特許第5743611号(P5743611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5743611車両のドアを制御する方法および車両のためのアクセス装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743611
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】車両のドアを制御する方法および車両のためのアクセス装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20150611BHJP
   B60R 25/01 20130101ALI20150611BHJP
【FI】
   E05B49/00 J
   B60R25/01
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-44877(P2011-44877)
(22)【出願日】2011年3月2日
(65)【公開番号】特開2011-179314(P2011-179314A)
(43)【公開日】2011年9月15日
【審査請求日】2013年12月25日
(31)【優先権主張番号】10 2010 010 057.9
(32)【優先日】2010年3月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヘルマン
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−283507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
E05F 15/00−15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(FZ)の少なくとも1つのドア(TFZ)を制御する方法において、
前記車両(FZ)に割り当てられた移動型識別子発信器(IDG)の、該車両(FZ)に対し相対的な動きを、時間に依存して求めるステップと、
今後の時点における前記移動型識別子発信器(IDG)の今後のポジションを、現在の時点における移動型識別子発信器(IDG)のポジションと移動速度と移動方向とに基づき推定するステップと、
前記移動型識別子発信器(IDG)の今後のポジションがまえもって定められた領域(AB3)内に位置していれば、解錠条件が生じていることを検出するステップと、
該解錠条件の発生に基づき、前記少なくとも1つのドア(TFZ)を解錠(ES)および/または開放(OS)するステップ
を有することを特徴とする、
車両の少なくとも1つのドアを制御する方法。
【請求項2】
現在の時点における前記移動型識別子発信器(IDG)の移動方向が前記車両の方向に延びていなければ、解錠拒否条件が生じていることを検出し、該解錠拒否条件が生じているときには、前記少なくとも1つのドア(TFZ)の解錠および/または開放を行わない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記識別子発信器(IDG)が前記まえもって定められた領域(AB3)内に位置しており、かつ該識別子発信器(IDG)の移動速度がまえもって定められた速度値よりも低ければ、前記解錠拒否条件を取り消す、請求項2記載の方法。
【請求項4】
車両(FZ)の少なくとも1つのドア(TFZ)を制御する方法において、
前記車両(FZ)に割り当てられた移動型識別子発信器(IDG)の、該車両(FZ)に対し相対的な動きを、時間に依存して求めるステップと、
今後の時点における前記移動型識別子発信器(IDG)の今後のポジションを、現在の時点における移動型識別子発信器(IDG)のポジションと移動速度と移動方向とに基づき推定するステップと、
前記移動型識別子発信器(IDG)の今後のポジションがまえもって定められた領域(AB3)外に位置していれば、施錠条件が生じていることを検出するステップ
該施錠条件の発生に基づき、前記少なくとも1つのドア(TFZ)を、施錠(VS)および/または閉鎖(SS)するステップ
を有することを特徴とする、
車両の少なくとも1つのドアを制御する方法。
【請求項5】
前記車両(FZ)に前記移動型識別子発信器(IDG)が属しているのかをチェックするために、前記移動型識別子発信器(IDG)の権限確認を車両において実行する、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記移動型識別子発信器(IDG)のポジション測定をまえもって定められたタイムインターバルで行う、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
現在の時点における前記移動型識別子発信器(IDG)の移動速度を、先行の時点における該移動型識別子発信器(IDG)のポジションから現在の時点における該移動型識別子発信器(IDG)のポジションへの、先行の時点から現在の時点までのタイムインターバル内での変化に基づき求め、
現在の移動方向を、先行の時点における前記移動型識別子発信器(IDG)のポジションから現在の時点における該移動型識別子発信器(IDG)のポジションへ向かう方向として求める、
請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
車両(FZ)を解錠する方法において、
前記車両(FZ)に対し相対的な移動型識別子発信器(IDG)のポジションを求めるステップと、
前記車両(FZ)に対し相対的な移動型識別子発信器(IDG)の移動速度を求めるステップと、
