にDE 199 53 418の範囲では、排煙中でのダイオキシン形成の低減のために、化学的プロセスにより、燃料にアミドスルホン酸とスルファミドを添加することが提案されている。
【0017】
DE 198 49 022では、腐蝕の低減のために、硫黄含有化学物質、例えばSO2、及びMgSO4が、燃焼ガスに導入される。
【0018】
DE 602 11 476 T2の範囲では(WO 02/059526から)、硫黄含有化学物質、例えば(NH42SO4、NH4HSO4、H2SO4、又はFeSO4が、腐蝕低減のために提案されている。
【0019】
DE 101 31 464 B4は、廃棄物燃焼装置内で硫黄又は硫黄含有化学物質を添加する、腐蝕が少ない、かつ放出が少ない、高度にハロゲン化された廃棄物の共同燃焼(Mitverbrennung)を提示している。
【0020】
DE 198 02 274 C2はまた、ゴミ焼却装置の釜を稼働する際の腐蝕低減方法を開示しており、この際に硫黄又は硫黄含有化合物が、腐蝕促進性熱平面に到達する前に、燃焼室又は熱い排ガスに導入される。
【0021】
WO 06/134227A1には、WO 06/124772 A2に記載のように、蒸発釜について腐蝕を低減させるために、Fe(SO43、又はAl2(SO43、若しくはSO2、SO3、H2SO4、硫黄、又は硫黄塩(Schwefelsalz)の添加が提案されている。
【0022】
基本的に硫黄、硫黄化合物、又は硫黄含有燃料(例えば、自治体の排水ヘドロ、古タイヤ廃棄物、又は硫黄を含む炭)の共燃焼(Co-Verbrennung)、又はSO2/SO3、H2SO4、又は他の硫黄含有化合物、例えば(NH42SO4の排ガスへの計量供給は、蒸発釜への導入前に行う。
【0023】
さらにDE 103 38 752 B9は、ゴミ焼却の領域でプロセス一体型のSO2循環を開示しており、この循環は外部由来の硫黄又は硫黄化合物の計量供給を必要としない。
【0024】
すべての方法は、排煙中のSO2及び/又はSO3濃度の上昇に伴い、硫酸塩化、ひいては浮遊堆積物及び釜灰堆積物の塩化物含分の低減が達成されることに基づく。一般的に不利なのは、存在している燃焼装置で、HCl及び硫酸塩化すべき化合物、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び金属化合物に比べて、排ガス中で比較的高いSO2及び/又はSO3濃度が要求されることである。
【0025】
さらにEP 0 193 205 B1は、硫黄化合物の分離のために、アルカリ金属ソルベンチン(Sorbentien)(CaO)を流動床に添加しながら燃焼させる、硫黄含有燃料中の循環式流動層燃焼を記載している。一次燃焼帯域での燃焼ガスの滞留時間は、1〜3秒(650℃〜1095℃)であり、そして排ガス焼却帯域では0.2〜2秒である。特別な硫化物/硫酸塩の固体物酸化帯域は高密度相の流動層として、サイクロンの固体還流導管内に流動床に対して配置されている。空気の供給により、この酸化流動層で分離される固体物内に含まれるアルカリ金属硫化物が、590〜985℃の範囲の排ガス温度で、かつ固体物滞留時間が1〜30秒で酸化されて硫酸塩になる。
【0026】
さらにWO 1982/04036には、還元電解槽(Reduktionszelle)のライニング及び/又はカソードの炭素材料からフッ素を回収する方法が開示されており、この際、酸素、水、及び二酸化硫黄の存在下で炭素材料の加熱により、フッ素が気体状フッ化水素として放出される。反応時間は、約1時間である。
【0027】
加えて、WO 1989/05340には、炭素含有燃料組成物が記載されている。燃焼の際にCa化合物及びMg化合物が添加され、かつ酸化触媒が添加され、硫黄酸化物及び窒素酸化物の放出の減少が達成される。
