【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の蒸気回収タンク、及びその蒸気回収タンクを備えた炊飯器の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る炊飯器の外観を示す斜視図、
図2は実施の形態1に係る炊飯器における蒸気回収装置を示す斜視図、
図3は
図1に示す蓋体を開放したときの炊飯器の斜視図、
図4は
図2の蒸気回収装置の蒸気回収タンク、タンク蓋及びタンクカバーを示す斜視図である。
本実施の形態の炊飯器100は、炊飯器本体11と、炊飯器本体11の上部に開閉自在に設けられた蓋体12と、炊飯などの調理時に発生する蒸気を水により冷却して復水し、蒸気を回収する蒸気回収装置20とを備えている。
【0013】
炊飯器本体11は、調理する被加熱物を入れるための内鍋10と、この内鍋10を加熱する加熱手段(図示省略)を内部に有している。また、炊飯器本体11は、前方下部に蒸気回収装置20の蒸気回収タンク21を着脱自在に支持するタンク受け部11aを備えている。蓋体12は、炊飯器本体11の後方上部に設けられたヒンジ部14により、開閉自在に取り付けられている。蓋体12には、調理時に内鍋10の上部開口10aを閉塞する内蓋13と、内鍋10内に発生する蒸気を内部に導入する本体側蒸気導管25が設けられている。
【0014】
前述の蒸気回収装置20は、本体側蒸気導管25と、上部に開口(以下、「上部開口」という)を有する略直方体形状の容器からなる蒸気回収タンク21と、上部開口に着脱自在に装着され、本体側蒸気導管25からの蒸気を蒸気回収タンク21内の水に導いて復水させるタンク側蒸気導管22bを有するタンク蓋22と、蒸気回収タンク21の前面を着脱自在に覆い外観部をなすタンクカバー23とを備えている。
【0015】
本体側蒸気導管25は、一端が内蓋13に設けられた小穴の開口部(図示省略)と着脱自在に連結されている。蓋体12が閉じられたときには、蓋体12が炊飯器本体11に係止されると共に、本体側蒸気導管25の他端がタンク蓋22に設けられた開口部22aと着脱自在に連結される。なお、蓋体12が炊飯器本体11に係止されることにより、蓋体12の上方向の移動(開放)が規制される。蓋体12と炊飯器本体11との係止(ロック)を解除する場合は、蓋体12の前面(正面)に設けられたロック解除ボタン18を操作することで、蓋体12と炊飯器本体11との係止が解除される。
【0016】
蒸気回収タンク21は、光を透過可能な合成樹脂で構成され、側面にタンク内方へ突出して形成された手掛け部を備えている。タンク蓋22には、前述したように、蓋体12が閉じられたときに、本体側蒸気導管25の開口(他端)と着脱自在に連結される開口部22aと、開口部22aの中心を軸心とするタンク側蒸気導管22bとが設けられている。そのタンク側蒸気導管22bは、内鍋10側からの蒸気をタンク21内の水で復水させるのに必要な深さまで延びている。
【0017】
次に、
図5及び
図6を用いて、タンク21に設けられた手掛け部の構成について説明する。
図5は
図4の蒸気回収タンクを模式的に示す斜視図、
図6は
図5の蒸気回収タンクの側方を切断して示す手掛け部の断面図である。
炊飯器本体11を前方から見て、蒸気回収タンク21の手前側の側面には、タンク内方に突出する手掛け部21aが設けられている。その手掛け部21aは、例えば、タンク21の側面の長手方向の略中央を中心として左右方向に延びる長方形状の開口部21dを有する箱状に形成されている。
【0018】
手掛け部21aの奥行き21uは、側面の内面から例えば30mmで、手掛け部21aの開口部21dの幅21vは、例えば60mmの大きさである。手掛け部21aの奥行き21u(30mm)は、蒸気回収タンク21の上部開口から目視にて十分確認可能で、指による手掛けに最低限必要な深さとなっている。開口部21dの幅21v(60mm)は、少なくとも3本の指が入る大きさとなっている。なお、蒸気回収タンク21が炊飯器本体11のタンク受け部11aに載置された場合、手掛け部21aが手前となる。
【0019】
また、手掛け部21aは、蒸気を復水するのに適切な水量となる高さに設けられている。手掛け部21aは、上部21bが蒸気回収タンク21に貯えられる水の上限水位の位置に、下部21cが貯水の下限水位の位置となるように、蒸気回収タンク21の側面に設けられている。つまり、蒸気回収タンク21の内部に水を貯留する場合、手掛け部21aの上部21b(上限水位)と下部21c(下限水位)との間に水面が位置するように水を入れれば、適切な水量を蒸気回収タンク21内に貯留することができる。なお、手掛け部21aの上部21b及び下部21cは、略平行になっている。前述の下限水位は、蒸気を復水するのに最低限必要な水量を得る高さである。
