(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溝型部は、載置する電線間の凹みに係合して電線の長さ方向と直交する方向への移動を規制する突条部がプレス成形により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシールドコネクタ。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来のシールドコネクタを示したものである。
このシールドコネクタ100は、下記特許文献1に開示されたもので、L字形の樹脂製ハウジング110と、電磁シールド用の編組120と、金属板製のシールドシェル130と、を備える。
【0003】
樹脂製ハウジング110は、L字形構造の一端が接続端子140を保持する端子保持部111となり、他端が接続端子140に接続された電線150を保持する電線保持部112となっている。端子保持部111と電線保持部112とは、延出方向が直交していて、L字形構造を形成している。
【0004】
編組120は、接続端子140に接続された電線150に被せられるチューブ状で、シールドシェル130と一緒に接地処理されることで、収容している電線150の周囲を電磁遮蔽する。
【0005】
シールドシェル130は、樹脂製ハウジング110を収容するハウジング収容部131aが形成された第1部材131と、この第1部材131にねじ止めされる第2部材132とを備える。
【0006】
第1部材131は金属板のプレス成形品である。第1部材131におけるハウジング収容部131aは、片側(
図8では、上側)を開放した凹み状に形成されている。
【0007】
第2部材132も、金属板のプレス成形品である。第2部材132は、ハウジング収容部131aの開放面を覆うカバー部132aと、編組120の端部の上を覆って第1部材131にねじ止めされる編組押圧部132bと、を備える。編組押圧部132bは、第1部材131に形成された編組収容部131bにねじ止めすることによって、第1部材131との間に編組120を挟持状態にして、第1部材131と編組120とを導通接続状態に結合する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1に記載のシールドコネクタ100の場合、シールドシェル130が金属板のプレス成形品で、第1部材131と、第1部材131にねじ止めされる第2部材132とで構成するため、部品点数が多くなり、また、手間のかかるねじ止め工程も必要となり、生産性の低下や、製造コストの増大といった問題が生じた。
【0010】
部品点数を削減する対策としては、シールドシェルをアルミダイカストによる一体成形品とすることも考えられる。しかし、アルミダイカスト製とすると、重量化や、材料コストの増加による製造コストの高額化という問題が発生してしまう。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、L字形の樹脂製ハウジングを収容する金属製のシールドシェルの重量化や高額なアルミ材料の使用による製造コストの増加を防止することができ、しかも、シールドシェルにねじ止め部品が含まれず、構成部品の削減及び組立工程の簡略化によって生産性の向上と製造コストの低減を図ることのできるシールドコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)L字形構造の一端が接続端子を保持する端子保持部となり他端が前記接続端子に接続された電線を保持する電線保持部となるL字形の樹脂製ハウジングと、
前記接続端子に接続された電線に被せられる電磁シールド用の編組と、
前記樹脂製ハウジングを収容するハウジング収容部が形成された第1部材と、前記編組を前記第1部材に導通接続状態にする第2部材と、を備えて前記樹脂製ハウジングの周囲を電磁遮蔽する金属製のシールドシェルと、を備えるシールドコネクタであって、
前記シールドシェルは金属板のプレス成形品であり、
前記シールドシェルの
前記第2部材は、前記電線を位置決めする溝型に前記第1部材に一体形成された溝型部と、該溝型部の両側に前記電線の長さ方向と直交する方向に帯状に延出して設けられ、前記溝型部の開放部を覆うようにプレス成形されることで前記電線を挿通させる筒状構造を前記溝型部との協働で形成する帯状延出部と、を備え、
前記溝型部と帯状延出部とで形成した筒状構造の上に被せられた編組
を、弾性材料により形成された拡縮可能なリング部材により前記筒状構造に締結することで、前記編組と前記シールドシェルとが導通接続状態に結合されることを特徴とするシールドコネクタ。
【0013】
(2)前記溝型部は、載置する電線間の凹みに係合して電線の長さ方向と直交する方向への移動を規制する突条部がプレス成形により形成されていることを特徴とする上記(1)に記載のシールドコネクタ。
【0014】
上記(1)の構成によれば、L字形の樹脂製ハウジングを収容する金属製のシールドシェルは、金属板のプレス成形品のため、シールドシェルをアルミダイカスト製とする場合と比較すると、シールドシェルの重量化を防止することができる。また、材料の金属板としては、鋼板を使用することができるため、高額なアルミ材料の使用による製造コストの増加を防止することができる。
