特許第5743564号(P5743564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743564
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】電子回路装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20150611BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   H01L23/40 C
   H01L23/36 D
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-7807(P2011-7807)
(22)【出願日】2011年1月18日
(65)【公開番号】特開2012-151222(P2012-151222A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2013年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】山城 卓児
【審査官】 久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−179752(JP,U)
【文献】 実開平05−036896(JP,U)
【文献】 実開昭61−072895(JP,U)
【文献】 実開昭59−145045(JP,U)
【文献】 実開昭59−121892(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34−23/473、
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス本体及び該デバイス本体から突出する電気接続用の外部端子を有する発熱電子デバイスを、導電性を有する放熱部材の表面から窪む凹部に収容した状態で、当該放熱部材に固定してなる電子回路装置の製造方法であって、
前記凹部の開口の少なくとも一部を覆うように、電気絶縁性を有して折り曲げ可能な絶縁シートを前記放熱部材の表面に載置するシート配置工程と、
前記凹部の開口を覆う前記絶縁シートのカバー部が前記発熱電子デバイスによって前記凹部内に押し込まれるように、前記発熱電子デバイスを前記凹部に挿入するデバイス挿入工程と、
前記凹部に収容された発熱電子デバイスを放熱部材に固定するデバイス固定工程と、を備え、
前記デバイス挿入工程後の状態において、前記発熱電子デバイスは、前記凹部の深さ方向の直交方向への平行移動、及び、前記深さ方向を軸とした回転移動が規制され、
さらに、前記放熱部材と前記外部端子とが電気的に絶縁されるように、前記凹部の内面の少なくとも一部が前記絶縁シートによって覆われていることを特徴とする電子回路装置の製造方法。
【請求項2】
前記シート配置工程において、前記放熱部材の表面に配された前記絶縁シートの周囲部を、前記放熱部材の表面に突出して形成された位置決め部に当接させることで、当該表面における前記絶縁シートの移動を規制することを特徴とする請求項1に記載の電子回路装置の製造方法。
【請求項3】
前記位置決め部が、前記凹部が開口する前記放熱部材の表面から突出する複数の係合突起からなり、
少なくとも二つの前記係合突起は、平面視で前記凹部を挟み込むように配され、
前記絶縁シートの前記周囲部には、その周縁から内側に窪む窪み部が複数形成され、
前記シート配置工程において、複数の前記係合突起が複数の前記窪み部に個別に係合することを特徴とする請求項2に記載の電子回路装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子回路装置の製造方法によって製造される電子回路装置であって、
導電性を有する放熱部材と、デバイス本体及び該デバイス本体から突出する電気接続用の外部端子を有すると共に前記放熱部材に固定される発熱電子デバイスと、を備え、
前記放熱部材には、その表面から窪んで前記発熱電子デバイスを収容する凹部が形成され、
前記発熱電子デバイスは前記凹部に収容された状態で、前記凹部の深さ方向の直交方向への平行移動、及び、前記深さ方向を軸とした回転移動が規制され、
前記放熱部材と前記外部端子とが電気的に絶縁されるように、前記凹部の内面の少なくとも一部が電気絶縁性を有する絶縁シートによって覆われていることを特徴とする電子回路装置。
【請求項5】
前記絶縁シートが、前記凹部の内面と前記デバイス本体との間にも挟み込まれていることを特徴とする請求項4に記載の電子回路装置。
【請求項6】
前記絶縁シートに、その厚さ方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記凹部の内面に、前記貫通孔に挿通されて前記デバイス本体に接触する突起部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電子回路装置。
【請求項7】
前記絶縁シートは、前記凹部の底面を覆う底面被覆部と、前記凹部の内側面を覆う側面被覆部とを一体に形成して構成され、
前記側面被覆部が複数に分割されていることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の電子回路装置。
【請求項8】
前記凹部及び前記絶縁シートの前記底面被覆部が、互いに対応する平面視多角形状に形成され、
複数の前記側面被覆部が、それぞれ前記凹部の各内側面に対応する形状に形成されると共に、前記底面被覆部の各辺に個別に接続されていることを特徴とする請求項7に記載の電子回路装置。
【請求項9】
前記凹部に、その底面の上方に間隔をあけた位置において前記凹部の開口縁から内側に張り出す梁部が形成され、当該梁部と前記凹部の底面との間に前記デバイス本体の一部が挿入可能とされていることを特徴とする請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の電子回路装置。
【請求項10】
付勢部材の付勢力によって前記デバイス本体を前記凹部の底面に向けて押し付けることで、前記発熱電子デバイスが前記放熱部材に固定されていることを特徴とする請求項4から請求項9のいずれか1項に記載の電子回路装置。
【請求項11】
前記凹部に収容された前記デバイス本体の上方に間隔をあけた状態で前記放熱部材に対して固定されると共に、前記外部端子を接合させて前記発熱電子デバイスに電気接続される回路基板を備え、
前記付勢部材の一端部が前記回路基板に固定され、
前記回路基板を前記放熱部材に固定した状態で、前記付勢部材の他端部が前記凹部に収容された前記デバイス本体に当接して、前記デバイス本体が前記付勢部材の付勢力によって前記凹部の底面に押し付けられることを特徴とする請求項10に記載の電子回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子回路装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子回路装置には、例えば特許文献1のように、パワートランジスタをはじめとする半導体パッケージのように通電により発熱する発熱電子デバイスを、ヒートシンク等の放熱部材に固定したものがある。
従来、発熱電子デバイスは、一本のネジによって放熱部材の表面に固定されることが多いが、例えば特許文献1のように、板バネ等の付勢部材の付勢力によって放熱部材に押し付けて固定されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−67082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一本のネジや付勢部材により発熱電子デバイスを固定するだけでは、放熱部材上において発熱電子デバイスの向きや位置がずれる虞がある、すなわち、放熱部材に対する発熱電子デバイスの位置決めが困難である。
なお、発熱電子デバイスは、電子回路装置の回路基板に接合するための外部端子を有しているが、この回路基板は放熱部材の所定位置に固定されるため、回路基板の接合部分の位置を発熱電子デバイスの外部端子に合わせるように、回路基板を放熱部材に対して動かすことはできない。したがって、前述したように放熱部材上において発熱電子デバイスの向きが定まらないと、外部端子を回路基板の接合部分に接合できない、という問題が生じる。従来では、治具を用いて放熱部材に対する発熱電子デバイスの位置決めすることもあるが、この場合には、発熱電子デバイスの固定前後に治具を着脱する工数が必要となるため、電子回路装置の製造工程数が多くなってしまう。
