(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
悪性細胞の無制御増殖である癌は、現代医学時代の主要な健康問題であり、先進国における主要な死亡原因の一つである。米国においては死亡の四分の一は癌が原因である(Jemal,A.et al.,CA Cancer J.Clin.52:23−47(2002))。癌の中でも、器官及び固体組織から発生する、固形癌(例えば、大腸癌、肺癌、乳癌、胃癌、前立腺癌、膵癌)として知られているものは、最も一般的に同定されているヒトの癌に入る。
【0003】
例えば、前立腺癌は工業国における男性中に最も頻繁に診断される非皮膚性の悪性腫瘍であり、米国においては、8人に1人の男性が一生の間に前立腺癌を発生させるであろう(Simard,J.et al.,Endocrinology 143(6):2029−40(2002))。前立腺癌の発生率は過去数十年間に劇的に増加して、今や前立腺癌は米国及び西ヨーロッパにおける主要な死亡原因である(Peschel,R.E.及びJ.W.Colberg,Lancet 4:233−41(2003);Nelson,W.G.et al.,N.Engl.J.Med.349(4):366−8
1(2003))。前立腺癌を有する男性は、平均余命における平均40%の減少に見舞われる。転移及び莢膜を越えた局所的広がりに先立って早期に検出されれば、前立腺癌はしばしば治癒させることができる(例えば、手術を使用して)。しかしながら、前立腺から広がり及び転移した後で診断されたならば、前立腺癌は通常致命的疾患で治癒率は低い。前立腺特異抗原(PSA)に基づくスクリーニングは前立腺癌の早期診断の助けになってきたが、それは高感度でも特異的でもない(Punglia et al.,N.Engl.J.Med.349(4):335−42 (2003))。このことは高率(%
)の偽陰性及び偽陽性がこの試験に伴っていることを意味する。その結果、癌でない人々に対する誤った癌の示唆及び不必要な追跡生検の両方が多く行われる。
【0004】
乳癌は依然として女性における癌関連死の首位から2番目の原因であり、米国において毎年180,000人を超える女性を冒している。北米の女性にとって、乳癌に罹る生涯の確率は現在八分の一である。BRCA1及びBRCA2の発見は乳癌に関与するキー遺伝因子を同定するのに重要なステップであるが、BRCA1及びBRCA2の変異は乳癌に対する遺伝的かかり易さの一部を説明するに過ぎないことが明らかになった(Nathanson,K.L.,et al.,Human Mol.Gen.10(7):715−720(2001);Anglican Breast Cancer Study
Group. Br.J.Cancer Study Group.Br.J.Cancer 83(10):1301−08(2000);及びSyrjakoski,K.et al.,J.Natl.Cancer Inst.92:1529−31(2000))。乳癌に対する治療法の相当の研究にも拘わらず、乳癌は依然として効果的に診断及び治療することが困難であり、乳癌患者で観察される高い死亡率は、この疾患の診断、治療及び予防において改善が必要であることを示している。
【0005】
皮膚癌を除いて、結直腸癌は米国及びカナダにおいて3番目の頻度で診断される癌である(女性における肺及び乳癌並びに男性における肺及び前立腺癌に次ぐ)。米国癌協会(American Cancer Society)は、2005年に米国で診断された
新しい結直腸癌は約145,000症例であろうと推定している(Cancer Facts and Figures 2005.Atlanta,GA:American Cancer Society,2005。www.cancer.org/docroot/STT/stt_0.aspで利用可能、2005年12月19日に接続した)。結直腸癌は米国及びカナダにおける男性及び女性の間で、癌死の首位から2番目の原因である(肺癌に次ぐ)。
【0006】
膵癌の年間発生数は年間死亡数にほぼ等しく、2004年に米国でそれぞれ31,860及び31,270と推定される(Cancer Facts and Figures
2004.Atlanta,GA:American Cancer Society,2004。www.cancer.org/docroot/STT/stt_0.aspで利用可能、2005年8月21日に接続した)。局所的進行及び転移膵癌の患者の予後は悪く、診断がつくのは、治癒可能な手術又は放射線療法には通常遅すぎる(Burr,H.A.,et al.,The Oncologist 10(3):183−190,(2005))。化学療法は若干の進行膵癌患者に対して症状の軽減を提供することができるが、生存に対するその効果は、今日までのところささやかである。
【0007】
米国において、毎年20,000を超える人々が胃癌と診断されている。米国癌協会は、2004年に米国で診断された新しい結直腸癌は22,710症例であろうと推定している(Cancer Facts and Figures 2004.Atlanta,GA:American Cancer Society,2004。www.can
cer.org/docroot/STT/stt_0.aspで利用可能、2005年
8月21日に接続した)。胃癌は無症状で生じ得るので、診断される時までに進行したステージになっている可能性がある。それで、治療は患者をより楽にして生活の質を改善することに向けられる。
【0008】
肺癌は世界中で如何なる他の形態の癌よりも多くの死の原因となっている(Goodman,G.E.,Thorax 57:994−999(2002))。米国において、肺癌は男性及び女性両方の間で主要な癌死の原因である。2002年に、肺癌による死亡は134,900例と推定され、乳、前立腺及び大腸癌の合計を超えた。Id.肺癌は全ヨーロッパ諸国においても癌死の主たる原因であり、肺癌関連の死亡数は開発途上国においても同様に急速に増加しつつある。
【0009】
全肺癌患者の5年生存率は、診断における疾患のステージを無視しておよそ13%に過ぎない。これは、この疾患が未だ局所的である間に検出された症例の5年生存率46%と対照をなす。しかしながら、肺癌の僅か16%が疾患の拡大してしまう前に発見されるに過ぎない。疾患が進行したステージに達するまで臨床症状がしばしば認められないので、早期の検出は困難である。この癌及び他の癌のための療法の研究にも拘わらず、肺癌は効果的に診断し治療することが困難なままにとどまっている。
【0010】
明らかに、固形癌の特定の形態(例えば、前立腺癌、乳癌、肺癌、胃癌、大腸癌、膵癌)に対する罹り易さに関連するマーカー及び遺伝子の同定は、今日腫瘍学に向かい合う主要な挑戦の一つである。癌の早期検出及び治療に対して、より積極的なスクリーニング及び処置計画が制定され得るように、癌に対する遺伝的羅病性を有する個々人の早期検出のための手段を確認する必要がある。癌遺伝子により、(例えば、低又は高分子量薬剤を使用して)操作し得るキーとなる分子的経路が解明され、特定の癌が最初に診断されたときの癌ステージに無関係なより効果的な治療がもたらされる可能性もある。
【0011】
マイクロRNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)標的にハイブリダイズしてその翻訳抑制又はそれより頻度は少ないが分解のいずれかを作動させることにより、遺伝子発
現を制御する低分子量の非コードRNAの1クラスである。miRNAの発見及び研究により、細胞分化、細胞増殖及び細胞死などの生物発生並びに種々の細胞過程において重要な役割を演ずるmiRNA媒介遺伝子調節機構が明らかになった(Cheng,A.M.,et al.,Nucleic Acids Res.33:1290−1297(2005))。最近の研究は特定のmiRNAの異常発現が、神経疾患(Ishizuka,A.,et al.,Genes Dev.75:2497−2508(2002))及び癌などのヒトの疾患に関与し得ることを示唆している。特に、miRNA−16−1及び/又はmiRNA−15aの誤発現が、ヒト慢性リンパ球性白血病で見出されている(Calin,G.A.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:15524−15529(2002))。
【0012】
明らかに、固形癌(例えば、前立腺癌、乳癌、肺癌、胃癌、大腸癌、膵癌)を検出し治療するための改良された方法のための技術に大なる必要性がある。本発明は、固形癌の診断及び治療のための新規な方法及び組成物を提供する。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、特定の固形癌における発現レベルを変化させた特定のmiRの同定に、一部基づく。
したがって、本発明は、被験者が固形癌を有するか又はそれを発生する危険性があるかを診断する方法を包含する。本発明の方法によれば、被験者の試験試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルは、対照試料中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較される。対照試料中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較した、試験試料中のmiR遺伝子産物のレベルの変化(例えば、上昇、低下)は、被験者が固形癌を有するか又は発生する危険性があるかのいずれかであることを示す。固形癌は、器官及び固体組織から生ずる如何なる癌でもよい。ある態様において、固形癌は胃癌、乳癌、膵癌、大腸癌、肺癌又は前立腺癌である。特定の態様において、固形癌は乳癌、肺癌、前立腺癌、膵癌又は胃腸癌ではない。
【0014】
1態様において、試験試料中の測定される少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−21、miR−191、miR−17−5p及びそれらの組合せからなる群から選択される。他の態様において、試験試料中の測定される少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−21、miR−17−5p、miR−191、miR−29b−2、miR−223、miR−128b、miR−199a−1、miR−24−1、miR−24−2、miR−146、miR−155、miR−181b−1、miR−20a、miR−107、miR−32、miR−92−2、miR−214、miR−30c、miR−25、miR−221、miR−106a及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0015】
1態様において、固形癌は、乳癌又は肺癌であり、試験試料中の測定される少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−210、miR−213及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0016】
特定の態様において、固形癌は、大腸癌、胃癌、前立腺癌又は膵癌であり、且つ試験試料中の測定される少なくとも1種のmiR遺伝子産物はmiR−218−2である。
【0017】
ある態様において、固形癌は乳癌であり、且つ試験試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−125b−1、miR−125b−2、miR−145、miR−21及びそれらの組合せからなる群から選択される。関連する態様において、固形癌は乳癌であり、且つ試験試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物はmiR−21、miR−29b−2、miR−146、miR−125b−2、miR−125b−1、miR
−10b、miR−145、miR−181a、miR−140、miR−213、miR−29a prec、miR−181b−1、miR−199b、miR−29b−1、miR−130a、miR−155、let−7a−2、miR−205、miR−29c、miR−224、miR−100、miR−31、miR−30c、miR−17−5p、miR−210、miR−122a、miR−16−2及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0018】
他の態様において、固形癌は大腸癌であり、且つ試験試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−24−1、miR−29b−2、miR−20a、miR−10a、miR−32、miR−203、miR−106a、miR−17−5p、miR−30c、miR−223、miR−126
*、miR−128b、miR−21、miR−24−2、miR−99b prec、miR−155、miR−213、miR−150、miR−107、miR−191、miR−221、miR−9−3及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0019】
さらに他の態様において、固形癌は肺癌であり、且つ試験試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−21、miR−205、miR−200b、miR−9−1、miR−210、miR−148、miR−141、miR−132、miR−215、miR−128b、let−7g、miR−16−2、miR−129−1/2prec、miR−126
*、miR−142−as、miR−30d、miR−30a−5p、miR−7−2、miR−199a−1、miR−127、miR−34a prec、miR−34a、miR−136、miR−202、miR−196−2、miR−199a−2、let−7a−2、miR−124a−1、miR−149、miR−17−5p、miR−196−1prec、miR−10a、miR−99b prec、miR−196−1、miR−199b、miR−191、miR−195、miR−155及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0020】
さらなる態様において、固形癌は膵癌であり、且つ試験試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−103−1、miR−103−2、miR−155、miR−204及びそれらの組合せからなる群から選択される。関連する態様において、固形癌は膵癌であり、且つ試験試料中のmiR遺伝子産物は、miR−103−2、miR−103−1、miR−24−2、miR−107、miR−100、miR−125b−2、miR−125b−1、miR−24−1、miR−191、miR−23a、miR−26a−1、miR−125a、miR−130a、miR−26b、miR−145、miR−221、miR−126
*、miR−16−2、miR−146、miR−214、miR−99b、miR−128b、miR−155、miR−29b−2、miR−29a、miR−25、miR−16−1、miR−99a、miR−224、miR−30d、miR−92−2、miR−199a−1、miR−223、miR−29c、miR−30b、miR−129−1/2、miR−197、miR−17−5p、miR−30c、miR−7−1、miR−93−1、miR−140、miR−30a−5p、miR−132、miR−18Ib−I、miR−152prec、miR−23b、miR−20a、miR−222、miR−27a、miR−92−1、miR−21、miR−129−1/2prec、miR−150、miR−32、miR−106a、miR−29b−1及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0021】
他の態様において、固形癌は前立腺癌であり、且つ試験試料中のmiR遺伝子産物は、1et−7d、miR−128a prec、miR−195、miR−203、1et−7a−2prec、miR−34a、miR−20a、miR−218−2、miR−29a、miR−25、miR−95、miR−197、miR−135−2、miR−187、miR−196−1、miR−148、miR−191、miR−21、1et
−7i、miR−198、miR−199a−2、miR−30c、miR−17−5p、miR−92−2、miR−146、miR−181b−1prec、miR−32、miR−206、miR−184prec、miR−29a prec、miR−29b−2、miR−149、miR−181b−1、miR−196−1prec、miR−93−1、miR−223、miR−16−1、miR−101−1、miR−124a−1、miR−26a−1、miR−214、miR−27a、miR−24−1、miR−106a、miR−199a−1及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0022】
さらに他の態様において、固形癌は胃癌であり、且つ試験試料中のmiR遺伝子産物は、且つ試験試料中のmiR遺伝子産物は、miR−223、miR−21、miR−218−2、miR−103−2、miR−92−2、miR−25、miR−136、miR−191、miR−221、miR−125b−2、miR−103−1、miR−214、miR−222、miR−212prec、miR−125b−1、miR−100、miR−107、miR−92−1、miR−96、miR−192、miR−23a、miR−215、miR−7−2、miR−138−2、miR−24−1、miR−99b、miR−33b、miR−24−2及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0023】
少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルは、当業者に周知の技法(例えば、定量的又は半定量的RT−PCR、ノーザンブロット分析、溶液ハイブリダイゼーション検出)を使用して測定することができる。特定の態様において、少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルは、被験者から得た試験試料からRNAを逆転写することにより1揃いの標的オリゴデオキシヌクレオチドを提供し、その標的オリゴデオキシヌクレオチドを1種又は2種以上のmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせて(例えば、数種類のmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズさせて)、試験試料についてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供し、その試験試料のハイブリダイゼーションプロファイルと対照試料のハイブリダイゼーションプロファイルとを比較することにより測定される。対照細胞と比較した試験試料中の少なくとも1種のmiRNAのシグナルの変化は、被験者が固形癌を有するか又は発生する危険性があるかのいずれかを示す。特定の態様においては、標的オリゴデオキシヌクレオチドを、miR−21、miR−17−5p、miR−191、miR−29b−2、miR−223、miR−128b、miR−199a−1、miR−24−1、miR−24−2、miR−146、miR−155、miR−181b−1、miR−20a、miR−107、miR−32、miR−92−2、miR−214、miR−30c、miR−25、miR−221、miR−106a又はそれらの組合せからなる群から選択される1種又は2種以上のmiRNAに対するmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズさせる。
