特許第5744097号(P5744097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 高砂電器産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5744097-遊技機 図000002
  • 特許5744097-遊技機 図000003
  • 特許5744097-遊技機 図000004
  • 特許5744097-遊技機 図000005
  • 特許5744097-遊技機 図000006
  • 特許5744097-遊技機 図000007
  • 特許5744097-遊技機 図000008
  • 特許5744097-遊技機 図000009
  • 特許5744097-遊技機 図000010
  • 特許5744097-遊技機 図000011
  • 特許5744097-遊技機 図000012
  • 特許5744097-遊技機 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744097
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
   A63F 5/04 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
   A63F5/04 512D
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-84662(P2013-84662)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-204873(P2014-204873A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2013年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000169477
【氏名又は名称】高砂電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078916
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 由充
(74)【代理人】
【識別番号】100142114
【弁理士】
【氏名又は名称】小石川 由紀乃
(72)【発明者】
【氏名】萩原 良昌
(72)【発明者】
【氏名】松井 孝明
(72)【発明者】
【氏名】小川 裕貴
【審査官】 中村 祐一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−175437(JP,A)
【文献】 特開2005−208126(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/081623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフルカラーLEDを光源とする電飾装置が機体の前面に設けられると共に、遊技の進行に応じて前記電飾装置内の各LEDの発光状態を変化させる制御装置を具備する遊技機において、
前記制御装置には、前記電飾装置における発光状態の変化の態様が異なる複数種の演出パターンのそれぞれに対し、その演出パターンによる演出において発光させるLED毎の色データより成る色データ群が紐付けられて保存された記憶手段と、所定の遊技条件が成立したことに応じて、2以上の演出パターンのそれぞれに紐付けられている色データ群の間で共通するLEDにかかる色データをLED毎に合成して、この合成処理により生成された合成色データに基づき各LEDの発光動作を制御することにより各演出パターンを重ね合わせた表示による演出を前記電飾装置に実施させる演出制御手段とを備え、
前記演出制御手段は、前記電飾装置内の前記重ね合わせ表示の対象の演出パターンのそれぞれに紐付けられている色データ群から前記合成処理の対象のLEDに対応する色データを読み出す手段と、読み出された色データの中で前景色となる色データを構成する複数の色要素データのうちの1つが示す値からアルファ値を設定する手段と、前記前景色となる色データとこの色データと共に読み出された背景色となる色データとの間でこれらを構成する色要素データを色要素の種毎に組み合わせて、組み合わせ毎にその組み合わせにかかる色要素データを前記アルファ値に基づき合成することによって前記合成色データを導出する手段とを具備する、ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記演出制御手段は、前記合成処理の対象のLEDにつき読み出された前景色用の色データの中で最も強度が高い色要素データが示す値を、当該色要素データの上限値に対する比率に換算してアルファ値として設定する、請求項1に記載された遊技機。
【請求項3】
前記演出制御手段は、アルファ値に基づき調整された背景色用の色要素データとアルファ値による調整がなされていない前景色用の色要素データとを、前記色要素データの組み合わせ毎に加算することにより、前記合成色データを導出する、請求項2に記載された遊技機。
【請求項4】
前記演出制御手段は、前記合成処理の対象のLEDにつき読み出された前景色用の色データの中で最も強度が高い色要素データが示す値を当該色要素データの上限値に対する比率に換算した値に1より大きい所定の係数を乗算し、その乗算値が1.0以下であれば当該乗算値をアルファ値として設定し、当該乗算値が1.0を上回る場合はアルファ値を1.0とする、請求項1に記載された遊技機。
【請求項5】
前記記憶手段では、前記複数種の演出パターンに対し、それぞれ演出パターン間での優先順位を表す優先値データが紐付けられて保存されており、
前記演出制御手段は、3以上の演出パターンが重ね合わせ対象となった場合に、各重ね合わせ対象の演出パターンに紐付けられた優先値データに基づき、優先順位が最も低い演出パターンを表す色データを背景色とし、優先順位が2番目に低い演出パターンを表す色データを前景色とした色データの合成処理を実行した後に、直前の合成色データを背景色とし、未だ合成処理が行われていない前記重ね合わせ対象の演出パターンの中の優先順位が最も低い演出パターンを表す色データを前景色とした色データの合成処理を、優先順位が最も高い色データを前景色とする合成処理が終了するまで繰り返す、請求項1に記載された遊技機。
【請求項6】
前記記憶手段では、前記複数種の演出パターンに対し、それぞれ色データの合成の手法が異なる複数の合成種別のいずれかが紐付けられて保存されており、
前記演出制御手段は、毎回の色データの合成処理において、前景色とした演出パターンに紐付けられている合成種別に応じた処理を実施する、請求項5に記載された遊技機。
【請求項7】
前記記憶手段には、前記優先値データおよび合成種別の少なくとも一方が異なる2以上の演出パターンに共通に紐付けられた色データ群が含まれる、請求項6に記載された遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のフルカラーLEDを光源とする電飾装置が機体の前面に設けられ、遊技の進行に応じてこの電飾装置において様々な演出が行われる遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
