【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成22年12月2日 国際ジオシンセティックス学会 日本支部 発行の「ジオシンセティックス論文集 第25巻」に発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記盛土構造体作製工程が、前記盛土補強材を略水平に敷設する、補強材敷設工程、及び、敷設した前記盛土補強材の上に盛土材を乗せて締め固める、締め固め工程を備え、前記補強材敷設工程及び前記締め固め工程を経て得られる構造体の高さが所定の高さになるまで前記補強材敷設工程及び前記締め固め工程を繰り返す工程を含み、
前記受撃体作製工程が、前記盛土構造体の山側に前記枠体を略水平に設置する、枠体設置工程、及び、前記枠体のセルに中詰材を充填する、中詰材充填工程を備え、前記枠体敷設工程及び前記中詰材充填工程を経て得られる層を鉛直方向に積層した高さが所定の高さになるまで前記枠体敷設工程及び前記中詰材充填工程を繰り返す工程を含み、
前記盛土構造体作製工程と前記受撃体作製工程とを並行して行う、請求項3に記載の防護堤の施工方法。
前記複数の盛土補強材に、敷設時に横断方向に特に強い強度を有するジオテキスタイルからなる横断方向補強材と、前記トラス構造補強材とを用い、鉛直方向において、1の前記横断方向補強材と他の前記横断方向補強材との間に、1以上の前記トラス構造補強材を埋設する、請求項5に記載の防護堤の施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている衝撃吸収用堤体の施工方法などの従来の防護堤の施工方法では、防護堤が落石の衝撃に耐え得るかどうかの検討はなされていたが、防護堤が落石などによって衝撃を受けた際の破損の程度については十分な検討がなされていなかった。すなわち、従来の施工方法で得られた防護堤は、落石などによって衝撃を受けた際に、修復可能な程度に破損するのか、施工しなおさなければならなくなる程度に破損するのかが不明であった。土で構成された防護堤は、落石などによって一方の法面側(山側)から衝撃を受けると、その衝撃の大きさに応じて他方の法面側(谷側)も変形する。谷側の壁面材が大きく破断、若しくはずれるなどすると、防護堤を修復することが困難になり、施工しなおさなければならなくなる。
【0006】
そこで、本発明は、衝撃を受けた際の破損程度を考慮して設計された防護堤と、衝撃を受けた際の破損程度を考慮し、用途に応じた強度の防護堤を施工できる防護堤の施工方法と、衝撃を受けた際の破損程度を考慮し、用途に応じた強度の防護堤を設計できる防護堤の設計方法と、を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。
【0008】
第1の本発明は、盛土構造体と、盛土構造体内において高さ方向に所定の間隔を有して埋設された複数の盛土補強材と、を備える防護堤であって、防護堤の一方の法面側に衝突することが想定される物体が有するエネルギーE(kJ)に基づいて下記(1)式から得られる、物体が防護堤の一方の法面側に衝突したときに防護堤の他方の法面側に生じる最大変位量δfmax
1(mm)が、防護堤が許容できる変位量として予め設定された許容変位量δa(mm)以下である防護堤である。
δfmax
1=α
1×exp(1.22×10
−3×E) (1)
ただし、3.00≦α
1≦67.00である。
【0009】
上記(1)式は、実際に様々な防護堤を作製し、その防護堤のそれぞれについて、様々な強さのエネルギーEを有する物体を一方の法面側に衝突させ、該衝突によって該防護堤の他方の法面側に生じた最大変位量δfmax
1と、その最大変位量δfmax
1を生じたときのエネルギーEとの関係から得られた近似式である。なお、本発明において「最大変位量」とは、特に断りがない限り、防護堤が一方の法面側から衝撃を受けたときに、該防護堤の他方の法面側に生じる変位のうち、最も大きく変位した部分の変位を意味する。以下、防護堤の法面のうち、落石などが落下してきて衝突する側を「山側」又は「受撃面側」という場合がある。また、「山側」又は「受撃面側」に対向する側を「谷側」という場合がある。
【0010】
また、本発明において「盛土構造体」とは、盛土材を盛り上げて構成される堰堤状の構造体を意味する。なお、本発明に用いることができる「盛土材」は、特に限定されるものではなく、従来用いられていたものを用いることができる。盛土材としては、例えば、砂質土や粘性土などの現地発生土などを用いることができる。また、本発明において「盛土補強材」とは、盛土構造体に埋設させて該盛土構造体を補強することができる部材を意味する。本発明に用いる盛土補強材は、従来の盛土構造体に用いられているものであれば特に限定されない。また、本発明において「許容変位量」とは、防護堤が一方の法面側から衝撃を受けたときに該防護堤の他方の法面側に生じる最大変位量であって、補修可能な程度の変位量を意味する。許容変位量は、防護堤の用途やタイプなどに応じて適宜設定される量である。なお、本発明において「防護堤のタイプ」とは、防護堤の高さ及び幅、盛土材の種類、量、及び設置方法、盛土補強材の種類、設置数、及び設置方法、盛土構造体の法面を壁面材で覆う場合は該壁面材の種類、設置数、及び設置方法、後述する受撃体を備える場合は該受撃体の形態、設置数及び設置方法などによって決定されるものである。
【0011】
第2の本発明は、盛土構造体と、盛土構造体内において高さ方向に所定の間隔を有して埋設された複数の盛土補強材と、を備える防護堤であって、防護堤の一方の法面側に衝突する物体が防護堤に与えると想定される衝撃力P(kN)に基づいて下記(2)式から得られる、物体が防護堤の一方の法面側に衝突したときに防護堤の他方の法面側に生じる最大変位量δfmax
2(mm)が、防護堤が許容できる変位量として予め設定された許容変位量δa(mm)以下である防護堤である。
δfmax
2=α
2×exp(5.80×10
−4×P) (2)
ただし、6.00≦α
2≦49.00である。
【0012】
上記(2)式は、実際に様々な防護堤を作製し、その防護堤のそれぞれについて、一方の法面側に様々な強さの衝撃力Pを与え、衝撃力Pを防護堤の一方の法面側に与えたときに該防護堤の他方の法面側に生じた最大変位量δfmax
2と、その最大変位量δfmax
2を生じたときの衝撃力Pとの関係から得られた近似式である。
【0013】
第3の本発明は、盛土構造体と、盛土構造体内において高さ方向に所定の間隔を有して埋設された複数の盛土補強材と、盛土構造体の一方の法面側において、該一方の法面に沿って1列又は2列に配置された受撃体と、を備える防護堤であって、防護堤の受撃体が備えられる法面側に衝突することが想定される物体が有するエネルギーE(kJ)に基づいて下記(3)式から得られる、物体が防護堤の受撃体が備えられる法面側に衝突したときに防護堤の他方の法面側に生じる最大変位量δfmax
3(mm)が、防護堤が許容できる変位量として予め設定された許容変位量δa(mm)以下である防護堤である。
δfmax
3=α
3×exp(β
3×E) (3)
ただし、前記受撃体が1列の場合、該受撃体の奥行きは0.5m以上、0.50≦α
3≦18.00、β
3=1.56×10
−3であり、前記受撃体が2列の場合、該2列の受撃体の奥行きの合計は1.0m以上、26.00≦α
3≦66.00、β
3=3.80×10
−4である。
【0014】
上記(3)式は、実際に様々な防護堤を作製し、その防護堤のそれぞれについて、様々な強さのエネルギーEを有する物体を一方の法面側に衝突させ、該衝突によって該防護堤の他方の法面側に生じた最大変位量δfmax
3と、その最大変位量δfmax
3を生じたときのエネルギーEとの関係から得られた近似式である。
【0015】
第4の本発明は、盛土構造体と、盛土構造体内において高さ方向に所定の間隔を有して埋設された複数の盛土補強材と、盛土構造体の一方の法面側において、該一方の法面に沿って1列又は2列に配置された受撃体と、を備える防護堤であって、防護堤の受撃体が備えられる法面側に衝突する物体が防護堤に与えると想定される衝撃力P(kN)に基づいて下記(4)式から得られる、物体が防護堤の受撃体が備えられる法面側に衝突したときに防護堤の他方の法面側に生じる最大変位量δfmax
