【実施例】
【0035】
実施例1
[0049] 2〜4歳の成体ビーグル犬17匹(対照n=8、抗酸化剤強化n=9)を、ランダムに対照食または強化食のグループに入れた。対照食は59ppmのビタミンEおよび<32ppmのビタミンCを含有していた。試験食は900ppmのビタミンEおよび121ppmのビタミンC、260ppmのL−カルニチンならびに135ppmのアルファ−リポ酸を含んでいた。この食事の開始後、約1カ月目に、イヌに課された最初の問題解決作業はランドマーク識別学習作業であった;これは空間注意(spatial attention)試験である(Milgram, N. W., Adams, B., Callahan, H., Head, E., Mackey, B., Thirlwell, C. & Cotman, C. W. (1999): Landmark discrimination learning in the dog. Learning & Memory, 6:54-61)。
【0036】
[0050] ランドマーク識別学習には、被験体が、ある物体との近接に基づいて特定の物体を選択することが要求される。しかし、最初の学習はイヌが物体識別作業を学習する能力に基づく。本発明者らは、識別学習に対する年齢の影響は作業の困難度に依存することを以前に見出した。
【0037】
[0051] ランドマーク0試験を学習させた場合、強化食を与えた成犬は対照食を与えた成犬よりエラーが少なかった(対照平均=31.1、強化平均=15.1)。成犬をランドマーク1および2試験へ進めた;これらの場合、ランドマークをプラスのウェルからさらに遠くへ移動させる。強化食を与えた成犬は、対照を与えた成犬より少ないエラーでランドマーク0〜2を学習した(ランドマーク0+1+2の平均エラー回数(対照)=132.9;ランドマーク0+1+2の平均エラー回数(強化食を与えたイヌ)=87.1)。
【0038】
実施例2
[0052] ランダムな供給源の成犬30匹をこの試験に用いた。イヌは、試験開始前に少なくとも1カ月齢であり、妊娠しておらず、授乳しておらず、かつ妥当な体重のものであった。動物を食事処理についてランダムに、各グループ当たり雄3匹および雌3匹を含む5グループに分けた。
【0039】
[0053] すべてのイヌに、American Association of Feed Control Officials(AAFCO 2000)が提唱する栄養素に関するすべての推奨を満たすかまたはそれらを上回る対照食(0ppmのDL−アルファ−リポ酸を添加)を、2週間の前給餌期間中に与えた(表1)。この前給餌期間後、イヌをランダムに、下記のDL−アルファ−リポ酸目標含有率のいずれかひとつを含む5つの処置グループに分けた(乾燥物質基準):0ppm、150ppm、1,500ppm、3,000ppm、4,500ppm。対照およびアルファ−リポ酸のすべての食事にビタミンEが添加されて600〜1000国際単位のレベルで存在し、かつビタミンCを少なくとも100〜200ppmのレベルで添加した。
【0040】
[0054] 水以外は試験食が唯一の栄養素源であった。新鮮な水が適宜与えられた。イヌを選択し、初期体重を測定した後、食物の予想MEに基づいて各イヌにつき食物量を計算した。初期食物量の計算は、次式により計算される、普通の活動をの説明となる係数を掛けたそのイヌについての維持エネルギー要求量(maintenance energy requirement)(MER)に基づいた:
MER(kcal/日)=1.6×RER(Resting Energy Requirement、安静時エネルギー要求量)
式中:RER(kcal/日)=70×体重(kg).sup.0.75。
【0041】
[0055] イヌを週1回、体重測定し、それらの最適体重を維持するのに十分な食物を与えるために必要に応じて食物量を調整した。最適体重を5点スケールで3と決定した。食物量を調整した後にイヌが初期体重の−10%以内の体重を維持しなかった場合、それを試験から除外した。体重および食物摂取量のすべての測定値を記録した。
【0042】
[0056] 試料を粉砕し、0.100±0.001gの試料を5.0mlのリン酸緩衝液(10mMのNa
2HPO
