(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カッターは、前記ストラップの幅よりも長い直線刃を有するとともに前記スクイブから発生する燃焼生成物を受け止める受圧面を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のストラップ保持装置。
前記ストラップ拘束部材は、前記保持部に配置されるとともに前記ストラップの背面を前記平面部に当接させる板状のストッパと、前記アンカーに接続されるとともに前記ストラップを挿通するスリットを形成するガイド部材と、により構成され、前記ストラップは前記ストッパと前記ガイド部材との間で切断される、ことを特徴とする請求項3に記載のストラップ保持装置。
前記カッターは、前記ハウジングの内面に沿って配置されるとともに前記ストラップの幅よりも大きな筒状のカッター本体と、該カッター本体の後端部に配置されるとともに前記スクイブから発生する燃焼生成物を受け止める受圧面を備えたピストンと、から構成されることを特徴とする請求項1に記載のストラップ保持装置。
ストラップ拘束部材は、前記カッター本体の内部に配置可能な大きさを有するとともに前記ストラップの表面に当接可能な本体部と、前記ストラップの両側部に隣接するように前記本体部に形成されるとともに前記アンカーに係合可能な爪部と、を有し、前記ストラップは前記本体部の外側で切断される、ことを特徴とする請求項5に記載のストラップ保持装置。
前記本体部は、前記カッター本体側に平面状に折り畳み可能に形成されるとともに前記スクイブが作動する前の前記ピストンの移動を抑制するフラップを有する、ことを特徴とする請求項6に記載のストラップ保持装置。
前記保持部は、前記平面部に挿通されるとともに前記ストラップを貫通するボルトと該ボルトに螺合されるナットとにより構成される、又は、環状に形成された前記ストラップの他端を係止可能なフック部により構成される、ことを特徴とする請求項1に記載のストラップ保持装置。
前記ハウジングは、挿通された前記スクイブの先端側の位置決めを行う段差部と、前記スクイブの後端側にかしめられて係合する係合部又はハウジングに挿入されたスクイブを固定するキーパーと、を有することを特徴とする請求項1に記載のストラップ保持装置。
通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、一端が前記エアバッグに接続されたストラップの他端を解放可能に保持するストラップ保持装置と、を有するエアバッグ装置において、
前記ストラップ保持装置は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載されたストラップ保持装置により構成される、ことを特徴とするエアバッグ装置。
前記リテーナは、前記ストラップの他端を外部に引き出し可能な開口部を有し、前記ストラップ保持装置は、前記開口部に隣接した前記リテーナの外面に配置される、ことを特徴とする請求項11に記載のエアバッグ装置。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、衝突時や急減速時等の緊急時にエアバッグを車内で膨張展開させて乗員に生ずる衝撃を吸収するためのエアバッグ装置が搭載されることが一般的になっている。かかるエアバッグ装置には、ステアリングに内装された運転席用エアバッグ装置、インストルメントパネルに内装された助手席用エアバッグ装置、車両側面部又はシートに内装されたサイドエアバッグ装置、ドア上部に内装されたカーテンエアバッグ装置、乗員の膝部に対応したニーエアバッグ装置、フード下に内装された歩行者用エアバッグ装置等、種々のタイプが開発・採用されている。
【0003】
これらのエアバッグ装置は、一般に、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、を有する。また、かかるエアバッグには、例えば、エアバッグの膨張展開幅を規制したり、ベントホールの開閉を制御したりするためのストラップが配置されることがある。このストラップを解放可能に保持するストラップ保持装置(「ストラップ解除装置」と称することも可能である)として、カッター(切刃)を用いたものが既に提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。なお、ストラップは、対象物に対して張力を付与可能な紐状又は織物状の部材であって、テザー、係留綱、係留索等のように称される場合もある。
【0004】
特許文献1に記載されたエアバッグの係留綱の解除機構は、係留綱を挿通可能な開口を有するハウジングと、該ハウジング内に配置されたカッターと、該カッターを前記ハウジング内でスライドさせる開始装置(火工品)と、を有し、前記開口に前記係留綱を挿通して拘束し、前記開始装置が作動すると前記カッターが前記ハウジング内をスライドして少なくとも前記開口と一致する位置まで移動し、前記係留綱を切断するように構成されている。
【0005】
特許文献2に記載されたアクチュエータは、テザーを挿通可能な取付け孔を有する円筒形状のケーシングと、該ケーシング内に配置されたカッターと、該カッターを前記ケーシング内で軸方向に駆動させるガス発生装置と、を有し、前記取付け孔に前記テザーを挿通して拘束し、前記ガス発生装置が作動すると前記カッターが前記ケーシング内を軸方向に移動し、前記取付け孔を横切る際の剪断力により前記テザーを切断するように構成されている。
【0006】