【0028】
ここから出発して本発明の課題は、硫酸塩化可能な排煙物質の実際上完全な浮遊流硫酸塩化のための方法及び装置を開発することであり、そしてこれによって塩化物含有灰堆積物の形成の最少化が、硫黄酸化物の低減された使用で可能になる。
【0029】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法、並びに請求項14の特徴を有する装置により解決される。従属請求項は、本発明の有利な構成を記載している。
【0030】
この課題は、少なくとも1つの燃焼室を有する燃焼装置内で、酸素含有排煙の排煙物質を浮遊流硫酸塩化するための方法により解決される。
【0031】
基本的には、排煙及びその中に含まれる排煙物質を、排ガス焼却帯域の通過後、好適には二次ガスの添加後、かつ腐蝕に敏感な、熱交換器、例えば釜の金属製熱交換面にさらに誘導する前に、反応室内の反応帯域に誘導し、これによって当該物質を4〜20秒間にわたって、700〜900℃、好ましくは750〜880℃の温度範囲にある反応温度に保ち、ここで800〜880℃の温度範囲は、好ましくは2〜10秒の割合を占める。上記時間範囲及び温度範囲では、主な気体状の硫酸塩化可能な排煙物質が、排ガス中に存在するSO2/SO3によって固体硫酸塩に効率的に移行し、しかも有利には反応室によって貫流の間、連続的に移行する。とりわけ金属の、及び/又はアルカリ金属の、及び/又はアルカリ金属の、塩化物、炭酸塩、酸化物、及び/又は水酸化物は、塩化物と比較して明らかに腐蝕が少ない硫酸塩に移行する。排煙中に形成される固体粒子中の、及び釜表面上にある固体堆積物中の塩化物含分は、硫酸塩化により大きく下がり、このことによってCl2の形成、及びこれによる前述の腐食作用、並びにPCDD/F形成が同様に著しく下がる。
【0032】
この際にまず、硫酸塩化可能な排煙物質、例えば塩化物、炭酸塩、酸化物、及び/又は水酸化物の、硫酸塩への移行が起こる。排煙中に含まれる硫酸塩化可能な排煙物質の完全な硫酸塩化を可能にするためには、燃焼ガス又は排煙中のSO2及び/又はSO3濃度が、排煙中に含まれる硫酸塩化可能なすべての化合物、例えば金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及びアルカリ金属化合物、とりわけCa、Na、K、及び金属、例えばPb、Zn、Cuの合計に対して、少なくとも化学量論的な比でなければならない。
【0033】
この際、金属塩化物、例えばCuCl2、ZnCl2、又はPbCl2の硫酸塩化には、CaO、NaCl、及びKClの硫酸塩化に比較して、たいていは明らかにより僅少な量の二酸化硫黄が必要となる。この状況は、たいてい明らかに異なる、排煙中の個々の化合物の絶対的な濃度に基づく(燃料組成物、及び固体物焼却の際の燃焼条件に依存する)。さらには、SO2及び/又はSO3濃度だけではなく、また温度、及び熱い排煙の冷却速度も、硫酸塩化効率に著しく影響を与える。
【0034】
排煙ガス中のSO2及び/又はSO3濃度は、燃料中の硫黄含分と硫黄の結合形態に激しく依存する。硫黄含分の少ない燃料、例えば自然そのままの木材は、好ましくは硫黄含有化合物を制御しながら、反応室前で排煙に添加することによって、及び/又は燃焼の際にSO2及び/又はSO3を放出する硫黄含有燃料の共同燃焼によって、硫酸塩化可能な排煙物質の完全な反応が保証されるように調整する。好ましくは、釜の後の排煙中のSO2濃度を測定し、そして測定されたSO2濃度が、50〜2000mg/Nm3、好ましくは100〜1000mg/Nm3の範囲であるように、前述の処置により調整する。
【0035】
