特許第5743977号(P5743977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5743977誘電体組成物及びこれを含むセラミック電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743977
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】誘電体組成物及びこれを含むセラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/468 20060101AFI20150611BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20150611BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20150611BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   C04B35/46 D
   H01B3/12 303
   H01G4/12 358
   H01G4/30 301E
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-179406(P2012-179406)
(22)【出願日】2012年8月13日
(65)【公開番号】特開2013-136501(P2013-136501A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2013年9月5日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0143295
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(72)【発明者】
【氏名】カン・ソン・ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ・ドゥ・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ミン・スン
(72)【発明者】
【氏名】ナム・チャン・ヒ
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−203089(JP,A)
【文献】 特開2004−182582(JP,A)
【文献】 特開2005−179174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/46−35/493
H01B 3/12
H01G 4/12
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、
各副成分の含量は副成分の原子モル(atomic mole)を基準とし、前記母材粉末100モルに対して、ジルコニウム(Zr)酸化物または炭化物0.1〜0.6モルを含む第1副成分と、
前記母材粉末100モルに対して、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)のうち少なくとも一つを含む酸化物または炭化物0.8〜6.0モルを含む第2副成分と、
前記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの希土類元素を含む酸化物0.2〜1.8モルを含む第3副成分と、
前記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの遷移金属を含む酸化物0.05〜0.30モルを含む第4副成分と、
前記母材粉末100モルに対して、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)及びタンタル(Ta)のうち少なくとも一つを含む酸化物0.05〜0.35モルを含む第5副成分と、
前記母材粉末100モルに対して、ケイ素(Si)またはアルミニウム(Al)のうち少なくとも一つを含む酸化物0.5〜4.0モルを含む第6副成分と、を含み、前記第1副成分/第5副成分の値が0.75〜1.50であることを特徴とする誘電体組成物。
【請求項2】
前記第3副成分の希土類元素は、Sc、Y、La、Ac、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
前記第4副成分の遷移金属は、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項4】
複数の誘電体層が積層されたセラミック素体と、
前記セラミック素体の内部に形成された複数の内部電極と、
前記セラミック素体の外表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結された少なくとも一対の外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、
各副成分の含量は副成分の原子モル(atomic mole)を基準とし、前記母材粉末100モルに対して、ジルコニウム(Zr)酸化物または炭化物0.1〜0.6モルを含む第1副成分と、
前記母材粉末100モルに対して、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)のうち少なくとも一つを含む酸化物または炭化物0.8〜6.0モルを含む第2副成分と、
前記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの希土類元素を含む酸化物0.2〜1.8モルを含む第3副成分と、