前記移動型識別子発信器(IDG)がまえもって定められた領域内に位置しており、かつ該まえもって定められた領域内で前記車両(FZ)に対し相対的な該移動型識別子発信器(IDG)の移動速度がまえもって定められた速度閾値よりも低ければ、前記車両の少なくとも1つのドアを解錠するステップ
を有することを特徴とする、
車両を解錠する方法。
【請求項9】
車両(FZ)のためのアクセス装置(ZA)において、
該車両(FZ)に割り当てられた移動型識別子発信器(IDG)の、該車両(FZ)に対し相対的な動きを時間に依存して捕捉する車両側運動捕捉装置(SE)と、評価装置(STE)が設けられており、
前記評価装置(STE)は、
今後の時点における移動型識別子発信器(IDG)の今後のポジションを、現在の時点における該移動型識別子発信器(IDG)のポジションと移動速度と移動方向とに基づき推定し、
該移動型識別子発信器(IDG)の今後のポジションがまえもって定められた領域(AB3)内に位置していれば、解錠条件が生じていると判定し、
該解錠条件の発生に基づき、少なくとも1つのドアを解錠する信号および/または開放する信号を送出する
ことを特徴とする、
車両のためのアクセス装置。
【請求項10】
前記評価装置(STE)は、現在の時点における移動識別子発信器(IDG)の移動方向が車両の方向に延びていなければ、解錠拒否条件が生じていると判定し、該解錠拒否条件が生じているときには信号を送出しない、請求項9記載のアクセス装置。
【請求項11】
車両(FZ)のためのアクセス装置(ZA)において、
該車両(FZ)に割り当てられた移動型識別子発信器(IDG)の、該車両(FZ)に対し相対的な動きを時間に依存して捕捉する車両側運動捕捉装置(SE)と、評価装置(STE)が設けられており、
前記評価装置(STE)は、
今後の時点における移動型識別子発信器(IDG)の今後のポジションを、現在の時点における該移動型識別子発信器(IDG)のポジションと移動速度と移動方向とに基づき推定し、
該移動型識別子発信器(IDG)の今後のポジションがまえもって定められた領域(AB3)外に位置していれば、施錠条件が生じていると判定し、
該施錠条件の発生に基づき、少なくとも1つのドアを施錠する信号(VS)および/または閉鎖する信号(SS)を送出する
ことを特徴とする、
車両のためのアクセス装置。
【請求項12】
前記運動捕捉装置は車両側に配置された送受信装置(SE)を有しており、該送受信装置(SE)は前記移動型識別子発信器(IDG)の動きを捕捉するために、
まえもって定められた強度(I0)を有する複数の問い合わせ信号(ANS)をまえもって定められたタイムインターバルで送出し、
1つの問い合わせ信号に対応する応答信号(AWS)を前記移動型識別子発信器(IDG)から受信し、該応答信号(AWS)には、前記移動型識別子発信器(IDG)の存在位置において測定された前記問い合わせ信号(ANS)の強度(I)が含まれている、
請求項9から11のいずれか1項記載のアクセス装置。
【請求項13】
前記移動型識別子発信器(IDG)を使って権限確認を実行するために、車両側に送受信装置が設けられている、請求項9から12のいずれか1項記載のアクセス装置。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか1項記載のアクセス装置を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の少なくとも1つのドアを制御する方法および車両のためのアクセス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両たとえば自動車への不法侵入を防止する目的で、車両における最近のアクセス権限確認システムまたはアクセス装置は電子セキュリティシステムを利用している。このようなシステムによればユーザ認証のため、車両における第1の通信装置と、キーやキーホルダのようなユーザの移動型識別子発信器における第2の通信装置との間でデータ通信が行われる。その際、能動的なアクセス装置であれば移動型識別子発信器から制御信号と識別コードが、たとえば相応のボタンを押すなどして移動型識別子発信器のユーザにより車両へ送信され、その後、識別コードが適正であれば、車両が解錠もしくは施錠される。
【0003】
いわゆる受動的なアクセス装置であれば、最初に車両における第1の通信装置から規則的なタイムインターバルで問い合わせ信号が特定の電界強度で送信され、移動型識別子発信器が車両周囲の近傍エリアにあるか否かがチェックされる。移動型識別子発信器が車両に近づいていき、最終的には問い合わせ信号を受信できるようになると、認証プロセスもしくは予備認証プロセスを開始させる目的で、移動型識別子発信器は問い合わせ信号の受信に応答する。この場合、データテレグラムが交換され、それらのテレグラムにおいて最終的に、移動型識別子発信器はその認証コードを車両へ伝達する。認証コードのチェックがうまくいったならば、車両のすぐそばにいるユーザは、ドアノブを操作することにより対応する車両ドアあるいはすべての車両ドアの解錠を行うことができる。この場合にはユーザは機械的または電気的な識別子発信器もしくはキーを能動的に操作する必要がないので、このような形式のアクセス権限確認を受動的なアクセス権限チェックと称し、これに対応するアクセス権限確認システムを受動的な電子アクセス権限確認システムと称する。
【0004】