4(mm)が、防護堤が許容できる変位量として予め設定された許容変位量δa(mm)以下である防護堤である。
δfmax
4=α
4×exp(β
4×P) (4)
ただし、前記受撃体が1列の場合、該受撃体の奥行きは0.5m以上、1.00≦α
4≦15.00、β
4=6.00×10
−4であり、前記受撃体が2列の場合、該2列の受撃体の奥行きの合計は1.0m以上、19.00≦α
4≦44.00、β
4=2.30×10
−4である。
【0016】
上記(4)式は、実際に様々な防護堤を作製し、その防護堤のそれぞれについて、一方の法面側に様々な強さの衝撃力Pを与え、衝撃力Pを防護堤の一方の法面側に与えたときに該防護堤の他方の法面側に生じた最大変位量δfmax
4と、その最大変位量δfmax
4を生じたときの衝撃力Pとの関係から得られた近似式である。
【0017】
上記第3又は第4の本発明の防護堤において、受撃体が、上部が開口していて略水平方向に連続して形成されている複数のセルを有する枠体と該セルに充填された中詰材とを備える層を鉛直方向に積層して構成されていることが好ましい。また、盛土補強材と、枠体の上面又は下面とが略面一であることが好ましい。さらに、受撃体を層ごとに交換可能であることが好ましい。
【0018】
本発明において、「上部が開口していて略水平方向に連続して形成されている複数のセルを有する枠体」とは、水平に設置した際に、少なくとも上側が開口している筒状のセルが水平方向に複数連続して備えられているものを意味する。また、「盛土補強材と、枠体の上面又は下面とが略面一である」とは、埋設された盛土補強材を一つの面とみなすとともに、枠体の上面又は下面を一つの面上にあるとみなし、これらの面が略面一であることを意味する。
【0019】
上記第3又は第4の本発明の防護堤において、受撃体の少なくとも受撃面側と天面側とが、衝撃吸収マット又は衝撃吸収シートで覆われていることが好ましい。
【0020】
上記第3又は第4の本発明の防護堤において、受撃体が、鉛直方向の断面視において一連の補強材に包まれていることが好ましい。また、受撃体を包む一連の補強材が、3軸方向に特に強い引張強度を有するジオテキスタイルからなるトラス構造補強材を含むことが好ましい。
【0021】
本発明において「一連の補強材」とは、一体成形された1の補強材又は連結されて一連となった複数の補強材を意味する。
【0022】
上記第1乃至第4の本発明の防護堤において、盛土構造体の法面が壁面材で覆われており、水平方向に隣接する壁面材同士が連結部位材で連結されていることが好ましい。
【0023】
上記第1乃至第4の本発明の防護堤において、複数の盛土補強材のうち少なくとも1つが、3軸方向に特に強い引張強度を有するジオテキスタイルからなるトラス構造補強材であることが好ましい。また、複数の盛土補強材が、敷設時に横断方向に特に強い強度を有するジオテキスタイルからなる横断方向補強材と、トラス構造補強材とであり、鉛直方向において、1の横断方向補強材と他の横断方向補強材との間に、1以上のトラス構造補強材を埋設されていることが好ましい。
【0024】
本発明において「横断方向」とは、盛土構造体の一方の法面から他方の法面に向かう方向を意味する。以下の本発明の説明において、横断方向の長さを「奥行き」という場合がある。
【0025】
第5の本発明は、盛土構造体と、盛土構造体内において高さ方向に所定の間隔を有して埋設された複数の盛土補強材と、を備える防護堤の施工方法であって、防護堤が一方の法面側から衝撃を受けたときに防護堤の他方の法面側に生じると想定される最大変位量を算定し、該最大変位量が、防護堤が許容できる変位量として予め設定した許容変位量以下となる構造に設計する設計工程を含む、防護堤の施工方法である。
【0026】
上記第5の本発明の防護堤の施工方法の設計工程において、防護堤の一方の法面側に衝突することが想定される物体が有するエネルギーに基づいて最大変位量を算定し、該最大変位量が許容変位量以下となる構造に設計することが好ましい。
【0027】
上記第5の本発明の防護堤の施工方法の設計工程において、防護堤の一方の法面側に受けることが想定される衝突力に基づいて最大変位量を算定し、該最大変位量が許容変位量以下となる構造に設計することが好ましい。
【0028】
上記第5の本発明の防護堤の施工方法において、防護堤が、上部が開口していて略水平方向に連続して形成されている複数のセルを有する枠体と該セルに充填された中詰材とを備える層を鉛直方向に積層して構成された受撃体を盛土構造体の一方の法面側に備えており、盛土構造体を作製する盛土構造体作製工程と、受撃体を作製する受撃体作製工程とを含むことが好ましい。
【0029】
上記第5の本発明の防護堤の施工方法において、盛土構造作製工程が、盛土補強材を略水平に敷設する、補強材敷設工程、及び、敷設した盛土補強材の上に盛土材を乗せて締め固める、締め固め工程を備え、補強材敷設工程及び締め固め工程を経て得られる構造体の高さが所定の高さになるまで補強材敷設工程及び締め固め工程を繰り返す工程を含み、受撃体作製工程が、盛土構造体の山側に枠体を略水平に設置する、枠体設置工程、及び、枠体のセルに中詰材を充填する、中詰材充填工程を備え、枠体敷設工程及び中詰材充填工程を経て得られる層を鉛直方向に積層した高さが所定の高さになるまで枠体敷設工程及び中詰材充填工程を繰り返す工程を含み、盛土構造体作製工程と受撃体作製工程とを並行して行うことが好ましい。
【0030】
上記第5の本発明の防護堤の施工方法において、複数の盛土補強材のうち、少なくとも1つに3軸方向に特に強い引張強度を有するジオテキスタイルからなるトラス構造補強材を用いることが好ましい。
【0031】
上記第5の本発明の防護堤の施工方法において、複数の盛土補強材に、敷設時に横断方向に特に強い強度を有するジオテキスタイルからなる横断方向補強材と、トラス構造補強材とを用い、鉛直方向において、1の横断方向補強材と他の横断方向補強材との間に、1以上のトラス構造補強材を埋設することが好ましい。
【0032】
上記第5の本発明の防護堤の施工方法において、鉛直方向の断面視において受撃体の受撃面側と天面側とを衝撃吸収マット又は衝撃吸収シートで覆う工程を含むことが好ましい。
【0033】
上記第5の本発明の防護堤の施工方法において、鉛直方向の断面視において一連の補強材で受撃体を包む工程を含むことが好ましい。
【0034】
上記第5の本発明の防護堤の施工方法において、受撃体を包む一連の補強材に、3軸方向に特に強い引張強度を有するジオテキスタイルからなるトラス構造補強材を用いることが好ましい。
【0035】
上記第6の本発明は、盛土構造体と、盛土構造体内において高さ方向に所定の間隔を有して埋設された複数の盛土補強材と、を備える防護堤の設計方法であって、防護堤が一方の法面側から衝撃を受けたときに防護堤の他方の法面側に生じると想定される最大変位量を算定し、該最大変位量が、防護堤が許容できる変位量として予め設定した許容変位量以下となる構造に設計する、防護堤の設計方法である。
【発明の効果】
【0036】
第1乃至第4の本発明によれば、衝撃を受けた際の破損程度を考慮して設計された防護堤を提供することができる。また、第5の本発明によれば、衝撃を受けた際の破損程度を考慮し、用途に応じた強度の防護堤を施工できる。さらに、第6の本発明によれば、衝撃を受けた際の破損程度を考慮し、用途に応じた強度の防護堤を設計できる。
【0037】
従来の防護堤は、施工場所で落石が起きた場合、その落石によって防護堤が変形しないことを前提に防護堤のタイプを選択し、盛土構造体の奥行き及び高さ、受撃体の奥行き及び設置数を適宜決定し設計していた。そのため、実際には過剰なスペックの防護堤が施工されており、防護堤完成までに日数がかかり、施工期間の短縮化が困難であるという問題があった。また、余計な人件費、材料費などの施工費用が嵩むという問題もあった。また、施工後の管理においては、施工場所における人為的な点検により変位量が大きくなり、防護堤の破損の危険性があると確認された場合には防護堤の修復作業が行われるのが一般的であった。そのため、施工現場ごとのメンテナンスが煩雑であるという問題があった。
【0038】
