(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744100
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】チエンフック外れ止め具
(51)【国際特許分類】
E04G 5/00 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
E04G5/00 301J
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-93159(P2013-93159)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-214505(P2014-214505A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143558
【氏名又は名称】株式会社国元商会
(72)【発明者】
【氏名】山岡 由賢
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−058356(JP,A)
【文献】
実開平05−038414(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3065042(JP,U)
【文献】
特開2009−204015(JP,A)
【文献】
特開2009−165696(JP,A)
【文献】
実開平2−98209(JP,U)
【文献】
米国特許第5338127(US,A)
【文献】
米国特許第5197926(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0301917(US,A1)
【文献】
米国特許第1365677(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チエンの端部に取り付けられたフックがチエンリンクに引っ掛けられた状態において、当該フックとこのフックが係合するチエンリンクとを一体に把持する外れ止め具であって、前記フックの前記チエンリンクの片側に位置する部分に嵌合する嵌合用本体と、この本体の左右両側壁部から連設された開閉自在な左右一対の把持用部材とから成り、この左右一対の把持用部材には、この左右一対の把持用部材が前記チエンリンクを両側から把持する閉じ状態を保持させるための係脱自在な係合手段が設けられている、チエンフック外れ止め具。
【請求項2】
前記係合手段は、一方の把持用部材側に突設された係合用爪と、他方の把持用部材側に設けられて前記係合用爪が係脱自在に係合する被係合用孔から構成されている、請求項1に記載のチエンフック外れ止め具。
【請求項3】
左右一対の把持用部材の先端部が互いに重なる状態にあるとき、これら両把持用部材の先端部を互いに開動させる方向に付勢する弾性部が設けられ、前記被係合用孔は、他方の把持用部材の先端にヒンジ部を介して一方の把持用部材側へ折曲自在に連設された可動部に設けられ、前記係合用爪と被係合用孔とは、左右一対の把持用部材の先端部を前記弾性部の弾性に抗して互いに重なる状態にしたときに係脱可能に構成されている、請求項2に記載のチエンフック外れ止め具。
【請求項4】
他方の把持用部材に連設された前記可動部には、その先端にヒンジ部を介して連設されて一方の把持用部材の外側に重ねる方向に折曲自在な摘み部が連設されている、請求項3に記載のチエンフック外れ止め具。
【請求項5】
前記弾性部は、左右一対の前記把持用部材の内、片側の把持用部材から相手側の把持用部材に向かって斜めに突設された弾性舌片によって構成され、左右一対の把持用部材の先端部が互いに重なる状態にあるとき、相手側の把持用部材によって弾性変形した前記弾性舌片が両把持用部材の先端部を互いに開動させる方向に付勢するように構成されている、請求項3又は4に記載のチエンフック外れ止め具。
【請求項6】
前記嵌合用本体の内面には、この嵌合用本体内に嵌合するフックの側面に圧接する突起が突設されている、請求項1〜5の何れか1項に記載のチエンフック外れ止め具。
【請求項7】
左右一対の把持用部材は、この両把持用部材が把持する前記チエンリンクの左右両側に位置するヒンジ部によって、前記嵌合用本体と一体の基部とこの基部に対して開閉自在な把持用部材本体とに分けられ、この把持用部材本体の内側に複数の舌片が突設され、これら舌片と前記基部との間に前記チエンリンクが嵌まり込む空間が形成される、請求項1〜6の何れか1項に記載のチエンフック外れ止め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設足場の吊下げなどに使用されるフック付きチエンのフック外れ止め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