フルカラーLEDは、赤,緑,青の各色彩光をそれぞれ発する3種類の発光素子が1つのパッケージに封入された構成のもので、各発光素子を個別に制御することによって、様々な色彩の光を発することができる。この性質を利用して、パチンコ機やスロットマシンなどの遊技機でも、従来の単色発光型のLEDによる電飾装置に代えて、フルカラーLEDによる多色発光タイプの電飾装置が広く導入されるようになった(たとえば特許文献1,2を参照。)。
【0003】
この種の遊技機には、画像による演出を行うために液晶パネルが導入されることも多い。その液晶パネルにおける表示制御に関して、特許文献3には、各種キャラクタの表示画像を構成する各画素の表示色データにアルファ値データを対応づけ、アルファ値データを変動させることによって、キャラクタの表示画像の変化を伴う演出表示を行うことが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−152137号公報
【特許文献2】特開2008−119401号公報
【特許文献3】特開2007−175437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の単色発光タイプの電飾装置には、消灯時でも明るく見えるように、着色された反射カバーが取り付けられていたが、多色発光タイプの電飾装置には、各種の色彩光を透過させる必要性から無色透明もしくは白色系の反射カバーが取り付けられている。カバーが着色されていないと、LEDが消灯したときに筐体が暗く感じられるため、フルカラーLEDによる電飾装置が搭載された遊技機では、LEDを常時点灯させる場合が多い。
【0006】
このような実情や各LEDの発光色を個別に制御できる点に鑑み、フルカラーLEDによる電飾装置が搭載された遊技機では、通常の遊技状態や待ち受け時間中にも、電飾装置において何らかの動きのある表示を実施するようになっている。
【0007】
フルカラーLEDによる発光パターン自体は、画像として視認される類のものではないが、発光色や明度の変化、各フルカラーLEDの点滅制御による光の動きなどによって、時系列的な動きを持つ演出を展開することができる。
さらに、遊技機においては、フルカラーLEDによる様々な態様の演出パターンを遊技の進行状態に応じて単純に切り替えるのみならず、先に進行していた演出パターンに新たに選択された演出パターンを重ね合わせた表示を行ったり、演出パターン間の強度の関係を変動させる表示が行われている。
【0008】
このようなフルカラーLEDによる複数の演出パターンの重ね合わせ処理においても、特許文献3に記載したような画像の表示と同様に、アルファ値に基づく制御を行うようにすれば、重ね合わせられた演出パターンの中の前方の演出パターンの透過度を変動させることができるので、実施中の演出パターンに新たな演出パターンを強度をしだいに高めながら重ね合わせたり、終了前の演出パターンの強度を徐々に減衰させてゆくなど、興趣をより高めた演出表示を実施することが可能になると思われる。
【0009】
しかし、フルカラーLEDを制御するには、LED毎に、R,G,Bの各色成分毎のデータ(以下、「色要素データ」という。)の組み合わせによる色データを設定する必要がある。しかも、演出パターンに含まれる各種発光パターン毎に各LEDに対応する色データ群が必要となるため、既存の演出制御用の色データ群だけでも多量になる。アルファ値の設定データも、LED毎および発光パターン毎に必要になるので、アルファ値の設定データを保存すると、メモリが圧迫されるおそれがある。
【0010】
本発明は上記の問題に着目してなされたもので、透過度を調整するためのアルファ値を、事前に保存する必要なく容易に設定することにより、演出パターンの表示における自由度を高めることを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明では、複数のフルカラーLEDを光源とする電飾装置が機体の前面に設けられると共に、遊技の進行に応じて電飾装置内の各LEDの発光状態を変化させる制御装置を具備する遊技機の制御装置に、電飾装置における発光状態の変化の態様が異なる複数種の演出パターンのそれぞれに対し、その演出パターンによる演出において発光させるLED毎の色データより成る色データ群が紐付けられて保存された記憶手段と、所定の条件が成立したことに応じて、2以上の演出パターンのそれぞれに紐付けられている色データ群の間で共通するLEDにかかる色データをLED毎に合成して、この合成処理により生成された合成色データに基づき各LEDの発光動作を制御することにより各演出パターンを重ね合わせた表示による演出を前記電飾装置に実施させる演出制御手段を設ける。
【0012】
演出制御手段は、前記電飾装置内の前記重ね合わせ表示の対象の演出パターンのそれぞれに紐付けられている色データ群から前記合成処理の対象のLEDに対応する色データを読み出す手段と、読み出された色データの中で前景色となる色データを構成する複数の色要素データの中の1つが示す値からアルファ値を設定する手段と、前記前景色となる色データとこの色データと共に読み出された背景色となる色データとの間でこれらを構成する色要素データを色要素の種毎に組み合わせて、組み合わせ毎にその組み合わせにかかる色要素データを前記アルファ値に基づき合成することによって前記合成色データを導出する手段とを具備する。
【0013】
アルファ値は0から1までの値をとり、最大値1のときには背景色が全く見えない非透過状態となり、最小値0のときには前景色が全く見えない完全透過状態となる。
本発明では、アルファ値を示すデータを設定することなく、前景色となる色データを構成する複数の色要素データの中の1つが示す値からアルファ値を導出するので、前景色となる色データについて強度を十分に高めておけば、この色データを構成する色要素データが示す値に基づきアルファ値を高く設定して前景色を強調し、背景色を見えにくい状態にすることができる。一方、前景色となる色データの強度を低く設定すれば、アルファ値も低く設定することができ、前景色の透過率を高めて背景色が見えやすい状態にすることができる。
【0014】
記憶手段の各演出用の色データ群には、個々のLEDにおける発光色を表す複数の色データが含まれる。また、発光パターンの変化を伴う演出を実施するためには、発光パターン毎に上記複数の色データが保存される。
【0015】
一実施形態による演出制御手段は、合成処理の対象のLEDにつき読み出された前景色用の色データの中で最も強度が高い色要素データが示す値を、当該色要素データの上限値に対する比率に換算してアルファ値として設定する。
たとえば、各色要素データが8ビット構成で0〜255の値をとる場合に、最も強度が高い色要素データの値が204であれば、アルファ値は204/255=0.8となり、最も強度が高い色要素データの値が102であれば、アルファ値は102/255=0.4となる。
【0016】
上記の実施形態によれば、前景色を示す色データを構成する複数の色要素データの中の最大値に基づきアルファ値を容易に導出して特別演出パターンの透過度を調整することができる。
【0017】