車両のアクセス権限を得るためのこの種の方法において不利であると判明したのは、ドアノブの操作後に対応する車両ドアまたは車両のすべてのドアを解錠しなければならない点である。ドライバないしはドアノブを操作する人が急いでいるとき、そのような人にとって解錠に時間がかかりすぎる可能性があり、このことは受動的なアクセス権限確認システムの受け入れに悪影響を及ぼしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の課題は、ユーザにとっていっそう快適に車両へアクセスできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によればこの課題は、車両に割り当てられた移動型識別子発信器の、該車両に対し相対的な動きを、時間に依存して求めるステップと、今後の時点における前記移動型識別子発信器の今後のポジションを、現在の時点における移動型識別子発信器のポジションと移動速度と移動方向とに基づき推定するステップと、前記移動型識別子発信器の今後のポジションがまえもって定められた領域内に位置していれば、解錠条件が生じていることを検出するステップと、該解錠条件の発生に基づき、前記少なくとも1つのドアを解錠(ES)および/または開放(OS)するステップを有することにより解決される。従属請求項には有利な実施形態が記載されている。
【0007】
本発明の第1の観点によれば車両たとえば自動車の少なくとも1つのドアを制御する方法には、以下のステップが含まれている。すなわち車両に割り当てられた移動型識別子発信器について車両に対し相対的な動きが、時間に依存して捕捉される。さらに今後の時点における移動型識別子発信器の今後のポジションが、現在の時点における移動型識別子発信器のポジションと移動速度と移動方向とに基づき推定される(外挿される)。そして解錠条件が存在しているか否かが、すなわち移動型識別子発信器の今後のポジションが(車両に対し相対的に)まえもって定められた領域内に位置するか否かが、チェックもしくは判定される。解錠条件が生じていればそれに基づき、少なくとも1つのドアの解錠および/または開放が行われる。換言すれば、解錠条件が生じていることが、少なくとも1つのドアの解錠および/または開放の前提である。このように移動型識別子発信器の今後の動きを予測することによって、たとえば少なくとも1つのドアの解錠および/または開放における応答時間ならびに妨害に対するアクセス装置の脆弱性を改善することができる。殊に移動型識別子発信器の今後の動きの予測によって、車両への迅速なアクセスを求めている操作者もしくはドライバにとって快適性も向上する。
【0008】
本発明の第1の観点による方法の1つの実施形態として考えられるのは、現在の時点での移動型識別子発信器の移動方向が車両の方向に向かって延びていなければ、解錠拒否条件が生じていると判定し、このような解錠拒否条件が生じているときには少なくとも1つのドアの解錠および/または開放が行われないようにすることである。このことは、たとえば操作者もしくはドライバがまえもって定められた領域(アクセスエリア)へ車両とほぼ平行に入り、そのまま実質的に平行に移動していき、車両内部に乗り込む意図がまったくないことを意味する。そうではなくドライバの移動方向が車両方向に延びている場合、ドライバは車両への乗車を意図している。このような構成によって解錠をきめ細かに区別して行うことができ、つまり車両への乗車意志がドライバに本当にあるときのみ解錠され、車両の前を通り過ぎるだけならば解錠しないようにすることができる。
【0009】
つまり本発明の第1の観点による方法の説明に従えば、ドライバは(たとえば場合によっては車両付近の構造的な状況に強いられて)車両もしくはまえもって定められた領域(解錠領域)に近づいていき、その際、まえもって定められた領域内での今後のポジションを予測したときに解錠条件が発生するという状態が起きる可能性がある。しかしながら、識別子発信器の移動方向が車両に向かって延びているのではなく、たとえば車両と平行に延びていることが検出されたならば、解錠拒否条件が生じていると判定され、この条件により少なくとも1つのドアの解錠および/または開放が阻止される。そして次に、識別子発信器がまえもって定められた領域内にすでに存在しており、車両に対し平行にさらに移動していくという状況が起きる可能性がある。この場合、上述のようにドアの解錠/開放は行われない。なぜならば、識別子発信器を携行する人が車両への乗車を意図しているとはいまだ識別できないからである。ただし識別子発信器の移動速度が遅くなり、まえもって定められた領域内でその速度がまえもって定められた速度閾値よりも小さくなるならば、このことは識別子発信器を携行する人が車両への乗車を意図しているときの兆候となる。したがって、識別子発信器がまえもって定められた領域内に存在し、かつその移動速度がめもって定められた速度閾値よりも小さい、という条件のもとでは、解錠拒否条件を取り消すことができ、少なくとも1つのドアの解錠および/または開放を実行することができる。
【0010】
本発明の第2の観点によれば、車両の少なくとも1つのドアを制御する方法において、たとえば車両の施錠を実行することができる。この場合、最初に、車両に割り当てられた移動型識別子発信器の、車両に対し相対的な動きが時間に依存して捕捉される。さらに、今後の時点における移動型識別子発信器の今後のポジションが、現在の時点における移動型識別子発信器のポジションと移動速度と移動方向とに基づき推定される(外挿される)。そして、移動型識別子発信器の今後のポジションが(車両に対し相対的に)まえもって定められた領域の外に位置しているならば、施錠条件が生じていると判定される。たとえば、現在の時点における移動型識別子発信器のポジションがまえもって定められた領域内に位置しており、移動型識別子発信器の今後のポジションがまもって定められた領域外に位置しているならば、施錠条件が生じていると判定される。ついで施錠条件の発生に基づき、少なくとも1つのドアの施錠および/または閉鎖が実行される。
