【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、光硬化型インクジェット印刷用組成物として、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物とを特定質量比率で含有し、かつ、その表面張力を27〜33mN/m、粘度を10〜20mPa・sとすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物、レベリング剤及び光重合開始剤を含有する液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物であって、表面張力が27〜33mN/m、粘度が10〜20mPa・sであり、上記1,6−ヘキサンジオールジアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物との含有比が、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物=61/39〜72/28(質量比)であることを特徴とする液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物に関する。
【0011】
また、本発明の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物において、上記レベリング剤は、シリコーン系界面活性剤であり、該シリコーン系界面活性剤の含有量が0.05〜1質量%であることが好ましい。
以下、本発明の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物についてさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物(以下、本発明のインクジェット印刷用組成物ともいう)は、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物とを含有し、これらの化合物の含有比が、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物=61/39〜72/28である。上記1,6−ヘキサンジオールジアクリレートと、ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物との含有比が上記範囲にあることで、本発明のインクジェット印刷用組成物を用いて形成した樹脂レンズを、樹脂レンズとして機能するために要求される屈折率(1.49以上)とすることができる。また、形成する樹脂レンズが、シワや微細凹凸のない均一な曲面を備えた半球形状で、かつ、形状保持性(耐性)に優れたものとすることができる。
上記ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物付加物が上記の割合より高くなると粘度が高くなる傾向があり、逆に低くなると粘度が低くなる傾向があり好ましくない。
なお、本明細書において、「半球」とは、真球を半分に分割した形状に限定されず、樹脂レンズとして充分に機能し得る凸状の突起を意味し、好ましくは後述するアクリル板に対する接触角度を充足し、滑らかな曲面を備えた凸状の突起である。
【0013】
なお、本発明のインクジェット印刷用組成物は、性能が低下しない範囲で、上記1,6−ヘキサンジオールジアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物以外の他の光重合性化合物を併用することも可能である。この様な他の光重合性化合物としては、エチレン性二重結合含有化合物であれば、モノマー、プレポリマー、オリゴマー等、特に制限なく使用できる。
【0014】
上記他の光重合性化合物としては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチルー1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリ(メタ)アクリレート、プロポキシレートグリセリルトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及び、これらがエチレンオキサイド(EO)又はプロピレンオキサイド(PO)で変性されたもの(但し、ペンタエリスリトールテトラアクリレートのエチレンオキサイド4モル不可物を除く)等が挙げられる。これら他の光重合性化合物は、一種又は必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0015】
本発明のインクジェット印刷用組成物は、レべリング剤を含有する。
上記レベリング剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が使用できる。
【0016】
レベリング剤としては、なかでもシリコーン系界面活性剤が好適である。
上記レベリング剤の含有量は、0.05〜1質量%であるのが好ましい。レベリング剤の含有量が上記範囲外では、所定の表面張力が得られず、本発明のインクジェット印刷用組成物を、基板を走行させて印字した場合に半球成型性が低下することがある。
【0017】
本発明インクジェット印刷用組成物は、光重合開始剤を含有する。
上記光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、トリアジン系光重合開始剤等が挙げられる。
【0018】
上記光重合開始剤の含有量としては、5〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜13質量%である。上記光重合開始剤の含有量が5質量%未満では、本発明のインクジェット印刷用組成物の光硬化性が充分でない場合がある。一方、上記光重合開始剤の含有量が20質量%を超えると、効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。
【0019】
更に、本発明のインクジェット印刷用組成物には、必要に応じて各種の添加剤を添加することができる。上記添加剤としては、具体的には、光安定化剤、重合禁止剤、増感剤等が挙げられる。
【0020】
上述した組成からなる本発明のインクジェット印刷用組成物は、表面張力が27〜33mN/mである。上記表面張力が27mN/m未満であると、半球形状の樹脂レンズを形成することができず、一方、33mN/mを超えると、形成する樹脂レンズが球体に近くなってしまう。
また、本発明のインクジェット印刷用組成物は、粘度が10〜20mPa・sである。粘度が上記範囲外であると、インクジェット記録装置を用いた印刷時の吐出適性が低下する。なお、上記粘度は、インクジェット記録装置による吐出時における本発明のインクジェット印刷用組成物の粘度を意味する。
本発明のインクジェット印刷用組成物の表面張力及び粘度は、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物の含有比を充足しつつ、各構成材料を適宜調整して達成することが好ましい。
なお、上記表面張力は、インクジェット記録装置による吐出時(通常、25℃)における値であり、例えば、レスカ社製の動的濡れ性試験機WET−6000を用いて測定された値である。
また、上記粘度は、インクジェット記録装置による吐出時(通常、25℃)における値であり、例えば、東京計器(株)製ELD型粘度計を用い、測定回転数100rpmにて測定された値である。
【0021】
また、本発明のインクジェット印刷用組成物は、アクリル板(PMMA)に印字した時の印字物のアクリル板に対する接触角度が35〜44°であることが好ましい。上記接触角度が上記範囲以外となると、印字物の半球成型性が低下し、本発明のインクジェット印刷用組成物用いた樹脂レンズの形成が困難となることがある。
【0022】
本発明の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物を調製する方法としては特に限定されず、上述した材料の所定量を全て添加して攪拌機等で混合して、表面張力が27〜33mN/m、粘度が10〜20mPa・sとなるように調整する方法が挙げられる。
このような方法で得られた本発明のインクジェット印刷用組成物は、アクリル板(PMMA)に印字した時の接触角度が35〜44°となり、コンベアにのせてUV硬化させた際の半球成型性に優れるものとなり、且つ得られた硬化物の耐性が優れるものとなる。
【0023】
本発明のインクジェット印刷用組成物を用いて、液晶表示装置の樹脂レンズを形成する方法としては、例えば、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置に、本発明のインクジェット印刷用組成物を充填し、アクリル板(PMMA)上へ連続して印字し半球形状の印字物を形成し、該印字物をUV照射にて硬化させることにより得ることができる。
【0024】
また、本発明のインクジェット印刷用組成物を用いて形成した樹脂レンズは、屈折率が1.49以上で、樹脂レンズの耐性が優れたものとなる。