(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アーク炉の炉内発生音を検出して、検出された音の強度に応じた音信号を出力する音検出手段と、前記音信号の周波数を解析して周波数−強度信号を得る周波数解析手段と、前記周波数−強度信号のうち、基本周波数の偶数倍の周波数を中心とした領域の信号成分の強度が、当該領域に近い低周波側および高周波側の各領域の信号成分の強度に比して一定時間以上持続して所定量以上高くなった時にスクラップの溶解完了と判定する判定手段と、を備えるアーク炉の溶解状態判定装置。
アーク炉の炉内発生音を検出して、検出された音の強度に応じた音信号を出力する音検出手段と、前記音信号の周波数を解析して周波数−強度信号を得る周波数解析手段と、基本周波数の偶数倍の周波数を中心とする領域に所定の信号強度範囲で設定された第1の検知領域において前記周波数−強度信号の少なくとも一部の信号成分が当該領域内に入り、かつ前記偶数倍の周波数より低周波側と高周波側の周波数領域でそれぞれ所定の信号強度範囲で設定された第2および第3の検知領域において前記周波数−強度信号の信号成分が全てこれら領域内に入った状態が一定時間以上持続した時にスクラップの溶解完了と判定する判定手段と、を備えるアーク炉の溶解状態判定装置。
【背景技術】
【0002】
アーク炉においてはスクラップの初装溶解から、さらにスクラップを追加して溶解する追装溶解を経て酸化精錬へと複数のステップを経て1チャージの操業を行う。この場合、前ステップから次ステップへの移行はスクラップの追装可ないし溶落等の溶解完了を確認して行うが、密閉式のアーク炉では操業中の炉内を観察することが困難なため、従来は投入電力量のパターンを予めプログラム的に定めている。しかし、スクラップの形状や材質等のバラツキが大きいため、プログラム的な制御では実際のスクラップ溶解状態とのずれが大きくなり、安全率をみて充分なマージンを確保すると無駄な電力消費や熱損失、ホットスポットの発生等を招くという問題がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、アーク炉の炉壁に接してマイクロホンを設けて炉内放電音を電流波形として可視化し、電流波形が振幅の小さい安定した状態になったことで溶解完了の一種である溶落を判定するアーク炉が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の、炉内放電音を電流波形として可視化して電流波形の変化によって溶落を判定するものでは未だ確実な溶落判定ができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、スクラップの溶解完了を確実に判定して無駄な電力消費等を生じることなく次ステップへの工程移行を行うことができるアーク炉の溶解状態判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明では、アーク炉の炉内発生音を検出して、検出された音の強度に応じた音信号(71a)を出力する音検出手段(71)と、音信号(71a)の周波数を解析して周波数−強度信号(72a)を得る周波数解析手段(72)と、上記周波数−強度信号(72a)のうち、基本周波数の偶数倍の周波数を中心とした領域の信号成分の強度が、当該領域に近い低周波側および高周波側の各領域の信号成分の強度に比して一定時間以上持続して所定量以上高くなった時にスクラップの溶解完了と判定する判定手段(4)と、を備える。なお、ここで「溶解完了」には、スクラップの追装を可能にする「追装可」と、酸化精錬等へ移行する「溶落」が含まれる。すなわち、上記「一定時間」を相対的に短く設定すれば「追装可」が判定でき、「一定時間」を相対的に長く設定すれば「溶落」が判定できる。
【0008】
発明者の実験によると、スクラップの溶解完了の際には、基本周波数の偶数倍の周波数を中心とした領域の信号成分の強度が、当該領域に近い低周波側および高周波側の各領域の信号成分の強度に比して顕著に高くなる。そこで、基本周波数の偶数倍の周波数を中心とした領域の信号成分の強度が、当該領域に近い低周波側および高周波側の各領域の信号成分の強度に比して所定量以上高くなった状態が一定時間以上持続した時にスクラップの溶解完了と判定すれば、炉内でのスクラップの溶解完了を確実に判定することができ、それ以後の無駄な電力消費等を回避することができる。