【0015】
しかも、編組とシールドシェルとの導通接続を果たす第2部材が第1部材に一体形成されており、シールドシェルが単一部品で構成され、シールドシェルにねじ止め部品が含まれていない。そのため、構成部品の削減及び組立工程の簡略化によって生産性の向上と製造コストの低減を図ることもできる。
【0016】
上記(2)の構成によれば、樹脂製ハウジングに接続される電線は、シールドシェルの第2部材を構成する溝型部の突条部によって、長さ方向と直交する方向への移動が規制され、より安定した状態に支持されるため、コネクタにおける電線の保持性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるシールドコネクタによれば、L字形の樹脂製ハウジングを収容する金属製のシールドシェルは、金属板のプレス成形品のため、シールドシェルをアルミダイカスト製とする場合と比較すると、シールドシェルの重量化を防止することができる。また、材料の金属板としては、鋼板を使用することができるため、高額なアルミ材料の使用による製造コストの増加を防止することができる。
【0018】
しかも、編組とシールドシェルとの導通接続を果たす第2部材が第1部材に一体形成されており、シールドシェルが単一部品で構成され、シールドシェルにねじ止め部品が含まれていない。そのため、構成部品の削減及び組立工程の簡略化によって生産性の向上と製造コストの低減を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るシールドコネクタの一実施形態を、接続端子が突出するコネクタ接続面側から視た斜視図である。
【
図2】
図1のシールドコネクタをコネクタ接続面とは逆の背面側から視た斜視図である。
【
図3】
図1に示したシールドシェルにおける第2部材の帯状延出部をプレス成形する前の状態の説明図で、(a)はシールドシェルを表面側から視た斜視図、(b)は(a)のA矢視図、(c)はシールドシェルを表面側から視た斜視図である。
【
図4】
図1に示したシールドシェルにおける第2部材の帯状延出部が成形途中の状態の説明図で、(a)はシールドシェルを表面側から視た斜視図、(b)は(a)のA矢視図、(c)はシールドシェルを表面側から視た斜視図である。
【
図5】
図1に示したシールドシェルにおける第2部材の帯状延出部を筒状構造に成形完了した状態の説明図で、(a)はシールドシェルを表面側から視た斜視図、(b)は(a)のA矢視図、(c)はシールドシェルを表面側から視た斜視図である。
【
図6】(a)は
図5(c)に示したシールドシェルに編組が導通接続された状態の斜視図、(b)は
図5(a)に示したシールドシェルに編組が導通接続された状態の斜視図である。
【
図7】本発明に係るシールドシェルの第2部材の他の実施形態の説明図である。
【
図8】従来のシールドコネクタの構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るシールドコネクタの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜
図6は本発明に係るシールドコネクタの一実施形態を示したもので、
図1は本発明に係るシールドコネクタの一実施形態を接続端子が突出するコネクタ接続面側から視た斜視図、
図2は
図1のシールドコネクタをコネクタ接続面とは逆の背面側から視た斜視図、
図3は
図1に示したシールドシェルにおける第2部材の帯状延出部をプレス成形する前の状態の説明図で、
図3(a)はシールドシェルを表面側から視た斜視図、
図3(b)は
図3(a)のA矢視図、
図3(c)はシールドシェルを表面側から視た斜視図である。
図4は
図1に示したシールドシェルにおける第2部材の帯状延出部が成形途中の状態の説明図で、
図4(a)はシールドシェルを表面側から視た斜視図、
図4(b)は
図4(a)のA矢視図、
図4(c)はシールドシェルを表面側から視た斜視図である。
図5は
図1に示したシールドシェルにおける第2部材の帯状延出部を筒状構造に成形完了した状態の説明図で、
図5(a)はシールドシェルを表面側から視た斜視図、
図5(b)は
図5(a)のA矢視図、
図5(c)はシールドシェルを表面側から視た斜視図である。
図6(a)は
図5(c)に示したシールドシェルに編組が導通接続された状態の斜視図、
図6(b)は
図5(a)に示したシールドシェルに編組が導通接続された状態の斜視図である。
【0021】
この一実施形態のシールドコネクタ1は、
図1及び
図2に示すように、L字形の樹脂製ハウジング10と、電磁シールド用の編組20と、金属製のシールドシェル30と、編組固定用のリング部材50とを備えている。
【0022】
樹脂製ハウジング10は、
図1に示すように、一端に位置する端子保持部11と、他端に位置する電線保持部12とを一体成形したものである。端子保持部11は、
図1に示す第1の直線X1に沿って延びる略円柱状で、舌状の接続端子41を第1の直線X1に沿って突出するように保持する。電線保持部12は、接続端子41に接続される電線と接続端子41との接続部を収容・保持する部位で、