演出制御手段は、上記のアルファ値を前景色用の各色要素データおよび背景色用の各色要素データにそれぞれ適用して、合成色データを構成する各色要素データを求めることができる。ただし、演出制御手段は、アルファ値に基づき調整された背景色用の色要素データとアルファ値による調整がなされていない前景色用の色要素データとを、色要素データの組み合わせ毎に加算することにより合成色データを導出することもできる。
【0018】
上記の演算によれば、前景色には元々の色データが示す強度が反映されるので、所定フレーム数分の色データにおいて強度を徐々に低下させると、その設定に従って前景色を低下させながら、背景色の割合をしだいに増加させることができる。このようにすれば、前景に表示されている演出パターンを終了させる際などに、前景色の強度を違和感なく減衰させることができる。
【0019】
他の実施形態による演出制御手段は、合成処理の対象のLEDにつき読み出された前景色用の色データの中で最も強度が高い色要素データが示す値を当該色要素データの上限値に対する比率に換算した値に1より大きい所定の係数を乗算し、その乗算値が1.0以下であれば当該乗算値をアルファ値として設定し、当該乗算値が1.0を上回る場合にはアルファ値を1.0とする。
このようにすれば、前景色用の色データの強度を徐々に低下させても、ある程度の強度まではアルファ値が1.0に維持されて前景色のみが表示される状態になり、その後に前景色を徐々に減衰させることができる。また、係数の値によって、減衰の開始時期や減衰の度合いを調整することができる。
【0020】
他の実施形態による遊技機では、記憶手段において、複数種の演出パターンに対し、それぞれ演出パターン間での優先順位を表す優先値データが紐付けられて保存される。また演出制御手段は、3以上の演出パターンが重ね合わせ対象となった場合には、各重ね合わせ対象の演出パターンに紐付けられた優先値データに基づき、優先順位が最も低い演出パターンを表す色データを背景色とし、優先順位が2番目に低い演出パターンを表す色データを前景色とした色データの合成処理を実行した後に、直前の合成色データを背景色とし、未だ合成処理が行われていない前記重ね合わせ対象の演出パターンの中の優先順位が最も低い演出パターンを表す色データを前景色とした色データの合成処理を、優先順位が最も高い演出パターンを前景色とする合成処理が終了するまで繰り返す。
【0021】
上記の実施形態によれば、3以上の演出パターンを重ね合わせて表示したい場合でも、各演出パターンに対応する色データと優先順位とを用いて複数段階の合成処理を実施することによって、各演出パターンを優先順に重ね合わせた表示を容易に実施することができる。
【0022】
さらに上記の実施形態における記憶手段では、複数種の演出パターンに対し、それぞれ色データの合成の手法が異なる複数の合成種別のいずれかを紐付けて保存することができる。この場合には、演出制御手段は、毎回の色データの合成処理において、前景色とした演出パターンに紐付けられている合成種別に応じた処理を実施する。
上記の処理によれば、演出パターン毎に、その演出パターンに適した合成種別に基づく合成処理を実施することができる。
【0023】
上記の記憶手段には、前記優先値データおよび合成種別の少なくとも一方が異なる2以上の演出パターンに共通に紐付けられた色データ群を含めることができる。このようにすれば、演出に用いられた色データ群を共通にして、他の演出パターンと重ね合わせられたときの色合い、明瞭度合い、減衰の度合いなどが異なる複数とおりの演出表示を提示することができる。
よって、少ないデータ容量でもバリエーションに富んだ電飾演出が可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アルファ値のデータを保存しなくとも、複数の演出パターンを透過度を様々に変動させて重ね合わせて表示することができ、演出の興趣が高められる。また、前景色として表示された演出パターンを違和感なく自然に減衰させながら終了させる表示制御を実現させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明が適用されたスロットマシンの機体の正面図である。
図2】上記スロットマシンの電気構成を示すブロック図である。
図3】電飾制御に関して副制御部に設定された機能を示す機能ブロック図である。
図4】特別演出用の色データによる前景色および通常演出用の色データによる背景色と、合成処理に用いられるアルファ値と、合成色との関係を示すテーブルである。
図5】特別演出用の色データの強度と合成色における前景色の強度との関係を示すグラフである。
図6】特別演出用の色データの強度と第3の設定方法により設定されるアルファ値との関係を示すグラフである。
図7】特別演出時の電飾制御の手順を示すフローチャートである。
図8】第2の実施例における副制御部の機能を示す機能ブロック図である。
図9図8中の演出パターンテーブルのデータ構成と、その中の合成種別の定義を示す説明図である。
図10図8中の演出リストテーブルのデータ構成を、リストの変遷の例と共に示す説明図である。
図11】第2実施例における電飾演出制御の手順を示すフローチャートである。
図12図11内のステップS110における詳細な手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明が適用されたスロットマシンの外観を示す。
この実施例のスロットマシン100は、前面に扉1が取り付けられた筐体100Aの内部に、リールユニット、メダル払出機、制御基板などが組み込まれたものである。扉1は金属製の枠体10を本体とするもので、枠体10の中央部および下部にそれぞれ合成樹脂製のパネル11,12が取り付けられている。枠体10の上部には、液晶パネル13が配備されると共に、この液晶パネル13を挟むようにして左右一対のスピーカ14,15が取り付けられている。
【0027】
中央のパネル11では、筐体内のリールユニットに対応する高さ位置に矩形状のリール表示窓16が設けられ、その下方に数値表示器17が設けられている。リール表示窓16からは、外周面に複数の図柄が描かれた3個のリール3a,3b,3cを視認することができる。
【0028】
中央のパネル11と下方のパネル12との間には、メダル投入口4、大小一対のベットスイッチ5,6、始動レバースイッチ7、3個の停止ボタンスイッチ8a,8b,8c、精算スイッチ9などが設けられている。
なお、ベットスイッチ5,6は、機体に貯留されたメダルを引き落としてゲームに賭けるための操作スイッチであり、大きい方のベットスイッチ5が操作された場合には3枚のメダルが引き落とされ、小さい方のベットスイッチ6が操作された場合には1枚のメダルが引き落とされる。精算スイッチ9は、メダルの貯留を解除するためのスイッチである。
【0029】
枠体10の下部には、メダル払出口17が開口されると共に、このメダル払出口17から払い出されたメダルを受けるためのメダル受け皿18が設けられている。メダル払出口17は、図2に示すメダル払出機19のメダル排出口に連なる。
【0030】
