(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
[0001]本願は、概して、2つの粉末を混合してDyの粒界拡散を最適化することによって、ホットプレス法もしくはダイアプセット法、または、その両方を使用して、永久磁石のための磁性材料を製造する方法に関する。また、この方法は、Nd,Fe,およびBを含有するコア粉末と、金属合金の形態でDyおよび/またはTbを含有する表面粉末と、を用いたホットプレスを使用して、磁性材料を製造する工程と、これらの材料を混合する工程と、真空での磁界の存在下の成形金型(mold)内で磁性材料を形成する工程と、磁性材料を加熱する工程と、金型(die)内で磁性材料をホットプレスする工程と、磁性材料を冷却する工程と、必要な場合に磁性材料を熱処理する工程と、を備え得る。
【0003】
[0002]永久磁石は、ハイブリッド車両または電気車両用の電気トラクションモータ、風力タービン、空調ユニット、小さな容積と高い出力密度とを組み合わせることが有益となり得る他の用途を含む様々なデバイスで使用されている。焼結ネオジム−鉄−ホウ素(Nd−Fe−B)永久磁石は、低温での磁気特性が非常に優れている。しかしながら、そのような磁石のNd
2Fe
14B相はキュリー温度が低いので、温度上昇に従って残留磁気および固有保磁力が急速に減少する。熱安定性および高温での磁気特性を改善するために、2つの一般的な方法がある。1つは、コバルト(Co)を添加することによってキュリー温度を上げることである。コバルトは、Nd
2Fe
14B相に完全に溶解可能である。しかしながら、Coを使用すると、おそらく、逆磁区についての核形成部位(nucleation sites)によって、Nd−Fe−B磁石の保磁力が低減する。2つ目の方法は、ジスプロシウム(Dy)もしくはテルビウム(Tb)またはその両方などの重希土類(RE)元素を添加することである。Nd−Fe−B磁石のNdまたはFeの代わりにDyを使用すると、異方性磁界および固有保磁力が増大し、飽和磁化が減少することが知られている。例えば、C.S. Herget, Metal, Poed. Rep. V. 42, P.438 (1987)、W. Rodewald, J. Less-Common Met., V111, P77 (1985)、D. Plusa, J. J. Wystocki, Less-Common Met., V. 133, P. 231 (1987)を参照されたい。溶融し合金化する前に、DyまたはTb等の重希土類金属を、混合された金属に添加するのが一般的である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0017]次に、本開示の特定の実施形態について説明する。ただし、本発明は、様々な形態で実施されることができ、本明細書で説明される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全であるように提供されるものであり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるであろう。
【0014】
[0018]特に定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明の実施形態が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有している。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するものに過ぎず、本発明を限定することは意図されていない。明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、それとは逆の明示がない限り、複数形を含むことが意図されている。
【0015】
[0019]逆の明示がなければ、明細書および特許請求の範囲で使用される材料の量、分子量などの特性、反応条件などを表現する全ての数値は、「約」という用語によって全ての場合において変更されるものと理解されるべきである。「約」という用語は、示される値の±10%までを意味するものとして意図されている。さらに、明細書および特許請求の範囲における任意の範囲の開示は、範囲そのもの、および、そこに含まれる任意のもの、さらには、終点を含むものとして理解されるべきである。逆の明示がなければ、明細書および特許請求の範囲で説明される数値的な特性は、本発明の実施形態において得ようとする所望の特性に応じて変化することができる近似値である。本発明の実施形態の広い範囲を説明する数値的な範囲およびパラメータは近似値であるものの、特定の例で説明される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、本来、所定のそれらのそれぞれの測定において見られる誤差から必然的に生じる所定の誤差を含んでいる。
【0016】
[0020]本明細書で使用される場合、「室温」との用語は、約5℃から約35℃の範囲をいう。特定の実施形態では、フレークの表面は、丸みがあってもよい。
【0017】
[0021]本明細書で使用される場合、「フレーク状の粉末」との用語は、約5から約40までの、厚みに対する幅のアスペクト比を有するフレークをいう。
【0018】