【0024】
本発明は、被験者の癌細胞中で少なくとも1種のmiR遺伝子産物が異常に制御(例えば、下方制御、上方制御)されている固形癌(例えば、前立腺癌、胃癌、膵癌、肺癌、乳癌、大腸癌)を有するか又は有すると疑われる被験者における腫瘍形成を抑制する方法も包含する。少なくとも1種の単離されたmiR遺伝子産物が、癌細胞中で下方制御されているとき、本発明の方法は、被験者中の癌細胞の増殖が抑制されるように、有効量の単離されたmiR遺伝子産物、単離された変異種又はmiR遺伝子産物若しくは変異種の生物活性フラグメントを投与することを包含する。さらなる態様において、少なくとも1種の単離されたmiR遺伝子産物は、miR−145、miR−155、miR−218−2及びそれらの組合せからなる群から選択される。特定の態様において、miR遺伝子産物はmiR−15又はmiR−16−1ではない。少なくとも1種の単離されたmiR遺伝子産物が、癌細胞中で上方制御されているとき、本発明の方法は、被験者中の癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも1種のmiR遺伝子産物の発現を抑制する化合物(本
明細書中では「miR発現抑制化合物」と称する)の有効量を被験者に投与することを包含する。特定の態様において、少なくとも1種のmiR発現抑制化合物は、miR−21、miR−17−5p、miR−191、miR−29b−2、miR−223、miR−128b、miR−199a−1、miR−24−1、miR−24−2、miR−146、miR−155、miR−181b−1、miR−20a、miR−107、miR−32、miR−92−2、miR−214、miR−30c、miR−25、miR−221、miR−106a及びそれらの組合せからなる群から選択されるmiR遺伝子産物に対して特異的である。
【0025】
関連する態様において、被験者における腫瘍形成を抑制する方法は、被験者からの癌細胞中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物の量を測定して、癌細胞中のmiR遺伝子産物のレベルを対照細胞中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較するステップをさらに含む。癌細胞中でmiR遺伝子産物の発現が異常に制御されていれば(例えば、下方制御、上方制御)、本発明の方法は、癌細胞中で発現される少なくとも1種のmiR遺伝子産物の量を変化させることをさらに含む。1態様において、癌細胞中で発現されるmiR遺伝子産物の量は、対照細胞(例えば、2種以上の対照細胞)中で発現されるmiR遺伝子産物の量未満であり、下方制御されたmiR遺伝子産物、単離された変異種又は該miR遺伝子産物若しくは変異種の生物活性フラグメントの有効量が被験者に投与される。この態様に適当なmiR遺伝子産物は、とりわけmiR−145、miR−155、miR−218−2及びそれらの組合せを含む。特定の態様において、miR遺伝子産物はmiR−15a、又はmiR−16−1ではない。他の態様において、癌細胞中で発現されるmiR遺伝子産物の量は対照細胞(例えば、2種以上の対照細胞)中で発現されるmiR遺伝子産物の量を超えており、少なくとも1種の上方制御されたmiR遺伝子産物の発現を抑制する少なくとも1種の化合物の有効量が、被験者に投与される。少なくとも1種のmiR遺伝子産物の発現を抑制するための適当化合物には、miR−21、miR−17−5p、miR−191、miR−29b−2、miR−223、miR−128b、miR−199a−1、miR−24−1、miR−24−2、miR−146、miR−155、miR−181b−1、miR−20a、miR−107、miR−32、miR−92−2、miR−214、miR−30c、miR−25、miR−221、miR−106a及びそれらの組合せの発現を抑制する化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明は、固形癌(例えば、前立腺癌、胃癌、膵癌、肺癌、乳癌、大腸癌)を治療するための医薬組成物をさらに提供する。1態様において、医薬組成物は、少なくとも1種の単離されたmiR遺伝子産物及び薬学的に許容される担体を含む。特定の態様において、少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、対照細胞と比較して癌細胞中における発現の減少したレベルを有するmiR遺伝子産物に相当する。ある態様において、単離されたmiR遺伝子産物は、miR−145、miR−155、miR−218−2及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0027】
他の態様において、本発明の医薬組成物は、少なくとも1種のmiR発現抑制化合物及び薬学的に許容される担体を含む。特定の態様において、少なくとも1種のmiR発現抑制化合物は、発現が対照細胞におけるよりも癌細胞における方が大であるmiR遺伝子産物に対して特異的である。ある態様において、miR発現抑制化合物は、miR−21、miR−17−5p、miR−191、miR−29b−2、miR−223、miR−128b、miR−199a−1、miR−24−1、miR−24−2、miR−146、miR−155、miR−181b−1、miR−20a、miR−107、miR−32、miR−92−2、miR−214、miR−30c、miR−25、miR−221、miR−106a及びそれらの組合せからなる群から選択される1種又は2種以上のmiR遺伝子産物に対して特異的である。
【0028】
本発明は、試験薬剤を細胞に与えて細胞中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む、腫瘍形成抑制剤を同定する方法も包含する。1態様において、本発明の方法は、試験薬剤を細胞に与えて、固形癌(例えば、前立腺癌、胃癌、膵癌、肺癌、乳癌、大腸癌)において低下した発現レベルに関連する少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む。適当な対照細胞と比較した細胞中のmiR遺伝子産物のレベルの増加は、試験薬剤が腫瘍形成抑制剤であることを示す。特定の態様において、固形癌において低下した発現レベルと関連する少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−145、miR−155、miR−218−2及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0029】
他の態様において、本発明の方法は、試験薬剤を細胞に与えて、固形癌において上昇した発現レベルと関連する少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む。適当な対照細胞と比較した細胞中のmiR遺伝子産物のレベルの減少は、試験薬剤が腫瘍形成抑制剤であることを示す。特定の態様において、固形癌において上昇した発現レベルと関連する少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−21、miR−17−5p、miR−191、miR−29b−2、miR−223、miR−128b、miR−199a−1、miR−24−1、miR−24−2、miR−146、miR−155、miR−181b−1、miR−20a、miR−107、miR−32、miR−92−2、miR−214、miR−30c、miR−25、miR−221、miR−106a及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0030】
本発明は、大腸、胃、膵臓、肺、乳及び前立腺癌などの異なった固形癌に関連する癌細胞中の、発現が正常対照細胞と比較して変化した特定のマイクロRNAの同定に一部基づく。
【0031】
本明細書において区別なく使用する「miR遺伝子産物」、「マイクロRNA」、「miR」、又は「miRNA」は、miR遺伝子からのプロセシングされていない(例えば、前駆体)又はプロセシングされた(例えば成熟した)RNA転写物を指す。miR遺伝子産物はタンパク質に翻訳されないので、「miR遺伝子産物」という用語はタンパク質を含まない。プロセシングされていないmiR遺伝子転写物は「miR前駆体」又は「miRprec」とも称され、通常鎖長約70〜100ヌクレオチドのRNA転写物を含む。miR前駆体はリボヌクレアーゼ(例えば、ダイサー、アルゴノート(Argonaut)、又はリボヌクレアーゼIII(例えば、大腸菌リボヌクレアーゼIII))で消化することにより活性な19〜25ヌクレオチドRNA分子にプロセシングすることができる。この活性な19〜25ヌクレオチドRNA分子は「プロセシングされた」miR遺伝子転写物又は「成熟」miRNAとも称される。
【0032】
活性な19〜25ヌクレオチドRNA分子は、miR前駆体から天然のプロセシング経路により(例えば完全細胞又は細胞溶解産物を使用して)又は合成プロセシング経路により(例えば、単離されたダイサー、アルゴノート(Argonaut)、又はリボヌクレアーゼIIIなどの単離されたプロセシング酵素を使用して)、得ることができる。活性な19〜25ヌクレオチドRNA分子は、miR前駆体からプロセシングされずに、生物学的又は化学的に直接作製することもできることがわかっている。本明細書中でマイクロRNAが名称で参照されるとき、その名称は、特に断らない限り前駆体及び成熟形の両方に対応する。
【0033】
表1a及び1bは特定の前駆体及び成熟ヒトマイクロRNAのヌクレオチド配列を示す。
【0034】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【0035】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【0036】
本発明は、被験者からの試験試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルを測定して、試験試料中のmiR遺伝子産物のレベルを対照試料中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較することを含む、被験者が固形癌を有するか又はそれを発生する危険性があるかを示す方法を包含する。本明細書中で使用する「被験者」は固形癌を有する、又は有することが疑われる任意の動物であってよい。好ましい態様において、被験者は固形癌を有する、又は有することが疑われるヒトである。
【0037】
1態様において、試験試料中で測定される少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−21、miR−17−5p、miR−191、miR−29b−2、miR−223、miR−128b、miR−199a−1、miR−24−1、miR−24−2、miR−146、miR−155、miR−181b−1、miR−20a、miR−107、miR−32、miR−92−2、miR−214、miR−30c、miR−25、miR−221、miR−106a及びそれらの組合せからなる群から選択される。特
定の態様において、miR遺伝子産物は、miR−21、miR−191又はmiR−17−5pである。他の態様において、miR遺伝子産物は、miR−15a又はmiR−16−1ではない。さらなる態様において、miR遺伝子産物は、miR−159−1又はmiR−192ではない。さらなる態様において、miR遺伝子産物は、miR−186、miR−101−1、miR−194、miR−215、miR−106b、miR−25、miR−93、miR−29b、miR−29a、miR−96、miR−182s、miR−182as、miR−183、miR−129−1、let−7a−1、let−7d、let−7f−1、miR−23b、miR−24−1、miR−27b、miR−32、miR−159−1、miR−192、miR−125b−1、let−7a−2、miR−100、miR−196−2、miR−148b、miR−190、miR−21、miR−301、miR−142s、miR−142as、miR−105−1、又はmiR−175ではない。さらなる態様において、miR遺伝子産物は、miR−21、miR−301、miR−142as、miR−142s、miR−194、miR−215、又はmiR−32ではない。他の態様において、miR遺伝子産物は、miR−148、miR−10a、miR−196−1、miR−152、miR−196−2、miR−148b、miR−10b、miR−129−1、miR−153−2、miR−202、miR−139、let−7a、let−7f、又はlet−7dではない。さらに他の態様において、miR遺伝子産物は、miR−15a、miR−16−1、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217、miR−186ではない。
【0038】
固形癌は器官及び固形組織から生ずる任意の癌であってよい。そのような癌は通常腫瘍塊の形成及び/又は存在を伴い、癌腫、肉腫及びリンパ腫であり得る。本発明の方法により診断することができる固形癌の具体的な例には、大腸癌、直腸癌、胃癌、膵癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、気管支癌、精巣癌、卵巣癌、子宮癌、陰茎癌、悪性黒色腫及び他の皮膚癌、肝癌、食道癌、口腔及び咽頭の癌(例えば、舌癌、口腔癌)、消化系の癌(例えば、腸癌、胆嚢癌)、骨及び関節の癌、内分泌系の癌(例えば甲状腺癌)、脳癌、眼癌、泌尿器系の癌(例えば、腎臓癌、膀胱癌)、ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。特定の態様において、固形癌は乳癌、肺癌、前立腺癌、膵癌又は胃腸の癌の1種又は2種以上ではない。
【0039】
1態様において、固形癌は乳癌又は肺癌であり、且つ試験試料中の測定される少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−210、miR−213及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0040】
さらに他の態様において、固形癌は大腸癌、胃癌、前立腺癌又は膵癌であり、且つ試験試料中の測定される少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−218−2である。
【0041】
本発明のある態様において、固形癌は乳癌であり、試験試料中の測定される少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−125b−1、miR−125b−2、miR−145、miR−21及びそれらの組合せからなる群から選択される。関連する態様において、固形癌は乳癌であり、試験試料中の測定される少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−21、miR−29b−2、miR−146、miR−125b−2、miR−125b−1、miR−10b、miR−145、miR−181a、miR−140、miR−213、miR−29a prec、miR−181b−1、miR−199b、miR−29b−1、miR−130a、miR−155、let−7a−2、miR−205、miR−29c、miR−224、miR−100、miR−31、miR
−30c、miR−17−5p、miR−210、miR−122a、miR−16−2及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0042】
関連する態様において、固形癌は乳癌であり、少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−15a又はmiR−16−1ではない。さらに他の態様において、固形癌は乳癌であり、少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−145、miR−21、miR−155、miR−10b、miR−125b−1、miR−125b−2、let7a−2、let7a−3、let−7d、miR−122a、miR−191、miR−206、miR−210、let−7i、miR−009−1(miR131−1)、miR−34(miR−170)、miR−102(miR−29b)、miR−123(miR−126)、miR−140−as、miR−125a、miR−194、miR−204、miR−213、let−7f−2、miR−101、miR−128b、miR−136、miR−143、miR−149、miR−191、miR−196−1、miR−196−2、miR−202、miR−103−1、又はmiR−30cではない。他の態様において、固形癌は乳癌であり、miR遺伝子産物は、miR−21、miR−125b−1、let−7a−2、let−7i、miR−100、Iet−7g、miR−31、miR−32a−1、miR−33b、miR−34a−2、miR−101−1、miR−135−1、miR−142as、miR−142s、miR−144、miR−301、miR−29c、miR−30c、miR−106a、又はmiR−29b−1ではない。さらに他の態様において、固形癌は乳癌であり、miR遺伝子産物は、miR−159−1又はmiR−192ではない。さらに加わる態様において、固形癌は乳癌であり、miR遺伝子産物は、miR−186、miR−101−1、miR−194、miR−215、miR−106b、miR−25、miR−93、miR−29b、miR−29a、miR−96、miR−182s、miR−182as、miR−183、miR−129−1、let−7a−l、let−7d、let−7f−1、miR−23b、miR−24−1、miR−27b、miR−32、miR−159−1、miR−192、miR−125b−1、let−7a−2、miR−100、miR−196−2、miR−148b、miR−190、miR−21、miR−301、miR−142s、miR−142as、miR−105−1、又はmiR−175ではない。さらなる態様において、固形癌は乳癌であり、miR遺伝子産物は、miR−21、miR−301、miR−142as、miR−142s、miR−194、miR−215又はmiR−32ではない。他の態様において、固形癌は乳癌であり、miR遺伝子産物はmiR−148、miR−10a、miR−196−1、miR−152、miR−196−2、miR−148b、miR−10b、miR−129−1、miR−153−2、miR−202、miR−139、let−7a、let−7f、又はlet−7dではない。さらに他の態様において、固形癌は乳癌であり、miR遺伝子産物は、miR−181b、miR−181c、miR−181d、miR−30、miR−15b、miR−16−2、miR−153−1、miR−217、miR−205、miR−204、miR−103、miR−107、miR−129−2、miR−9又はmiR−137ではない。