特許文献3に記載されたテザーリテンションシステムは、テザーに取り付けられたテザーホルダーと、テザーホルダーを挿通可能な穴を有するハウジングと、該ハウジング内に配置されたカッターと、該カッターを前記ハウジング内でスライドさせるイニシエータと、を有し、前記穴に前記テザーホルダーを挿通して拘束し、前記イニシエータが作動すると前記カッターが前記ハウジング内をスライドし、前記穴を通過して前記テザーを切断するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されたストラップ保持装置(係留綱の解除機構)では、カッターの先端を開口の内面に当接させてストラップ(係留綱)を切断しているものの開口内でストラップの位置決めを行っていないことから、ストラップが開口内で移動して片側に寄ったり、折れ曲がったりしてしまう場合があり、ストラップの切断信頼性に欠くという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載されたストラップ保持装置(アクチュエータ)では、カッターがストラップ(テザー)を横切って(通過して)切断することから、ストラップに生じている張力の状態(緊張状態や弛緩状態等)によって、ストラップの切断信頼性が左右されてしまうという問題があった。特に、ストラップが弛緩状態の場合には、カッターがストラップを切断するまで引き摺ってしまい、ストラップを切断したいタイミングで切断できない可能性があった。
【0010】
また、特許文献3に記載されたストラップ保持装置(テザーリテンションシステム)では、特許文献2と同様の問題を有するほか、ストラップ(テザー)にホルダーを接続した場合には、ストラップに生じる張力の大きさによっては、ストラップとホルダーとの接続部で破断してしまう可能性があるという問題があった。さらに、ホルダーを金属部品で構成した場合には、カッターの剪断力を大きくしなければならず、イニシエータの火力を増大させる必要があり、装置全体が大型化してしまうという問題もあった。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、ストラップの切断信頼性を向上することができるストラップ保持装置及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、ストラップの一端が移動可能な物体に接続され、該ストラップの他端を解放可能に保持するストラップ保持装置であって、前記ストラップの他端を保持する保持部と前記ストラップの背面に当接する平面部とを有するアンカーと、該アンカーに接続されるとともに前記ストラップの幅方向の移動を拘束するストラップ拘束部材と、前記平面部上で前記ストラップを切断するカッターと、該カッターに前記平面部に向かって移動する推力を付与するスクイブと、前記カッター及び前記スクイブを収容するとともに前記アンカーに接続されるハウジングと、を有することを特徴とするストラップ保持装置が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、一端が前記エアバッグに接続されたストラップの他端を解放可能に保持するストラップ保持装置と、を有するエアバッグ装置において、前記ストラップ保持装置は、前記ストラップの他端を保持する保持部と前記ストラップの背面に当接する平面部とを有するアンカーと、該アンカーに接続されるとともに前記ストラップの幅方向の移動を拘束するストラップ拘束部材と、前記平面部上で前記ストラップを切断するカッターと、該カッターに前記平面部に向かって移動する推力を付与するスクイブと、前記カッター及び前記スクイブを収容するとともに前記アンカーに接続されるハウジングと、を有することを特徴とするエアバッグ装置が提供される。
【0014】
上述したストラップ保持装置及びエアバッグ装置において、前記カッターは、前記ストラップの幅よりも長い直線刃を有するとともに前記スクイブから発生する燃焼生成物を受け止める受圧面を有する構成であってもよい。また、前記カッターは、前記ハウジングの外部から挿通されるシェアピンにより位置決めされていてもよい。さらに、前記ストラップ拘束部材は、前記保持部に配置されるとともに前記ストラップの背面を前記平面部に当接させる板状のストッパと、前記アンカーに接続されるとともに前記ストラップを挿通するスリットを形成するガイド部材と、により構成され、前記ストラップは前記ストッパと前記ガイド部材との間で切断されるように構成されていてもよい。
【0015】
また、上述したストラップ保持装置及びエアバッグ装置において、前記カッターは、前記ハウジングの内面に沿って配置されるとともに前記ストラップの幅よりも大きな筒状のカッター本体と、該カッター本体の後端部に配置されるとともに前記スクイブから発生する燃焼生成物を受け止める受圧面を備えたピストンと、から構成されていてもよい。また、ストラップ拘束部材は、前記カッター本体の内部に配置可能な大きさを有するとともに前記ストラップの表面に当接可能な本体部と、前記ストラップの両側部に隣接するように前記本体部に形成されるとともに前記アンカーに係合可能な爪部と、を有し、前記ストラップは前記本体部の外側で切断されるように構成されていてもよい。さらに、前記本体部は、前記カッター本体側に平面状に折り畳み可能に形成されるとともに前記スクイブが作動する前の前記ピストンの移動を抑制するフラップを有していてもよい。
【0016】
また、上述したストラップ保持装置及びエアバッグ装置において、前記保持部は、前記平面部に挿通されるとともに前記ストラップを貫通するボルトと該ボルトに螺合されるナットとにより構成されていてもよいし、環状に形成された前記ストラップの他端を係止可能なフック部により構成されていてもよい。
【0017】