前記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの遷移金属を含む酸化物0.05〜0.30モルを含む第4副成分と、
前記母材粉末100モルに対して、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)及びタンタル(Ta)のうち少なくとも一つを含む酸化物0.05〜0.35モルを含む第5副成分と、
前記母材粉末100モルに対して、ケイ素(Si)またはアルミニウム(Al)のうち少なくとも一つを含む酸化物0.5〜4.0モルを含む第6副成分と、を含み、前記第1副成分/第5副成分の値が0.75〜1.50であることを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項5】
前記誘電体層は、前記母材粉末及び前記第1〜第6副成分を含むセラミック粒子と前記セラミック粒子の間に存在する粒界部とからなり、前記セラミック粒子は、コア部と前記コア部を取り囲むシェル部とからなることを特徴とする請求項4に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記セラミック粒子は結晶粒界(grain boundary)に存在することを特徴とする請求項5に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記第3副成分の希土類元素は、Sc、Y、La、Ac、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択されることを特徴とする請求項4に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記第4副成分の遷移金属は、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択されることを特徴とする請求項4に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記各誘電体層の厚さは0.2〜10.0μmであることを特徴とする請求項4に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
前記内部電極は、NiまたはNi合金を含むことを特徴とする請求項4に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記内部電極は、前記誘電体層と交互に積層されることを特徴とする請求項4に記載のセラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体組成物及びこれを含むセラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料を用いる電子部品には、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、バリスタまたはサーミスタなどがある。
【0003】
このようなセラミック電子部品のうち積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi−Layered Ceramic Capacitor)は、小型でありながら高容量が保障され、実装が容易であるという長所を有する。
【0004】
このような積層セラミックキャパシタは、LCDまたはPDPなどの映像機器、コンピュータ、個人用携帯端末機(PDA:Personal Digital Assistants)または携帯電話などの様々な電子製品の回路基板に装着され、電気を充電または放電させる重要な役割をするチップ形態のコンデンサである。
【0005】
また、積層セラミックキャパシタは、最近、LCD、PDPなどの映像機器の大型化、コンピュータのCPU速度の上昇などによる電子機器の発熱問題が深刻となっており、ICの安定した動作のために、高い温度でも安定した容量と信頼性の確保が求められている。
【0006】
このような積層セラミックキャパシタは、用いられる用途及び容量によって多様なサイズと積層形態を有する。
【0007】
特に、最近の電子製品の小型軽量化及び多機能化の傾向に応えるべく、このような電子製品に用いられる積層セラミックキャパシタも超小型化、超高容量化及び昇圧化が求められている。
【0008】
そこで、製品の超小型化のために誘電体層及び内部電極層の厚さを薄くし、超高容量化のためにできるだけ多数の誘電体層を積層した積層セラミックキャパシタが製造されている。
【0009】
しかし、上記のように積層セラミックキャパシタを製造する際、誘電体層の厚さを薄くし、昇圧化させる場合、この薄層化は、それによる微細構造上の欠陥により、BDV及び高温IRなどの耐電圧特性を悪くする原因となり、また、昇圧化は、誘電体層にかかる電界強度を上昇させてDC−バイアス(bias)特性及び耐電圧特性を悪化させる。
【0010】
これらを防止するためには母材粉末を微粒化する必要があるが、母材粉末の粒子が小さくなると、使用者が所望する容量及び温度特性を実現することが困難になり、誘電率も減少するという問題点があった。
【0011】
先行技術文献1は、本発明と副成分の含量が相違しており、セラミック粒子が結晶粒界に存在したり、コア部及びシェル部からなることが開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−230928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