【0005】
また、熱伝導率の高い放熱部材は導電性を有することが多いため、発熱電子デバイスの固定に際しては、発熱電子デバイスと放熱部材との間の電気的な絶縁を確保できるように、考慮する必要がある。なお、発熱電子デバイスの外部端子は、発熱源となる電子部品、あるいは、これを樹脂で封止したパッケージ等のデバイス本体から外方に突出していることが多いため、特に外部端子と放熱部材との電気的な絶縁を確保する必要がある。
そして、従来では、放熱部材と発熱電子デバイスとの間に、電気絶縁性を有する絶縁シートを挟み込むことで、放熱部材と発熱電子デバイスとの電気的絶縁を図っているが、一本のネジや付勢部材により発熱電子デバイスを固定する場合には、絶縁シートに対する発熱電子デバイスの向きや位置がずれて、電気的絶縁を確保できない虞が生じる。
なお、絶縁シートに対する発熱電子デバイスの向きや位置のずれの有無に関わらず、放熱部材と発熱電子デバイスとの電気的絶縁を確保できるように、放熱部材の表面を覆う絶縁シートを十分に大きく設定することも考えられるが、この場合には、電子回路装置の製造コストが高くなってしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、発熱電子デバイスと放熱部材との間の電気的絶縁を低コストで確保しながらも、放熱部材に対する発熱電子デバイスの位置決めを容易に行うことができる電子回路装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明の電子回路装置は、後述する電子回路装置の製造方法によって製造される電子回路装置であって、導電性を有する放熱部材と、デバイス本体及び該デバイス本体から突出する電気接続用の外部端子を有すると共に前記放熱部材に固定される発熱電子デバイスと、を備え、前記放熱部材には、その表面から窪んで前記発熱電子デバイスを収容する凹部が形成され、前記発熱電子デバイスは前記凹部に収容された状態で、前記凹部の深さ方向の直交方向への平行移動、及び、前記深さ方向を軸とした回転移動が規制され、前記放熱部材と前記外部端子とが電気的に絶縁されるように、前記凹部の内面の少なくとも一部が電気絶縁性を有する絶縁シートによって覆われていることを特徴とする。
【0008】
上記電子回路装置によれば、発熱電子デバイスを凹部に収容した状態では、発熱電子デバイスが放熱部材に対して位置ずれしないため、発熱電子デバイスを凹部に収容した後に、従来と同様に、一本のネジや付勢部材により発熱電子デバイスを放熱部材に固定しても、発熱電子デバイスの向きを確実に保持することができる。例えば、発熱電子デバイスを凹部に収容した後にネジで放熱部材に固定する場合、発熱電子デバイスがネジと共に回転してしまうことを防止できる。すなわち、放熱部材に対する発熱電子デバイスの位置決めを容易に行うことができる。さらに、この位置決めの際には、従来のような治具を用いる必要も無いため、電子回路装置の製造工程数を減らすことができる。
【0009】
また、外部端子を含む発熱電子デバイスを放熱部材の凹部に収容する本発明の構成では、放熱部材の表面に配する従来構成と比較して、放熱部材と外部端子との間隔が狭くなるが、凹部の内面と外部端子との間に絶縁シートが配されていることで、放熱部材と外部端子とを電気的に絶縁することができる。
そして、前述したように、凹部によって放熱部材に対する発熱電子デバイスの位置ずれが防止されていることで、凹部の内面に配置された絶縁シートに対して発熱電子デバイスの位置がずれることもないため、確実に放熱部材と外部端子との電気的な絶縁を図ることができる。
また、凹部の内面のうち必要な領域のみに絶縁シートを配すればよいため、絶縁シートの大きさを最小限に抑えて、電子回路装置の製造コストを低く抑えることも可能となる。
【0010】
さらに、従来構成では、発熱源となるデバイス本体の下面のみが放熱部材に近接するが、本発明の電子回路装置では、発熱電子デバイスが凹部に収容されることで、デバイス本体の下面に加え、デバイス本体の側面も放熱部材に近接させることができるため、デバイス本体の熱を効率よく放熱部材に逃がすことが可能である。
また、放熱部材が板状に形成されると共に、凹部が放熱部材の表面のうち板厚方向の一方の端面から窪むように形成されている場合には、従来のように板状に形成された放熱部材の一方の端面に発熱電子デバイスを配置する場合と比較して、発熱電子デバイス本体を配置した面から放熱部材の他方の端面に至る放熱部材の厚みを薄く設定できる。このため、放熱部材の他方の端面側にエアー等の冷却用流体を流すことで放熱部材の他方の端面を冷却する場合には、デバイス本体の熱を放熱部材から冷却用流体まで効率よく逃がすことができる。
以上のことから、本発明の電子回路装置によれば、放熱効率の向上を図ることが可能である。
また、本発明の電子回路装置では、発熱電子デバイスが凹部に収容されることで、電子回路装置の小型化を図ることも可能である。
【0011】
そして、前記電子回路装置においては、前記絶縁シートが、前記凹部の内面と前記デバイス本体との間にも挟み込まれているとよい。
この場合、デバイス本体の熱を効率よく放熱部材に逃がすことができるように、絶縁シートは熱伝導率の高い材料によって形成されることがより好ましい。
上記構成では、外部端子と共に発熱電子デバイスの電気回路をなす導電性部分が、デバイス本体の外面に露出していたとしても、発熱電子デバイスと放熱部材との電気的絶縁を図ることができる。
【0012】
また、前記電子回路装置において、前記凹部の内面と前記デバイス本体との間に前記絶縁シートを挟み込む場合には、前記絶縁シートに、その厚さ方向に貫通する貫通孔が形成され、前記凹部の内面に、前記貫通孔に挿通されて前記デバイス本体に接触する突起部が形成されていることがさらに好ましい。
この構成では、発熱源であるデバイス本体に放熱部材が直接接触することで、さらに効率よくデバイス本体の熱を放熱部材に逃がすことが可能となる。
【0013】
さらに、前記電子回路装置において、前記絶縁シートは、前記凹部の底面を覆う底面被覆部と、前記凹部の内側面を覆う側面被覆部とを一体に形成して構成され、前記側面被覆部が複数に分割されているとよい。
なお、凹部の内側面は、凹部底面から放熱部材の表面まで延びる面のことを示している。
この構成では、絶縁シートを凹部の内面に配する際、絶縁シートの側面被覆部にしわが生じることを抑制できる。言い換えれば、絶縁シートの側面被覆部の一部が凹部の内側面から浮き上がることを防いで、放熱部材と外部端子との電気的な絶縁を確実に図ることができる。
また、絶縁シートが一体に形成されていることで、絶縁シートを容易に凹部の底面及び内側面に配することができる。
【0014】
また、前記電子回路装置においては、前記凹部及び前記絶縁シートの前記底面被覆部が、互いに対応する平面視多角形状に形成され、複数の前記側面被覆部が、それぞれ前記凹部の各内側面に対応する形状に形成されると共に、前記底面被覆部の各辺に個別に接続されていることがさらに好ましい。
この構成では、複数の側面被覆部が、凹部の内側面上において互いに重なることが無いため、絶縁シートの大きさを必要最小限に設定することができる。
【0015】
さらに、前記電子回路装置においては、前記凹部に、その底面の上方に間隔をあけた位置において前記凹部の開口縁から内側に張り出す梁部が形成され、当該梁部と前記凹部の底面との間に前記デバイス本体の一部が挿入可能とされていてもよい。
この構成では、発熱電子デバイスを凹部に収容した状態において、デバイス本体の一部の上側が梁部によって覆われるため、発熱電子デバイスを凹部に収容してから放熱部材に固定するまでの間に、振動等によって発熱電子デバイスが不意に凹部から抜け出ることを防止できる。
【0016】
また、前記電子回路装置においては、付勢部材の付勢力によって前記デバイス本体を前記凹部の底面に向けて押し付けることで、前記発熱電子デバイスが前記放熱部材に固定されていることが好ましい。
この構成では、放熱部材が板状に形成されると共に、凹部が放熱部材の表面のうち板厚方向の一端面から窪むように形成されている場合、ネジによりデバイス本体を放熱部材に固定する構成と比較して、凹部の底面にネジ孔を形成する必要が無いため、凹部の底面から放熱部材の他端面に至る放熱部材の厚みをより薄く設定することが可能となり、デバイス本体の熱を放熱部材の他端面側に効率よく逃がすことができる。
【0017】