【0043】
他の態様において、固形癌は大腸癌であり、試験試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−24−1、miR−29b−2、miR−20a、miR−10a、miR−32、miR−203、miR−106a、miR−17−5p、miR−30c、miR−223、miR−126
*、miR−128b、miR−21、miR−24−2、miR−99b prec、miR−155、miR−213、miR−150、miR−107、miR−191、miR−221、miR−9−3及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0044】
他の態様において、固形癌は大腸癌であり、miR遺伝子産物は、miR−159−1
又はmiR−192ではない。付け加わる態様において、固形癌は大腸癌であり、miR遺伝子産物は、miR−186、miR−101−1、miR−194、miR−215、miR−106b、miR−25、miR−93、miR−29b、miR−29a、miR−96、miR−182s、miR−182as、miR−183、miR−129−1、let−7a−1、let−7d、let−7f−1、miR−23b、miR−24−1、miR−27b、miR−32、miR−159−1、miR−192、miR−125b−1、let−7a−2、miR−100、miR−196−2、miR−148b、miR−190、miR−21、miR−301、miR−142s、miR−142as、miR−105−1、又はmiR−175ではない。さらなる態様において、固形癌は大腸癌であり、miR遺伝子産物は、miR−21、miR−301、miR−142as、miR−142s、miR−194、miR−215、又はmiR−32ではない。他の態様において、固形癌は大腸癌であり、miR遺伝子産物は、miR−148、miR−10a、miR−196−1、miR−152、miR−196−2、miR−148b、miR−10b、miR−129−1、miR−153−2、miR−202、miR−139、let−7a、let−7f、又はlet−7dではない。さらに他の態様において、固形癌は大腸癌であり、miR遺伝子産物は、miR−181b、miR−181c、miR−181d、miR−30、miR−15b、miR−16−2、miR−153−1、miR−217、miR−205、miR−204、miR−103、miR−107、miR−129−2、miR−9又はmiR−137ではない。
【0045】
さらに他の態様において、固形癌は肺癌であり、試験試料中のmiR遺伝子産物は、miR−21、miR−205、miR−200b、miR−9−1、miR−210、miR−148、miR−141、miR−132、miR−215、miR−128b、let−7g、miR−16−2.miR−129−1/2prec、miR−126
*
、miR−142−as、miR−30d、miR−30a−5p、miR−7−2、miR−199a−1、miR−127、miR−34a prec、miR−34a、miR−136、miR−202、miR−196−2、miR−199a−2、let−7a−2、miR−124a−1、miR−149、miR−17−5p、miR−196−1prec、miR−10a、miR−99b prec、miR−196−1、miR−199b、miR−191、miR−195、miR−155及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0046】
関連する態様において、固形癌は肺癌であり、少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−15a又はmiR−16−1ではない。さらなる態様において、固形癌は肺癌であり、少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−21、miR−191、miR−126
*、miR−210、miR−155、miR−143、miR−205、miR−126、miR−30a−5p、miR−140、miR−214、miR−218−2、miR−145、miR−106a、miR−192、miR−203、miR−150、miR−220、miR−192、miR−224、miR−24−2、miR−212、miR−9、miR−17、miR−124a−1、miR−95、miR−198、miR−216、miR−219−1、miR−197、miR−125a、miR−26a−1、miR−146、miR−199b、let7a−2、miR−27b、miR−32、miR−29b−2、miR−33、miR−181c、miR−101−1、miR−124a−3、miR−125b−1又はlet7f−1ではない。他の態様において、固形癌は肺癌であり、少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−21、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−143、miR−205、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−137、miR−186、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−217、miR−204、miR−211
、miR−9、miR−217、let−7a−2又はmiR−32ではない。さらなる態様において、固形癌は肺癌であり、miR遺伝子産物は、let−7c、let−7g、miR−7−3、miR−210、miR−31、miR−34a−1、miR−a−2、miR−99a、miR−100、miR−125b−2、miR−132、miR−135−1、miR−195、miR−34、miR−123、miR−203ではない。他の態様において、固形癌は肺癌であり、miR遺伝子産物は、miR−159−1又はmiR−192ではない。付け加わる態様において、固形癌は肺癌であり、miR遺伝子産物は、miR−186、miR−101−1、miR−194、miR−215、miR−106b、miR−25、miR−93、miR−29b、miR−29a、miR−96、miR−182s、miR−182as、miR−183、miR−129−1、let−7a−1、let−7d、let−7f−1、miR−23b、miR−24−1、miR−27b、miR−32、miR−159−1、miR−192、miR−125b−1、let−7a−2、miR−100、miR−196−2、miR−148b、miR−190、miR−21、miR−301、miR−142s、miR−142as、miR−105−1、又はmiR−175ではない。さらなる態様において、固形癌は肺癌であり、miR遺伝子産物は、miR−21、miR−301、miR−142as、miR−142s、miR−194、miR−215、又はmiR−32ではない。他の態様において、固形癌は肺癌であり、miR遺伝子産物は、miR−148、miR−10a、miR−196−1、miR−152、miR−196−2、miR−148b、miR−10b、miR−129−1、miR−153−2、miR−202、miR−139、let−7a、let−7f、又はlet−7dではない。さらに他の態様において、固形癌は肺癌であり、miR遺伝子産物は、miR−181b、miR−181c、miR−181d、miR−30、miR−15b、miR−16−2、miR−153−1、miR−217、miR−205、miR−204、miR−103、miR−107、miR−129−2、miR−9又はmiR−137ではない。
【0047】
さらなる態様において、固形癌は膵癌であり、試験試料中の測定される少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−103−1、miR−103−2、miR−155、miR−204及びそれらの組合せからなる群から選択される。関連する態様において、固形癌は膵癌であり、試験試料中のmiR遺伝子産物は、miR−103−2、miR−103−1、miR−24−2、miR−107、miR−100、miR−125b−2、miR−125b−1、miR−24−1、miR−191、miR−23a、miR−26a−1、miR−125a、miR−130a、miR−26b、miR−145、miR−221、miR−126
*、miR−16−2、miR−146、miR−214、miR−99b、miR−128b、miR−155、miR−29b−2、miR−29a、miR−25、miR−16−1、miR−99a、miR−224、miR−30d、miR−92−2、miR−199a−1、miR−223、miR−29c、miR−30b、miR−129−1/2、miR−197、miR−17−5p、miR−30c、miR−7−1、miR−93−1、miR−140、miR−30a−5p、miR−132、miR−181b−1、miR−152prec、miR−23b、miR−20a、miR−222、miR−27a、miR−92−1、miR−21、miR−129−1/2prec、miR−150、miR−32、miR−106a、miR−29b−1及びそれらの組合せからなる群から選択される。1態様において、固形癌は膵癌であり、miR遺伝子産物は、miR−15a又はmiR−16−1ではない。他の態様において、固形癌は膵癌であり、miR遺伝子産物は、miR−159−1又はmiR−192ではない。付け加わる態様において、固形癌は膵癌であり、miR遺伝子産物は、miR−186、miR−101−1、miR−194、miR−215、miR−106b、miR−25、miR−93、miR−29b、miR−29a、miR−96、miR−182s、miR−182as、miR−183、miR−129−1、let−7a−1、let−7d、let−7f−1、miR−23b、mi
R−24−1、miR−27b、miR−32、miR−159−1、miR−192、miR−125b−1、let−7a−2、miR−100、miR−196−2、miR−148b、miR−190、miR−21、miR−301、miR−142s、miR−142as、miR−105−1、又はmiR−175ではない。さらなる態様において、固形癌は膵癌であり、miR遺伝子産物は、miR−21、miR−301、miR−142as、miR−142s、miR−194、miR−215、又はmiR−32ではない。他の態様において、固形癌は膵癌であり、miR遺伝子産物は、miR−148、miR−l0a、miR−196−1、miR−152、miR−196−2、miR−148b、miR−10b、miR−129−1、miR−153−2、miR−202、miR−139、let−7a、let−7f、又はlet−7dではない。さらに他の態様において、固形癌は膵癌であり、miR遺伝子産物は、miR−181b、miR−181c、miR−181d、miR−30、miR−15b、miR−16−2、miR−153−1、miR−217、miR−205、miR−204、miR−103、miR−107、miR−129−2、miR−9又はmiR−137ではない。
【0048】
他の態様において、固形癌は前立腺癌であり、試験試料中のmiR遺伝子産物は、let−7d、miR−128a prec、miR−195、miR−203、let−7a−2prec、miR−34a、miR−20a、miR−218−2、miR−29a、miR−25、miR−95、miR−197、miR−135−2、miR−187、miR−196−1、miR−148、miR−191、miR−21、let−7i、miR−198、miR−199a−2、miR−30c、miR−17−5p、miR−92−2、miR−146、miR−181b−1prec、miR−32、miR−206、miR−184prec、miR−29a prec、miR−29b−2、miR−149、miR−181b−1、miR−196−1prec、miR−93−1、miR−223、miR−16−1、miR−101−1、miR−124a−1、miR−26a−1、miR−214、miR−27a、miR−24−1、miR−106a、miR−199a−1及びそれらの組合せからなる群から選択される。関連する態様において、固形癌は前立腺癌であり、miR遺伝子産物は、miR−15a又はmiR−16−1ではない。他の態様において、固形癌は前立腺癌であり、miR遺伝子産物は、miR−159−1又はmiR−192ではない。付け加わる態様において、固形癌は前立腺癌であり、miR遺伝子産物は、miR−186、miR−101−1、miR−194、miR−215、miR−106b、miR−25、miR−93、miR−29b、miR−29a、miR−96、miR−182s、miR−182as、miR−183、miR−129−1、let−7a−1、let−7d、let−7f−1、miR−23b、miR−24−1、miR−27b、miR−32、miR−159−1、miR−192、miR−125b−1、let−7a−2、miR−100、miR−196−2、miR−148b、miR−190、miR−21、miR−301、miR−142s、miR−142as、miR−105−1、又はmiR−175ではない。さらなる態様において、固形癌は前立腺癌であり、miR遺伝子産物は、miR−21、miR−301、miR−142as、miR−142s、miR−194、miR−215、又はmiR−32ではない。他の態様において、固形癌は前立腺癌であり、miR遺伝子産物は、miR−148、miR−10a、miR−196−1、miR−152、miR−196−2、miR−148b、miR−10b、miR−129−1、miR−153−2.miR−202、miR−139、let−7a、let−
7f、又はlet−7dではない。さらに他の態様において、固形癌は前立腺癌であり、miR遺伝子産物は、miR−181b、miR−181c、miR−181d、miR−30、miR−15b、miR−16−2、miR−153−1、miR−217、miR−205、miR−204、miR−103、miR−107、miR−129−2、miR−9又はmiR−137ではない。
【0049】
さらに他の態様において、固形癌は胃癌であり、試験試料中のmiR遺伝子産物は、miR−223、miR−21、miR−218−2、miR−103−2、miR−92−2、miR−25、miR−136、miR−191、miR−221、miR−125b−2、miR−103−1、miR−214、miR−222、miR−212prec、miR−125b−1、miR−100、miR−107、miR−92−1、miR−96、miR−192、miR−23a、miR−215、miR−7−2、miR−138−2、miR−24−1、miR−99b、miR−33b、miR−24−2及びそれらの組合せからなる群から選択される。関連する態様において、固形癌は胃癌であり、miR遺伝子産物は、miR−15a又はmiR−16−1ではない。他の態様において、固形癌は胃癌であり、miR遺伝子産物は、miR−159−1又はmiR−192ではない。付け加わる態様において、固形癌は胃癌であり、miR遺伝子産物は、miR−186、miR−101−1、miR−194、miR−215、miR−106b、miR−25、miR−93、miR−29b、miR−29a、miR−96、miR−182s、miR−182as、miR−183、miR−129−1、let−7a−1、let−7d、let−7f−1、miR−23b、miR−24−1、miR−27b、miR−32、miR−159−1、miR−192、miR−125b−1、let−7a−2、miR−100、miR−196−2、miR−148b、miR−190、miR−21、miR−301、miR−142s、miR−142as、miR−105−1、又はmiR−175ではない。さらなる態様において、固形癌は胃癌であり、miR遺伝子産物は、miR−21、miR−301、miR−142as、miR−142s、miR−194.、miR−215、又はmiR−32ではない。
他の態様において、固形癌は胃癌であり、miR遺伝子産物は、miR−148、miR−10a、miR−196−1、miR−152、miR−196−2、miR−148b、miR−10b、miR−129−1、miR−153−2、miR−202、miR−139、let−7a、let−7f、又はlet−7dではない。さらに他の態様において、固形癌は胃癌であり、miR遺伝子産物は、miR−181b、miR−181c、miR−181d、miR−30、miR−15b、miR−16−2、miR−153−1、miR−217、miR−205、miR−204、miR−103、miR−107、miR−129−2、miR−9又はmiR−137ではない。
【0050】
少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルは、被験者から得られた生体試料(例えば、細胞、組織)で測定することができる。例えば、組織試料(例えば腫瘍から)は、従来の生検技法により固形癌を有すると疑われる被験者から取り出すことができる。他の態様においては、血液試料を被験者から取り出すことができ、また、血液細胞(例えば白血球)を、DNA抽出の目的で標準的技法により単離することができる。血液又は組織試料は、放射線療法、化学療法又は他の治療処置の開始前に被験者から得ることが好ましい。対応する組織又は血液試料は、被験者の冒されていない組織から、正常なヒト個体又は正常個体集団から、又は被験者試料中の大部分の細胞に対応する培養細胞から得ることができる。次に、被験者の試料からの細胞中の所与のmiR遺伝子から生じたmiR遺伝子産物のレベルを、対照試料の細胞からの対応するmiR遺伝子産物と比較できるように、対照の組織又は血液試料を被験者からの試料と同様に処理する。生体試料のための参照miR発現標準も、対照として使用することができる。
【0051】
対照試料中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較して、被験者から得た試料中のmiR遺伝子産物のレベルが変化(例えば、上昇又は低下)していることは、被験者中に固形癌が存在することを示す。1態様において、試験試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルは、対照試料中の対応するmiR遺伝子産物のレベルを超える(即ち、miR遺伝子産物の発現は「上方制御」されている)。被験者の細胞又は組織中のmiR遺伝子産物の量が対照細胞又は組織中のmiR遺伝子産物の量を超えているとき、本明細