仮設足場の吊下げなどに使用されるフック付きチエンは、適当な手段で構造体から吊り下げたチエンの端部に取り付けられたフックを当該チエンの適当高さにあるリンクに引っ掛けることによってチエンのループ部を形成し、このチエンのループ部によって足場板支持用鋼管などを吊り下げるものであり、前記フックは、適当厚さの鋼板を釣り針形に裁断したものである。このフック付きチエンの使用状態において、十分にテンションが作用していないチエンでは、振動などによりフックがガタついてチエンリンクから外れてしまう恐れがある。このようなフックの不測の外れを防止するためには、特許文献を示すことは出来ないが、外れ止め用の逆止バネが取り付けられたフックを採用するか又は、使用状態のフックと当該フックが係合するチエンリンクの周囲にガムテープや面ファスナー付きテープなどを巻き付ける方法などが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような外れ止め用の逆止バネが取り付けられたフックを採用する方法は、新規にフック付きチエンを購入する場合の選択肢としては効果的であるが、このような外れ止め手段を持たないフックが取り付けられているチエンを多数所有している一般的なユーザーが採用する方法としてはコストがかかり過ぎて実用的ではない。又、チエンリンクの周囲にガムテープや面ファスナー付きテープなどを巻き付ける方法は、比較的安価に実施することは出来るが、手間が掛かり、しかもその巻き付け方によっては、十分な効果を確実に得ることが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるチエンフック外れ止め具を提案するものであって、本発明に係るチエンフック外れ止め具は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、チエン(1)の端部に取り付けられたフック(3)がチエンリンク(2a)に引っ掛けられた状態において、当該フック(3)とこのフック(3)が係合するチエンリンク(2a)とを一体に把持する外れ止め具(8)であって、前記フック(3)の前記チエンリンク(2a)の片側に位置する部分(3a)に嵌合する嵌合用本体(9)と、この本体(9)の左右両側壁部(13a,13b)から連設された開閉自在な左右一対の把持用部材(10,11)とから成り、この左右一対の把持用部材(10,11)には、この左右一対の把持用部材(10,11)が前記チエンリンク(2a)を両側から把持する閉じ状態を保持させるための係脱自在な係合手段(12)が設けられた構成になっている。
【発明の効果】
【0005】
上記本発明の構成によれば、チエンリンクに引っ掛けられた使用状態のフックの背部に対して嵌合用本体を嵌合させると共に左右一対の把持用部材を閉じて、フックとこのフックが係合するチエンリンクとを一体に把持させた状態で、係合手段を係合させて左右一対の把持用部材を閉じ状態に保持させることにより、フックとこのフックが係合するチエンリンクとが一体に把持され、フックが係合しているチエンリンクに対して当該フックが相対移動することが防止される。従って、何らかの原因でフックがチエンリンクから外れる方向に移動する外力が作用したとしても、その外力が前記嵌合用本体と左右一対の把持用部材とで受け止められ、フックがチエンリンクから外れるのを阻止することになり、安全に使用出来る。しかも、フック側に特別な外れ止め手段を設けるのではなく、外れ止め手段を持たない一般的なフックに対して、その使用時に本発明の外れ止め具を装着するだけで良いので、経済的に実施出来る。更に、各種テープを巻き付けてフックとチエンリンクとを縛り付けることによりフックの外れを防止する場合と比較して、簡単容易にしかも確実にフックの外れ止め効果が得られる。
【0006】
尚、前記係合手段(12)は、一方の把持用部材(11)側に突設された係合用爪(25)と、他方の把持用部材(10)側に設けられて前記係合用爪(25)が係脱自在に係合する被係合用孔(26)から構成することが出来る。この構成によれば、係合手段を含めて外れ止め具全体を合成樹脂にて一体成形することが出来、別部品を必要とする係合手段を組み合わせる場合と比較して安価に実施出来るだけでなく、取り扱いが一層容易になる。
【0007】