[0022]本発明は、磁性材料における最終的な微細構造および化学的一様性へのプロセスの影響によって、希土類/遷移金属/ホウ素(Nd2Fe14BなどのRE2TM14B)ベースの磁石における過剰な量のDyまたは他の重希土類(HRE)の必要性を低減する製造プロセスを含む。従来の方法で製造される磁石は、ハイブリッド電気自動車のモータに使用される磁石によって見られる高温(約150℃)での大きな磁束(残留磁気誘導「Br」)が与えられた状態で消磁への十分な耐性(保磁力,「Hc」)を維持するために、10重量%までのHREを必要とする。より少ないHREで必要なHcおよびBrをもたらすコスト効率の良い製造プロセスを実施可能である。これは、(Nd2Fe14B)粒子の境界のみに対して個々の(Nd2Fe14B)粒子の磁気分離を示す少量のHREを選択的に富化することによって達成される。
【0019】
[0023]本願で開発された製造プロセスは、低温(約500℃から約1000℃)安定化および熱間変形に基づいている。本明細書で使用される低温ホットプレス、または、低温ホットプレスおよび熱間変形製造方法は、従来の焼結方法と異なっている(短い処理時間、必要な圧力での低い処理温度)。HREの面線源からの拡散に基づくHRE粒界富化プロセスが実証されてきた(いわゆる粒界拡散プロセス)。本明細書の製造方法は、非効率な面線源拡散プロセスを必要とすることなく、粒界富化と磁気分離とを同時に生じさせるためのバルク材製造方法である点で革新的である。本明細書でとられる方法は、ホットプレスし、その後、焼結および熱処理プロセスに必要な温度および時間を低減するためにエージングして、粒界拡散を増進させ、Dyおよび/またはTbの低減を最大化するためにDyおよび/またはTbのバルク拡散を最小化して、同一の所望の磁気特性を達成する方法を採用している。また、この新たな方法は、ホットプレスおよび熱間変形プロセスにおいて効果のある沈殿溶解プロセスを支配する、熱力学(Nd2Fe14B)−(REリッチ共晶)系、動力学および物理学、ならびに、微細構造が高温での消磁に対する耐性を保持する(Nd2Fe14B)永久磁石をもたらすことができる程度に関する知識体系への重要な付加をもたらす。
【0020】
[0024]本発明は、概して、電動機およびそれらの製造に関し、より詳細には、電動機の出力密度を改善するための希土類(RE)元素、特に、高温磁気特性を改善するためのDy,Tbなどといった重希土類元素を使用する永久磁石を形成するための方法に関する。
【0021】
[0025]「DyまたはTbを有するNd−Fe−B焼結磁石の製造方法」という表題の2011年1月14日に出願された米国出願第13/007,203(以下では、’203出願と呼ぶ、現在は米国特許第8,480,815号)は、同様の磁気特性を得つつ、従来の方法を使用して製造されるよりも遙かに少ないDyまたはTbを使用する磁石およびそれらを製造する3つの方法を説明している。’203出願は、本出願の譲受人に譲渡されており、その全体が参照によって本願に組み入れられる。本願発明者は、微細構造をさらに改善するとともに、ホットプレスおよび熱処理プロセスによってHREをさらに低減しつつ磁気特性を改善する方法を発見した。
【0022】
[0026]焼結(希土類)−Fe−B永久磁石は、ハイブリッド電気車両(HEVs)および電気車両(EVs)のための電動機において必須の構成要素である。それは、他の磁石と比べて、それらが、高い最大エネルギー積(BH)maxおよび高い保磁力を有するからである。保磁力(Hc)およびBHの直角度のカーブは、重要考慮事項である。なぜなら、電動機の動作中の反磁界は重要であるからである。焼結磁石の室温適用のための標準的な化学的構造は、Nd2Fe14Bの定比性(stoichiometry)を有する主要相を有するNd−Fe−B三元に基づいている。残念ながら、車両における永久磁石のための動作温度は、約160℃であり、Nd−Fe−B化学的構造のためのBH積は、低キュリー温度(313℃)によって100℃(2)よりも大きく大幅に低下し、それによって、温度の上昇にしたがって飽和磁化および保磁力の低下を招く。
【0023】
[0027]Dy
2Fe
14BおよびTb
2Fe
14Bは、Nd
2Fe
14Bよりも高いキュリー温度および高い異方性定数を有している。キュリー温度は、Nd
2Fe
14B、Dy
2Fe
14BおよびTb
2Fe
14Bについて、それぞれ585K,602K,639Kである。ハイブリッド電気車両エンジンのような高温の動作温度環境で高い保磁力を維持するために、Ndに代えて、多量のDyなどの重希土類元素が付加され、(Dy
xNd
(1−x))
2Fe
14B合金が作り出され、それによって、キュリー温度および保磁力が上昇する。しかしながら、Ndを重希土類(RE)元素で置き換えることには、磁石の残留磁気が低減されるという不利益がある。これは、それらがRE
2FE
14B格子と反強磁性的に結合するからである。さらに、自由市場での重希土類元素の入手性は、現在、脅かされている。したがって、高い保磁力を有するとともに、良質で高温のエネルギー積を有する重希土類が少ない磁石を生産するための努力が開始されている。
【0024】
[0028]磁石性能の高温破壊は、クラック、酸化物粒子、三重会合点(triple junctions)、および、低い磁気異方性を有するとともに逆磁区の核形成部位として作用する粒界などの欠陥によって悪化する。米国特許8,480,815号および日立プロセス(米国特許8206516)は、Nd2Fe14Bベースの永久磁石の粒界でDy成分を局所的に増加させるように構成されており、最も必要な場所に重希土類が配置されている。プロセス手段の違いがあり、それによって生じる提案される方法と日立プロセスとの間での微細構造の均一性の違いがあるものの、この2つの方法は、Nd2Fe14B粒界を重希土類(Dy)で富化することの科学的根拠が共通している。磁気モーメントの逆転は、逆磁区の粒界核形成によって開始される。Nd2Fe14BにDyを添加することによって、特に高温において保磁力が増大された(Nd,Dy)2Fe14B合金を生産することができる。Dyは、(Nd,Dy)2Fe14B合金の形成が粒界のみで生じる場合に、高保磁力磁石を生産しつつ節約することができる。Dyは、高価な元素であり、高温磁石のコストを低減するために節約される必要がある。