【0011】
第2の観点による方法の1つの有利な実施形態によれば、移動速度がまえもって定められた第2の閾値を超えたときのみ、施錠条件が生じていると判定することができる。換言すればこの方法は、移動速度がまえもって定められた高い値に達したときのみ、移動型識別子発信器を携行するドライバもしくは操作者が実際に車両から離れたいという意志をもっているものとする。このようにすることで、本発明による方法の確実性を高めることができる。
【0012】
本発明による既述の2つの観点の両方に関する有利な実施形態によれば、移動型発信器が車両に属しているのかをチェックする目的で、移動型識別子発信器の権限確認が車両において実行される。このような権限確認はたとえば、移動型識別子発信器の移動を捕捉する前に行うことができ、たとえば移動型識別子発信器が車両に近づき車両と双方向通信が可能となったときに行うことができる。ただし、最初に移動型識別子発信器について権限確認を行い、ついで識別子発信器の移動を捕捉するのか、あるいはその逆であるかは、基本的に重要ではない。前者の利点は、権限確認が首尾よく行われたときだけ識別子発信器の動きを捕捉すればよいことから、それによって場合によっては計算パフォーマンスを節約できるようになることである。
【0013】
さらに別の実施形態によれば、移動型識別子発信器のポジション測定をまえもって定められたタイムインターバルで行うことができ、たとえば250ミリ秒(ms)という規則的なタイムインターバルで行うことができる。さらにこの場合、移動型識別子発信器と車両との距離が小さくなるにつれてタイムインターバルを短くしていくことも考えられる。
【0014】
さらに別の実施形態によれば、現在の時点における移動型識別子発信器の移動速度が、先行の時点における移動型識別子発信器のポジションから現在の時点における移動型識別子発信器のポジションへの変化に基づき、先行の時点から現在の時点へのタイムインターバルで求められる。さらに現在の移動方向を、先行の時点における移動型識別子発信器のポジションから現在の時点における移動型識別子発信器のポジションへの方向として求めることができる。
【0015】
本発明の第3の観点によれば、車両のためのアクセス装置は以下の特徴によって構成されている。この場合、本発明の第3の観点によるこのアクセス装置は、本発明の第1の観点による方法に整合するように構成されている。このアクセス装置は車両側に配置された運動捕捉装置を有しており、この運動捕捉装置は、車両に割り当てられた移動型識別子発信器の、車両に対し相対的な移動を時間に依存して捕捉する。さらにアクセス装置は評価装置も有しており、この評価装置は、今後の時点における移動型識別子発信器の今後のポジションを、現在の時点における移動型識別子発信器のポジションと移動速度と移動方向とに基づき推定する。この場合、評価装置は、移動型識別子発信器の今後のポジションが(車両に対し相対的に)まえもって定められた領域内に位置していれば、解錠条件が生じていると判定し、このように解錠条件が生じていることに基づき、少なくとも1つのドアを解錠する信号および/または開放する信号を送出する。このようにすることで評価装置は早い時点で、移動型識別子発信器を携行するドライバまたは操作者の意図を感じ取ることができ、もしくは予測することができ、したがって短い応答時間で少なくとも1つのドアの解錠もしくは開放を行うことができる。このためやはり車両へのアクセスにあたり快適性が高められる。
【0016】
本発明の1つの実施形態によれば評価装置はさらに、現在の時点における移動方向が車両の方向に延びていないときには解錠拒否条件が生じていると判定し、したがってこのように解錠拒否条件が生じているときにはいかなる信号も発生しない。やはりこれによって、少なくとも1つのドアの解錠および/または開放をきめ細かに区別して行うことができ、つまりドライバが本当に車両に向かって移動しており、車両の前を通り過ぎるだけではないときのみ、解錠を行うことができる。
【0017】
さらに本発明の第4の観点によれば、車両のためのアクセス装置は以下の特徴により構成されている。この場合、第4の観点によるアクセス装置は、実質的に本発明の第2の観点による方法に対応して構成されている。このアクセス装置は車両側に配置された運動捕捉装置を有しており、この運動捕捉装置は、車両に割り当てられた移動型識別子発信器の、車両に対し相対的な動きを時間に依存して捕捉する。さらにこのアクセス装置は評価装置を有しており、この評価装置は、今後の時点における移動型識別子発信器の今後のポジションを、現在の時点における移動型識別子発信器のポジションと移動速度と移動方向とに基づき推定する。この評価装置は、移動型識別子発信器の今後のポジションが(車両に対し相対的に)まえもって定められた領域の外に位置しているならば、施錠条件が生じていると判定し、このような施錠条件の発生に基づき、少なくとも1つのドアを施錠する信号および/または閉鎖する信号を送出する。ここでたとえば、現在の時点では移動型識別子発信器のポジションがまだまえもって定められた領域内に存在しているが、外挿の結果、今後の時点になって初めて移動型識別子発信器の今後のポジションがまえもって定められた領域外に位置することになる場合に、やはり施錠条件が生じていると判定することができる。このようにすることで、車両の施錠についても快適性を実現することができる。
【0018】