なお、ネジによりデバイス本体を放熱部材に固定する構成でも、ネジ孔の形成部分(ネジ孔部)を放熱部材の他端面から突出するように形成すれば、凹部の底面から放熱部材の他端面までの厚みを小さく設定することは可能である。しかしながら、放熱部材の他端面側にエアー等の冷却用流体を流す場合には、突出するネジ孔部が冷却用流体の流れの抵抗となって冷却用流体の流速が低下し、その結果として、放熱部材の冷却効率が低くなってしまう。また、放熱部材の他端面側における冷却用流体の流速が変化することで、放熱部材の他端面の冷却が不均一になってしまう。
これに対して、上記構成の電子回路装置では、ネジ孔部等の突起物が放熱部材の他端面に形成されず、この他端面を平坦に形成できるため、冷却用流体の流速の低下を抑えて、放熱部材の冷却効率向上を図ることができる。また、放熱部材の他端面側における冷却用流体の流速を一定に保つことができるため、放熱部材の他端面全体を均一に冷却することができる。
【0018】
さらに、前記電子回路装置において、前記凹部に収容された前記デバイス本体の上方に間隔をあけた状態で前記放熱部材に対して固定されると共に、前記外部端子を接合させて前記発熱電子デバイスに電気接続される回路基板を備える場合には、前記付勢部材の一端部が前記回路基板に固定され、前記回路基板を前記放熱部材に固定した状態で、前記付勢部材の他端部が前記凹部に収容された前記デバイス本体に当接して、前記デバイス本体が前記付勢部材の付勢力によって前記凹部の底面に押し付けられることがより好ましい。
この構成では、回路基板を放熱部材に固定するだけで、発熱電子デバイスも同時に放熱部材に固定することができる。したがって、放熱部材に対する発熱電子デバイス及び回路基板の取付工数を減らして、電子回路装置の製造効率向上をさらに図ることができる。
【0019】
そして、本発明の電子回路装置の製造方法は、デバイス本体及び該デバイス本体から突出する電気接続用の外部端子を有する発熱電子デバイスを、導電性を有する放熱部材の表面から窪む凹部に収容した状態で、当該放熱部材に固定してなる電子回路装置の製造方法であって、前記凹部の開口の少なくとも一部を覆うように、電気絶縁性を有して折り曲げ可能な絶縁シートを前記放熱部材の表面に載置するシート配置工程と、前記凹部の開口を覆う前記絶縁シートのカバー部が前記発熱電子デバイスによって前記凹部内に押し込まれるように、前記発熱電子デバイスを前記凹部に挿入するデバイス挿入工程と、前記凹部に収容された発熱電子デバイスを放熱部材に固定するデバイス固定工程と、を備え、前記デバイス挿入工程後の状態において、前記発熱電子デバイスは、前記凹部の深さ方向の直交方向への平行移動、及び、前記深さ方向を軸とした回転移動が規制され、さらに、前記放熱部材と前記外部端子とが電気的に絶縁されるように、前記凹部の内面の少なくとも一部が前記絶縁シートによって覆われていることを特徴とする。
【0020】
上記製造方法では、前述した電子回路装置を製造することができる。なお、この製造方法における絶縁シートのカバー部は、製造後の電子回路装置において概ね底面被覆部に相当する。
そして、この製造方法によれば、デバイス挿入工程において発熱電子デバイスを収容すると同時に絶縁シートも凹部内に入り込ませて、絶縁シートを凹部の内面と外部端子との間に配することが可能となる。言い換えれば、デバイス挿入工程では、凹部に対する発熱電子デバイス及び絶縁シートの位置決めを同時に行うことができるため、発熱電子デバイス及び絶縁シートを凹部に対して別個に位置決めする場合と比較して、電子回路装置の製造効率向上を図ることができる。
【0021】
なお、前記電子回路装置の製造方法では、前記シート配置工程において、前記放熱部材の表面に配された前記絶縁シートの周囲部を、前記放熱部材の表面に突出して形成された位置決め部に当接させることで、当該表面における前記絶縁シートの移動を規制することが好ましい。
なお、前記絶縁シートの周囲部は、製造後の電子回路装置において概ね側面被覆部に相当する。
【0022】
また、前記電子回路装置の製造方法では、前記位置決め部が、前記凹部が開口する前記放熱部材の表面から突出する複数の係合突起からなり、少なくとも二つの前記係合突起は、平面視で前記凹部を挟み込むように配され、前記絶縁シートの前記周囲部には、その周縁から内側に窪む窪み部が複数形成され、前記シート配置工程において、複数の前記係合突起が複数の前記窪み部に個別に係合することがさらに好ましい。
【0023】
これらの製造方法では、デバイス挿入工程を実施するまで、凹部の開口に対する絶縁シートの位置や向きのずれを防ぐことができるため、デバイス挿入工程において絶縁シートが発熱電子デバイスによって押し込まれる際に、絶縁シートのカバー部や周囲部を、確実に凹部の内面(底面や内側面)の所定位置に所定の向きで配することが可能となる。言い換えれば、凹部の内面を確実に絶縁シートで覆うことができるため、確実に発熱電子デバイスと放熱部材とを電気的に絶縁させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、発熱電子デバイスと放熱部材との間の電気的絶縁を低コストで確保できると共に、放熱部材に対する発熱電子デバイス及び絶縁シートの位置決めも容易に行うことができる。また、放熱部材に対する発熱電子デバイス及び絶縁シートの位置決めを同時に行うことができるため、電子回路装置の製造効率向上も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第一実施形態に係る電子回路装置を示す斜視図である。
図2図1の電子回路装置において回路基板を放熱部材から分離した状態を示す分解斜視図である。
図3図1のA−A矢視断面図である。
図4図1のB−B矢視断面図である。
図5図1,2に示す電子回路装置を製造する方法において、発熱電子デバイスを放熱部材の凹部に収容する収容工程を示す概略斜視図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る電子回路装置を構成する発熱電子デバイス、放熱部材及び絶縁シートを示す側断面図である。
図7図6に示す発熱電子デバイス及び絶縁シートを放熱部材の凹部に収容する収容工程を示す概略斜視図である。
図8】本発明の第三実施形態に係る電子回路装置を構成する発熱電子デバイス、放熱部材及び絶縁シートを示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第一実施形態〕
以下、図1〜5を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1〜4に示すように、この実施形態に係る電子回路装置1は、複数(図示例では二つ)の発熱電子デバイス2と、放熱部材3と、回路基板4と、付勢部材5とを備えて大略構成されている。
発熱電子デバイス2は、パワートランジスタをはじめとする半導体パッケージ等のように通電により発熱するものであり、デバイス本体21、及び、デバイス本体21から突出する電気接続用の複数(図示例では三つ)の外部端子22を有して構成されている。
【0027】
本実施形態におけるデバイス本体21は、平面視矩形の板状に形成されており、例えば通電により発熱する半導体素子(不図示)を樹脂内に埋設して構成されている。
一方、複数の外部端子22は、銅材等からなり、それぞれデバイス本体21の同一の側面21cからデバイス本体21の主面(上面21aあるいは下面21b)に沿う方向に突出して形成されている。より具体的に説明すれば、各外部端子22は、平面視矩形状とされたデバイス本体21のうちその長手方向に面する一方の側面21cから突出している。また、各外部端子22は、その突出方向の先端部24が基端部23に対して折り曲げられることで、略L字状に形成されている。これにより、各外部端子22の先端部24は、デバイス本体21の上面21aよりも上方に突出するように、デバイス本体21の板厚方向に延びている。
なお、本実施形態では、一の外部端子22Aの基端部23の長手寸法が、他の外部端子22Bの基端部23よりも長く設定されている。一方、一の外部端子22Aの先端部24の長手寸法は、他の外部端子22Bの先端部24と同じに設定されている。
【0028】
放熱部材3は、アルミニウム等のように熱伝導性に優れた導電性材料からなり、デバイス本体21よりも厚い板状に形成されている。
この放熱部材3には、その上面3aから窪んで発熱電子デバイス2を収容する凹部31が形成されている。本実施形態における凹部31は側断面視矩形状かつ平面視矩形状に形成されている、言い換えれば、凹部31は略直方体状に形成されている。そして、本実施形態では、この凹部31の底面31aが発熱電子デバイス2を載置する搭載面をなしている。