これに対し、第1乃至第4の本発明は、落石エネルギーや落石衝突時の防護堤の衝撃力から算出された防護堤の最大変位量を防護堤の許容変位量以下となるように設計することにより、受撃体の有無、受撃体の数などが決定され、最適な防護堤のタイプが選択される。そのため、第1乃至第4の本発明であれば、施工現場に最適なタイプの防護堤を提供することができるほか、防護堤がメンテナンスを必要とする時期を予め予測することが可能となるため、設置場所における定期的なメンテナンスが可能となり、防護堤の管理がし易くなるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。なお、図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比などを実物のそれから変更し、誇張している場合がある。また、各図面において同様の構成のものには同じ符号を付している。さらに、見易さのために簡略化して示したり、繰り返しとなる符号を一部省略したり、説明しない構成部材を省略していたりする場合がある。
【0041】
1.防護堤
本発明の防護堤は、盛土構造体と、盛土構造体内において高さ方向に所定の間隔を有して埋設された複数の盛土補強材とを備えている。また、本発明の防護堤は、一方の法面側から衝撃を受けたときに他方の法面側に生じると想定される最大変位量が、許容できる変位量として予め設定された許容変位量以下であることを特徴とする。以下、実施形態を例示して、本発明の防護堤について詳細に説明する。
【0042】
1.1.第1実施形態
図1は、第1実施形態にかかる本発明の防護堤100の鉛直方向かつ横断方向の断面を概略的に示す図である。
図1に示した防護提100は、盛土構造体10と、盛土構造体10内において高さ方向に所定の間隔を有して埋設された複数の盛土補強材1、1、…と、を備えている。以下、防護堤100について詳細に説明する。
【0043】
(盛土構造体10)
盛土構造体10は、地盤50上に盛土材2、2、…を盛って締め固められたものであり、後に詳述する盛土補強材1、1、…が埋設される。盛土材2、2、…は、従来の盛土材として用いられているものであれば特に限定されることなく使用できる。盛土材としては、例えば、砂質土や粘性土などの現地発生土などを用いることができる。
【0044】
盛土構造体10の法面の勾配は特に限定されないが、一般的には1:0.2から1:0.5程度である。なお、盛土構造体10の山側の法面の勾配と谷側の法面の勾配とは、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0045】
本発明の防護堤において、盛土構造体10の法面や天面の構成は特に限定されず、従来の公知の盛土構造体と同様にすることができる。例えば、盛土構造体10の法面はエキスパンドメタルや金網などの公知の壁面材(不図示)で覆うことができる。また、盛土構造体10の法面が複数の壁面材で覆われている場合、水平方向に隣接する壁面材同士が連結部位材で連結されていることが好ましい。このように壁面材を連結部位材で連結することによって、防護堤100の耐衝撃性を一層向上させることができる。
【0046】
水平方向に隣接する壁面材同士を連結する方法は特に限定されないが、その具体例について、
図10及び
図11を参照しつつ説明する。
図10は、一つの例にかかる連結部位材によって壁面材同士を連結した部分の一部を概略的に示す斜視図である。
図11(a)乃至(e)は、他の例にかかる連結部位材によって壁面材同士を連結する方法を説明する図である。
【0047】
壁面材同士を連結する連結部位材としては、例えば
図10に示したようなコイル状部材13が挙げられる。
図10に示したように、隣接する一方の壁面材11の端部と他方の壁面材12の端部とにコイル状部材13を絡ませることによって、壁面材11及び壁面材12を連結することができる。このようなコイル状部材の大きさや太さ、材質などは、防護堤を施工した後にコイル状部材にかかる負荷、連結する壁面材の高さや壁面材の構造などにより適宜決定される。コイル状部材の長さは、少なくとも壁面材同士を固定可能な程度の長さである必要があり、好ましくは壁面材の高さの2/3以上、より好ましくは壁面材の高さの3/4以上である。
【0048】
また、壁面材同士を連結する連結部位材としては、
図11(a)乃至
図11(e)に示したようなワイヤークリップ14も挙げられる。隣接する一方の壁面材11の端部の縦筋と他方の壁面材12の端部の縦筋とをワイヤークリップ14で結束することによって、壁面材11及び壁面材12を連結することができる。
図11(a)は壁面材11と壁面材12の連結箇所を法面側から見た図である。
図11(b)は
図11(a)のb−b矢視図である。
図11(e)は
図11(a)のe−e矢視図であり、
図11(c)乃至
図11(e)は同視点から見たワイヤークリップ14を用いて壁面材11と壁面材12とを連結する過程を説明する図である。
【0049】
ワイヤークリップ14を用いて壁面材11と壁面材12とを連結するには、最初に、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、壁面材11の端部の縦筋と壁面材12の端部の縦筋とを突き合わせる。そして、隣接する壁面材11と壁面材12の縦筋同士をワイヤークリップ14で結束する。より具体的説明するため、ワイヤークリップ14の構成について説明する。ワイヤークリップ14は、
図11(e)に示すように、U字型の部材14a、留め具14b、及びナット14c、14cからなる部材である。U字部材14aの端部には、ねじが切られており、ナット14c、14cと螺合させることができる。留め具14bには2つ孔が開いており、その孔にU字部材14aのねじが切られた端部を通すことができる。
【0050】
このワイヤークリップ14を用いて、壁面材11と壁面材12を連結させるには、まず、
図11(c)に示すように、壁面材11と壁面材12とを端部の縦筋が接するように突き合わせる。次いで隣接する縦筋同士にU字部材14aを引っ掛ける。次に、
図11(d)に示すように、留め具14bにU字部材14aを通す。最後に、
図11(e)に示すように、U字部材14aにナット14c、14cを螺合させることで、壁面材11と壁面材12とを連結することができる。
【0051】
このようなワイヤークリップの大きさやワイヤークリップを用いる数、すなわちワイヤークリップの設置間隔などは、防護堤を施工した後にワイヤークリップにかかる負荷、連結する壁面材の端部の縦筋の太さ、連結する壁面材の高さなどにより適宜決定される。
【0052】
(盛土補強材1)
防護堤100に備えられる盛土補強材1には、従来の盛土補強材を特に限定することなく用いることができるが、公知のジオグリッドなどのように引張強度が大きい樹脂製のネット状体が好適である。ただし、盛土補強材1として、金網など金属製のものも利用可能である。また、防護堤100が落石などによる衝撃を受けた際に、その衝撃を防護堤100内で広範囲に分散させることができるという観点からは、盛土補強材1として、メッシュ開口部が略三角形となっており、3軸方向に特に強い引張強度を有している結果、全方向(360度)に強度を擬似的に有するトラス構造を有するジオテキスタイルからなるトラス構造補強材(例えば、特開2004−44374号公報に開示されているジオグリット。)を用いることが好ましい。
【0053】
さらに、本発明では、盛土補強材1、1、…として、敷設時に横断方向に特に強い強度を有するジオテキスタイルからなる横断方向補強材と上記トラス構造補強材とを用いて、鉛直方向において、1の横断方向補強材と他の横断方向補強材と間に、1以上のトラス構造補強材が挟まれる位置関係となるように盛土構造体10に埋設することが好ましい。かかる形態とすることによって、横断方向補強材によって横断方向に盛土材2を拘束する力を備えつつ、トラス構造補強材によって落石などによる衝撃を広範囲に分散させる効果を奏することができる。
【0054】
(防護堤100の強度)
上述したように、本発明の防護堤は、一方の法面側から衝撃を受けたときに他方の法面側に生じると想定される最大変位量が、許容できる変位量として予め設定された許容変位量以下であることを特徴とする。
【0055】
より具体的には、防護堤100は、防護堤100の一方の法面側に衝突することが想定される物体が有するエネルギーE(kJ)に基づいて下記(1)式から得られる、物体が防護堤100の一方の法面側に衝突したときに防護堤100の他方の法面側に生じる最大変位量δfmax
1(mm)が、防護堤100が許容できる変位量として予め設定された許容変位量δa(mm)以下となるように設計されている。