【0009】
本第2発明では、アーク炉の炉内発生音を検出して、検出された音の強度に応じた音信号(71a)を出力する音検出手段(71)と、音信号(71a)の周波数を解析して周波数−強度信号(72a)を得る周波数解析手段(72)と、基本周波数の偶数倍の周波数を中心とする領域に所定の信号強度範囲で設定された第1の検知領域(P)において上記周波数−強度信号(72a)の少なくとも一部の信号成分が当該領域内に入り、かつ上記偶数倍の周波数より低周波側と高周波側の周波数領域でそれぞれ所定の信号強度範囲で設定された第2および第3の検知領域(Q,R)において上記周波数−強度信号(72a)の信号成分が全てこれら領域内に入った状態が一定時間以上持続した時にスクラップの溶解完了と判定する判定手段(4)と、を備える。
【0010】
本第2発明によれば、基本周波数の偶数倍の周波数を中心とした領域の信号成分の強度が、当該領域に近い低周波側および高周波側の各領域の信号成分の強度に比して所定量以上高くなった状態が一定時間以上持続したことを、各検知領域における周波数−強度信号の挙動から確実に認定してスクラップの溶解完了を判定することができる。
【0011】
本発明は方法としても実現でき、この場合、アーク炉の溶解状態判定方法は、アーク炉の炉内発生音を検出し、検出された音の強度に応じた音信号の周波数を解析して周波数−強度信号を得、上記周波数−強度信号のうち、基本周波数の偶数倍の周波数を中心とした領域の信号成分の強度が、当該領域に近い低周波側および高周波側の各領域の信号成分の強度に比して一定時間以上持続して所定量以上高くなった時にスクラップの溶解完了と判定する。なお、ここで「溶解完了」には、スクラップの追装を可能にする「追装可」と、酸化精錬等へ移行する「溶落」が含まれる。すなわち、上記「一定時間」を相対的に短く設定すれば「追装可」が判定でき、「一定時間」を相対的に長く設定すれば「溶落」が判定できる。
【0012】
また、アーク炉の溶解状態判定方法は、アーク炉の炉内発生音を検出して、検出された音の強度に応じた音信号の周波数を解析して周波数−音強度信号を得、基本周波数の偶数倍の周波数を中心とする領域に所定の信号強度範囲で設定された第1の検知領域において上記周波数−強度信号の少なくとも一部の信号成分が当該領域内に入り、かつ上記偶数倍の周波数より低周波側と高周波側の周波数領域でそれぞれ所定の信号強度範囲で設定された第2および第3の検知領域において上記周波数−強度信号の信号成分が全てこれら領域内に入った状態が一定時間以上持続した時にスクラップの溶解完了と判定する。
【0013】
なお、上記偶数倍の周波数は4倍とするのが好ましい。
【0014】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のアーク炉の溶解状態判定装置によれば、スクラップの溶解完了を確実に判定して無駄な電力消費等を生じることなく次ステップへの工程移行を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図1において、商用電源に至る主回路1にはタップチェンジャを備えた炉用変圧器2が設けられ、その二次側回路11はアーク炉3の電極31に至っている。炉用変圧器2からは現在選択されているタップ位置の信号2aが制御装置4へ出力され、一方、制御装置4からは炉用変圧器2に対して所要のタップ位置を選択するためのタップ選択指令信号4aが出力されている。二次側回路11には計器用変流器51と計器用変圧器52が設けられて、制御装置4へそれぞれ二次側回路11の電流(アーク電流)Iと電圧(アーク電圧)Vがフィードバックされている。電極31は図略の電極昇降機構に保持されて昇降可能となっていおり、制御装置4からの電流指令信号4bを受けた電極昇降装置6によって炉内のスクラップ32に対して適宜上昇ないし下降させられる。
【0018】