書においては、miR遺伝子の発現が「上方制御」されているという。他の態様においては、試験試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルが対照試料中の対応するmiR遺伝子産物のレベル未満である(即ち、miR遺伝子産物の発現は「下方制御」されている)。被験者の細胞又は組織中のその遺伝子から生じたmiR遺伝子産物の量が対照細胞又は組織中の同じ遺伝子から生じた量未満であるとき、本明細書においては、miR遺伝子の発現が「下方制御」されているという。対照及び正常試料中における相対的miR遺伝子発現は1種又は2種以上のRNA発現標準を基準にして測定することができる。標準は、例えば、ゼロmiR遺伝子発現レベル、標準細胞系におけるmiR遺伝子発現レベル、被験者の冒されていない組織におけるmiR遺伝子発現レベル、又は正常ヒト集団について以前に得られたmiR遺伝子発現の平均レベルを含むことができる。
【0052】
試料中のmiR遺伝子産物のレベルは、生体試料中のRNA発現レベルを検出するのに適当な任意の技法を使用して測定することができる。生体試料中(例えば、細胞、組織)のRNA発現レベルを測定するのに適当な任意の技法(例えば、ノーザンブロット分析、RT−PCR、in situハイブリダイゼーション)は、当業者に周知である。特定の態様において、少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルは、ノーザンブロット分析を使用して検出される。例えば全細胞RNAは核酸抽出緩衝液の存在下でホモジナイズし、続いて遠心分離することにより精製することができる。核酸が沈澱し、DNAはデオキシリボヌクレアーゼ処理及び沈澱により除去することができる。次に標準的技法にしたがって、RNA分子をアガロースゲル上のゲル電気泳動により分離して、ニトロセルロースフィルターに移す。次に加熱によりRNAをフィルター上に固定する。特定のRNAの検出及び定量は、問題にしているRNAに相補的な適当に標識されたDNA又はRNAプローブを使用して達成される。例えば、その開示全体を参照により組み込む、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook et al.,eds.,2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989,Chapter 7を参照されたい。
【0053】
所与のmiR遺伝子産物のノーザンブロットハイブリダイゼーションに適したプローブは、表1a及び表1bに示した核酸配列から作製することができて、関心のあるmiR遺伝子産物に少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%。99%の又は完全な相補性を有するプローブを含むがこれらに限定されない。標識されたDNA及びRNAプローブの調製方法並びに標的ヌクレオチド配列の対するそれらのハイブリダイゼーション条件は、その開示全体を参照により本明細書に組み込む、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook et al.,eds.,2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989,Chapter 10及び11に記載されている。
【0054】
例として、核酸プローブは、例えば、
3H、
32P、
33P、
14C、又は
35Sなどの放射性核種;重金属;標識されたリガンドに対する特異的結合対因子として機能し得るリガンド(例えば、ビオチン、アビジン又は抗体);蛍光性分子;化学発光性分子;酵素等で標識することができる。
【0055】
プローブは、その開示全体を参照により本明細書に組み込むRigby et al.(1977),J.MoI.Biol.113:237−251のニックトランスレーション法又はFienberg et al.(1983),Anal.Biochem.132:6−13のランダムプライミング法のいずれかにより、高特異的活性で標識することができる。
後者は、一本鎖DNA又はRNA鋳型から高特異的活性
32P標識プローブの合成を選択
する方法である。例えば、ニックトランスレーション法により、予め存在するヌクレオチドを高放射性ヌクレオチドで置き換えることにより、10
8cpm/マイクログラムを超える十分な特異的活性を有する
32P標識核酸プローブを調製することが可能である。次に、ハイブリダイズさせたフィルターを写真フィルムに露光させることにより、ハイブリダイゼーションのオートラジオグラフィ検出を実施することができる。ハイブリダイズさせたフィルターにより露光させた写真フィルムをデンシトメトリー走査して、miR遺伝子転写レベルを正確に測定できる。miR遺伝子転写レベルは、他の手法を使用して、Amersham Biosciences,Piscataway,NJから入手できるMolecular Dynamics 400−B 2D Phosphorimagerなどのコンピューター画像処理システムにより定量することができる。
【0056】
DNA又はRNAプローブの放射性核種標識が実際的でない場合には、プローブ分子中に類似体、例えば、dTTP類似体5−(N−(N−ビオチニル−ε−アミノカプロイル)−3−アミノアリル)デオキシウリジン三リン酸を組み込むランダムプライマー法を使用することができる。ビオチン化されたプローブオリゴヌクレオチドは、蛍光色素又は発色反応を生ずる酵素と結合させたアビジン、ストレプトアビジン、及び抗体(例えば抗ビオチン抗体)などのビオチン結合タンパク質との反応により検出することができる。
【0057】
ノーザン及び他のRNAハイブリダイゼーション技法に加えて、in situハイブリダイゼーション技法を使用して、RNA転写レベルの測定を実施することができる。この技法は、ノーザンブロット技法よりも必要とされる細胞が少なく、顕微鏡カバーグラス上に細胞を丸ごと付着させて、放射性又は他の方法で標識された核酸(例えばcDNA又はRNA)プローブを含む溶液で、細胞の核酸含有量を調べることを含む。この技法は、被験者からの組織生検試料の分析に特に適している。in situハイブリダイゼーション技法の実行法は、その開示全体を参照により本明細書に組み込む米国特許第5,427,916号中により詳細に記載されている。所与のmiR遺伝子産物のin situハイブリダイゼーション技法に適したプローブは、表1a及び表1bに示した核酸配列から作製することができ、上記のように、関心のあるmiR遺伝子産物に少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%。99%の又は完全な相補性を有するプローブを含むが、これらに限定されない。
【0058】
細胞中のmiR遺伝子転写物の相対的数は、miR遺伝子転写物の逆転写とそれに続くポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)による逆転写された転写物の増幅より測定することもできる。miR遺伝子転写物のレベルは、内部標準、例えば、同一試料中に存在する「ハウスキーピング」遺伝子からのmRNAのレベルと比較して定量することができる。内部標準として適当な「ハウスキーピング」遺伝子は、例えば、ミオシン又はグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PDH)を含む。定量的及び半定量的RT−PCR、及びその変法を実施する方法は、当業者に周知である。
【0059】
ある場合に、試料中の複数の異なるmiR遺伝子産物の発現レベルを同時に測定することが望ましいことがある。他の場合に、癌に関係するすべての既知のmiR遺伝子の転写物の発現レベルを測定することが望ましいことがある。数百のmiR遺伝子又は遺伝子産物に対する癌特異的発現レベルを評価することは、時間がかかり、大量の全RNA(例えば、各ノーザンブロットについて少なくとも20μg)を必要とし、放射性同位体を必要とするオートラジオグラフ技法が必要となる。
【0060】
これらの制限を乗り越えるために、マイクロチップフォーマット(即ちマイクロアレイ)における、1揃いのmiR遺伝子に特異的な1揃いのオリゴヌクレオチド(例えばオリゴデオキシヌクレオチド)を含むオリゴライブラリーを構築することができる。そのようなマイクロアレイを使用して、RNAを逆転写して1揃いの標的オリゴデオキシヌクレオ
チドを生じさせてそれをハイブリダイズさせてマイクロアレイ上のオリゴヌクレオチドを調べ、ハイブリダイゼーション又は発現プロファイルを生じさせることにより、生体試料中の多数のマイクロRNAの発現レベルを測定することができる。次に、試験試料のハイブリダイゼーションプロファイルを対照試料のものと比較して、固形癌細胞中でどのマイクロRNAが変化した発現レベルを有するかを決定することができる。本明細書で使用する「プローブオリゴヌクレオチド」又は「プローブデオキシオリゴヌクレオチド」は、標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドを指す。「標的オリゴヌクレオチド」又は「標的オリゴデオキシヌクレオチド」は、(例えば、ハイブリダイゼーションにより)検出されるべき分子を指す。「miR特異的プローブオリゴヌクレオチド」又は「miRに対して特異的なプローブオリゴヌクレオチド」は、特定のmiR遺伝子産物又は特定のmiR遺伝子産物の逆転写物にハイブリダイズするように選択された配列を有するプローブオリゴヌクレオチドを意味する。
【0061】
特定試料の「発現プロファイル」又は「ハイブリダイゼーションプロファイル」は、本質的に試料の状態の指紋であり、2つの状態が、何らかの特定の遺伝子を同様に発現させ得るが、多数の遺伝子を同時に評価することは、細胞の状態に固有の遺伝子発現プロファイルの生成を可能にする。即ち、正常組織を癌性の(例えば腫瘍)組織と区別することができて、また癌性組織において、異なる予後の状態(例えば、良好又は不良の長期生存予想)を決定することができる。異なった状態の固形癌組織の発現プロファイルを比較することにより、これらの状態の各々においてどの遺伝子が重要であるか(遺伝子の上方及び下方制御の両方を含めて)に関する情報が得られる。固形癌組織中で差次的に発現している配列並びに異なる予後の結果を生ずる差次的発現の同定は、多くの方法でのこの情報の使用を可能にする。例えば、特定の治療計画を評価することができる(例えば、特定の患者で化学療法の薬剤が長期予後を改善するように作用するかどうか決定すること)。同様に、患者の試料と既知の発現プロファイルとを比較することにより、診断をすること又は確認することができる。さらに、これらの発現プロファイル(又は個々の遺伝子)は、固形癌発現プロファイルを抑制し又は不良の予後プロファイルをより良い予後プロファイルに変換する薬剤候補のスクリーニングを可能にする。
【0062】
したがって、本発明は、被験者から得た試験試料からのRNAを逆転写して、1揃いの標的オリゴデオキシヌクレオチドを提供し、標的オリゴデオキシヌクレオチドを、miRNA特異的プローブを含むマイクロアレイにハイブリダイズさせて試験試料についてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供し、試験試料のハイブリダイゼーションプロファイルと対照試料又は参照標準から生じさせたハイブリダイゼーションプロファイルとを比較することを含む、少なくとも1種のmiRNAのシグナルの変化が、被験者は固形癌を有するか又は発生させる危険性があるかのいずれかであることを示す、被験者が固形癌を有する又は発生させる危険性があるかどうかを診断する方法を提供する。1態様において、マイクロアレイは、全ての既知のヒトmiRNAの実質的部分に対するmiRNA特異的プローブを含む。特定の態様において、マイクロアレイは、miR−21、miR−17−5p、miR−191、miR−29b−2、miR−223、miR−128b、miR−199a−1、miR−24−1、miR−24−2、miR−146、miR−155、miR−181b−1、miR−20a、miR−107、miR−32、miR−92−2、miR−214、miR−30c、miR−25、miR−221、miR−106a及びそれらの組合せからなる群から選択される1種又は2種以上のmiRNAに対するmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含む。
【0063】
マイクロアレイは、既知のmiRNA配列から生成させた遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブから調製することができる。アレイは、各miRNAについて、1つは活性な成熟配列を含む、他方はmiRNAの前駆体に対して特異的である、2つの異なったオリゴヌクレオチドプローブを含むことができる。アレイはヒトのオルソログと2〜3塩基
だけ相違する1種又は2種以上のマウス配列などの対照を含むことができ、それはストリンジェントな条件のハイブリダイゼーションのための対照として役立ち得る。両方の種からのtRNA又は他のRNAs(例えば、rRNAs、mRNAs)をマイクロチップ上にプリントして、特異的ハイブリダイゼーションのための比較的安定な陽性内部標準として提供することもできる。非特異的ハイブリダイゼーションのための1つ又は2つ以上の適当な対照を、マイクロチップ上に含ませることもできる。この目的のために、配列は、如何なる既知のmiRNAとも何らの相同性もないことを根拠に選択される。
【0064】
マイクロアレイは、当技術分野において既知の技法を使用して作製することができる。例えば、適当な鎖長、例えば、40ヌクレオチドのプローブオリゴヌクレオチドは、C6位で5’アミン修飾され、市販で入手可能なマイクロアレイシステム、例えば、GeneMachine OmniGrid(登録商標)100Microarrayer及びAmersham CodeLink(登録商標)活性化スライドを使用してプリントされる。標的RNAに対応する標識されたcDNAオリゴマーは、標識されたプライマーを用いて標的RNAを逆転写することにより調製することができる。第一鎖合成に続き、RNA/DNAハイブリッドを変性して、RNA鋳型を分解する。このようにして調製された標識標的cDNAは、次にハイブリダイズ条件下、例えば、6×SSPE/30%ホルムアミド中25℃で18時間マイクロアレイチップにハイブリダイズさせ、続いて0.75×TNT(トリスHCl/NaCl/ツイーン20)中37℃で40分間洗浄する。固定化されたプローブDNAが試料中の相補性の標的cDNAを認識するマイクロアレイ上の位置で、ハイブリダイゼーションが起こる。標識された標的cDNAは結合が起こるアレイ上の正確な位置をマークして、自動検出及び定量を可能にする。出力はハイブリダイゼーション事象のリストからなり、特異的cDNA配列の相対的存在量、したがって患者試料中の対応する相補性miRの相対的存在量を示す。1態様によれば、標識されたcDNAオリゴマーは、ビオチン標識されたプライマーから調製されたビオチン標識cDNAである。次に、マイクロアレイは、例えば、Streptavidin−Alexa647複合体を使用してビオチン含有転写物の直接検出により処理され、従来の走査法を使用して走査される。アレイ上の各スポットの像強度は、患者試料中の対応するmiRの存在量に比例する。
【0065】
アレイの使用は、miRNA発現検出について幾つかの利点を有する。第一に、数百種の遺伝子の全体的発現を、同一試料で1時点で同定することができる。第二に、オリゴヌクレオチドプローブの注意深い設計を通して成熟及び前駆体分子両者の発現を同定することができる。第三に、ノーザンブロット分析と比較して、チップに必要なRNAは少量で、2.5μgの全RNAを使用して再現性ある結果が得られる。比較的限られた数のmiRNA(種当たり200〜300)で、各々に対して別々のオリゴヌクレオチドプローブを使用して、数種類の種に対する共通のマイクロアレイの構築が可能である。そのような手段は、種々の条件下における既知の各miRについての種を越えた発現の分析を可能にするであろう。
【0066】
特定のmiRの定量的発現レベルアッセイのための使用に加えて、miR発現パターン分析のために、miRNomeの実質的部分、好ましくは全miRNomeに対応するmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロチップを使用して、miR遺伝子発現プロファイリングを実施することができる。別々のmiRサインが、確立された疾患マーカー、又は直接的に疾患状態と関連し得る。
【0067】
本明細書に記載した発現プロファイル法により、癌(例えば固形癌)を有すると疑われる被験者の試料からの全RNAは、定量的に逆転写されて、試料中のRNAに相補性の1揃いの標的オリゴヌクレオチドを提供する。次に、標的オリゴデオキシヌクレオチドをmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズさせ
て、試料についてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供する。結果は、試料中のmiRNAの発現パターンを表す、試料についてのハイブリダイゼーションプロファイルである。ハイブリダイゼーションプロファイルは、試料からの標的オリゴデオキシヌクレオチドの、マイクロアレイ中のmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドへの結合からのシグナルを含む。プロファイルは結合の存在の有無(シグナル対ゼロシグナル)として記録することができる。より好ましくは、記録されたプロファイルは、各ハイブリダイゼーションからのシグナル強度を含む。プロファイルは、正常、即ち非癌性の対照試料から生成させたハイブリダイゼーションプロファイルと比較される。シグナルの変化は被験者における癌の存在、又は癌を発生させる傾向を示す。
【0068】
miR遺伝子発現を測定する他の技法も、当技術分野内であり、RNA転写及び分解の速度を測定する種々の技法を含む。
【0069】
本発明は、被験者からの試験試料中の、固形癌における特定の予後(例えば、良好即ち肯定的な予後又は不良即ち不利な予後)に関連する少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む、固形癌を有する被験者の予後を決定する方法も提供する。これらの方法により、対照試料中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較した、試験試料中の特定の予後に関連するmiR遺伝子産物のレベルの変化は、被験者が特定の予後の固形癌を有することを示す。1態様において、miR遺伝子産物は、不利な(即ち不良の)予後に関連する。不利な予後の例には、低い生存率及び急速な疾患の進行が挙げられるが、これらに限定されない。ある態様において、少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルは、被験者から得た試験試料からのRNAを逆転写して1揃いの標的オリゴヌクレオチドを提供し、その標的オリゴヌクレオチドをmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズさせて試験試料に対するハイブリダイゼーションプロファイルを提供し、試験試料のハイブリダイゼーションプロファイルと対照試料から生成させたハイブリダイゼーションプロファイルとを比較することにより測定される。
【0070】