上記構成のほか、この実施例の扉1には、フルカラー発光タイプの電飾LED20(以下、単に「LED20」という場合がある。)を多数含む電飾装置200が設けられている。各電飾LED20は、扉1の前面の数箇所に分かれて帯状に配列されている。具体的にこの実施例では、枠体10の左端縁および右端縁に沿ってそれぞれ上下一対の帯配列(20aと20b,および20cと20d)が形成されるほか、帯配列20a,20cからそれぞれ液晶パネル13の上部位置へと分岐する短い帯配列20e,20fや、枠体10の上端縁の中央部に位置する帯配列20gが形成されている。
【0031】
これらの電飾LED20の帯配列20a〜20gは、それぞれ無色透明の樹脂カバー(図示せず。)により被覆され、各電飾LED20からカバーを透過した各種色彩光によって、種々の電飾演出が実施される。
【0032】
図2は、上記スロットマシン100の主要な回路構成を示す。このスロットマシン100には、遊技の進行全般を制御する主制御部101と、主制御部101からのコマンドに応じて演出に関する制御を担当する副制御部102とが設けられている。主制御部101には、図1に示した各種スイッチ5,6,7,8a,8b,8c,9のほか、メダル投入口4に連なるメダル通路(図示せず。)に配備されたメダル検知センサ40、各リール3a,3b,3cを駆動するためのリール駆動回路30、メダル払出機19、数値表示器17などが接続される。
【0033】
副制御部102には、液晶パネル13やスピーカ14,15が接続されるほか、電飾装置200に含まれる個々の電飾LED20がそれぞれ個別に制御可能に接続されている。
なお、この実施例では副制御部102を1つとするが、副制御部を2つにして、一方の副制御部で液晶パネル13を制御し、他方の副制御部でスピーカ14,15および電飾装置200を制御するようにしてもよい。
【0034】
主制御部101では、メダル検知センサ40からのメダル検知信号またはベットスイッチ5,6の操作に応じてメダル賭け処理を実施した後、始動レバースイッチ7の操作に応じて抽選を実施すると共にリール駆動回路30に各リール3a,3b,3cの回転開始を指示する。さらに、停止ボタンスイッチ8a,8b,8cの操作を受け付ける都度、操作されたスイッチに対応するリールが抽選結果に応じたタイミングで停止するように、リール駆動回路30を制御する。この制御により当たりの図柄組み合わせが揃うと、主制御部101は、メダル払出機19を駆動して、成立した当たりの種別に応じた枚数のメダルを払い出しさせる。
【0035】
上記一連のゲーム制御において、主制御部101は、適宜、副制御部102に演出制御を指示するコマンドを送信する。特に、大当たりが発生したり、抽選で特別のゲームモードに当選した場合には、主制御部101は、副制御部102に特別演出用の制御を命じるコマンドを送信する。
副制御部102は、主制御部101からのコマンドに応じて、液晶パネル13の画像表示、スピーカ14,15からの効果音、各電飾LED20の発光動作を制御する。
【0036】
以下、副制御部102の制御により実施される演出のうち、電飾装置200において実施される電飾演出について詳細に説明する。
この実施例では、フルカラーLEDを発光源とする電飾装置200が導入されていることをふまえ、常時、各電飾LED20の発光パターンを一定のサイクルで変化させる電飾演出を実施させている。以下、この常時実施される演出を「通常演出」と呼び、通常演出において実施される演出のパターンを「通常演出パターン」と呼ぶ。
【0037】
主制御部101から特別演出用のコマンドを受けた場合には、副制御部101は、通常演出パターンの表示サイクルを維持しながら、受け付けたコマンドに対応する特別演出用の演出パターンを通常演出パターンに重ねて表示するようにしている。以下、特別演出における演出のパターンを「特別演出パターン」と呼ぶ。
【0038】
図3は、電飾装置200に対する制御に関して副制御部102に設定されている機能を示す。
【0039】
この実施例の通常演出パターンや特別演出パターンは、各電飾LED20における色彩や明るさの分布を様々に変化させるものである。このような演出を行うには、個々の電飾LED20毎の色データより成るフレームデータ(1回分の発光パターンを表す色データ群)が、複数フレーム分必要となる。個々の色データは、1つの電飾LED20における発光色および明るさを示すもので、この実施例では、R,G,Bの各色要素データ(いずれも8ビット)の組み合わせにより構成される。
【0040】
副制御部102には、演出パターン毎に、その演出を実施するのに必要な色データ群をまとめたデータファイル201,202が登録されている。201は特別演出用のデータファイルであり、202は通常演出用のデータファイルである。特別演出、通常演出ともに、複数のパターン種別が設定され、パターン種別毎にデータファイル201または202が設定され、これらのファイル内に演出パターンを表す複数のフレームデータが実行順序に紐付けられて保存されている。
【0041】
さらに、副制御部102には、プログラムによって、コマンド受付部203,演出選択部204,色データ合成処理部205,演出制御部206などの機能が設定されると共に、後記する対応付けテーブル210が設けられる。
コマンド受付部203は、主制御部101からのコマンドを受け付けて、そのコマンドの内容を解析する。この解析結果を受けた演出選択部204は、当該コマンドに応じた演出用のデータファイル201または202を選択し、選択したデータファイルに格納されている各種フレームデータを実行順序に従って読み出す。
【0042】
読み出されたフレームデータに含まれる色データ群は色データ合成処理部205に渡され、あらかじめ定められた順序に従って各電飾LED20毎の色データの合成処理が実施されて、それぞれの電飾LED20に対する発光色が決定される。
この実施例では、通常演出用の色データによる色彩を背景色とし、特別演出用の色データによる色彩を前景色として、色データの合成処理を実施する。演出制御部206では、色データ合成処理部205より合成後の色データの供給を受けて、当該データに対応する電飾LED20の発光動作を制御する。
【0043】
以下、1つのLED20に対する色データの合成処理について、3とおりの方式を説明する。
まず第1の処理方式では、色データ合成処理部205は、処理対象の電飾LED20に対する色データを構成する各色要素データの値(以下、「R値」「G値」「B値」という。)の中の最大値を抽出し、その最大値をデータの上限値(255)に対する比率に換算する演算によりアルファ値を導出する。たとえば、R値,G値,B値の中の最大値が255であればアルファ値は1.0となり、3つの値の中の最大値が153であればアルファ値は0.6となる。
【0044】
色データ合成処理部205では、処理対象の電飾LED20につき、演出選択部204から特別演出用の色データと通常演出用の色データとの提供を受けると、前者の色彩を前景色とし、後者の色彩を背景色として、前景色を対象に、上記方法でアルファ値αを求める。そして、このアルファ値αを適用した下記の演算式をR,G,B毎に実施することにより、前景色と背景色とを合成する。なおCBKは背景色の強度であり、CFWは前景色の強度である。
(1−α)×CBK+α×CFW=合成後の強度 ・・・(式1)
【0045】
上記の合成処理を電飾LED20毎に実施すると共に、演出制御部206が合成後の色データに基づき各電飾LED20の発光動作を制御することによって、図1に示した電飾LEDの各帯配列20a〜20gにおいて、通常演出パターンおよび特別演出パターンのそれぞれの見え方を調整することができる。