【0029】
ここで、平面視矩形とされた凹部31の幅寸法及び長手寸法は、後述する絶縁シート6の厚み等を考慮して若干大きく設定されている。なお、本実施形態において、発熱電子デバイス2の幅寸法は、平面視矩形とされたデバイス本体21の幅方向の寸法である。また、発熱電子デバイス2の長手寸法は、平面視矩形とされたデバイス本体21の長手方向の寸法に、外部端子22の基端部23の長手寸法を加えたものである。
このように凹部31の幅寸法及び長手寸法が設定されているため、発熱電子デバイス2は凹部31に収容された状態で、放熱部材3の上面3aに沿う方向(凹部31の深さ方向に直交する方向)への平行移動、及び、放熱部材3の上面3aの直交方向(凹部31の深さ方向)を軸とする回転移動が規制されることになる。
【0030】
そして、図示例における凹部31の深さ寸法は、デバイス本体21のほぼ全体、外部端子22の基端部23、及び、外部端子22の先端部24の一部が凹部31内に収容される程度に設定され、発熱電子デバイス2を凹部31に収容した状態では、デバイス本体21の上部及び外部端子22の先端部24の残部が放熱部材3の上面3aから突出している。
以上のように形成される凹部31は、放熱部材3に複数形成されている。なお、本実施形態では、二つの凹部31が図示されており、これら凹部31はその幅方向に間隔をあけて配列されている。
【0031】
そして、各凹部31の内面(底面31a及び内側面31b)全体は、電気的な絶縁性を有する絶縁シート6によって覆われている。絶縁シート6は、図5に示すように、凹部31の底面31aを覆う底面被覆部61と、凹部31の内側面31bを覆う側面被覆部62とを一体に形成して構成されている。ここで、側面被覆部62は複数(本実施形態では四つ)に分割されており、これら複数の側面被覆部62は、底面被覆部61の周縁に対して個別に接続されている。
より具体的に説明すれば、底面被覆部61の平面視形状は、凹部31の底面31aの形状に対応する平面視多角形状(本実施形態では平面視矩形状)に形成されている。一方、複数の側面被覆部62の平面視形状は、それぞれ平坦な凹部31の各内側面31bの平面視形状(本実施形態では平面視矩形状)に対応する形状に形成され、複数の側面被覆部62は底面被覆部61の各辺に対して個別に接続されている。
【0032】
したがって、図2,3に示すように、絶縁シート6を凹部31の内面に配した状態では、各側面被覆部62が底面被覆部61に対して折り曲げられることで、底面被覆部61及び各側面被覆部62がそれぞれ凹部31の底面31a及び各内側面31bを覆うように配されることになる。
なお、各内側面31b全体を覆うように配された各側面被覆部62は、凹部31の底面31aから上方に延び、その先端部分が放熱部材3の上面3aから上方に突出している。すなわち、各側面被覆部62の大きさは各内側面31bよりも大きく設定されている。
【0033】
また、一部(図示例では三つ)の側面被覆部62には、その周縁のうち底面被覆部61の周縁から延びる側面被覆部62の延出方向先端から内側に窪む平面視半円状の窪み部63が形成されている。この窪み部63は、絶縁シート6を凹部31の内面に配した状態で放熱部材3の上面3aよりも上方に位置している。したがって、側面被覆部62に窪み部63が形成されていても、凹部31の内側面31bは側面被覆部62によって覆われ露出しない。
なお、残り(図示例では一つ)の側面被覆部62は、外部端子22の先端部24と凹部31の内側面31bとの間に配されているため、外部端子22の先端部24のうち放熱部材3の上面3aよりも上方に突出する部分と放熱部材3との電気的な絶縁距離が長くなるように、この残りの側面被覆部62には、前述した窪み部63が形成されていない。
以上のように構成される絶縁シート6は、デバイス本体21と放熱部材3との間に配されるため、デバイス本体21の熱を効率よく放熱部材3に逃がすことができるように、熱伝導率の高い材料によって形成されることがより好ましい。
【0034】
前述した凹部31のほかに、放熱部材3には、その上面3aから突出する複数(図示例では五つ)の係合突起32が、各凹部31の周りを囲むように配列されている。この係合突起32は、電子回路装置1を製造する際に前述した絶縁シート6の窪み部63を係合させるものであり、窪み部63に対応する円柱状に形成されている。
本実施形態においては、係合突起32が、平面視矩形とされた各凹部31の三辺から間隔をあけた位置に一つずつ配されている。すなわち、同一の凹部31に対して三つの係合突起32が囲むように配されている。そして、同一の凹部31を囲む三つの係合突起32のうち二つの係合突起32は、同一の凹部31を挟み込む位置に配されている、より具体的に説明すれば、凹部31の幅方向に配列されている。
【0035】
そして、同一の凹部31を囲む三つの係合突起32のうち残りの一つの係合突起32は凹部31の長手方向の一方側に配され、凹部31内に収容された発熱電子デバイス2の外部端子22に隣り合う位置には係合突起32が形成されていない。
なお、図示例において、隣り合う二つの凹部31の間には係合突起32が一つだけ形成され、この一つの係合突起32が二つの凹部31のそれぞれを囲む係合突起32として機能しているが、例えば、二つの凹部31の間には、これら二つの凹部31を個別に囲む二つの係合突起32が形成されていてもよい。
【0036】
さらに、放熱部材3には、その上面3aから突出する筒状突起33(図示例では円筒状)が複数(図示例では二つ)形成されている。これら複数の筒状突起33の先端面33aには、後述する回路基板4が配されるようになっている。すなわち、この放熱部材3では、複数の筒状突起33の突出高さによって、放熱部材3の上面3aに対する回路基板4の高さ位置が設定されている。なお、本実施形態では、放熱部材3の上面3a上に配された回路基板4が、凹部31内に配されたデバイス本体21の上方に間隔をあけて位置するように、かつ、凹部31内に配された絶縁シート6に接触しないように、複数の筒状突起33の突出高さが設定されている。また、放熱部材3の上面3aに対する複数の筒状突起33の突出高さは互いに等しく設定され、これによって、回路基板4の主面(上面4aや下面4b)が放熱部材3の上面3aに対して平行している。
そして、各筒状突起33のねじ孔33bは、回路基板4を放熱部材3に固定するためのねじ(固定用ねじ7)を螺着させるものである。なお、図示例において、筒状突起33のねじ孔33bは、放熱部材3の上面3aよりも下方に延びているが、これに限ることは無い。
【0037】
図1〜4に示すように、回路基板4は、その上面4aや下面4bに、発熱電子デバイス2などと共に電子回路装置1の電気回路を構成する配線パターン(不図示)を形成して大略構成されている。この回路基板4には、その厚さ方向に貫通する挿通孔41、貫通孔42、接続用孔43及び接合用孔44が形成されている。
挿通孔41は、放熱部材3に対して回路基板4をネジ止めするための固定用ねじ7を挿通させるものであり、その孔径は固定用ねじ7の軸部の外径よりも大きく、かつ、固定用ねじ7の頭部の外径や筒状突起33の外径よりも小さい。この挿通孔41は、放熱部材3の筒状突起33に対応する数(図示例では二つ)だけ形成されている。
貫通孔42は、後述する付勢部材5の一部を挿通させるものであり、回路基板4を放熱部材3に固定した状態で、放熱部材3の凹部31やこれに収容された発熱電子デバイス2の上方に位置するようになっている。この貫通孔42は、放熱部材3の凹部31に対応する数(図示例では二つ)だけ形成されている。
【0038】
接続用孔43は、回路基板4を放熱部材3に固定する際に、凹部31内に収容された発熱電子デバイス2の外部端子22の先端部24を回路基板4の下面4b側から上面4a側に挿通させるものである。なお、接続用孔43に挿通されて回路基板4の上面4a側に突出した外部端子22の先端部24が、半田等の導電性接合剤によって回路基板4の上面4aの配線パターンに接合されることで、発熱電子デバイス2が回路基板4に電気接続されている。
接合用孔44は、後述する付勢部材5(の接合部)を挿通させるものであり、挿通孔41に対して間隔をあけて位置している。なお、本実施形態では、接合用孔44と挿通孔41とを配列する方向が、二つの貫通孔42の配列方向に直交する方向に設定されている。また、図示例では、接合用孔44が二つの貫通孔42の間に位置している。さらに、この接合用孔44は複数(図示例では三つ)形成され、図示例では、これら複数の接合用孔44が二つの貫通孔42の配列方向に並べられている。