本発明のこの第4の観点に関する1つの実施形態によれば、移動型識別子発信器の移動速度がまえもって定められた第2の閾値を越えたときのみ、評価装置は信号を送出することができる。このようにすれば、所定の高い移動速度で車両から離れていくドライバないしは操作者には車両から遠ざかろうとする意志が本当にある、ということを確実に捉えることができる。
【0019】
アクセス装置に係わる2つの観点の両方に関する実施形態によれば、運動捕捉装置は車両側に配置された送受信装置を有している。この送受信装置は動きパターンを捕捉するため、まえもって定められた強度をもつ複数の問い合わせ信号をまえもって定められたタイムインターバルで放射し、1つの問い合わせ信号に対応する移動型識別子発信器からの応答信号を受信する。この応答信号には、移動型識別子発信器の位置で測定された問い合わせ信号の強度に関する情報が含まれている。これに対する代案として、運動捕捉装置に光学センサたとえばカメラの形態をとる光学センサを設けることができ、これによって移動型識別子発信器に対応づけられたドライバもしくは操作者の動きを観察もしくは追従することができる。
【0020】
さらに別の実施形態によれば車両側に配置された送受信装置を、これまで説明した機能に加えて、あるいはそれらの機能とは無関係に、移動型識別子発信器の識別ないしは同定を実行するように構成することができる。
【0021】
本発明の第5の観点によれば、第3の観点または第4の観点に従って構成されたアクセス装置を備えた車両が形成される。
【0022】
なお、既述の方法の有利な実施形態は、対応するアクセス装置に転用可能であるかぎり、アクセス装置の有利な実施形態としてもみなすことができる。
【0023】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の1つの実施形態による車両におけるキーレス電子アクセス権限確認システムもしくはアクセス装置を示す図
図2】移動型識別子発信器が車両に接近していき車両がそれに応じて解錠される様子を示す図である。
図3】やはり移動型識別子発信器が車両に接近していくがそれによっても車両が解錠されない様子を示す図
図4】(ドライバないしは操作者が携行する)移動型識別子発信器の移動方向に依存して解錠および施錠が行われるストラテジを示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
最初に図1を参照すると、この図にはアクセス権限確認システムもしくはアクセス装置ZAが示されており、これは車両ここでは自動車FZにおいて利用されるように設計されている。この場合、アクセス装置ZAは車両側の領域(図1の右側参照)に車両側の制御装置STEを有しており、この制御装置STEにはバッテリBATにより電流が供給される。ここには図示されていないけれども、バッテリBATは車両における他のコンポーネントにも電流を供給する。制御装置STEは車両側に配置された送受信装置SEと接続されており、この送受信装置SEは車両側に配置されたアンテナANFにより無線区間FSSを介して、(あとで詳しく説明する)移動型識別子発信器IDGと通信を行うことができる。さらに制御装置STEはドア錠TS(これはたとえば集中施錠装置の一部分としてもよいし例示としてその代わりを成すものとしてもよい)と接続されており、解錠信号ESまたは開放信号OSによってドア錠TSを制御することができる。ここではドア錠TSは車両のドアTFZの1つに割り当てられており、受信した信号ESまたはOSに従ってドアTFZを解錠したり、あるいは開放も行ったりすることができる。ドアを開放するためにアクセス装置ZAは操作装置もしくはアクチュエータAKTを有しており、これはたとえばばね部材(ドアが閉鎖状態のときにはバイアスないしはプリロードのかかった状態にあり、解錠されるとドアが開く)またはモータたとえば電動モータを有しており、このモータによってドアが自動的に開放される。
【0026】
さらに制御装置STEはライト制御装置LSEと接続されている。ライト制御装置LSEはライト制御信号LSSを受け取ると、照明装置BLここではたとえばウィンカやパッシングランプといった照明装置をアクティブにしたり非アクティブにしたりすることができる。
【0027】
既述のとおり車両FZは無線区間FSSを介して、識別子発信器側の領域にある移動型識別子発信器(図1の左側参照)IDGと通信を行う。ここで前提とするのは、移動型識別子発信器IDGが近傍エリアANB内に位置することである。近傍エリアANB内では、車両側に配置されたアンテナANFから放射された信号(問い合わせ信号)はまだ十分な電界強度を有しており、移動型識別子発信器IDGはその信号をきちんと受信することができる。車両側に配置されたアンテナANFからの信号を受信するために、移動型識別子発信器IDGは識別子発信器側のアンテナANIを有している。このアンテナANIは識別子発信器側の送受信装置SEIと接続されており、これにより受信した信号を処理したり、新たな信号を発生させ最終的にアンテナANIを介して放射させたりすることができる。識別子発信器側の送受信装置SEIには識別子発信器側の制御装置STIが接続されている。この制御装置STIは車両FZによる権限確認プロセスも実行するし、強度測定もしくは移動型識別子発信器IDGから車両FZまでの距離測定(つまりは運動測定)も実行する。これについてはあとで詳しく説明する。さらに図2を参照しても説明するように、移動型識別子発信器IDGは図1において3つの異なるポジションPOS1,POS2,POS3で描かれている。
【0028】