また、前記ハウジングは、挿通された前記スクイブの先端側の位置決めを行う段差部と、前記スクイブの後端側にかしめられて係合する係合部又はハウジングに挿入されたスクイブを固定するキーパーと、を有していてもよい。
【0018】
また、前記ストラップは、エアバッグに使用される基布により構成されていてもよいし、シートベルト等に使用されるウェビングにより構成されていてもよい。
【0019】
また、上述したエアバッグ装置において、前記リテーナは、前記ストラップの他端を外部に引き出し可能な開口部を有し、前記ストラップ保持装置は、前記開口部に隣接した前記リテーナの外面に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
上述した本発明に係るストラップ保持装置及びエアバッグ装置によれば、ストラップをアンカーの平面部に当接させて拘束した状態で切断するようにしたことにより、ストラップの張力の変化による切断部のずれを抑制することができ、まな板の上で物を切るように、アンカー上でストラップを切断することができる。また、ストラップが弛緩状態の場合であっても、カッターがストラップを切断するまで引き摺ることがなく、ストラップを切断したいタイミングで切断することができる。したがって、ストラップの切断信頼性を向上することができる。
【0021】
カッターを直線刃で構成することにより、背面に受圧面を形成することができ、ハウジング内で移動可能な切刃を構成することができる。また、シェアピンによりカッターを位置決めすることにより、スクイブ作動前におけるカッターの移動を抑制することができる。さらに、ストラップ拘束部材をストッパ及びガイド部材により構成することにより、ストラップの切断部を挟んだ両側を拘束することができ、ストラップの張力の変化による切断部のずれを抑制することができる。
【0022】
カッターを筒状のカッター本体とカッター本体を押圧するピストンにより構成することにより、ハウジング内で移動可能な切刃を構成することができるとともに、カッターの軽量化を図ることができ、装置全体を小型軽量化することができる。また、ストラップ拘束部材をカッター本体内に配置可能な構成とすることにより、ストラップの切断部に近接した位置でストラップを拘束することができ、ストラップのずれを効果的に抑制することができる。さらに、ストラップ拘束部材の本体部に折り畳み可能なフラップを形成することにより、スクイブ作動前におけるカッターの移動を抑制し、ストラップとカッターとの離間した状態を維持してストラップの損傷を抑制することができるとともにスクイブ作動時におけるカッターの移動を阻害しないようにすることができる。
【0023】
保持部をボルト・ナット又はフック部で構成することにより、ストラップの端部形状に応じてストラップを保持することができ、ストラップの長手方向の移動を抑制することができる。
【0024】
ハウジングの後端部をかしめてスクイブを係合させることによって、ハウジングだけでスクイブを保持することができ、ハウジングとは別体のスクイブを保持するキーパーを配置する必要がなく、装置の小型化及び軽量化を図ることができる。また、係合部に替えて、ハウジングにキーパーを装着することにより、かしめ加工を要することなく、容易にスクイブをハウジングに固定することができる。
【0025】
ストラップを基布又はウェビングで構成することにより、車両安全装置の分野において強度、難燃性、耐環境性等の所定の規制条件を満足する部材を容易に入手することができるとともに、車両安全装置に使用した部材の余りや切れ端を有効に利用することができる。
【0026】
ストラップ保持装置をリテーナの外面に配置することにより、リテーナの構造を複雑にする必要がなく、ストラップ保持装置がインフレータから噴出される高温ガスに曝されないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図8を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の第一実施形態に係るエアバッグ装置を示す全体構成図である。
図2は、本発明の第一実施形態に係るストラップ保持装置の部品構成図である。
図3は、
図2に示したストラップ保持装置の作用を説明する図であり、(A)は保持状態、(B)は解放状態、を示している。
図4は、
図1に示したエアバッグ装置の作用を示す図であり、(A)は乗員が大柄な場合、(B)は乗員が小柄な場合、を示している。
【0029】
本発明の第一実施形態に係るエアバッグ装置10は、
図1及び
図2に示したように、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグ1と、エアバッグ1にガスを供給するインフレータ2と、エアバッグ1及びインフレータ2を固定するリテーナ3と、一端がエアバッグ1に接続されたストラップ4の他端を解放可能に保持するストラップ保持装置5と、を有し、ストラップ保持装置5は、ストラップ4の他端を保持する保持部51aとストラップの背面に当接する平面部51bとを有するアンカー51と、アンカー51に接続されるとともにストラップ4の幅方向の移動を拘束するストラップ拘束部材52と、平面部51b上でストラップ4を切断するカッター53と、カッター53に平面部51bに向かって移動する推力を付与するスクイブ54と、カッター53及びスクイブ54を収容するとともにアンカー51に接続されるハウジング55と、を有している。
【0030】
