(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744215
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形
(51)【国際特許分類】
C07D 305/14 20060101AFI20150618BHJP
A61K 31/337 20060101ALN20150618BHJP
A61P 9/14 20060101ALN20150618BHJP
A61P 35/04 20060101ALN20150618BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20150618BHJP
【FI】
C07D305/14
!A61K31/337
!A61P9/14
!A61P35/04
!A61P35/00
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-535432(P2013-535432)
(86)(22)【出願日】2011年10月27日
(65)【公表番号】特表2013-540798(P2013-540798A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2011068835
(87)【国際公開番号】WO2012055952
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2013年6月14日
(31)【優先権主張番号】10189373.3
(32)【優先日】2010年10月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505303912
【氏名又は名称】インデナ・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】INDENA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】チチェリ,ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】ガンビニ、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】リコッティ、マウリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】サルドーネ、ニコラ
【審査官】
清水 紀子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/126175(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/089207(WO,A1)
【文献】
Haleblian,J.K.,Characterization of Habits and Crystalline Modification of Solids and Their Pharmaceutical Applicati,Journal of Pharmaceutical Sciences,1975年,Vol.64,No.8,pp.1269-1288
【文献】
松本光雄編,薬剤学マニュアル,株式会社南山堂発行,1989年,第1版,第28頁、76頁
【文献】
松岡正邦,有機物の結晶化技術の高度化−粒径,形態,多形,純度の制御−,PHARM TECH JAPAN,2003年 5月 1日,Vol.19, No.6,p.91(955)-101(965)
【文献】
平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,2008年,p.10-11,57-72,78-81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 305/14
A61K 31/337
A61P 9/14
A61P 35/00
A61P 35/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のピーク:6.1、9.1、10.1、10.6、11.7、13.0、18.5、19.8、22.0deg 2−theta±0.2°により特徴づけられるXRPD回折パターンを有する結晶A型体である、13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形。
【請求項2】
前記XRPD回折パターンにさらに下記のピーク:9.8、14.0、15.4、16.4、17.5、17.8、19.2、20.6、22.7、24.1、25.4、27.0、28.0、30.2、31.5、31.7、34.6deg 2−theta±0.2°を有する、請求項1に記載の13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形。
【請求項3】
前記結晶A型体が水和物である、請求項1〜2の1項に記載の13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形。
【請求項4】
前記結晶A型体の水和物が、4.0重量%以下の含水率を有する、請求項3に記載の13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形。
【請求項5】
前記結晶A型体の水和物が1水和物である、請求項3又は4に記載の13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形。
【請求項6】
前記結晶A型体が、加熱速度10℃/分の示差熱分析においてピーク温度として測定される130±2℃の融点を有する、請求項1〜5の1項に記載の13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形。
【請求項7】
前記結晶A型体が、3444、3265、2971、2940、1732、1697、1367、1240、1157、1063、973、756、704cm−1±2cm−1に吸収周波数を示すFTIR−ATRスペクトルを有する、請求項1〜6の1項に記載の13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形。
【請求項8】
医薬として使用するための、請求項1〜7の1項に記載の13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形。
【請求項9】
請求項1〜8の1項に記載の13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形の製造方法であって、13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIを、アルコール性溶媒の水との混合物中で撹拌する工程を含み、該撹拌時間が少なくとも2時間である上記の方法。
【請求項10】