このことはまた、反応室に後続する排ガス浄化段階から、硫酸塩化帯域前で排ガス中に、SO2/SO3若しくは硫黄化合物(熱分解の際にSO2及び/又はSO2が放出されるもの)をリサイクルすることも含み、この際にSO2/SO3の有利なプロセス一体型循環が生じ、ひいては硫黄化合物の添加と廃棄処理が、経済的かつ環境的に有利なやり方で著しく低減される。
【0036】
本発明の範囲では、排煙流が、排煙物質の硫酸塩化の際、及びこれによる浮遊灰中の塩化物濃度の低減の際に、所与の温度範囲、並びに前述の硫酸塩化の最適なプロセスパラメータに方向付けされた滞留時間範囲を超過しない、又は下回るように構成されている。このようにして排ガス中の二酸化硫黄含分が、有利には可能な限り完全にこのプロセスパラメータ範囲内で好ましくは進行させる硫酸塩化のために、有用である。反応室で好ましいプロセスパラメータを遵守する結果、二酸化硫黄の著しい過剰量が必要ではなくなる。
【0037】
好適には、反応室は流路、又は流路システムによって形成される。流路の長さは、生成物から、排煙の流速から、及び反応帯域での所与の滞留時間から計算される。
【0038】
反応室を最適な硫酸塩化温度範囲で、可能な限り等温線的に稼働させるために、排煙ガスの冷却は、周辺への、又は反応室(流路壁)の内壁の構成に一体化された熱交換器への、反応室での排熱によって、最少化されなければならない。排出される熱量Qは、以下のように計算される:
Q=k・A・ΔT (10)
[式中、k=熱通過係数、A=熱伝達面、ΔT=内壁(内壁表面が排煙と接触)と、遮断作用を有する反応室のジャケット(Ausmauerung)の外壁(内壁表面が周辺又は熱交換器に対して接触)との温度差である]。このことは、遮断作用の良好なジャケットで構成された、熱通過係数の低い、及び/又は熱交換面が少ない(流路の直径比に対して長さが短い)分厚い反応室により、実現化することができる。多孔質の耐火性材料、例えば熱通過係数が比較的少ないコランダム及び/又はSIC含有キャスタブル(Stampfmasse)が、換気無しで、又は好適には換気有りで特に有利である。
【0039】
反応帯域での温度は、上記温度区域での反応温度に相応させなければならない。要求される反応温度の確保は、遮断物、例えば耐火性材料を備える遮断作用のあるジャケットを有する反応室及び/又は流路若しくは流路システムの壁面によって行う。選択的に反応室又はその部分領域は、要求される温度区域の維持のため、又は好ましく調節された温度のために、付加的に電気又は熱技術による付加的な加熱部を有する。
【0040】
反応室への排煙の入口温度は、比燃焼空気量(燃焼空気対燃料の比=空気価)によって、熱くない排煙を、釜後に炉中に再度返送すること、又は反応室前で排ガス中に水を添加すること(蒸発冷却)によって調整することができる。
【0041】
硫酸塩化可能な排煙物質、とりわけ揮発性アルカリ金属塩化物、アルカリ金属水酸化物、及び金属塩化物を、固体硫酸塩に完全に移行させるために、及びこれによって浮遊灰中の塩化物濃度を最小限にするためにはさらに、酸素含有排ガス中の、及び硫酸塩化すべき排煙物質中のSO2及び/又はSO3の完全混合が必要となる。
【0042】
本方法はさらに好適には、好適には反応室と直接接続された、又は釜の後に設置されている除塵機を用いて、排煙から固体硫酸塩含有浮遊灰を分離することを含む。使用可能なのは好適には、静電的な分離器、熱ガスサイクロン、又は濾過式分離器(金属製、又はセラミック製繊維、又は膜濾過、又はコアセラミックフィルタ、及び充填層フィルタ)、並びにこれらの方法の組み合わせである。
【0043】