δfmax
1=α
1×exp(1.22×10
‐3×E) (1)
ただし、3.00≦α
1≦67.00である。
【0056】
上記(1)式は、実際に様々な防護堤100を作製し、その防護堤100のそれぞれについて、様々な強さのエネルギーEを有する物体を一方の法面側に衝突させ、該衝突によって該防護堤100の他方の法面側に生じた最大変位量δfmax
1と、その最大変位量δfmax
1を生じたときのエネルギーEとの関係から得られた近似式である。
【0057】
α
1は様々な強さのエネルギーEを有する物体を防護堤100の一方の法面側にそれぞれ衝突させた場合の他方の法面側に生じる最大変位量δfmax
1から導き出した係数である。α
1は、3.00以上であり、好ましくは10.00以上、より好ましくは13.00以上、さらに好ましくは16.00以上であり、67.00以下、好ましくは65.00以下、より好ましくは60.00以下、さらに好ましくは55.00以下である。
【0058】
また、防護堤100は、防護堤100の一方の法面側に衝突する物体が防護堤100に与えると想定される衝撃力P(kN)に基づいて下記(2)式から得られる、物体が防護堤100の一方の法面側に衝突したときに防護堤100の他方の法面側に生じる最大変位量δfmax
2(mm)が、防護堤100が許容できる変位量として予め設定された許容変位量δa(mm)以下となるように設計されている。
δfmax
2=α
2×exp(5.80×10
−4×P) (2)
ただし、6.00≦α
2≦49.00である。
【0059】
上記(2)式は、実際に様々な防護堤100を作製し、その防護堤100のそれぞれについて、一方の法面側に様々な強さの衝撃力Pを与え、衝撃力Pを防護堤100の一方の法面側に与えたときに該防護堤100の他方の法面側に生じた最大変位量δfmax
2と、その最大変位量δfmax
2を生じたときの衝撃力Pとの関係から得られた近似式である。
【0060】
α
2は様々な強さの衝撃力Pを防護堤100に与える物体を防護堤100の一方の法面側にそれぞれ衝突させた場合の他方の法面側に生じる最大変位量δfmax
2から導き出した係数である。α
2は、6.00以上であり、好ましくは14.00以上、より好ましくは17.00以上、さらに好ましくは19.00以上であり、49.00以下、好ましくは47.00以下、より好ましくは45.00以下、さらに好ましくは40.00以下である。
【0061】
防護堤100は、上記のように衝撃を受けた際の破損程度を考慮して設計されていることによって、例え落石などによって衝撃を受けたとしても、破損の程度を補修可能な程度に抑えることができる。
【0062】
1.2.第2実施形態
図2は、第2実施形態にかかる本発明の防護堤200の鉛直方向の断面を概略的に示す図である。
図2に示した防護提200は、盛土構造体10と、盛土構造体10内において高さ方向に所定の間隔を有して埋設された複数の盛土補強材1、1、…と、を備えている。さらに、防護提200は、盛土構造体10の一方の法面側において、該一方の法面に沿って受撃体20を備えている。
図2において、
図1と同様の構成のものについては、同符号を付しており、適宜説明を省略する。以下、防護堤200について詳細に説明する。
【0063】
(受撃体20)
受撃体20は、上部が開口していて略水平方向に連続して形成されている複数のセルを有する枠体と該セルに充填された中詰材とを備える層27、27、…を上下に積層して構成されている。受撃体20は、盛土構造体10の山側において、盛土構造体10の法面に沿って備えられる。
【0064】
まず、上記枠体について説明する。受撃体20に用いることができる枠体は、複数のセルを有しており、枠体を水平に敷設した場合、セルは、それぞれが開口部を上部に有した筒状となり、水平方向に連続して形成されている。枠体の具体例について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は本発明に用いることができる枠体21の展張前の姿勢を概略的に示す斜視図であり、
図4は
図3に示した枠体21の展張後の姿勢を概略的に示す斜視図である。
【0065】
枠体21は、上部が開口した複数のセル22、22、…、を備えており、該セル22、22、…、は、高分子材料からなる複数枚のストリップ材24、24、…が一定間隔で設けられた結合部位25、25、…にて結合されることで構成されている。枠体21は、運搬時などは
図3に示すようにセル22、22、…、を閉じた姿勢とすることで運搬しやすくすることができ、敷設時には
図3に示した姿勢から奥/手前方向に引いて展張することで、
図4に示すように、セル22、22、…を開くことができる。
【0066】
また、層27の排水性を向上させるという観点からは、ストリップ材24に適宜、複数の孔26、26、…を設けることが好ましい。
【0067】
なお、本発明に用いる枠体21は、使用状況に応じて適当な高さのものを選択できる。また、枠体21の幅(
図2の奥/手前方向の長さ)は特に限定されず、防護堤200の大きさに合わせて複数の枠体21を並列または連結して用いることができる。さらに、枠体21の奥行き(
図2の左右方向の長さ)も特に限定されず、防護堤100が受けると想定される衝撃の大きさに応じて選択することができる。すなわち、防護堤200が受けると想定される衝撃が大きいほど受撃体20の奥行きを長くすることが好ましく、その際、1つの枠体21の奥行きを長くすることで受撃体20の奥行きを長くしてもよく、後に説明する防護堤300のように、複数の枠体21を並列させることで受撃体20の奥行きを長くしてもよい。
【0068】
受撃体20の奥行きは、落石のエネルギーE又は防護堤200、300に対する落石の衝撃力Pから得られる最大変位量と、防護堤200、300の許容変位量とを考慮して適宜決定することができる。受撃体20が1列の場合、受撃体20の奥行きは、0.5m以上、好ましくは0.6m以上、さらに好ましくは0.8m以上である。また、受撃体20が2列の場合、該2列の受撃体20の奥行きの合計は、1.0m以上、好ましくは1.2m以上、さらに好ましくは1.6m以上である。受撃体20の奥行きが上記数値以上であれば、エネルギーEを有する落石の衝突又は衝撃力Pを与える落石の衝突に防護堤が充分耐え得ることができる。受撃体20の奥行きの上限値については適宜決定することができ、施工時間及び施工費用の観点からは、受撃体20が1列の場合、好ましくは2.0m以下、より好ましくは1.9m以下であり、受撃体20が2列の場合、好ましくは4.0m以下、より好ましくは3.8m以下である。
【0069】
このような枠体21の具体例としては、東京インキ株式会社製の「テラセル(登録商標)」などを挙げることができる。
【0070】
図4に示すように、枠体21を展張した後、セル22、22、…に中詰材23を充填することで、層27が形成される。中詰材23としては、防護堤200が衝撃を受けた際にその衝撃を分散させやすいものであれば特に限定されず、例えば、砕石などの礫材料の他、砂質土や粘性土などの現地発生土などを用いることができる。
【0071】
受撃体20を備える場合、盛土補強材1と、受撃体20を構成する層27(枠体21)の上面又は下面とが略面一であることが好ましい。例えば、盛土補強材1を埋設する鉛直方向の間隔と、層27(枠体21)の高さとを略同一にすることによって、盛土補強材1と、受撃体20を構成する層27(枠体21)の上面または下面とを略面一にすることができる。このように盛土補強材1と受撃体20を構成する層27の上面または下面とを略面一にすることにより、防護堤の施工時に盛土材2が締め固められた部分の上面と受撃体20の上面とが略面一になるように施工できるため、作業効率が上がるほか、受撃体20の高さの補正をし易くなる。
【0072】
上述したようにして、受撃体20を複数の層27によって構成することによって、受撃体20を層27ごとに交換することが可能となる。このように受撃体20を層27ごとに交換可能な形態とすることによって、修復が必要な部分の受撃体20のみを容易に修復することができる。
【0073】
また、受撃体20の下部には、コンクリートなどからなる基礎40を設けても良い。基礎地盤が軟弱な場合や凹凸がある場合に、基礎40を設けることによって受撃体20の不等沈下の防止や不陸の調整を行うことができる。
