特許第5744302号(P5744302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社NTTファシリティーズの特許一覧

<>
  • 特許5744302-構造物の振動測定方法 図000002
  • 特許5744302-構造物の振動測定方法 図000003
  • 特許5744302-構造物の振動測定方法 図000004
  • 特許5744302-構造物の振動測定方法 図000005
  • 特許5744302-構造物の振動測定方法 図000006
  • 特許5744302-構造物の振動測定方法 図000007
  • 特許5744302-構造物の振動測定方法 図000008
  • 特許5744302-構造物の振動測定方法 図000009
  • 特許5744302-構造物の振動測定方法 図000010
  • 特許5744302-構造物の振動測定方法 図000011
  • 特許5744302-構造物の振動測定方法 図000012
  • 特許5744302-構造物の振動測定方法 図000013
  • 特許5744302-構造物の振動測定方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5744302
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】構造物の振動測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 1/00 20060101AFI20150618BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   G01H1/00 Z
   G01H17/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-244286(P2014-244286)
(22)【出願日】2014年12月2日
【審査請求日】2014年12月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 献一
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛史
(72)【発明者】
【氏名】千葉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉海 伸祐
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−207827(JP,A)
【文献】 特開平05−099648(JP,A)
【文献】 特開2008−281435(JP,A)
【文献】 特開2014−016286(JP,A)
【文献】 特開2007−321874(JP,A)
【文献】 特開2008−039507(JP,A)
【文献】 特開2004−251678(JP,A)
【文献】 特開2012−137339(JP,A)
【文献】 特開平10−318725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00−17/00
G01M 5/00−7/00
G01B 11/00
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の水平方向の二軸方向の変位量をそれぞれ測定する変位計を前記構造物の同一階に同一平面内において水平方向に間隔をあけて複数設置し、
前記複数の変位計がそれぞれ設置された箇所においてそれぞれ測定した前記構造物の水平方向の二軸方向の変位量と、該複数の変位計どうしの水平方向の間隔と、から前記構造物の高さ方向に延びる軸回り方向のねじれ振動を算出することを特徴とする構造物の振動測定方法。
【請求項2】
前記複数の変位計は、前記構造物の鉛直方向の変位量をそれぞれ測定可能に構成されていて、
前記複数の変位計がそれぞれ設置された箇所においてそれぞれ測定した前記構造物の鉛直方向の変位量と、該複数の変位計どうしの水平方向の間隔と、から前記構造物のロッキング振動を算出することを特徴とする請求項1に記載の構造物の振動測定方法。
【請求項3】
構造物の鉛直方向の変位量をそれぞれ測定する変位計を前記構造物の同一階に同一平面内において水平方向に間隔をあけて複数設置し、
前記複数の変位計がそれぞれ設置された箇所においてそれぞれ測定した前記構造物の鉛直方向の変位量と、該複数の変位計どうしの水平方向の間隔と、から前記構造物のロッキング振動を算出することを特徴とする構造物の振動測定方法。
【請求項4】
前記複数の変位計は、前記構造物の縁部近傍で、平面視において前記構造物の剛心に対して対称となる位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造物の振動測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の振動測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震などによって生じる構造物の変位量(振動)を測定する変位計が知られている。このような変位計として、加速度計や罫書き計などが知られている。