13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIを少なくとも部分的に前記アルコール性溶媒に溶解させた後に、該アルコール性溶液を水と混合し、該アルコール性溶媒と水との混合物を撹拌する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物を0〜45℃の温度範囲にて撹拌する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記アルコール性溶媒がメタノール、エタノール又はこれらの混合物であり、かつ/又は前記アルコール性溶媒と水との体積比が0.3と0.6の間である、請求項9〜11の1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIII(以下、化合物(1)とする)の新規な結晶形に関する。化合物(1)は、US2009/0130163及びWO2009/126175に既に記載されており、細胞の増殖及び転移を阻害する作用がある。また、血管形成術後に血管の閉塞が起こりにくくすることを目的として、ステントなどの医療器具に効果的に添加することができる。化合物(1)は、抗腫瘍薬としても用いることもできる。
【0002】
【化1】
【背景技術】
【0003】
US2009/0130163及びWO2009/126175では、化合物(1)の用途について様々な可能性が報告されているが、その物理的な特性については何ら開示されていない。おそらく2’−O−位に可動性の高いペンチルーカルボニル部が存在するために、化合物(1)は容易には結晶化することができず、そのため通常は非晶質として製造されている。しかし、ICHによる安定性研究において、この形態には化学安定性に問題があることが示されており、これは主にバッカチン核の10位の酸化に起因した不純物に関するものである。結晶物は、非晶質状態と比較してギブズ自由エネルギーが低いため、分解速度が遅く、安定性研究では優れた挙動を示すと予想される。以上から、化学的、熱力学的に安定な化合物(1)の結晶形の発見が望まれている。そうした形態の化合物(1)を連続的、安定的に製造する方法もまた、信頼性のある製造工程を開発するに当たっての必要条件である。
【発明の概要】
【0004】
化合物(1)が結晶形で存在しうることが見出された。したがって、第一の側面によれば、本発明は、13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの非晶質体の粉末X線回折パターンを示す。
【
図2】13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの非晶質体のTG/DT分析結果を示す。
【
図3】13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの非晶質体のFTIR−ATRスペクトルを示す([a]:4000から2500cm
−1スペクトル領域;[b]:1900から550cm
−1スペクトル領域)。
【
図4】13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶A型体の粉末X線回折パターンを示す。
【
図5】13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶A型体のTG/DT分析結果を示す。
【
図6】13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶A型体のFTIR−ATRスペクトルを示す([a]:4000から2500cm
−1スペクトル領域;[b]:1990から550cm
−1スペクトル領域)。
【0006】
当業者には公知であるが、ある固体が結晶形であるかどうかを検証するには種々の方法がある。例えば、粉末X線回折などの回折法や、示差熱分析(例えば、溶融温度及び/又は結晶化温度の測定)によって、結晶性を検出することができる。
【0007】
好ましい態様において、13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形は、結晶A型体である。つまり、「A型体」と称する同質異像が、その製造工程と共に本発明の好ましい主題である。
【0008】
好ましくは、13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶A型体は、XRPD回折パターンが以下のピーク:6.1、9.1、10.1、10.6、11.7、13.0、18.5、19.8、22.0deg 2−theta±0.2°により特徴づけられる。より好ましくは、前記結晶A型体は、前記XRPD回折パターンにさらに以下のピーク:9.8、14.0、15.4、16.4、17.5、17.8、19.2、20.6、22.7、24.1、25.4、27.0、28.0、30.2、31.5、31.7、34.6deg 2−theta±0.2°を有する。
【0009】
好ましい態様において、結晶A型体は水和物である。
【0010】
好ましくは、前記結晶A型体の水和物は、含水率が4.0重量%以下、より好ましくは1.0から2.5重量%である。
【0011】
好ましい態様において、前記結晶A型体の水和物は1水和物である。
【0012】
好ましい態様において、前記結晶A型体は、加熱速度10℃/分の示差熱分析においてピーク温度として測定される融点が130±2℃である。
【0013】
好ましい態様において、結晶A型体は1水和物であって、約2%の水を含み、かつ/又は約130℃で融解する。
【0014】
好ましい態様において、前記結晶A型体は、加熱速度10℃/分の示差熱分析により測定される70から120℃の温度範囲で放出される結晶水を、約1.0から1.5重量%含有する。
【0015】
好ましくは、前記結晶A型体は、3444、3265、2971、2940、1732、1697、1367、1240、1157、1063、973、756、704cm
−1±2cm
−1に吸収周波数を示すFTIR−ATRスペクトルを有する。より好ましくは、前記結晶A型体は、FTIR−ATRスペクトルにさらに以下のピーク:3063、2902、2875、1641、1603、1586、1538、1497、1454、1316、1277、1023、946、918、884、849、802、776、644、609、577cm
−1±2cm
−1を有する。
【0016】
さらなる側面によれば、本発明は、医薬として使用するための、13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの上記結晶形を提供するものである。
【0017】
好ましくは、本結晶形、特に結晶A型体は、細胞の増殖及び転移を阻害し、血管形成術後の血管の閉塞を起きにくくし、及び/又は腫瘍の治療するための医薬として使用することができる。
【0018】
さらなる側面によれば、本発明は、13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの上記結晶形の製造方法であって、13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIを、アルコール性溶媒の水との混合物中で撹拌する工程を含む上記製造方法を提供するものである。
【0019】
好ましくは、撹拌時間は少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも12時間である。
