【実施例】
【0035】
<3.実施例>
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。本実施例では、表面自由エネルギー差によるパターンが形成された原版1、表面自由エネルギーが全面に亘って低い原版2、及び表面自由エネルギーが全面に亘って高い原版3を作成し、各原版を用いて樹脂組成物に転写を行った。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
露光機、接触角計、顕微鏡、及びAFM(Atomic Force Microscope)は、次の装置を使用した。
露光機A:マスクアライナー MA−20 (ミカサ株式会社製)
露光機B:アライメント露光装置 (東芝ライテック株式会社製)
接触角計:DM−701(協和界面科学社製)
顕微鏡:VHX−1000(株式会社キーエンス製)
AFM:SPA400(株式会社日立ハイテクサイエンス製)
【0037】
[原版Aの作成]
10cm×10cmのガラス基板にネガ型フォトレジスト(商品名:OFPR−800LB、東京応化工業製)をスピンコート法により塗布し、110℃、90秒ホットプレート上で乾燥させた。フォトレジストがコーティングされた基板と、5μmのライン及びスペースをパターンニングされたフォトマスクを配置し、露光機1で露光した。露光後、この基板を2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中に1分間浸漬し、その後純水に1分間浸漬し、室温で乾燥し、現像を行った。
【0038】
現像された基板を純水、洗浄液(商品名:Novec7300、3M社製)の順番で洗浄し、その後、フッ素コーティング剤(商品名:
DURASURF DS−5210F、HARVES社製)を液滴滴下にて塗布した。一晩放置後、洗浄液(商品名:Novec7300、3M社製)にて洗浄し、その後、フッ素コーティング剤(商品名:
DURASURF DS−5210F、HARVES社製)を液滴滴下にて塗布した。さらに一晩放置後、洗浄液(商品名:Novec73
00、3M社製)にて洗浄し、室温で乾燥した。
【0039】
この基板を剥離液に5分間浸漬し、残ったレジスト膜を取り除き、アセトン、洗浄液(商品名:Novec7300、3M社製)順で洗浄した。これにより、
図4に示すようにガラス基板30上に高表面自由エネルギー領域31と低表面自由エネルギー領域32とがパターンニングされた(部分的にフッ素コーティングされた)原版Aを得た。
【0040】
[原版Bの作成]
7cm×5cmのスライドガラスを、洗浄液(商品名:Novec7300、3M社製)で洗浄し、その後、フッ素コーティング剤(商品名:
DURASURF DS−5210F、HARVES社製)を液滴滴下にて塗布した。一晩放置後、洗浄液(商品名:Novec7300、3M社製)にて洗浄し、その後、フッ素コーティング剤(商品名:
DURASURF DS−5210F、HARVES社製)を液滴滴下にて塗布した。さらに一晩放置後、洗浄液(商品名:Novec7300、3M社製)にて洗浄し、(全面がフッ素コーティングされた)原版Bを得た。
【0041】
[原版Cの作成]
未使用の7cm×5cmのスライドガラスを原版Cとした。
【0042】
[樹脂組成物の作成]
表1に、硬化樹脂層用の樹脂組成物A及び加工層用の樹脂組成物Bの配合(質量部)を示す。
【0043】
【表1】
TMM-3:ペンタエリスリトールトリアクリレート、新中村化学社製
OTA-480:プロピレングリコール変性グロセリントリアクリレート、ダイセルサイテック社製
AE-400:ポリエチレンエチレングリコールモノアクリレート #400 、日油株式会社製
X-71-1203:パーフルオロポリエーテル含有アクリレート、信越化学社製
イルガキュア184:BASF社製
【0044】
[硬化樹脂層の形成]
図5は、原版Aを用いて樹脂組成物Aを硬化させる硬化工程の概略を示す断面図である。
図5に示すように、PETフィルム41上に樹脂組成物A42をバーコーター(wet膜厚8μm相当)で塗布し、これを原版A30に密着させ、露光機Bを用いてPET面より露光硬化させた。このときの照射量は、6J/cm