図1に示したエアバッグ装置10は、例えば、助手席用エアバッグ装置であり、助手席の前面に配置されたインストルメントパネル6に固定されることによって格納される。エアバッグ1は、インフレータ2の作動により内部にガスが供給されると膨張展開を開始し、エアバッグカバー7の扉部71を突き破って車室内に放出され、フロントウィンドウWに接触しながら車室内の乗員の前方に膨張展開される。
【0031】
前記インフレータ2は、エアバッグ1に供給されるガスを発生させるガス発生器であり、例えば、略円板形状の外形をなしている。
図1では、ディスク型のインフレータ2の場合を図示しているが、略円柱形状の外形をなしたシリンダ型のインフレータ2を使用してもよい。インフレータ2は、図示しないECU(電子制御ユニット)に接続されており、加速度センサ等の計測値に基づいて制御される。ECUが車両の衝突や急減速を感知又は予測すると、インフレータ2はECUからの点火電流により点火され、インフレータ2の内部に格納された薬剤を燃焼させてガスを発生させ、エアバッグ1にガスを供給する。
【0032】
前記リテーナ3は、例えば、エアバッグカバー7の脚部72に形成された係合孔にフック31を引っ掛けることによってエアバッグカバー7に支持される。また、リテーナ3は、固定金具32によりインストルメントパネル6内の車内構造物に固定される。なお、リテーナ3の取り付け構造は、図示した構成に限定されるものではなく、従来から使用されている種々の取り付け構造を採用することができる。
【0033】
また、リテーナ3は、ストラップ4の他端を外部に引き出し可能な開口部33を有し、ストラップ保持装置5は、開口部33に隣接したリテーナ3の外面に配置されている。開口部33は、ストラップ4の断面形状よりも若干大きい形状を有し、例えば、長細いスリット又はスロット形状に構成される。このように、ストラップ保持装置5をリテーナ3の外面に配置することにより、リテーナ3の構造を複雑にする必要がなく、ストラップ保持装置5がインフレータ2から噴出される高温ガスに曝されないようにすることができる。
【0034】
前記エアバッグ1は、例えば、膨張展開時におけるエアバッグ1の側面部に配置される一対のサイドパネル1aと、エアバッグ1の中央部に配置されるとともに一対のサイドパネル1aを連結するセンターパネル1bと、により構成される。かかるエアバッグ1は、三つの基布により構成されることから3ピース構造を有する。センターパネル1bは、エアバッグ1の膨張展開時に乗員と接触する面を構成する。サイドパネル1aには、常開型ベントホール11が形成されている。すなわち、エアバッグ1は、車両の中心側及び車体側に形成された一対の常開型ベントホール11を有する。かかる常開型ベントホール11を形成することにより、エアバッグ1に衝突した際におけるエアバッグ1内のガスを常開型ベントホール11から外部に排気することができる。なお、上述したエアバッグ1の構成は単なる一例であり、これに限定されるものではない。
【0035】
また、エアバッグ1は、エアバッグ1の表面に形成された開口部12と、開口部12と連通するように配置された突出部13と、突出部13に形成されたベントホール14と、一端が突出部13に接続され他端がストラップ保持装置5に保持されたストラップ4と、ストラップ4をエアバッグ1の内部に案内するスリット部15と、を有し、開口部12は、サイドパネル1aの片側又は両側に形成されており、ベントホール14は、ストラップ4で突出部13を引っ張った時に突出部13とエアバッグ1とが重なり合う領域に配置されており、ストラップ4は、エアバッグ1の膨張展開時における乗員と反対側に向かって突出部13を引っ張るように構成されており、乗員が大柄又は体重が重い場合にストラップ4を保持してベントホール14を閉状態とし、乗員が小柄又は体重が軽い場合にストラップ4を解放してベントホール14を開状態とするように構成されている。
【0036】
開口部12は、エアバッグ1の膨張展開時に車両の中心側及び車体側(ドア側)に配置される一対のサイドパネル1aに形成されている。かかる開口部12には、突出部13が縫合されており、突出部13はエアバッグ1(サイドパネル1a)の表面で起立可能に構成されている。かかる突出部13を起立させた場合には、ベントホール14が開放され、エアバッグ1の内圧を低下させることができる。一方、突出部13をエアバッグ1の表面に密着させた場合には、ベントホール14が閉鎖され、エアバッグ1の内圧を上昇させることができる。なお、開口部12及び突出部13は、エアバッグ1の車両の中心部側にのみ形成されていてもよい。
【0037】
突出部13には略平紐状のストラップ4が接続されており、エアバッグ1の膨張展開時にストラップ4を保持したり解放したりすることによって、突出部13をエアバッグ1の表面に密着させたり、起立させたりすることができる。ストラップ4は、エアバッグ1に形成されたスリット部15からエアバッグ1の内部に引き込まれており、リテーナ3の開口部33からリテーナ3の外部に配置されたストラップ保持装置5に保持され、突出部13とストラップ保持装置5との間で張力Tを生じさせることができるように繋いでいる。スリット部15は、切り込み部であってもよいし、スロット状の開口部であってもよい。なお、ストラップ保持装置5は一本のストラップ4を解放可能に保持してもよいし、複数本のストラップ4を解放可能に保持してもよい。
【0038】
ストラップ4は、例えば、エアバッグ1に使用される基布又はシートベルト等に使用されるウェビングにより構成される。ストラップ4を基布により構成する場合には、例えば、一枚の基布を複数回折り畳んで縫合したり、複数枚の基布を積層して縫合したりすることによって、略平紐状に形成し、強度を保持できるようにすることができる。ストラップ4をウェビングにより構成する場合には、例えば、一枚のウェビングから強度を保持できる幅に切り取ったり、ウェビングと同様の製法で幅狭のものを製造したりすることによって、略平紐状に形成する。なお、「ストラップ」の用語は、テザー、係留綱、紐状部材、帯状部材、ワイヤ等の張力Tを生じ得るとともにカッター53で切断可能な全ての部品を含む趣旨である。
