特許第5743636号(P5743636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サカタインクス株式会社の特許一覧

特許5743636液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743636
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20150611BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20150611BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   C09D11/30
   G02B1/04
   G02B3/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-68524(P2011-68524)
(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公開番号】特開2012-201823(P2012-201823A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 達郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 真也
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−343449(JP,A)
【文献】 特開2005−350559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/30
G02B 1/00
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物、レベリング剤及び光重合開始剤を含有する液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物であって、
表面張力が27〜33mN/m、粘度が10〜20mPa・sであり、
前記1,6−ヘキサンジオールジアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物との含有比が、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物=61/39〜72/28(質量比)である
ことを特徴とする液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物。
【請求項2】
レベリング剤は、シリコーン系界面活性剤であり、前記シリコーン系界面活性剤の含有量が0.05〜1質量%である請求項1記載の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の樹脂レンズに用いる光硬化型インクジェット印刷用組成物に関し、特に基板を走行させて印字しても半球成型性に優れ、且つ、得られた半球成型物の耐性、屈折率に優れる液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD装置)は、パソコン、携帯電話、ゲーム機等の製品に利用されており、なかでも半透過型LCD装置は、太陽光や室内光を反射して表示する能力とバックライト光を利用して夜間や暗い場所で表示する能力を持っている。この機能は、LCDの内部の反射層あるいは反射板に開口部を設け、その開口部からバックライト光を通過させ、さらに反射層あるいは反射板にて外光を反射させることにより行われている。
しかし、周知のようにバックライト光のうち反射層あるいは反射板の開口部を抜ける光はわずかであり、ほとんどのバックライト光は、反射層あるいは反射板により遮られ視認性が不充分であった。
【0003】
半透過型LCD装置において、反射機能を向上させて屋外での視認性を向上させるためには開口部の面積を小さくして反射層の面積を大きくする必要がある。また逆に暗所での視認性を向上させるためには、開口部の面積を広げてバックライト光が多く通るようにする必要がある。
しかし、反射層の面積と反射層の開口部の面積とは、トレードオフの関係にあり、屋外での視認性の向上と、暗所での視認性の向上という性能を両立させることは困難であった。
このように、従来の半透過型LCD装置では大半のバックライト光が反射層あるいは反射板にて遮られて使われていないことになっていた。
【0004】
反射層あるいは反射板により遮られていたバックライト光を半透過型液晶表示装置の開口部に効率よく導く方法として、例えば、配光パターンの転写パターンを金型に形成し、遮光板を射出成型する際に導光板の表面へ配光パターンを転写して配光パターン(レンズ)を形成する方法、導光板に有機蛍光誘導体をスクリーン印刷により塗布し配光パターン(レンズ)を形成する方法(例えば、特許文献1)が知られている。
【0005】
しかしながら、上記配光パターンは、一般的な解析ツールを利用して設計することができるが、実際の製品とした場合には金型の加工精度や製造誤差等の要因により、必ずしも設計通りの配光パターンを得られるわけでなかった。このため、いくつかの配光パターンを実際に試作・評価して、評価結果を設計へフィードバックすることにより製品を開発しており、複数の金型やマスクが必要となり、時間がかかり、コストも高くなる問題を有するものであった。
【0006】
近年、半透過型液晶表示装置の導光板上に光硬化型組成物を用いてインクジェット方式により、樹脂レンズを形成する製造方法、製造装置が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
ところが、従来、インクジェット方式により、半透過型液晶表示装置用の樹脂レンズを形成する製造方法、製造装置は提案されているが、これに用いる光硬化型インクジェット印刷用組成物については、吐出性、基板を走行させて印字した印字物を硬化させて得られた樹脂レンズの半球成型性、得られた樹脂レンズの形状保持性(得られた半球成型物の耐性)及び屈折率を満足させるものが得られていなかったのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−303017号公報
【特許文献2】特開2004−240294号公報
【特許文献3】特開2007−024790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、インクジェット方式により、半透過型液晶表示装置用の樹脂レンズを形成する際の光硬化型インクジェット印刷用組成物の吐出性、基板を走行させて印字した印字物を硬化させて得られた樹脂レンズの半球成型性、並びに、得られた樹脂レンズの耐性及び屈折率に優れる液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、光硬化型インクジェット印刷用組成物として、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物とを特定質量比率で含有し、かつ、その表面張力を27〜33mN/m、粘度を10〜20mPa・sとすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物、レベリング剤及び光重合開始剤を含有する液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物であって、表面張力が27〜33mN/m、粘度が10〜20mPa・sであり、上記1,6−ヘキサンジオールジアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物との含有比が、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物=61/39〜72/28(質量比)であることを特徴とする液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物に関する。