第1のポジションPOS1において移動型識別子発信器IDGはすでに近傍エリアANB内に位置しており、つまり第1のゾーンAB1内に位置しており、無線区間FSSを介して車両FZと通信を行う。移動型識別子発信器IDGがそのユーザもしくはドライバとともに矢印P1に沿って車両FZの方に移動すると、移動型識別子発信器IDGは第2のポジションPOS2に入る。正確に述べると、移動型識別子発信器IDGはポジションPOS2のところで第2のゾーンAB2内に位置しており(このゾーンは破線で表されており、それらの破線の間のポジションPOS2に移動型識別子発信器IDGが位置している)、このゾーンは車両から所定の距離を有している。さらに移動型識別子発信器IDGが矢印P2に沿って車両FZの方に移動すると、移動型識別子発信器IDGは第3のゾーンAB3に入る。第3のゾーンAB3は車両FZのすぐ近くに存在する。
【0029】
さて、次に図2を参照すると、この図には車両ドアTFZの解錠もしくは開放のためのアクセス装置の動作シーケンスが描かれている(部分的には図1も参照する)。たとえば自動車FZのような車両が停止状態または駐車状態にあるとき、第1のステップによれば規則的なインターバルもしくは特定の時点において問い合わせ信号ANSが所定の電界強度I0で送信される。この場合、識別子発信器IDGのような移動型識別子発信器は、それが図1に示した近傍エリアAB内にあるならば、問い合わせ信号をきちんと捉えることができる。ただし、近傍エリアANBの近くに存在しているがまだ近傍エリアANB内には位置していない移動型識別子発信器IDGが、すでに車両FZと通信できるようにすることも考えられる。たとえば、図2に示されている領域つまり近傍ゾーンAB0内に存在する移動型識別子発信器IDGがすでに車両と通信を行うことができる。あとでさらに詳しく説明するように、問い合わせ信号ANSを受け取った移動型識別子発信器IDGは、それが位置する場所で測定された強度とともに応答信号を車両方向へ送り戻す。それにより制御装置もしくは評価装置STEは、識別子発信器IDGのポジションを求めることができ、その結果、時間とともに変化するその動きも求めることができる。
【0030】
時点(0)でこのポジションP0からスタートして、移動型識別子発信器IDGは移動曲線BKに従い車両に向かって移動し、第2のステップで近傍エリアANBの第1のゾーンAB1に入る。ここで(まえもって定められたタイムインターバルの経過後である)時点(1)において、(図1のポジションPOS1に相応する)識別子発信器IDGのポジションP1の測定が再び行われる。この場合、ポジションP1とポジションP0との間で辿った区間に基づき、ポジションP1とポジションP0における両方の測定間のタイムインターバルと比較して、ポジションP0における識別子発信器IDGの瞬時速度を求めることができる。同様に、ポジションP1における移動型識別子発信器IDGの移動方向も、ポジションP1へ向かう方向で両方のポジションP0とP1を通る直線に基づき求めることができる。時点(1)における移動型識別子発信器IDGの移動速度と移動方向とに基づき、次のポジション測定時点において見込まれる移動型識別子発信器IDGの予測ポジションを予測することができる(このポジションは図2において参照符号GP1の付された菱形で表されている)。図2からわかるように、時点1において予測されたポジション(1)はアクセスエリアAB3には入っていないので、時点(1)では車両の制御装置または評価装置STEに対する解錠条件がまだ生じていない。
【0031】
ついで第3のステップで移動型識別子発信器IDGがさらに車両の方向に移動すると、発信器IDGは近傍エリアANBにおける第2のゾーンAB2に入ることになる。第2のゾーンAB2においても(まえもって定められたタイムインターバルの経過後)車両の側で、もしくは車両の評価装置STEによって、再びポジション測定が行われ、その結果、時点(2)において図2に示されているポジションP2(図1のポジションPO2を参照)が求められ、やはりポジションP1との関係に基づき識別子発信器IDGの相応の瞬時移動速度と移動方向が求められる。これにより時点(2)において(参照符号GP2の付された菱形で表された)ポジションが予測され、このポジションは、識別子発信器IDGがポジションP1からポジションP2へ向かう方向の直線に沿った移動方向を辿ったとしたならば、時点(2)から見て将来となる次の測定点で予測されるべきものである。図2に示されているように、時点(2)で予測されたこのポジションGP2はアクセスエリアAB3内に位置している。このような(今後の)予測ポジションは、すでに言及したように評価装置STEによって求められ、時点(2)もしくはポジションP2において、予測ポジションGP2が時点(2)においてアクセスエリア内に位置することが検出され、つまりは解錠条件が生じていることが検出される。そしてこのように解錠条件が生じていることに基づき評価装置STEは解錠信号ESを、あるいは開放信号OSも、ドア錠TSへ送出することができ、これによってドアが解錠もしくは開放される。換言すれば、識別子発信器IDG自体がすでにアクセスエリアAB3内に位置する状態でなくても、次のポジション測定点になったときにその測定点でその状態が予期されるだけで、車両もしくはドアの解錠を実行することができるので、このような方法を用いることによって車両の解錠にあたり適時のリアクションが与えられることになる。
【0032】
ここでは完全を期するためにさらに述べておくにすぎないのであるが、第3の時点(3)においてもポジションP3のところで、この時点(3)で予測されたポジションもやはりアクセスエリア内にある、ということが検出されることになる。
【0033】
車両の解錠が行われたとき、それに関連してたとえば評価装置STEからライト制御信号LSSを送出させることができ、これによってドライバはたとえば照明装置BLによる短期間の点滅などによって、車両の解錠を認識できるようになる。