当技術分野では、信頼性を確保するために、誘電体層の厚さを薄くせずに、従来の誘電体層と同様の容量を実現することができる新たな方案が求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面によると、BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、この母材粉末100モルに対して、ジルコニウム(Zr)酸化物または炭化物0.1〜0.6モルを含む第1副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)のうち少なくとも一つを含む酸化物または炭化物0.8〜6.0モルを含む第2副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの希土類元素を含む酸化物0.2〜1.8モルを含む第3副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの遷移金属を含む酸化物0.05〜0.30モルを含む第4副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)及びタンタル(Ta)のうち少なくとも一つを含む酸化物0.05〜0.35モルを含む第5副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、ケイ素(Si)またはアルミニウム(Al)のうち少なくとも一つを含む酸化物0.5〜4.0モルを含む第6副成分と、を含む誘電体組成物が提供される。
【0015】
本発明の一実施形態において、上記第1副成分/第5副成分の値が0.75〜1.50であることができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、上記第3副成分の希土類元素は、Sc、Y、La、Ac、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択されることができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、上記第4副成分の遷移金属は、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択されることができる。
【0018】
本発明の他の側面によると、複数の誘電体層が積層されたセラミック素体と、上記セラミック素体の内部に形成された複数の内部電極と、上記セラミック素体の外表面に形成され、上記内部電極と電気的に連結された少なくとも一対の外部電極と、を含み、上記誘電体層は、BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、上記母材粉末100モルに対して、ジルコニウム(Zr)酸化物または炭化物0.1〜0.6モルを含む第1副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)のうち少なくとも一つを含む酸化物または炭化物0.8〜6.0モルを含む第2副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの希土類元素を含む酸化物0.2〜1.8モルを含む第3副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの遷移金属を含む酸化物0.05〜0.30モルを含む第4副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)及びタンタル(Ta)のうち少なくとも一つを含む酸化物0.05〜0.35モルを含む第5副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、ケイ素(Si)またはアルミニウム(Al)のうち少なくとも一つを含む酸化物0.5〜4.0モルを含む第6副成分と、を含むセラミック電子部品が提供される。
【0019】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層は、上記母材粉末及び上記第1〜第6副成分を含むセラミック粒子と、上記セラミック粒子の間に存在する粒界部とからなり、上記セラミック粒子は、コア部と上記コア部を取り囲むシェル部とからなることができる。
【0020】
本発明の一実施形態において、上記セラミック粒子は結晶粒界(grain boundary)に存在することができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、上記各誘電体層の厚さは0.2〜10.0μmとすることができる。
【0022】
本発明の一実施形態において、上記内部電極は、NiまたはNi合金を含むことができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、上記内部電極は、上記誘電体層と交互に積層することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一実施形態よると、信頼性を確保するために、誘電体層の厚さを薄くせずに、既存の誘電体組成物と同等の水準の容量を実現できる誘電体組成物及びこれを含むセラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを概略的に図示した斜視図である。
図2図1のA−A’線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0027】
但し、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。
【0028】
また、本発明の実施形態は当技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0029】
従って、図面における要素の形状及び大きさ等はより明確な説明のために誇張されることがあり、図面上において同一の符号で表される要素は同一の要素である。