係合手段(12)を上記のように構成する場合には、左右一対の把持用部材(10,11)の先端部が互いに重なる状態にあるとき、これら両把持用部材(10,11)の先端部を互いに開動させる方向に付勢する弾性部(23)を設け、前記被係合用孔(26)は、他方の把持用部材(10)の先端にヒンジ部(18)を介して一方の把持用部材(11)側へ折曲自在に連設された可動部(19)に設け、前記係合用爪(25)と被係合用孔(26)とは、左右一対の把持用部材(10,11)の先端部を前記弾性部(23)の弾性に抗して互いに重なる状態にしたときに係脱可能に構成することが出来る。この構成によれば、左右一対の把持用部材の先端部を前記弾性部の弾性に抗して互いに重ねた状態で、被係合用孔を有する前記可動部を折曲させて係合用爪と被係合用孔を互に係合させ、その後、左右一対の把持用部材の先端部を互に重ねるように作用させていた操作力を解除すると、左右一対の把持用部材の先端部が前記弾性部の弾性で互に離間する方向に開動するので、この開動動作により前記係合用爪と被係合用孔とが、前記可動部が逆方向に折曲するのを阻止する状態に係合するように構成することが出来る。従って、左右一対の把持用部材の開動を、係合用爪の先端鉤部の引っ掛かりで阻止するのではなく、当該係合用爪全体と被係合用孔との係合により阻止できるので、係合手段の係合状態の保持力が大きく、十分な安全性が得られる。
【0008】
更に、他方の把持用部材(10)に連設された前記可動部(19)には、その先端にヒンジ部(20)を介して連設されて一方の把持用部材(11)の外側に重ねる方向に折曲自在な摘み部(21)を連設することが出来る。この構成によれば、前記係合手段の係合操作及び係合解除操作が前記摘み部の存在により容易に行えるだけでなく、係合状態において前記摘み部を一方の把持用部材の外側に重なる向きに切り換えておくことにより、係合解除時に必要な一つの操作、即ち、左右一対の把持用部材の先端部を前記弾性部の弾性に抗して互に重ねるように挟み付ける操作が前記摘み部の存在により出来なくなるので、係合解除時には、最初に前記摘み部を逆方向に開動させる操作が必要になり、係合解除時の操作が一行程増えることになって、不測に係合手段の係合状態が解除されてしまう恐れを一層確実に防止出来る。
【0009】
前記弾性部(23)は、左右一対の把持用部材(10,11)の開閉用ヒンジ部(16)によって構成することも可能であるし、場合によっては、板バネやコイルバネなどの別部材を組み込んで構成することも可能であるが、前記弾性部(23)を、左右一対の前記把持用部材(10,11)の内、片側の把持用部材(10)から相手側の把持用部材(11)に向かって斜めに突設された弾性舌片(22)によって構成し、左右一対の把持用部材(10,11)の先端部が互いに重なる状態にあるとき、相手側の把持用部材(11)によって弾性変形した前記弾性舌片(22)が両把持用部材(10,11)の先端部を互いに開動させる方向に付勢するように構成することが出来る。この構成によれば、別部材を追加せずに弾性部を把持用部材の先端に近い位置、即ち、両把持用部材の先端部が互いに重なる状態にあるときのみ、当該両把持用部材を互に開動させる方向に効率良く付勢出来る位置に簡単に設けることが出来る。
【0010】
前記嵌合用本体(9)の内面には、この嵌合用本体(9)内に嵌合するフック(3)の側面に圧接する突起(14)を突設することが出来る。この構成によれば、嵌合用本体の内側空間全体の巾を、フックにガタつきなく嵌合出来る寸法になるように精度良く製造しなければならない場合と比較して、多少板厚の異なるフックであっても、突起の弾性変形又は嵌合用本体の側壁部の弾性変形を利用して、常にガタつきなく安定的に嵌合用本体をフックの背部に嵌合させることが出来る。
【0011】
左右一対の把持用部材は、嵌合用本体に隣接する基端部をヒンジ部によって嵌合用本体に開閉自在に連設して、この両把持用部材の全体が嵌合用本体に対して開閉するように構成することも出来るが、左右一対の把持用部材(10,11)を、当該左右一対の把持用部材(10,11)が把持する前記チエンリンク(2a)の左右両側に位置するヒンジ部(16)によって、前記嵌合用本体(9)と一体の基部(15)とこの基部(15)に対して開閉自在な把持用部材本体(17)とに分け、この把持用部材本体(17)の内側に複数の舌片(24)を突設し、これら舌片(24)と前記基部(15)との間に前記チエンリンク(2a)が嵌まり込む空間が形成されるように構成することが出来る。この構成によれば、把持用本体に一体に成形されたチエンリンク嵌合凹部を設ける場合と比較して、嵌合用本体と一体の強度的にしっかりとした基部と把持用部材本体の複数の舌片との間でチエンリンクを挟むことになるので、フックに対するチエンリンクの向きに殆ど関係なく、左右一対の把持用部材を閉じてフックとチエンリンクとを一体に把持させることが容易になり、しかもしっかりと把持用柱状部材させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aは、外れ止め具装着前の使用状態のフックを示す側面図、