【0039】
付勢部材5は、銅材等のように導電性を有すると共に弾性変形可能な板材に、打ち抜き加工や屈曲加工を施す等して形成されている。この付勢部材5は、回路基板4側に固定される一端部51と、凹部31内に収容された発熱電子デバイス2のデバイス本体21の上面21aに当接する他端部52と、一端部51と他端部52との間に形成される弾性変形部53とを有して大略構成されている。
付勢部材5の一端部51は、主に回路基板4の上面4a側に配され、回路基板4の貫通孔42の配列方向に延びる短冊状のフレーム部511と、フレーム部511の長手方向の中途部に形成された略円板状の膨出部513及び棒状の接合用突起512と、を有している。なお、後述する弾性変形部53は、フレーム部511の長手方向の両端に接続されている。
【0040】
付勢部材5の膨出部513は、フレーム部511の一方の側部から膨出するように形成されており、この膨出部513には、その厚さ方向に貫通する挿通孔516が形成されている。この付勢部材5の挿通孔516は、回路基板4の挿通孔41と同様、固定用ねじ7を挿通させるものである。すなわち、付勢部材5の挿通孔516の内径は、固定用ねじ7の軸部の外径よりも大きく、かつ、固定用ねじ7の頭部よりも小さく設定されている。
【0041】
付勢部材5の接合用突起512は、フレーム部511の他方の側部からフレーム部511の幅方向に突出しており、前述した挿通孔516に対して間隔をあけて位置している。この接合用突起512は、その先端部分を回路基板4の接合用孔44に挿通できるように、その基端部分において屈曲されている。
具体的に説明すれば、接合用突起512の基端部分は、回路基板4の上方に膨らむように断面略U字状に形成されており、これによって、接合用突起512の先端部分が、回路基板4の板厚方向に延びている。そして、U字状に形成された接合用突起512の基端部分は、弾性変形可能であり、固定用ねじ7により付勢部材5の一端部51を放熱部材3にネジ止めする際に、付勢部材5の膨出部513にかかる応力を弾性変形によって緩和するネジ止め応力緩和部515をなしている。すなわち、ネジ止め応力緩和部515は、ネジ止めの際に生じる応力が接合用突起512の先端部分に伝わることを防ぐ役割を果たしている。
【0042】
そして、接合用孔44に挿通されて回路基板4の下面4b側に突出する接合用突起512の先端部分が、半田等の接合剤517によって回路基板4の下面4bに接合されることで、付勢部材5が回路基板4に固定されている。すなわち、接合用突起512の先端部分は、接合剤517を介して回路基板4に接合される接合部514をなしている。なお、本実施形態では、この接合部514が回路基板4の所定の配線パターンに接合されており、これによって、付勢部材5が回路基板4の所定の配線パターンに電気接続されている。
このように形成された接合用突起512は回路基板4の接合用孔44と同じ数(図示例では三つ)だけ形成されており、各接合用突起512の接合部514は、回路基板4の複数の接合用孔44に対して個別に挿通されている。なお、これら複数の接合部514は、フレーム部511の長手方向に間隔をあけて配列されている。
【0043】
一方、付勢部材5の弾性変形部53及び他端部52は、フレーム部511の長手方向の両端においてフレーム部511の他方の側部からフレーム部511の幅方向に突出するように形成されている。すなわち、本実施形態においては、弾性変形部53及び他端部52が二組形成されている。
各弾性変形部53は、その先端部分及びこれに接続されている他端部52を回路基板4の貫通孔42に挿通できるように、その基端部分において屈曲されている。具体的に説明すれば、各弾性変形部53の基端部分は、回路基板4の上方に膨らむように断面略U字状に形成されている。これによって、弾性変形部53の先端部分が回路基板4の板厚方向に延びることになり、付勢部材5の弾性変形部53及び他端部52が、回路基板4の貫通孔42に挿通し、回路基板4の下面4bから突出することができる。また、付勢部材5の他端部52との境界となる弾性変形部53の先端部分も屈曲されており、これによって、他端部52がデバイス本体21の上面21aに対して面接触できるようになっている。
【0044】
以上のように構成される電子回路装置1において、固定用ねじ7により回路基板4を放熱部材3に固定した状態では、付勢部材5の他端部52がデバイス本体21の上面21aに当接すると共に弾性変形部53が弾性変形することになる。そして、この弾性変形部53の弾性変形に基づく付勢部材5の付勢力によって、デバイス本体21が凹部31の底面31aに押し付けられることになる。すなわち、発熱電子デバイス2が放熱部材3に固定されることになる。
この押し付け状態においては、デバイス本体21に対する付勢部材5の他端部52の当接に基づいて他端部52には応力がかかるが、この応力は、断面略U字状とされた弾性変形部53の基端部分が弾性変形することで、付勢部材5の一端部51まで伝わり難くなる。すなわち、弾性変形部53の基端部分は、付勢部材5の他端部52にかかる応力を緩和する当接応力緩和部531となっている。
【0045】
また、回路基板4を放熱部材3に固定した状態では、回路基板4の所定の配線パターンが放熱部材3に電気接続されている。具体的に説明すれば、回路基板4を放熱部材3に固定した状態では、導電性を有する固定用ねじ7が付勢部材5の膨出部513に接触することで付勢部材5と放熱部材3とが固定用ねじ7を介して互いに電気接続されているため、所定の配線パターンは付勢部材5及び固定用ねじ7を介して放熱部材3に電気接続されている。
【0046】
次に、上記構成の電子回路装置1を製造する方法の一例について説明する。
電子回路装置1を製造する際には、はじめに、図5に例示するように、放熱部材3の各凹部31に絶縁シート6及び発熱電子デバイス2を一つずつ収容する(収容工程)。
この収容工程においては、はじめに、図5(a)、(b)に示すように、凹部31の開口全体が絶縁シート6によって覆われるように、絶縁シート6を放熱部材3の上面(表面)3aに載置する(シート配置工程)。
【0047】
この工程における絶縁シート6は、凹部31上に配されてその開口を覆う平面視矩形状のカバー部65と、カバー部65の各辺に接続されて凹部31の開口周縁に配される複数(図示例では四つ)の周囲部66とを有し、全体として平面視略十字形状を呈している。言い換えれば、絶縁シート6は、周囲部66が複数に分割されるように、カバー部65の角部まで切り込み67を入れることで、平面視十字状に形成されている。
そして、カバー部65は、凹部31の底面31aに対応する平面視矩形状に形成されており、製造後の電子回路装置1の状態において底面被覆部61に相当している。また、各周囲部66は、凹部31の各内側面31bに対応する平面視矩形状に形成され、製造後の電子回路装置1の状態において側面被覆部62に相当している。
【0048】
さらに、このシート配置工程においては、一部(図示例では三つ)の周囲部66に形成された各窪み部63に、凹部31の周囲に配された複数(図示例では三つ)の係合突起32が個別に入り込むように、また、各窪み部63に入り込んだ各係合突起32が周囲部66に当接するように、絶縁シート6を放熱部材3上に配置する。
この配置状態においては、各窪み部63が各係合突起32に係合し、さらに、絶縁シート6が二つの係合突起32によって挟み込まれているため、放熱部材3の上面3aに沿う絶縁シート6の移動が規制されることになる。すなわち、放熱部材3の複数の係合突起32は絶縁シート6の位置決め部としての役割を果たしている。
なお、上述したシート配置工程においては、カバー部65の角部に隣り合う各切り込み67の先端部分を凹部31の縁よりも内側に配することがより好ましい。また、凹部31の縁から内側に入り込む各切り込み67の先端部分の長さは、絶縁シート6の厚みと同等となるように設定するとさらに好ましい。
【0049】
シート配置工程後には、図5(b)、(c)に示すように、発熱電子デバイス2を凹部31に挿入する(デバイス挿入工程)。この工程の際には、絶縁シート6のカバー部65が発熱電子デバイス2によって凹部31内に押し込まれる。また、凹部31内へのカバー部65の押し込みに伴って、絶縁シート6の各周囲部66が、カバー部65に対して折り曲げられながら凹部31内に挿入される。
この工程後の状態では、図2,3に示すように、平面視した凹部31の大きさが発熱電子デバイス2の大きさに対応しているため、凹部31に収容された発熱電子デバイス2は、放熱部材3の上面3aに沿う方向への平行移動、及び、放熱部材3の上面3aの直交方向を軸とする回転移動が規制されている。すなわち、放熱部材3に対する発熱電子デバイス2の位置決めがなされている。