【0025】
[0029]保磁力と微細構造との間の相関関係は、構造の詳細な分析や微小磁気理論(H. Kronmueller and M. Faehnle,強磁性体固体の微少磁気および微細構造、ケンブリッジ大学報、ケンブリッジ,2003,H. Kronmueller, K.-D. DurstおよびSagawa,J. Magn.Mater. 74,291 1988)を使用して1980年代に広く研究された。焼成磁石の室温での逆磁化の原因となるメカニズムは、核形成タイプであることが見出された。保磁力Hciすなわち不整合粒子、磁気的に結合された粒子、磁気的に不安定化された粒子表面、および、多面体粒子の鋭利な角および端部での大きな局所的消磁化漂遊磁界に対する微細構造の損傷効果は、磁場反転に応じた磁区の核形成の助けとなる現象として考えられていた。
【0026】
[0030]この種の「コアシェル」構造は、比較的少ないDy添加量でHciを改善する利点を提案する多数の様々な著者によって近年研究されている。これらの研究の大多数は、バルクNd2Fe14Bベースの磁石の表面からの境界に沿ったDyの拡散を使用して、Dy粒子表面が富化された微細構造を生産する。
【0027】
[0031]日立プロセス(米国特許8,206,516号)は、バルク磁石の表面からの拡散によって重希土類の粒界富化を作り出す。これは、蒸着システムで生じる後焼成プロセスである。バルク磁石の表面からのDyの拡散は、粒界に集中する。それは、境界の拡散係数がバルクよりも多桁大きいからである。GMが提案するプロセスは、Nd2Fe14Bベースの磁性材料の粒界でのDy成分を増大させる経済的に優れた方法としての、日立プロセスの代替策を提供するように構成される。本方法は、粒界でのDy拡散が粉末冶金および加熱形成プロセス中に、外部Dy源による後熱処理(日立)ではなく、内部Dy源によって生じるので、また、多数の過剰な設備または非常に長い追加的なプロセス工程を必要としないので、経済的に有利である。
【0028】
[0032]粒界富化アプローチの有効性は、日立特許(米国特許8,206,516号)によって支持されている。日立の調査員は、まず、気相蒸着/粒界拡散プロセスを使用して保磁力の増加を実証し、その後、生じた厚みが取り除かれると保磁力がどのようにして低減するのかを示した。著者は、これは、900℃、240分でのDy侵入深さの表れであり、粒界Dy組成、ひいては、深さ約1mmまでの磁気的挙動に影響を与えるものであると提唱した。日立プロセスは、処理できる磁石厚の限界値を有している。
【0029】
[0033]本明細書の発明は、ホットプレス(粒子の整合配列のための磁界下)、および/または、ホットプレスおよび熱間変形製造プロセス(ダイアプセット)を発展させる体系立てられた方法を含む。この方法は、微細構造、および、(RE2TM14B)−(REリッチ共晶)系における熱力学、動力学および磁気現象の定比性依存を利用して、高温での大きなHcおよびBrを保持しさらには増大させる磁石中のDyおよび他のHREの必要性を急激に低減する。バルク材中の個々のNdE2Fe14B粒子を磁気分離する共晶相によって、Hcが劇的に増大する。
【0030】
[0034]本発明の一態様は、永久磁石のための磁性材料を製造する方法である。一実施形態では、この方法は、Nd、FeおよびBを含有する第1の材料(コア粉末の形態であってもよい)と、DyおよびTbの一方または両方を合金の形態で含有する第2の材料(表面粉末またはフレークの形態であってもよい)と、を混合する工程を備える。混合は、第2の材料を構成するDyまたはTbの不均質な(不均一な)分布を有する、被覆された、混合物状の材料が形成されるように行われる。これによって、使用量全体を少なく保ちつつ、バルク濃度が過剰なDy,Tbの一方または両方の表面濃度の存在が確保される。特定の実施形態では、Dyおよび/またはTb濃度は、粒子表面において、バルク内よりもはるかに高い。特定の実施形態では、Dyおよび/またはTb濃度は、粒子表面において、約10重量パーセントから約50重量パーセントであり、すなわち、粒子表面において、バルク内よりもはるかに高い。本明細書の特定の実施形態では、本明細書で説明される方法から生じる最終生産物は、かかる態様を有し得る。
【0031】
[0035]本文脈内において、不均一すなわち不均質分布とは、第2の材料が第1の材料の離散位置、例えば、界面すなわち粒界または表面上の他の位置に分布または集約され、第1の材料を構成する粒子の内側にはほとんどまたは全くない(例えば、拡散、化学結合などによる)ことをいう。
【0032】
[0036]一形態では、DyまたはTb含有合金は、小さい粉末形態であってもよく、他の形態では、材料は、より大きいフレークベースの形態であってもよい。これらのサイズの違いに関連する詳細は、以下でより詳細に説明する。この形態にかかわらず、これらは、混合(blending, mixing)、および機械的被覆のために使用されて、混合物状の材料を生産することができる。粉末およびフレーク状の粉末は、微粒子化(高圧不活性ガス(例えばアルゴン)と接触して粒子を形成する溶融金属)を使用することによって、あるいは、スリップキャスティングし、それに続いて水素粉砕および脱水素化することによって、製造され得る。