【0074】
(その他の構成)
防護堤200の耐衝撃性をより向上させるという観点からは、垂直方向の断面視において受撃体20を包む一連の補強材を備えていることが好ましい。受撃体20を一連の補強材で包むことによって、防護堤が受撃体20側に衝撃を受けた際、該補強材が該衝撃を分散させ、防護堤の損傷を抑制することができる。当該補強材は、一体に成形された補強材であってもよく、複数の補強材を連結されたものであってもよい。受撃体20が受けた衝撃をより分散させるという観点からは、当該補強材に上記トラス構造補強材を用いることが好ましい。
【0075】
また、盛土構造体10と受撃体20との間に緩衝体を備えることによって、耐衝撃性を向上させることもできる。緩衝体を構成するものとしては、例えば、砂、砕石、礫質土などの現地発生土などが挙げられる。落石の衝突によるエネルギーは緩衝体が変形することによって吸収されるため、緩衝体を構成するものとしては、単粒度の砕石が好ましい。このような緩衝体を備えることによって、受撃体20が受けた衝撃を緩衝体で緩和して盛土構造体10に伝えることができる。
【0076】
さらに、防護堤200の耐衝撃性をより向上させる、防護堤200が落石などの落下物による衝撃を受けた際に受撃体20から中詰材が飛び出ることを抑制するなどの観点からは、受撃体20の受撃面側と天面側とを衝撃吸収マット(不図示)又は衝撃吸収シート(不図示)で覆うことが好ましい。衝撃吸収マットや衝撃吸収シートは、防護堤200が落石などの落下物による衝撃を受けた際にその衝撃をある程度分散できるものであって、その衝撃を受けた際に受撃体20から中詰材が飛び出ることを抑制できる、マット状又はシート状のものであれば特に限定されない。そのような衝撃吸収マット又は衝撃吸収シートとしては、例えば、上記トラス構造補強材や、PROPEX社製のLANDLOK300などを挙げることができる。
【0077】
なお、
図2には、盛土構造体10の一方の法面側において、該一方の法面に沿って1列の受撃体20が備えられる防護堤200を例示しているが、本発明はかかる形態に限定されない。本発明の防護堤は、例えば、
図5に示した防護堤300のように、盛土構造体10の一方の法面側において、該一方の法面に沿って2列の受撃体20を備えていてもよい。受撃体20の数を増やすことによって、防護堤の耐衝撃性を向上させやすくなる。
【0078】
(防護堤200、300の強度)
上述したように、本発明の防護堤は、一方の法面側から衝撃を受けたときに他方の法面側に生じると想定される最大変位量が、許容できる変位量として予め設定された許容変位量以下であることを特徴とする。
【0079】
防護堤200、300は、防護堤200、300の受撃体20が備えられる法面側に衝突することが想定される物体が有するエネルギーE(kJ)に基づいて下記(3)式から得られる、物体が防護堤200、300の受撃体20が備えられる法面側に衝突したときに防護堤200、300の他方の法面側に生じる最大変位量δfmax
3(mm)が、防護堤200、300が許容できる変位量として予め設定された許容変位量δa(mm)以下となるように設計されている。
δfmax
3=α
3×exp(β
3×E) (3)
ただし、受撃体20が1列の場合、該受撃体の奥行きは0.5m以上、0.50≦α
3≦18.00、β
3=1.56×10
−3であり、受撃体20が2列の場合、該2列の受撃体の奥行きの合計は1.0m以上、26.00≦α
3≦66.00、β
3=3.80×10
−4である。
【0080】
上記(3)式は、実際に様々な防護堤200、300を作製し、その防護堤200、300のそれぞれについて、様々な強さのエネルギーEを有する物体を一方の法面側に衝突させ、該衝突によって該防護堤200、300の他方の法面側に生じた最大変位量δfmax
3と、その最大変位量δfmax
3を生じたときのエネルギーEとの関係から得られた近似式である。
【0081】
α
3は様々な強さのエネルギーEを有する物体を防護堤200、300の受撃体が備えられる法面側にそれぞれ衝突させた場合の防護堤200、300の他方の法面側に生じる最大変位量δfmax
3から導き出した係数である。受撃体20が1列(受撃体20の奥行きが0.5m以上)の場合、α
3は0.50以上、好ましくは1.00以上、より好ましくは2.00以上、さらに好ましくは3.00以上であり、18.00以下、好ましくは17.00以下、より好ましくは16.00以下、さらに好ましくは15.00以下である。また、受撃体20が2列(2列の受撃体20の奥行きの合計が1.0m以上)の場合、α
3は26.00以上、好ましくは28.00以上、より好ましくは30.00以上、さらに好ましくは32.00以上であり、66.00以下、好ましくは64.00以下、より好ましくは62.00以下、さらに好ましくは60.00以下である。
【0082】
また、防護堤200、300は、防護堤200、300の受撃体20が備えられる法面側に衝突する物体が防護堤200、300に与えると想定される衝撃力P(kN)に基づいて下記(4)式から得られる、物体が防護堤200、300の受撃体20が備えられる法面側に衝突したときに防護堤200、300の他方の法面側に生じる最大変位量δfmax
4(mm)が、防護堤200、300が許容できる変位量として予め設定された許容変位量δa(mm)以下となるように設計されている。
δfmax
4=α
4×exp(β
4×P) (4)
ただし、受撃体20が1列の場合、該受撃体の奥行きは0.5m以上、1.00≦α
4≦15.00、β
4=6.00×10
−4であり、受撃体20が2列の場合、該2列の受撃体の奥行きの合計は1.0m以上、19.00≦α
4≦44.00、β
4=2.30×10
−4である。
【0083】
上記(4)式は、実際に様々な防護堤200、300を作製し、その防護堤200、300のそれぞれについて、受撃体が備えられる一方の法面側に様々な強さの衝撃力Pを与え、衝撃力Pを防護堤200、300の一方の法面側に与えたときに該防護堤200、300の他方の法面側に生じた最大変位量δfmax
4と、その最大変位量δfmax
4を生じたときの衝撃力Pとの関係から得られた近似式である。
【0084】
α
4は様々な強さの衝撃力Pを防護堤200、300に与える物体を防護堤200、300の受撃体20が備えられる法面側にそれぞれ衝突させた場合の他方の法面側に生じる最大変位量δfmax
4から導き出した係数である。受撃体20が1列(受撃体20の奥行きが0.5m以上)の場合、α
4は1.00以上、好ましくは2.00以上、より好ましくは3.00以上、さらに好ましくは4.00以上であり、15.00以下、好ましくは14.00以下、より好ましくは13.00以下、さらに好ましくは12.00以下である。また受撃体20が2列(2列の受撃体20の奥行きの合計が1.0m以上)の場合、α
4は19.00以上、好ましくは21.00以上、より好ましくは23.00以上、さらに好ましくは25.00以上であり、44.00以下、好ましくは42.00以下、より好ましくは40.00以下、さらに好ましくは39.00である。
【0085】
防護堤200、300は、上記のように衝撃を受けた際の破損程度を考慮して設計されていることによって、例え落石などによって衝撃を受けたとしても、破損の程度を補修可能な程度に抑えることができる。
【0086】
防護堤100、200、300は、許容変位量δaが上記の式(1)乃至(4)で算出される最大変位量以下である。許容変位量δaは、これまでの経験則から防護堤のタイプにより異なる。受撃体を有しないタイプ(例えば、実施例で説明するタイプI)の場合、許容変位量δaは450mm以下、好ましくは350mm以下、さらに好ましくは150mm以下である。また、受撃体を有するタイプ(受撃体が1列:例えば、実施例で説明するタイプII、受撃体が2列:例えば、実施例で説明するタイプIII)の防護堤の場合、許容変位量δaは700mm以下、好ましくは450mm以下、さらに好ましくは300mm以下である。
【0087】
許容変位量δaの値は、実物実験で確認された値である。例えば、受撃体20を有しないタイプ(タイプI)では、防護堤に落石が衝突した際の最大変位量が450mm以下であれば防護堤が崩壊することはないことが確認されている。また、受撃体20が1列の場合(タイプII)及び受撃体20が2列の場合(タイプIII)では、複数回重錘を衝突させた後の累加した最大変位量が700mmであれば防護堤が崩壊することはないことが確認されている。