アーク炉3から離間した位置にこれに向けて音検出手段としての騒音計71が設置されている。騒音計71としては例えばリオン株式会社製NL−21等が使用できる。騒音計71はアーク炉3の炉内発生音を検出して、検出された音の強度に応じた音信号71aを出力する。音信号71aは周波数解析装置72に入力し、各周波数成分に分離されて周波数−強度信号72aが生成される。周波数−強度信号72aは制御装置4に送られて、後述の手順によってアーク炉3のスクラップの追装可や溶落を把握して、次ステップのスクラップ追装や酸化精錬への移行の可否が判定される。なお、周波数解析装置72を制御装置4と一体化して、周波数解析の機能を制御装置4のハードウェアやソフトウェアの一部で実現するようにしても良い。
【0019】
ここで、
図2には商用電源の基本周波数が50Hz、炉用変圧器の容量が75MVA、炉容量が100tであった場合の、音信号71aのうちの、基本周波数の4倍である周波数200Hzとその低周波側と高周波側の190Hz,210Hzの信号成分の時間変化を示す。これによると、初装溶解、追装1溶解、追装2溶解のいずれのステップにおいても、その終期におけるスクラップの追装可ないし溶落時には190Hz,210Hzの各信号の強度が大きく低下するのに対して200Hzの信号強度は、むしろ高くなりあるいはその低下の程度が少なく、低周波側と高周波側の190Hz,210Hzの各信号に対して信号強度が際立って高くなっている。
【0020】
そこで、音信号71aのうち、基本周波数の4倍である周波数200Hz付近の信号成分の強度が、その低周波側と高周波側の190Hz,210Hz付近における信号成分の強度に対して際立って高い状態を検知するために、制御装置4では、周波数−強度信号72aに対して例えば
図3〜
図5に示すような第1〜第3の検知領域P,Q,Rを設定する。
【0021】
本実施形態では検知領域Pを、商用周波数の4倍である周波数200Hzを中心に周波数195Hz〜205Hzの領域で信号強度90dB以上の範囲に設定している。また検知領域Qを、上記周波数200Hzより低周波側の、周波数170Hz〜190Hzの領域で信号強度80dB以下の範囲に設定し、検知領域Rを、上記周波数200Hzより高周波側の、周波数210Hz〜230Hzの領域で信号強度90dB以下の範囲に設定している。なお、これら検知領域は具体的状況に応じて設計的に決定されるものである。
【0022】
初装溶解の初期には
図3に示すように、周波数−強度信号72aの値は検知領域Rでは全て当該領域内に入るが、検知領域Pでは全く入っておらず、検知領域Qでは一部が領域外にある。初装溶解の中期には
図4に示すように、周波数−強度信号72aの値は検知領域Pで略半分が当該領域内に入っているが、検知領域Q,Rでは一部が領域外にある。
【0023】
これに対して、初装溶解の後期でスクラップの溶解が進行すると、
図5に示すように、周波数−強度信号72aの値は検知領域Pで多くの部分が領域内に入るとともに、検知領域Q,Rでは周波数−強度信号72aの値が全て領域内に入る。これは、周波数200Hz付近の音信号71aの信号成分の強度が、その低周波側と高周波側の190Hz,210Hz付近における音信号71aの信号成分の強度に対して際立って高い状態にあることを示している。
【0024】
そこで、周波数−強度信号72aの値が、検知領域Pで少なくとも一部が領域内に入るとともに、検知領域Q,Rで周波数−強度信号72aの値が全て領域内に入ったことが確認され、この状態が一定時間(例えば10秒)以上持続すると制御装置5は追装可と判定してこれを報知する。そこで、スクラップの追装が行われて、追装1溶解が開始される(
図2参照)。追装1溶解においても上記と同様の過程で、周波数−強度信号72aの値が検知領域Pで多くの部分が領域内に入るとともに、検知領域Q,Rで周波数−強度信号72aの値が全て領域内に入り、この状態が上記一定時間以上持続すると追装可と判定され、これに基づいてスクラップの追装が行われて追装2溶解が開始される(
図2参照)。
【0025】
追装2溶解の後期に、周波数−強度信号72aの値が検知領域Pで多くの部分が領域内に入るとともに、検知領域Q,Rで周波数−強度信号72aの値が全て領域内に入り、この状態が一定時間(例えば30秒)以上持続すると溶落と判定され、この場合は、制御装置4からのタップ選択指令信号4aによって炉用変圧器2のタップ位置が適宜変更されて酸化精錬工程へ移行する(