好適には反応室後の排煙は、高温では気体状の状態で存在するアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩化物、金属塩化物が固体硫酸塩粒子に移行された後、熱ガスフィルタにより誘導し、この際に固体排煙物質、とりわけ固体硫酸塩粒子を、残りの浮遊灰粒子ともに熱い排煙から分離し、そして排出することができる。これは好適には、通常は金属製の、排煙と直接接触状態にある金属製の熱転移面を有する熱交換器又は蒸気生成器に、排煙を供給する前に行う。揮発性排煙成分の凝縮及び/又は再昇華による、個々の揮発性排煙物質のそれぞれの飽和濃度を下回ることによる、並びに固体粒子の堆積、とりわけ熱転移面への堆積による、比較的冷たい熱交換表面への被覆形成は、濾過によりほぼ完全に回避することができ、同様にダイオキシン形成、並びに金属製熱交換器での塩素誘発型釜腐蝕も回避できる。回避される、又は明らかに低減される被覆形成のさらなる利点は、このことと結びついた、熱交換器内若しくは蒸気生成器内での、基本的により効率的な熱転移である。
【0044】
好ましくは、固体硫酸塩化される排煙物質の熱ガスフィルタでの分離は、500〜800℃の温度範囲、特に好ましくは600〜700℃の範囲で行う。
【0045】
好適には、硫酸塩化される灰粒子の、排煙からの分離は、反応室での滞留時間後、熱ガス濾過により行われる。この場合、反応室の熱ガスフィルタは、後接続されているか、又は反応室の端部で一体化されている。
【0046】
さらなる好ましい実施態様では、この熱ガスフィルタが熱交換器又は蒸発生成器内で一体化されている。同様に、一体化された熱ガスフィルタを有する熱交換器も考えられる。
【0047】
分離され、そして排出された硫酸塩化された灰粒子は、さらなる方法工程で、硫酸塩化された浮遊灰の硫酸塩が分解し、かつSO2及び/又はSO3が放出される温度に加熱することができる。形成されたSO2及び/又はSO3は好ましくは、燃焼プロセスにおける反応室前で排煙中に再度導入し、例えば排ガス焼却帯域に導入し、そして新たに硫酸塩化すべき排煙物質の硫酸塩化が利用可能になる。硫酸塩化された排煙物質、例えば比較的高いSiO2及び/又はAl23濃度を含むゴミ焼却装置からの灰を熱処理する際には、以下の反応式に従って主に、(硫黄化合物)、金属化合物、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩、及び/又はアルカリ金属アルミニウムケイ酸塩、アルカリ土類金属アルミニウムケイ酸塩から成る混合物が生成する:
2SO4+SiO2 → K2O・SiO2+SO2+1/2O2 (11)
2SO4+Al23・SiO2 → K2O・Al23・SiO2+SO2+1/2O2 (12)
Na2SO4+SiO2 → Na2O・SiO2+SO2+1/2O2 (13)
Na2SO4+Al23・SiO2 → Na2O・Al23・SiO2+SO2+1/2O2 (14)
【0048】
排出される硫酸塩化された灰の熱処理は、硫酸塩化された浮遊灰の硫酸塩分解温度超で、好ましくは900〜1300℃の間で、及びさらに好ましくは900〜1100℃の間で行う。Si及びAlの少ない灰からSO2及び/又はSO3を放出させながらの熱分解の効率は、不活性粒子、とりわけSiO2及び/又はAl23の混入によって改善させることができ、かつ硫酸塩含有浮遊灰の硫酸塩分解温度を低下させることができる。
【0049】
以下、実施例と図面に基づき本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】図式的に示された、先行技術に従って二酸化硫黄を添加する装置でのプロセスの流れである。
図2図1に倣ったプロセスの流れだが、蒸発器領域に一体化された硫酸塩化工程を有する。
