【課題を解決するための手段】
【0011】
3次元画像ボリュームの再構成方に関する課題は、本発明によれば、焦点を有するX線源と検出器とを備えた撮影システムが関心領域の周りを回転する間に撮影された関心領域の複数の2次元投影画像から3次元画像ボリュームを、画像ボリュームのボクセルのグレー値を投影画像の逆投影により算出することによって再構成する3次元画像ボリュームの再構成方法であって、各2次元投影画像がそれぞれ少なくとも2つの個別投影画像から1つの拡張された2次元投影画像に合成され、それぞれ少なくとも2つの個別投影画像が焦点と関心領域との間の一定の相対的位置において撮影される3次元画像ボリュームの再構成方法において、それぞれ少なくとも2つの個別投影画像は、焦点および関心領域が一定の相対的位置にて互いに異なって位置決めされかつ撮影システムが焦点を中心にしてまたは焦点を通る
回転軸を中心にして異なって回転させられるように異なっている
ことによって解決される(請求項1)。
X線装置に関する課題は、本発明によれば、関心領域の2次元投影画像を撮影するためのX線源およびX線検出器を含む撮影システムと、2次元投影画像から3次元画像ボリュームを再構成するための制御および計算ユニットとを備え、撮影システムは、X線源とX線検出器との間における第1の回転中心の周りを回転可能であると共に、X線源の焦点における第2の回転中心を中心にしてまたはX線源の焦点を通る
回転軸を中心にして回転可能であることによって解決される(請求項15)。
【0012】
3次元画像ボリュームの再構成方法に関する本発明の有利な実施態様は次の通りである。
・それぞれ2つの個別投影画像が作成されて1つの拡張された投影画像に合成される(請求項2)。
・少なくとも2つの個別投影画像のそれぞれの回転角が一平面内に配置されている(請求項3)。
・焦点を中心とする撮影システムまたは関心領域のそれぞれの回転は、関心領域の周りにおける撮影システムの回転平面内にある(請求項4)。
・第1の個別投影画像は焦点を中心とするまたは焦点を通る
回転軸を中心とする撮影システムの第1の回転角において撮影され、第2の個別投影画像は焦点を中心とするまたは焦点を通る
回転軸を中心とする撮影システムの第2の回転角において撮影され、第1の回転角が負の第2の回転角に一致する(請求項5)。
・それぞれ合成される個別投影画像が0%よりも大きく50%よりも小さい相互の重なりを有する(請求項6)。
・それぞれ合成される個別投影画像が0%よりも大きく10%よりも小さい相互の重なりを有する(請求項7)。
・重なりが
関心領域に依存して、特に
関心領域の大きさに依存して設定される(請求項8)。
・投影画像の撮影順序は、先ず関心領域の周りにおける撮影システムの第1の回転循環において全ての第1の個別投影画像が撮影され、続いて関心領域の周りにおける撮影システムの第2の回転循環において全ての第2の個別投影画像が撮影されるように定められ、各第1の投影画像がそれぞれ1つの第2の投影画像と合成される(請求項9)。
・投影画像の撮影順序は、それぞれ1つの拡張2次元投影画像に合成されるそれぞれ少なくとも2つの個別投影画像が関心領域の周りにおける撮影システムの唯一の回転循環においてそれぞれ直接的な続きで撮影されるように定められている(請求項10)。
・投影画像を撮影するためにX線源から発生されるX線ビームがコーンビームの形状を有する(請求項11)。
・投影画像を撮影するためにX線源から発生されるX線ビームがファンビームの形状を有する(請求項12)。
・仮想検出器がX線検出器の検出器マトリックスのデカルト座標配置に基づいて構成されることによって、少なくとも2つの個別投影画像が合成される(請求項13)。
・仮想検出器がフィルタラインの配置に基づいて構成されることによって、少なくとも2つの個別投影画像が合成される(請求項14)。
【0013】
本発明による方法では、1つの拡張投影画像に合成される2つの(またはそれよりも多い)異なる個別投影画像を作成することによって、限られた検出器面、従って限られた視野(FoV)を拡張することができる。それによって関心領域(ROI)全体が表示可能である。
【0014】
それぞれ少なくとも2つの個別投影画像は、焦点と関心領域との間の一定の相対的位置において撮影される。この場合に一定の相対的位置とは、関心領域における2つの点と焦点とによって規定される三角形が一定の大きさを有することであると理解すべきである。
【0015】