如何なる1つの学説にも拘束されることは望まず、細胞中における1種又は2種以上のmiR遺伝子産物のレベルの変化は、これらのmiRに対する1つ又は2つ以上の意図された標的の異常制御を生じ、それは固形癌の形成に至り得ると信じられる。したがって、miR遺伝子産物のレベルを変化させることにより(例えば、固形癌細胞中で上方制御されているmiR遺伝子産物のレベルを低下させることにより、固形癌細胞中で下方制御されているmiR遺伝子産物のレベルを上昇させることにより)、固形癌の治療に成功するかもしれない。
【0071】
したがって、本発明は、被験者の癌細胞中で異常制御(例えば、下方制御、上方制御)されている固形癌を有する又は有すると疑われる被験者における腫瘍形成を抑制する方法を包含する。少なくとも1種の単離されたmiR遺伝子産物が癌細胞中で下方制御されているとき(例えば、miR−145、miR−155、miR−218−2)、本発明の方法は、被験者中の癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも1種の単離されたmiR遺伝子産物又はその単離された変形種若しくは生物活性フラグメントの有効量を投与することを含む。1態様において、投与される単離されたmiR遺伝子産物は、miR−15a又はmiR−16−1ではない。他の態様において、miR遺伝子産物は、miR−159−1又はmiR−192ではない。付け加わる態様において、miR遺伝子産物は、miR−186、miR−101−1、miR−194、miR−215、miR−106b、miR−25、miR−93、miR−29b、miR−29a、miR−96、miR−182s、miR−182as、miR−183、miR−129−1、let−7a−1、let−7d、let−7f−1、miR−23b、miR−24−1、miR−27b、miR−32、miR−159−1、miR−192、miR−125
b−1、let−7a−2、miR−100、miR−196−2、miR−148b、miR−190、miR−21、miR−301、miR−142s、miR−142as、miR−105−1、又はmiR−175ではない。さらなる態様において、miR遺伝子産物は、miR−21、miR−301、miR−142as、miR−142s、miR−194、miR−215、又はmiR−32ではない。他の態様において、miR遺伝子産物は、miR−148、miR−10a、miR−196−1、miR−152、miR−196−2、miR−148b、miR−10b、miR−129−1、miR−153−2、miR−202、miR−139、let−7a、let−7f、又はlet−7dではない。さらに他の態様において、miR遺伝子産物は、miR−30、miR−15b、miR−16−2、miR−217、miR−205、miR−204、miR−103、miR−107、miR−9、及びmiR−137ではない。さらなる態様において、miR遺伝子産物は、miR−145、miR−21、miR−155、miR−10b、miR−125b−1、miR−125b−2、Iet7a−2、let7a−3、let−7d、miR−122a、miR−191、miR−206、miR−210、let−7i、miR−009−1(miR131−1)、miR−34(miR−170)、miR−102(miR−29b)、miR−123(miR−126)、miR−140−as、miR−125a、miR−194、miR−204、miR−213、let−7f−2、miR−101、miR−128b、miR−136、miR−143、miR−149、miR−191、miR−196−1、miR−196−2、miR−202、miR−103−1、又はmiR−30cではない。他の態様において、miR遺伝子産物は、miR−21、miR−125b−1、let−7a−2、let−7i、miR−100、let−7g、miR−31、miR−32a−1、miR−33b、miR−34a−2、miR−101−1、miR−135−1、miR−142as、miR−142s、miR−144、miR−301、miR−29c、miR−30c、miR−106a、又はmiR−29b−1ではない。
【0072】
例えば、被験者中の癌細胞でmiR遺伝子産物が下方制御されているとき、有効量の単離されたmiR遺伝子産物を被験者に投与することにより、癌細胞の増殖を抑制できる。被験者に投与される単離されたmiR遺伝子産物は、癌細胞中で下方制御されている内因性野生型miR遺伝子産物(例えば、表1a又は表1bに示したmiR遺伝子産物)と同一であってよく、又はその変形種若しくは生物活性フラグメントであってよい。本明細書において定義するmiR遺伝子産物の「変形種」は、対応する野生型miR遺伝子産物と100%未満の同一性を有し、対応する野生型miR遺伝子産物の1種又は2種以上の生物活性を有するmiRNAを指す。そのような生物活性の例には、標的RNA分子の発現の抑制(例えば、標的RNA分子の翻訳の抑制、標的RNA分子の安定性の変調、標的RNA分子のプロセシングの抑制)及び固形癌に関連する細胞過程(例えば、細胞分化、細胞増殖、細胞死)の抑制が挙げられるが、これらに限定されない。これらの変形種は、種の変形種及びmiR遺伝子における1つ又は2つ以上の変異(例えば、置換、欠失、挿入)の結果である変形種を含む。ある態様において、変形種は、対応する野生型miR遺伝子産物と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%同一である。
【0073】
本明細書において定義するmiR遺伝子産物の「生物活性フラグメント」は、対応する野生型miR遺伝子産物の1種又は2種以上の生物活性を有するmiR遺伝子産物のRNAフラグメントを指す。上記のように、そのような生物活性の例には、標的RNA分子の発現の抑制及び固形癌に関連する細胞過程の抑制が挙げられるが、これらに限定されない。ある態様において、生物活性フラグメントは、鎖長が少なくとも約5、7、10、12、15、又は17ヌクレオチドである。特定の態様において、単離されたmiR遺伝子産物は、1種又は2種以上の追加の抗癌治療と組み合わせて被験者に投与することができる。適当な抗癌治療は、化学療法、放射線療法及びそれらの組合せ(例えば化学放射線治療
)を含むが、これらに限定されない。
【0074】
少なくとも1種の単離されたmiR遺伝子産物が癌細胞中で上方制御されているとき、本発明の方法は、固形癌細胞の増殖を抑制するように、少なくとも1種のmiR遺伝子産物の発現を抑制するための有効量の少なくとも1種の、本明細書においてmiR遺伝子抑制化合物と称する化合物を被験者に投与することを含む。特定の態様において、少なくとも1種のmiR発現抑制化合物は、miR−21、miR−17−5p、miR−191、miR−29b−2、miR−223、miR−128b、miR−199a−1、miR−24−1、miR−24−2、miR−146、miR−155、miR−181b−1、miR−20a、miR−107、miR−32、miR−92−2、miR−214、miR−30c、miR−25、miR−221、miR−106a及びそれらの組合せからなる群から選択されるmiR遺伝子産物に対して特異的である。miR遺伝子発現抑制化合物は、1種又は2種以上の追加の抗癌治療と組み合わせて被験者に投与することができる。適当な抗癌治療は、化学療法、放射線療法及びそれらの組合せ(例えば化学放射線治療)を含むが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書で使用する「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、疾患又は状態、例えば固形癌に関連する症状を寛解させることを指し、 疾患の症状の発症を防止し又は遅延させること、及び/又は疾患又は状態の症状の重症度又は頻度を軽減することを含む。用語「被験者」、「患者」及び「個体」は、本明細書では、霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス又は他のウシ類、ヒツジ類、ウマ類、イヌ類、ネコ類、齧歯類、又はネズミ類の種を含むと定義されるが、これらに限定されない哺乳動物などの動物を含む。好ましい態様において、動物はヒトである。
【0076】
本明細書で使用する、単離されたmiR遺伝子産物の「有効量」は、固形癌に罹患している被験者中の癌細胞の増殖を抑制するのに十分な量である。当業者は、被験者のサイズ及び体重、疾患侵入の程度、被験者の年齢、健康状態及び性などの要因;投与経路;並びに投与が局所的か全身的かを考慮に入れることにより、所与の被験者に投与されるべきmiR遺伝子産物の有効量を容易に決定することができる。
【0077】
例えば、単離されたmiR遺伝子産物の有効量は、治療されるべき腫瘍塊の概略の重量を基準にすることができる。腫瘍塊の概略の重量は、1立方センチメートルの体積が、ほぼ1グラムに等しいとき、腫瘍塊の概略の体積を計算することにより決定することができる。腫瘍塊の重量に基づいた単離されたmiR遺伝子産物の有効量は、約10〜500マイクログラム/グラム(腫瘍塊)の範囲であるとしてよい。ある態様において、腫瘍塊は、少なくとも約10マイクログラム/グラム(腫瘍塊)、少なくとも約60マイクログラム/グラム(腫瘍塊)又は少なくとも約100マイクログラム/グラム(腫瘍塊)であり得る。
【0078】
単離されたmiR遺伝子産物の有効量は、治療されるべき被験者の概略の又は推定体重量を基準にすることもできる。好ましくは、そのような有効量は、本明細書に記載したように、非経口的に又は経腸的に投与される。例えば、被験者に投与される単離されたmiR遺伝子産物の有効量は、約5〜3000マイクログラム/kg(体重)、約700〜1000マイクログラム/kg(体重)、又は約1000マイクログラム/kg(体重)を超える範囲であり得る。
【0079】
当業者は、所与の被験者に対して、単離されたmiR遺伝子産物の概略の投与計画を容易に決定することもできる。例えば、miR遺伝子産物を被験者に1回で投与することができる(例えば、単回注射又はデポとして)。あるいは、miR遺伝子産物は、被験者に、約3から約28日、より特別には約7から約10日の期間、1日に1回又は2回投与す
ることができる。特定の投与計画では、miR遺伝子産物は7日間1日1回投与される。投与計画が多数回投与を含む場合、被験者に投与されるmiR遺伝子産物の有効量は、投与計画全体にわたって投与される遺伝子産物の合計量を含み得ると理解される。
【0080】
本明細書で使用する「単離された」miR遺伝子産物は、合成された、又は改変された又は天然の状態からヒトが関与して取り出されたものである。例えば、合成miR遺伝子産物、又は天然状態の共存物質から部分的に若しくは完全に分離されたmiR遺伝子産物は、「単離された」と見なされる。単離されたmiR遺伝子産物は、実質的に精製された形態で存在することが可能であり、又はmiR遺伝子産物が送達された細胞内に存在することができる。したがって、細胞内に、意図的に送達された又は発現されたmiR遺伝子産物は、「単離されたmiR遺伝子産物と見なされる。miR前駆体分子から細胞内で産生されたmiR遺伝子産物も、「単離された」分子と見なされる。本発明により、本明細書に記載された単離されたmiR遺伝子産物は、被験者(例えばヒト)の固形癌を治療するための医薬の製造のために使用することができる。
【0081】
単離されたmiR遺伝子産物は、多くの標準的技法を使用して得ることができる。例えば、miR遺伝子産物は、当技術分野において既知の方法を使用して、化学的に合成され、又は組換えにより産生させることができる。1態様において、miR遺伝子産物は、適当に保護されたリボヌクレオシドホスホルアミダイト及び従来のDNA/RNA合成装置を使用して、化学的に合成される。合成RNA分子又は合成試薬の市販業者としては、例えば、Proligo(ドイツ、Hamburg)、Dharmacon Research(米国、コロラド州Lafayette)、Pierce Chemical(Perbio Scienceの部門、米国、イリノイ州Rockford)、Glen Research(米国、バージニア州Sterling)、ChemGenes(米国、マサチューセッツ州Ashland)及びCruachem(英国、Glasgow)が挙げられる。
【0082】
あるいは、miR遺伝子産物は、任意の適当なプロモーターを使用して、組換え環状又は線状DNAプラスミドから発現させることができる。プラスミドからRNAを発現させる適当なプロモーターは、例えば、U6若しくはH1 RNA pol IIIプロモーター配列、又はサイトメガロウイルスプロモーターを含む。他の適当なプロモーターの選択は、当技術分野の内である。本発明の組換えプラスミドは、癌細胞中にmiR遺伝子産物の発現を誘導し得る又は調節し得るプロモーターを含むこともできる。
【0083】
組換えプラスミドから発現されたmiR遺伝子産物は、標準的技法により、培養細胞発現系から単離することができる。 組換えプラスミドから発現されるmiR遺伝子産物は、癌細胞中に送達することも、及び癌細胞内で直接発現させることもできる。癌細胞にmiR遺伝子産物を送達する組換えプラスミドの使用は、下でより詳細に論ずる。
【0084】
複数のmiR遺伝子産物は、別々の組換えプラスミドから発現させることができ、又はそれらは同一の組換えプラスミドから発現させることもできる。1態様において、miR遺伝子産物は、単一のプラスミドからRNA前駆体分子として発現させられて、その前駆体分子が、癌細胞中の現存するプロセシング系を含むが、これらに限定されない適当なプロセシング系により機能性miR遺伝子産物にプロセスされる。他の適当なプロセシング系には、例えば、in vitroショウジョウバエ細胞溶解物系(例えば、その開示全体を参照により本明細書に組み込むTuschlらの米国特許出願公開番号2002/0086356号に記載されているような)及び大腸菌リボヌクレアーゼIII系(例えば、その開示全体を参照により本明細書に組み込むyoungらの米国特許出願公開番号2004/0014113号に記載されているような)が含まれる。
【0085】
miR遺伝子産物を発現させるために適したプラスミド、遺伝子産物を発現させるためにプラスミド中に核酸を挿入する方法、及び組換えプラスミドを関心ある細胞へ送達する方法の選択は、当技術分野の内である。例えば、その開示全体を参照により本明細書に組み込む、Zeng et al.(2002),Molecular Cell 9:1327−1333;Tuschl(2002),Nat.Biotechnol.20:446−448;Brummelkamp et al.(2002),Science
296:550−553;Miyagishi et al.(2002),Nat.Biotechnol.20:497−500;Paddison et al.(2002),Genes Dev.16:948−958;Lee et al.(2002),Nat.Biotechnol.20:500−505;及びPaul et al.(2002),Nat.Biotechnol.20:505−508を参照されたい。
【0086】
1態様において、miR遺伝子産物を発現させるプラスミドは、CMV即時初期プロモーターの制御下にmiR前駆体RNAをコードする配列を含む。本明細書で使用する、プロモーターの「制御下」は、miR遺伝子産物をコードする核酸配列が、プロモーターの3’に位置して、その結果プロモーターがmiR遺伝子産物をコードする配列の転写を開始し得ることを意味する。
【0087】
miR遺伝子産物は、組換えウイルスベクターから発現させることもできる。miR遺伝子産物は、2つの別の組換えウイルスベクターから、又は同一のウイルスベクターから発現させることができることが考慮される。組換えウイルスベクターから発現されたRNAは、培養細胞系から標準的技法により単離することができ、又は癌細胞内で直接発現させることができる。miR遺伝子産物を癌細胞に送達する組換えウイルスベクターの使用は下でより詳細に論ずる。
【0088】
本発明の組換えウイルスベクターは、miR遺伝子産物をコードする配列及びRNA配列を発現させるための任意の適当プロモーターを含む。適当なプロモーターは、U6若しくはH1 pol IIIプロモーター配列、又はサイトメガロウイルスプロモーターを含むが、これらに限定されない。他の適当なプロモーターの選択は当技術分野の内である。本発明の組換えウイルスベクターは、癌細胞中でmiR遺伝子産物を発現させるための誘導可能な又は制御可能なプロモーターを含むこともできる。
【0089】
miR遺伝子産物をコードする配列を受け入れられる任意のウイルスベクターを使用することができる;例えば、アデノウイルス(AV);アデノ関連ウイルス(AAV);レトロウイルス(例えば、レンチウイルス(LV)、ラブドウイルス、マウス白血病ウイルス);ヘルペスウイルス等に由来するベクターである。ウイルスベクターの指向性は、適宜、ベクターを他のウイルスからのエンベロープタンパク質若しくは他の表面抗原で偽型にすることにより、又は異なったウイルスのカプシドタンパク質を代わりに用いることにより改変することができる。
【0090】
例えば、本発明のレンチウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病、エボラ、モコラ等からの表面抗原で偽型にすることができる。本発明のAAVベクターは、異なるカプシドタンパク質血清型を発現するようにベクターを操作することにより、異なった細胞を標的にするようにできる。例えば、血清型2ゲノム上の血清型2のカプシドを発現させるAAVベクターは、AAV2/2と称される。AAV2/2ベクター中のこの血清型2のカプシド遺伝子は、AAV2/5ベクターを作製するために、血清型5のカプシド遺伝子により置き換えることができる。異なったカプシドタンパク質血清型を発現させるAAVベクターを構築する技法は当技術分野の内である;例えば、その開示全体を参照により本明細書に組み込むRabinowitz,J.E.,et al.(2
002),J.Virol.76:791−801を参照されたい。
【0091】
本発明で使用するために適当な組換えウイルスベクター、RNAを発現させるための核酸をベクター中に挿入する方法、ウイルスベクターを関心ある細胞に送達する方法、及び発現されたRNA産物を回収する方法の選択は、当技術分野の内である。例えば、その開示全体を参照により本明細書に組み込むDornburg(1995),Gene Therapy 2:301−310;Eglitis(1988),Biotechniq
ues6:608−614;Miller(1990),Hum.Gene Thera
py 1:5−14;及びAnderson(1998),Nature 392:25
−30を参照されたい。
【0092】
特に適当なウイルスベクターは、AV及びAAVに由来するものである。miR遺伝子産物を発現させるための適当なAVベクター、組換えAVベクターを構築する方法、及びベクターを標的細胞に送達する方法は、その開示全体を参照により本明細書に組み込むXia et al.(2002),Nat.Biotech 20:1006−1010に記載されている。miR遺伝子産物を発現させるための適当なAAVベクター、組換えAAVベクターを構築する方法、及びベクターを標的細胞に送達する方法は、その開示全体を参照により本明細書に組み込むSamulskiet al.(1987),J.Virol.61:3096−3101;Fisher et al.(1996),J.