4、2mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.9%のNaCl、pH7.4)中へ2回抽出した。250μLの抽出液を、テフロン(Teflon)内張り蓋付きの5mlガラス製遠心管に入れた。15μLのEDTA溶液(100mM EDTA;約1MのNaOHでpH7.8に調整)および50.mu.lの調製したばかりの5mMジチオトレイトール(DTE)を添加した。溶液を渦攪拌し、室温で5分間インキュベートした。次いで10.mu.lの1M H
3PO
4および2.0mlのジエチルエーテルを添加した。遠心管に蓋をし、渦攪拌し、1500×gで3分間、室温において遠心した。エーテル層を別の5mlガラス製遠心管へ移し、一方、水層をさらに2回、1.5mlのエーテルで抽出した。同一試料からのすべての抽出液を合わせた。次いで抽出液を室温の水浴内の窒素蒸発器で乾燥させる。この時点で、試料に蓋をし、一夜凍結させた。
【0043】
[0057] 乾燥した抽出液を次いで融解し、70.mu.lのSDS/EDTA溶液(0.11%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、15mMのEDTA、0.9%のNaCl)および5μLの調製したばかりの1mM DTEで再構成した。50μLの調製したばかりのNaBH
4を次いで各試験管に添加した。試験管を渦攪拌し、室温で10分間インキュベートした。10分後、試料を−70℃で凍結した。溶液を融解する前に、20μLの2M HClを添加した。溶液を融解した後、800μLの100mM NH
4HCO
3を添加した。溶液を渦攪拌し、5.mu.lのアセトニトリル中100mMモノブロモビマン(monobromobimane)溶液(mBBr)を添加した。次いで溶液を暗所で90分間、室温においてインキュベートした。
【0044】
[0058] インキュベーション後、1.5mlのジクロロメタンで抽出することにより、過剰のmBBrおよびDTE誘導体を試料から除去した。水層をHPLCに乗せた。30%アセトニトリル、1%酢酸からなる、約2MのNH
4OHでpH3.95に調整した移動相を用い、これを1.0mL/分の流速で送出し、注入当たり15分間のイソクラティック溶離で、リポ酸を分離した。この調製により、押出し飼料の密度が1g/mlであることが確認される。
【0045】
[0059] 完全血球計数および血液生化学的分析のために、開始の2週間前、ならびに再び試験の0、28、56、84、112、140および168日目に、血液を無菌的に採集した。さらに、リンパ球の単離のために、食事介入の0、28および84日目に15mlの全血を採集した。
【0046】
[0060] ヘパリン添加した全血を50l Accuspinコニカル遠心管(Sigma Chemical)に積層し、等体積のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を添加した。試料を700×gで30分間、ブレーキをかけずに遠心した。単球層を収穫し、15mlコニカル遠心管に移し、1〜3mlのPBSに再懸濁し、前記と同様に遠心した(1回目の洗浄)。2回目の洗浄を1回目の洗浄と同様に実施した。最後に、細胞を収穫し、過塩素酸(10% w/v)に懸濁し、分析するまで70℃で凍結した。
【0047】
[0061] 試料を−70℃のフリーザーから、ドライアイスを入れたクーラーに移した。バイアルを冷却遠心機内において12,000rpmで5分間遠心した。グルタチオン(GSH)分析用の部分上清をコニカル試験管へ移した。
【0048】
[0062] 酸可溶性抽出物の誘導体化は、Reedおよび協同研究者らの方法(Fariss et al)により、Jonesが改変したもの(Jones et al)に従って行なわれた。
【0049】
[0063] 要約すると、150μLの抽出液または外部標準品を1.5mlエッペンドルフチューブに添加し、続いて20μLのガンマ−glu−glu内部標準品および50μLのIAAを添加し、続いて混合した。この溶液を、KOH−KHCO
3作業溶液を用いてpH約10に調整した(紫色)。溶液を室温で暗所において1時間インキュベートした。サンガー試薬を全体積と同体積で添加し、溶液を室温で暗所において一夜(20時間)インキュベートした。
【0050】
[0064] インキュベーション後、溶液を12,000rpmで5分間遠心し、上清を他の1.5mlエッペンドルフチューブに移した。HPLC分析のために200μLの上清を容量300μLのこはく色オートバイアルに添加し、クリンパーで上を固定した。