【0020】
また、手掛け部21aは、前述したように、蒸気回収タンク21の側面の略中心位置に配置されているため、蒸気回収タンク21を長手方向の左右の何れか一方に傾けた状態で注水した場合、水面が手掛け部21aの開口部21dの略中心を交差したときに注水を停止すれば、適切な水を貯水することも可能である。
【0021】
前記のように構成された炊飯器100において、蒸気回収タンク21の使用について説明する。
蒸気回収タンク21内に、蒸気回収タンク21の上部開口から注水し、蒸気回収タンク21内の水が手掛け部21aの上部21b以下で、手掛け部21aの下部21cより高い位置に達したときに注水を停止する。なお、蒸気回収タンク21内の水が手掛け部21aの上部21bに達したとき、あるいは水が手掛け部21aの下部21cに達したときに注水を停止するようにしても良い。
【0022】
次に、
図4に示すように、水を貯めた蒸気回収タンク21内に、タンク蓋22に取り付けられたタンク側蒸気導管22bを挿入して、蒸気回収タンク21の上部開口をタンク蓋22で覆い、蒸気回収タンク21の前面をタンクカバー23で覆って、炊飯器本体11のタンク受け部11aに搭載し、蓋体12で炊飯器本体11の上部を覆って係止する。この時、蒸気回収タンク21は、蓋体12とタンク受け部11aとにより挟持された状態となる。
【0023】
この時、本体側蒸気導管25とタンク側蒸気導管22bが、タンク蓋22の開口部22aを介在して連結される。この連結により、調理中に内鍋10内で発生する蒸気を、蒸気回収タンク21内に貯留された水の中へ導入可能な状態となる。
【0024】
つまり、このような状態で炊飯が行われると、内鍋10内で発生した蒸気は、
図2に示す矢印のように、内蓋13に設けられた小穴の開口部から内鍋10の外部に排出され、本体側蒸気導管25に流入する。そして、本体側蒸気導管25に流入した蒸気は、タンク側蒸気導管22bを流下して蒸気回収タンク21内に導入され、蒸気回収タンク21内に貯留された水により冷却されて復水し、回収水として蒸気回収タンク21内に貯留される。
【0025】
使用者が炊飯器本体11から蒸気回収タンク21を取り外して流し台へ運ぶ際、また、流し台で注水した蒸気回収タンク21を運ぶ際には、手掛け部21aの開口部21d内に第2指から第5指の何れか3本の指を入れ、蒸気回収タンク21の反対側の側面に第1指である親指を当てた状態で蒸気回収タンク21を把持し、その状態で蒸気回収タンク21を運ぶ。
【0026】
以上のように実施の形態1によれば、蒸気回収タンク21の側面に複数本の指が挿入可能な手掛け部21aを設けているので、蒸気回収タンク21の持ち運びが容易となり、安全性が向上する。また、蒸気回収タンク21の落下を防止するためのハンドルを新たに設ける必要がないため、構造が簡素化でき、手入れも容易である。
【0027】
また、手掛け部21aの上部21bを貯留水の上限水位とし、手掛け部21aの下部21cを貯留水の下限水位としている。これにより、蒸気回収タンク21の上部開口から水を注いでいる際に、手掛け部21aの上部21bと下部21cの間に水が達したかどうかを、蒸気回収タンク21の上方から容易に確認することができる。そのため、水量を確認する際に視線を変える必要がなく、適切な水量を貯留することが可能になり、作業性が良く利便性が向上する。
【0028】
また、このように構成された蒸気回収タンク21を炊飯器に用いることにより、適切な水量を貯留できるので、蒸気回収タンク21内に蒸気を回収して貯水量が増えても、蒸気回収タンク21内から水が溢れ出ることを防止することができる。
【0029】
なお、実施の形態1における蒸気回収タンク21は、光透過性のある合成樹脂で構成されていることを述べたが、蒸気回収タンク21の材料を光透過性の低い合成樹脂で構成しても良い。これは、蒸気回収タンク21内に水を注ぎ入れる場合、上部開口から適切な水量を確認できるため、蒸気回収タンク21の壁面越しに水量を確認する必要が無いからである。つまり、蒸気回収タンク21に付着する汚れが目立たない色調を有する合成樹脂で蒸気回収タンク21を構成することができる。
【0030】
実施の形態2.