Virol.70:520−532;Samulski et al.(1989),J
.Virol.63:3822−3826;米国特許第5,252,479号;米国特許
第5,139,941号;国際特許出願WO94/13788号;及び国際特許出願WO
93/24641号記載されている。1態様において、miR遺伝子産物はCMV即時
初期プロモーターを含む単一の組換えAAVベクターから発現される。
【0093】
ある態様において、本発明の組換えAAVウイルスベクターは、ヒトU6RNAプロモーターの制御下のポリT終止配列と作動接続しているmiR前駆体RNAをコードする核酸配列を含む。本発明で使用する「ポリT終止配列と作動接続している」は、センス又はアンチセンス鎖をコードする核酸配列が、ポリT終止シグナルに5’方向に直接隣接していることを意味する。ベクターからのmiR配列の転写中に、ポリT終止シグナルは、転写を終止させるように作用する。
【0094】
本発明の治療方法の他の態様において、miR発現を抑制する少なくとも1種の化合物の有効量を被験者に投与することができる。本明細書で使用する「miR発現を抑制する」は、治療後のmiR遺伝子産物の前駆体及び/又は活性成熟形態の産生が治療の前に産生されていた量未満であるということを意味する。当業者は、例えば、診断方法について上で論じたmiR転写物レベルを測定する技法を使用して、癌細胞中でmiR発現が抑制されているかどうかを容易に測定することができる。抑制は、遺伝子発現のレベルで(即ち、miR遺伝子産物をコードするmiR遺伝子の転写を抑制することにより)又はプロセシングのレベルで(例えば、miR前駆体の成熟活性miRへのプロセシングを抑制することにより)起こり得る。
【0095】
本明細書で使用する、miR発現を抑制する化合物の「有効量」は、癌(例えば、固形癌)に罹患している被験者中の癌細胞の増殖を抑制するために十分な量である。当業者は、被験者のサイズ及び体重、疾患侵入の程度、被験者の年齢、健康状態及び性;投与経路;並びに投与が局所的か全身的かなどの要因を考慮に入れることにより、所与の被験者に投与されるべきmiR発現抑制化合物の有効量を容易に決定することができる。
【0096】
例えば、発現抑制化合物の有効量は、本明細書に記載したように、治療されるべき腫瘍塊の概略の重量を基準にすることができる。miR発現を抑制する化合物の有効量は、本
明細書に記載したように、治療されるべき被験者の概略の又は推定体重も基準にすることができる。
【0097】
当業者は、miR発現を抑制する化合物を所与の被験者に投与するための概略の投与計画も容易に決定することができる。
【0098】
miR遺伝子発現を抑制する適当な化合物には、二本鎖RNA(短鎖又は低分子干渉RNA即ち「siRNA」など)、アンチセンス核酸、及びリボザイムなどの酵素的RNA分子が含まれる。これらの化合物の各々は、所与のmiR遺伝子産物を標的とすることができて、標的miR遺伝子産物の発現に干渉する(例えば、その転写を抑制し、分解又は破壊を誘発する)ことができる。
【0099】
例えば、所与のmiR遺伝子の発現は、miR遺伝子の少なくとも一部と少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列相同性を有する単離された二本鎖RNA(「dsRNA」)分子とmiR遺伝子とのRNA干渉を誘導することにより抑制することができる。特定の態様において、dsRNA分子は、「単鎖又は低分子干渉RNA」即ち「siRNA」である。
【0100】
本発明の方法で有用なsiRNAは、鎖長約17ヌクレオチドから約29ヌクレオチド、好ましくは、約19から約25ヌクレオチドの短い二本鎖RNA鎖を含む。このsiRNAは、標準的なワトソン・クリック塩基対形成相互作用によりアニールされて一緒になった(以後「塩基対を形成した」)、センスRNA鎖及び相補性アンチセンスRNAを含む。センス鎖は、標的miR遺伝子産物内に含まれる核酸配列に実質的に同一である核酸配列を含む。
【0101】
本明細書で使用する、標的mRNA内に含まれる標的配列に「実質的に同一」であるsiRNA中の核酸配列は、標的配列と同一である、又は標的配列と1又は2ヌクレオチドだけ相違する核酸配列である。siRNAのセンス及びアンチセンス鎖は、2分子の相補性短鎖RNAを含むことができ、又は2つの相補性部分が塩基対を形成して短鎖「ヘアピン」領域により共有結合で結合され得る単一の分子を含むことができる。
【0102】
siRNAは、1つ又は2つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は変異により、天然に生ずるRNAと異なる変異RNAであってもよい。そのような変異は、siRNAの末端への若しくはsiRNAの1つ若しくは2つ以上の内部ヌクレオチドへの非ヌクレオチド物質の付加、又はsiRNAをヌクレアーゼ消化に対して耐性にする改変、又はsiRNA中の1つ又は2つ以上のヌクレオチドのデオキシリボヌクレオチドによる置換を含み得る。
【0103】
siRNAの一方又は両方の鎖は、3’オーバーハングも含み得る。本明細書で使用する「3’オーバーハング」は、デュープレックス化したRNA鎖の3’末端から伸びた少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。したがって、ある態様において、siRNAは、鎖長1から約6ヌクレオチド(リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを含む)の、鎖長1から約5ヌクレオチドの、鎖長1から約4ヌクレオチドの、又は鎖長約2から約4ヌクレオチドの、少なくとも1つの3’オーバーハングを含む。特定の態様において、3’オーバーハングは、siRNA中の両方の鎖に存在し、鎖長2ヌクレオチドである。例えば、siRNA中の各鎖はジチミジン酸(「TT」)又はジウリジン酸(「uu」)の3’オーバーハングを含み得る。
【0104】
siRNAは、単離されたmiR遺伝子産物について上で説明したように、化学的若しくは生物学的に産生させることができ、又は組換えプラスミド若しくはウイルスベクター
から発現させることができる。dsRNA又はsiRNA分子を作製し、及び使用する代表的な方法は、Gewirtzの米国特許出願公開第2002/0173478号及びReichらの米国特許出願第2004/0018176号に記載されており、これら両特許の開示全体を参照により本明細書に組み込む。
【0105】
所与のmiR遺伝子の発現は、アンチセンス核酸により抑制することもできる。本明細書で使用する「アンチセンス核酸」は、RNA−RNA、RNA−DNA又はRNA−ペプチド核酸相互作用により標的RNAに結合して、標的RNAの活性を変化させる核酸分子を指す。本発明の方法において使用するために適当なアンチセンス核酸は、通常、miR遺伝子産物中の隣接核酸配列に相補性の核酸配列を含む単鎖核酸(例えば、RNA、DNA、RNA−DNAキメラ、ペプチド核酸(PNA))である。アンチセンス核酸は、miR遺伝子産物中の隣接核酸配列に50〜100%相補性、75〜100%相補性、又は95〜100%相補性の核酸配列を含む単鎖核酸を含み得る。miR遺伝子産物に対する核酸配列は、表1a及び表1bに示す。如何なる学説に捉われることも望まず、アンチセンス核酸は、miR遺伝子産物/アンチセンス核酸デュープレックスを消化するリボヌクレアーゼH又は他の細胞ヌクレアーゼを活性化すると信じられる。
【0106】
アンチセンス核酸は、核酸骨格又は糖及び塩基部分(又はそれらの等価体)の改変を含み、標的特異性、ヌクレアーゼ耐性、送達又は分子の有効性に関する他の特性を向上させることもできる。そのような改変は、コレステロール部分、アクリジンなどのデュープレックスのインターカレーター、又は1つ又は2つ以上のヌクレアーゼ耐性基を含む。
【0107】
アンチセンス核酸は、単離されたmiR遺伝子産物について上で説明したように、化学的若しくは生物学的に産生させることができ、又は組換えプラスミド若しくはウイルスベクターから発現させることができる。作製し及び試験する代表的な方法は、当技術分野の内である;例えば、その開示全体を参照により本明細書に組み込むStein及びCheng(1993),Science 261:1004並びにWoolfらの米国特許第5,849,902号を参照されたい。
【0108】
所与のmiR遺伝子の発現は、酵素的核酸により抑制することもできる。本明細書で使用する「酵素的核酸」は、miR遺伝子産物の隣接核酸配列に相補性を有する基質結合領域を含み、且つmiR遺伝子産物を特異的に分解することができる核酸を指す。酵素的核酸の基質結合領域は、例えば、miR遺伝子産物の隣接核酸配列に、50〜100%相補性、75〜100%相補性、又は95〜100%相補性であってよい。酵素的核酸は、塩基、糖、及び/又はリン酸基に改変を含んでいてもよい。本発明の方法で使用する代表的な酵素的核酸はリボザイムである。
【0109】
酵素的核酸は、単離されたmiR遺伝子産物について上で説明したように、化学的若しくは生物学的に産生させることができ、又は組換えプラスミド若しくはウイルスベクターから発現させることができる。dsRNA又はsiRNA分子を作製し、及び使用する代表的な方法は、それらの開示全体を参照により本明細書に組み込むWerner及びUhlenbeck(1995),Nucl.Acids Res.23:2092−96;Hammann et al.(1999),Antisense and Nucle
ic Acid Drug Dev.9:25−31;及びCechらの米国特許第4,987,071号に記載されている。
【0110】
少なくとも1種のmiR遺伝子産物の、又はmiR発現を抑制する少なくとも1種の化合物の投与は、固形癌を有する被験者中の癌細胞の増殖を抑制するであろう。本明細書で使用する「癌細胞の増殖を抑制する」は、癌細胞を死滅させる、又は癌細胞の増殖を永久的に若しくは一時的に停止させるか若しくは遅延させることを意味する。miR遺伝子産
物又はmiR遺伝子発現抑制化合物の投与後に、被験者中の上記の細胞の数が一定に留まるか又は減少すれば、癌細胞の増殖の抑制を推定することができる。癌細胞増殖の抑制は、そのような細胞の絶対数が増加しても細胞増殖の速度が低下したならば、推定される。
【0111】
被験者の体内中の癌細胞の数は、直接測定により、又は原発若しくは転移腫瘍塊のサイズからの推定により測定することができる。例えば、被験者中の癌細胞の数は、免疫組織学的方法、フローサイトメトリー、又は癌細胞の特徴的な表面マーカーを検出するために考案された他の技法により、測定することができる。
【0112】
腫瘍塊のサイズは、直接的視覚観察により、又はX線、磁気共鳴イメージング、超音波、及びシンチグラフィーなどの診断用イメージング法により確認することができる。腫瘍塊のサイズを確認するために使用される診断用イメージング法は、当技術分野で既知の造影剤を用いて又は用いずに使用することができる。腫瘍塊のサイズは、組織塊の触診、カリパーなどの測定器による組織塊の測定などの物理的手段により確認することもできる。
【0113】
miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物は、これらの化合物を被験者の癌細胞に送達するために適した任意の手段により、被験者に投与することができる。例えば、miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物は、これらの化合物で又はこれらの化合物をコードする配列を含む核酸で、被験者の細胞をトランスフェクトするのに適当な方法により投与することができる。1態様において、細胞は、少なくとも1種のmiR遺伝子産物をコードする配列を含むプラスミド若しくはウイルスベクター又はmiR遺伝子発現抑制化合物でトランスフェクトされる。
【0114】
真核細胞に対するトランスフェクションの方法は、当技術分野において周知であり、例えば、細胞の核又は前核中への核酸直接注入法;電気穿孔法;リポソーム移入又は親油性物質により媒介される移入法;受容体媒介核酸送達法;バイオバリスチック(bioballistic)即ち粒子加速法;リン酸カルシウム沈澱法、及びウイルスベクターにより媒介されるトランスフェクションが含まれる。
【0115】
例として、細胞はリポソーム移入化合物、例えば、LIPOFECTINなどのDOTAP(メチル硫酸N−[l−(2,3−ジオレイロキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチル−アンモニウム、Boehringer−Mannheim)又は等価体によりトランスフェクトすることができる。使用される核酸の量は、本発明の実施にとって決定的に重要なことではなく、0.1〜100マイクログラム/10
5細胞の核酸で、一応満足できる結果を達成することができる。例えば、10
5細胞当たり3マイクログラムのDOTAP中に約0.5マイクログラムのプラスミドの比を使用することができる。
【0116】
miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物は、任意の適当な経腸若しくは非経口経路により被験者に投与することもできる。本発明の方法の適当な経腸経路は、例えば、経口、直腸内、又は鼻内送達を含む。適当な非経口経路には、例えば、血管内投与(例えば、静脈内大量瞬時注射、静脈内注入、動脈内大量瞬時注射、動脈内注入及び血管網へのカテーテル点滴注入);組織周囲及び組織内注射(例えば、腫瘍周囲及び腫瘍内注射;網膜内注射;又は網膜下注射);皮下注入(浸透圧ポンプによるなど)を含む皮下注射又はデポ;例えば、カテーテル又は他の留置デバイスによる対象組織への直接適用(例えば、多孔性、非多孔性、又はゼラチン状材料を含む、網膜ペレット剤又は座剤又はインプラント);及び吸入が含まれる。特に適当な投与経路は、注射、注入及び腫瘍への直接注射である。
【0117】
本発明の方法において、miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物は、送達剤と組み合わせて裸のRNAとして、又はmiR遺伝子産物若しくはmiR遺伝子発現抑制
化合物を発現する配列を含む核酸(例えば、組換えプラスミド又はウイルスベクター)としてのいずれかで、被験者に投与することができる。適当な送達剤には、例えば、Mirus Transit TKO親油性試薬;リポフェクチン;リポフェクタミン;セルフェクチン;ポリカチオン(例えばポリリジン)、及びリポソームが含まれる。
【0118】
miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物を発現する配列を含む組換えプラスミド及びウイルスベクター、及びそのようなプラスミド及びベクターを送達する技法は、本明細書において論じられ及び/又は当技術分野において周知である。
【0119】
特定の態様において、miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又はそれらをコードする配列を含む核酸)を被験者に送達するために、リポソームが使用される。リポソームは、遺伝子産物又は核酸の血中半減期を増大させることもできる。本発明において使用するために適当なリポソームは、中性又は負に荷電したリン脂質及びコレステロールなどのステロールを通常含む標準的小胞形成脂質から形成させることができる。脂質の選択には、所望のリポソームサイズ及び血流中の半減期などの要因を考慮することが、一般に指針となる。リポソームを調製するために、種々の方法が知られており、例えば、それらの開示全体を参照により本明細書に組み込む、Szoka et al.(1980),Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467;及び米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号及び第5,019,369号に記載されている。
【0120】
本発明の方法において使用されるリポソームは、リポソームを癌細胞に向かわせるリガンド分子を含むことができる。腫瘍細胞抗原に結合するモノクローナル抗体などの、癌細胞に優勢な受容体に結合するリガンドが好ましい。
【0121】
本発明の方法で使用するリポソームは、単核マクロファージ系(「MMS」)及び細網内皮系(「RES」)によるクレアランスを回避するように改変することもできる。そのような改変リポソームは、表面上に又はリポソーム構造中に組み込まれたオプソニン化抑制部分を有する。特定の好ましい態様において、本発明のリポソームは,オプソニン化抑制部分及びリガンドの両方を含むことができる。
【0122】
本発明のリポソームの調製に使用するオプソニン化抑制部分は、リポソーム膜に結合された通常高分子量の親水性ポリマーである。オプソニン化抑制部分が、例えば、脂質に可溶性のアンカーのインターカレーションにより膜自体中に、又は膜脂質の活性基に直接結合することにより、膜に化学的に又は物理的に結びついているとき、本明細書では、オプソニン化抑制部分はリポソーム膜に「結合」しているという。これらのオプソニン化抑制親水性ポリマーは、例えばその開示全体を参照により本明細書に組み込む米国特許第4,920,016号に記載されているように、MMS及びRESによるリポソームの取込みを顕著に減少させる保護表面層を形成する。
【0123】