【0030】
また、類似の機能及び作用をする部分に対しては図面全体にわたって同一の符号を用いる。
【0031】
尚、明細書の全体において、ある構成要素を「含む」ということは、特別に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0032】
本発明は誘電体組成物に関し、本発明の一実施形態による誘電体組成物を含むセラミック電子部品には、積層セラミックキャパシタ、インダクタ、圧電素子、バリスタ、チップ抵抗またはサーミスタなどがあり、以下ではセラミック電子製品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明する。
【0033】
図1及び図2を参照すると、本実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、複数の誘電体層111と、相違する極性を有する複数の第1及び第2内部電極130a、130bが交互に積層されたセラミック素体110を有する。
【0034】
セラミック素体110の両端部には、セラミック素体110の内部に交互に配置された第1及び第2内部電極130a、130bとそれぞれ電気的に連結された第1及び第2外部電極120a、120bが形成されている。
【0035】
セラミック素体110の形状は特に制限されないが、直方体であることが好ましい。
【0036】
また、セラミック素体110は、その寸法も特に制限されず、用途に応じて適切な寸法に形成することができる。
【0037】
誘電体層111の厚さはキャパシタの容量設計に応じて任意に変更することができるが、薄すぎる誘電体層111は、一つの層内に存在する結晶粒の数が少なくて信頼性に悪影響を与える可能性がある。
【0038】
従って、本実施形態では、焼成後の誘電体層111の厚さが1層当り0.2μm以上となるように設定し、好ましくは0.2〜10.0μmとなるように設定することができるが、本発明はこれに限定されない。
【0039】
第1及び第2内部電極130a、130bは、各端面がセラミック素体110の対向する両端部の表面に交互に露出されるように積層することができる。
【0040】
このような第1及び第2内部電極130a、130bに含まれる導電材は特に限定されないが、誘電体層111の構成材料が耐還元性を有しなければならないため、非金属を用いることができる。
【0041】
このような非金属としてはNiまたはNi合金を用いることができ、Ni合金としてはNiと、Mn、Cr、Co及びAlから選択される1種以上の元素を用いることができる。
【0042】
第1及び第2外部電極120a、120bは、セラミック素体110の両端部を包む形態で形成され、セラミック素体110の両端部を介して交互に露出された第1及び第2内部電極130a、130bの露出端面に電気的に連結されてキャパシタ回路を構成することができる。
【0043】
このような第1及び第2外部電極120a、120bに含まれる導電材は、特に限定されないが、電気伝導性に優れたNi、Cu、またはこれらの合金を用いることができる。
【0044】
このようなセラミック素体110を構成する誘電体層111は、耐還元性の誘電体組成物を含むことができる。
【0045】
本実施形態による誘電体組成物は、BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、上記母材粉末100モルに対して、ジルコニウム(Zr)酸化物または炭化物0.1〜0.6モルを含む第1副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)のうち少なくとも一つを含む酸化物または炭化物0.8〜6.0モルを含む第2副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの希土類元素を含む酸化物0.2〜1.8モルを含む第3副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの遷移金属を含む酸化物0.05〜0.30モルを含む第4副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)及びタンタル(Ta)のうち少なくとも一つを含む酸化物0.05〜0.35モルを含む第5副成分と、
上記母材粉末100モルに対して、ケイ素(Si)またはアルミニウム(Al)のうち少なくとも一つを含む酸化物0.5〜4.0モルを含む第6副成分と、を含むことができる。
【0046】
ここで、各副成分の含量は下記例示した副成分の原子モル(atomic mole)を基準とする。
【0047】
原子モルは、酸化物形態またはイオン状態で投入される場合でも、各元素のmole%を意味するものであり、例えば、Y酸化物がYの場合でも、含量はY+3の含量モルとみなして計算したものを意味する。
【0048】
このように構成された誘電体組成物は、既存の誘電体組成物に比べ、同等の水準の高温特性、即ち、高温加速寿命を維持しながらも、常温及び0.5V/μmの条件で誘電定数4000以上の高誘電率を確保することができる。
【0049】
また、少なくとも1220℃以下の還元雰囲気で焼成が可能であるため、セラミック電子製品の製作時にNiまたはNi合金を含む内部電極を用いることができる。
【0050】
一方、上記誘電体層111は、上記の誘電体組成物を含むセラミック粒子と上記セラミック粒子の間に存在する粒界部とからなることができる。
【0051】
この際、上記セラミック粒子は、コア部と上記コア部を取り囲むシェル部とからなることができ、上記コア部またはシェル部に上記誘電体組成物の第1〜第6副成分を偏在して含むようにすることができる。
【0052】
