特許第5743917号(P5743917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743917
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】ふかし壁
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20150611BHJP
   E04B 2/76 20060101ALI20150611BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   E04B2/74 551E
   E04B2/74 501W
   E04B2/76
   E04B1/82 W
   E04B1/82 H
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-17403(P2012-17403)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-155534(P2013-155534A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】河原塚 透
(72)【発明者】
【氏名】青野 秀憲
(72)【発明者】
【氏名】宮田 哲治
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−316467(JP,A)
【文献】 特開2010−265645(JP,A)
【文献】 特開昭58−110748(JP,A)
【文献】 特開2005−105634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/74
E04B 1/82
E04B 2/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間仕切壁の少なくとも一方の表面に設けられるふかし壁であって、
前記間仕切壁の表面に沿って設けられて略鉛直方向に延びる複数の断面略コの字形状の芯材と、当該複数の芯材の外側の面に張り付けられた仕上材と、を備え、
前記各芯材は、前記間仕切壁から所定間隔離れた状態で、弾性変形可能な弾性部を介して当該間仕切壁に支持され
当該弾性部は、弾性接着材が硬化したものであり、断面略三角形状で略鉛直方向に延びて、前記芯材の前記間仕切壁に略直交する側面と前記間仕切壁の表面とを連結することを特徴とするふかし壁。
【請求項2】
前記芯材と前記間仕切壁との間には、緩衝材が介装されることを特徴とする請求項に記載のふかし壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ふかし壁に関する。詳しくは、間仕切壁の表面に設けられるふかし壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、隣接する部屋同士を乾式の間仕切壁で仕切る場合がある。この乾式の間仕切壁は、例えば、所定方向に並んで設けられて略鉛直方向に延びる複数本の鋼製のスタッド(間柱)と、これらスタッドの両側面に張り付けられた石膏ボードと、を備える。
ところで、このような乾式の間仕切壁では、一方の壁面から他方の壁面に伝搬する固体音を軽減することが課題となる。固体音とは、扉の開閉音や壁面を叩いた音など、間仕切壁が振動して伝搬する音である。
【0003】
そこで、間仕切壁の両側面にふかし壁を設けて、固体音を軽減することが提案されている(特許文献1参照)。このふかし壁とは、間仕切壁の表面に沿って設けられて略鉛直方向に延びる複数の芯材と、これら複数の芯材の外側の面に張り付けられた石膏ボードと、を備える。このふかし壁の芯材は、間仕切壁の表面から離間して設けられている。
このふかし壁を設けることにより、ふかし壁の表面が振動しても、この振動は間仕切壁に伝搬せず、固体音を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−32802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上のふかし壁では、芯材が間仕切壁の表面から離れており、この芯材は上下端のみで支持されている。そのため、ふかし壁表面の剛性を向上させるため、石膏ボードを増し張りしたり、芯材のサイズを大きくしたりする必要があり、コストが増大するという問題があった。
【0006】
本発明は、低コストで固体音を低減できるふかし壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のふかし壁は、間仕切壁の少なくとも一方の表面に設けられるふかし壁であって、前記間仕切壁の表面に沿って設けられて略鉛直方向に延びる複数の断面略コの字形状の芯材と、当該複数の芯材の外側の面に張り付けられた仕上材と、を備え、前記各芯材は、前記間仕切壁から所定間隔離れた状態で、弾性変形可能な弾性部を介して当該間仕切壁に支持され、当該弾性部は、弾性接着材が硬化したものであり、断面略三角形状で略鉛直方向に延びて、前記芯材の前記間仕切壁に略直交する側面と前記間仕切壁の表面とを連結することを特徴とする。
【0008】
本発明のふかし壁は、前記間仕切壁は、乾式構造であることが好ましい
【0009】
この発明によれば、ふかし壁の各芯材を、弾性変形可能な弾性部を介して、間仕切壁から所定間隔離れた状態で支持させた。よって、固体音による芯材の振動は、弾性部により減衰されて間仕切壁に伝搬するので、固体音を低減できる。