また、変位計として、特許文献1には、構造物に固定された支持部と、支持部と水平方向に相対変位可能な支持体と、支持部と支持体との相対変位量を測定するセンサとを備え、測定された支持部と支持体との相対変位量から構造物の絶対変位量を算出するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−019748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、地震などによって生じる構造物のねじれ振動やロッキング振動についても、変位計を用いて容易に測定できる構造物の振動測定方法が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、地震などによって生じる構造物のねじれ振動やロッキング振動を容易に測定できる構造物の振動測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る構造物の振動測定方法では、構造物の水平方向の二軸方向の変位量をそれぞれ測定する変位計を前記構造物の同一階に同一平面内において水平方向に間隔をあけて複数設置し、前記複数の変位計がそれぞれ設置された箇所においてそれぞれ測定した前記構造物の水平方向の二軸方向の変位量と、該複数の変位計どうしの水平方向の間隔と、から前記構造物の高さ方向に延びる軸回り方向のねじれ振動を算出することを特徴とする。
【0007】
本発明では、水平方向に間隔をあけて設置された複数の変位計が構造物の水平方向の変位量をそれぞれ測定できるため、変位計によって測定された変位量と、変位計が設置された位置をもとに構造物のねじれ振動を容易に測定することができる。
【0008】
また、本発明に係る構造物の振動測定方法では、前記複数の変位計は、前記構造物の鉛直方向の変位量をそれぞれ測定可能に構成されていて、前記複数の変位計がそれぞれ設置された箇所においてそれぞれ測定した前記構造物の鉛直方向の変位量と、該複数の変位計どうしの水平方向の間隔と、から前記構造物のロッキング振動を算出することが好ましい。
このような構成とすることにより、水平方向に間隔をあけて設置された複数の変位計が構造物の鉛直方向の変位量をそれぞれ測定できるため、変位計によって測定された変位量と、変位計が設置された位置をもとに構造物のロッキング振動も容易に測定することができる
【0009】
本発明では、構造物の鉛直方向の変位量をそれぞれ測定する変位計を前記構造物の同一階に同一平面内において水平方向に間隔をあけて複数設置し、前記複数の変位計がそれぞれ設置された箇所においてそれぞれ測定した前記構造物の鉛直方向の変位量と、該複数の変位計どうしの水平方向の間隔と、から前記構造物のロッキング振動を算出することを特徴とする。
【0010】
本発明では、水平方向に間隔をあけて設置された複数の変位計が構造物の鉛直方向の変位量をそれぞれ測定できるため、変位計によって測定された変位量と、変位計が設置された位置をもとに構造物のロッキング振動を容易に測定することができる。
また、本発明では、前記複数の変位計は、前記構造物の縁部近傍で、平面視における前記構造物の剛心に対して対称となる位置にそれぞれ配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水平方向に間隔をあけて設置された複数の変位計が構造物の水平方向の変位量をそれぞれ測定できるため、変位計によって測定された変位量と、変位計が設置された位置をもとに構造物のねじれ振動を容易に測定することができる。
また、本発明によれば、水平方向に間隔をあけて設置された複数の変位計が構造物の鉛直方向の変位量をそれぞれ測定できるため、変位計によって測定された変位量と、変位計が設置された位置をもとに構造物のロッキング振動を容易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明の第1実施形態による構造物の振動測定方法に使用する変位計の構造物に対する配置を示す平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
図2】第1実施形態による構造物の振動測定方法に使用する変位計の一例を示す正面図である。
図3】(a)は図2の下面図、(b)は図2のB−B線断面図である。
図4】変位量算出方法を説明するフローチャートである。
図5】第1実施形態における構造物のねじれ振動を説明する図である。
図6】(a)は変位計1Aが測定したY方向の変位量の時刻歴を示すグラフ、(b)は変位計1Bが測定したY方向の変位量の時刻歴を示すグラフである。
図7】構造物のねじれ振動の時刻歴を示すグラフである。
図8】第1実施形態における構造物のロッキング振動を説明する図である。
図9】(a)は変位計1Aの鉛直方向の変位量の時刻歴を示すグラフ、(b)は変位計1Bの鉛直方向の変位量の時刻歴を示すグラフである。