【0050】
また、上記工程後の状態では、絶縁シート6のカバー部65が底面被覆部61として凹部31の底面31aとデバイス本体21との間に挟み込まれるように配され、複数の周囲部66がそれぞれ側面被覆部62として凹部31の各内側面31bとデバイス本体21や外部端子22との間に挟み込まれるように配されている。これにより、発熱電子デバイス2と放熱部材3とが電気的に絶縁されている。
【0051】
さらに、電子回路装置1を製造する際には、上述した収容工程と同時あるいは前後に、図2〜4に示すように、付勢部材5を回路基板4に取り付けておく(取付工程)。
この工程においては、はじめに、付勢部材5の各接合部514が回路基板4の上面4a側から各接合用孔44にそれぞれ挿通されるように、また、付勢部材5の各他端部52が回路基板4の上面4a側から各貫通孔42に挿通されるようにして、付勢部材5の一端部51を回路基板4の上面4aに配置する。この状態においては、複数の接合部514が複数の接合用孔44に対して個別に挿通されていることで、付勢部材5の挿通孔516が回路基板4の挿通孔41に重なる位置に配される等して、回路基板4に対する付勢部材5の位置や向きが決められている。
次いで、半田等の接合剤517によって各接合部514を回路基板4の下面4bに接合することで、付勢部材5の一端部51が回路基板4に固定され、取付工程が完了する。
【0052】
そして、これら収容工程及び取付工程が完了した後には、図1,3,4に示すように、固定用ねじ7により回路基板4及びこれに固定された付勢部材5を放熱部材3に対してネジ止めして固定する(基板固定工程)ことで、電子回路装置1の製造が完了する。
この基板固定工程においては、はじめに、回路基板4及び付勢部材5の挿通孔516が放熱部材3の筒状突起33のねじ孔33bに重なるように、また、付勢部材5の各他端部52が各デバイス本体21の上面21aに接触するように、回路基板4を放熱部材3の筒状突起33上に配する。そして、固定用ねじ7の軸部を回路基板4の上面4a側から、付勢部材5及び回路基板4の挿通孔41に挿通させた上で、筒状突起33のねじ孔33bに螺着する。
【0053】
このように固定用ねじ7を取り付けることで、回路基板4や付勢部材5の膨出部513が固定用ねじ7の頭部と筒状突起33との間に挟み込まれるため、回路基板4及び付勢部材5が放熱部材3に固定されることになる。
また、固定用ねじ7により付勢部材5を放熱部材3に固定することで、付勢部材5の各他端部52がデバイス本体21の上面21aに当接すると共に各弾性変形部53が弾性変形し、これによってデバイス本体21が凹部31の底面31aに押し付けられることになる。すなわち、発熱電子デバイス2が放熱部材3に固定されることになる。言い換えれば、この基板固定工程は、凹部31に収容された発熱電子デバイス2を放熱部材3に固定するデバイス固定工程も兼ねている。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の電子回路装置1及びその製造方法によれば、発熱電子デバイス2を凹部31に収容した状態では、発熱電子デバイス2が放熱部材3に対して位置ずれしないため、発熱電子デバイス2を凹部31に収容した後、付勢部材5によって発熱電子デバイス2を放熱部材3に固定しても、発熱電子デバイス2の向きを確実に保持することができる。すなわち、放熱部材3に対する発熱電子デバイス2の位置決めを容易に行うことができる。さらに、この位置決めの際には、従来のような治具を用いる必要も無いため、電子回路装置1の製造工程数を減らすことができる。
また、本実施形態の電子回路装置1によれば、発熱電子デバイス2が放熱部材3の凹部31内に収容されることで、電子回路装置1の厚さ寸法を小さく設定し、電子回路装置1の薄型化・小型化を図ることが可能である。
【0055】
さらに、発熱電子デバイス2を放熱部材3の凹部31に収容する本実施形態の構成では、放熱部材3の表面(例えば上面3a)に配する従来構成と比較して、放熱部材3と発熱電子デバイス2の外部端子22との間隔が狭くなるが、凹部31の内面と発熱電子デバイス2との間に絶縁シート6が配されていることで、放熱部材3と外部端子22とを電気的に絶縁することができる。
さらに、本実施形態では、凹部31の内面全体が絶縁シート6によって覆われているため、例えば外部端子22と共に発熱電子デバイス2の電気回路をなす導電性部分が、デバイス本体21の外面に露出していても、この導電性部分と放熱部材3との電気的絶縁も図ることができる。
すなわち、本実施形態の電子回路装置1によれば、放熱部材3と発熱電子デバイス2とを電気的に絶縁することができる。
【0056】
そして、凹部31によって放熱部材3に対する発熱電子デバイス2の位置ずれが防止されているため、凹部31の内面に配置された絶縁シート6に対して発熱電子デバイス2の位置がずれることもなく、確実に放熱部材3と発熱電子デバイス2との電気的な絶縁を図ることができる。
さらに、上記電気的な絶縁を図るためには凹部31の内面のみに絶縁シート6を配すればよいことから、絶縁シート6の大きさを最小限に抑えて、電子回路装置1の製造コストを低く抑えることも可能となる。
【0057】
また、デバイス本体21を放熱部材3の表面に配する従来構成では、発熱源となるデバイス本体21の下面21bのみが放熱部材3に近接するが、本実施形態の電子回路装置1では、発熱電子デバイス2が凹部31に収容されることで、デバイス本体21の下面21bに加え、デバイス本体21の側面21cも放熱部材3に近接させることができるため、デバイス本体21の熱を効率よく放熱部材に逃がすことが可能である。
さらに、本実施形態では、凹部31が板状とされた放熱部材3の上面3a(一方の端面)から板厚方向に窪むように形成されているため、従来のように放熱部材3の上面3aに発熱電子デバイス2を配置する場合と比較して、デバイス本体21を配置した面(本実施形態では凹部31の底面31a)から放熱部材3の下面(他方の端面)に至る放熱部材3の厚みを薄く設定できる。したがって、放熱部材3の下面側にエアー等の冷却用流体を流すことで放熱部材3の下面を冷却する場合には、デバイス本体21の熱を放熱部材3から冷却用流体まで効率よく逃がすことができる。
以上のことから、本実施形態の電子回路装置1によれば、放熱効率の向上を図ることができる。
【0058】
さらに、本実施形態の絶縁シート6は、凹部31の内側面31bを覆う側面被覆部62(周囲部66)が複数に分割された状態で、凹部31の底面31aを覆う底面被覆部61(カバー部65)に各々接続されているため、絶縁シート6を凹部31の内面に配する際に、絶縁シート6の側面被覆部62にしわが生じることを抑制できる。なお、シート配置工程において各切り込み67の先端部分を凹部31の縁よりも内側に配置しておけば、絶縁シート6を凹部31の内面に配する際に、側面被覆部62のうち底面被覆部61の角部近傍に位置する部分にしわが生じることを特に抑制することができる。すなわち、絶縁シート6の側面被覆部62の一部が凹部31の内側面31bから浮き上がることを防いで、放熱部材3と発熱電子デバイス2(特に外部端子22)との電気的な絶縁をさらに図ることができる。
また、絶縁シート6の底面被覆部61及び側面被覆部62が一体に形成されているため、絶縁シート6を容易に凹部31の底面31a及び内側面31bに配することができる。
【0059】
なお、前述したように、シート配置工程において切り込み67の先端部分を凹部31上に配する場合には、切り込み67の先端部分の長さを絶縁シート6の厚みと同等に設定しておけば、絶縁シート6を凹部31の内面に配した状態において、互いに隣り合う側面被覆部62の間に隙間が生じることも防止できる。すなわち、放熱部材3と発熱電子デバイス2(特に外部端子22)との電気的な絶縁を確実に図ることができる。
さらに、本実施形態では、凹部31及び絶縁シート6の底面被覆部61が互いに対応する平面視多角形状に形成されると共に、複数の側面被覆部62が底面被覆部61の各辺に個別に接続されているため、複数の側面被覆部62が凹部31の内側面31b上において互いに重なることが無くなり、その結果として、絶縁シート6の大きさを必要最小限に設定することができる。
【0060】