図3】aとbは、図2に倣ったプロセスの流れだが、付加的に高温除塵(a及びb)、並びに付加的なSO2/SO3のリサイクル(b)を有する。
図4図2に倣ったプロセスの流れだが、付加的に熱利用後の除塵と、付加的なSO2/SO3のリサイクルを有する。
図5】排ガス焼却帯域後の燃焼温度と、釜後のSO2濃度に依存した、浮遊灰中の塩素対硫黄のモル比である。
図6】温度範囲900→700℃における排煙冷却速度と、釜後のSO2濃度に依存した、浮遊灰中の塩素対硫黄のモル比である。
図7】反応温度に依存した、浮遊灰の硫酸塩化(硫酸塩化効率)における、二酸化硫黄の消費量である。
図8】700℃〜900℃の間の温度区域での秒単位の排煙滞留時間にわたる、ゴミ焼却の硫酸塩化可能な排煙物質の硫酸塩化に必要な、釜後の排煙中のSO2濃度である。
図9】排煙の基本的な温度推移、反応帯域で硫酸塩化可能な排煙物質の反応の間の排煙冷却曲線である。
【0051】
図1は、固体燃料供給2、一次空気供給3、及び燃えがら排出部4を有する固定床焼却帯域1、並びに二次空気供給6を有する排ガス焼却帯域5を有する、2段階の燃焼プロセス7を用いる従来の方法を図式的に示す。
【0052】
排ガス焼却後に、二酸化硫黄又は硫黄含有化合物8を排ガス9に添加し、並びに蒸発釜10を加熱するためのさらなる誘導を行い、これによって蒸発器11、過熱器12、及び予熱器13(エコノマイザー)への熱転移が、好適には前記順序で行われる。蒸発器11、及び過熱器12はまた、逆の順序に配置されていてもよい。蒸発釜内で加熱すべき水は、水供給14から予熱器13に、ここから蒸発器11に、ここから飽和蒸気流15として過熱器12に導通させ、そして過熱された蒸気流16として、例えば蒸気タービンに供給することができる。排ガス側で蒸発釜に後接続されて、排ガス浄化装置17内で排ガス浄化、及び排ガスの放出18を行う。
【0053】
図2は、蒸発釜10の範囲では図1に倣って関連した、好ましい実施態様の修正された方法スキームを示す。この際、蒸発釜は2つの蒸発器工程20と21を有しており、これらは排煙流19(排ガス流)によって連続的に貫流される。第一の蒸発器工程20は、前述の反応区域内の反応温度への温度の低下のみに役立ち、かつこの際に熱排出が排ガス流を約900℃の温度、好適には880℃の温度に調節するように、調整されている。しかしながら第二の蒸発器工程21に導入される前に、硫酸塩化帯域22によって、好適には前述の種類の反応室に排煙の通過が起こり、この反応室へ排ガスが約900℃の温度で導入され、そして4〜20秒の滞留時間後、約700℃の温度で排出される。この反応室は好適には、排ガスが当該反応室内で880〜800℃の温度で、2〜10秒間滞留させるように熱的に調整されている。この際に、前述の硫酸塩化可能な排煙物質の硫酸塩化が排ガス流で起こり、この際にとりわけ揮発性のアルカリ金属水酸化物、並びにアルカリ金属塩化物、及び金属塩化物が固体硫酸塩に移行する。硫酸塩化帯域には、選択的な熱ガスフィルタが続くことはなく、及び好ましくはまた僅かな熱排出のみが続く(例えば図3参照)ため、固体硫酸塩を含む灰粒子で負荷された排煙(排ガス)は、前述の出口温度で第二の蒸発器工程21に入り、それから図1を用いて説明したように、過熱器、予熱器、及び排ガス浄化を通過させる。反応室は好適には、排煙と蒸発器の熱交換面との間の良好な温度遮断性で、共通の蒸発器工程で(蒸発器工程20と21が1つの工程として実施されている)一体化されて設置されていてよい。
【0054】