更に、それぞれ少なくとも2つの個別の投影画像は、少なくとも2つの個別投影画像の照射のためのそれぞれのX線ビームが、連続して関心領域を網羅する拡張されたX線ビームに合成可能であるように選ばれている。
【0016】
本発明の第1の実施態様によれば、それぞれ少なくとも2つの個別投影画像は、焦点および関心領域が位置固定である際に撮影システムが焦点を中心にしてまたは焦点を通る
回転軸を中心にして回転する回転角に関して異なっている。2次元投影画像を撮影するための撮影システムが一般に関心領域内に置かれる第1の回転中心の周りを回転し、このようにして焦点の異なる曲線点について投影画像が作成されると共に、X線源に、特にX線源の焦点に第2の回転中心が存在し、それゆえ各曲線点について少なくとも2つの個別投影画像が撮影可能である。
【0017】
それによって、簡単かつ安価に、走査軌道曲線の全ての曲線点から2次元投影画像にて撮像(写像)可能でありかつアーチファクトなしに3次元に再構成可能である領域が拡張される。この場合に走査軌道曲線または軌跡はX線焦点の軌道によって規定される。
【0018】
軌跡の各曲線点において2つの(または2つよりも多い)個別投影画像が作成される。個々の撮影間の相違は、撮影システムがX線源を中心にして、特にX線源の焦点を中心にして異なる回転角を取ることにある。したがって、X線源とX線検出器とからなる撮影システムのX線源を中心とする回転が、X線からの付加的な画像情報の獲得を可能にする。
【0019】
それによって、個別投影画像間に、個別投影画像を補正により1つの大きな拡張された投影画像に合成するために利用することができるホモグラフィ関係が生じる。これはファンビームジオメトリにもコーンジオメトリにも当てはまる。このようにして検出器が仮想的に拡張され、部分的には本来の幅の何倍にも拡張される。このように拡大されたFoVによって当該身体領域が完全に捕捉可能になる。
【0020】
この場合にホモグラフィ(homography)は、点が或る2D座標系から他の2D座標系へ移される写像規則である。2つ又はそれ以上の平面に1つのX線ビームが交差する場合に、異なる平面の対応する交点の間にホモグラフィ関係が存在する。点が均一な座標において表されるならば、この関係は線形写像x'=H'xとして公式化することができる。ただし、xは元の点を示し、x'は変換された点を示し、3×3のマトリックスH'はホモグラフィ変換自体を示す。この場合に少なくとも2つの個別投影画像の合成は、実際のX線検出器に対して拡張された仮想検出器の構築とも呼ばれる。これは、本発明のどの代替策に基づいて2つ又はそれ以上の個別投影画像が撮影されたかには関係なく、当てはまる。
【0021】
本発明の第2の代替策によれば、それぞれ少なくとも2つの個別投影画像は、焦点および撮影システムが位置固定である際に関心領域が焦点の周りをまたは焦点を通る
回転軸の周りを回転する回転角に関して異なっている。
【0022】
本発明の第3の代替策によれば、それぞれ少なくとも2つの個別投影画像は、焦点および関心領域が一定の相対的位置にて互いに異なって位置決めされ撮影システムが焦点または焦点を通る
回転軸を中心にして回転させられる。
【0023】
本発明による方法もしくは本発明による方法の選択的な形態は、一方では、限られた検出器面積のために従来可能でなかった腹部や胸部のような大きな身体領域のアーチファクトのない完全な再構成を可能にする。他方では、身体領域全体の一部しか再構成されない関心領域再構成の際に、遮断された投影画像が厄介な再構成アーチファクトを生じることを回避することができる。その上、本発明による方法は、遮断された投影画像がアーチファクトをひき起こすあらゆる再構成アルゴリズムと効果的に組み合わせ可能であり、これは拡張として理解されるべきである。これは、特に、今日のCアーム装置において標準的に使用されるフェルドカンプ、デービスおよびクレスのアルゴリズムに対して当てはまる。なぜならば、これは円状走査軌道(軌跡)において水平なフィルタラインを有するから
である。
【0024】
本発明による方法と公知の(近似的または正確な)再構成アルゴリズムとの組み合わせにおける重要な利点は、これらの公知の再構成アルゴリズムの変更の必要性がないことにある。仮想検出器は前処理ステップとして構成されるとよい。すなわち、再構成に使用された拡張投影画像が本来の再構成の前に2つ又はそれ以上の個別投影画像から合成され、引続いて再構成に使用される。撮影プロトコル、すなわち個別投影画像の撮影順序だけを相応に変更することができる。更に、本発明による方法は平坦形ならびに湾曲形の検出器に適し、ファンビームジオメトリにもコーンジオメトリにも適用可能である。