図1に示す第2の直線Y1に沿って延びている。第2の直線Y1は、第1の直線X1と直交する直線である。従って、樹脂製ハウジング10は、一端の端子保持部11と他端の電線保持部12とが互いに直交する方向に延出して、L字形構造を形成している。
【0023】
編組20は、チューブ状で、接続端子41に接続された電線(不図示)に被せられて、シールドシェル30と共に接地処理されることで、収容した電線の周囲を電磁遮蔽する。
【0024】
本実施形態におけるシールドシェル30は、金属板のプレス成形品である。シールドシェル30は、
図3に示すように、樹脂製ハウジング10を収容するハウジング収容部311が形成された第1部材31と、編組20を第1部材31に導通接続状態にする第2部材32と、を備えて樹脂製ハウジング10の周囲を電磁遮蔽する。
【0025】
ハウジング収容部311は、樹脂製ハウジング10を収容する凹部である。第1部材31は、ハウジング収容部311の周囲に、取り付け用フランジ部312が装備されている。取り付け用フランジ部312は、第1の直線X1に直交する平面状に、ハウジング収容部311の周囲に張り出している。この取り付け用フランジ部312は、接続端子41を接続する相手コネクタが取り付けられているコネクタ取り付け壁(不図示)に突き当てられ、前記コネクタ取り付け壁へのねじ止めにより、前記コネクタ取り付け壁に固定される。
【0026】
第2部材32は、
図3に示すように、溝型部321と、帯状延出部322とを備えている。
【0027】
溝型部321は、電線を嵌め込むことで位置決めする溝型である。この溝型部321は、第1部材31に一体形成されている。
【0028】
更に詳しく説明すると、本実施形態の溝型部321は、2本の電線を収容する溝で、載置する2本の電線間の凹みに係合して電線の長さ方向と直交する方向への移動を規制する一条の突条部321aが、プレス成形により形成されている。
【0029】
帯状延出部322は、溝型部321の両側に装備されている。本実施形態の場合、帯状延出部322は、電線の長さ方向と直交する方向(
図1の第2の直線Y1と直交する方向)に帯状に延出して設けられている。
【0030】
帯状延出部322は、当初、
図3に示すように、取り付け用フランジ部312と平行な平板状に、プレス成形される。しかし、本実施形態の帯状延出部322は、更に、
図4及び
図5に示すように追加のプレス加工によって溝型部321の開放部を覆うようにプレス成形される。
図4は、水平方向に延出していた帯状延出部322が、第1の追加プレスによって、垂直方向に延出する形状に成形された状態を示している。また、
図5は、
図4に示した帯状延出部322が、第2の追加プレスによって、溝型部321の上を覆う形状に成形された状態を示している。
【0031】
本実施形態における帯状延出部322は、
図4及び
図5に示した追加のプレス加工によって、電線を挿通させる筒状構造(
図5(b)に示した構造)33を溝型部321との協働で形成する。
【0032】
図5(b)に示すように第2部材32が筒状構造33に成形されると、電線を収容する編組20の端部が、筒状構造33の外周に嵌合する状態に装着される。
【0033】
リング部材50は、
図5(b)に示した筒状構造33の外周に緊密嵌合する筒状構造である。このリング部材50は、弾性特性を有する樹脂材量等により、径方向に拡縮可能な筒状構造に形成されている。
【0034】
図6に示すように、リング部材50は、溝型部321と帯状延出部322とで形成した筒状構造33の上に被せられた編組20の上から、筒状構造33に嵌合装着されることで、編組20を筒状構造33に締結する。本実施形態のシールドコネクタ1は、
図6に示すようにリング部材50による締結によって、編組20とシールドシェル30とが導通接続状態に結合される。
【0035】
以上に説明した一実施形態のシールドコネクタ1では、L字形の樹脂製ハウジング10を収容する金属製のシールドシェル30は、金属板のプレス成形品のため、シールドシェル30をアルミダイカスト製とする場合と比較すると、シールドシェル30の重量化を防止することができる。また、材料の金属板としては、鋼板を使用することができるため、高額なアルミ材料の使用による製造コストの増加を防止することができる。
【0036】
しかも、一実施形態のシールドコネクタ1では、編組20とシールドシェル30との導通接続を果たす第2部材32が第1部材31に一体形成されており、シールドシェル30が単一部品で構成され、シールドシェル30にねじ止め部品が含まれていない。そのため、構成部品の削減及び組立工程の簡略化によって生産性の向上と製造コストの低減を図ることもできる。
【0037】
更に、一実施形態のシールドコネクタ1では、樹脂製ハウジング10に接続される電線は、樹脂製ハウジング10をシールドシェル30に収容させた状態では、シールドシェル30の第2部材32を構成する溝型部321の突条部321aによって、長さ方向と直交する方向への移動が規制され、より安定した状態に支持される。従って、コネクタにおける電線の保持性能を向上させることができる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0039】
例えば、第2部材32の溝型部321は、
図7に示すように、突条部321aを省略した単純形状に設定しても良い。