図3aで描かれている方法の変法は、図2で提示されたものとは異なり、硫酸塩化帯域22と第二の蒸発器工程21との間に、前述の硫酸化された灰粒子24のための除塵機23による粉塵分離を有する。理想的な場合には等温的な別個の除塵機23によって、排煙流19(排ガス流)には、後続の熱転移のために利用可能な熱は行かない、すなわち第二の蒸発器、加熱器及び予熱器では失われている。反応室22及び熱ガスフィルタ23は好適には、排煙と蒸発器の熱交換面との間の良好な温度遮断性で、共通の蒸発器工程で(蒸発器工程20と21が1つの工程として説明されている)一体化されて設置されていてよい。
【0055】
図3aで描かれている方法の変法は、さらなる実施態様の範囲でSO2/SO3リサイクル28により、補完することができ(図3bを参照)、この際に熱ガスフィルタ(除塵機23)からの硫酸塩−灰粒子24をまず、好適にはAl23及び/又はSiO2とともに熱分解29に供給し、900℃超の温度、好ましくは950℃超、及びさらに好ましくは950〜1000℃の温度、好ましくは1300℃の温度でSO2及び/又はSO3、及び酸素を、前掲の式(11)〜(14)に相応して放出させて、(硫黄化合物)、金属化合物、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩、及び/又はアルカリ金属アルミニウムケイ酸塩、アルカリ土類金属アルミニウムケイ酸塩から成る混合物を生成する(ケイ酸塩排出30)。
【0056】
図3bにより挙げられている方法工程、及びこのために必要となる導管、輸送手段、及びSO2/SO3リサイクル28のための反応槽、熱分解29、並びにケイ酸塩排出30は、図2に倣って方法スキームに一体化することもできる。しかしながらこのためには、例えば排ガス浄化17の領域で、除塵機23が必要となる(図4参照)。ここで分離される硫酸塩化された灰粒子は前述のやり方で熱分解29に供給され、そして生成された反応混合物をSO2/SO3リサイクル28として、並びにケイ酸塩排出30を前述のようにさらに誘導する。
【0057】
前述の方法変法では、排煙(排ガス)中の硫黄酸化物の含分、並びに所与の必要な硫酸塩化のための反応時間が充分であれば、硫黄含有化合物8の付加的な導入は必ずしも必要でなくなる(図8参照)。図3b及び図4に倣った方法変法では、排煙(排ガス)中の硫黄含分が、SO2/SO3リサイクル28によって、並びに所与の必要な硫酸塩化のための反応時間が充分であれば、硫黄含有化合物8の付加的な導入が必ずしも必要ではなくなる。
【0058】
図5は、排ガス焼却帯域後の燃焼温度(T[℃])32、及び酸素含有排煙雰囲気中の釜後の排ガス中のSO2濃度(mg/Nm3)33に依存した、浮遊灰中の塩素対硫黄(Cl/S)のモル比31を示す。異なる燃焼実験の範囲で測定された測定データは、特徴的なフィールド25に広がっており、これを手がかりにして必要となる燃焼温度の事前選択、及び定量的に記載される塩素含分の低下を達成するためのSO2濃度の事前選択が可能になる。
【0059】
図6は、浮遊灰中の塩素対硫黄のモル比(Cl/S)31の依存度を示し、このモル比は、900〜700℃の温度範囲での排煙の冷却速度([℃/秒])34と、及び釜後の排ガス中のSO2濃度(mg/Nm3)33に依存している。基本的に、酸素及びSO2含有雰囲気での反応ガスのゆっくりとした冷却は、浮遊灰中ではっきりと認められる塩素対硫黄のモル比の減少につながり、とりわけ僅少なSO2濃度でもそうである。先行技術で使用されているように高いSO2過剰量はまた、所与の温度範囲でのゆっくりとした排煙冷却では必要なくなる。本発明の範囲では、一定の滞留時間にわたる反応室での排煙の滞留時間は、所与の温度範囲での有利に可能な限りゆっくりとした冷却の調整に役立ち、ひいては硫酸塩形成による塩化物減少に役立つ。
【0060】