【0046】
図4は、特別演出用の色データによる前景色、通常演出用の色データによる背景色、およびこれらの合成色の具体例を、合成処理に用いられるアルファ値の値と共に示す。なお、図4では、各色データのR値,G値,B値も、上限値(255)に対する比率として示している。
【0047】
図4の(1)(2)(3)を比較すると、通常演出用の色データによる背景色は同一色であるが、特別演出用の色データによる前景色はそれぞれ異なっている。ただし、前景色については、R値,G値,B値の間の強度の比率が図4(1)(2)(3)の間で一定になるように、各強度を均等な比率で変動させている。具体的に、図4(1)における前景色の強度に対し、図4(2)における前景色の強度は50%となり、図4(3)における前景色の強度は20%となっている。
【0048】
各設定例の前景色ではR値が最大になっており、その最大値を上限値に対する比率に換算した値がアルファ値に設定されている。
図4(1)の設定例では、前景色のR値が上限値と同値であるため、α=1.0として上記の(式1)による演算が実施される。その結果、合成色は前景色と同じ、すなわち背景色は全く見えない状態となる。
【0049】
これに対し、図4(2)の設定例では、α=0.5となるため、前景色の強度CFWおよび背景色の強度CBKがそれぞれ50%ずつ抽出されて合成色が生成される。図4(3)の事例では、α=0.2となるため、前景色の強度CFWの20%と背景色の強度CBKの80%とを加算した値による合成色が生成される。
【0050】
したがって、図4(1)(2)(3)の設定による合成色が順に表示されるものとすると、最初は前景色のみが表示され、2番目および3番目の表示に切り替えられる都度、前景色の強度が前回より弱められると共にアルファ値も前回より低くなり、その相乗作用によって合成色における前景色の割合が低減される。背景色の割合は反対に増加してゆくので、時間が経過するにつれて、前景色が減衰して背景色が優勢になる。
【0051】
上記のアルファ値の設定処理や色データの合成処理は、電飾LED20毎にそのLED20に対応する色データを用いて実施されるので、同じ演出パターンであっても各LED20に適用される色データによって前景色の透過度合いが異なる可能性がある。しかしながら、特別演出の主要な期間中には、特別演出パターンを明瞭に示すために、どのLED20についても、R値,G値,B値のうちの少なくとも1つの強度が高めに設定されるはずであるから、アルファ値も比較的高い値になると考えられる。よって、通常演出パターンを全く見えない状態または殆ど見えない状態として特別演出パターンを表示することができる。
【0052】
一方、特別演出の終了時期が近くなった場合には、図4に例示した仕組みを利用して、各LED20に対する色データの強度を時間の経過と共に徐々に低下させてゆくことにより、特別演出パターンの色彩をしだいに減衰させて通常演出パターンの強度を高めてゆくことができる。よって、特別演出が終了して通常演出パターンのみが表示される状態になるより前から通常演出パターンを徐々に強めて登場させることができ、特別演出の終了と同時に表示色が大きく変化するのを防ぐことができる。
【0053】
上記のとおり、本実施例によれば、電飾装置200に与える特別演出用の色データの強度を調整することによって、アルファ値の値を変動させて、特別演出パターンや通常演出パターンの見え方を変動させることができる。この制御により、特別演出を時間の経過に応じて減衰させることが可能になるほか、通常演出パターンの表示中の一部の領域に特別演出パターンを徐々に強めて登場させたり、特別演出パターンの明瞭度合いによって抽選結果を告知するなど、様々な形態の演出を展開することができる。いずれの演出でも、展開したい演出に応じた色データ群を保存しておけば、アルファ値の設定データを保存する必要がないので、データ容量を抑えて演出効果を高めることが可能になる。
【0054】
しかし、上記の(式1)によると、前景色の強度そのものを反映したアルファ値によって合成色中の前景色の強度が調整されるので、合成色における前景色の減衰の度合いは元のデータによる前景色の減衰度合いよりも大きくなってしまう。たとえば、図4(1)に示した前景色を図4(2)に示したように50%の強度にまで低下させると、その50%の強度と0.5に設定されたアルファ値との乗算により、合成色における前景色の強度は25%にまで減衰してしまう。
【0055】
図5は、特別演出用の色データの強度が時間の経過に応じて直線的に変化すると仮定して、合成色における前景色の減衰の特性を模式的なグラフにより示したものである。
このグラフに示すとおり、合成前の前景色の強度を一定の比率で変化させると、合成色における前景色の強度は指数関数的に変化するので、前景色の強度が比較的高い時期の減衰の度合いが大きくなる。
【0056】
上記の問題を考慮して、第2の処理方式では、アルファ値については先の実施例と同様に、R,G,B値の中の最大値を上限値(255)に対する比率に換算した値とするが、合成色を導出するための演算においては、(式1)に代えて次の(式2)を使用する。
(1−α)×CBK+CFW=合成色の強度 ・・・(式2)
【0057】
上記の(式2)によれば、前景色にはアルファ値が適用されないので、データ上の強度がそのまま合成色にも適用される。しかし、前景色の強度を徐々に低下させれば、合成色における前景色の強度も同様に低下し、これに伴いアルファ値も低下するので、合成色中の背景色がしだいに強められる。また(式1)を使用するよりも、前景色を緩やかに減衰させることができる。
【0058】
次に、第3の処理方式では、アルファ値の導出方法を変更する。特別演出用の色データに含まれるR値,G値,B値の中の最大値を抽出する点は、第1および第2の方式と同じであるが、第3の方式では、この最大値を上限値の255に対する比率に換算した値ではなく、当該比率を2倍した値をアルファ値とする。ただし、アルファ値の上限値は1.0であるので、2倍した比率が1.0を上回る場合には、アルファ値を1.0とする。
合成色を導出するための演算では(式1)を使用する。
【0059】
図6は、特別演出用の色データによる前景色の強度が時間の経過に応じて直線的に変化するものと仮定して、その変化と第3の処理方式によるアルファ値の変化との関係を示したものである。第3の処理方式によれば、前景色の強度が上限値の50%以上であれば、アルファ値は一律に1.0となるが、上限値の50%を下回る場合には、アルファ値は第1実施例の2倍の値に設定される。
したがって、特別演出用の色データの最大値が上限値の50%以上である間は、当該特別演出パターンの色彩のみが表示されるが、前景色の強度が上限値の50%より低くなった後の前景色の減衰は、第1実施例よりも大きくなる。
【0060】
なお、R値,G値,B値の中の最大値の比率換算値に乗算される数値(係数)は「2」には限らず、また整数である必要性もない。1より大きい任意の数値(たとえば1.5)を前記の比率に乗算することによって、特別演出パターンの減衰が開始される時期を調整することができる。
【0061】
