(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の画像形成装置の第1実施形態を説明する。
図1により、第1実施形態の画像形成装置としてのプリンタ1の全体構造を説明する。
図1は、第1実施形態のプリンタ1の各構成要素の配置を説明するための正面図である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態における画像形成装置としてのプリンタ1は、装置本体Mと、画像情報に基づいてシート状の被転写材としての用紙Tにトナー画像を形成する画像形成部GKと、用紙Tを画像形成部GKに給紙すると共にトナー画像が形成された用紙Tを排紙する給排紙部KHとを有する。
装置本体Mの外形は、筐体としてのケース体BDにより構成される。
【0017】
図1に示すように、画像形成部GKは、像担持体(感光体)としての感光体ドラム2a、2b、2c、2dと、帯電部10a、10b、10c、10dと、露光ユニットとしてのレーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dと、現像器16a、16b、16c、16dと、トナーカートリッジ5a、5b、5c、5dと、トナー供給部6a、6b、6c、6dと、ドラムクリーニング部11a、11b、11c、11dと、除電器12a、12b、12c、12dと、中間転写ベルト7と、1次転写ローラ37a、37b、37c、37dと、2次転写ローラ8と、対向ローラ18と、定着装置9と、を備える。
【0018】
図1に示すように、給排紙部KHは、給紙カセット52と、用紙Tの搬送路Lと、レジストローラ対80と、複数のローラ又はローラ対と、排紙部50と、を備える。
【0019】
以下、画像形成部GK及び給排紙部KHの各構成について詳細に説明する。
まず、画像形成部GKについて説明する。
画像形成部GKにおいては、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に沿って順に、上流側から下流側に順に、帯電部10a、10b、10c、10dによる帯電、レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dによる露光、現像器16a、16b、16c、16dによる現像、中間転写ベルト7及び1次転写ローラ37a、37b、37c、37dによる1次転写、除電器12a、12b、12c、12dによる除電、及びドラムクリーニング部11a、11b、11c、11dによるクリーニングが行われる。
また、画像形成部GKにおいては、中間転写ベルト7、2次転写ローラ8及び対向ローラ18による2次転写、並びに定着装置9による定着が行われる。
【0020】
感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれは、円筒形状の部材からなり、感光体又は像担持体として機能する。感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれは、中間転写ベルト7の進行方向に対して直交する方向に延びる回転軸を中心に、
図1に示した矢印の方向に回転可能に配置される。感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれにおける表面には、静電潜像が形成され得る。
【0021】
帯電部10a、10b、10c、10dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に対向して配置される。帯電部10a、10b、10c、10dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面を一様に負(マイナス極性)又は正(プラス極性)に帯電させる。
【0022】
レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dは、露光ユニットとして機能するものであり、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面から離間して配置される。
【0023】
レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dそれぞれは、PC(パーソナルコンピュータ)等の外部機器から入力された画像情報に基づいて、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面を走査露光することで感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に静電潜像を形成することができる。
【0024】
現像器16a、16b、16c、16dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dにそれぞれ対応して設けられ、感光体ドラム2a、2b、2c、2dの表面に対向して配置される。現像器16a、16b、16c、16dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に形成された静電潜像に各色のトナーを付着させて、カラーのトナー画像を感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に形成する。現像器16a、16b、16c、16dそれぞれは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの色に対応する。現像器16a、16b、16c、16dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dの表面に対向配置された現像ローラ、トナー攪拌用の攪拌ローラ等を有して構成される。
【0025】