図10】本発明の第2実施形態による構造物の振動測定方法に使用する変位計の構造物に対する配置を示す平面図である。
図11】第2実施形態における構造物のねじれ振動を説明する図である。
図12】本発明の実施形態の変形例によるロッキング振動を測定するための変位計の設置の様子を説明する図である。
図13】本発明の実施形態の他の変形例によるロッキング振動を測定するための変位計の設置の様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による構造物の振動測定方法について、図1乃至図8に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態による構造物の振動測定方法では、構造物11に2つの変位計1A,1Bを間隔をあけて設置し、2つの変位計1A,1Bがそれぞれ測定した構造物11の変位量から構造物11のねじれ振動およびロッキング振動を算出している。なお、構造物11のねじれ振動およびロッキング振動の算出は算出部(不図示)が行っている。
【0014】
構造物11は、免震構造物で、地盤面近傍の免震層11aには、積層ゴム支承や転がり支承などの公知のアイソレータ14が設けられている。なお、図示していないが、免震層11aにはダンパなどの装置が適宜設けられている。また、構造物11は、平面視において略長方形状に形成されている。ここで、構造物11の平面視における略長方形の辺は、X方向およびY方向に延びているものとする。なお、本実施形態では、構造物11は、免震層11a以外は剛体変位するものとしている。
2つの変位計1A,1Bは、構造物11の免震層11aの床面12に、X方向に間隔をあけ、Y方向の位置は略同じとなるように配置されている。2つの変位計1A,1Bは、構造物11のX方向の両端部近傍で、構造物のY方向の略中央部に配置されている。なお、変位計1Aと変位計1Bとの設置間隔はLとする。
また、2つの変位計1A,1Bは、同じ構成となっている。
【0015】
図2および図3に示すように、変位計1A,1Bは、構造物11の床面12に沿って移動可能な支持体2と、支持体2に設置されて床面12に沿った方向(水平方向、X方向およびY方向)の変位量をそれぞれ測定可能な3つの第1変位測定部4,4,4と、支持体2に設置されて鉛直方向(Z方向)の変位量をそれぞれ測定可能な3つの第2変位測定部8,8,8と、3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8の駆動を行うスイッチ部5と、3つの第1変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した変位量および3つの第2変位測定部8,8,8がそれぞれ測定した変位量のデータの処理を行う処理部(不図示)と、3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8に電源を供給可能な電池(不図示)と、を備えている。
【0016】
支持体2は、板面が上下方向を向き平面視において略正三角形状に形成された第1板部21と、第1板部21の上部に間隔をあけて第1板部21と平行に配置され外形が第1板部と同じ形状に形成された第2板部と、第1板部21と第2板部22とを鉛直方向に相対移動可能に連結する連結部23と、連結された第1板部21および第2板部22を床面12に沿って移動可能に支持する3つの移動部24,24,24と、を有している。
【0017】
第1板部21には、平面視における中央部に上下方向に貫通する平面視略円形状の孔部21aが形成されている。また、第1板部21の下部には、3つの第1変位測定部4,4,4および3つの移動部24,24,24が配置され、第1板部21の下面と床面12との間には間隔が設けられている。
【0018】
移動部24は、軸方向を上下方向とし上端部が第1板部21の下面に固定された筒状部24aと、筒状部24a内に挿入された状態で床面12と当接し床面12に沿って転がって移動可能な移動用球体24bと、を有している。筒状部24aは、下端部が床面12と当接しないように配置されている。
また、本実施形態では、3つの移動部24,24,24は、第1板部21に対して第1板部21の中心21cの周りに周方向に等しく間隔をあけて配置されている。そして、3つの移動部24,24,24は、第1板部21の平面視における略正三角形の3つの角部21b,21b,21b近傍にそれぞれ配置され、角部21b,21b,21bと第1板部21の中心21cとを結ぶ線上に配置されている。
【0019】
第2板部22は、平面視における略正三角形の3つの角部22b,22b,22bが、第1板部21の平面視における略正三角形の3つの角部21b,21b,21bとそれぞれ重なるように配置されている。
第2板部22は、平面視における中心22cを中心として等間隔をあけた位置に上下方向に貫通する平面視略円形状の3つの孔部22a,22a,22aが形成されている。これらの孔部22a,22a,22aは、それぞれ第2板部22の平面視の中心22cと角部22bとを結ぶ線上に形成されている。