つぎに、特別演出は、図1に示したLED20の帯配列20a〜20gの全てにおいて実施してもよいが、実施される特別演出の種類によっては、特別演出を行う場所を限定したり、特別演出パターンの明瞭度を場所によって変動させることも可能である。その制御のために、この実施例では、帯配列20a〜20g毎に各LED20をグループ分けし、図3に示した対応付けテーブル210に、各グループの識別情報とそれぞれのグループに属するLED20の識別情報とを対応づけて登録している。
【0062】
図7は、グループ毎に各電飾LED20の発光動作を制御する場合の詳細な手順を示すもので、先に述べた3通りの色合成方法のいずれかが適用される。
この処理は、通常演出が進行中であることを前提に、主制御部101から所定の特別演出の実施を指示するコマンドを受け付けたことにより開始される。
【0063】
最初のステップS1では、主制御部101からのコマンドに対応する特別演出用のデータファイル201を読み出す。このデータファイル201には、特別演出に関わるグループの識別情報が当該グループ内の各電飾LED20の色データに紐付けられて登録されている。以下の処理では、この識別情報に基づき特別演出に関わるグループと関わらないグループとを識別する。
【0064】
ステップS2では、フレームを特定するためのカウンタnを初期値の1に設定する。
この後は、対応付けテーブル210に登録されているグループに順に着目して(ステップS3)、着目中のグループが特別演出を行うグループであるか否かを判別し(ステップS4)、その判別結果によって処理の手順を切り替える。
【0065】
特別演出を行うグループに対しては、ステップS5において、グループ内の電飾LED20を特定するためのカウンタmを初期値の1に設定し、このmにより特定される電飾LED20に対してステップS6,S7,S8,S9を実行する。以後も、カウンタmがグループ内のLED数に達するまでmの値を1つずつ増やして(ステップS10,S11)、mの値が更新される都度、ステップS6,S7,S8,S9を実行する。
【0066】
ステップS6では、着目中のグループにおけるm番目のLED20につき、読出中の特別演出用データファイル201からnフレーム目の色データを取得するとともに、通常演出用のデータファイル202からも次に実施するフレームの色データを取得する。
【0067】
ステップS7では、ステップS6で取得した特別演出用の色データを構成するR値,G値,B値の中の最大値を抽出して、その最大値に基づきアルファ値を設定する。具体的には、R値,G値,B値の中の最大値を上限値に対する比率に換算した値、または当該比率に所定の係数を乗算した値をアルファ値とする。ただし、比率に係数を乗算する方法で乗算値が1を超えた場合には、アルファ値を1とする。
【0068】
ステップS8では、設定されたアルファ値と、ステップS6で取得した2種類の色データとを用いて(式1)または(式2)を実施することにより、各色データによる合成色データを導出する。ステップS9では、この合成色データを用いてm番目のLED20の発光動作を制御する。
【0069】
着目中のグループ内のすべての電飾LED20に対し、上記ステップS6,S7,S8,S9が実施されると(ステップS10が「NO」)、着目中のグループに対する処理を終了する。
【0070】
図7では、特別演出を行う対象に含まれていないグループに対する処理を、1つのステップS12としてまとめて示している。特別演出を実施しないグループについても、そのグループ内の各LED20を順に処理対象に設定するが、ここでは通常演出用の次に実施するフレームの色データ群のみを取得して、その色データにより処理対象のLED20の発光動作を制御する。
【0071】
1つのグループに対する処理が終了すると、ステップS13からステップS3に戻ることにより、次のグループに対する処理に移行する。
【0072】
上記のとおり、この実施例では、電飾LED20の配列を複数のグループに分けて、グループ毎に、そのグループが現在実施中の特別演出パターンに関わるか否かをチェックし、特別演出パターンに関わるグループに対しては、ステップS6〜S9を実行することにより、グループ内の各電飾LED20毎に、通常演出用の色彩と特別演出用の色彩とを合成し、その合成色により発光させる。一方、実施中の特別演出パターンに関わらないグループに対しては、ステップS12を実行することにより、通常演出用の色彩のみを表示させる。
【0073】
すべてのグループに対する処理が終了すると(ステップS13が「YES」)、ステップS15でnの値を更新してステップS3に戻る。これにより、次のフレームに対する処理に移行する。
【0074】
以下、全てのフレームにかかる演出が終了するまで上記の手順を繰り返し、最後のフレームに対する処理が終了したことをもって(ステップS14が「YES」)、処理を終了する。なお、上記の手順では、特別演出を実施するグループが固定されるものとしたが、これに限らず、特別演出を実施するグループをフレーム毎に管理することにより、特別演出が実施される箇所が途中で切り替わるようにしてもよい。
【0075】
上記の手順によれば、特別演出パターンの種別毎に、特別演出に関わるグループの組み合わせを変更することができるので、特別演出の対象位置や対象範囲の大きさを様々に変更することができる。また、特別演出パターンの明瞭度も、フレーム毎およびグループ毎に変化させることができる。さらに、特別演出に関係する個々のLEDに対する色データの強度を調整することによって、同じグループにおける特別演出パターンの明瞭度に差をもたせることもできる。
このような制御により、特別演出の興趣を大幅に高めることができる。
【0076】
上記の実施例では、各演出用の色データを、R,G,Bの各色要素データの組み合わせにより構成されるものと想定したが、これに限らず、HSL形式の色データが設定される場合もある。この場合には、HSL形式のデータをRGB形式に変換して電飾LED20の制御に使用するが、アルファ値については、元の色データのL値(明度)から導出することができる。
【0077】
L値は0から1までの範囲の値となり、L値が0.5のときに最も彩度が高い色彩(純色)となるので、色データ中のL値を2倍したものをアルファ値として設定し(ただし、L値の2倍が1を超える場合には、アルファ値を1とする。)、HSL形式からRGB形式に変換された色データと設定されたアルファ値とを用いて(式1)または(式2)を実施すればよい。
【0078】
つぎに、上記の実施例では、複数種の通常演出パターンの中の1つと複数種の特別演出パターンの中の1つとの間で色データの合成処理が行われるものとしたが、3種類以上の演出パターンの間での色データの合成処理を行うことも可能である。特に、通常演出と特別演出というような分類を設けずに、遊技の進行に応じて様々な態様の演出を任意のタイミングで選択して実施するタイプの遊技機に上記の色データの合成処理を導入すれば、複数種類の演出パターンを同時に進行させながら、強調すべき演出パターンを切り替えたり、演出の開始時や終了時の明るさの変化を調整する処理を容易に実施することができ、多彩な演出を展開することが可能になる。この演出制御の詳細について、以下、図面を参照して詳細に説明する。
【0079】
図8は、副制御部102に3以上の演出パターンを同時進行させる機能を持たせた場合の構成例を示す。この図8に示す構成のうち、コマンド受付部203,演出選択部204,色データ合成処理部205,演出制御部206は、図3と同様の機能を持つものであるので、同じ符号で示すことにより説明を省略する。