トナーカートリッジ5a、5b、5c、5dそれぞれは、現像器16a、16b、16c、16dそれぞれに対応して設けられており、現像器16a、16b、16c、16dそれぞれに対して供給される各色のトナーを収容する。トナーカートリッジ5a、5b、5c、5dそれぞれは、イエローのトナー、シアンのトナー、マゼンタのトナー、ブラックのトナーを収容する。
【0026】
トナー供給部6a、6b、6c、6dそれぞれは、トナーカートリッジ5a、5b、5c、5d及び現像器16a、16b、16c、16dにそれぞれ対応して設けられており、トナーカートリッジ5a、5b、5c、5dそれぞれに収容された各色のトナーを、現像器16a、16b、16c、16dそれぞれに対して供給する。
【0027】
中間転写ベルト7には、感光体ドラム2a、2b、2c、2dの表面に形成された各色のトナー画像が順次1次転写される。中間転写ベルト7は、従動ローラ35、駆動ローラからなる対向ローラ18、テンションローラ36等に掛け渡される。テンションローラ36が中間転写ベルト7を内側から外側に付勢するため、中間転写ベルト7には所定の張力が与えられる。
【0028】
中間転写ベルト7を挟んで感光体ドラム2a、2b、2c、2dと反対の側には、1次転写ローラ37a、37b、37c、37dそれぞれが対向して配置される。
【0029】
中間転写ベルト7における所定部分は、1次転写ローラ37a、37b、37c、37dそれぞれと、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれとにより挟み込まれる。この挟み込まれた所定部分は、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれにおける表面に押し当てられる。感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれと1次転写ローラ37a、37b、37c、37dそれぞれとの間で、それぞれ1次転写ニップN1a、N1b、N1c、N1dが形成される。1次転写ニップN1a、N1b、N1c、N1dそれぞれにおいて、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれに形成された各色のトナー画像が中間転写ベルト7に順次1次転写される。これにより、中間転写ベルト7には、フルカラーのトナー画像が形成される。
【0030】
除電器12a、12b、12c、12dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に対向して配置される。
【0031】
ドラムクリーニング部11a、11b、11c、11dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に対向して配置される。
【0032】
2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7に1次転写されたフルカラーのトナー画像を用紙Tに2次転写させる。2次転写ローラ8には、不図示の2次転写バイアス印加部により、中間転写ベルト7に形成されたフルカラーのトナー画像を用紙Tに転写させるための2次転写バイアスが印加される。
【0033】
2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7に対して当接したり離間したりする。具体的には、2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7に当接される当接位置と中間転写ベルト7から離間する離間位置とに移動可能に構成される。
【0034】
中間転写ベルト7における2次転写ローラ8とは反対側には、対向ローラ18が配置される。中間転写ベルト7における所定部分は、2次転写ローラ8と対向ローラ18とによって挟み込まれる。そして、用紙Tは中間転写ベルト7の外面(トナー画像が1次転写された面)に押し当てられる。中間転写ベルト7と2次転写ローラ8との間には、2次転写ニップN2が形成される。2次転写ニップN2において、中間転写ベルト7に1次転写されたフルカラーのトナー画像が用紙Tに2次転写される。
【0035】
定着装置9は、用紙Tに2次転写されたトナー画像を構成する各色のトナーを溶融及び加圧して、用紙Tに定着させる。
定着装置9の詳細については後述する。
【0036】
次に、給排紙部KHについて説明する。
図1に示すように、装置本体Mの下部には、用紙Tを収容する給紙カセット52が配置される。給紙カセット52には、用紙Tが載置される載置板60が配置される。載置板60に載置された用紙Tは、カセット給紙部51により搬送路Lに送り出される。カセット給紙部51は、載置板60上の用紙Tを取り出すための前送りコロ61と、用紙Tを1枚ずつ搬送路Lに送り出すための給紙ローラ対81とからなる重送防止機構を備える。
【0037】
用紙Tを搬送する搬送路Lは、カセット給紙部51から2次転写ニップN2までの第1搬送路L1と、2次転写ニップN2から定着装置9までの第2搬送路L2と、定着装置9から排紙部50までの第3搬送路L3と、第3搬送路L3を上流側から下流側へ搬送する用紙を、表裏反転させて第1搬送路L1に戻す戻り搬送路Lbと、を備える。
【0038】
また、第1搬送路L1の途中には、第1合流部P1及び第2合流部P2が設けられている。第3搬送路L3の途中には、第1分岐部Q1が設けられている。
【0039】
第1搬送路L1の途中(詳細には、第2合流部P2と2次転写ニップN2との間)には、用紙Tを検出するための用紙検出センサ(図示せず)と、用紙Tのスキュー(斜め給紙)補正や画像形成部GKにおけるトナー画像の形成と用紙Tの搬送のタイミングを合わせるためのレジストローラ対80とが配置される。
【0040】