リポソームを改変するために適したオプソニン化抑制部分は、約500から約40,000ダルトン、より好ましくは約2,000から約20,000ダルトンの数平均分子量を有する好ましくは水溶性のポリマーである。そのようなポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリプロピレングリコール(PPG)誘導体;例えば、メトキシPEG又はPPG、及びPEG又はPPGステアレート;ポリアクリルアミド又はポリN−ビニルピロリドンなどの合成ポリマー; 線状、分岐、又はデンドリマー状ポリアミド
アミン;ポリアクリル酸;ポリアルコール、例えば、カルボキシル又はアミノ基が化学的に結合したポリビニルアルコール及びポリキシリトール並びにガングリオシドGM1などのガングリオシドが含まれる。PEGのコポリマー、メトキシPEG、又はメトキシPPG、又はそれらの誘導体も適当である。それらに加えて、オプソニン化抑制ポリマーは、
PEGとポリアミノ酸、多糖、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミン、又はポリヌクレオチドのいずれかとのブロックコポリマーであってよい。オプソニン化抑制ポリマーは、アミノ酸若しくはカルボン酸を含む天然多糖、例えば、ガラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラゲナン;アミノ化多糖若しくはオリゴ糖(線状又は分岐);又は例えば、カルボン酸誘導体と反応した結果カルボキシル基が結合したカルボキシル化多糖若しくはオリゴ糖であってもよい。好ましくは、オプソニン化抑制部分は、PEG、PPG、又はそれらの誘導体である。PEG又はPPG誘導体で改変されたリポソームは、「PEG化されたリポソーム」と呼ばれることがある。
【0124】
オプソニン化抑制部分は、多くの周知の技法のいずれか1つにより、リポソーム膜に結合することができる。例えば、PEGのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルをホスファチジル−エタノールアミン脂質可溶性アンカーに結合し、次に膜に結合することができる。同様に、デキストランポリマーは、Na(CN)BH
3と30:12の比のテトラヒドロフラン及び水の混合溶媒とを使用する、60℃での還元的アミノ化により、ステアリルアミン脂質可溶性アンカーで誘導体化することができる。
【0125】
オプソニン化抑制部分により改変されたリポソームは、改変されていないリポソームよりもずっと長く循環中に留まる。この理由で、そのようなリポソームは、「ステルス」リポソームと呼ばれることがある。ステルスリポソームは、多孔性の即ち「洩れ易い」微小血管系により供給されて組織に蓄積することが知られている。したがって、そのような微小血管系の欠陥により特徴づけられる組織、例えば、固形腫瘍は、これらのリポソームを効率的に蓄積するであろう;Gabizon,et al.(1988),Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,18:6949−53を参照されたい。それに加えて、RESによる取込みの減少は、肝臓及び脾臓中へのリポソームの顕著な蓄積を防止することにより、ステルスリポソームの毒性を低下させる。このように、オプソニン化抑制部分により改変されたリポソームは、miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又はそれらをコードする配列を含む核酸)を腫瘍細胞に送達するのに、特に適している。
【0126】
miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物は、被験者にそれらを投与する前に、当技術分野で知られている技法によって、「医薬」と呼ばれることがある医薬組成物として製剤化することできる。したがって、本発明は、固形癌を治療する医薬組成物を包含する。1態様において、その医薬組成物は少なくとも1種の単離されたmiR遺伝子産物、又はその単離された変形種若しくは生物活性フラグメント、及び薬学的に許容される担体を含む。特定の態様において、少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、適当な対照と比較して固形癌中において低下した発現レベルを有するmiR遺伝子産物に相当する。ある態様において、単離されたmiR遺伝子産物は、miR−145、miR−155、miR−218−2、それらの組合せからなる群から選択される。
【0127】
他の態様において、本発明の医薬組成物は、少なくとも1種のmiR遺伝子抑制化合物を含む。特定の態様において、少なくとも1種のmiR遺伝子発現抑制化合物は、発現が対照細胞を超えるmiR遺伝子に対して特異的である。ある態様において、miR遺伝子発現抑制化合物は、miR−21、miR−17−5p、miR−191、miR−29b−2、miR−223、miR−128b、miR−199a−1、miR−24−1、miR−24−2、miR−146、miR−155、miR−181b−1、miR−20a、miR−107、miR−32、miR−92−2、miR−214、miR−30c、miR−25、miR−221、miR−106a及びそれらの組合せからなる群から選択される1種又は2種以上のmiR遺伝子産物に対して特異的である。
【0128】
本発明の医薬組成物は、少なくとも無菌的で発熱物質を含まないとして特徴づけられる。本明細書で使用する「医薬組成物」は、ヒト及び獣医学用の製剤を含む。本発明の医薬組成物を調製する方法は、当技術分野の内であり、例えば、その開示全体を参照により本明細書に組み込むRemington’s Pharmaceutical Science,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1985)に記載されている。
【0129】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体と混合された、少なくとも1種のmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又はそれらをコードする配列を含む少なくとも1つの核酸)(例えば、0.1から90重量%)、又はそれらの生理学的に許容されるそれらの塩を含む。ある態様において、本発明の医薬組成物は、1種又は2種以上の抗癌剤(例えば化学療法剤)を追加して含む。本発明の医薬製剤も、リポソームによりカプセル化された、少なくとも1種のmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又はそれらをコードする配列を含む少なくとも1つの核酸)及び薬学的に許容される担体を含み得る。1態様において、医薬組成物は、miR−15及び/又はmiR−16ではないmiR遺伝子産物を含む。
【0130】
特に適当な薬学的に許容される担体は、水、緩衝水、通常の食塩水、0.4%食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸等である。
【0131】
特定の態様において、本発明の医薬組成物は、ヌクレアーゼによる分解に耐性である、少なくとも1種のmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又はそれらをコードする配列を含む少なくとも1つの核酸)を含む。当業者は、例えば、2’−位で改変された1つ又は2つ以上のリボヌクレオチドをmiR遺伝子産物組み入れることにより、ヌクレアーゼ耐性である核酸を容易に合成することができる。適当な2’−位改変リボヌクレオチドは、2’−位で、フルオロ、アミノ、アルキル、アルコキシ及びO−アリルにより改変されたものを含む。
【0132】
本発明の医薬組成物は、従来の医薬賦形剤及び/又は添加剤を含むこともできる。適当な医薬賦形剤は、安定剤、抗酸化剤、浸透圧調節剤、緩衝剤、及びpH調節剤を含む。適当な添加剤には、例えば、生理学的に生体適合性の緩衝剤(例えば、トロメタミン塩酸塩)、キレート剤(例えば、DTPA又はDTPA−ビスアミドなど)若しくはカルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPA−ビスアミドなど)の添加、又は場合により、カルシウム若しくはナトリウム塩(例えば、塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム又は乳酸カルシウム、)の添加が含まれる。本発明の医薬組成物は、液剤剤形で使用するようにパックすることができ、又は凍結乾燥することができる。
【0133】
本発明の固体の医薬組成物に対して、従来の無毒性の薬学的に許容される担体を使用することができる;例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム等である。
【0134】
例えば、経口投与のための固体医薬組成物は、上で列挙した任意の担体及び賦形剤及び10〜95%、好ましくは、25%〜75%の少なくとも1種のmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又はそれらをコードする配列を含む少なくとも1つの核酸)を含み得る。エアロゾル(吸入)投与のための医薬組成物は、重量で0.01〜20%、好ましくは、重量で1%〜10%の、上記のリポソームにカプセル化された少なくとも1種のmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又はそれらをコードする配列を含む少なくとも1つの核酸)及び噴射剤を含み得る。担体も、所望により含まれてよく、
例えば鼻内送達のためのレシチンである。
【0135】
本発明の医薬組成物は、1種又は2種以上の抗癌剤をさらに含んでよい。特定の態様において、該組成物は、少なくとも1種のmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又はそれらをコードする配列を含む少なくとも1つの核酸)及び少なくとも1種の化学療法剤を含む。本発明の方法に適した化学療法剤には、DNAアルキル化剤、抗腫瘍性抗生物質、抗代謝剤、チューブリン安定剤、チューブリン不安定化剤、ホルモン拮抗剤、トポイソメラーゼ抑制剤、タンパク質キナーゼ抑制剤、HMG−CoA抑制剤、CDK抑制剤、サイクリン抑制剤、カスパーゼ抑制剤、メタロプロテイナーゼ抑制剤、アンチセンス核酸、三重へリックスDNA、核酸アプタマー、並びに分子改変されたウイルス、細菌及び外毒素の薬剤が含まれるが、これらに限定されない。本発明の組成物に適した薬剤の例には、シチジンアラビノシド、メトトレキセート、ビンクリスチン、エトポシド(VP−16)、デキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン(CDDP)、デキサメタゾン、アルグラビン、シクロホスファミド、サルコリシン、メチルニトロソウレア、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル(5FU)、ビンブラスチン、カンプトテシン、アクチノマイシン−D、ミトマイシンC、過酸化水素、オキサリプラチン、イリノテカン、トポテカン、ロイコボリン、カルムスチン、スプレプトゾシン、CPT−11、タキソール、タモキシフェン、デカルバジン、リツキシマブ、ダウノルビシン、1−β−D−アラビノフラノシルシトシン、イマチニブ、フルダラビン、ドセタキセル、FOLFOX4が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
本発明は、試験薬剤を細胞に与えて細胞中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む腫瘍形成抑制剤を同定する方法も包含する。1態様において、該方法は細胞に試験薬剤を与えて癌細胞中の低下した発現に関連する少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む。適当な対照細胞(例えば、薬剤を与えない)と比較して、薬剤を与えられた後の細胞中のmiR遺伝子産物のレベルの上昇は試験薬剤が腫瘍形成の抑制剤であることを示す。特定の態様において、癌細胞中の低下した発現に関連する少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−145、miR−155、miR−218−2及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0137】
他の態様において、本発明の方法は、試験薬剤を細胞に与えて癌細胞中の上昇した発現に関連する少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む。適当な対照細胞(例えば、薬剤を与えない)と比較して、薬剤を与えられた後の細胞中のmiR遺伝子産物のレベルの低下は試験薬剤が腫瘍形成の抑制剤であることを示す。特定の態様において、癌細胞中の上昇した発現に関連する少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−21、miR−17−5p、miR−191、miR−29b−2、miR−223、miR−128b、miR−199a−1、miR−24−1、miR−24−2、miR−146、miR−155、miR−181b−1、miR−20a、miR−107、miR−32、miR−92−2、miR−214、miR−30c、miR−25、miR−221、miR−106aからなる群から選択される。
【0138】
適当な薬剤は、薬品(例えば、低分子、ペプチド)及び生体高分子(例えば、タンパク質、核酸)を含むが、これらに限定されない。薬剤は組換えにより、合成により作製することができ、又は天然資源から単離(即ち精製)することができる。そのような薬剤を細胞に与える種々の方法(例えばトランスフェクション)が当技術分野において周知であり、そのような方法の幾つかは本明細書で上に記載した。少なくとも1種のmiR遺伝子産物の発現を検出する方法(例えば、ノーザンブロット、in situハイブリダイゼーション、RT−PCR、発現プロファイリング)も、当技術分野において周知である。これらの方法の幾つかも、本明細書で上に記載した。
ここで、本発明を、次の限定するものではない実施例により例示することにする。
【実施例】
【0139】
次の材料及び方法が実施例で使用される:
試料
363個の原発腫瘍試料及び177個の正常組織を含む合計540個の試料が本研究で使用された(表2)。次の固形が表された:肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌及び膵内分泌腫瘍。全ての試料は、患者からインフォームドコンセントを得て入手し、病理学的に確認した。正常試料は、肺及び胃癌に罹患した個体からの試料、並びに正常個体からの残余の組織の試料と組み合わせた。全ての正常乳房試料は、5個の無関係な正常組織をプールすることにより得た。全RNAを組織から、TRIzol(登録商標)試薬(Invitrogen)をメーカーの処方により使用して単離した。
【0140】
マイクロRNAマイクロアレイ
マイクロアレイ分析は前に記載されたようにして実施した(Liu,C−G.,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:11755−11760(2004))。簡単に述べると、5μgの全RNAをmiRNAマイクロアレイチップ上のハイブリダイゼーションのために使用した。これらのチップは、接触技法によりスポットされ、ポリマーマトリックスに共有結合で結合された遺伝子特異的な40量体オリゴヌクレオチドプローブを含む。マイクロアレイは、6×SSPE(0.9M NaCl/60mM NaH
2PO
4・H
2O/8mM EDTA、pH7.4)/30%ホルムアミド中25℃で18時間ハイブリダイズさせ、0.75×TNT(トリスHCl/NaCl/ツイーン20)中37℃で40分間洗浄し、ストレプトアビジン−Alexa647(Molecular Probes)複合体によるビオチン標識転写物の直接検出を使用して処理した。処理されたスライドは、マイクロアレイスキャナー(GenePix
Pro、Axon)を使用して、レーザーを635nmに設定し、固定PMT設定及び10nmの走査分解で走査した。データは文献に記載されているようにして(Calin,G.A.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:11755−11760(2004);Iorio,M.V.,et al.,Cancer Res.65:7065−7070 (2005))、ノーザンブロッティングに
より確認した。
【0141】
【表34】
【0142】
コンピューター分析