また、上記セラミック粒子は結晶粒界(grain boundary)に存在することができる。
【0053】
以下、本発明の一実施形態による誘電体組成物の各成分をより具体的に説明する。
【0054】
a)母材粉末
母材粉末は、誘電体の主成分であり、BaTiO(0.995≦m≦1.010)系誘電体粉末を用いることができる。
【0055】
この際、m値が0.995未満であると、還元性雰囲気の焼成で還元されやすいため半導性物質に変わりやすく、m値が1.010を超過すると、焼成温度が上昇しすぎるという問題が生じる可能性がある。
【0056】
b)第1副成分
第1副成分として、Zr酸化物または炭化物を含むことができる。
【0057】
このZr酸化物または炭化物は、誘電率を向上させ、より安定した高温加速寿命を維持する役割をし、酸化物または炭化物の形態は特に制限されるものではない。
【0058】
この際、第1副成分の好ましい含量は、母材粉末100モルに対して0.1〜0.6モルとすることができる。
【0059】
もし、第1副成分の含量が0.1モル未満であると、所望の容量を実現することが困難であり、0.6モルを超過すると、信頼性は向上するが、温度変化による誘電率の変化特性(TCC)を満たすことが困難であるという問題が生じる可能性がある。
【0060】
c)第2副成分
第2副成分として、Mg、Sr及びBaのうち少なくとも一つを含む酸化物または炭化物を含むことができる。
【0061】
この第2副成分は、耐還元性と粒成長制御及び焼結安定性を付与する役割をし、上記Mg、SrまたはBaを含む酸化物または炭酸塩は、その形態が特に制限されず、例えば、MgOまたはMgCOなどを用いることができる。
【0062】
この際、第2副成分の好ましい含量は、母材粉末100モルに対して0.8〜6.0モルとすることができる。
【0063】
もし、第2副成分の含量が0.8モル未満であると、還元性雰囲気の焼成で還元されやすく、粒成長の制御が困難であり、6.0モルを超過すると、焼結温度が上昇し、所望の誘電定数値が得られないという問題が生じる可能性がある。
【0064】
d)第3副成分
第3副成分として、少なくとも一つの希土類元素(rare earth element)を含む酸化物を含むことができる。
【0065】
この希土類元素は高温加速寿命を向上させ、相変異温度(Tc)以上での容量変化を安定化させて、所望の温度特性を確保する役割をする。
【0066】
この際、希土類元素は、Sc、Y、La、Ac、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも一つの元素とすることができるが、本発明の希土類元素はこれに限定されない。
【0067】
また、希土類元素を含む酸化物の形態は、特に制限されるものではなく、必要に応じてDy、Y、Hoなど多様に変更して用いることができる。
【0068】
この際、材料の信頼性を高める第3副成分の好ましい含量は、母材粉末100モルに対して0.2〜1.8モルとすることができる。
【0069】
もし、第3副成分の含量が0.2モル未満であると、高温加速寿命が低下し、温度による誘電率の変化特性(TCC)が不安定になる可能性がある。
【0070】
また、第3副成分の含量が1.8モルを超過すると、却って、焼結温度が上昇し所望の誘電定数値が得られず、2次相の発生によって信頼性が低下するという問題が生じる可能性がある。
【0071】
e)第4副成分
第4副成分として、遷移金属を含む酸化物を含むことができる。
【0072】
この遷移金属酸化物は、IRを増加させ、高温加速寿命を向上させる役割をする。このような遷移金属はCr、Mo、W、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択される一つの元素とすることができるが、本発明の遷移金属はこれに限定されない。
【0073】
また、遷移金属を含む酸化物の形態は特に制限されるものではなく、必要に応じてMnO、VまたはMnCOなど多様に変更して用いることができる。
【0074】
この際、好ましい耐還元性及び信頼性を実具することができる第4副成分の含量は、母材粉末100モルに対して0.05〜0.30モルとすることができる。
【0075】
もし、第4副成分の含量が0.05モル未満であると、高温加速寿命が低下し、温度による誘電率の変化特性(TCC)が不安定になる可能性がある。
【0076】
また、第4副成分の含量が0.30モルを超過すると、CR値が低下し、時間による容量変化が大きくなるという問題が生じる可能性がある。
【0077】
f)第5副成分
第5副成分は、V、Nb及びTaのうち少なくとも一つを含む酸化物を含むことができる。
【0078】
この第5副成分はIRを低下させるという問題を有するが、高温加速寿命を向上させ、相変異温度(Tc)以上での容量変化を安定化させる役割をする。上記V、NbまたはTaを含む酸化物は、その形態が特に制限されない。
【0079】
この際、第5副成分の好ましい含量は、母材粉末100モルに対して0.05〜0.35モルとすることができる。
【0080】
もし、第5成分の含量が0.05モル未満であると、高温加速寿命が低下し、第5副成分の含量が0.35モルを超過すると、CR値が低下するという問題が生じる可能性がある。
【0081】
g)第6副成分
第6副成分は、SiまたはAlのうち少なくとも一つを含む酸化物を含むことができる。
【0082】
この第6副成分は、主成分である母材粉末または他の副成分と反応して焼結性を提供するためのものである。
【0083】
この際、好ましい焼結性を提供する第6副成分の含量は、母材粉末100モルに対して0.5〜4.0モルとすることができる。
【0084】
もし、第6副成分の含量が0.5モル未満であると、所望の温度より高い温度で焼成されるという問題がある。