第1搬送路L1における第1合流部P1と第2合流部P2との間には、中間ローラ対82が配置される。中間ローラ対82は、給紙ローラ対81の下流側に配置され、給紙ローラ対81より搬送される用紙Tを挟持して、レジストローラ対80へ搬送する。
【0041】
第1分岐部Q1には、整流部材58が設けられている。整流部材58は、定着装置9から搬出され第3搬送路L3を上流側から下流側に向けて搬送する用紙Tの搬送方向を、排紙部50に向かう方向に整流すると共に、排紙部50から第3搬送路L3を下流側から上流側に向けて搬送する用紙Tの搬送方向を、戻し搬送路Lbに向かう方向に整流する。
【0042】
第3搬送路L3の用紙搬送方向側の端部には、排紙部50が形成される。排紙部50は、装置本体Mの上方部に配置される。排紙部50は、用紙Tを装置本体Mの外部に排紙する。
【0043】
排紙部50における開口側には、排紙集積部M1が形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mにおける上面(外面)に形成される。なお、各搬送路の所定位置には用紙検出用のセンサが配置される。
【0044】
次に、第1実施形態のプリンタ1における特徴部分である定着装置9に係る構成について詳細に説明する。
図2は、第1実施形態のプリンタ1の定着装置9の各構成要素を説明するための断面図である。
図3は、
図2に示す定着装置9を用紙Tの搬送方向D1から視た図である。
図4は、
図2に示す定着装置9のベルトガイド部材77の構成を示す拡大図である。
【0045】
図2に示すように、定着装置9は、加熱回転ベルト9aと、加熱回転ベルト9aに圧接(当接)される加圧回転体9bと、加熱ユニット70と、ベルトガイド部材77と、押圧部材92と、温度センサ95と、を備える。
【0046】
加熱回転ベルト9aは、円環状(無端ベルト状)に形成される。加熱回転ベルト9aは、熱容量が小さいベルトにより形成される。加熱回転ベルト9aは、用紙幅方向D2に平行な第2回転軸J2を中心に第1周方向R1に回転可能に構成される。本実施形態においては、第1周方向R1に直交する方向D2を「用紙幅方向D2」ともいう。加熱回転ベルト9aは、後述する加熱ユニット70を用いることで、電磁誘導を利用した電磁誘導加熱(IH;induction heating)により発熱される。
加熱回転ベルト9aは、後述する加熱ユニット70の誘導コイル71(磁束発生部)により発生された磁束が通る領域に配置される。これにより、加熱回転ベルト9aは、加熱ユニット70の誘導コイル71により発生される磁束の磁路を形成する。
【0047】
加熱回転ベルト9aの内部には、後述する押圧部材92と、後述するベルトガイド部材77とが配置される。加熱回転ベルト9aは、所定の張力が付与された状態で、ベルトガイド部材77と、押圧部材92とに掛け渡される。
【0048】
加熱回転ベルト9aの内周面(内面)には、後述する加圧回転体9b側(加熱回転ベルト9aの内部の垂直方向の下方側)において押圧部材92が当接すると共に、後述するセンターコア部73側(加熱回転ベルト9aの内部の垂直方向の上方側)においてベルトガイド部材77が当接する。
押圧部材92及びベルトガイド部材77については後述する。
【0049】
加熱回転ベルト9aは、第1発熱層としての磁性金属層を有する。加熱回転ベルト9aには、加熱回転ベルト9aを突き抜けずに加熱回転ベルト9aを通る磁束により、電磁誘導によって渦電流(誘導電流)が発生する。加熱回転ベルト9aには、渦電流が流れることで、加熱回転ベルト9aが有する電気抵抗によりジュール熱が発生する。このように、加熱回転ベルト9aは、後述する加熱ユニット70からの磁束による電磁誘導を利用した電磁誘導加熱(IH)により発熱される。
【0050】
また、加熱回転ベルト9aの外周面には、低摩擦材としての表面離型層(不図示)が弾性層(不図示)を介して形成される。本実施形態においては、表面離型層には摩擦係数が低いPFA(テトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)のチューブを用いており、弾性層にはシリコンゴムを用いている。
【0051】
加圧回転体9bとしての加圧ローラは、円筒状(円環状)に形成される。加圧ローラ9bは、加熱回転ベルト9aの垂直方向下方側に加熱回転ベルト9aに対向して配置される。加圧ローラ9bは、用紙幅方向D2に平行な第1回転軸J1を中心に、加圧ローラ9bの周方向である第2周方向R2に回転可能に構成される。加圧ローラ9bは、第1回転軸J1方向に延びるように形成される。
【0052】
加圧ローラ9bは、その外周面が、加熱回転ベルト9aの外周面(外面)に当接するように配置される。加圧ローラ9bは、加熱回転ベルト9aを介して押圧部材92(後述)を押圧するように配置される。加圧ローラ9bは、押圧部材92との間に加熱回転ベルト9aの一部を挟み込んで、加熱回転ベルト9aとの間に定着ニップFを形成する。定着ニップFは、用紙Tを挟み込むと共に、用紙Tを搬送する。
【0053】
加圧ローラ9bは、加圧ローラ本体941と、第1回転軸J1と同軸の軸部材942(
図2参照)と、を有する。加圧ローラ本体941は、円筒状の芯金部材と、芯金部材の外周面に形成される弾性層と、弾性層の外周面に形成される離型層と、を有する。本実施形態においては、芯金部材には鉄を用いており、弾性層には発泡性のシリコンゴムを用いており、離型層にはPFAチューブを用いている。
【0054】
加圧ローラ9bの軸部材942には、加圧ローラ9bを回転駆動させる回転駆動部(不図示)が接続される。この回転駆動部により、加圧ローラ9bが所定速度で回転駆動されると共に、加圧ローラ9bの回転に従動して、加圧ローラ9bの外周面に当接する加熱回転ベルト9aが回転される。
【0055】