【0051】
[0065] 溶剤および分離条件は記載に従った(Fariss,Jones)。GSHおよびGSSGのレベルを基準品と対比して定量した。誘導体化効率を評価するために、ガンマ−グルタリル−グルタメートを内部標準品として用いた。
【0052】
[0066] 臨床化学、血液学および体重の数値とベースラインとの対比を、Windows用SASでの対t−検定により、有意性をP<0.05に設定して分析した。各測定時点における数値の平均を一元ANOVAにより、有意性をP<0.05に設定して分離した。84日目とベースラインの間のGSH:GSSGの差をグループ間でWindows用SASにより一元ANOVAで、有意性をP<0.05に設定して分析した。
【0053】
結果
[0067] 連続7回のアッセイ(0、28、56、84、112、140、168日目)にわたって測定した飼料中のリポ酸濃度(ppm)は、予想アッセイ感度および本発明者らの施設で一般に遭遇する生産パラメーターの範囲内であった(表2)。
【0054】
[0068] 食物摂取データに目立つ点はなかった。6カ月目に、すべてのグループの大部分の動物が平均して試験開始時より多量の食物を摂取した。体重データに目立つ点はなかった;ただし、4,500ppm接種グループで最初に若干の体重減少が起きたけれども、その変化は6カ月目の時点までに元に戻るのが見られた。体重状態スコアはこのわずかな体重減少により影響されたようには見えなかった。
【0055】
[0069] ルーティンな身体検査により栄養関係の異常またはDL−アルファ−リポ酸毒性の何らかの証拠は明らかにならなかった。被験集団のすべての動物が試験期間全体を通して正常なままであった。試験期間中に数匹の動物に時に嘔吐がみられた;しかし、この嘔吐がリポ酸に起因する可能性があるという結論に導く趨勢はみられなかった。最高含有率グループの1匹の動物を、体重減少および白血球増多症のため21日目に試験から脱落させた。この動物における白血球増多症は試験終了時まで回復せず、他の何らかの疾患プロセスに起因する疑いがある。
【0056】
[0070] 28、56、84、112、140および168日目の血清生化学的数値を同一グループのイヌについての初期値と比較すると、幾つかの統計的な差が認められたが、これらの数値は実験室基準範囲内またはそのごく近辺であって数ヶ月間にわたって一貫した趨勢が認められたので、これらはいずれも生物学的に有意であるとはみなされなかった。各期間における対照と他の処置グループとの比較によっても幾つかの統計的な差が見られたが、これらの数値は臨床実験室基準範囲内またはそのごく近辺であって何ら趨勢は存在しなかったので、これらはいずれも生物学的に有意であるとはみなされなかった。
【0057】
[0071] 28、56、84、112、140および168日目の血液学的数値を同一グループのイヌについての初期値と比較すると、幾つかの統計的な差が認められた;しかし、これらの数値は実験室基準範囲内またはそのごく近辺であって何ら趨勢は存在しなかったので、これらはいずれも生物学的に有意であるとはみなされなかった。各期間における対照と他の処置グループとの比較によっても幾つかの統計的な差が見られた;しかし、これらの数値は臨床実験室基準範囲内またはそのごく近辺であって何ら趨勢は存在しなかったので、これらはいずれも生物学的に有意であるとはみなされなかった。
【0058】
GSH:GSSG比
[0072] 84日間の給餌にわたるGSH:GSSG比の変化は食事の有意の全般的影響を示し(P=0.024)、すべての補給グループがこの比の上昇を伴った(表3)。ANOVAにより基礎食物と比較して最低および最高含有率の食物について有意差が見られたが、数値の最大上昇は最低含有率レベルにおいてであった。すなわち、最高および最低含有率の食物についてのGSH:GSSG比の変化は、この同一期間にわたって基礎食物にみられた変化と有意に異なっていた。84日目には4点について比率を判定できなかった;これらの試料(1つの対照グループ、3つの処置グループ)のいずれにおいてもGSSGを検出できなかったからである。したがって、84日目のこの低レベルのGSSGを検出するのに十分なほどアッセイが高感度であれば、補給グループについての数値はより高いGSH:GSSG比を示した可能性すらある。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