【0020】
連結部23は、第1板部21の上面に固定された円柱状の円柱部26,26,26と、円柱部26,26,26がそれぞれ挿通されたコイルバネ27,27,27と、を有している。
円柱部26,26,26は、それぞれ軸方向を上下方向とし、3つの移動部24,24,24の直上に相当する位置にそれぞれ配置されている。そして、円柱部26,26,26は、上端部側が、第2板部22の孔部22a,22a,22aに挿通されている。
コイルバネ27,27,27は、それぞれ軸方向を上下方向とし、円柱部26,26,26の上端部側が第2板部22の孔部22a,22a,22aに挿通されると、第1板部21と第2板部22との間に配置され、上端部が第2板部22の下面と当接し、下端部が第1板部21の上面と当接している。
【0021】
第2板部22の孔部22aの内径は、円柱部26の外形よりも大きく形成されていて、第2板部22と円柱部26とは上下方向に相対移動可能に構成されている。本実施形態では、第2板部22の孔部22aに円柱部26が挿通されると、第2板部22の孔部22aの内周面と円柱部26の外周面との間に約0.1mmの隙間が形成されている。なお、微振動によって第2板部22と円柱部26とが上下方向に異なる挙動をした際でも、第2板部22と円柱部26とが上下方向に相対移動可能であれば、第2板部22と円柱部26とが当接していてもよい。
【0022】
このような第2板部22は、第1板部21からの水平方向の力が伝達されるように構成されているとともに、第1板部21からの鉛直方向の力は伝達されないように構成されている。
なお、コイルバネ27は、水平方向へ容易に変形しないように所定の剛性を有することが好ましい。
【0023】
また、第2板部22は、上端部が例えば構造物11の天井部や梁部に支持された上下方向に延在する支持部材13の下端部に連結されている。本実施形態では、第2板部22上面の中央部が支持部材13の下端部に連結されている。
支持部材13は、構造物11の天井部や梁部に支持された上側支持部材131と、第2板部22に固定された下側支持部材132と、上側支持部材131と下側支持部材132とを連結する連結プレート133と、を有している。
下側支持部材132と第2板部22とは、例えばビスや接着剤などで固定されている。
【0024】
連結プレート133には、上側支持部材131に連結プレート133を係止するためのビスが挿通可能で複数の上側長孔133aと、下側支持部材132に連結プレート133を係止するためのビスが挿通可能な複数の下側長孔133bと、が形成されている。これらの上側長孔133aおよび下側長孔133bは、上下方向に延びるように形成されている。これにより、上側支持部材131に対する下側支持部材132の上下方向の位置が調整可能となり、構造物11に対する第2板部22の上下方向の位置が調整可能に構成される。
なお、上記のような連結プレート133を設けずに、上側支持部材131および下側支持部材132の一方に上下方向に延びるネジ部が形成され、他方にこのネジ部が螺合可能なネジ孔が形成されていて、ネジ部とネジ孔とを螺合させる量を調整することで上側支持部材131に対する下側支持部材132の上下方向の位置が調整可能に構成されていてもよい。
【0025】
3つの第1変位測定部4,4,4は、床面12に沿った面内(略水平面内)における支持体2と床面12との相対変位量(以下水平方向の変位量とする)を測定可能な変位センサで構成されている。例えば、3つの第1変位測定部4,4,4は、バーコードリーダーや、光学式マウスなどを利用した光学式の変位センサや、アノトペンを利用した変位センサ、差動トランス式の変位センサなどで構成されている。
また、本実施形態では、3つの第1変位測定部4,4,4は、第1板部21に対して第1板部21の中心21cの周りに周方向に等しく間隔をあけて配置されている。そして、3つの第1変位測定部4,4,4は、3つの移動部24,24,24と第1板部21の中心21cとの間にそれぞれ配置されている。なお、3つの第1変位測定部4,4,4は、隣り合う移動部24,24間の中央部にそれぞれ配置されていてもよい。
【0026】
3つの第2変位測定部8,8,8は、それぞれ第2板部22と円柱部26との上下方向の相対変位量を測定可能に構成されている。これにより、第2変位測定部8は、それぞれ構造物11の天井部や梁部と、床面12との上下方向の相対変位量(以下、上下方向の変位量とする)を測定可能に構成されている。
このような第2変位測定部8は、例えば、バーコードリーダーや、光学式マウスなどを利用した光学式の変位センサや、アノトペンを利用した変位センサ、差動トランス式の変位センサなどで構成されている。
また、本実施形態では、3つの第2変位測定部8,8,8は、第2板部22に対して第2板部22の中心22cの周りに周方向に等しく間隔をあけて配置されている。そして、3つの第2変位測定部8,8,8は、第2板部22に形成された3つの孔部91,91,91と第2板部22の中心22cとの間にそれぞれ配置されている。