【0033】
[0037]重要なことに、本明細書にしたがって生産される磁性材料は、拡散を低く保ち、それによって、粒界領域(本明細書では粒界表面とも呼ばれる)のまわりのDyおよびTbの一方または両方の所望の不均質な成分を維持するようにホットプレスされ得る。一形態では、磁性材料および/または永久磁石は、約10重量パーセントから約50重量パーセントのDy,Tbまたはその両方の粒界表面濃度を有している。
【0034】
[0038]本明細書で説明される実施形態は、DyおよびTb、ならびに、Nd,Pr,ガリウム(Ga),B,Fe,Co,Al,Cuなどといった様々な他の元素の拡散または関連する輸送特性を変えるために、温度、圧力、時間、空間的構成および化学的性質の変化を採用する。1つの特定の形態では、これらのパラメータを調節することによって、被覆された材料の周りの被覆材料の機械的ラッピングが生じ得る。そこでは、より高いエネルギー準位で、より完全なラッピングが達成される。とはいえ、ラッピングは、改善された性能を示すために完全である必要はない。かかる場合、所定の環境では、高温および高圧での上記の元素の1つ以上の拡散によって部分的なラッピングもまた許容される。粉砕および混合動態を制御することによって、新たな異なる材料相を形成し得る。プロセス中にいくつかの元素を個別に添加する(個々の形態で、または、二元もしくは三元合金の一部として)結果として、さらなる改善が生じ得る。そのような改善は、特に、新たな相、すなわち、上記のような異なる元素成分を有する相の選択的な形成を促進するのに役立つ。これらの相は、上述した様々な元素の1つ以上を有する、粒界の周りの共晶相、例えば、NdおよびDyリッチ三重会合相を含んでいてもよい。これらの相(これらは、状態図から、ほとんどが多数の元素を有する共晶相である)は、保磁力(H
cJ)または他の磁気特性を改善する(すなわち増大させる)上で重要な役割を担い得る。これらの形態から、それらは、三重(または多重)会合相と呼ぶことができる。なぜなら、それらは、粒界の周り、特に、3つ(または多数)の粒子が接触する会合領域の周りに位置するからである。
【0035】
[0039]本明細書の実施形態の第2の態様は、Nd−Fe−Bを含有する粉末ベースの材料と、DyおよびTbの少なくとも一方を含有するフレークベースの材料と、を粉末ベースの材料がフレークベースの材料の層によって実質的に被覆されるように機械的に粉砕することによって、DyおよびTbの少なくとも一方が不均質に分散されたNdベースの永久磁石を製造する方法を含む。粉砕の後、被覆された粉末ベースの材料を被覆しなかったフレークベースの材料の余剰部分は、篩い分けによって取り除くことができる。その後、被覆された混合物状材料は、粉末の整合配列のための磁界下で所定の形状に形成される。この成形された部品は、次に、当該部品が、下層の粉末ベースの材料を被覆するのに使用されるフレークベースの材料が材料内に残留することができ不均一な態様で分布されて形成されるように、高温でプレスされる。一形態では、そのような不均一性は、下層の粉末ベースの材料の粒界での優先的な蓄積によるか、熱処理中の共晶層形成による。
【0036】
[0040]本明細書の実施形態の第3の態様は、DyおよびTbの少なくとも一方が不均質に分散されたNdベースの永久磁石の製造方法を含む。この方法は、Nd−Fe−Bを含有する第1の粉末ベースの材料と、DyおよびTbの少なくとも一方を含有する第2の粉末ベースの材料と、を第1の粉末ベースの材料が第2の粉末ベースの材料の層によって実質的に混合され被覆されるように機械的に粉砕する工程を備える。次に、この被覆された粉末は、磁界下で所定の形状に形成され、次いで、第2の粉末ベースの材料が第1の粉末ベースの材料の表面に不均一な態様で分布した状態で磁石部品が形成されるように、加熱されプレスされる。そのような不均一性は、元素、特にDy,Tbおよび/または他のRE元素の粒界での優先的な蓄積によるか、共晶層形成によることができる。本明細書で生産される磁性材料または永久磁石の実施形態は、小さくてもよく、大きくてもよい。特定の実施形態では、磁性材料または永久磁石は、僅かな立方インチのサイズから1または数立方インチのサイズまでであることができ、あるいは、約1以上の立方フィートのサイズからであることができる。特定の実施形態では、磁性材料または永久磁石は、電動機に配置されることができ、ロータまたはステータに配置されることができる。特定の実施形態では、その形状は、例えば、丸くてもよく、長方形でもよく、ディスク形状でもよく、あるいは、当該技術分野で公知の材料のための他の形状であってもよい。
【0037】
[0041]本プロセスを使用して製造される磁石は、同様の磁気特性を得つつ、従来の方法を使用して製造される磁石よりも遙かに少ないDyまたはTbを使用する。本プロセスでは、DyまたはTbによって被覆されるNd−Fe−B粉末は、磁石を製造するのに使用される。これは、磁石中のDyまたはTbの不均一な分布をもたらす。これは、マイクルプローブを有する走査型電子顕微鏡を使用して見ることができ、計測することができる。これによって、本プロセスは、同様の磁気特性のための遙かに少ないDyまたはTbを使用することが可能になる。例えば、Dyおよび/またはTbの量は、従来のプロセスと比べて約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、または、約90%以上低減され得る。不均一な分布によって、Dyおよび/またはTbは、粉末粒子の界面に分布または集中され、粒子の内側には、ほとんどまたは全くない。