【0080】
この実施例の副制御部102には、通常/特別という区別をせずに、複数の演出データファイル211が設けられるほか、演出パターンテーブル212、演出リストテーブル213、およびリスト更新部207が設けられる。
演出パターンテーブル212には、各種の演出パターンを定義する複数種のデータが登録される。演出リストテーブル213は、選択中の演出パターンのリストを格納するためのもので、リスト更新部207はそのリストを更新するためのものである。
【0081】
図9(1)は、演出パターンテーブル212の構成例を示す。この例の演出パターンテーブル212には、9種類の演出パターンが種別コードP1〜P9により登録されると共に、各演出パターンに、それぞれファイル種別、優先値、合成種別の各データが紐付けられている。以下、種別コードも含め、1つの演出パターンに紐付けられている各種情報を「演出パターン情報」と総称する。
【0082】
ファイル種別は、使用される演出データファイル211の識別情報(ファイル名)である。演出パターン種別のP1とP8、およびP2とP9に示すように、この実施例では、優先値および合成種別の少なくとも一方に異なる値が設定されることを前提に、複数の演出パターン種別に同一の演出データファイル211が紐付けられる場合がある。
【0083】
優先値は、演出パターン間の順位を示す。順位は、演出の重要度合いに応じて設定され、また優先値の値が小さいほど上位に位置づけられる。先に述べたように、この実施例では、通常演出と特別演出という区分けはされていないが、特別演出に相当する演出パターンには小さな値の優先値が設定される。
【0084】
合成種別は、色データの合成処理の方式を示す。この実施例では、5つの合成種別にそれぞれ0〜4の数値が割り当てられている。これらの合成種別の具体的な定義を図9(2)に示す。
【0085】
図9(2)によれば、合成種別0は、合成をせずに前景色のみを表示する(すなわちアルファ値を常に「1」とする。)ことを意味する。
合成種別1は、先に述べた第1の処理方式、すなわち前景色のR値,G値,B値の中の最大値を上限値(255)に対する比率に換算した値をアルファ値として、(式1)により合成色を導出するものである。合成種別4は、第2の処理方式、すなわち合成種別1と同じ方法で求めたアルファ値を用いた(式2)により合成色を導出するものである。
【0086】
合成種別2および合成種別3は、第3の処理方式、すなわち前景色のR値,G値,B値の中の最大値から換算した比率に所定の係数を掛けて得られる値をアルファ値として、(式1)を実施するものである。合成種別2では係数が「2」に設定され、合成種別3では、係数が「3」に設定される。なお、合成種別2,3ともに、係数を掛けることにより得られた値が1を超えた場合には、アルファ値は1に設定される。
【0087】
この実施例では、コマンド受付部203が主制御部101から演出の指定を受け付けると、その指定がリスト更新部207に通知される。リスト更新部207は、演出パターンテーブル212を参照して指定に応じた演出パターンを選択し、選択した演出パターンにかかる演出パターン情報を演出リストテーブル213に転送する。
【0088】
図10は、演出リストテーブル213に保存されるリストの変遷例を示す。このリストには、演出指定に該当する演出パターンに関して演出パターンテーブル212から読み出された演出パターン情報と共に、当該演出パターンに関して次に実施されるフレームの番号(フレーム番号)が格納される。また、複数の演出パターンがリストに含まれる場合には、各演出パターンは優先値の昇順にソートされる。
【0089】
図10(1)は、1種類の演出のみが指定されて、その指定に対応する演出パターンP3が進行しているときの演出リストテーブル213の内容を示す。この例のリストは、演出パターンP3による演出が9フレーム目まで終了した時点のものである。他の演出が指定されない間は、1フレーム分の発光制御が終了する都度、演出制御部206からの通知に基づき、フレーム番号が更新される。
【0090】
図10(2)は、図10(1)の状態から5フレームが経過した時点で別の演出指定が入り、その指定に該当する演出パターンP2がリストに追加された状態を示す。図10(3)は、さらに5フレームが経過した時点で第3の演出指定が入り、その指定に該当する演出パターンP4がリストに追加された状態を示す。
【0091】
図10(4)は、図10(3)の状態から10フレームが経過した時点の演出リストテーブル213の内容を示す。演出パターンP2はこの時点までに終了したため、リストから消去されており、新たな指定に該当する演出パターンP1がリストに追加されている。
【0092】
上記図10(1)〜(4)に示すように、新規の演出指示が発生する都度、その新規の指示に対応する演出パターン情報が演出リストテーブル213に追加されると共に、リスト内の各レコードが優先値の昇順に並び替えられる。
【0093】
演出選択部204は、この演出リストテーブル213を参照して、当該テーブル213内のリストに含まれる各演出パターンのファイル種別およびフレーム番号に基づき、対応する演出データファイル211から次に実施するフレームの色データ群を読み出す。色データ合成処理部205も、演出リストテーブル213の参照により各色データの順位や合成種別を認識しつつ、電飾LED20毎に合成色を導出する。演出制御部206は、導出された合成色に基づき各電飾LED20の発光動作を制御する。
1フレーム分の発光制御が完了すると、リスト更新部207によって、演出リストテーブル213内のフレーム番号が更新される。また、最終のフレームまで実施された演出パターンは演出リストテーブル213から消去される。
【0094】
図11は、図8の構成の副制御部102により実施される電飾演出制御の処理手順を示す。同制御では、新たな演出の指示を受けたか否かを定期的にチェックしている(ステップS101)。指示を受けると、リスト更新部207により、演出パターンテーブル212から指示に対応する演出パターンの演出パターン情報が読み出され(ステップS102)、その演出パターン情報が演出リストテーブル213に追加される(ステップS103)。また、追加後の演出リストテーブル213に複数のレコードが含まれる場合には、追加と同時に各レコードが優先値の昇順にソートされる。
【0095】
ステップS104以下の処理は、新たな演出の指示を受けたか否かに関わらず、繰り返し実施される。
まずステップ104では、演出リストテーブル213に格納されているレコードの総数を変数PNにセットし、続くステップS105において、出力バッファをクリアする。
【0096】
この出力バッファは、各電飾LED20の発光動作を制御するための色データ群を一時保存するためのもので、ステップS105でクリアされた後は、1〜複数回にわたって更新される。
まず、クリア処理が行われた直後のステップS106では、優先順位が最も低いPN番目の演出パターンの演出データファイル212から、当該演出パターンにつき次に実施するフレームの色データ群が読み出され、その色データ群が出力バッファに格納される。この処理は、演出選択部204がPN番目の演出パターン情報を参照して実施するものであり、次のフレームはフレーム番号から、読み出し対象の演出データファイル212はファイル種別から、それぞれ特定される。