【0027】
そして、本実施形態では、3つの第1変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した水平方向の変位量のデータと、3つの第2変位測定部8,8,8がそれぞれ測定した鉛直方向の変位量のデータと、が処理部(不図示)へ通信され、処理部がこれらのデータをもとにより正確な水平方向の変位量および鉛直方向の変位量を算出するように構成されている。なお、変位計1A,1Bには、これらのデータを3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8から処理部へ通信するための通信装置や、3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8がそれぞれ測定した変位量のデータや処理部が処理した変位量のデータなどを記憶するための記憶部などが適宜設置されている。
【0028】
スイッチ部5は、支持体2の第1板部21の孔部21aに挿入された状態で床面12に沿って回転しながら移動可能なスイッチ用球体51と、スイッチ用球体51が当接すると3つの3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8を駆動させる4つの機械式スイッチ52,52,…と、を有している。
スイッチ用球体51は、その径が第1板部21の孔部21aの内径よりもやや小さい径に形成されていて、第1板部21の孔部21aに挿入されると、第1板部21の孔部21aの内部で移動可能に構成されている。また、スイッチ用球体51は、第1板部21の孔部21aに挿入されると、第1板部21よりも上部側が連結部23の内側に挿入されるように構成されている。
【0029】
このようなスイッチ用球体51は、構造物11と比べて質量が非常に小さく、構造物11が変位(変形)しないような微振動でも変位可能に構成されている。このため、スイッチ用球体51は、構造物11に支持された支持体2が変位しないような微振動でも変位可能となり、微振動によって支持体2とスイッチ用球体51とが異なる挙動をするように構成されている。
なお、スイッチ用球体51は、床面12との間の摩擦係数が、移動部24の移動用球体24bと床面12との間の摩擦係数よりも小さく、地震などの震動が生じてもほとんど震動せずに略一点に留まるように構成されていてもよい。そして、床面12と支持体2とが相対変位すると、支持体2とスイッチ用球体51とが異なる挙動をするように構成されていてもよい。
【0030】
機械式スイッチ52,52,…は、第1板部21の孔部21aの縁部に沿って等間隔に配置されている。
このようなスイッチ部5は、地震の振動などが生じていない通常時には、支持体2および支持体2の第1板部21の孔部21aに挿入されたスイッチ用球体51が静止して、スイッチ用球体51と第1板部21の孔部21aの縁部に設けられた機械式スイッチ52,52,…とが離間している。そして、スイッチ部5は、地震の震動などが生じると、スイッチ用球体51が支持体2と異なる挙動をして、4つの機械式スイッチ52,52,…のうちのいずれか1つ以上と当接する。
【0031】
そして、本実施形態では、スイッチ用球体51が4つの機械式スイッチ52,52,…のうちのいずれか1つ以上と当接すると、電池から3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8に電源が供給されて、3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8が駆動するように構成されている。このとき、スイッチ用球体51が微振動によって変位可能に構成されていると、微振動によってスイッチ用球体51が4つの機械式スイッチ52,52,…のうちのいずれか1つ以上と当接可能なため、微振動の状態から支持体2と床面12との相対変位量を測定することができる。
そして、駆動している3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8は、所定の値以上の変位量を測定しない状態が設定された一定期間経過すると、電池からの電源の供給が停止されて測定が停止されるように構成されている。
【0032】
本実施形態では、駆動している3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8は、測定している変位量が0mmである状態が連続して10秒経過すると、電池からの電源の供給が停止されて測定が停止されるように構成されている。
なお、本実施形態には、スイッチ部5からの信号や3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8が測定している測定量の値によって電池から3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8への電源の供給を制御し、3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8の駆動および停止を制御する制御部(不図示)が設けられている。