さらに、本実施形態の電子回路装置1では、デバイス本体21が付勢部材5によって押し付けられることで、発熱電子デバイス2が放熱部材3に固定されているため、ネジによりデバイス本体21を放熱部材3に固定する構成のように、凹部31の底面31aにネジ孔を形成する必要が無い。このため、ネジ止めする構成と比較して、凹部31の底面31aから放熱部材3の下面に至る放熱部材3の厚みをより薄く設定することが可能となり、デバイス本体21の熱を放熱部材3の下面側に効率よく逃がすことができる。
【0061】
なお、ネジによりデバイス本体21を放熱部材3に固定する構成であっても、ネジ孔の形成部分(ネジ孔部)を放熱部材3の下面から突出するように形成すれば、凹部31の底面31aから放熱部材3の下面までの厚みを小さく設定することは可能である。しかしながら、放熱部材3の下面側にエアー等の冷却用流体を流す場合には、突出するネジ孔部が冷却用流体の流れの抵抗となって冷却用流体の流速が低下し、その結果として、放熱部材3の冷却効率が低くなってしまう。また、放熱部材3の下面側における冷却用流体の流速が変化することで、放熱部材3の下面の冷却が不均一になってしまう。
これに対して、本実施形態の電子回路装置1では、ネジ孔部等の突起物が放熱部材3の下面に形成されず、この下面を平坦に形成できるため、冷却用流体の流速の低下を抑えて、放熱部材3の冷却効率向上を図ることができる。また、放熱部材3の下面側における冷却用流体の流速を一定に保つことができるため、放熱部材3の下面全体を均一に冷却することができる。
【0062】
さらに、本実施形態の電子回路装置1によれば、付勢部材5の一端部51が回路基板4に予め固定されているため、回路基板4を放熱部材3に固定するだけで、発熱電子デバイス2も同時に放熱部材3に固定することができる。したがって、放熱部材3に対する発熱電子デバイス2及び回路基板4の取付工数を減らして、電子回路装置1の製造効率向上をさらに図ることができる。
【0063】
そして、本実施形態の電子回路装置1の製造方法によれば、デバイス挿入工程において発熱電子デバイス2を収容すると同時に絶縁シート6も凹部31内に入り込ませて、絶縁シート6を凹部31の内面と発熱電子デバイス2(特に外部端子22)との間に配することが可能となる。言い換えれば、デバイス挿入工程では、凹部31に対する発熱電子デバイス2及び絶縁シート6の位置決めを同時に行うことができるため、発熱電子デバイス2及び絶縁シート6を凹部31に対して別個に位置決めする場合と比較して、電子回路装置1の製造効率向上を図ることができる。
【0064】
また、本実施形態の製造方法によれば、シート配置工程において放熱部材3の上面3aに配された絶縁シート6は、放熱部材3の係合突起32及び絶縁シート6の窪み部63によって、その移動が規制されているため、デバイス挿入工程を実施するまでの間に凹部31の開口に対する絶縁シート6の位置や向きのずれを防ぐことができる。さらに、デバイス挿入工程において、例えば発熱電子デバイス2が傾斜した状態で凹部31に入り込む等して、一つの周囲部66だけが先行して係合突起32から離れて凹部31内に挿入されたとしても、残り二つの周囲部66が係合突起32に係合していることで、デバイス挿入工程においても絶縁シート6の位置や向きがずれてしまうことも防止することができる。このため、デバイス挿入工程において絶縁シート6が発熱電子デバイス2によって押し込まれる際に、絶縁シート6のカバー部65や周囲部66を、確実に凹部31の内面(底面31aや内側面31b)の所定位置に所定の向きで配することが可能となる。言い換えれば、凹部31の内面を確実に絶縁シート6で覆うことができるため、確実に発熱電子デバイス2と放熱部材3とを電気的に絶縁させることができる。
【0065】
〔第二実施形態〕
次に、図6,7を参照して本発明の第二実施形態について説明する。
この実施形態に係る電子回路装置は、図6に示すように、上記第一実施形態の電子回路装置1と比較して、放熱部材の凹部31の形状、及び、これに対応する絶縁シート6の形状のみが異なっている。なお、図6においては、回路基板4や付勢部材5等の構成要素が記載されていないが、本実施形態の電子回路装置は第一実施形態と同様の構成要素を備えている。
【0066】
図6,7に示すように、この実施形態の電子回路装置を構成する絶縁シート6の底面被覆部61には、その厚さ方向に貫通する貫通孔69が形成されている。一方、放熱部材3の凹部31には、その底面31aから突出する突起部35が形成され、凹部31の底面31aに配された底面被覆部61の貫通孔69に挿通されている。そして、この突起部35の先端面35aには、放熱部材3の凹部31に収容されたデバイス本体21が接触している。
これら貫通孔69や突起部35は、発熱電子デバイス2の外部端子22と放熱部材3との電気的な絶縁が保持されるように、底面被覆部61や凹部31の底面31aのうちデバイス本体21の下面21bが対向する領域に形成されている。また、本実施形態における発熱電子デバイス2は、外部端子22と共に発熱電子デバイス2の電気回路をなす導電性部分が、デバイス本体21の下面21bに露出しないように構成されている。したがって、デバイス本体21が放熱部材3に接触していても、発熱電子デバイス2と放熱部材3との電気的な絶縁は保持されている。
【0067】
上記構成において、突起部35をデバイス本体21に確実に接触させるためには、突起部35の突出高さを絶縁シート6の厚み以上に設定すればよい。また、デバイス本体21の下面21bを突起部35の先端面35a及び絶縁シート6の底面被覆部61の両方に接触させるためには、図示例のように、突起部35の高さ寸法を絶縁シート6の厚みと等しくすればよい。
なお、図6においては、放熱部材3の突起部35が絶縁シート6の貫通孔69と同じ大きさに形成されて、突起部35が貫通孔69に対して隙間なく入り込んでいるが、例えば、突起部35を貫通孔69よりも小さく形成し、突起部35と貫通孔69との間に隙間を生じさせてもよい。また、図7においては、絶縁シート6の貫通孔69及びこれに対応する放熱部材3の突起部35の平面視形状が、矩形状となっているが、任意の平面視形状であってよい。
【0068】
以上のように構成される本実施形態の電子回路装置の製造に際しては、第一実施形態と同様の収容工程を実施して、絶縁シート6及び発熱電子デバイス2を放熱部材3の凹部31に収容することが可能である。
すなわち、収容工程では、はじめに第一実施形態と同様のシート配置工程を実施して、図7に示すように、凹部31の開口の一部が絶縁シート6によって覆われるように、絶縁シート6を放熱部材3の上面3aに載置すればよい。
次いで、図7(b)、図5(c)に示すように、第一実施形態と同様のデバイス挿入工程を実施して、発熱電子デバイス2を凹部31に挿入すればよい。この工程を実施することにより、絶縁シート6の貫通孔69に放熱部材3の突起部35が挿通された上で、底面被覆部61が凹部31の底面31aに配されることになる。
【0069】
本実施形態の電子回路装置によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、発熱源であるデバイス本体21に放熱部材3が直接接触するため、デバイス本体21の熱をさらに効率よく放熱部材3に逃がすことが可能となる。特に、デバイス本体21が凹部31の底面31aに接触しているため、デバイス本体21の熱を放熱部材3の下面側まで効率よく逃がすことができる。
さらに、本実施形態の電子回路装置及びその製造方法によれば、デバイス挿入工程において、発熱電子デバイス2を凹部31内に挿入する方向と、突起部35を貫通孔69に挿通する方向とが一致するため、絶縁シート6を円滑に凹部31の内面に配することができる。
なお、上記第二実施形態では、突起部35及び貫通孔69が、凹部31の底面31a及びこれに対応する底面被覆部61にそれぞれ形成されているが、例えば、凹部31の内側面31b及びこれに対応する側面被覆部62に形成されてもよい。
【0070】
〔第三実施形態〕
次に、図8を参照して本発明の第三実施形態について説明する。
この実施形態に係る電子回路装置は、図8に示すように、第一実施形態の電子回路装置1と比較して、主に放熱部材の凹部の形状のみが異なっている。なお、図8においては、回路基板4や付勢部材5等の構成要素が記載されていないが、本実施形態の電子回路装置は第一実施形態と同様の構成要素を備えている。
図8に示すように、この実施形態の電子回路装置を構成する放熱部材3の凹部31には、その底面31aの上方に間隔をあけた位置において凹部31の開口縁から内側に張り出す梁部36が形成されている。この梁部36と凹部31の底面31aとの間隔は、デバイス本体21の厚み以上に設定されており、これによって、梁部36と凹部31の底面31aとの間にデバイス本体21の一部が挿入可能とされている。