【0038】
[0042]これらの方法を使用して、Dyおよび/またはTbの被覆厚は、約1μmから約100μmまで、例えば、約2から約100μmまで、約5から約90μmまで、約5から約80μmまで、約5から約70μmまで、約5から約60μmまで、または、約10から約50μmまでとすることができる。
【0039】
[0043]粉末被覆プロセスによって、Dyおよび/またはTb平均濃度を低減することができ、粉末被覆プロセスは、磁石中のDyおよび/またはTbの分布を変化させる。磁石のDyおよび/またはTb平均濃度は、同様の高い磁気特性を有する従来の磁石についての約6から9wt%と比べて、約0.3〜約6wt%、約0.3〜約5wt%、約0.3〜約4wt%、または、約0.3〜約3wt%の範囲とすることができる。被覆プロセスは、約5から約80wt%以上のDyおよび/またはTb表面濃度、および、低いDyおよび/またはTbバルク濃度(すなわち粒子の内部)を有する粉末粒子を作り出す。Dyおよび/またはTbは、必要に応じて、意図的に添加されてもよく、粒子表面から粉末粒子へ部分的に拡散されてもよい。しかしながら、粒子内部のDyおよび/またはTbのバルク濃度は、Dyおよび/またはTbの表面濃度よりも低い。被覆プロセスは、追加的な工程としての粉末冶金プロセスのための本準備(preparation)に導入される。
【0040】
[0044]DyもしくはTbまたはその両方は、必要に応じて使用され得る。Tbが含まれる場合、Dyはそれほど必要ではない。例えば、DyとTbとの合計は、約6wt%よりも少なくてもよい。Tbは、磁気特性を改善する上で、Dyよりも遙かに効果的になり得る。しかしながら、Tbの非常に高いコストとバランスされるべきである。必要に応じて、約10までの、Tbに対するDyの割合が使用され得る。
【0041】
[0045]DyまたはTb濃度分散構成は、磁石の様々な熱処理、特にアニーリングスケジュールによって操作され得る。時間をより長くすること、または、温度をより高くすることによって、粒子表面において、分布をより広くすることができ、より分散させることができる。
【0042】
[0046]さまざまな実施形態では、次の工程の一部または全部を使用することができる。この磁石製造プロセスは、1)溶融およびストリップキャスティング工程と、2)水素粉砕(水素化および脱水素化)と、3)微粉砕工程(窒素を使用)と、4)合金粉末を混合して、化学組成を調節し、オプションとして篩い分けする工程と、5)粉末をDyおよび/またはTbリッチ粉末で被覆する工程と、6)オプションとしての篩い分け工程と、を備え得る。特定の実施形態では、篩い分けには、過剰な粉末を取り除くために、1つ以上のサイズの単一または複数のメッシュが含まれてもよい。この後に、磁界下での形成およびホットプレスプロセスおよび磁石片への加工が続いてもよい。最後に、磁石は、表面処理されてもよい(例えば、リン酸塩、無電解Niめっき、エポキシ被覆など)。
【0043】
[0047]上述の3つの被覆方法については、より詳細に説明する。
【0044】
[0048]機械的合金化は、高エネルギーボールミルでの粉末粒子の繰り返しの溶着、破砕、再溶着を含む固体粉末処理技術である。それは、混合された成分の粉末または予め合金化された粉末から開始される様々な合金平衡相および合金非平衡相を合成するのに使用され得る。合成された非平衡相には、過飽和の固溶体と、準安定結晶質相および準結晶相と、ナノ構造と、アモルファス合金と、が含まれる。
【0045】
[0049]機械的合金化は、高エネルギーミルを使用して、冷間圧接に必要な塑性変形を助け、処理時間を低減する。それによって、使用されるべき成分粉末およびマスター合金粉末の混合を可能にする。マスター合金粉末を使用することによって、成分の活性を低減する。それは、合金または化合物の活性は、純金属よりも桁違いに低いことが公知であるからである。機械的合金化によって、微細な自然発火粉末を生成し粉末を汚染するであろう界面活性剤を使用する必要がなくなる。通常生産される非常に微細な粉末に特有であるが、比較的粗く、したがって安定的な全体粒子サイズを有する微細な内部構造を有する粉末の生産は、溶着と破砕との一定の相互作用に依存する。
【0046】
[0050]機械的合金化プロセスは、粉末を所望の割合で混合することで開始される。粉末混合物は、粉砕媒体(例えば、鋼球)を有するボールミルに投入される。次に、粉末混合物は、所望の時間の間、粉砕される。機械的合金化プロセスの重要な構成要素は、原材料、ミルおよびプロセス変数である。パラメータには、ミルの種類、粉砕容器、粉砕速度(一般的には約50から約400rpm、典型的には約250rpm)、粉砕時間(一般的には約0.5から約12時間)、種類、サイズ、および粉砕媒体(例えば、硬化鋼、ステンレス鋼など)のサイズ分布、粉末に対するボールの重量比(一般的には約1:1から約220:1であり、典型的には約10:1)、バイアルの充填の程度、粉砕雰囲気(例えば、真空、窒素またはアルゴン)、粉砕温度(一般的には約室温から約250℃)が含まれる。
【0047】
[0051]機械的合金化に使用される原材料は、直径で約1から約200マイクロメータ(μm)の範囲の粒子サイズを有し得る。粉末粒子サイズは、粉砕ボールサイズよりも小さくすべきである点を除いて重要ではない。なぜなら、粉末粒子サイズは、時間と共に急激に減少し、わずか数分の粉砕の後には数ミクロンに達するからである。原料粉末は、純金属、マスター合金、または、予め合金化された粉末であってもよい。