【0033】
電池は、例えば、支持体2の第1板部21と第2板部22との間や、第2板部22の上部などに配置されている。なお、電池が第2板部22の上部に配置されていると、電池の交換などが行いやすい。
【0034】
また、変位計1A,1Bには、3つの第1変位測定部4,4,4を囲繞する第1カバー部64と、3つの第2変位測定部8,8,8を囲繞する第2カバー部65と、を有している。
なお、図2では、第1カバー部64の手前側の部分、第2カバー部65の手前側の部分および上板部65bの一部を省略していて、図3(a)では、第2カバー部65の上板部65bを省略している。
【0035】
第1カバー部64は、第1板部21の外縁部全周と連結し床面12に向かって延びる板状の板部64aと、板部64aの下端部に取り付けられて床面12とわずかに当接するブラシ材64bとを有している。
また、第2カバー部65は、第2板部22の外縁部全周と連結し上方に向かって延びる板状の側板部65aと、側板部65aの上端部に連結されて第2板部22と平行に配置される上板部65bと、を備えている。なお、上板部65bは、第1板部21と第2板部22とが上下方向に相対変位した場合も、円柱部26などの支持体2を構成する部材や支持部材13を構成する部材と干渉しないように構成されている。このため、上板部65bには、適宜孔部(不図示)などが形成されている。
【0036】
これらの第1カバー部64および第2カバー部65は、第1カバー部64および第2カバー部65の外側から内側に異物が入り込むことを防止している。また、第1カバー部64および第2カバー部65は、光を透過させない不透過性の材料で形成されていて、第1カバー部64および第2カバー部65の内側は、外側から光が入り込まず、一定の明るさに維持されている。
なお、上板部65bに孔部が形成されている場合は、この孔部を介して第2カバー部65の外側から内側に入り込む光が最小限となるように、孔部の形状が設定されている。
【0037】
次に、3つの第1変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した変位量のデータ(以下データとする)の処理部による処理方法について図4に示すフローチャートを基に説明する。なお、3つの第2変位測定部8,8,8がそれぞれ測定した変位量のデータの処理部による処理方法は、3つの第1変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した変位量のデータ(以下データとする)の処理部による処理方法と同様に行うものとし、説明を省略する。
【0038】
(測定ステップ)
上述した変位計1A,1Bの3つの第1変位測定部4,4,4によって、支持体2と床面12との相対変位量をそれぞれ測定する(S−1)。
【0039】
(補正ステップ)
測定ステップ(S−1)において3つの第1変位測定部4,4,4が測定した支持体2と床面12との相対変位量のデータ(以下データとする)を軸補正し、基準となる1つのデータ以外の2つのデータの時刻歴を基準となる1つのデータに合せる(S−2)。
【0040】
(選出ステップ)
補正ステップ(S−2)において軸補正された3つのデータのうち、後の平均値算出ステップを行うデータを選出する(S−3)。
まず、3つのデータに欠落がないかどうかを判定する(S−4)。
この判断(S−3)においてデータの欠落がないと判断された場合は、3つのデータから標準偏差を算出する(S−5)。
そして、データの中にこの標準偏差の範囲外の異常値がないかどうかを判定する(S−6)。
この判断(S−6)においてデータに標準偏差の範囲外の異常値がないと判断された場合は、3つのデータを選出する(S−7)。
【0041】
また、この判断(S−6)においてデータに標準偏差の範囲外の異常値があると判断された場合は、測定ステップ(S−1)において標準偏差の範囲外のデータを測定した第1変位測定部4によって標準偏差の範囲外のデータが測定される直前に測定されたデータを基準とし、標準偏差の範囲内のデータを測定した第1変位測定部4によって測定されたデータの変化を適用させて補正データを算出する(S−8)。
そして、この補正データおよび標準偏差の範囲内のデータを選出する(S−9)。
【0042】
また、3つのデータに欠落がないかどうかの判定(S−4)において、データの欠落がある場合は、欠落していないデータを選出する(S−10)。
【0043】
(平均値算出ステップ)
選出ステップ(S−3)の選出処理(S7,S9,S10)選出されたデータの平均値を算出し、この平均値を支持体2と床面12との相対変位量(代表値)とする(S−11)。
【0044】
次に、上記のような2つの変位計1A,1Bがそれぞれ測定した構造物11の変位量から構造物11のねじれ振動を算出する方法について説明する。ここでは、構造物11が図1に示す状態から図5に示すように水平面に直交する軸を中心として回転したものとする。