押圧部材92は、加熱回転ベルト9aの内部に配置される。押圧部材92は、加熱回転ベルト9aの内部の加圧ローラ9b側において、加熱回転ベルト9aの内周面に当接する当接部材921と、押圧支持部材922と、を有する。当接部材921は、断熱層と、低摩擦層と、を有する。本実施形態においては、断熱層には低熱伝導率のシリコンゴムを用いており、低摩擦層にはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いている。また、押圧支持部材922には、鉄又はSUSを用いている。
【0056】
押圧部材92は、用紙幅方向D2に長く延びて形成される。押圧部材92は、加熱回転ベルト9aを加圧ローラ9bとの間に挟み込んで、加熱回転ベルト9aと加圧ローラ9bとの間に定着ニップFを形成する。押圧部材92は、当接部材921の低摩擦層が加熱回転ベルト9aの内周面に摺動しながら接触する。
【0057】
定着ニップFに搬送される用紙Tは、定着装置9の通紙領域内を通過して搬送された場合にトナー画像が定着される。ここで、「通紙領域」とは、定着ニップFに搬送される用紙Tが加熱回転ベルト9aと加圧ローラ9bとに挟まれて通過する領域のことである。また、用紙Tが定着ニップFに搬送される場合における通紙領域よりも外側の領域である用紙Tが通過しない領域を「非通紙領域」ともいう。
【0058】
図3に示すように、用紙幅方向D2における最大長さの用紙Tが定着ニップFに搬送される場合における通紙領域として、最大通紙領域901を設定する。最大通紙領域901は、プリンタ1ごとにそれぞれ設定される。
【0059】
具体的には、加熱回転ベルト9aの外周面には、加熱回転ベルト9aにおける最大通紙領域901として、加熱側最大通紙領域901aが形成(設定)される。加圧ローラ9bの外周面には、加熱回転ベルト9aの加熱側最大通紙領域901aに対応して、加圧回転体9bにおける最大通紙領域901として、加圧側最大通紙領域901bが形成(設定)される。加熱側最大通紙領域901aにおける用紙幅方向D2に平行な方向の長さを、「最大通紙幅W1」という。
【0060】
また、用紙幅方向D2における最小長さの用紙Tが定着ニップFに搬送される場合における用紙Tが通過する通紙領域として、最小通紙領域903を設定する。
具体的には、加熱回転ベルト9aの外周面には、加熱回転ベルト9aにおける最小通紙領域903として、加熱側最小通紙領域903aが形成(設定)される。加圧ローラ9bの外周面には、加熱回転ベルト9aの加熱側最小通紙領域903aに対応して、加圧側最小通紙領域903bが形成(設定)される。加熱側最小通紙領域903aにおける用紙幅方向D2に平行な方向の長さを、「最小通紙幅W3」という。
【0061】
また、本実施形態の定着装置9においては、用紙幅方向D2における長さが最大長さよりも短く且つ最小長さ(最小幅)よりも長い長さである中間長さ(中間幅)の用紙Tが定着ニップFに搬送される場合における用紙Tが通過する通紙領域として、中間通紙領域902(加熱側中間通紙領域902a、加圧側中間通紙領域902b)を設定する。加熱側中間通紙領域902aにおける用紙幅方向D2に平行な方向の長さを、「中間通紙幅W2」という。
なお、用紙Tの通紙領域は、これに制限されず、各サイズの用紙Tに対応して適宜設定することができる。
【0062】
加熱ユニット70について説明する。
図2及び
図3に示すように、加熱ユニット70は、磁束発生部としての誘導コイル71と、磁性体コア部72と、を備える。誘導コイル71は、加熱回転ベルト9aの外周面から所定距離だけ離間して対向すると共に、加熱回転ベルト9aの外周面に沿って配置される。誘導コイル71は、平面視(
図2及び
図3における上方から視た場合)において、用紙幅方向D2に長い形状に線材を巻き回して形成される。
誘導コイル71は、用紙幅方向D2において加熱回転ベルト9aの長さよりも長く形成される。
【0063】
誘導コイル71は、銅製のリッツ線の線材を巻き回して形成される。誘導コイル71は、加熱回転ベルト9aの垂直方向の上方側の略半周の外周面に対向して配置される。
図2及び
図3に示すように、誘導コイル71は、用紙幅方向D2に延びるように形成される中央領域718を囲むように線材を巻き回して形成される。
本実施形態においては、誘導コイル71は、耐熱性の樹脂材料により形成された支持部材(図示せず)の上に、線材が巻き回されて固定される。
【0064】
誘導コイル71は、不図示の誘導加熱用回路部に接続される。誘導コイル71には、誘導加熱用回路部から所定周波数の交流電流が印加される。誘導コイル71は、誘導加熱用回路部から交流電流が印加されることにより、加熱回転ベルト9aの磁性金属層(第1発熱層)を発熱させるための磁束を発生させる。例えば、誘導コイル71には、周波数が30kHz程度の交流電流が印加される。
【0065】
誘導コイル71により発生された磁束は、加熱回転ベルト9a及び磁性体コア部72(後述)により形成された磁束の経路である磁路に導かれる。
【0066】
磁路は、誘導コイル71により発生された磁束が周回方向R3に周回するように、加熱回転ベルト9a及び磁性体コア部72(後述)により形成される。周回方向R3とは、誘導コイル71の内周縁711Aの内側と外周縁711Bの外側とを通り誘導コイル71の線材の部分を囲むように周回する方向である。誘導コイル71により発生された磁束は、磁路を通過する。
【0067】
誘導コイル71により発生される磁束は、誘導加熱用回路部(不図示)から所定周波数の交流電流が印加されるため、交流電流のプラス又はマイナスへの周期的な変動により、その大きさ及び方向が変化する。加熱回転ベルト9aには、この磁束の変化により誘導電流(渦電流)が発生する。
【0068】
磁性体コア部72は、
図2に示すように、周回方向R3に周回する磁路を形成する。磁性体コア部72は、誘導コイル71により発生される磁束が通る領域に配置されると共に、強磁性材料を主体として形成されるため、誘導コイル71により発生される磁束の経路である磁路を形成する。