図1Bは、使用状態のフックに外れ止め具を装着した状態を示す側面図である。
【
図2】
図2Aは、外れ止め具装着前の使用状態のフックを示す背面図、
図2Bは、使用状態のフックに外れ止め具を装着した状態を示す背面図である。
【
図9】
図9は、外れ止め具をフックに装着する第一段階を示す一部横断平面図である。
【
図10】
図10は、外れ止め具をフックに装着した状態を示す一部横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1A及び
図2Aに示すフック付チエン1は、仮設足場の足場板を支持する鋼管を吊り下げている状態でのフック係合箇所を示しており、長円形のチエンリンク2で構成されたチエン1の端部には、当該チエンコンベヤの適当位置にあるチエンリンク2aに引っ掛けるためのフック3が取り付けられている。このフック3は、適当厚さの鋼板を釣り針形に裁断したもので、チエンリンク2が通される貫通孔4が一端に設けられた軸部5の他端からU字形につながる尖端部6を延出させたものであり、メーカーによって軸部5の形状に多少の違いがあっても、軸部5と尖端部6との間のU字形部分7の外側縁は円弧形に張り出した形状である。
【0014】
上記のようなフック付チエン1の使用状態でのフック3に装着して使用する外れ止め具8の構造を、
図3〜
図8に基づいて説明すると、この外れ止め具8は、嵌合用本体9と左右一対の把持用部材10,11、及び係合手段12を備え、その全体がPPなどの合成樹脂により一体成形されたものである。
【0015】
嵌合用本体9は、
図1B及び
図2Bに示すように、使用状態のフック3のリンクチエン2aの片側(尖端部6とは反対側)に位置する部分3a(軸部5からU字形部分7に至る部分)に対して嵌合離脱自在な、側面形状が下窄まりのほぼD形のもので、その直線部がフック3の板厚より巾広のスリット状開口9aとなっている。この嵌合用本体9の左右両側壁部13a,13bの内面には、前記スリット状開口9aの長さ方向に対してほぼ直角向きの複数本の細長い突起14が、互に対向するように前記スリット状開口9aの長さ方向適当間隔おきに一体に形成され、これら互に対向する細長い突起14間の間隔がフック3の板厚とほぼ同一か少し狭くなるように構成されている。
【0016】
把持用部材10,11は、嵌合用本体9のスリット状開口9aの上端における左右両側壁部13a,13bから左右両側に連設されたもので、嵌合用本体9に対して固定状態で直角外向きに延出する基部15と、この基部15に対して、スリット状開口9aの長さ方向と平行な薄肉のヒンジ部16を介して開閉自在に連設され且つ中間位置で外側に屈曲する平面形状がくの字形の把持用部材本体17から構成されている。そして一方の把持用部材10には、その把持用部材本体17の先端に、前記ヒンジ部16と平行な薄肉のヒンジ部18を介して可動部19が連設され、更にこの可動部19の先端には、前記ヒンジ部18と平行な薄肉のヒンジ部20を介して円形に張り出した摘み部21が連設されている。又、この把持用部材10には、その把持用部材本体17の中間屈曲部と可動部19との間の内側(相手側の把持用部材11のある側)に、当該中間屈曲部に隣接する位置から可動部19のある側へ斜めに突出する弾性舌片22が切り起こしにより一体成形され、この弾性舌片22により、閉じた両把持用部材10,11を開く方向に付勢する弾性部23が構成されている。更に、両把持用部材10,11には、その把持用部材本体17の中間屈曲部とヒンジ部16との間の内側(相手側の把持用部材11,10のある側)の側面に、当該把持用部材本体17の巾方向適当間隔おきに並列する複数の把持用舌片24が一体成形により突設されている。
【0017】
前記係合手段12は、一方の把持用部材11の先端(把持用部材本体17の先端)からその延長方向に突設された係合用爪25と、他方の把持用部材10の可動部19に設けられた矩形の被係合用孔26とから構成されている。前記係合用爪25は、被係合用孔26を貫通する軸部の先端外側に逆止用爪部25aが連設されたものである。
【0018】
尚、左右一対の把持用部材10,11の基部15の外側の入隅部には、補強のためのリブ15aを当該基部15の巾方向適当間隔おきに一体に突設している。このように、一般的に合成樹脂の成形品を製造する場合には、歪の抑制、材料の節減、必要強度の確保などのために、基本的には薄肉に成形して適宜補強用リブを一体成形するのが常套手段であるが、図示の実施例では、この常套手段の具体的表示と説明は省略している。又、
図7に示す状態が、本実施例での外れ止め具8の成形時の形態であり、嵌合用本体9の深さ方向が成形型からの抜き方向である。
【0019】
以上のように構成された外れ止め具8の使用方法を説明すると、
図3〜