【0011】
また、本発明の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物において、上記レベリング剤は、シリコーン系界面活性剤であり、該シリコーン系界面活性剤の含有量が0.05〜1質量%であることが好ましい。
以下、本発明の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物についてさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物(以下、本発明のインクジェット印刷用組成物ともいう)は、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物とを含有し、これらの化合物の含有比が、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物=61/39〜72/28である。上記1,6−ヘキサンジオールジアクリレートと、ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物との含有比が上記範囲にあることで、本発明のインクジェット印刷用組成物を用いて形成した樹脂レンズを、樹脂レンズとして機能するために要求される屈折率(1.49以上)とすることができる。また、形成する樹脂レンズが、シワや微細凹凸のない均一な曲面を備えた半球形状で、かつ、形状保持性(耐性)に優れたものとすることができる。
上記ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物付加物が上記の割合より高くなると粘度が高くなる傾向があり、逆に低くなると粘度が低くなる傾向があり好ましくない。
なお、本明細書において、「半球」とは、真球を半分に分割した形状に限定されず、樹脂レンズとして充分に機能し得る凸状の突起を意味し、好ましくは後述するアクリル板に対する接触角度を充足し、滑らかな曲面を備えた凸状の突起である。
【0013】
なお、本発明のインクジェット印刷用組成物は、性能が低下しない範囲で、上記1,6−ヘキサンジオールジアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物以外の他の光重合性化合物を併用することも可能である。この様な他の光重合性化合物としては、エチレン性二重結合含有化合物であれば、モノマー、プレポリマー、オリゴマー等、特に制限なく使用できる。
【0014】
上記他の光重合性化合物としては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチルー1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリ(メタ)アクリレート、プロポキシレートグリセリルトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及び、これらがエチレンオキサイド(EO)又はプロピレンオキサイド(PO)で変性されたもの(但し、ペンタエリスリトールテトラアクリレートのエチレンオキサイド4モル不可物を除く)等が挙げられる。これら他の光重合性化合物は、一種又は必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0015】
本発明のインクジェット印刷用組成物は、レべリング剤を含有する。
上記レベリング剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が使用できる。
【0016】
レベリング剤としては、なかでもシリコーン系界面活性剤が好適である。
上記レベリング剤の含有量は、0.05〜1質量%であるのが好ましい。レベリング剤の含有量が上記範囲外では、所定の表面張力が得られず、本発明のインクジェット印刷用組成物を、基板を走行させて印字した場合に半球成型性が低下することがある。
【0017】
本発明インクジェット印刷用組成物は、光重合開始剤を含有する。
上記光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、トリアジン系光重合開始剤等が挙げられる。
【0018】
上記光重合開始剤の含有量としては、5〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜13質量%である。上記光重合開始剤の含有量が5質量%未満では、本発明のインクジェット印刷用組成物の光硬化性が充分でない場合がある。一方、上記光重合開始剤の含有量が20質量%を超えると、効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。
【0019】
更に、本発明のインクジェット印刷用組成物には、必要に応じて各種の添加剤を添加することができる。上記添加剤としては、具体的には、光安定化剤、重合禁止剤、増感剤等が挙げられる。
【0020】
上述した組成からなる本発明のインクジェット印刷用組成物は、表面張力が27〜33mN/mである。上記表面張力が27mN/m未満であると、半球形状の樹脂レンズを形成することができず、一方、33mN/mを超えると、形成する樹脂レンズが球体に近くなってしまう。
また、本発明のインクジェット印刷用組成物は、粘度が10〜20mPa・sである。粘度が上記範囲外であると、インクジェット記録装置を用いた印刷時の吐出適性が低下する。なお、上記粘度は、インクジェット記録装置による吐出時における本発明のインクジェット印刷用組成物の粘度を意味する。
本発明のインクジェット印刷用組成物の表面張力及び粘度は、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物の含有比を充足しつつ、各構成材料を適宜調整して達成することが好ましい。
なお、上記表面張力は、インクジェット記録装置による吐出時(通常、25℃)における値であり、例えば、レスカ社製の動的濡れ性試験機WET−6000を用いて測定された値である。
また、上記粘度は、インクジェット記録装置による吐出時(通常、25℃)における値であり、例えば、東京計器(株)製ELD型粘度計を用い、測定回転数100rpmにて測定された値である。
【0021】
また、本発明のインクジェット印刷用組成物は、アクリル板(PMMA)に印字した時の印字物のアクリル板に対する接触角度が35〜44°であることが好ましい。上記接触角度が上記範囲以外となると、印字物の半球成型性が低下し、本発明のインクジェット印刷用組成物用いた樹脂レンズの形成が困難となることがある。
【0022】
本発明の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物を調製する方法としては特に限定されず、上述した材料の所定量を全て添加して攪拌機等で混合して、表面張力が27〜33mN/m、粘度が10〜20mPa・sとなるように調整する方法が挙げられる。