【0069】
磁性体コア部72は、上部コア部75と、一対のサイドコア部76、76と、を有する。上部コア部75は、センターコア部73と、複数対のアーチコア部74とにより一体的に形成される。センターコア部73及び複数対のアーチコア部74、74は、用紙幅方向D2の所定位置において、磁路の周回方向R3に沿って連続して一体的に並んで形成される。
【0070】
センターコア部73は、用紙幅方向D2に視た場合に、加熱回転ベルト9aの垂直方向の上方側(中央領域718の近傍)において、加熱回転ベルト9aの用紙Tの搬送方向D1の略中央に配置される。
センターコア部73は、
図2に示すように、磁路の周回方向R3において、後述するアーチコア部74と加熱回転ベルト9aとの間の磁路を形成する。センターコア部73は、中央領域718の近傍(誘導コイル71の内周縁711Aに配置される線材の近傍)に配置される。
【0071】
センターコア部73は、加熱回転ベルト9aの外周面から所定距離だけ離間して加熱回転ベルト9aの外周面に対向する。センターコア部73は、誘導コイル71の線材の部分を挟まずに加熱回転ベルト9aの外周面に対向する第1対向面731を有する。
【0072】
また、
図3に示すように、センターコア部73は、用紙幅方向D2に長い略直方体形状に形成される。センターコア部73は、用紙幅方向D2において、最大通紙領域901に対応する領域よりも長く形成される。
【0073】
複数対のアーチコア部74、74それぞれは、誘導コイル71の線材の部分を挟んで加熱回転ベルト9aの外周面に対向して配置される。複数対のアーチコア部74、74それぞれは、加熱回転ベルト9aの周方向に沿うように延びるアーチ状に形成される。
【0074】
複数対のアーチコア部74、74は、センターコア部73に対して、搬送方向D1の下流側及び上流側に対をなしてそれぞれ配置される。複数対のアーチコア部74、74それぞれは、センターコア部73の上方側から搬送方向D1の上流側及び下流側それぞれに延びるように形成される。アーチコア部74は、水平部742と、傾斜部743とを有する。
複数対のアーチコア部74、74それぞれは、
図2に示すように、磁路の周回方向R3において、誘導コイル71に対して加熱回転ベルト9aとは反対側(誘導コイル71の外側)の磁路を形成する。
【0075】
また、複数のアーチコア部74それぞれは、
図3に示すように、用紙幅方向D2に所定距離だけ離間して配置される。
複数のアーチコア部74それぞれは、用紙幅方向D2に離間して周回方向R3において周回する複数の磁路を形成する。
【0076】
一対のサイドコア部76、76それぞれは、
図2に示すように、磁路の周回方向R3において、加熱回転ベルト9aとアーチコア部74との間における磁路を形成する。一対のサイドコア部76、76それぞれは、磁路の周回方向R3において、複数対のアーチコア部74、74それぞれに並んで配置される。
【0077】
一対のサイドコア部76、76それぞれは、誘導コイル71の外周縁711Bの近傍に配置される。一対のサイドコア部76、76それぞれは、加熱回転ベルト9aの外周面から所定距離だけ離間して加熱回転ベルト9aの外周面に対向して配置される。一対のサイドコア部76、76それぞれは、誘導コイル71における線材の部分を挟まずに加熱回転ベルト9aの外周面に対向する第2対向面761を有する。また、一対のサイドコア部76、76それぞれは、
図3に示すように、用紙幅方向D2に長い略直方体形状に形成される。
一対のサイドコア部76、76それぞれは、
図3に示すように、用紙幅方向D2において、最大通紙領域901に対応する領域よりも長く形成される。
【0078】
次に、ベルトガイド部材77について説明する。ベルトガイド部材77は、加熱回転ベルト9aの内部に配置される。ベルトガイド部材77は、加熱回転ベルト9aの内周面側に加熱回転ベルト9aを挟んで誘導コイル71に対向して配置される。
ベルトガイド部材77は、用紙幅方向D2に見た場合に、断面が円弧状で板状に形成される。ベルトガイド部材77は、加熱回転ベルト9aの垂直方向の上方側の略3分の1において、加熱回転ベルト9aの内周面に当接する。ベルトガイド部材77は、用紙幅方向D2に長く形成される。ベルトガイド部材77は、誘導コイル71に対して加熱回転ベルト9aを位置決めすると共に、第2回転軸J2を中心に回転する加熱回転ベルト9aの回転をガイドする。
【0079】
図3及び
図4に示すように、ベルトガイド部材77は、基材層771と、基材層771の加熱回転ベルト9a側に配置される断熱層772と、を有する。つまり、ベルトガイド部材77は、加熱回転ベルト9a側から順に、断熱層772、基材層771が積層されて構成される。基材層771は、剛性材料により形成される。本実施形態においては、基材層771は、例えば、厚みが1mm程度のSUS304等の非磁性金属材料により形成される。
【0080】
また、断熱層772は、断熱材料により形成される。本実施形態においては、断熱層772は、例えば、厚みが200μm程度のグラファイトシートにより形成される。グラファイトシートは、異方性熱伝導材料の一種である。本実施形態におけるグラファイトシートにより形成される断熱層772の厚み方向における熱伝導率は、断熱層772が延在する方向における熱伝導率よりも小さい。例えば、断熱層772としては、厚みが200μmのグラファイトシートであって、厚み方向への熱伝導率が3W/m・Kであり、かつ、延在方向への熱伝導率が400W/m・Kであるグラファイトシートを用いることができる。
【0081】
温度センサ95は、加熱回転ベルト9aの外周面の温度を検知する。温度センサ95は、加熱回転ベルト9aの外周面に対向して非接触の状態で配置される。
【0082】
次に、本実施形態の定着装置9を含むプリンタ1の動作について説明する。