また、芯材の中間高さの複数箇所に弾性部を設けることにより、芯材を間仕切壁に一体化させて、ふかし壁の剛性を確保できる。よって、石膏ボードを増し張りしたり、芯材のサイズを大きくしたりする必要がなくなるので、コストを抑えることができる。
【0010】
また、間仕切壁が乾式構造である場合には、間仕切壁が鉄筋コンクリート壁のような湿式構造である場合に比べて、固体音が大きくなるため、このような効果が顕著となる。
【0011】
請求項に記載のふかし壁は、前記弾性部は、弾性接着材が硬化したものであることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、弾性接着材を硬化させて弾性部とした。よって、弾性接着材を芯材と間仕切壁との間に付けて硬化させるだけで、弾性部を形成できるので、施工が容易となる。
【0013】
請求項に記載のふかし壁は、前記芯材と前記間仕切壁との間には、緩衝材が介装されることを特徴とする。
【0014】
ここで、緩衝材としては、減衰ゴムのようにばね定数の低い弾性体、ロックウール、グラスウール、発泡ポリスチレン、石膏などが挙げられる。
この発明によれば、芯材と間仕切壁との間に緩衝材を介装したので、間仕切壁で芯材をより確実に支持して、ふかし壁の剛性を向上できる。
【0015】
本発明のふかし壁は、前記間仕切壁の表面に取り付けられる基部と、当該基部から所定間隔離れて設けられて前記芯材を支持する芯材支持部と、を備え、前記基部と前記芯材支持部との間には、前記ふかし壁の厚み方向に沿って延びる隙間が形成され、前記弾性部は、当該隙間に設けられることが好ましい
【0016】
この発明によれば、基部と芯材支持部との間にふかし壁の厚み方向に沿って延びる隙間を形成し、この隙間に弾性部を設けたので、この弾性部は、ふかし壁の厚み方向に大きく弾性変形可能となる。固体音はふかし壁の表面がふかし壁の厚み方向に振動することによって発生するから、ふかし壁の振動をより確実に吸収できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ふかし壁の各芯材を、弾性変形可能な弾性部を介して、間仕切壁から所定間隔離れた状態で支持させた。よって、固体音による芯材の振動は、弾性部により減衰されて間仕切壁に伝搬するので、固体音を低減できる。また、芯材の中間高さの複数箇所に弾性部を設けることにより、芯材を間仕切壁に一体化させて、ふかし壁の剛性を確保できる。よって、石膏ボードを増し張りしたり、芯材のサイズを大きくしたりする必要がなくなるので、コストを抑えることができる。また、間仕切壁が乾式構造である場合には、間仕切壁が鉄筋コンクリート壁のような湿式構造である場合に比べて、固体音が大きくなるため、このような効果が顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るふかし壁が適用された間仕切壁構造の水平断面図である。
図2】前記実施形態に係るふかし壁の部分拡大断面図である。
図3】前記実施形態に係るふかし壁の部分拡大斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るふかし壁の部分拡大断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るふかし壁の変形例である。
図6】本発明の第3実施形態に係るふかし壁の部分拡大断面図である。
図7】前記実施形態に係るふかし壁の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るふかし壁20が適用された間仕切壁構造1の水平断面図である。
間仕切壁構造1は、隣接する部屋同士を仕切る壁であり、間仕切壁10と、この間仕切壁10の両側面に設けられたふかし壁20と、を備える。
【0020】
この間仕切壁10は、乾式構造の遮音壁であり、所定方向に並んで設けられて略鉛直方向に延びる鋼製の間柱11と、これら間柱11の両側面に張り付けられた仕上材12と、これら仕上材12の間の内部空間13に面状に設けられた遮音材14と、を備える。
【0021】
間仕切壁構造1が設けられる床スラブの上面には、間仕切壁10の壁芯に沿って延びる図示しない下部ランナが配置され、間仕切壁構造1が設けられる上階の床スラブの下面には、下部ランナに対向して延びる図示しない上部ランナが配置されている。間柱11は、軽量鉄骨製の断面略コの字形状であり、上述の下部ランナと上部ランナとの間に、間仕切壁10の壁芯に沿って千鳥状に設けられている。
【0022】
仕上材12は、石膏ボードであり、ステープルで間柱11に固定される。
遮音材14は、グラスウールであり、千鳥状に配置された間柱11と仕上材12との隙間を通って、間仕切壁10の全面に亘って面状に設けられている。
【0023】
ふかし壁20は、間仕切壁10の仕上材12の表面に沿って設けられて略鉛直方向に延びる複数の芯材21と、これら複数の芯材21の外側の面つまり仕上材12の反対側の面に張り付けられた仕上材22と、を備える。
また、仕上材22は、石膏ボードであり、ステープルで芯材21に固定される。
【0024】
図2は、ふかし壁20の部分拡大断面図である。
ふかし壁20の芯材21は、軽量鉄骨製であり、断面略コの字形状となっている。すなわち、この芯材21は、外側に開放された開放面21Aと、この開放面21Aに背中合せとなる背面21Cと、この背面21Cと開放面21Aとに隣接する側面21B、21Dと、を有する。
このうち、開放面21Aは、間仕切壁10の仕上材12の表面に対向しており、背面21Cには、ふかし壁20の仕上材22が取り付けられる。
【0025】