* 対照および4,500ppmグループの1匹のイヌは84日目に検出可能なGSSGがなく、一方、3,000ppmグループの2匹のイヌは84日目に検出可能なGSSGがなかった。
【0062】
[0073] アルファ-リポ酸に関するさらに他の所見を適用できる。食事におけるアルファ-リポ酸の長期給餌は、安全かつ有効である。それは還元型グルタチオン(GSH):酸化型グルタチオン(GSSG)比を改善する。食事におけるアルファ−リポ酸の長期投与は、最低1、2、3、4、5もしくは6カ月の期間から1、2、3、4、5もしくは6年の期間まで、または動物の生涯を含めてさらにそれ以上であってもよい。アルファ−リポ酸は封入など特別な保護をしなくても食事において機能し、錠剤、丸剤、カプセル剤など医薬において用いるような単位剤形で食事に存在する必要がない。リポ酸は食事に食事の約25、50、75または100ppmの最小量で供給される。最大範囲はその毒性レベルの直下からそれよりはるかに低く、食事の約400、300または200ppmである。一般に1日当たり約6または7mg/kg(動物の体重)を超えず、より一般的には約5mg/kgを超えない。アルファ−リポ酸は抗酸化剤の防御能を改善し、かつ動物が酸化的損傷に抵抗する能力を改善する。これはすべて、存在する適正な量の他の抗酸化剤、たとえばビタミンEおよびビタミンCについて行われる。これは、アルファ−リポ酸の作用がビタミンCおよび/またはビタミンEの作用を超えることを証明する。
【0063】
実施例3
実験条件
[0074] 20匹のイヌに30日間給餌した。10匹にはAAFCOレベルの対照食、他の10匹のイヌには150ppmのアルファ−リポ酸を含有するAAFCOレベルの対照食を与えた。30日間の終了時に各イヌから全血試料をPaxgenチューブに採集した。
【0064】
[0075] 全血試料からPAXgene RNA単離キットを用いて全RNAを単離した。すべての測定をcanine 2 Affymetrix遺伝子チップにより行なった。統計分析のために、すべての測定値をRMAで正規化した。すべての分析をPartekにより実施した。対照食と試験食の間で差次発現する遺伝子(<0.05の数値を伴う少なくとも20%の発現変化)についてANOVA t−検定を実施した。
【0065】
[0076] 差次発現する遺伝子をGeneGoパスウェイ分析ソフトウェアで分析した。リポ酸を30日間与えたイヌはインターフェロン仲介による抗ウイルス応答を示した。イヌにリポ酸を30日間与えることによりアップレギュレートされた遺伝子であってインターフェロン仲介による抗ウイルス応答に関与するものを表4に挙げる。
【0066】
【表4-1】
【0067】
【表4-2】
【0068】
[0077] リポ酸を30日間与えたイヌの試験に基づいて、本発明者らは意外にも、インターフェロンアルファ/ベータおよびガンマに対する細胞表面受容体が増加し、これによって全体的なインターフェロン仲介による抗ウイルス防御機序を増大させる効力が生じることを見出した。JAK2、すなわちSTAT1およびSTAT2の重要なアクチベーターがアップレギュレートされることを本発明者らは見出した。インターフェロン調節因子9(IFR9)がアップレギュレートされる。IFR9、STAT1およびSTAT2は複合体(ISFG3)を形成し、これは核へ移行し、抗ウイルス遺伝子、インターフェロン誘導による二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ(PKR)、および2−5A−依存性リボヌクレアーゼ(RnaseL)をアップレギュレートする。PKRはelF2S1をリン酸化により阻害し、これによりウイルスタンパク質合成を阻害する。RnaseLはウイルスRNAを開裂し、その結果、ウイルスの複製および機能を阻害する。
【0069】
[0078] 本発明の範囲は実施例に開示した特定の態様により限定されるべきでない;実施例は本発明の幾つかの観点の説明のためのものであり、機能的に均等ないずれの態様も本発明の範囲に含まれる。実際に、本明細書に提示および記載したもののほか本発明の多様な改変が当業者に明らかであろう;それらは特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0070】
[0079] 引用したいずれの文献についてもその開示内容全体を本明細書に援用する。