【0039】
ストラップ4を基布又はウェビングにより構成することにより、車両安全装置の分野において、強度、難燃性、耐環境性(例えば、−40℃〜100℃の温度領域で劣化したり機能低下したりしないこと)等の所定の規制条件を満足する部材を容易に入手することができるとともに、車両安全装置に使用した部材の余りや切れ端を有効に利用することができる。特に、エアバッグ1やシートベルトとしては不適合な素材であっても、ストラップ4に必要な分だけ再利用することができ、資源の有効利用を図ることもできる。
【0040】
前記ストラップ保持装置5は、
図2に示したように、アンカー51と、ストラップ拘束部材52と、カッター53と、スクイブ54と、ハウジング55と、キーパー56と、Oリング57と、を有している。
【0041】
アンカー51は、例えば、リテーナ3の外面にスポット溶接等により接続される略L字形状のブラケットにより構成される。アンカー51は、リテーナ3の外面に対して略垂直に配置される平面部51bを有し、この平面部51bはストラップ4を切断するときのカッティングボード(まな板)として機能する。また、ストラップ4を保持する保持部51aは、例えば、平面部51bに挿通されるとともにストラップ4を貫通するボルト51cとボルト51cに螺合されるナット51dとにより構成される。かかる保持部51aによりストラップ4をアンカー51に固定することにより、ストラップ4の長手方向の移動を拘束することができる。
【0042】
ストラップ拘束部材52は、ストラップ4の幅方向の移動、特に、保持部51a(ボルト51c)を中心とした回動を抑制するように構成される。具体的には、保持部51aに配置されるとともにストラップ4の背面を平面部51bに当接させる板状のストッパ52aと、アンカー51に接続されるとともにストラップ4を挿通するスリットを形成するガイド部材52bと、により構成される。
【0043】
ストッパ52aは、例えば、ストラップ4の幅よりも大きく幅広に形成されるとともに、ストラップ4の両側部に配置される折曲部とボルト51cに挿通される開口部とを有する金具により構成される。かかるストッパ52aをボルト51cに挿通した後、ナット51dで締め付けて固定することにより、ストラップ4の受圧面積を増大させることができ、ストラップ4の背面を平面部51bに容易に当接させることができる。
【0044】
ガイド部材52bは、例えば、アンカー51の角部付近の平面部51bに接続され、平面部51bとの間で筒状の挿通部を形成するように構成されている。また、ガイド部材52bは、保持部51a側がストラップ4の断面形状に接近するように縮径されたテーパ面を有する。かかるガイド部材52bにストラップ4を挿通することにより、ストラップ4がアンカー51に固定された保持部51aから離れた位置でストラップ4の幅方向の移動を抑制することができ、ストラップ4の回動を抑制することができる。
【0045】
そして、ストラップ4はストッパ52aとガイド部材52bとの間で切断される。このように、ストラップ4の切断部を挟んだ長手方向の両側の位置でストラップ4を拘束することにより、カッター53が当接する部分におけるストラップ4の位置ずれを抑制することができ、ストラップ4の切断信頼性を向上することができる。
【0046】
カッター53は、ストラップ4の幅よりも長い直線刃53aを有するとともにスクイブ54から発生する燃焼生成物を受け止める受圧面53bを有する。カッター53は、例えば、刃先R寸法がR0.4以下、刃硬度がロックウェル硬さ(HRC)40以上、刃角度が45度以下に設定される。また、カッター53は、ハウジング55の内面に沿って摺動可能な中実のブロック体により形成されており、その外周部にはOリング57が配置されている。Oリング57を配置することにより、カッター53の後方の空間の密閉性を向上させることができ、火花の外部への漏洩を抑制することができる。また、カッター53は、ハウジング55の外部から挿通されるシェアピン58により位置決めされている。シェアピン58は、例えば、所定の圧力で剪断可能な樹脂製又は金属製の略円柱形状部材である。
【0047】
スクイブ54は、例えば、イニシエータ(起爆剤)により構成される。イニシエータは小型の火工品であり、燃焼生成物を発生させる部品である。イニシエータは、ECU(図示せず)からの点火電流(点火信号)により点火され、内部に格納された薬剤を燃焼させて燃焼生成物を発生させる。イニシエータから発生した燃焼生成物は、カッター53の受圧面53bを加圧し、シェアピン58が剪断されると、カッター53をアンカー51の平面部51bに向かって移動させる。カッター53の直線刃53aが平面部51bに当接すると、ストラップ4は平面部51b上で切断される。
【0048】
ハウジング55は、例えば、カッター53の外形に沿った筒部を有するカッター収容部55aと、スクイブ54の外形に沿った筒部を有するスクイブ収容部55bと、カッター収容部55aの側面部からストラップ4の幅方向に拡張されたフランジ部55cと、を有する。ハウジング55は、例えば、軽量化に適したアルミニウムダイカスト(ADC材)やコストダウンに適した機械構造用炭素鋼鋼管(STKM材)等により形成される。また、カッター収容部55aの外側面にはシェアピン58が挿通される開口部が形成されている。スクイブ収容部55bの外周部には、ハウジング55に挿入されたスクイブ54を固定するキーパー56が嵌合され、ハウジング55に螺合や溶接等により固定される。また、ハウジング55は、アンカー51の平面部51b及びフランジ部55cに挿通されたボルト55dと、ボルト55dに螺合されるナット55eと、によりアンカー51に接続される。ボルト55dは、アンカー51の平面部51bに立設されたスタッドボルトであってもよい。