【0034】
さて、次に図3を参照すると、この図には、移動型識別子発信器IDGが車両FZへ接近する様子に関して2つめのパターンが描かれている。見やすくする目的で、図3にはアクセスエリアもしくは第3のゾーンAB3以外、図2に示したような他のゾーンは描かれてない。図2の場合には、移動型識別子発信器IDGが速い速度で車両に近づいていく様子を描いており、つまり移動型識別子発信器IDGは個々のポジション間もしくは測定点間でそのつど大きな距離を辿っていたのに対し、図3には移動型識別子発信器IDGが少なくとも第1の測定点から第4の測定点まではゆっくりとした速度で車両に近づいていく事例が描かれている。つまりこの場合、移動型識別子発信器IDGは、時点(0)においてポジションP0から出発して僅かな速度で車両FZの方向へ移動しており、したがって時点(1)における次の測定点P1までの距離は僅かである。図2および図3においてポジション測定のタイムインターバルは等しい長さであることを前提とすれば、移動型識別子発信器IDGの移動速度(これは速度矢印の長さで表される)に関して図2よりも図3の方が僅かな値となる。したがって、時点(1)で予測されたものであり次のポジション測定で予期することのできる移動型識別子発信器IDGのポジションGP1は、ポジションP1からほんの少ししか遠ざからないことになる。時点(2)で予測された移動型識別子発信器IDGのポジションGP2および時点(3)で予測された移動型識別子発信器IDGのポジションGP3についても、同様の状態となる。予測されたポジションGP1,GP2,GP3のいずれも、識別子発信器IDGの移動速度が僅かであることからアクセスエリアAB3内には位置しておらず、このため車両の評価装置STEはいかなる時点でも解錠条件を検出することはできず、したがって解錠信号もしくは解法信号をドア錠TSへ送信することもできない。
【0035】
既述のように、移動型識別子発信器IDGのポジション測定は所定のタイムインターバルで行うことができ、たとえば250msの時間間隔といったような規則的な時間間隔で実行することができる。この場合、送受信装置SEもしくはアンテナANFを介して問い合わせ信号ANSがまえもって定められた電界強度I0で放射される。まえもって定められた電界強度で問い合わせ信号ANSを放射する意味および目的は、たとえば近傍エリアANB内に位置する移動型識別子発信器IDGが問い合わせ信号の電界強度もしくは強さを発信器IDGの現在位置で測定し、たとえばディジタル化された強度値またはRSSI(received signal strength indication)値を車両に送り戻すためである。アンテナANFおよび車両側に配置された送受信装置SEを介して受信したRSSI値は最終的に制御装置STEへ転送され、これによって制御装置STEは評価装置の機能として、問い合わせ信号ANSを放射した既知の電界強度I0と、識別子発信器IDGが現在位置で測定した問い合わせ信号ANSの強度値Iとに基づき、識別子発信器IDGから車両までの距離を求める。既述のように、この測定は約250msのタイムインターバルで実行することができるので、時間の経過に伴う強度変化の捕捉に基づき移動型識別子発信器IDGの動きを検出することができる。ここでは少し触れておくにすぎないが、ポジション測定もしくは位置特定を別のやりかたで行うこともでき、たとえばカメラを用いた光学経路によって行うこともでき、この場合、カメラは識別子発信器の動きをそれを携行する人ともに捕捉する。さらに識別子発信器自体がポジションならびに車両に対し相対的な自身の移動速度を、(まえもって定められた信号レベルをもつ)車両側の複数の問い合わせ信号に基づき求めることができ、そのポジションが応答信号として車両に送り戻される。
【0036】
図1では見やすくするため1つのアンテナANFだけしか示さなかったが、車両のそれぞれ異なる場所に2つまたはそれよりも多くのアンテナを設けることも考えられる。このようにする目的は、個々の問い合わせ信号の送信とそれらに対応する応答信号の受信により、識別子発信器IDGにおいていっそう詳細な位置特定もしくは局所分解能の改善された位置特定を行えるようにすることである。少なくとも2つのアンテナを車両側に設けることによって、たとえば移動型識別子発信器IDGの位置をデカルト座標x,yで表すことができる。
【0037】
これに関連して、サンプリング時点もしくは時点tにおけるx方向の移動型識別子発信器IDGの速度を、
vx(t) = (x(t) - x(t-dt)) / dt
と表すことができる。
【0038】
同様に、サンプリング時点もしくは時点tにおけるy方向の移動型識別子発信器IDGの速度を、
vy(t) = (y(t) - y(t-dt)) / dt
と表すことができる。
【0039】
したがって次のサンプリング時点においてx軸に関して予測されるポジションは、
x(t + 1) = x(t) + vx(t) * dt
となる。
【0040】
同様に、次のサンプリング時点においてy軸に関して予測されるポジションは、
y(t + 1) = y(t) + vy(t) * dt
となる。
【0041】
図4を参照すると、この図にも移動型識別子発信器の移動方向に依存した解錠および施錠のストラテジが描かれている。この場合、ID2として示されている識別子発信器は以下のケースを表している。すなわち、たとえば図2に示した場合と同様、識別子発信器ID2が車両FZに向かう方向で車両FZに近づいていき、次の時点について予測されたポジションがすでにアクセスエリアAB3内にあるならば、図2の場合のように識別子発信器がアクセスエリアAB3に入る前に車両ドアの解錠が行われるケースを表している。