【0097】
ステップS107では、参照する演出パターンを特定するためのカウンタpにPNをセットし、その値をチェックする(ステップS108)。この段階でのpが1となる場合、すなわち図10(1)に示すように演出リストテーブル213内に1つしかレコードがない場合には、ステップS108が「NO」となってステップS111に進む。
ステップS111では、出力バッファ内の色データ群を用いて各LED20の発光動作を制御するので、上記の場合には、単独の演出パターンのみが表示されることになる。
【0098】
一方、図10(2)(3)(4)に示すように、演出リストテーブル213内に複数のレコードが登録されている場合には、ステップS104〜S107の処理を経た直後のステップS108は「YES」となる。この場合には、ステップS109においてpの値を1つ小さくした後、更新後のpに対応する演出パターン情報を参照して、色データの合成処理を実施し、導出された合成色データにより出力バッファを更新する(ステップS110)。この処理の詳細を、次の図12に示す。
【0099】
図12では、ステップS110に含まれる各種処理をステップS121〜S128として示している。最初のステップS121では、ステップS109で更新されたpの値に基づきp番目の演出パターン情報を参照して、その演出パターン情報中の合成種別を有効に設定する。なお、この有効設定に伴い、その他の合成種別は無効となる。
【0100】
この後は、ステップS122において、各電飾LED20を特定するためのカウンタkに初期値の1をセットし、以下、kの値がLEDの総数に達するまでkをインクリメントしながら(ステップS127,S128)、毎時のkに対し、ステップS123〜S126を実施する。
【0101】
ステップS123では、p番目の演出パターンにつき次に実施されるフレームの色データ群からk番目の色データを読み出す。ステップS124では、出力バッファに格納されている色データ群からk番目の色データを読み出す。
【0102】
ステップS125では、ステップS123においてp番目の演出パターンにつき読み出された色データを前景色とし、ステップS124において出力バッファから読み出された色データを背景色として、有効な合成種別による合成処理を実施する。ステップS126では、この合成処理により導出された合成色データにより出力バッファ内のk番目の色データを更新する。
【0103】
以下、kを更新しながら上記の処理を繰り返すことにより、全ての電飾LED20に対する合成色データが導出され、それらの合成色データにより出力バッファが更新される。
【0104】
図11に参照を戻す。ステップS110(図12のステップS121〜S128)が終了すると、ステップS108に戻ってpの現在値をチェックする。このときのpが1より大きい場合には、再びpが減算されて、更新後のpに基づきステップS110が実施される。よって、毎回、p番目の演出パターンを構成する色データを前景色とし、出力バッファに保存された色データを背景色とした合成処理が実施されることになる。
【0105】
最終的にpが1となって、演出リストテーブル213内の1番目の演出パターンの色データ群を用いた合成処理が実施され、出力バッファが更新されると、ステップS108が「NO」となってステップS111に進む。よって、出力バッファに最終的に保存された色データ群によって各電飾LED20の発光動作が制御される。
【0106】
上記のとおり、3以上の演出パターンを進行させる場合には、優先順位が低いものから順に透過度を調整しながら色データを重ね合わせてゆき、最終的に優先順位が最も高い演出パターンによる色彩を前景色とする合成処理が行われて、LED20に与える合成色データが決定される。このような処理によれば、演出の指示を受け付けた順序やタイミングに関係なく、重要度の高い演出を強調した表示を実現することができる。
【0107】
上記の演出制御によれば、何らかの演出を行っている間に別の演出の実行指示を受けた場合でも、進行中の演出パターンの流れを維持しながら、新しい指示に対応することができるので、演出にかかる制御をシンプルにすることができる。
【0108】
また、実行中の演出よりも重要な演出が指示された場合にも、容易に対応することができる。たとえば、図10(4)の例のように、合成種別が0で優先順位が高い演出パターンP1が演出リストテーブル213に追加された場合には、進行中の他の演出パターンを消失させて演出パターンP1のみが表示される状態になる。
【0109】
緩やかに立ち上がって徐々に明確になるような表示や、終了時に徐々に減衰していくような表示が必要な演出パターンに関しても、開始から所定時間が経過するまでの範囲に含まれるフレームにおける色データ群の強度や、演出の終了前の所定数のフレームにおける色データ群の強度を調整することにより、目的とする表示を実現することができる。
【0110】
また、この実施例においても、図7に示した電飾制御と同様に、電飾LED20を複数のグループに分類し、合成の対象となる演出パターンや明示される演出パターンをグループによって変更することもできる。
演出パターンの選択をグループによって異ならせるには、たとえば、演出リストテーブル213の各レコードに、そのレコードによる演出が適用されるグループ種別を含めておけばよい。そうすれば、図11図12に示した手順に準じて、演出リストテーブル213に格納された演出パターンを優先順位が低いものから順に処理対象として合成処理を実施する場合に、合成の都度、処理対象の演出パターンに紐付けられているグループ種別に基づき、処理対象の演出パターンが適用されるグループに対してのみ色データの合成を実施することができる。
【0111】
さらに、この実施例によれば、演出パターンP1とP8との関係、演出パターンP2とP9との関係に示すように、基本的な発光のパターンは共通であるが、優先値や合成種別を変更することによって、色合い、明瞭度合い、減衰の度合いなどが異なる複数とおりの演出パターンを提供することができる。よって、少ないデータ容量でも演出のバリエーションを高めることができる。
【0112】
上記に述べた各種の電飾演出は、スロットマシンに限らず、パチンコ機などの他の遊技機にも適用することができる。また、各実施例では触れなかったが、筐体100Aの前面以外の場所に設けられた電飾LED(たとえば図1の例では、枠体10の裏側のリール表示窓16の上方にリール照明用の電飾LEDを配備することができる。)についても、同様の制御方法により演出の態様を変動させることができる。
【符号の説明】
【0113】
1 扉
10 枠体
20 電飾LED
20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g 電飾LEDの帯配列
102 副制御部
200 電飾装置
201 特別演出用データファイル
202 通常演出用データファイル
204 演出選択部
205 色データ合成処理部
206 演出制御部
207 リスト更新部
211 演出データファイル
212 演出パターンテーブル
213 演出リストテーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12