測定データが加えて明らかにするのは、純粋な家庭ゴミ焼却でも(SO2富化なし)、また硫黄の共同燃焼でも(燃料への添加あり)若しくは排ガス焼却帯域の熱い排煙への、硫酸アンモニウム又はSO2の計量供給の場合でも一般的に、高温範囲で排ガス焼却後に存在するSO2濃度のみが、硫酸塩化にとって重要であるということである。より低い冷却速度(℃/秒)34、すなわち反応室での長い滞留時間(高温範囲での、図8参照、滞留時間は38)は、相対的に低いSO2濃度で浮遊灰の効率的な硫酸塩化につながる。
【0061】
さらに図7は、浮遊灰の硫酸塩化の際、反応温度(℃)36に依存する、実験室試験の範囲で測定された二酸化硫黄の消費量(比C/C0)35を示す。反応時間は、その都度約6秒であった。このためには、2つのゴミ焼却灰試料(曲線26と27、織布フィルタ灰)反応室に導入し、そして(N2、O2、H2O、SO2)から成るガス混合物で負荷した(一定のガス流量)。反応室から出る前(C0)、及び出た後(C)のガス混合物中のSO2濃度の測定比は、硫酸塩化反応のための効率基準値である。C/C0比が1より小さい場合、硫酸塩化反応が起こる。C/C0比(=SO2消費量)が少なければ少ないほど、より効率的に硫酸塩化反応が進む。曲線推移26若しくは27を手がかりに、硫酸塩化反応(C/C0)に最適な温度範囲を測定することができる。曲線進行の最小値は、最大のSO2消費量を示し、ひいては浮遊灰硫酸塩化に最適な反応温度範囲を示す。最適な反応温度範囲は、700〜900℃の間、しかしながら好ましくは前述の温度区域800〜880℃にある。900〜920℃の範囲にわたるフィルタ灰の温度上昇は逆に、硫酸塩化反応の際、硫酸塩含有灰の不所望の熱分解(C/C0>1)につながり、SO2が放出される。
【0062】
図5及び図6の測定データを考慮すると、僅かな冷却速度での硫酸塩化の増大は、(dT<70℃/秒)を示し、反応室で4秒超の熱い排煙の滞留時間を採用すると、好ましくは700〜900℃、さらに好ましくは800〜880℃の温度区域が、浮遊灰の効率的な硫酸塩化のために特に有用な範囲である。この反応のために必要とされるSO2濃度は、滞留時間のさらなる延長により減少させることができる。燃料固有の硫黄含分により発生する、排煙中のSO2/SO3濃度は、完全な硫酸塩化のための物質バランスにおいて充分であり、本発明は特に経済的である。硫黄、硫黄化合物、又は二酸化硫黄を燃焼プロセス及び浄化プロセスで付加的に導入することは、この場合必要と成らない。
【0063】
高温下ですでに浮遊灰を好ましく完全に硫酸塩化しておくことにより、易揮発性成分、例えばアルカリ金属塩化物、及び金属塩化物(約700℃超で)は、すでに釜導入前に固体硫酸塩に反応しており、ひいては固体物として分離可能である。形成される硫酸塩は、アルカリ金属塩化物、及び金属塩化物に比べて数十倍蒸気圧が低く、高温領域では直接固体のエアロゾルに凝縮若しくは再昇華し、この際に当該エアロゾルは、熱転移表面の腐蝕を、排煙冷却で凝縮可能な若しくは再昇華可能な、揮発性塩化物よりも遙かに僅かにしか促進させない。
【0064】
従って、後続の釜表面に堆積された浮遊灰は、理想的には塩化物不含である。このことによってまた、灰堆積物からのCl2形成が回避される。ダイオキシン、例えばPCDD/Fの形成、並びに釜腐蝕は、これらの条件下では実質的に起こらない。
【0065】
高温度範囲での無機Cl化合物の完全な硫酸塩化の場合、すなわち揮発性アルカリ金属化合物、及び金属化合物(Hgは除く)の不存在下では、加えて、すでに過熱器12の前に好ましくは600〜700℃の高温濾過工程を用いて硫酸塩−灰粒子を分離させる可能性がある(図3a及び3b参照)。このような実施態様には、後続の熱交換表面への灰の堆積が、実質的に完全に回避できるという利点がある。このことによってまた、ダイオキシン、例えばPCDD/Fの形成が、釜領域で実質的に完全に避けられる。