まず、プリンタ1は、電源がONされると、電源部(不図示)から帯電部10a、10b、10c、10d、レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4d、現像器16a、16b、16c、16d、1次転写ローラ37a、37b、37c、37d、2次転写ローラ8、プリンタ制御部(不図示)、定着装置9それぞれに電力が供給される。そして、プリンタ制御部からの制御信号により、帯電部10a、10b、10c、10d、レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4d、現像器16a、16b、16c、16d、1次転写ローラ37a、37b、37c、37d、2次転写ローラ8、中間転写ベルト7、定着装置9それぞれの動作が制御される。
【0083】
プリンタ1の受け付け部(不図示)は、プリンタ1の電源がONの状態において、例えばプリンタ1の外部に配置されている操作部(不図示)が操作されたことに基づいて発生する画像形成指示情報を受け付ける。
【0084】
次に、プリンタ1は、印刷動作を開始する。
具体的には、レジストローラ対80から送り出された用紙Tは、第1搬送路L1を通って中間転写ベルト7と転写ローラ8との間の転写ニップN2へ搬送される。このように用紙Tが転写ニップN2ヘ搬送されるとき、まず、帯電部10a、10b、10c、10dそれぞれが、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面を一様に負(マイナス極性)又は正(プラス極性)に帯電させると共に、レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dが、レーザ光源(不図示)から感光体ドラム2a、2b、2c、2dに向けてレーザ光を照射し、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面を走査露光して電荷を除去する。これにより、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に静電潜像が形成される。
【0085】
続けて、現像器16a、16b、16c、16dそれぞれが、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に形成された静電潜像に各色のトナーを付着させて、カラーのトナー画像を感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に形成する。ついで、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に形成された各色のトナー画像が中間転写ベルト7に順次1次転写される。これにより、中間転写ベルト7には、フルカラーのトナー画像が形成される。
【0086】
続いて、中間転写ベルト7と転写ローラ8との間の転写ニップN2を通過する用紙Tにトナー画像が2次転写される。トナー画像が転写された用紙Tは、第2搬送路L2を通って定着装置9へ向けて搬送される。具体的には、トナー画像が形成された用紙Tは、定着装置9の加熱回転ベルト9aと加圧ローラ9bとにより形成される定着ニップFヘ向けて搬送される。
【0087】
そして、定着装置9の駆動制御部への電力の供給が開始されると、回転駆動部(不図示)により加圧ローラ9bが回転駆動される。加圧ローラ9bの回転駆動に伴って加熱回転ベルト9aは、従動して回転される。
【0088】
次に、定着装置9は、発熱動作を開始する。
これにより、誘導コイル71には、誘導加熱用回路部(不図示)から交流電流が印加される。誘導コイル71は、加熱回転ベルト9aを発熱させるための磁束を発生させる。
【0089】
誘導コイル71により発生された磁束は、加熱回転ベルト9a、センターコア部73、複数対のアーチコア部74、74及び一対のサイドコア部76、76により形成される磁路において、誘導コイル71の内周縁711Aの内側と外周縁711Bの外側とをつなぐように周回方向R3、R3に通過(周回)する。
【0090】
そして、磁路を通過する磁束の大きさと方向が変化することにより、加熱回転ベルト9aの磁性金属層(第1発熱層)には、電磁誘導により渦電流(誘導電流)が発生する。加熱回転ベルト9aには、渦電流が流れることで、加熱回転ベルト9aが有する電気抵抗によりジュール熱が発生して加熱回転ベルト9aが発熱される。
【0091】
次に、加熱回転ベルト9aの回転により、加熱回転ベルト9aの電磁誘導加熱(IH)により発熱された部分(磁性金属層)は、定着装置9の加熱回転ベルト9aと加圧ローラ9bとにより形成される定着ニップFに向けて順次移動される。定着装置9は、定着ニップFにおいて、所定の温度になるように、誘導加熱用回路部(不図示)を制御している。
【0092】
そして、トナー画像が形成された用紙Tが、定着装置9の定着ニップFに導入されることにより、定着ニップFにおいて、トナーが溶融し、トナーが用紙Tに定着される。
【0093】
ここで、加熱回転ベルト9aの内周面側には、加熱回転ベルト9aの内周面に当接する円弧状のベルトガイド部材77が配置されている。そのため、ベルトガイド部材77は、加熱回転ベルト9aの回転軌道を位置決めすると共に加熱回転ベルト9aの回転をガイドしている。これにより、ベルトガイド部材77は、加熱回転ベルト9aの回転を安定させることができる。
【0094】
また、ベルトガイド部材77は、加熱回転ベルト9aの内周面に当接することで、加熱回転ベルト9aの垂直方向の上方側の磁性金属層の部分を位置決めしている。これにより、加熱回転ベルト9aを通る磁束の強度が安定して、加熱回転ベルト9aの発熱効率を安定させることができる。
【0095】