【0071】
なお、図示例では、梁部36が、凹部31の長手方向の両端に位置する二つの内側面31bのうち、凹部31に収容された発熱電子デバイス2の外部端子22に隣り合わない内側面31bから突出するように形成されているが、例えば、凹部31の幅方向の端部をなす内側面31bから突出するように形成されてもよい。また、図示例では、梁部36の上面36aが放熱部材3の上面3aと同一平面をなしているが、これに限ることは無い。
以上のように構成された放熱部材3の凹部31に対し、絶縁シート6は、第一実施形態と同様に凹部31の底面31a及び各内側面31bを覆うことに加え、梁部36の下面36bも覆うように配されている。
【0072】
以上のように構成される本実施形態の電子回路装置の製造に際しては、第一実施形態と同様の収容工程を実施して、絶縁シート6及び発熱電子デバイス2を放熱部材3の凹部31に収容することが可能である。
すなわち、収容工程では、はじめに第一実施形態と同様のシート配置工程を実施して、凹部31の開口が絶縁シート6によって覆われるように、絶縁シート6を放熱部材3の上面3aに載置すればよい。次いで、第一実施形態と同様のデバイス挿入工程を実施して、発熱電子デバイス2を凹部31に挿入すればよい。この挿入工程においては、外部端子22が突出していないデバイス本体21の長手方向端部が先に凹部31に入り込むように、発熱電子デバイス2を斜めにした状態で挿入するとよい。このように挿入工程を実施することで、絶縁シート6を発熱電子デバイス2と共に凹部31内に押し込むことができる。
【0073】
本実施形態の電子回路装置によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、発熱電子デバイス2を凹部31に収容した状態において、デバイス本体21の一部の上側が梁部36によって覆われるため、発熱電子デバイス2を凹部31に収容してから放熱部材3に固定するまでの間に、振動等によって発熱電子デバイス2が不意に凹部31から抜け出ることを防止することができる。
【0074】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、平面視した放熱部材3の凹部31は、これに収容された発熱電子デバイス2の平行移動や回転移動を規制するように形成されていれば、上述した全ての実施形態のように凹部31の内側面31bがデバイス本体21の側面に対して面接触するように形成されることに限らず、例えば点接触するように形成されてもよい。言い換えれば、凹部31の平面視形状は、発熱電子デバイス2の平面視形状に囚われない任意形状に形成されてよい。
なお、凹部31の平面視形状が様々な形状とされた場合、凹部31の内面に配される絶縁シート6は、その底面被覆部61の平面視形状が凹部31の底面31aの形状に対応するように、また、側面被覆部62の平面視形状が凹部31の内側面31bの形状に対応するように形成されているとよい。
【0075】
また、放熱部材3の凹部31の深さ寸法は、上記実施形態のものに限らず、例えばデバイス本体21の下部のみが凹部31内に入り込み、外部端子22全体が放熱部材3の上面3aよりも上方に位置するように設定されても構わない。
さらに、凹部31の深さ寸法は、例えばデバイス本体21の上面21aが放熱部材3の上面3aよりも低く位置するようにデバイス本体21全体が凹部31内に入り込み、外部端子22の先端部24の先端部分のみが放熱部材3の上面3aから突出するように設定されてもよい。
【0076】
この場合、回路基板4は、上記実施形態のように、放熱部材3の上面3aに対して間隔をあけた状態で放熱部材3に固定されることに限らず、例えば放熱部材3の上面3aに載置した状態で固定されてもよい。すなわち、放熱部材3に筒状突起33を形成しなくてもよい。このような構成であっても、回路基板4は凹部31内に配されたデバイス本体21の上方に間隔をあけて配されるため、回路基板4を放熱部材3に固定するだけで付勢部材5の付勢力によって発熱電子デバイス2を凹部31の底面31aに押し付けることができる。
【0077】
また、付勢部材5の一端部51は、回路基板4の上面4a側において固定されるとしたが、例えば回路基板4の下面4b側において固定されてもよい。このような構成でも、上記実施形態の場合と同様に、回路基板4を放熱部材3に固定するだけで、発熱電子デバイス2も同時に放熱部材3に固定することが可能である。
さらに、付勢部材5の一端部51は、回路基板4に固定されることに限らず、少なくとも付勢部材5の付勢力によってデバイス本体21を凹部31の底面31aに向けて押し付けることができれば、例えば放熱部材3に固定されても構わない。
【0078】
また、上記実施形態では、付勢部材5の付勢力によってデバイス本体21を凹部31の底面31aに向けて押し付けることで、発熱電子デバイス2を放熱部材3に固定しているが、例えば従来と同様に、一本のネジによって発熱電子デバイス2を放熱部材3に固定してもよい。
このような構成であっても、発熱電子デバイス2を凹部31に収容した状態では発熱電子デバイス2が放熱部材3に対して位置ずれしないため、発熱電子デバイス2を一本のネジで放熱部材3にネジ止めしても、発熱電子デバイス2がこのネジと共に回転することはなく、発熱電子デバイス2の向きを確実に保持することができる。
【0079】
さらに、絶縁シート6は、必ずしも凹部31の内面とデバイス本体21との間に配されていなくてもよく、少なくとも放熱部材3と発熱電子デバイス2とが電気的に絶縁されるように配されていればよい。したがって、デバイス本体21の外面に導電性の部分が露出していなければ、例えば外部端子22に対向する凹部31の内面のみに絶縁シート6を配してもよい。
また、上記実施形態の絶縁シート6では、底面被覆部61(カバー部65)に接続される側面被覆部62(周囲部66)が複数に分割されているが、例えば分割されていなくても構わない。
【0080】
さらに、上記実施形態における電子回路装置の製造方法では、基板固定工程がデバイス固定工程も兼ねているが、前述したように、付勢部材5を放熱部材3に固定したり、一本のネジにより発熱電子デバイス2を放熱部材3に固定する場合には、これら基板固定工程及びデバイス固定工程が別個に実施されてもよい。
【0081】
また、シート配置工程において絶縁シート6を位置決めする位置決め部は、複数の係合突起32によって構成されることに限らず、少なくとも絶縁シート6が放熱部材3の上面3aに配された状態で絶縁シート6の移動を規制するように構成されていればよい。すなわち、絶縁シート6用の位置決め部は、放熱部材3の上面3aに配された絶縁シート6に当接するように少なくとも放熱部材3の上面3aから突出していればよく、例えば平面視で凹部31を取り囲む枠状に形成されてもよい。なお、この位置決め部がシート配置工程において絶縁シート6の周囲部66の周縁に当接するように形成されていれば、例えば絶縁シート6に窪み部63を形成する必要は無い。
【0082】
さらに、発熱電子デバイス2を構成するデバイス本体21は、平面視矩形の板状に形成されるとしたが、これに限ることは無く、平面視円形状等、任意の形状を呈してよい。
また、発熱電子デバイス2の外部端子22は、少なくともデバイス本体21の上面21aよりも上方に突出していれば、デバイス本体21の任意の外面から突出してよいし、外部端子22の長さ、折り曲げ位置等も任意に設定されてよい。
さらに、本発明に係る電子回路装置の発熱電子デバイス2は、上記実施形態のように半導体素子を樹脂で封止したものに限らず、少なくとも通電によって発熱するものであればよい。
【符号の説明】
【0083】
1 電子回路装置
2 発熱電子デバイス
21 デバイス本体
21a 上面
21b 下面
21c 側面
22,22A,22B 外部端子
3 放熱部材
3a 上面(表面)
31 凹部
31a 底面(内面)
31b 内側面(内面)
32 係合突起(位置決め部)
33 筒状突起
35 突起部
36 梁部
4 回路基板
4a 上面
4b 下面
41 挿通孔
42 貫通孔
44 接合用孔
5 付勢部材
51 一端部
512 接合用突起
513 膨出部
514 接合部
515 ネジ止め応力緩和部
516 挿通孔
517 接合剤
52 他端部
53 弾性変形部
531 当接応力緩和部
6 絶縁シート
61 底面被覆部
62 側面被覆部
63 窪み部
65 カバー部
66 周囲部
67 切り込み
69 貫通孔
7 固定用ねじ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8