【0049】
ここで、上述したストラップ保持装置5の作用について説明する。
図3(A)に示したように、ハウジング55はアンカー51の平面部51bに対して略垂直となるように配置されている。ストラップ4は、背面が平面部51bに当接するようにアンカー51(保持部51a)及びストラップ拘束部材52(ストッパ52a及びガイド部材52b)により保持及び拘束されている。カッター53は、ストラップ4の表面から一定の間隔を有するようにハウジング55にシェアピン58により固定されている。また、カッター53とスクイブ54との間には燃焼生成物を充満させる空間が形成されている。スクイブ54の作動前、すなわち、ストラップ4を保持したい場合には、
図3(A)に示した状態が維持され、ストラップ4は、ストラップ保持装置5に保持される。
【0050】
スクイブ54の作動時、すなわち、ストラップ4の解放時には、ハーネス54aを介してECUからスクイブ54に点火信号が送信され、スクイブ54は瞬時に燃焼生成物を発生する。スクイブ54とカッター53との間に形成された空間は燃焼生成物により充填され、カッター53の受圧面53bはアンカー51に向かう方向に加圧される。燃焼生成物による加圧力が所定の数値を超えると、
図3(B)に示したように、シェアピン58は剪断され、カッター53がハウジング55に沿ってアンカー51に向かって移動する。そして、カッター53の直線刃53aが、アンカー51の平面部51b上のストラップ4に到達し、ストラップ4を平面部51b上に押し付けながら切断し、最終的に平面部51bに到達することによって、カッター53はストラップ4の切断を完了して停止する。切断されたストラップ4は、ストラップ保持装置5から解放され、張力Tの方向に引っ張られて移動する。
【0051】
ここで、
図1に示したエアバッグ装置10に関し、ストラップ4の保持及び解放の制御について
図4を参照しつつ説明する。
【0052】
図4(A)に示したように、乗員Pが大柄な場合(例えば、成人男性等)には、一般に体重が重く、車両の急減速時に生じる慣性力が大きい。したがって、エアバッグ1の内圧を高くして乗員Pを受け止めることができるようにしておく必要がある。そこで、ストラップ保持装置5によりストラップ4を保持した状態を維持し、突出部13を閉状態のままにしておく。突出部13を閉状態にした場合、インフレータ2からエアバッグ1に供給されたガスは、常開型ベントホール11からガスが排気されるのみであり、排気量を低減することができる。したがって、エアバッグ1の内圧を容易に高くすることができる。
【0053】
図4(B)に示したように、乗員Pが小柄な場合(例えば、成人小柄女性や子供等)には、一般に体重が軽く、車両の急減速時に生じる慣性力が小さい。したがって、エアバッグ1の内圧を低くして乗員Pをソフトに受け止めることができるようにしておく必要がある。そこで、ストラップ保持装置5によりストラップ4を解放し、突出部13を開状態にしておく。突出部13を開状態にした場合、インフレータ2からエアバッグ1に供給されたガスは、常開型ベントホール11及び突出部13に形成されたベントホール14の両方からガスが排気され、排気量を増加させることができる。したがって、エアバッグ1の内圧を容易に低くすることができる。
【0054】
乗員Pが大柄であるか小柄であるかは、例えば、ECU(電子制御ユニット)101に接続されたシート荷重センサ102により容易に判断することができる。シート荷重センサ102は、例えば、乗員Pが着座する助手席103のシート内に配置される。また、シート荷重センサ102に替えて、シート位置センサや車内に配置されたCCDカメラ等を利用した画像処理手段によって乗員Pの体型を判断するようにしてもよい。
【0055】
そして、乗員Pが助手席103に着座した段階で、シート荷重センサ102により乗員Pが大柄であるか小柄であるか又は体重が重いか軽いかについて判断し、その結果を乗員体格情報としてECU101に記憶しておく。乗員体格情報は、例えば、体重の閾値を設定しておき、閾値よりも重い場合は大柄の体型として認識し、閾値よりも軽い場合は小柄の体型として認識する情報である。ECU101は、車両の衝突や急減速を感知又は予測したときに、かかる乗員体格情報に基づいてストラップ保持装置5を制御し、ストラップ4の保持又は解放を制御する。すなわち、ストラップ保持装置5は、乗員Pが大柄又は体重が重い場合にストラップ4を保持し、乗員Pが小柄又は体重が軽い場合にストラップ4を解放するように構成されている。
【0056】
次に、ストラップ保持装置5の第二実施形態について説明する。ここで、
図5は、本発明の第二実施形態に係るストラップ保持装置の部品構成図である。
図6は、
図5に示したストラップ拘束部材を示す図であり、(A)は正面図、(B)は
図6(A)におけるB−B断面図、(C)は背面図、を示している。
図7は、
図5に示したストラップ保持装置の作用を示す図であり、(A)は保持状態、(B)は解放状態、を示している。なお、上述した第一実施形態に係るストラップ保持装置5と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0057】
第二実施形態に係るストラップ保持装置5は、
図5〜