【0048】
[0052]機械的合金化粉末を生産するために、様々な種類の高エネルギー粉砕設備を使用することができる。それらは、その生産能力、粉砕効率、および、冷却、加熱等のための追加的な構成などが異なる。従来のボールミル10は、
図1に示すように、小さな鋼球20で部分的に満たされた回転水平ドラム15を備えている。ドラム15が回転すると、ボール20は、粉砕されている金属粉末状に落下する。粉砕タンクすなわち容器は、ステンレス鋼、または、内部が例えばアルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素などで被覆されたステンレス鋼で使用できる。ボールミル10は、回転インペラ25を備えている。冷却液は、ドラム15のジャケットを通って入口30から出口35まで流れ、粉砕中の粉末の温度を制御する。
【0049】
[0053]他の方法は、物理蒸着(PVD)を使用してNd−Fe−Bベースの粉末をDyまたはTb金属で被覆することを含む。放電加工およびスパッタリングに基づく粒子銃を使用するPVD法は、
図2,3に示されている。とはいうものの、必要に応じて他のPVDプロセスを使用することもできる。「基板」が底部に配置され得る。基板は、基本的には、被覆されるべきNd−Fe−B粉末を収容する容器である。必要に応じて、粉末をかき回して粉末への均一な被覆を確保するために、容器内に混合器(図示せず)があってもよい。
【0050】
[0054]
図2は、放電加工PVDプロセスを示している。固定電極ホルダ100と、移動電極ホルダ105と、がある。固定電極ホルダ100は、電力供給部(図示せず)に接続される。移動電極ホルダ105は、電力供給部および機械的振動子(図示せず)に接続される。固定電極ホルダ100および移動電極ホルダ105は、電極110を有している。キャリアガス入口115は、キャリアガスを導入する。処理ガス入口120は、処理ガスをキャリアガスに導入し、構造130は、ガス入口120に隣接して示されている。被覆材料は、基板135に向けられる。
【0051】
[0055]スパッタリングPVD被覆プロセスが
図3に示されている。2つのマグネトロンスパッタ源150が、底部の回転基板テーブル155に向けられて、頂部にある。スパッタリングでは、プラズマの高エネルギー粒子(例えば、窒素イオン)の衝突によって、ターゲット材料(Dyおよび/またはTb、または、合金)の表面から原子が放出される。放出された原子は、薄い膜を形成する基板の表面上で凝結する。
【0052】
[0056]第3の被覆方法は、Nd−Fe−Bベースの粉末を、溶媒と混合された、DyまたはTb金属および/または合金の非常に微細な金属粉末で被覆することを含む。高速ジェット(約30から約60フィート/秒)が、空気または不活性ガスの流れを、渦式加速器(swirl accelerator)で加速させることによって達成される。空気/ガスの流れの流速および圧力を調節することによって、乱流が通常生じるレイノルズ数で層流パターンを確立することができる。このガスは、「被覆チューブ」に向けられる。渦式加速器は、例えば、コロンビアMD21045のGEA Process Engineering Inc.,から入手可能である。
【0053】
[0057]
図4に示すように、「下降流ベッド(bed)」200の領域内で被膜されるべき粉末の貯留槽は、被覆チューブ205を取り囲み、底部から粉末ベッドに入る低速ガス流210によって軽く通気された状態に維持される。この領域には、低容積流が存在する。湿潤・接触域225よりも下方の、入口流動プレート220と被覆チューブ205の底部との間の隙間215によって、粉末が高速ガス流に曝される。粉末の粒子は、この接触面で捕捉され、ガス流によって加速される。
【0054】
[0058]DyもしくはTb金属または合金を含有する被覆の微粒子スプレー230は、スプレーノズル235を通って高速ガス流の底部に導入される。被覆スプレー230は、固体粒子よりも速く移動し、その結果、接触が生じて、被覆が付着する。
【0055】
[0059]境界層効果によって、チューブの中央のところでの速いガス流速から、壁のところでのゼロ流速までの、速度勾配が生じる。この勾配によって、粉末は、ガス流によって、全ての粒子の表面が被覆スプレーに曝されるように転がる。被覆が施されると、被覆された粒子は、被覆チューブを上方に移動する。粒子速度は、通常、ガス速度よりも遅く、その結果、通常、粒子表面に亘ってガスが移動する。このガスの移動は、溶媒を蒸発させ、乾燥域240において被覆を乾燥させる。粒子は、被覆チューブ205の端部に到達する時間によって、実質的に乾燥される。
【0056】
[0060]チューブの端部では、粒子は、高速流から離れて、収容領域(holding area)(図示せず)に落ちて戻る。
【0057】
[0061]
図5は、粉末被覆の2つの方法を示している。1つの方法245は、
図5の左上に示すコアシェル構造で被覆される。シェルは、Dyリッチ材料で被覆され、内側部分は、Nd/Fe/Bリッチである。被覆されたコアの直径の例が255として示されている。被覆は、使用される粒子が全く様々なサイズであり、コアの周りが実質的に完全に被覆される方法を使用して達成される。特定の場合では、
図5の左側に示すように約100パーセント被覆され、他の場合では、コアの約75パーセントから約100パーセント被覆されるか、約50パーセントから約75パーセント被覆される。