図8に示す使用前(成形直後)の外れ止め具8は、
図1A及び
図2Aに示す使用状態のフック3に対し、当該フック3のチエンリンク2aに対し尖端部6とは反対側の部分3aに嵌合用本体9を、左右一対の把持用部材10,11がチエンリンク2aの長さ方向の中間高さに位置する向きで嵌合させる。このとき、嵌合用本体9の内側の細長い突起14の存在により、フック3に対し嵌合用本体9をガタつきなくしっかりと嵌合させることが出来る。この状態で左右一対の把持用部材10,11の把持用部材本体17を、ヒンジ部16を支点に互に接近させる方向、即ち、内側へ折曲させると、
図9に示すように、チエンリンク2aのフック3の両側に位置する部分が両把持用部材10,11の基部15と把持用部材本体17の把持用舌片24との間に挟まれる状態になる。このとき、チエンリンク2aとフック3との間の角度によっては、把持用舌片24がチエンリンク2aとの圧接で撓み変形する。
【0020】
そして両把持用部材10,11の把持用部材本体17の先端部を互に重ねるように指先で挟み付けると、弾性部23の弾性舌片22が相手側の把持用部材11の把持用部材本体17に圧接して弾性変形する過程を伴って、係合手段12の係合用爪25の先端に被係合用孔26が隣接する状態になる。この状態で把持用部材10側の摘み部21を把持用部材11側へ直角向きに引っ張ると、可動部19がヒンジ部18を支点に把持用部材10側へほぼ直角に折曲し、
図10に示すように、係合手段12の係合用爪25に可動部19の被係合用孔26が嵌合し、当該係合用爪25の逆止用爪部25aが被係合用孔26を貫通して反対側に突出する。
【0021】
最後に、把持用部材11の把持用部材本体17を、相手側の把持用部材10の把持用部材本体17側に押し付けていた操作力から開放させると共に、摘み部21を更に把持用部材11の把持用部材本体17に重ねるように可動部19に対してヒンジ部20を支点に折曲させると、把持用部材11の把持用部材本体17が弾性部23の弾性舌片22が弾性復帰するのに伴って相手側の把持用部材10の把持用部材本体17から離れるように開動するので、図示のように、係合用爪25の逆止用爪部25aが被係合用孔26の外側に係合する。この結果、可動部19がヒンジ部18を支点に把持用部材本体17の延長姿勢になる方向に折曲するのが阻止される。又、把持用部材11の把持用部材本体17に重ねられるように折曲された摘み部21の存在は、係合用爪25を有する把持用部材11の把持用部材本体17を相手側の把持用部材10の把持用部材本体17に接近させ方向に操作することを妨げている。
【0022】
以上のようにしてフック3に装着された外れ止め具8は、フック3と当該フック3が係合しているチエンリンク2aとを一体に把持しており、フック3がチエンリンク2aから外れる方向に運動することを防止しているので、この外れ止め具8を取り外さない限り、チエンリンク2aからフック3を外すことは出来ない。
【0023】
チエンリンク2aからフック3を外すために外れ止め具8を取り除くときは、取付け時と逆の手順で操作すれば良い。即ち、摘み部21を把持用部材11の把持用部材本体17から離すように引き起こした状態で両把持用部材10,11の把持用部材本体17どうしを指先で挟んで、弾性部23の弾性舌片22の弾性に抗して両把持用部材10,11の把持用部材本体17どうしを互いに接近させる。この結果、係合手段12の係合用爪25が被係合用孔26内で把持用部材10側に移動し、逆止用爪部25aと被係合用孔26との係合が解かれるので、摘み部21を可動部19と共に把持用部材10の把持用部材本体17の延長姿勢の方向に回動させ、各ヒンジ部18,20を支点にして可動部19と摘み部21とを把持用部材10の把持用部材本体17の延長姿勢に切り換えることにより、可動部19の被係合用孔26と係合用爪25とを互いに離脱させる。そして最後に、両把持用部材10,11の把持用部材本体17をそれぞれヒンジ部16を支点に、間に位置するフック3から左右に遠ざけるように開くことにより、嵌合用本体9をフック3から抜き取り、外れ止め具8をフック3から取り外すことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のチエンフック外れ止め具は、仮設足場の吊下げなどに使用されるフック付きチエンの使用状態での安全性を高めることの出来る、経済的で容易に使用出来る手段として活用出来る。
【符号の説明】
【0025】
1 フック付チエン
2,2a チエンリンク
8 外れ止め具
9 嵌合用本体
10,11 把持用部材
12 係合手段
15 把持用部材の基部
16,18,20 ヒンジ部
17 把持用部材本体
19 可動部
21 摘み部
22 弾性舌片
23 弾性部
24 把持用舌片
25 係合用爪
26 被係合用孔