【0088】
許容変位量δaが上記数値以下であれば、あるエネルギーを有する落石が防護堤の一方の法面側に衝突した場合、又は落石が防護堤の一方の法面側に衝突することである衝撃力を防護堤に与えた場合、防護堤の他方の法面側(壁面材)は部分的な変形や一部の破損に止まり、防護堤はその後も防護堤として機能し得る。
【0089】
2.防護堤の設計方法及び施工方法
次に、本発明の防護堤の設計方法及び施工方法について説明する。本発明の防護堤の設計方法は、盛土構造体と、盛土構造体内において高さ方向に所定の間隔を有して埋設された複数の盛土補強材とを備える防護堤の設計方法である。また、本発明の防護堤の設計方法は、防護堤が一方の法面側から衝撃を受けたときに該防護堤の他方の法面側に生じると想定される最大変位量を算定し、該最大変位量が、防護堤が許容できる変位量として予め設定した許容変位量以下となる構造に設計することを特徴としており、用途に応じた強度の防護堤を設計することができる。また、本発明の防護堤の施工方法は、本発明の防護堤の設計方法を実施する設計工程を含むことを特徴としており、用途に応じた強度の防護堤を施工することができる。
【0090】
図6は、本発明の防護堤の施工方法について、一つの実施形態例を概略的に示すフローチャートである。
図6に示した本発明の防護堤の施工方法は、設計条件の確認工程S1(以下、単に「工程S1」という。)、落石エネルギーの算定工程S2(以下、単に「工程S2」という。)、防護堤タイプの仮定工程S3(以下、単に「工程S3」という。)、落石衝撃力の算定工程S4(以下、単に「工程S4」という。)、変位の照査工程S5(以下、単に「工程S5」という。)、最大変位量と許容変位量とを比較する工程S6(以下、単に「工程S6」という。)、設計壁高の検討工程S7(以下、単に「工程S7」という。)、設計天端幅の検討工程S8(以下、単に「工程S8」という。)、内的安定計算工程S9(以下、単に「工程S9」という。)及び施工工程S10(以下、単に「工程S10」という。)を含んでいる。なお、本発明の防護堤の設計方法に相当する工程(設計工程)は、工程S1〜工程S9である。
図6に示した各工程について、以下に説明する。
【0091】
<工程S1>
工程S1は、以下に説明する落石のエネルギーや落石が防護堤に衝突した際の衝撃力などを算定するために、防護堤の設計条件を確認する工程である。具体的には、落石の発生が想定される斜面の平均勾配(以下、「斜面勾配」という。)、防護堤を施工する位置での斜面の勾配(防護堤の山側の斜面の勾配)、落石の条件(落石の形状、体積、重量など)及び盛土材の条件(単位体積重量、内部摩擦角、粘着力など)などを確認する。
【0092】
<工程S2>
工程S2は、落石のエネルギーを算定する工程である。例えば、下記(5)式によって、落石のエネルギーEを算出することができる。
E=(1+β)×{1−(μ/tanθ)}×W×H (5)
ここに、(1+β)×{1−(μ/tanθ)}≦1.0
ただし、(1+β)×{1−(μ/tanθ)}>1.0の場合は、(1+β)×{1−(μ/tanθ)}=1.0とする。
なお、(5)式において、Eは落石のエネルギー(kJ)、βは回転エネルギー係数、μは等価摩擦係数、θは斜面勾配(°)、Wは落石の重量(kN)、Hは落石の落下高さ(m)である。
【0093】
<工程S3>
工程S3は、防護堤のタイプを仮定する工程である。防護堤は構造によって受け止められる落石のエネルギーが異なる。したがって、複数のタイプの防護堤について、それらが耐え得る落石のエネルギーを算定しておき、工程S2で求めた落石のエネルギーEに基づいて、適当と思われるタイプの防護堤を工程S3で仮定する。
【0094】
本発明に用いることができる防護堤の構造は特に限定されない。ただし、本発明は、落石によって防護堤が山側に衝撃を受けた際に想定される、該防護堤の谷側の変位量を照査する工程を含むことを特徴としているため、コンクリート製の擁壁などのように、落石によって衝撃を受けた際に変位することが想定されないものは除かれる。本発明に用いることができる防護堤の具体例としては、上述した防護堤100、200、及び300を例示することができる。
【0095】
<工程S4>
工程S4は、落石によって防護堤が受ける衝撃力を算定する工程である。例えば、下記(6)式によって、落石による衝撃力Pを算出することができる。
P=2.108×(m×g)
2/3×λ
2/5×H’
3/5 (6)
なお、(6)式において、Pは落石による衝撃力(kN)、mは落石の質量(t)、gは重力加速度(m/s
2)、λはラーメの定数、H’としては、下記(7)式から求められる換算落下高さ(m)を用いることができる。λは、実験によって求めることができる値であり、防護堤の構造によって異なる値となる。
H’={1−(μ/tanθ)}×H (7)
なお、(7)式において、μは等価摩擦係数、θは斜面勾配(°)、Hは落石の落下高さ(m)である。
【0096】
<工程S5>
工程S5は、防護堤が落石によって山側から衝撃を受けた際に、該防護堤の谷側がどの程度変位するかを照査する工程である。落石によって山側から衝撃を受けた際の、防護堤の谷側の変位量(以下、落石によって山側から衝撃を受けた際の、防護堤の谷側の変位量を単に「変位量」という。)は、防護堤の構造によって異なる。防護堤が施工される環境での最大変位量(その環境で想定される最大の変位量)は、実験によって算定することができる。例えば、工程S2で求めた落石エネルギーEと変位量との関係式、及び工程S4で求めた衝撃力Pと変位量との関係式を求め、それらの式から最大変位量を算定することができる。この関係式の具体例としては、上述した(1)式、(2)式、(3)式、及び(4)式を挙げることができる。
【0097】
<工程S6>
工程S6は、工程S5で求めた最大変位量が、許容変位量以下であるか、または許容変位量より大きいかを判定する工程である。許容変位量とは、防護堤の構造及び防護堤が施工される環境によって適宜設定できる値である。例えば、どの程度の変位量であれば、衝撃を受けた箇所近辺の修復のみで済むかということは、防護堤の構造によって異なる。また、防護堤の重要度によって、許容できる変位量が異なる。すなわち、落石の発生する確率や規模が大きかったり、社会的、経済的影響が甚大である場合は許容変位量が小さくなるが、落石の発生する確率や規模が小さかったり、落石による人や物への影響が比較的少ない場合は許容できる変位量が大きくなる。さらには、防護堤の限界状態の設定によっても許容変位量は変化する。
【0098】
上記のように、許容変位量を適宜設定し、工程S5で求めた最大変位量が許容変位量以下であれば工程S7に進み、工程S5で求めた最大変位量が許容変位量より大きければ、工程2に戻って防護堤のタイプを仮定しなおし、工程S3〜工程S6を繰り返す。なお、工程S6で用いる最大変位量は、工程S2で求めたエネルギーEと変位量との関係式、及び工程S4で求めた衝撃力Pと変位量との関係式から求めたどちらか一方のみであっても良いが、安全性などの観点から、両関係式から求めた最大変位量について、それぞれ許容変位量と比較することが好ましい。
【0099】
<工程S7>
工程S7は、防護堤の必要高さHbを検討する工程である。具体的な方法は特に限定されず、例えば、以下の方法で算出することができる。
【0100】
防護堤の必要高さHbは、落石の跳躍高によって決定することができる。落石の跳躍高は「落石対策便覧(社)日本道路協会」によれば、2.0mを標準としている。
図7を用いてこの場合の防護堤の必要高さHbの算出方法を説明する。
図7(a)は、落石60が落下してくる斜面61の法尻と防護堤200の山側の面との間の平場の距離L(以下、単に平場距離Lという。)が0の場合を概略的に示しており、
図7(b)は、平場距離Lが0ではない場合を概略的に示している。
図7において、H
1は落石の跳躍高、H
2は落石の半径、H
3は実物実験から得られた余裕高、θ
βは、防護堤の山側法面の鉛直面に対する角度、θ
2は斜面61の勾配を示している。防護堤の必要高さHbを算出する式は、平場距離Lの長さによって場合分けされる。すなわち、防護堤の必要高さHbは、下記(8)〜(10)式のいずれかによって求めることができる。
・L=0の場合