図5の右側では、混合粉末方法250が示されており、粒子は、部分的な被覆が生じるように様々なサイズである。特定の実施形態では、約0から約50パーセント被覆され、他の実施形態では、約0から約25パーセント、または、約25から約50パーセント被覆される。大きな円および小さな円は、それぞれ、大きな粉末、小さな粉末を表している。小さな粉末は、Dyリッチであり、大きな粉末は、Nd/Fe/Bリッチである。コアシェルおよび混合粉末方法の両方は、本明細書で説明される実施形態で使用され得る。コアシェル方法によれば、各Ne/Fe/B粒子の周りでDyリッチ材料がより均一に分布される。粒子の幾何学的配置の例における1つの小さな粒子から他の小さな粒子までの距離260が、
図5の右に矢印によって示されている。
【0058】
[0062]
図6は、
図5の右欄からの画像の拡大図である。多数の粒(grains)を有する粉末の1つの粒子が示されている。粒子は、Nd−Fe−B粒子270であり、Dyリッチ粉末265がこの周りに示されている(重希土類リッチ粉末は、外側である)。粒は、Nd−Fe−B粒子の内部に示されている。加熱されると、Dyは、粒に沿って粒を通って固体拡散によって分布される。特定の実施形態では、粉末265は、DyもしくはTbまたはその両方である。
【0059】
[0063]
図7は、各相、すなわち、三重会合相、軟磁性相、硬磁石相および粒界相を示している。
図7は、粒界の非常に複雑な様子を示している。軟磁性相(α−Fe)275が、硬磁石相(Nd2Fe14B)280、端部285、Dy粒子290、粒界相(Ndリッチ)295,および、三重会合相(Ndリッチ)300とともに示されている。2つの粉末を使用するホットプレス法を使用して、中核温度は、使用される圧力によって低くすることができ、それは、Dyの不均質な分布を促進する。Dy(Dyリッチ層)の高密度領域は、本明細書に説明される方法にしたがってさらに加熱されさらにプレスされる際に分散され、Dy粒子のより均一な分布が達成される。その結果、同じ結果を成し遂げるために、より少ないDyを使用することができる。ホットプレスによって、Dyは、粒界に沿って分布し、理想的には、各粒内のDyは、最小化される。
【0060】
ホットプレスプロセスおよび熱処理プロセスの例:
[0064]ホットプレス法は、所望の組成の粉末混合物を使用する工程と、成形金型内において磁界(約1から2.5テスラ(T))下、かつ、真空(約10から20トール)または不活性雰囲気(ArまたはN2)で磁石部品を形成する工程と、部品を室温からホットプレス温度までゆっくりと加熱する工程と、約0.5から約2時間の間、約500℃から約850℃の温度を維持する工程と、を備えている。特定の実施形態では、室温での加熱の開始から、約500℃から約850℃の範囲内での加熱の終了までの時間、また、他の実施形態では、約500℃から約850℃の範囲に到達する時間は、1.5から2時間である(約0.5から約2時間の追加的な加熱が行われてもよい)。ホットプレスの時間は、特定の実施形態では、約30分、約40分または約50分から約1時間まで、または、約1時間から約2時間までであってもよい。金型内でのホットプレスは、約3から約20分の間、約30から約90メガパスカル(MPa)(典型的には、約50〜約80MPa)で行われ、特定の実施形態では、約5から約10分であってもよい。特定の実施形態では、85%を超える理論密度の部品密度が達成される(理論密度:7.6g/cm3)。これは、真空(約10から約2トール)、または、不活性雰囲気(ArまたはN2)で行われる。1から5時間ゆっくりと冷却されるか、エージング熱処理が継続される。エージング熱処理温度は、約600℃から約1000℃である(時間は、例えば、約0.5から約8時間)。冷却は、エージング工程の前に実施されてもよいし、エージングは、ホットプレスの直後に、冷却工程を挟むことなく実施されてもよい。これは、真空(約10から約2トール)、または、不活性雰囲気(ArまたはN2)で行われる。これは、粒界拡散を最大化し、Dyまたは他のHREsのバルク拡散を最小化するための様々な温度および時間での多数工程を含んでもよい。
【0061】
[0065]部品について、熱間変形またはダイアプセットが行われる。粒子の調整(alignment)は、熱間変形またはダイアプセット中に実現されるので、部品形成中の磁界は、必要ではない。熱間変形温度は、約550℃から約900℃であり、特定の実施形態では、その範囲は、約700℃から約850℃である。
【0062】
[0066]実施例:混合されたNd2Fe14B+Dy2Fe14Bリボンの真空ホットップレス/ダイアプセットは、不均一なDy分布(混合されたDy2.37Fe+Nd2.7Fe14B粉末)を示す。この混合粉末ホットプレス法は、ホットプレス/ダイアプセットプロセスと並行して行われる。
【0063】
[0067]特定の実施形態では、Nd2Fe14Bベースの磁性材料の各粒子は、Co,Ga,Cu,Pr,Dy,Tbなどの他の元素を含有してもよい。粒子は、Dyおよび/またはTbが富化された粒子、例えば、Dy−Fe,Dy−Tb−Fe,Dy−Nd−Fe−B,Dy−Tb−Nd−Pr−Fe−Co−Ga−Bなどによって取り囲まれる。HREが富化された粒子は、Nd2Fe14Bベースの粒子とともに機械的に混合され粉砕されることができ、あるいは、PVD,CVDまたは他の方法(コアシェル)によって被覆されることができる。加熱およびプレスによってさらなる安定化が達成され、それによって、バルク拡散(D)が限定された粒界拡散(D
B)が促進される。
【0064】
[0068]コアシェル法は、個々にDy被覆されたNd2Fe14B粉末を必要とするが、混合粉末法は、機械的に混合された粉末を使用して実施可能である。各々の場合において、Dyリッチ領域同士間の固有長Lが発達する。この拡散長さは、DおよびD