【0020】
好ましい態様において、好ましくは非晶質状態である13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIを少なくとも部分的にアルコール性溶媒に溶解した後に、該アルコール性溶液を水と混合し、該アルコール性溶媒と水の混合物を撹拌する。
【0021】
好ましくは、前記混合物を0から45℃の温度範囲、より好ましくは室温にて撹拌する。好ましくは、前記アルコール性溶媒は、メタノール、エタノール又はこれらの混合物である。
【0022】
好ましくは、前記アルコール性溶媒の水に対する体積比は、0.3から0.6の間である。
【0023】
化合物(1)の結晶形、好ましくは結晶A型体の重要性は、第一に、化合物(1)の化学安定性にある。この新規な形態は、バッカチン核の10位における酸化を防ぐ。ろ過又は遠心分離による単離が容易であることも、A型体の別の利点である。前述したように、本発明の好ましい態様によれば、A型体の製造は、(例えば、非晶質状態の)原料化合物(1)を適量のアルコール性溶媒、好ましくはメタノール又はエタノールに溶解させ、この溶液を適量の水に加えることにより行うことができる。得られた混合物を任意の温度、好ましくは0から45℃、最も好ましくは室温で少なくとも12時間スラリー化することで、A型体が得られる。アルコール性溶媒と水の体積比は、典型的には0.3から0.6である。
【0024】
定性分析
粉末X線回折(XRPD)、熱重量及び示差熱分析(TG/DTA)及びフーリエ変換赤外線スペクトル法(FTIR)により、非晶状態の化合物(1)からA型体を識別することができる。
【0025】
粉末X線回折(XRPD)
粉末X線回折パターンは、Philips PW1800回折計により得た。X線発生器は、CuKα線を放射線源として45kV、35mAで作動させた。試料は適当なスリットに装填し、照射波長は10mmとした。データは、2と65deg 2thetaの間を0.02deg 2thetaステップで得た。
【0026】
熱重量及び示差熱分析(TG/DTA)
分析は、開放型のアルミニウムパン(40μl容)を用い、セイコーTG/DTA6200同時測定装置により行った。TG/DTシグナルは、200ml/分の窒素流下において、線形の加熱速度(10℃/分)で30から300℃まで記録した。各測定には、約10mgの粉末を用いた。
【0027】
フーリエ変換赤外線スペクトル法(FTIR)
赤外線スペクトルは、Perkin ElmerのSpectrumOneフーリエ変換スペクトル測定装置を用い、ATR法により記録した。スペクトルは、4000から550cm
−1のスペクトル領域を4cm
−1の解像度で16回スキャンし積算したものを変換して得られた結果である。
【0028】
非晶質体
非晶質体の粉末X線回折パターン(
図1、2≦2θ≦40°の角度範囲)には、回折ピークが存在せず、非晶質試料に典型的な広範なノイズが見られる。
【0029】
非晶質体のTG/DT分析(
図2)では、約123℃でのガラス転移により特徴づけられるDTプロファイルが見られる。該TGプロファイルでは、30から120℃における残余水分の放出による約1.0%の重量損失に続いて、200℃で分解反応による大きな重量損失が起こっている。
【0030】
非晶質体のFTIR−ATRスペクトルを
図3[a](4000から2500cm
−1スペクトル領域)及び
図3[b](1900から550cm
−1スペクトル領域)に示す。吸収周波数は、3443、2959、2935、1707、1496、1453、1367、1242、1159、1068、1024、982、776、708cm
−1±2cm
−1に見られる。
【0031】
A型体
以下、
図4から
図6[b]に示すXRPD、TG/DT及びFTIR−ATRの測定結果を参照しながら結晶A型体の好ましい態様について論ずる。
【0032】
A型体の粉末X線回折パターン(
図4、2≦2θ≦40°の角度範囲)では、ほぼ6.1、9.1、9.8、10.1、10.6、11.7、13.0、14.0、15.4、16.4、17.5、17.8、18.5、19.2、19.8、20.6、22.0、22.7、24.1、25.4、27.0、28.0、30.2、31.5、31.7、34.6°2θに弁別可能な有効な回折を持つ結晶構造がみられる。
【0033】
好ましい態様において、13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形は、粉末X線回折パターンが
図4と実質的に一致する。
【0034】
A型体のTG/DT分析(
図5)では、70℃未満に約2.5%の重量損失(TGプロファイルによる)を伴った残余水分の放出に起因する弱い吸熱シグナルと;70から120℃に約1.2%の重量損失(TGプロファイルによる)を伴った結晶水の放出に起因する約82℃を極大とする吸熱ピーク(水和物の特徴に整合する)と;約123℃から始まり約130℃で極大となる溶融ピークとが見られる。TGプロファイルでは、最初の漸進的な重量損失に続いて、分解反応に起因する大きな損失が180℃で起こっている。
【0035】
好ましい態様において、13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形は、示差熱分析プロファイルが
図5と実質的に一致する。
【0036】
A型体のFTIR−ATRスペクトルを
図6[a](4000から2500cm
−1スペクトル領域)及び
図6[b](1990から550cm
−1スペクトル領域)に示す。吸収周波数は、3444、3265、3063、2971、2940、2902、2875、1732、1697、1641、1603、1586、1538、1497、1454、1367、1316、1277、1240、1157、1063、1023、973、946、918、884、849、802、776、756、704、644、609、577cm
−1に見られる。
【0037】
好ましい態様において、13−[(N−tert−ブトキシカルボニル)−2’−O−ヘキサノイル−3−フェニルイソセリニル]−10−デアセチルバッカチンIIIの結晶形は、FTIR−ATRスペクトルが
図6[a]及び
図6[b]と実質的に一致する。
【実施例】
【0038】
本発明を以下の実施例により説明するが、これらは特許請求の効力範囲を限定するものではない。
【0039】
実施例1
結晶A型体の製造
非晶質の化合物(1)(10g)(WO2009/126175の実施例2の記載に従い製造したもの)を室温でエタノール(70mL)に溶解させた。その溶液を精製水(140mL)に1時間かけて加え、得られたスラリーを室温で16時間撹拌した。白色の固体をろ別し、33%エタノール水溶液で洗浄し、40℃で16時間真空乾燥した結果、
図4、5及び6にそれぞれ示すXRPD、TG/DTA及びIR特性を有する化合物(1)が得られた。
【0040】
実施例2
化合物(1)の非晶質体及びA型体の、25±2℃及び相対湿度60±5%における安定性のデータ。包装は、どちらの固体形態とも同じとした(アンバーガラスバイアル+ポリエチレンバッグ+真空密封PET/アルミニウム/PE多層バッグ)。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】