図7に示したように、第一実施形態に係るストラップ保持装置5と同様に、ストラップ4の他端を保持する保持部51aとストラップの背面に当接する平面部51bとを有するアンカー51と、アンカー51に接続されるとともにストラップ4の幅方向の移動を拘束するストラップ拘束部材52と、平面部51b上でストラップ4を切断するカッター53と、カッター53に平面部51bに向かって移動する推力を付与するスクイブ54と、カッター53及びスクイブ54を収容するとともにアンカー51に接続されるハウジング55と、を有している。なお、
図5に示したストラップ保持装置5は、説明の便宜上、
図2に示したストラップ保持装置5と上下を反転させた状態を図示している。
【0058】
アンカー51の保持部51aは、例えば、環状に形成されたストラップ4の他端を係止可能なフック部により構成される。フック部(保持部51a)は、平面部51bの一部を切り欠くことによって、開放端側からストラップ4の環状部を挿通することができるように構成される。また、フック部(保持部51a)の縁部には、ストラップ4を保持する位置に形成された溝部51eが形成されており、ストラップ4の他端を位置決めできるように構成されている。また、フック部(保持部51a)の表面、すなわち、平面部51bには、ストラップ4の両側部に隣接する位置に形成された一対の貫通孔51f及びハウジング55を固定するためのボルト孔51gが形成されている。
【0059】
カッター53は、例えば、ハウジング55の内面に沿って配置されるとともにストラップ4の幅よりも大きな径を有する筒状のカッター本体53cと、カッター本体53cの後端部に配置されるとともにスクイブ54から発生する燃焼生成物を受け止める受圧面53bを備えたピストン53dと、から構成される。このようにカッター53の切刃を中空に形成することにより、カッター53の軽量化を図ることができ、装置全体を小型軽量化することができる。カッター本体53cは、例えば、円筒形状の鋼管により形成されるが、かかる構成に限定されるものではない。ピストン53dは、例えば、耐圧性及び耐熱性を有する金属材又は樹脂材により形成される。ここでは、カッター本体53cとピストン53dとを別部品により構成しているが、一体に構成するようにしてもよい。また、ピストン53dの外周部には、Oリング57が配置される。
【0060】
ストラップ拘束部材52は、
図5及び
図6に示したように、カッター本体53cの内部に配置可能な大きさを有するとともにストラップ4の表面に当接可能な本体部52cと、ストラップ4の両側部に隣接するように本体部52cに形成されるとともにアンカー51に係合可能な爪部52dと、を有し、本体部52cは、カッター本体53c側に平面状に折り畳み可能に形成されるとともにスクイブ54が作動する前のピストン53dの移動を抑制するフラップ52eを有している。かかるストラップ拘束部材52は、カッター53(カッター本体53c)の内側でストラップ4の位置決めを行い、本体部52cの外周部を通過するカッター本体53cにより、ストラップ4を本体部52cの外側で切断するようにしたものである。かかる構成により、ストラップ4の切断部に近接した位置でストラップ4を拘束することができ、ストラップ4のずれを効果的に抑制することができる。
【0061】
具体的には、本体部52cは、
図6(A)〜(C)に示したように、カッター本体53cの内径よりも小さい外径を有する円形の縁部52fと、縁部52f内に対角線上に配置された複数の支持部材52gと、により構成されている。本体部52cは、カッター本体53cの内径よりも小さい外径を有する円板により構成するようにしてもよい。
【0062】
爪部52dは、本体部52cの両端部に立設されており、フック部(保持部51a)に形成された貫通孔51fに挿入され、爪部52dの先端に形成された返し部によりフック部(保持部51a)に係合するように構成されている。
図6(C)に示したように、爪部52dの間隔Dは、ストラップ4の幅よりも僅かに大きくなるように設定される。すなわち、爪部52dをフック部(保持部51a)に係合することによって、爪部52dと本体部52cと平面部51bとの間にストラップ4を挟み込み、ストラップ4の移動(特に、幅方向の移動)を拘束する。
【0063】
フラップ52eは、ピストン53dのスペーサ的機能を果たす部品である。
図6(A)に示したように、フラップ52eは、本体部52cの縁部に一定の間隔で複数(図では6個)配置される。
図6(B)に示したように、各フラップ52eは、略三角形状を有し、本体部52cの縁部から中央に向かって傾斜するように配置される。フラップ52eは、本体部52cに向かって押し込まれたときに、他のフラップ52eと重ならないような長さLを有する。かかるフラップ52eを形成することにより、スクイブ54の作動前において、振動等によりピストン53dがストラップ4側に向かって移動したとしても、ピストン53dの受圧面53bと反対側の面にフラップ52eが当接し、ピストン53dの移動を抑制することができる。したがって、スクイブ54の作動前におけるカッター本体53cの移動を抑制することができ、ストラップ4の意図しない切断を抑制することができる。また、フラップ52eは、本体部52cの内側、すなわち、カッター本体53cの内側に配置されていることから、スクイブ54の作動時におけるカッター本体53cの移動を阻害することがない。さらに、フラップ52eは、略平面状に折り畳み可能に構成されていることから、スクイブ54が作動してピストン53dに高圧が付加された場合には、フラップ52eはピストン53dにより本体部52c側に押し込まれることから、スクイブ54の作動時におけるピストン53dの移動を阻害することがない。