次に、実施の形態1で説明した蒸気回収タンクの変形例について、
図7を参照しながら説明する。
図7は実施の形態2に係る炊飯器における蒸気回収タンクを模式的に示す斜視図である。なお、実施の形態2においては、前述した実施の形態1と異なる蒸気回収タンクのみについて説明する。
【0031】
本実施の形態における蒸気回収タンク31は、上部にタンク蓋22が着脱自在に装着される開口(上部開口)を有している。蒸気回収タンク31の手前側の側面には、タンク内方に突出する2つの手掛け部31a、31eが設けられている。また、蒸気回収タンク31の側面のうち2つの手掛け部31a、31eの間の側面には、上限水位を指示する上限水位目盛り31iと下限水位を指示する下限水位目盛り31jが表示されている。
【0032】
2つの手掛け部31a、31eは、蒸気回収タンク31の側面の長手方向の略中央を中心として左右に設けられ、それぞれ長方形状の開口部31d、31hを有する箱状に形成されている。2つの手掛け部31a、31eの奥行き及び各開口部31d、31hの幅は、実施の形態1と同様である。また、2つの手掛け部31a、31eは、蒸気を復水するのに適切な水量となる高さに設けられている。
【0033】
各手掛け部31a、31eは、各上部31b、31fが前述の上限水位目盛り31iと同じ高さに、各下部31c、31gが下限水位目盛り31jと同じ高さになるように、蒸気回収タンク31の側面に設けられている。なお、手掛け部31aの上部31bと下部31c、及び手掛け部31eの上部31fと下部31gは、それぞれ略平行になっている。
【0034】
次に、蒸気回収タンク31の使用について説明する。
蒸気回収タンク31内に、蒸気回収タンク31の上部開口から注水し、蒸気回収タンク31内の水が各手掛け部31a、31eの上部31b、31f以下で、各手掛け部31a、31eの下部31c、31gより高い位置に達したときに注水を停止する。なお、各蒸気回収タンク31内の水が手掛け部31a、31eの上部31b、31fに達したとき、あるいは水が手掛け部31a、31eの下部31c、31gに達したときに注水を停止するようにしても良い。
【0035】
なお、蒸気回収タンク31内への注水を停止した後に、水位がどの位置にあるかを確認する場合は、上限水位目盛り31iと下限水位目盛り31jを通して行うこともできる。
【0036】
また、蒸気回収タンク31内を上方から見ながら上部開口から水を注ぎ入れているときに、蒸気回収タンク31が長手方向に斜めに傾いていた場合、例えば、手掛け部31a側が下がっていて、下部31cが水で被われ、もう一方の手掛け部31e側の下部31gまで水が達していない場合には、使用者は、蒸気回収タンク31が傾いていることを容易に判断できる。その場合、蒸気回収タンク31を水平に正して、注水を続ける。そして、手掛け部31a側の下部31cと手掛け部31e側の下部31gとがほぼ同時に水で覆われたときに、注水を停止する。
【0037】
炊飯器本体11から蒸気回収タンク31を取り外して流し台へ運ぶ際、また、流し台で注水した蒸気回収タンク31を運ぶ際には、各手掛け部31a、31eの開口部31d、31h内にそれぞれ3本の指を入れ、蒸気回収タンク31の反対側の側面に親指を当てた状態で蒸気回収タンク31を把持し、その状態で蒸気回収タンク31を運ぶ。
【0038】
以上のように実施の形態2においては、蒸気回収タンク31の側面の左右方向に2つの手掛け部31a、31eを設けているので、両方の手で蒸気回収タンク31を手掛けすることができ、より安全に蒸気回収タンク31を水の供給元へ移動することが可能になる。
また、2つの手掛け部31a、31eの上部31b、31fと下部31c、31gとで蒸気回収タンク31の傾きを容易に判断することが可能になり、適切な水量の確認を行うことができる。
【0039】
実施の形態3.