【0085】
また、第6副成分の含量が4.0モルを超過すると、粒成長の制御が困難であるだけでなく、所望の誘電定数値を得ることが困難であるという問題が生じる可能性がある。
【0086】
一方、第1副成分/第5副成分の値が0.75未満であると、焼成温度は低くなるが、高温加速寿命が低下し、焼成状態が不安定になる可能性がある。
【0087】
また、第1副成分/第5副成分の値が1.50を超過すると、焼成温度が高くなるという問題が生じる可能性がある。
【0088】
従って、第1副成分/第5副成分の値は、0.75〜1.50に設定することが好ましい。
【0089】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明をより詳細に説明するが、これは発明を理解しやすくするためのものであり、本発明の範囲は下記実施例により限定されない。
【0090】
[実施例]
表1に記載された組成及び含量に従って、母材粉末と第1〜第6副成分が選択的に含まれた原料粉末を、ジルコニアボールを混合及び分散メディアとして用い、エタノール及びトルエンを溶媒として分散剤及びバインダと混合した後、約20時間ボールミルしてスラリーを製造した。
【0091】
製造されたスラリーは、小型ドクターブレード(doctor blade)方式のコータ(coater)を利用して6.0μm及び10〜13μmの厚さのセラミックシートに成形した。
【0092】
成形されたセラミックシートにNi内部電極を印刷した。
【0093】
この際、上下カバーは10〜13μmの厚さのカバー用シートを20層に積層して製作した。
【0094】
次に、20層の印刷されたシート(active sheet)を加圧及び積層して圧着バー(bar)を製作した。
【0095】
また、この圧着バーを切断機を利用して3.2mm×1.6mmサイズのチップに切断した。
【0096】
このように切断されたチップは脱バインダのためにか焼し、約1150〜1250℃の還元雰囲気の条件で約2時間焼成した後、再酸化のために約1000℃で約3時間熱処理した。
【0097】
次に、焼成されたチップは、ターミネーション工程を経て約24時間放置した後、その特性値を測定した。
【0098】
[評価]
チップの常温静電容量及び誘電損失は、LCR meterを利用して1 kHz、1Vの条件で測定し、温度による静電容量の変化は−55℃〜85℃の範囲で測定した。
【0099】
高温IR昇圧実験は、125℃、1Vr=10V/μmの条件で、電圧段階をDC10V/μmずつ増加させながら抵抗劣化挙動を測定した。ここで、各段階の時間は10分であり、5秒間隔で抵抗値を測定した。このような高温IR昇圧実験から高温耐電圧、即ち、高温加速寿命を導出する。
【0100】
即ち、高温加速寿命は、焼成後4.5μm内外の厚さの20層の誘電体層を有するチップに対して、150℃で電圧段階をDC10V/μmを約10分間印加し、このような電圧段階を継続して増加させながら測定する時、IRが10Ω以上に耐える電圧を意味する。
【0101】
下記のチップ誘電定数は、常温25℃、0.5V/μmの条件での誘電定数値を意味する。
【0102】
下記表1はそれぞれの組成からなる誘電体組成物と、この誘電体組成物により構成されたX5RまたはX7Rプロト−タイプ(proto−type)チップの特性を示したものである。
【0103】
【表1-1】
【0104】
【表1-2】
<誘電体組成物とこの誘電体組成物を用いて製作されたプロト−タイプチップの特性>
【0105】
まず、比較例を用いて、本発明の成分含量範囲を外れた場合の問題を説明する。
【0106】
サンプル1を参照すると、第1副成分が含まれていない場合、誘電定数が3800と基準値である4000より低いことが確認できる。
【0107】
サンプル3を参照すると、第1副成分が基準値を超過した0.8モルの場合、焼結温度が1240℃基準値を超過していることが確認できる。
【0108】
サンプル4を参照すると、第2副成分が基準値より少ない0.7モルの場合、高温加速寿命が1Vrと基準値より低いことが確認できる。
【0109】
サンプル10を参照すると、第3副成分が基準値より少ない0.4モルの場合、誘電定数が3700と基準値である4000より低いことが確認できる。
【0110】
サンプル12を参照すると、第5副成分が基準値を超過した0.5モルの場合、誘電定数が3600と低く、高温加速寿命及びCR値もそれぞれ2Vr及び450と低いことが確認できる。
【0111】
サンプル13を参照すると、第6副成分が基準値を超過した4.5モルの場合、誘電定数が3200と低く、高温加速寿命も1Vrと低いことが確認できる。
【0112】
一方、本実施形態による組成範囲を有するサンプル2、サンプル5〜9、サンプル11及びサンプル14の場合、誘電定数が少なくとも4000以上の優れた数値で、高温加速寿命も少なくとも3Vr以上であった。
【0113】
また、CR値が少なくとも500以上の数値で、焼結温度は1210℃以下であることが確認できた。
【0114】
従って、このような実施例を満たす範囲で誘電体組成物を製造する場合、信頼性を確保するために、誘電体層の厚さを薄くしなくても既存の誘電体層を有する誘電体組成物と同等の水準の容量を実現することができる。
【0115】
本発明は、上述の実施形態及び添付の図面により限定されず、添付の請求の範囲により限定される。
【0116】
従って、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属する。
【符号の説明】
【0117】
100 積層セラミックキャパシタ
110 セラミック素体
111 誘電体層
120a、120b 第1及び第2外部電極
130a、130b 第1及び第2内部電極
図1
図2