このような方法で得られた本発明のインクジェット印刷用組成物は、アクリル板(PMMA)に印字した時の接触角度が35〜44°となり、コンベアにのせてUV硬化させた際の半球成型性に優れるものとなり、且つ得られた硬化物の耐性が優れるものとなる。
【0023】
本発明のインクジェット印刷用組成物を用いて、液晶表示装置の樹脂レンズを形成する方法としては、例えば、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置に、本発明のインクジェット印刷用組成物を充填し、アクリル板(PMMA)上へ連続して印字し半球形状の印字物を形成し、該印字物をUV照射にて硬化させることにより得ることができる。
【0024】
また、本発明のインクジェット印刷用組成物を用いて形成した樹脂レンズは、屈折率が1.49以上で、樹脂レンズの耐性が優れたものとなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物は、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物を特定質量比率で含有し、更に、表面張力及び粘度が特定の範囲にあるため、インクジェット方式により、半透過型液晶表示装置用の樹脂レンズを形成する際の吐出性、基板を走行させて印字した印字物を硬化させて得られた樹脂レンズの半球成型性、並びに、得られた樹脂レンズの形状保持性(得られた半球成型物の耐性)及び屈折率に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0027】
<液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物の調製>
表1の配合組成となるように配合し、撹拌混合して、実施例1〜4、比較例1〜3の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物を得た。
なお、表1に示した組成は、以下のとおりである。
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
ATM4E:ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキサイド4モル付加物
A−NOD:1,9−ノナンジオールジアクリレート
M600:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
IR184:IRGACURE184(光重合開始剤、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
BYK315:シリコーン系界面活性剤(BYK Chemie社製)
【0028】
実施例及び比較例で得られた液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0029】
<表面張力>
実施例1〜4及び比較例1〜3の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物の表面張力を、レスカ社製動的濡れ性試験器WET−6000にて測定した(測定温度25℃)。
【0030】
<粘度>
実施例1〜4及び比較例1〜3の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物の吐出時の粘度を、東京計器(株)製ELD型粘度計を用い、測定回転数100rpmにて測定した(測定温度25℃)。
【0031】
<接触角度>
アクリル板(PMMA)上にスポイトを用いて、実施例1〜4及び比較例1〜3の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物の液滴を滴下し、共和協和界面科学社製接触角計CA−Xにて滴下した液滴の接触角度を測定した(測定温度25℃)。
【0032】
<樹脂レンズの作製>
ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置に、実施例1〜4、比較例1〜3の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物をそれぞれ充填し、アクリル板(PMMA)上へ連続して半球形状に印字し、印字物をUV照射にて硬化させて各実施例及び比較例に係る樹脂レンズを得た。なお、上記UV照射は、ヘレウス社製UVランプ(Z−8ランプ)を用いて、120W/cm×23m/min、距離10cm(1パス当たりのUV積算光量60mJ/cm)の照射条件とした。
各実施例に係る液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物の吐出性は良好で、所定の樹脂レンズが得られたが、比較例に係る液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物は、所定の樹脂レンズは得られなかった。
【0033】
<半球成型物の耐性>
実施例1〜4及び比較例1〜3の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物を、噴霧用エアブラシでアクリル板に噴霧し、上述した条件でUV硬化させた後、半球状の硬化物に荷重50gを温度85℃、湿度95%、500時間かけ半球成型物の耐性を電子顕微鏡で目視にて以下の基準で評価した。なお、噴霧用エアブラシによると、インクジェット記録装置を用いた場合と同等の半球成型物が得られる。
○:半球性良好
×:半球性不良(へこみあり)
【0034】
<半球成型性>
実施例1〜4及び比較例1〜3の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物を、噴霧用エアブラシでアクリル板に噴霧し、アクリル板をコンベアにのせて上述した条件でUV硬化させた際の半球性を電子顕微鏡で目視にて以下の基準で評価した。なお、噴霧用エアブラシによると、インクジェット記録装置を用いた場合と同等の半球成型物が得られる。
○:半球性良好
×:半球性不良
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示したように、実施例に係る液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物は、表面張力が29.8〜31mN/m、粘度が15.0〜15.1mPa・sであり、いずれも半球成型性に優れ、得られた半球成型物の屈折率は、1.49以上であり、接触角度、耐性にも優れたものであった。
一方、比較例1に係る液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物は、半球成型物の耐性は優れていたものの半球成型性に劣るものであった。また、比較例2、3に係る液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物は、半球成型物の耐性及び半球成型性のいずれにも劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の液晶表示装置の樹脂レンズ用光硬化型インクジェット印刷用組成物は、インクジェット方式により、半透過型液晶表示装置用の樹脂レンズを形成する際の吐出性、基板を走行させて印字した印字物を硬化させて得られた樹脂レンズの半球成型性、並びに、得られた樹脂レンズの耐性及び屈折率に優れたものである。