Hb>(H
1+H
2)×cosθ
β×sec(θ
2−θ
β)+H
3 (8)
・0<L≦(H
1+H
2)×{tan(θ
2/2)−tanθ
β}の場合
Hb={(H
1+H
2)/cos(θ
2−θ
β)}
−L{sinθ
2/sin(90°−θ
2+θ
β)}×cosθ
β+H
3 (9)
・L>(H
1+H
2)×{tan(θ
2/2)−tanθ
β}の場合
Hb=H
1+H
2+H
3 (10)
【0101】
<工程S8>
工程S8は、防護堤の天端幅を検討する工程である。これまでの工程では、事前に施工した防護堤で行った実験で求めた数値を用いて、いくつかのパラメータを決定している。したがって、実際に使用する盛土材が、実験で用いた盛土材と異なる場合には、実際に施工する防護堤の強度が実験で施工した防護堤の強度以上になるように、盛土構造体の天端幅を調整する必要がある。天端幅を広げることによって、盛土構造体の重量が増し、該盛土構造体を備える防護堤の強度を上げることができる。
【0102】
<工程S9>
工程S9は、施工される防護堤が、定常状態において内的に安定するかどうかを検討する工程である。内的に安定するかどうかの判断手法は特に限定されず、従来の方法を用いることができる。
【0103】
<工程S10>
工程S10は、工程S1〜工程S9を経て決定された条件に基づいて、実際に防護堤を施工する工程である。防護提を実際に施工する方法は特に限定されない。工程S10の具体例について、
図8を用いて説明する。
図8は、工程S10をより具体的に説明するフローチャートである。
【0104】
工程S10は、盛土構造体作製工程S20(以下、単に「工程S20」という。)と受撃体作製工程S30(以下、単に「工程S30」という。)とを備えており、これらの工程を並行して行う。なお、
図2に示した防護堤100のように、受撃体20を備えない場合は、工程S30は省略される。
【0105】
<工程S20>
工程S20は、補強材敷設工程S21(以下、単に「工程S21」という。)及び締め固め工程S22(以下、単に「工程S22」という。)を備えており、工程S21及び工程S22を経て得られる構造体の高さが所定の高さになるまで工程S21工程及び工程S22を繰り返す工程である。
【0106】
(工程S21)
工程S21は、地盤50上に、又は後に説明する締め固め工程S22の後に盛土材2の上に、盛土補強材1を敷設する工程である。地盤50又は盛土材2の上に盛土補強材1を固定する方法は特に限定されず、従来の公知の方法を用いることができる。
【0107】
(工程S22)
工程S22は、盛土補強材1の上に、盛土材2を乗せて締め固める工程である。盛土補強材1、1、…は、通常、鉛直方向において30cm、60cm、又は1.2mの間隔で埋設される。したがって、工程S22では、締め固め後の盛土材2の高さ(地盤50又は該盛土材2の下側に敷設された盛土補強材1からの高さ)が30cm、60cm、又は1.2m程度になるように盛土材2を乗せて締め固める。ただし、本発明において盛土補強材1、1、…が埋設される間隔は上記間隔に限定されない。
【0108】
工程S21及び工程S22を経て得られる構造体の高さが所定の高さになるまで工程S21及び工程S22を繰り返し行うことで、鉛直方向に所定の間隔を有して複数の盛土補強材1、1、…が埋設された盛土構造体10が施工される。
【0109】
上記したように、本発明の防護堤の施工方法によって施工される防護堤では、その複数の盛土補強材1、1、…に、トラス構造補強材が含まれていることが好ましい。そのため、繰り返し行われる工程S21のうち、少なくとも1回は、トラス構造補強材を用いて行う。また、盛土補強材1、1、…が、横断方向補強材と、トラス構造補強材とであり、鉛直方向において、1の横断方向補強材と他の横断方向補強材と間に、1以上のトラス構造補強材が挟まれる位置関係となるように埋設させることが好ましい。すなわち、横断方向補強材を用いて工程S21を1回行った後は、少なくとも1回はトラス構造補強材を用いて工程S21を行い、その後、さらに横断方向補強材を用いて工程S21を行うことが好ましい。
【0110】
好ましい形態をより具体的に説明すると、横断方向補強材を用いて工程S21を行った後、締め固め後の盛土材2の高さが約30cmになるように工程S22を行い、その後、トラス構造補強材を用いて工程S21を行い、さらに締め固め後の盛土材2の高さが約30cmになるように工程S22を行うという工程を、工程S21及び工程S22を経て得られる構造体の高さが所定高さまで繰り返し行うことが好ましい。
【0111】
なお、本発明の防護堤の施工方法において、盛土構造体10の法面の構成及び天面の構成は特に限定されず、従来の公知の方法によって施工することができる。例えば、盛土構造体10の法面が壁面材で覆われるようにして、水平方向に隣接する壁面材同士を公知の連結部位材で連結することが好ましい。また、壁面材を盛土補強材1に連結することも好ましい。
【0112】
<工程S30>
工程S30は、枠体敷設工程S31(以下、単に「工程S31」という。)及び中詰材充填工程S32(以下、単に「工程S32」という。)を備えており、工程S31及び工程S32を経て得られる層27を上下(鉛直方向)に積層した高さが所定の高さになるまで工程S31及び工程S32を繰り返す工程である。
【0113】
(工程S31)
工程S31は、盛土構造体10の山側に枠体21を略水平に敷設する工程である。枠体21は、展張した姿勢で敷設する(
図4参照。)。枠体21の敷設数は、防護堤の大きさや防護堤が受けると想定される衝撃の大きさに応じて適宜決定される。すなわち、枠体21の幅方向(
図2及び
図5の奥/手前方向)の敷設数は防護堤(盛土構造体)の幅方向(
図2及び
図5の奥/手前方向)に応じて決められ、枠体21の奥行き方向(
図2及び
図5の左右方向)の敷設数は防護堤のタイプに応じて決められる。
【0114】
(工程S32)
工程S32は、枠体21のセル22、22、…に中詰材23、23、…を充填する工程である。中詰材23、23、…を構成するものは、既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0115】
工程S31及び工程32を経て得られる層27を上下に積層した高さが所定の高さになるまで工程31及び工程32を繰り返すことによって、所定高さの受撃体20を作製することができる。なお、層27、27、…は、盛土構造体10の法面に沿うようにして、斜めに積層する。
【0116】
(その他の工程)
本発明の防護堤は、
図2、
図5に示した防護堤200、300のように、受撃体20を備えた形態とすることができる。この場合、受撃体20が補強材28で包まれた形態とすることもできる。受撃体20を補強材28包むための工程について、
図9を参照しつつ説明する。まず、
図9(a)に示すように、最初の工程S31の前に補強材28の一端28a側を地盤50上に敷き、その上に工程S31及び工程S32を経て層27を形成する。このとき、補強材28の他端28b側は、工程S21及び工程S22を経て得られる構造体の上にくるように伸ばしておく。その後、
図9(b)に示すように、補強材の他端28b側が工程S21及び工程S22を経て得られる構造体の上にくるように伸ばしておきつつ、工程S21、工程S22、工程S31及び工程S32を実行する。そして、最後に、
図9(c)に示すように、補強材28の端28a及び端28bを連結することによって、受撃体20を補強材28で包むことができる。なお、補強材28は1枚で構成されている必要はなく、必要に応じて複数の補強材を連結させて補強材28とすることができる。上述したように、受撃体20を包む一連の補強材に、トラス構造補強材を用いることが好ましい。
【0117】
また、本発明の防護堤は、上述したように、盛土構造体10と受撃体20との間に伝達体を備えた形態とすることもできる。盛土構造体10と受撃体20との間に伝達体を備えた形態とする場合は、盛土構造体10と受撃体20との間に間隔を設け、該間隔に伝達体を構成する材料を敷き詰める。すなわち、工程S21、工程S22、工程S31及び工程S32に並行して、工程S21及び工程S22を経て得られる構造体と工程S31及び工程S32を経て得られる層27との間に伝達体を構成する材料を敷き詰める工程を行うことによって、盛土構造体10と受撃体20との間に伝達体を備えた形態とすることができる。