Bとともに、重要な粒表面のDy富化を制御する上で非常に重要である。
【0065】
[0069]Nd−Fe−B永久磁石は、ホットプレスおよびエージング熱処理プロセスを使用して製造することができる。それには、所望の化学組成の粉末を製造する工程が含まれる。典型的なプロセスには、粉末の調整およびエージングのために、磁界下で秤量しプレスする工程が含まれる。特に、粉末は、磁化手段が備えられた第1プレスにおいて、部分的に圧縮され、磁気的に調節される。次に、第2プレスに移送され、そこでは、加熱され、高負荷でプレスされる。あるいは、そのように形成された部品は、さらにプレスされて、調整された粒構造を有する特定の形状を形成してもよい。この場合、磁界下での形成は必要ではない。
【0066】
ダイアプセット実施例
[0070]さらに別の実施例では、磁石を製造するのにダイアプセットが使用される。ダイアプセットの非限定的な方法では、粉末は、約20から約80パーセント変形される。特定の実施形態では、変形は、約40から約80パーセントである。特定の実施形態では、変形は、約50パーセントから約60パーセント、約60パーセントから約70パーセント、または、約70パーセントから約80パーセントである。通常のホットプレスでは、変形は、多くても10パーセントであり、通常、2〜3パーセント程度よりも少ない。ダイアプセット法の特定の実施例では、プレスに先立って磁界下で粉末を事前調整しなくてもよいように、高変形プロセスが使用される。そのような大きな変形が生じる場合(約20パーセントから約80パーセント)、粒は、磁界下にあるかのように、磁気的に調整される。したがって、この方法は、驚くべき利点を提供する。特定の実施形態では、粉末(単数または複数)は、ゆっくりと一緒にプレスされて、柱状などの形状を形成する。次に、この柱状物は、加熱され、柱状物がより平坦になるようにプレスされる。この形状は、変えることができ、粒は、再調整される。
【0067】
[0071]「好ましくは」、「通常は」、「典型的には」といった用語は、本明細書では、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定するためには使用されず、あるいは、特定の特徴が重要な意味を持ち、必須であり、または、特許請求の範囲に記載された発明の構造もしくは機能にとっていっそう重要であることを暗示するためには使用されないことに留意されたい。むしろ、これらの用語は、本発明の特定の実施形態において利用されることもあり、利用されないこともある、代替的または追加的な構成を単に強調する意図である。
【0068】
[0072]本発明を説明し、定義する目的で、「デバイス」との用語は、本明細書では、構成部品が他の構成部品と組み合わされるか否かにかかわりなく、複数の構成部品と個々の構成部品との組み合わせを表すために使用されることに留意されたい。例えば、本発明による「デバイス」は、電気化学的転換アセンブリ、または、本発明による電気化学的転換アセンブリが組み込まれた車両などを備え得る。
【0069】
[0073]本発明を説明し、定義する目的で、「実質的に」との用語は、本明細書では、定量的な比較、値、測定、または、他の表現に寄与することがある固有の不確定の程度を表すために使用されることに留意されたい。また、「実質的に」との用語は、本明細書では、問題となっている主題の基本的な機能が変わることなく、述べられた基準から代わり得る定量的な表現によって程度を表すために使用される。
【0070】
[0074]本発明を詳細に、また、特定の実施形態を参照して説明したが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、変形や変更が可能であることは明らかである。より具体的には、本発明の幾つかの態様が本明細書で、好ましい、または、特別な利点として特定されているが、本発明は、本発明のこれらの好ましい態様に必ずしも限定されないと考えられる。
【0071】
[0075]特定の実施形態では、方法、磁性材料、または、永久磁石のうちの1つ以上は、以下の1つ以上を含むことができ、あるいは、以下の1つ以上によって生産されることができる:約1から約2.5テスラ(T)の磁界;磁性材料の加熱工程と、約0.5から約2時間の間、約500℃から約850℃までの第2の範囲内で温度を維持する工程と、を備える磁性材料の加熱工程;約10から約2トールの真空;不活性ガスは、ArまたはN2を含むことができる;約30から約90メガパスカル(MPa)でのホットプレス;約50から約80メガパスカル(MPa)でのホットプレス;約1から約5時間の冷却;ジスプロシウムが約5から約80wt%の粉末材料;フレーク状の粉末;磁性材料の形成前の、被覆しなかったフレーク状の粉末の篩い分けによる除去工程;約5℃から約35℃の冷却;ホットプレスの後であって冷却の前のエージング熱処理(約10から約2トールの真空、かつ、ArまたはN2を含有する不活性雰囲気での約550℃から約1000℃で約0.5から約8時間の加熱を含む);方法は、第1の材料を第2の材料と混合した後に、第2の材料が約1から約100μmの層厚を形成する工程を備え得る;第1の材料と、約10から約50μmの層厚を形成する第2の材料との混合;第2の加熱は、約700℃から約850℃、または、約650℃から約750℃の範囲で行い得る;および/または、方法は、固体材料をプレスした後であって、固体材料を変形させる前に、真空かつ不活性雰囲気で約1時間から約5時間、固体材料を冷却する工程を備え得る。