また、ベルトガイド部材77は、剛性材料により形成される基材層771と、基材層771の加熱回転ベルト9a側に配置される断熱層772と、を有している。そのため、ベルトガイド部材77としての十分な剛性(機械的な強度)を保ちつつ、加熱回転ベルト9aの磁性金属層が発熱しても、加熱回転ベルト9aの熱が基材層771へ移動(伝達)することが低減される。これにより、基材層771が熱容量の大きい材料から形成されていても、定着装置9の立ち上がり時間を短縮することができる。
【0096】
また、ベルトガイド部材77の断熱層772が、異方性熱伝導材料であるグラファイトシートにより形成されている。そのため、断熱層772が延在する用紙幅方向D2及び第1周方向R1への熱伝導率は、厚み方向への熱伝導率よりも大きい。これにより、小サイズの用紙Tを連続印刷した後に大サイズの用紙Tを印刷する場合に、用紙幅方向D2へ熱が伝達され易いため、小サイズの用紙Tの非通紙領域の過度の温度上昇を抑制して、加熱回転ベルト9aの用紙幅方向D2の温度むらを低減することができる。その結果、画像不良を低減することができる。
【0097】
第1実施形態のプリンタ1によれば、例えば、次のような効果が奏される。
本実施形態のプリンタ1においては、ベルトガイド部材77は、加熱回転ベルト9aの内面側に加熱回転ベルト9aを挟んで誘導コイル71に対向して配置され、加熱回転ベルト9aの内周面に当接する。また、ベルトガイド部材77は、基材層771と、基材層771の加熱回転ベルト9a側に配置される断熱層772と、を有する。そのため、加熱回転ベルト9aの磁性金属層(第1発熱層)が発熱した場合に、加熱回転ベルト9aの熱は、ベルトガイド部材77の基材層771へ移動(伝達)されることが低減される。これにより、加熱回転ベルト9aの回転を安定させると共に加熱回転ベルト9aの発熱効率を安定させつつ、定着装置9の立ち上がり時間を短縮することができる。従って、定着装置9の消費電力の節減を図ることができる。
【0098】
また、本実施形態のプリンタ1においては、ベルトガイド部材77の断熱層772の厚み方向への熱伝導率は、該断熱層772が延在する方向への熱伝導率よりも小さい。断熱層772は、異方性熱伝導材料の1つであるグラファイトシートにより形成されている。そのため、加熱回転ベルト9aの用紙幅方向D2における温度むらの発生を低減することができる。これにより、小サイズの用紙Tを連続印刷後に大サイズの用紙Tを印刷する際、用紙幅方向D2への熱伝導が良好であるため、画像不良を低減することができる。
【0099】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態については、主として、第1実施形態とは異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様な構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第2実施形態において特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用又は援用される。
【0100】
図5は、第2実施形態のプリンタ1の定着装置9のベルトガイド部材77の拡大図である。
第2実施形態においては、加熱回転ベルト9aは、第1発熱層としての磁性金属層を主体として構成される。加熱回転ベルト9aの磁性金属層は、例えば、電鋳ニッケル等の強磁性材料により形成される。加熱回転ベルト9aの磁性金属層(第1発熱層)は、磁界が浸透する深さである表皮深さ(磁界浸透深さ)よりも薄く構成される。
【0101】
また、第2実施形態におけるベルトガイド部材77は、ベルトガイド部材77の断熱層772よりも加熱回転ベルト9a側に、加熱回転ベルト9aを通過した磁束により発熱される第2発熱層773を更に有している。つまり、第2実施形態におけるベルトガイド部材77は、加熱回転ベルト9a側から順に、第2発熱層773、断熱層772、基材層771が積層されて構成される。第2発熱層773は、例えば、厚さ100μm程度のニッケルやSUS403等の磁性金属により形成される。
【0102】
ここで、加熱回転ベルト9aの磁性金属層(第1発熱層)の表皮深さ(磁界浸透深さ)について簡単に説明する。
表皮深さとは、渦電流密度の値が加熱回転ベルト9aの磁性金属層の表面の値の1/e(e:自然対数の底)になる加熱回転ベルト9aの磁性金属層の表面からの深さをいう。渦電流は、磁性金属層の表面からの深さが表皮深さよりも深い位置においては、ほとんど流れない。これにより、誘導コイル71により発生された磁束は、表皮深さよりも深い位置には達しない。従って、磁性金属層の厚さが表皮深さよりも厚い場合には、誘導コイル71により発生された磁束は、磁性金属層を突き抜けずに、加熱回転ベルト9aの磁性金属層に沿って導かれる。
【0103】
一方、磁性金属層の厚さが表皮深さよりも薄い場合には、誘導コイル71により発生された磁束は、加熱回転ベルト9aの磁性金属層を突き抜ける。加熱回転ベルト9aの磁性金属層を突き抜ける磁束の量は、磁性金属層の厚さが表皮深さに比べて薄いほど多くなる。加熱回転ベルト9aの磁性金属層の厚さは、表皮深さよりも薄い範囲内で、適宜設定される。
【0104】
本実施形態においては、加熱回転ベルト9aの磁性金属層(第1発熱層)の厚さは、表皮深さが43.7μmであるのに対して、40μmであり、誘導コイル71に発生された磁束の約50%の磁束が加熱回転ベルト9aを突き抜けるように設定されている。
【0105】
第2実施形態のプリンタ1の定着装置9においては、誘導コイル71により発生された磁束の一部が加熱回転ベルト9aの磁性金属層(第1発熱層)を突き抜け、その突き抜けた磁束によりベルトガイド部材77の第2発熱層773が発熱される。これにより、加熱回転ベルト9aの磁性金属層及びベルトガイド部材77の第2発熱層773を発熱させることができる。従って、定着装置9の発熱効率を向上させることができる。従って、定着装置9の立ち上がり時間をより短縮することができる。