マイクロアレイのイメージをGenePix Pro(Axon)を使用して分析した。各miRNAの複製スポットの平均値は、バックグラウンドを差し引き、正規化してさらなる分析にかけた。正規化は、中央値アレイを参照として使用し、チップ毎の中央値正規化法を使用することにより実施した。最後に、データセット中の2クラスの少なくとも最少のものに存在するとして測定されたmiRNAが選択された。統計分析に先立って、非存在の判定の閾値は4.5とした。このレベルが、実験において検出された最小強度レベル平均値である。マイクロRNAの命名法はGenome Browser(www.genome.ucsc.edu)及びSanger CenterのマイクロRNAデータベース(Griffiths−Jones,S.,Nucleic Acids Res 32:D109−11(2004))に従い、不一致の場合はマイクロRNAに従った。差次的に発現したマイクロRNAは、マイクロアレイの有意性分析(SAM)においてt検定法を使用することにより同定した(Tusher,V.G.,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 98:5116−21(2001))。SAMにより、全測定の標準偏差と比較した発現の変化を基準にして各遺伝子のスコアが計算される。SAMにおいて、t検定を使用した。マイクロRNAサインは、最短収縮重心法(nearest shrunken centroids method)を適用することにより測定した。この方法は、その各々の正常対応物から各固形癌を最もよく特徴づける遺伝子のサブグループを同定する。予測誤差は、10倍交差検証法により計算し、各癌に対して、最小予測誤差を生ずるmiRサインを得た。リサンプリング試験を、ランダム順列解析により実施して、共有されたサインのp値を計算した。
【0143】
実施例1:ヒト固形癌におけるマイクロRNA発現サインの同定
統計
癌/正常組織を合わせた比較は、合計404試料になる異なった組織を数的に均衡させる目的で、減少させた数の肺試料(80の癌及び40の正常組織)を使用して、実施した
。
統計分析のために、発現値が試料の少なくとも50%で256(閾値)を超える137のmiRを、測定した228のmiRから確保した。差次的に発現したマイクロRNAを同定するために、T検定を使用した(表3)。T検定のp値は、多くの試験手順のため、及び第一種の過誤率を制御するために補正した。調整p値は、500,000通りの順列でリサンプリングを実施することにより得た(Jung,S.H.,et al.Biostatistics 6:157−69(2005))。この分析は、結果を評価する目的で、Lu及び共同研究者と同じ方法(Lu,J.,et al.,Nature 435:834−8(2005))を使用することにより実施した。
【0144】
T検定に代わるものとして、マイクロアレイの有意性分析(SAM)を差次的に発現したマイクロRNAを同定するために使用した。この方法は、偽検出率(FDR)の制御を可能にする。FDRが0.01以下になるようにデルタを選択した。続いて、最良の分類を生ずる、即ち、2クラス(癌及び正常)を最もよく予測するマイクロRNAサブセットを、PAM(マイクロアレイの予測分析)で実行したように、最短収縮重心法を使用して同定した。予測誤差は10倍交差検証法により計算した。交差検証後に最少の誤分類を生ずるマイクロRNAを選択した。
【0145】
結果
T検定により、0.05未満の調整p値を有する43種の差次的に発現したmiRが得られた(表3)。6種の癌(乳、大腸、肺、膵、前立腺、胃)を一緒にしてグループ化したとき、対応する正常組織と比較して、26種のmiRが過剰発現であり、17種が過小発現であった。これらの結果は、固形癌において発現されたmiRNAのスペクトルは、正常細胞のものとは非常に異なることを示した(137miRNAの内43、31%)。SAMを使用して、49種のmiRNAが差次的に発現したと同定され、その内34種は下方制御されていた(表4)。PAMを使用して、癌における36種の過剰発現したmiRNA(正の癌スコアにより示された)及び21種の下方制御されたmiR(負の癌スコアにより指示された)は、差次的に発現したと同定された(表5)。しかしながら、これらの分析は、miRの発現が非常に組織特異的であるので、一貫して形質転換を生ずるmiR発現の変化を同定する目的に合わせたものではない(He,L.,et al.Nature 435:828−833(2005);
図1及び
図2も参照されたい)。
【0146】
228種のmiRを使用する363個の固形癌及び177個の正常試料に由来する発現プロファイルに基づくmiRのクラスター化を、
図1に示す。異なった組織間の非常に良好な分離を示すツリーは、本研究で使用した試料の少なくとも50%で発現された137種
の異なるmiRNAを用いて構築された。
【0147】
【表35】
【0148】
【表36】
【0149】
【表37】
【0150】
実施例2:種々のヒト固形癌に関連するマイクロRNA発現サインの同定
結果
組織特異性に基づいて陥る偏りなしに、固形癌に関連する癌の状態の予後経過を示すマイクロRNAを同定するために、別のアプローチを使用した。第一に、6種の組織特異的サインを各癌の組織タイプについて1つずつ、独立のPAM試験を実施することにより得た(表6及び7にまとめた)。各癌に対する特異的サインは、表8〜13に示す:例えば、乳癌は表8、大腸癌は表9、肺癌は表10、膵癌は表11、前立腺癌は表12、胃癌は表13である。これらのデータを使用して、異なる組織タイプのmiRNAサインの間で共有され、異常制御されたマイクロRNAを同定した(表14)。この比較分析のp値を計算するために、miRNA同一性について1,000,000のランダム順列でリサンプリングを実施した。p値は真のスコアを超えるシミュレーションスコア(simulation scores)の相対頻度と定義された。少なくとも3種の固形癌に共通であった21種の誤制御されたマイクロRNA(p値=2.5×10
−3)が同定された(表14)。
【0151】
【表38】
【0152】
【表39】
【0153】
【表40】
【0154】
【表41】
【0155】
【表42】
【0156】
【表43】
【0157】
【表44】
【0158】
【表45】
【0159】
【表46】
【0160】
【表47】
【0161】
【表48】
【0162】
最も簡単にするために、6種類の癌/正常対について異常制御されたmiRの平均絶対発現レベルを計算した。網羅的なサブセットにおけるmiRの発現レベルを使用して、疾患の状態に関わらず、異なる組織が正しく分類された(
図3)。
【0163】
図4は、正常組織に対して、異なる腫瘍組織にまたって共通のマイクロRNAの差次的発現を示す。このツリーは、miRNAサブセット中の変化倍数(fold changes)による異なる癌タイプを表す。前立腺、大腸、胃及び膵の組織はそれらの間で最も類似しているが、肺及び乳組織はかなり異なるサインにより表わされる(
図4)。このツリーは、どのmiRNAが特定の癌の組織タイプに関連しているかを明確に示す。
【0164】
驚いたことに、miR−21、miR−191及びmiR−17−5pは、考慮された腫瘍タイプの全て、又は6種類中の5種類で顕著に過剰発現している。miR−21は、神経膠芽腫で過剰発現し、抗アポトーシス性を有すると報告されている(Chan,J.A.,et al.,Cancer Res.65:6029−6033(2005))。肺癌は、miR−17/20/92を含むそのサインの一部を乳癌と及び一部を他の固形癌と共有し、これら3つのmiRの全ては、c−Mycと能動的に協調してリンパ腫形成を促進するマイクロRNAクラスターのメンバーである(He,L.,et al.,Nature 435:828−833(2005))。過剰発現されるものとしてのこれらのマイクロRNAの同定は、本発明者らのアプローチの優れた確認である。活性化される第二のmiRNA群は、大細胞リンパ腫(Eis,P.S.,et al.,Pro
c.Natl.Acad.Sci USA 102:3627−3632(2005))、小児及びバーキットリンパ腫(Metzler,M.,et al.,Genes Chromosomes Cancer 39:167−169(2004))及び種々のB細胞リンパ腫(Kluiver,J.et al.,J.Pathol.,e−pub
lished online,July 22,2005)で増幅されると既に報告され
ているmiR−155と一緒にmiR−210及びmiR−213を含む。これらのマイクロRNAは、乳癌及び肺癌で上方制御される、他にはないものである。miR−218−2は、大腸、胃、前立腺及び膵癌で一貫して下方制御されるが、肺及び乳癌ではされない。
【0165】
幾つかの観察がこれらの結果を補強する。第一に、本研究において、前駆体pre−miRNA及び成熟miRNA両方の発現レベルが多数の遺伝子について測定された。注目すべきことに、miR−212及びmiR−128aを例外として、他の全ての場合に、異常に発現された領域は、活性遺伝子産物に対応するものであった。第二に、
図3に示したように、網羅的サブセットにおけるmiRNA発現の変動は、異なるタイプの癌にまたがってしばしば一義的(即ち、下方又は上方制御)であり、ヒトの腫瘍形成における共通の機構を示唆する。第三に、マイクロアレイのデータは、12例の乳房試料(miR−125b、miR−145及びmiR−21;Iorio、M.V.,et al,Cancer Res.65:7065−7070(2005))並びに17例の内分泌膵及び正常試料(miR−103、miR−155及びmiR−204;データは示されていない)について溶液イブリダイゼーションにより検証され、マイクロアレイのデータの正確さが強く確認された。
【0166】
実施例3:固形腫瘍において異常制御されたマイクロRNAに対する予測された標的の同定
材料及び方法:
腫瘍抑制因子及びオンコジーン標的予測
最も新しいTargetScan予測(2005年4月)を、想定されるマイクロRNA標的を同定するために使用した。これらはLewisらにより報告された3’非翻訳領域標的(Lewis,B.P.,et al,Cell 120:15−20(2005))を本質的に含み、hg17ヒトゲノムアセンブリーに、RefSeq mRNAの2005年4月のUCSC Genome Browserマッピングからの更新されたゲノム境界定義(gene boundary definitions)から生ずる若干の変化が加えられている。想定される標的の中で、知られている癌遺伝子(腫瘍抑制因子及びオンコジーン)は、インターネットサイトwww.sanger.ac.uk/genetics/CGP/Census/でアクセスできる、又はOMIMによりwww.ncbi.nlm.nih.govで報告されるCancer Gene Censusにおけるそれらの同定により特定された。
【0167】
標的in vitroアッセイ
ルシフェラーゼレポーターの実験については、特異的癌関連マイクロRNAと相互作用すると予測されるRb1、TGFBR2及びPlag1の3’非翻訳領域セグメントをヒトゲノムDNAからPCRにより増幅し、ルシフェラーゼの終止コドンのすぐ下流のXbaIサイトを使用してpGL3コントロールベクター(Promega)中に挿入した。ヒト巨核球細胞ライン、MEG−01を、5%CO
2の加湿雰囲気中で、1×非必須アミノ酸及び1mmolピルビン酸ナトリウムで補完した10%FBS含有RPMI培地1640中37℃で増殖させた。細胞は、12ウェルプレート中で、メーカーのプロトコルに従いsiPORT neoFX(Ambion、テキサス州Austin)を使用して、ホタルルシフェラーゼレポーターベクター0.4μg及びウミシイタケルシフェラーゼを含むコントロールベクター、pRL−TK(Promega)0.08μgで、コトランスフェクトした。各ウェルに対して、マイクロRNAオリゴヌクレオチド(Dharmacon Research、コロラド州Lafayette)及びアンチセンス又はスクランブルオリゴヌクレオチド(Ambion)を10nMの濃度で使用した。ホタル及びウミシイタケルシフェラーゼ活性は、二重ルシフェラーゼアッセイ(Promega)を
使用して、トランスフェクション24時間後に続けて測定した。
【0168】
RB1のウェスターンブロッティング
RB1タンパク質のレベルは、ウェスターンブロッティングの標準的手順を使用し、マウスモノクローナル抗RB1抗体(Santa Cruz、カリフォルニア州)を使用して定量した。正規化は、マウスモノクローナル抗アクチン抗体(Sigma)を用いて実施した。
【0169】
結果
癌におけるマイクロRNA異常制御の機能的意味は、理解される必要がある。固形腫瘍において、最も普通のマイクロRNA事象は発現の増大であるが、一方、癌における発現の減少はより限られた事象であり、より組織特異的であるように思われる。本発明者らは、3段階の継続する手法を次の順で使用した:最初に、「in silico」(コンピューター内で)標的予想、次に、癌関連標的の最初の検証のためのルシフェラーゼアッセイ、最後に、特異的miRNA:mRNA相互作用体(interactor)対に対するmiRNA発現(マイクロアレイによる)と標的タンパク質発現(ウェスターンブロッティングによる)との間の生体外腫瘍での相関関係。癌miRNAに対して関連のある標的は、劣性(例えば、腫瘍抑制因子)又は優性(例えばオンコジーン)いずれかの癌遺伝子であり得る。固形腫瘍で異常制御されているマイクロRNAが既知のオンコジーン又は腫瘍抑制因子を標的とするという仮説を試すために、これらのmiRNAの予測標的を、保存された3’非翻訳領域マイクロRNA標的のデータベースTargetScan(Lewis,B.P.,et al.,Cell 120:15−20(2005))を使用して決定した。TargetScanは、合計22,402の予測中に固形腫瘍で異常制御される18種のmiRNAに対して5,121の予測を含んでいた(26.5%)。周知の癌遺伝子263種の内115種(44%)がこれら18種のmiRNAに対する標的として予測された(表15)。癌遺伝子の高率(%)が、固形腫瘍で異常制御されたmiRNAにより標的とされるので、これらの予測が起こることはありそうでない(フィッシャーの抽出検定でP<0.0001)。
【0170】
3種の異なる癌遺伝子、網膜芽細胞腫(Rb)、TGF−β−受容体(TGFBR2)、及び多形性腺腫遺伝子1(PLAG1)のin silico予測は、in vitroアッセイにより実験的に確認された。ルシフェラーゼレポーターアッセイを使用して、試験された3種のマイクロRNA(miR−106a、miR−20a及びmiR−26a−l)は、トランスフェクトされたMEG−01細胞中で、スルランブル対照オリゴRNAと比較してタンパク質翻訳の顕著な減少を惹起した(
図6)。例えば、網膜芽細胞腫3’非翻訳領域は、miR−106aと機能的に相互作用することが見出された。このmiRNA:mRNA相互作用の生物学的意味は、Rb1遺伝子は大腸癌では正常に転写されるが、細胞の種々のフラクションがRb1タンパク質を発現しないことを示す以前の報告(Ali,A.A.,et al.,FASEB J.7:931−937(1993))によって強化される。この発見は、大腸癌において同時に起こるmiR−106aの過剰発現(
図4)により説明することができるRb1を制御する転写後機構の存在を示唆する。さらに、miR−20aは乳癌で下方制御されており(
図4)、TFGBR2タンパク質は、乳癌細胞の上皮中で発現される(Buck,M.B.,et al.,Clin.Cancer Res.70:491−498(2004))。反対に、大腸癌におけるmiR−20aの過剰発現は、相互不活性化に加えてTGFBR2を下方制御する新しい機構を表している可能性がある(Biswas,S.,et al.,Cancer
Res.64:687−692(2004))。
【0171】
最後に、RB1タンパク質発現がmiR−106a発現と相関しているかどうかを確認するために、1揃いの患者試料を試験した(
図5及び
図6B)。予想通り、胃、前立腺及
び肺腫瘍の試料で、RB1は下方制御され(対にした正常試料に対して)、且つmiR−106aは過剰発現していることが見出されたが、一方乳腫瘍試料では、miR−106aは僅かに下方制御され(
図5及び
図6B)、RB1は、対にした正常対照におけるよりも僅かに高く発現される。
【0172】
これらの実験的証拠は、固形癌において、最重要癌遺伝子がmiRの異常発現により制御されているという仮説を補強する。これらのデータは、以前にlet−7:Ras相互作用についてJohnsonら(Johnson,S.M.,et al.,Cell 120:635−647(2005))、miR−17−5p:cMyc相互作用についてO’Donnellら(O’Donnell,K.A.,et al.,Nature
435:839−843(2005))、及びmiR−16:Bcl2相互作用についてCimminoら(Cimmino,A.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 702:13944−13949(2005))により示された重要な癌遺伝子標的とマイクロRNAのリストに新しい例を追加する。注目すべきことに、miR−17−5p及びmiR−16は、本明細書に記載したmiRNA固形癌サインのメンバーである。
【0173】
【表49】
【表50】
【表51】
【表52】
【表53】
【表54】
【0174】
これまで明白には参照により組み込まれなかった本明細書に引用された全ての出版物の関連ある教示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明はその好ましい態様を参照して具体的に示され且つ説明されたが、付記した請求項により包含される本発明の範囲から逸脱せずに、形態及び詳細における種々の変更がその中でなされ得ることは、当業者により理解されるであろう。