【0025】
安価な方法のために有利には、それぞれ正確に2つの個別値画像が作成されて1つの拡張投影画像に合成される。
【0026】
本発明の一実施態様によれば、少なくとも2つの個別投影画像のそれぞれの回転角が一平面内に配置されている。これによって、拡張投影画像への投影画像の合成の簡単化が保証される。
【0027】
少なくとも2つの個別投影画像の簡単な合成のために有利には、焦点を中心とするまたは焦点を通る
回転軸を中心とする撮影システムまたは関心領域の回転は、ほぼ関心領域の周りにおける撮影システムの回転平面内にあり、これは関心領域の周りにおける撮影システムの回転平面に対して直交して焦点を通る
回転軸を中心とする回転(傾斜)と同じ意味を持つ。この場合に、第1の個別投影画像は焦点を中心とするまたは焦点を通る
回転軸を中心とする撮影システムの第1の回転角において撮影され、第2の個別投影画像は焦点を中心とするまたは焦点を通る
回転軸を中心とする撮影システムの第2の回転角において撮影され、第1の回転角が負の第2の回転角に一致するならば、特に有利であることが分かった。この場合に基準点は、X線源の焦点からX線検出器への垂線が撮影システムの
回転軸に交差することによって規定される中心位置にある。
【0028】
本発明の他の実施態様によれば、それぞれ合成される個別投影画像が0%よりも大きく50%よりも小さい、特に10%よりも小さい相互の重なりを有する。0%よりも大きい重なりによって個別投影画像の合成が簡単化される。なぜならば、重複して測定される画像点に基づいて不安定性またはずれの際に調整および平滑化を行なうことができる。同時に50%、特に10%よりも小さい重なりによって、患者が不必要に放射に曝されることが回避される。
【0029】
本発明の他の構成によれば、重なりが対象に依存して、特に対象の大きさに依存して設定される。これによって、対象において利用されないで通り過ぎるX線を対象の高さおよび幅に応じてできるだけ少なくするならば、X線の特に良好な利用率が達成される。
【0030】
異なる曲線点に対する個別投影画像の撮影順序に関しては、またしても2つの有利な実施態様が可能である。撮影順序に関する第1の実施態様によれば、投影画像の撮影順序は、関心領域の周りにおける撮影システムの第1の回転循環において全ての第1の個別投影画像が撮影され、続いて関心領域の周りにおける撮影システムの第2の回転循環において全ての第2の個別投影画像が撮影されるように定められ、各第1の投影画像がそれぞれ1つの第2の投影画像と合成される。
【0031】
撮影順序に関する第2の実施態様によれば、投影画像の撮影順序は、それぞれ1つの拡張2次元投影画像に合成されるそれぞれ少なくとも2つの個別投影画像が関心領域の周りにおける撮影システムの唯一の回転循環においてそれぞれ直接的な続きで撮影されるように定められている。
【0032】
本発明による第1の代替策における方法を実施するのに適したX線装置は、関心領域の2次元投影画像を撮影するためのX線源およびX線検出器を含む撮影システムと、2次元投影画像から3次元画像ボリュームを再構成するための制御および計算ユニットとを備え、撮影システムは、X線源とX線検出器との間における第1の回転中心の周りを回転可能であると共に、X線源の焦点における第2の回転中心を中心にしてまたはX線源の焦点を通る回転軸を中心にして回転可能である。
【0033】
本発明による第2の代替策における方法を実施するために適したX線装置は、関心領域の2次元投影画像を撮影するためのX線源およびX線検出器を含む撮影システムと、関心領域を寝かせるための空間的に3次元移動可能な、特に焦点の周りに回転可能な寝台装置と、2次元投影画像から3次元画像ボリュームを再構成するための制御および計算ユニットとを備え、撮影システムはX線源とX線検出器との間における第1の回転中心の周りを回転可能である。
【0034】
本発明による第3の代替策における方法を実施するために、第2の代替策を実施するためのX線装置と類似のX線装置が適し、この場合には寝台装置が焦点の周りを回転可能であることは必要でなく、撮影システムの回転平面内において2次元に移動可能でなければならない。
【0035】
特に好ましくは、本発明による方法は、撮影システムが直接にまたは支持体を介して産業ロボットもしくは多関節アームロボットに配置されているX線装置、または寝台装置が産業ロボットもしくは多関節アームロボットに配置されているX線装置により実施される。この種のX線装置により空間内における任意の動きが簡単に実行可能である。