図2参照)。
【0026】
以上のようにして、スクラップの追装可ないし溶落が確実に判定されるから、これ以後の無駄な電力投入を回避することができる。なお、上記実施形態では、周波数−強度信号72aの値が検知領域Pで少なくとも一部が領域内に入るとともに、検知領域Q,Rで周波数−強度信号72aの値が全て領域内に入ることによって、周波数200Hz付近の信号成分の強度が、その低周波側と高周波側の190Hz,210Hz付近における信号成分の強度に対して際立って高い状態にあることを検知したが、この状態を検知するための検知領域の大きさやこれら検知領域内での周波数−強度信号72aの挙動については上記実施形態のものには限られない。
【0027】
上記実施形態では、基本周波数50Hzの4倍の周波数200Hzにおける信号成分強度が、その低周波側と高周波側の190Hz,210Hz付近における信号成分強度に対して際立って高い状態にあることでスクラップの溶落完了を判定したが、
図6〜
図8の周波数−強度信号72aの挙動より明らかなように、基本周波数50Hzの2倍あるいは6倍の周波数100Hz、300Hzの信号成分の強度も、溶解終期のスクラップ溶落完了時には、その低周波側と高周波側の80Hz,120Hz付近、あるいは280Hz、320Hz付近における信号成分強度に対して際立って高い状態にあるから、これらの領域に検知領域を設定するようにしても良い。一般的にはスクラップの溶解完了時には基本周波数の偶数倍の周波数で信号強度が際立って高い状態になるが、上記実施形態に示すような基本周波数の4倍の周波数付近に検知領域を設定するのが好ましい。したがって、基本周波数が60Hzであれば、240Hz付近に検知領域を設定することになる。
【0028】
(第2実施形態)
図9〜
図11には、基本周波数50Hzの4倍に加えて、2倍および6倍の周波数100Hz、300Hz付近での信号成分の強度変化を示す。本実施形態では検知領域Pを、商用周波数の4倍である周波数200Hzを中心に周波数195Hz〜205Hzの領域で信号強度90dB以上の範囲に設定するとともに、検知領域Qを、上記周波数200Hzより低周波側の、周波数170Hz〜190Hzの領域で信号強度80dB以下の範囲に設定し、検知領域Rを、上記周波数200Hzより高周波側の、周波数210Hz〜230Hzの領域で信号強度90dB以下の範囲に設定している。
【0029】
本実施形態ではまた検知領域P1を、商用周波数の2倍である周波数100Hzを中心に周波数95Hz〜105Hzの領域で信号強度85dB以上の範囲に設定するとともに、検知領域Q1を、上記周波数100Hzより低周波側の、周波数70Hz〜90Hzの領域で信号強度80dB以下の範囲に設定し、検知領域R1を、上記周波数100Hzより高周波側の、周波数110Hz〜130Hzの領域で信号強度80dB以下の範囲に設定している。
【0030】
さらに本実施形態では、検知領域P2を、商用周波数の6倍である周波数300Hzを中心に周波数295Hz〜305Hzの領域で信号強度90dB以上の範囲に設定するとともに、検知領域Q2を、上記周波数300Hzより低周波側の、周波数270Hz〜290Hzの領域で信号強度85dB以下の範囲に設定し、検知領域R2を、上記周波数300Hzより高周波側の、周波数310Hz〜330Hzの領域で信号強度85dB以下の範囲に設定している。なお、これら検知領域は具体的状況に応じて設計的に決定されるものである。
【0031】
初装溶解の初期には
図9に示すように、周波数−強度信号72aの値は検知領域Pでは一部が当該領域内に入るが、検知領域Qでは大部分が領域外にあり、検知領域Rでは一部が領域外にある。また、上記信号72aは検知領域P1では一部が当該領域内にあるが、検知領域Q1では一部が領域外にあり、検知領域R1では大部分が領域外にある。さらに、上記信号72aは検知領域P2では一部が当該領域内にあり、検知領域Q2では大部分が領域外にある。検知領域R2では全部が領域外にある。
【0032】