【0118】
さらに、本発明の防護堤は、上記したように受撃体の受撃面側と天面側とを衝撃吸収マットまたは衝撃吸収シートで覆うことが好ましい。衝撃吸収マットまたは衝撃吸収シートを設置する方法は、衝撃吸収マットまたは衝撃吸収シートが自然に外れないように固定できる方法であれば特に限定されない。例えば、受撃体を作製後、該受撃体の受撃面側と天面側とを衝撃吸収マットまたは衝撃吸収シートで覆い、該衝撃吸収マットまたは該衝撃吸収シートを杭などで受撃体に固定する方法が考えられる。
【実施例】
【0119】
以下に、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0120】
本実施例では、表1に示す12のタイプの防護提を事前に施工し、実験を行った。当該実験の結果、ラーメの定数λ、落石のエネルギーEによる最大変位量δfmax
E、衝撃力Pによる最大変位量δfmax
P、許容変位量δaを求めた。ラーメの定数λを表2に、落石のエネルギーEによる最大変位量δfmax
E、衝撃力Pによる最大変位量δfmax
P、及び許容変位量δaを表3に示す。
【0121】
ラーメの定数λは、質量が異なる重錘を防護堤に衝突させる実験を行い、各実験で得られた数値から算出したラーメの定数を平均して求めたものである。許容変位量δaは、タイプI−A、I−B、I−B−1、I−B−2、I−Cについては150mmとし、タイプII−A、II−B、II−B−1、II−B−2、III−A、III−A−1、III−A−2については300mmとした。最大変位量δfmax
Eは、防護堤に質量が異なる重錘を衝突させ、該重錘のエネルギーEと防護堤の谷側の変位量との関係から求めた近似式である。最大変位量δfmax
Pは、防護堤に質量が異なる重錘を衝突させ、該重錘による衝撃力Pと防護堤の谷側の変位量との関係から求めた近似式である。
【0122】
【表1】
【0123】
表1において、「適用範囲の目安」は、実物実験結果をもとに、下記表3の変位式fmax
Eに代入して決定したものである。
「タイプ名」は、施工した防護堤の名前を示している。
「補強材」は、盛土構造体内に埋設した盛土補強材の名称を示しており、「SR」は、一軸方向補強材のテンサーSRタイプ(三菱樹脂株式会社製)、「SS」は、二軸方向補強材のテンサーSSタイプ(三菱樹脂株式会社製)、「TX」は、トラス構造補強材のテンサートライアックス(三菱樹脂株式会社製)を意味している。また、補強材として2種類記載しているのは、盛土構造体の高さ方向において2種類の補強材が交互になるように埋設したことを意味する。
「前面型枠」は、盛土構造体の谷側に用いた壁面材を構成するめっき鉄線の太さを示しており、「背面型枠」は、盛土構造体の山側に用いた壁面材を構成するめっき鉄線の太さを示している。なお、壁面材には、アルミニウム及び亜鉛の合金めっき鉄線で構成される「AZ型枠」(東京インキ株式会社製)を使用した。
「断面図」の欄には、作製した防護堤の概略断面図に相当する図を記載している。すなわち、タイプI−A、I−B、I−Cは受撃体を備えておらず、タイプII−A、II−Bは受撃体を盛土構造体の山側の面に沿って1列備えており、III−Aは受撃体を盛土構造体の山側の面に沿って2列備えている。なお、受撃体は、テラセルTW(東京インキ株式会社製)に盛土材を充填して構成した。
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
本実施例では、設計条件が以下に示すとおりの防護堤について設計した。
斜面勾配:θ=60°
防護堤設置位置(防護堤の山側)の斜面勾配(
図7参照):θ
2=59°
斜面法尻と防護堤の山側の法面との間の平場の距離:L=0.0m
落下することが想定される石の条件
落石形状:1.500m×1.500m×1.500mの立方体
落石の体積:V=3.375m
3
落石を球状に換算した場合の直径:d=(6×V/π)
1/3
落石の重量:W=87.750kN
落石の単位体積重量:γ
R=26.0kN/m
3
盛土材条件
単位体積重量:γ=17.000kN
内部摩擦角:φ=30°
粘着力:c=0kN/m
3
盛土構造体の法面の勾配
山側 1:0.2
谷側 1:0.3
【0127】
次に上記条件の落石のエネルギーを算出した。すなわち、(5)式に、回転エネルギー係数β=0.1、等価摩擦係数μ=0.15(下記表4参照)、斜面勾配θ=60°、落石重量W=87.750kN、落石の落下高さH=40.0mを代入し、Eを求めた。
E=(1+β)×{1−(μ/tanθ)}×W×H (5)
ここに、(1+β)×{1−(μ/tanθ)}≦1.0
本実施例では、(1+β)×{1−(μ/tanθ)}=1.005>1.0であるため、上述したように、(1+β)×{1−(μ/tanθ)}=1.0として計算し、E=3510kJであった。
【0128】
【表4】
【0129】
次に、上記計算の結果に基づいて、施工する防護堤のタイプを仮定した。すなわち、E=3510kJであったので、上記表1に記載したタイプのうち、III−Aを施工する防護堤のタイプとして仮定した。
【0130】
次に、落石による衝撃力を算定した。すなわち、(6)式に、落石の質量m=8.775t、重力加速度g=9.8m/s
2、ラーメの定数λ=1800を代入し、H’には、(7)式で求めた換算落下高さH’=36.536mを使用した。(7)式には、等価摩擦係数μ=1.5、斜面勾配θ=60°、落石の落下高さH=40.0mを代入した。P=7132.8kNであった。
P=2.108×(m×g)
2/3×λ
2/5×H’
3/5 (6)
H’={1−(μ/tanθ)}×H (7)
【0131】
次に変位の照査を行った。表3に示した式にE=3510kJ、P=7132.8kNを代入し、最大変位量δfmax
E及びδfmax
Pを求めた。δfmax
E=199mm、δfmax
P=181mmであった。すなわち、δfmax
E及びδfmax
Pが許容変位量δa(300mm)以下であった。したがって、防護堤のタイプを仮定しなおす必要はないと判断した。
【0132】
次に、防護堤の必要高さHbの検討を行った。本実施例では、平場距離L=0.0mであるため、下記(8)式より、Hbを求めた。すなわち、下記(8)式に、落石の跳躍高H
1=2.000m、落石の半径H
2=0.931m、余裕高H
3=0.500m(実験により得られた値)、防護堤の山側法面の鉛直面に対する角度θ
β=11.31(法面の勾配が1:0.2であるから、tan
−10.2°より。)、防護堤設置位置(防護堤の山側)の斜面勾配θ
2=59°を代入した。
Hb>(H
1+H
2)×cosθ
β×sec(θ
2−θ
β)+H
3 (8)
【0133】
上記(8)式より、下記式を得た。
Hb>4.769m
防護堤の高さは、通常、0.3mの倍数となる。盛土補強材が0.3m間隔で埋設されるからである。したがって、防護堤の必要高さHbを4.800mとした。
【0134】
次に、防護堤の天端幅の検討を行った。事前に実験用に施工した防護堤(表1に示す6つのタイプの防護提)には、上記のように、単位体積重量γ
E=18.000kN/m
3の盛土材を用いていたが、本実施例で施工する防護堤には、上記のように、単位体積重量γ=17.000kNの盛土材を用いる。したがって、事前に実験用に施工した防護堤の盛土構造体の重量以上となるように、天端幅を調整する。
【0135】
上記のように、実験で使用した盛土材(単位容積重量γE=18.000kN/m
3)を用いた場合の防護堤の盛土構造体の重量W
Eは224.640kNである。したがって、単位体積重量γ=17.000kN/m
3の盛土材を用いて224.640kN以上の重量の盛土構造体を得るには、天端幅を1.553m以上にすればよい。
【0136】
これまでに説明したように、防護堤が山側から衝撃を受けた際に想定される谷側の変位量が許容変位量以下となるように設計することによって、落石などによって衝撃を受けたのちに補修が可能な防護堤を施工することができる。
【0137】
以上、現時点において実践的で好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う防護堤、防護堤の施工方法、及び防護堤の設計方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。