【0042】
識別子発信器ID1は以下のケースを表している。すなわち、識別子発信器ID1はアクセスエリアAB3の外側からアクセスエリアの方向に向かって移動しているが(図4の場合も直線で表されている)、この発信器の移動方向は車両FZに向かう方向ではなく、車両FZと実質的に平行に延びている。このケースの場合も前提とすることができるのは、識別子発信器ID1がアクセスエリアAB3内に移動することであるが、この場合、その移動方向は車両から離れる方向で示されている。車両FZ内の評価装置STEは識別子発信器ID1の動きを複数の測定点を介して追従し、この評価装置STEは、識別子発信器ID1がその移動方向ゆえにアクセスエリアAB3に入っていくことになり(そして実際に入るが)、識別子発信器ID1は識別子発信器ID2とは異なり車両の方向には移動しない、ということを検出する。それゆえ、評価装置STEは検出された移動方向(車両と平行な方向または車両から離れる方向)に基づき、解錠拒否条件が生じていることを確認し、したがって解錠信号もしくは開放信号がドア錠TSへ本来のように送出されてしまうのを回避することになる。本発明による方法をこのように構成することによって、ドライバもしくは操作者が車両に入ろうと意図することなく単に車両の前を通り過ぎただけなのに、車両が意図とは異なり解錠されてしまうことが回避されるようになる。したがってこの構成によりアクセスシステムの安全性が高められる。
【0043】
さらに識別子発信器ID3についても言及しておく。ここで前提とするのは、ドライバもしくは操作者は識別子発信器ID3とともに車両から離れる方向で移動したいことである。この場合、識別子発信器ID3は(図4に示されているように)最初はアクセスエリアAB3に存在しており、このアクセスエリアAB3から移動して出ていく。アクセスエリアAB3に入ることを予測できる識別子発信器ID2と同じように、識別子発信器ID3の場合も目下のポジションと目下の移動速度と目下の移動方向とに基づき、次のポジション測定点においてはアクセスエリアAB3から出ていくことを予測することができる。識別子発信器ID3に関して予測されたこのようなポジションポイントがアクセスエリア外にあるならば、車両の評価装置STEは対応する施錠信号もしくは閉鎖信号をドア錠TSへ送信する。つまりここでも、識別子発信器ID3が車両から離れる方向で速く移動すればするほど、予測ポジションは時点(X)で測定されたポジションからいっそう遠くに隔たっていき、予測ポジションはいっそう早くアクセスエリアAB3の外側に位置することになり、したがってすでに早期の時点で車両の施錠を行うことができる。
【0044】
つまり本発明によるアクセス装置が基礎とする着想は、識別子発信器の目下のポジションも目下の速度および移動方向も、次のポジション測定において得られるであろうポジションを予測するためのベースとなることである。このようにすればたとえば、識別子発信器が車両とほぼ平行に移動しているとき、あるいは車両から離れる方向で移動しているときに(識別子発信器ID1について示したケースを参照)、車両FZが解錠されてしまうのを回避することができる。とはいうものの、操作者が車両ドアの横に立ったままであるときには、解錠を許可した状態にすることもできる。操作者が車両へ向かってまっすぐに移動しているときには(識別子発信器ID2について示したケースを参照)、車両はいずれにせよ解錠される。また、ユーザがまだ解錠ゾーン内つまりアクセスエリア内に位置していないが、速度を増して車両に向かって移動しているときも(図2に関する上述の説明を参照)、解錠を行うことができる。同様に、ドライバが識別子発信器とともにまだアクセスエリア内に存在しているが(識別子発信器ID3について示したケースを参照)、速度を増して車両から遠ざかっている場合も、車両の施錠を行わせることができる。したがってこれまで述べてきた方法を用いることで、アクセス装置のリアクション時間を改善することができる。
【0045】
識別子発信器ID1に関して示した事例の場合、識別子発信器は車両に向かってまっすぐに移動しているのではなく、たとえば車両と平行に移動しているが、殊にこの事例について補足しておくと、車両解錠のために以下の方法を効果的に用いることができる。すなわち、車両に対し相対的な移動型識別子発信器のポジションが(たとえば図2および図3を参照しながら説明したようにまえもって定められたタイムインターバルで)求められる。さらに車両に対し相対的な移動型識別子発信器の移動速度が(たとえば上述のように1つのタイムインターバル内におけるポジション変化に基づき)求められる。ついで、移動型識別子発信器が(アクセスエリアAB3のような)まえもって定められた領域内に存在しており、まえもって定められたこの領域内において車両に対し相対的な移動型識別子発信器の移動速度がまえもって決められた速度閾値よりも低ければ、車両における少なくとも1つのドアの解錠が行われる。つまりこの場合、車両の評価装置は、識別子発信器が車両に向かってまっすぐに移動してはいないけれども、所定の低い速度であることから、識別子発信器を携行するドライバは車両へのアクセスを得たいと望んでいる確率が高い、と識別する。このようにすれば、ドライバに対する快適性がさらに高められる。
【符号の説明】
【0046】
FZ 車両
ZA アクセス装置
SE 送受信装置
STE 制御装置
TFZ ドア
TS ドア錠
AKT アクチュエータ
BAT バッテリ
LSE ライト制御装置
BL 照明装置
IDG 移動型識別子発信器
ANB 近傍領域
ANF,ANI アンテナ
FSS 無線区間
図1
図2
図3
図4