芯材21は、仕上材12から所定間隔離れた状態で、弾性変形可能な弾性部23を介して、この仕上材12に支持されている。具体的には、弾性部23は、芯材21の高さ方向に沿って中間高さの複数箇所に設けられており、芯材21の側面21B、21Dと仕上材12の表面との間を連結している(図3参照)。
各弾性部23は、弾性接着材が硬化したものである。すなわち、この弾性接着材は、硬化前はある程度の粘性を有する流体であるが、硬化後には弾性変形可能な固体となる性質である。
【0026】
以上のふかし壁20の芯材21は、以下の手順で建て込んでゆく。
すなわち、図3に示すように、芯材21を建て込む際に、芯材21と間仕切壁10の仕上材12との間にスペーサ24を挟み込む。これにより、芯材21と仕上材12との隙間は一定となる。
次に、芯材21の高さ方向に沿って所定間隔おきに、上述の弾性接着材を付けてゆく。この弾性接着材が硬化して弾性部23を形成した後、スペーサ24を図3中矢印方向に引き抜く。
これにより、芯材21は、間仕切壁10の仕上材12から所定間隔離れるとともに、仕上材12に弾性部23を介して支持される。
【0027】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)ふかし壁20の各芯材21を、弾性変形可能な弾性部23を介して、仕上材12から所定間隔離れた状態で支持させた。よって、固体音による芯材21の振動は、弾性部23により減衰されて仕上材12に伝搬するので、固体音を低減できる。
また、芯材21の中間高さの複数箇所に弾性部23を設けたので、芯材21を仕上材12に一体化させて、ふかし壁20の剛性を確保できる。よって、石膏ボードを増し張りしたり、芯材のサイズを大きくしたりする必要がなくなるので、コストを抑えることができる。
【0028】
また、間仕切壁10が乾式構造であるので、間仕切壁が鉄筋コンクリート壁のような湿式構造である場合に比べて、固体音が大きくなるため、上述の効果が顕著となる。
【0029】
(2)弾性接着材を硬化させて弾性部23とした。よって、弾性接着材を芯材21と間仕切壁10との間に付けて硬化させるだけで、弾性部23を形成できるので、施工が容易となる。
【0030】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態に係るふかし壁20Aの部分拡大断面図である。
【0031】
本実施形態は、芯材21と仕上材12との間に、緩衝材25が介装される点が、第1実施形態と異なる。
この緩衝材25は、芯材21の開放面21Aを覆うように設けられている。この緩衝材25は、減衰ゴム、ロックウール、グラスウール、あるいは発泡ポリスチレンからなる。
なお、これに限らず、図5に示すように、緩衝材25の一部、例えば緩衝材25の芯材21の先端に当接する部分251を、石膏などの異なる材質としてもよい。
【0032】
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(3)芯材21と間仕切壁10の仕上材12との間に緩衝材を介装したので、間仕切壁10で芯材21をより確実に支持して、ふかし壁20の剛性を向上できる。
【0033】
〔第3実施形態〕
図6は、本発明の第3実施形態に係るふかし壁20Bの部分拡大断面図である。図7は、ふかし壁20Bの部分拡大斜視図である。
【0034】
本実施形態は、弾性部23が設けられておらず、ふかし壁20の面外方向の振動を吸収する振動吸収機構30が設けられている点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、振動吸収機構30は、間仕切壁10の仕上材12の表面に取り付けられる基部31と、この基部31から所定間隔離れて設けられて芯材21を支持する芯材支持部32と、基部31と芯材支持部32との間に介装された弾性部33と、を備える。
【0035】
芯材支持部32は、芯材21の開放面21A、側面21B、21Dを囲む断面コの字形状であり、芯材21の側面21B、21Dを挟持している。
基部31は、芯材支持部32を所定間隔離れて囲む断面略コの字形状である。これにより、基部31と芯材支持部32との間には、ふかし壁20の厚み方向に沿って延びる隙間34が形成される。
【0036】
弾性部33は、基部31と芯材支持部32との隙間34に設けられており、これにより、隙間34に沿った方向つまりふかし壁20の厚み方向に大きく弾性変形可能である。
【0037】
本実施形態によれば、上述の(1)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(4)基部31と芯材支持部32との間にふかし壁20の厚み方向に沿って延びる隙間34を形成し、この隙間34に弾性部33を設けたので、この弾性部33は、ふかし壁20の厚み方向に大きく弾性変形可能となる。固体音はふかし壁20の表面がふかし壁の厚み方向に振動することによって発生するから、ふかし壁20の振動をより確実に吸収できる。
【0038】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0039】
1…間仕切壁構造
10…間仕切壁
11…間柱
12…仕上材
13…内部空間
14…遮音材
20、20A、20B…ふかし壁
21…芯材
21A…開放面
21B…側面
21C…背面
21D…側面
22…仕上材
23…弾性部
24…スペーサ
25…緩衝材
30…振動吸収機構
31…基部
32…芯材支持部
33…弾性部
34…隙間
251…緩衝材のうち芯材に当接する部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7