【0066】
釜に後接続された排ガス浄化での粉塵分離を、効率的な熱ガス濾過の際には放棄することができる。排煙から蒸気循環への、とりわけ飽和蒸気流15への熱転移は、この選択肢では最適である(付着物無し)。この際、熱交換出口での排ガス温度は、酸の露点(常温の釜端部でのエコノマイザーの材料選択)を考慮してさらに低下可能であり、このことは加えて、排ガス損失の減少により、エネルギー利用の有利な上昇作用をもたらす。熱ガスフィルタ後の領域内で周期的な釜洗浄のための処置を、さらに放棄することができ、釜−試験区域をこれに相応して拡大することができる。釜腐蝕速度は、相応して低くなり、かつ蒸発パラメータ(Tとp)は著しく上昇可能であり、このことによって、蒸気力プロセスを用いた電気による工業的生成の際、全体的に有利に、明らかに改善された効率が可能になる。
【0067】
図8は、700℃〜900℃の間の温度区域での秒単位の滞留時間にわたる、ゴミ焼却の硫酸塩化可能な排煙物質の硫酸塩化に必要な、釜後の排煙中のSO2濃度(mg/Nm3)33である。記載されているのは、異なる硫酸塩化速度に対する結果であり(浮遊灰のモル比(Cl/S)として表記)、この際に、0.01というCl/Sモル比は実質的に完全な反応を示し、そして1.0というCl/Sモル比は、半分の反応を示す。必要となるSO2濃度は、釜の通過後の排煙中で測定した。この結果が示しているのは、700〜900℃の温度範囲での排ガスの滞留時間の増加により、所望の硫酸塩化速度(Cl/Sモル比として表記)に必要となる、釜後でのSO2濃度が低下可能だということである。
【0068】
図9は、反応帯域での、硫酸塩化可能な排煙物質の反応の間の、排煙の時間的な温度推移(排ガス冷却曲線39、温度(℃)T 40、時間t(秒)にわたって 41)を、模範的に示す。上のダイアグラムは、700〜900℃の温度区域(点aと点bとを結ぶ直線)で、反応室を通過させた際、従来技術に相応する、反応室のない通常の冷却曲線(点線曲線37、冷却速度約60〜70℃/秒)と比較して、硫酸塩化反応に有用な冷却速度を提示し、その一方で下のダイアグラムは、800〜880℃という最適な温度範囲、すなわち点cと点dの間で、反応室内での低減された冷却が提示されている。両方の場合で、900℃から700℃への(点aから点bへの)冷却時間は、4〜20秒の範囲である一方、880℃から800℃への(点cから点dへの)冷却時間は、2〜10秒間である。
【符号の説明】
【0069】
1 固定床焼却帯域、 2 固体燃料供給、 3 一次空気供給、 4 燃えがら排出、 5 排ガス焼却、 6 二次空気供給、 7 二段階燃焼プロセス、 8 硫黄含有化合物、 9 排ガス、 10 蒸発釜、 11 蒸発器、 12 過熱器、 13 予熱器、 14 水供給、 15 飽和水蒸気流、 16 乾燥蒸気流(過熱)、 17 排ガス浄化、 18 放出、 19 排煙、 20 蒸発器工程、 21 第二の蒸発器工程、 22 硫酸塩化帯域、 23 除塵機、 24 硫酸塩−灰粒子、 25 特徴的なフィールド、 26 上の測定曲線、 27 下の測定曲線、 28 SO2/SO3リサイクル、 29 熱分解、 30 ケイ酸塩排出、 31 塩素対硫黄のモル比(Cl/S)、 32 排ガス焼却帯域後の燃焼温度T(℃)、 33 釜後のSO2濃度(mg/Nm3)、 34 冷却速度(℃/秒)、 35 二酸化硫黄の消費量、比C/C0、 36 反応温度(℃)、 37 反応室無しの温度推移(従来技術)、 38 700〜900℃の温度区域での滞留時間(秒)、 39 排煙冷却曲線、 40 温度(℃)、 41 時間(秒)
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9