【0106】
第2実施形態のプリンタ1によれば、第1実施形態で示した効果の他に、次のような効果が奏される。
第2実施形態のプリンタ1の定着装置9においては、加熱回転ベルト9aの磁性金属層(第1発熱層)は、表皮深さ(磁界浸透深さ)よりも薄く構成される。さらに、第2実施形態におけるベルトガイド部材77は、ベルトガイド部材77の断熱層772よりも加熱回転ベルト9a側に第2発熱層773を有している。そのため、誘導コイル71により発生された磁束により、加熱回転ベルト9aの磁性金属層及びベルトガイド部材77の第2発熱層773を発熱させることができる。これにより、加熱回転ベルト9aを効率よく加熱することができる。従って、第1実施形態の定着装置9よりも立ち上がり時間を短縮することができ、消費電力の節減を一層図ることができる。
【0107】
特に、高速カラープリンタにおいては、各色のトナー(イエローのトナー、シアンのトナー、マゼンタのトナー、ブラックのトナー)を溶融させるための熱量が必要となり、且つ、定着装置9の立ち上がり時間を短縮することも必要となる。そのため、加熱回転ベルト9aを効率よく加熱することができるという効果は、大きい。
【0108】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態については、主として、第1実施形態とは異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様な構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第3実施形態において特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用又は援用される。
【0109】
図6は、第3実施形態のプリンタ1における定着装置9のベルトガイド部材77の拡大図である。
第3実施形態におけるベルトガイド部材77は、最も加熱回転ベルト9a側に配置される表層774を有している。つまり、第3実施形態におけるベルトガイド部材77は、加熱回転ベルト9a側から順に、表層774、断熱層772、基材層771が積層されて構成される。表層774は、表面が加熱回転ベルト9aの内周面に当接する。表層774の表面は、低摩擦係数材料、例えば、PTFEにより厚さ10μm程度に形成される。
【0110】
第3実施形態のプリンタ1によれば、第1実施形態で示した効果の他に、次のような効果が奏される。
第3実施形態のプリンタ1の定着装置9においては、ベルトガイド部材77は、加熱回転ベルト9aの内周面に当接する低摩擦係数材料により形成された表層774が設けられている。そのため、加熱回転ベルト9aとベルトガイド部材77との間の摩擦抵抗を低減することができる。これにより、加熱回転ベルト9aをスムーズに回転させることができる。
【0111】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態については、主として、第1実施形態とは異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様な構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第4実施形態において特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用又は援用される。
【0112】
図7は、第4実施形態のプリンタ1における定着装置9のベルトガイド部材77の拡大図である。
第4実施形態においては、加熱回転ベルト9aの外周面で基材が電鋳ニッケル等の強磁性材料により形成された第1発熱層としての磁性金属層が、第2実施形態と同様に、表皮深さ(磁界浸透深さ)よりも薄く構成される。
【0113】
また、第4実施形態におけるベルトガイド部材77は、ベルトガイド部材77の断熱層772よりも加熱回転ベルト9a側に、第2実施形態と同様に、加熱回転ベルト9aを通過した磁束により発熱される第2発熱層773を有すると共に、第3実施形態と同様に、最も加熱回転ベルト9a側に配置される表層774を有している。つまり、第4実施形態におけるベルトガイド部材77は、加熱回転ベルト9a側から順に、表層774、第2発熱層773、断熱層772、基材層771が積層されて構成される。
第2発熱層773は、例えば、ニッケルやSUS403等の磁性金属により厚さ100μm程度に形成され、表層774は、摩擦係数の小さい材料、例えば、PTFEにより厚さ10μm程度に形成される。
【0114】
第4実施形態のプリンタ1によれば、第1実施形態で示した効果の他に、第2実施形態及び第3実施形態で示した効果が奏される。これにより、第4実施形態のプリンタ1においては、高速カラープリンタの場合であっても、加熱回転ベルト9aを効率よく加熱することができる。
【0115】
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく種々の形態で実施することができる。
【0116】
例えば、前述の実施形態においては、ベルトガイド部材77の基材層771を形成する剛性材料として、SUS等の非磁性金属材料を用いたが、非磁性金属材料に限られず、ガラス繊維入り強化プラスチック(FRP)や耐熱高強度樹脂を用いてもよい。
また、ベルトガイド部材77の断熱層772を形成する断熱材料としては、グラファイトシートに限られず、耐熱断熱樹脂やシリコンゴムを用いてもよい。
【0117】
本発明の画像形成装置の種類は、特に限定がなく、プリンタ以外に、コピー機、ファクシミリ、又はこれらの複合機などであってもよい。
シート状の被転写材は、用紙に制限されず、例えば、フィルムシートであってもよい。