2であった。原版Aよりフィルムを剥離し、PETフィルム41上に硬化樹脂層が形成されたコーティングフィルムAを得た。
【0045】
また、原版B及び原版Cについても、前述と同様に樹脂組成物Aに接触させ、樹脂組成物Aを硬化させ、それぞれコーティングフィルムB及びコーティングフィルムCを得た。
【0046】
[表面自由エネルギーの評価]
接触角計を用いて、コーティングフィルムB及びコーティングフィルムCの接触角を測定し、ケルブル・ウー法により表面自由エネルギーを算出した。表2に、コーティングフィルムB及びコーティングフィルムCの接触角及び表面自由エネルギーを示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示すように、フッ素コートガラスの原版2を用いた場合、コーティング表面が低表面自由エネルギーとなり、ガラスの原版3を用いた場合、コーティング表面が高表面自由エネルギーとなった。すなわち、原版の表面自由エネルギーが樹脂組成物Aに転写されることが分かった。
【0049】
[加工例1]
加工例1では、原版Aを用いて樹脂組成物Aを硬化させたコーティングフィルムA上に、油性ペンを塗り、インクの付着状態を観察した。油性ペンは、市販のゼブラ社製マッキーを用いた。
【0050】
図6は、コーティングフィルムA表面の光学顕微鏡の写真であり、
図7は、コーティングフィルムA表面を油性ペンで塗ったときの光学顕微鏡の写真である。
図6に示すように、転写直後のコーティングフィルム表面の外観は、無色透明である。
図6に示す領域Aの部分を油性ペンで塗った場合、
図7に示す領域Aのように、原版Aのフッ素コーティングされた部分に対応した表面自由エネルギーの低い部分には、インクが付着せず、原版Aのフッ素コーティングされていない部分に対応した表面自由エネルギーが高い部分には、インクが付着した。一方、
図7に示す油性ペンが塗られていない領域Bは、
図6に示す転写直後のコーティングフィルム表面と同様、無色透明であった。すなわち、
図6に示す転写直後のコーティングフィルム表面の外観は、無色透明であるものの、表面には原版Aのパターンが表面自由エネルギー差により形成されていることが分かった。
【0051】
また、コーティングフィルムA表面を油性ペンでべた塗りした場合でも、原版Aの5μm幅のパターンを印字させることができた。また、原版Aを5回繰り返し使用した場合も同様に、原版Aのパターンを印字させることができた。
【0052】
[加工例2]
加工例2では、原版Aを用いて樹脂組成物Aを硬化させた硬化樹脂層上に、樹脂組成物Bを塗布し、これを硬化させた。先ず、原版Aを用いて樹脂組成物Aを硬化させたコーティングフィルムA上に、樹脂組成物Bをバーコーターでwet膜厚が1.5μm相当に塗布した。そして、窒素雰囲気下で露光機2を用い、照射量1.5J/cm
2の条件で露光した。
【0053】
図8は、コーティングフィルムA表面に樹脂組成物Bを塗布、硬化させたときの光学顕微鏡の写真であり、
図9は、コーティングフィルムA表面に樹脂組成物B(インク)を塗布、硬化させたときのAFM観察画像である。
図8,9に示すように、原版Aの5μmの線幅でインク付着部とインク非付着部が観測された。また、コーティングフィルムA表面を樹脂組成物Bでべた塗りした場合でも、原版Aの5μm幅のパターンの選択的塗布が可能であった。
【0054】
以上述べたように低い表面自由エネルギーを発現させる第1の化合物と、第1の化合物よりも高い表面自由エネルギーを発現させる第2の化合物とを含有する樹脂組成物を、表面自由エネルギー差によるパターンが形成された原版に接触させて硬化させることにより、原版のパターンが転写され、ファインピッチかつ寸法安定性に優れた表面自由エネルギーのパターンを有するコーティングフィルムを得ることができる。
【0055】
また、コーティングフィルム上に、さらに樹脂組成物等のインクを塗布、硬化させて2次加工することにより、寸法安定性、再現性に優れたパターンを得ることができる。