【0064】
ハウジング55は、カッター53(カッター本体53c及びピストン53d)を収容するカッター収容部55aとスクイブ収容部55bを有し、スクイブ収容部55bに挿通されたスクイブ54の先端側の位置決めを行う段差部55fと、スクイブ54の後端側にかしめられて係合する係合部55gと、を有する。係合部55gは、スクイブ54の収容前はスクイブ収容部55bを延長した形状を有し、スクイブ54をスクイブ収容部55bに収容した後、かしめられてスクイブ54に係合される。かかる構成により、
図2に示したキーパー56を省略することができ、ハウジング55の軽量化を図ることができ、装置の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0065】
ハウジング55の先端部には、前方に突出した庇部55hが形成されている。庇部55hは、ハウジング55をアンカー51に接続したときに、フック部(保持部51a)の溝部51eの上方を覆うように形成されている。かかる構成により、溝部51eに掛け回されたストラップ4が溝部51eを乗り越えないようにすることができる。なお、ハウジング55は、フランジ部55cに挿通又は立設されたボルト55dをアンカー51のボルト孔51gに挿通しナット55eを螺合することによってアンカー51に接続される。
【0066】
ここで、上述した第二実施形態に係るストラップ保持装置5の作用について説明する。
図7(A)に示したように、ハウジング55はアンカー51の平面部51bに対して略垂直となるように配置されている。ストラップ4は、背面が平面部51bに当接するようにストラップ拘束部材52により拘束されている。ピストン53dは、ストラップ4の表面から一定の間隔を有するようにハウジング55にOリング57を介して圧入されており、ピストン53dとストラップ4の間には、フラップ52eを有するストラップ拘束部材52が挿入されている。カッター本体53cは、ピストン53dの外周部とハウジング55の内周部との隙間に圧入等により固定されている。スクイブ54の作動前、すなわち、ストラップ4を保持したい場合には、
図7(A)に示した状態が維持され、ストラップ4は、ストラップ保持装置5に保持される。
【0067】
スクイブ54の作動時、すなわち、ストラップ4の解放時には、ハーネス54aを介してECUからスクイブ54に点火信号が送信され、スクイブ54は瞬時に燃焼生成物を発生する。スクイブ54とカッター53(ピストン53d)との間に形成された空間は燃焼生成物により充填され、ピストン53dはアンカー51に向かう方向に加圧される。燃焼生成物による加圧力が所定の数値を超えると、
図7(B)に示したように、ピストン53dはストラップ拘束部材52のフラップ52eを押し込んでアンカー51に向かって移動し、併せてカッター本体53cをアンカー51に向かって移動させる。そして、カッター本体53cが、アンカー51の平面部51b上のストラップ4に到達し、ストラップ4を平面部51b上に押し付けながら切断し、最終的に平面部51bに到達することによって、カッター本体53cはストラップ4の切断を完了して停止する。切断されたストラップ4は、ストラップ保持装置5から解放され、張力Tの方向に引っ張られて移動する。
【0068】
次に、上述したエアバッグ装置10の他の実施形態について説明する。ここで、
図8は、他の実施形態に係るエアバッグ装置を示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、を示している。なお、上述した第一実施形態に係るエアバッグ装置10と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0069】
図8(A)に示したように、第二実施形態に係るエアバッグ装置10は、ストラップ4が、エアバッグ1の膨張展開時における幅規制を行うものである。ストラップ4をストラップ保持装置5により保持した場合には、図の実線で示したように、エアバッグ1の頂部がストラップ4に引っ張られ、乗員方向の幅が狭くなるように制御される。一方、ストラップ4をストラップ保持装置5から解放した場合には、図の一点鎖線で示したように、エアバッグ1の頂部が乗員方向に膨張展開するように制御される。
【0070】
図8(B)に示したように、第三実施形態に係るエアバッグ装置10は、ストラップ4が、エアバッグ1のベントホール16の開閉を制御するものである。ストラップ4をストラップ保持装置5により保持した場合には、図の実線で示したように、エアバッグ1に縫合された弁17をエアバッグ1の表面に密着するように引っ張ってベントホール16を閉鎖する。一方、ストラップ4をストラップ保持装置5から解放した場合には、図の一点鎖線で示したように、弁17がエアバッグ1の表面から離隔してベントホール16が開放される。図示したように、ストラップ4を複数有するエアバッグ1の場合には、複数のストラップ保持装置5を配置するようにしてもよい。
【0071】
上述した実施形態では、ストラップ保持装置5をエアバッグ装置10に適用した場合について説明したが、シートベルト装置等の車両安全装置に適用してもよいし、車両安全装置以外の装置に適用してもよい。また、エアバッグ装置10は、助手席用エアバッグ装置に限定されるものではなく、運転席用エアバッグ装置、サイドエアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、歩行者用エアバッグ装置等であってもよい。
【0072】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。