次に、実施の形態1、2で説明した蒸気回収タンクの変形例について、
図8を参照しながら説明する。
図8は実施の形態3に係る炊飯器における蒸気回収タンクの側方を切断して示す手掛け部の断面図である。なお、実施の形態3においては、前述した実施の形態1、2と異なる蒸気回収タンクのみについて説明する。
【0040】
本実施の形態における蒸気回収タンク41は、実施の形態1、2と同様に、上部にタンク蓋22が着脱自在に嵌め込まれる開口(上部開口)を有している。蒸気回収タンク41の手前側の側面には、タンク内方に突出する手掛け部41aが設けられている。その手掛け部41aは、例えば、蒸気回収タンク41の側面の長手方向の略中央を中心として左右方向に延びる長方形状の開口部41dを有する変形の箱状に形成されている。
【0041】
つまり、手掛け部41aの断面形状は、
図8に示すように、開口部41dの下端部から直角に折り曲げられてタンク内方へ延びる下部41cと、その下部41cから上方に直角に折り曲げられた後、開口部41dの上端部に向けて上方に傾斜する傾斜部41dによりなっている。その手掛け部41aの奥行き、即ち開口部41dから下部41cの角までの奥行き及び開口部41dの幅は、実施の形態1と同様である。
【0042】
手掛け部41aは、傾斜部41dの上端部41eが蒸気回収タンク41内に貯えられる水の上限水位の位置に、傾斜部41dの下端部41fが水の下限水位の位置となるように、蒸気回収タンク41の側面に設けられていると共に、傾斜部41dの傾斜角と長さが設定されている。また、その傾斜部41bの上面には、水が付着した際に色が変色する例えば親水性塗料42が塗布されている。
【0043】
このように、蒸気回収タンク41を構成することによって、使用者が蒸気回収タンク41の上部開口から水を注ぎ入れ、手掛け部41aの傾斜部41bの下端部41f側の親水性塗料42が変色した際には、その傾斜部分の色の変色を目安に、適切な水量が貯留されたと判断し注水を停止する。
【0044】
以上のように実施の形態3によれば、蒸気回収タンク41の側面に複数本の指が挿入可能な手掛け部41aを設けているので、蒸気回収タンク41の持ち運びが容易となり、安全性が向上する。また、蒸気回収タンク41の落下を防止するためのハンドルを新たに設ける必要がないため、構造が簡素化でき、手入れも容易である。
また、蒸気回収タンク41内に水を注いでいるときに、手掛け部41aの傾斜部41bの上面に塗布された親水性塗料42が変色した場合には、適切な水量が貯えられたと判断できるようにしているので、水量を確認する際に視線を変える必要がなく、水の注ぎ入れ作業が容易となり、利便性が向上する。
【0045】
なお、本実施の形態では、手掛け部41aを、蒸気回収タンク41の側面の長手方向の略中央に設けたことを述べたが、実施の形態2のように、手掛け部41aを、蒸気回収タンク41の側面の長手方向の略中央を中心として、左右に2つ設けるようにしても良い。
【0046】
前述した実施の形態1乃至3では、手掛け部21a、31a、31e、41aの奥行きを30mm、手掛け部21a、31a、31e、41aの開口部21d、31d、31h、41dの幅を60mmとしたが、これに限定されるものではない。
【0047】
また、実施の形態1乃至3では、一般家庭用の炊飯器100に蒸気回収タンク21、31、41を用いて説明したが、蒸気回収装置20を備えた業務用の炊飯器に蒸気回収タンク21、31、41の何れかを用いても良い。