初装溶解の中期には
図10に示すように、周波数−強度信号72aの値は検知領域Pで一部が当該領域内に入っているが、検知領域Q,Rでは一部が領域外にある。また検知領域P1で上記信号72aは一部が当該領域内に入り、検知領域Q1で全てが当該領域内に入っているが、検知領域R1では一部が領域外にある。さらに検知領域P2で上記信号72aは一部が当該領域内に入っているが、検知領域Q,Rでは一部が領域外にある。
【0033】
これに対して、初装溶解の終期でスクラップの溶解が進行すると、
図11に示すように、周波数−強度信号72aの値は検知領域Pで一部が領域内に入るとともに、検知領域Q,Rでは周波数−強度信号72aの値が全て領域内に入る。これは、周波数200Hz付近の音信号71aの信号成分の強度が、その低周波側と高周波側の190Hz,210Hz付近における音信号71aの信号成分の強度に対して際立って高い状態にあることを示している。また上記信号72aの値は検知領域P1で一部が領域内に入るとともに、検知領域Q1,R1では全て領域内に入る。これは、周波数100Hz付近の信号71aの信号成分の強度が、その低周波側と高周波側の90Hz,110Hz付近における信号71aの信号成分の強度に対して際立って高い状態にあることを示している。さらに上記信号72aの値は検知領域P2で一部が領域内に入るとともに、検知領域Q2,R2では全て領域内に入る。これは、周波数300Hz付近の信号71aの信号成分の強度が、その低周波側と高周波側の290Hz,310Hz付近における信号71aの信号成分の強度に対して際立って高い状態にあることを示している。
【0034】
そこで、周波数−強度信号72aの値が、検知領域P、P1,P2で少なくとも一部が領域内に入るとともに、検知領域Q、Q1,Q2,R、R1,R2で周波数−強度信号72aの値が全て領域内に入ったことが確認され、この状態が一定時間(例えば10秒)以上持続すると制御装置4は追装可と判定してこれを報知する。そこで、スクラップの追装が行われて、追装1溶解が開始される(
図2参照)。以下、第1実施形態で説明したと同様の過程で追装1溶解、追装2溶解、酸化精錬工程へ移行させられる。
【0035】
(第3実施形態)
図12〜
図14には商用電源の基本周波数が60Hzである場合の溶落判定の一例を示す。本実施形態では検知領域Pを、商用周波数の4倍である周波数240Hzを中心に周波数235Hz〜245Hzの領域で信号強度90dB以上の範囲に設定している。また検知領域Qを、上記周波数240Hzより低周波側の、周波数210Hz〜230Hzの領域で信号強度80dB以下の範囲に設定し、検知領域Rを、上記周波数240Hzより高周波側の、周波数250Hz〜270Hzの領域で信号強度83dB以下の範囲に設定している。なお、これら検知領域は具体的状況に応じて設計的に決定されるものである。
【0036】
初装溶解の初期には
図12に示すように、周波数−強度信号72aの値は検知領域Q,Rでは全てこれら領域内に入るが、検知領域Pでは全く入っていない。初装溶解の中期には
図13に示すように、周波数−強度信号72aの値は検知領域Q,Rで全てが当該領域内に入っているが、検知領域Pでは領域外にある。
【0037】
これに対して、初装溶解の後期でスクラップの溶解が進行すると、
図14に示すように、周波数−強度信号72aの値は検知領域Pで一部が領域内に入るとともに、検知領域Q,Rでは周波数−強度信号72aの値が全て領域内に入る。これは、周波数240Hz付近の音信号71aの信号成分の強度が、その低周波側と高周波側の220Hz,260Hz付近における音信号71aの信号成分の強度に対して際立って高い状態にあることを示している。
【0038】
そこで、周波数−強度信号72aの値が、検知領域Pで少なくとも一部が領域内に入るとともに、検知領域Q,Rで周波数−強度信号72aの値が全て領域内に入ったことが確認され、この状態が一定時間(例えば10秒)以上持続すると制御装置4は追装可と判定してこれを報知する。その後、スクラップの追装が行われて、追装1溶解が開始される(
図2参照)。以下、第1実施形態で説明したと同様の過程で追装1溶解、追装2溶解、酸化精錬工程へ移行させられる。