まず、2つの変位計1A,1Bによってそれぞれ測定されたX方向の変位量XA,XB、およびY方向の変位量YA,YBを時刻歴で示す。図6では、2つの変位計1A,1Bによってそれぞれ測定されたY方向の変位量YA,YBを時刻歴で示している。
そして、図7に示すように、変位計1Aによって測定されたX方向の変位量XAと変位計1Bによって測定されたX方向の変位量XBとの差分XA−XB(Torsion(X))を算出する。
【0045】
Y方向についても同様に、変位計1Aによって測定されたY方向の変位量YAと変位計1Bによって測定されたY方向の変位量YBとの差分YA−YB(Torsion(Y))を算出する。
そして、変位計1A,1Bの設置間隔L、変位計1Aによって測定されたX方向の変位量XAと変位計1Bによって測定されたX方向の変位量XBとの差分XA−XB(Torsion(X))、および変位計1Aによって測定されたY方向の変位量YAと変位計1Bによって測定されたY方向の変位量YBとの差分YA−YB(Torsion(Y))から、構造物11が変位した際の水平面内における回転角(ねじれ振動、θ=ATAN(Torsion/L)を算出する。
【0046】
また、本実施形態では、構造物11が水平面に直交する軸を中心とする回転に加え、図1に示す状態から図8に示すように鉛直面に直交する軸を中心として回転(ロッキング振動)したものとし、変位計1A,1Bがそれぞれ測定した構造物11の変位量から構造物11のロッキング振動を算出する方法について説明する。
まず、図9に示すように、2つの変位計1A,1Bによってそれぞれ測定されたZ方向の変位量ZA,ZBを時刻歴で示す。
【0047】
次に、2つの変位計1A,1Bによってそれぞれ測定されたZ方向の変位ZA,ZBを時刻歴で示す。そして、変位計1Aによって測定されたZ方向の変位量ZAと変位計1Bによって測定されたZ方向の変位量ZBとの差分ZA−ZB(Rocking)を算出する。
そして、変位計1A,1Bの設置間隔L、および変位計1Aによって測定されたZ方向の変位量ZAと変位計1Bによって測定されたZ方向の変位量ZBとの差分ZA−ZB(Rocking/L)から、構造物11が変位した際の鉛直面内における回転角(ロッキング振動、θ=ATAN(Rocking/L)を算出する。
【0048】
次に、上述した構造物の振動測定方法の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した第1実施形態による構造物の振動測定方法では、構造物11に間隔をあけて設置された2つの変位計1A,1Bが測定した変位量、2つの変位計1A,1Bが設置された位置および2つの変位計1A,1Bの間隔を基に構造物11のねじれ振動を容易に測定することができる。
また、2つの変位計1A,1Bは、構造物11の鉛直方向の変位量をそれぞれ測定可能に構成されていることにより、構造物11のロッキング振動を容易に測定することができる。
また、本実施形態では、2つの変位計1A,1Bが免震層11aに配置されているためロッキング振動の状態を基にアイソレータの動きを算出することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第2実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施形態と異なる構成について説明する。
図10および図11に示すように、第2実施形態における構造物の振動測定方法では、構造物に対して4つの変位計1A〜1Dを配置している。変位計1A,1Bは、第1実施形態と略同じ位置に配置され、変位計1C,1Dは、構造物11の免震層11aの床面12に、X方向に間隔をあけ、Y方向の位置は略同じとなるように配置されている。変位計1C,1Dは、構造物11のX方向の両端部近傍で、構造物のY方向の略中央部に配置されている。
また、これらの4つの変位計は、それぞれアイソレータの近傍に配置されている。
【0050】
第2実施形態による構造物の振動測定方法では、第1実施形態よりも詳細な構造物11のねじれ振動やロッキング振動を測定することができる。
【0051】
以上、本発明による構造物の振動測定方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8を備える変位計1A〜1Bを用いているが、構造物の変位を測定可能であれば、変位計の形態は上記以外の形態であってもよい。例えば、上記の実施形態では、3つの第1変位測定部4,4,4および3つの第2変位測定部8,8,8を備えているが、設置される第1変位測定部4の数および第2変位測定部8の数は、1や2、あるいは4以上として適宜設定されてよい。また、変位計として加速度計や罫書計などを用いてもよい。
【0052】
また、上記の実施形態では、構造物11に2つまたは4つの変位計1A,1B…が設置されているが、3や5以上の複数の変位計1A,1B…が設置されていて、これらの変位計1A,1B…が測定した変位量を基に構造物11のねじれ振動やロッキング振動を算出するように構成されていてもよい。
【0053】
また、上記の実施形態では、構造物11は免震構造物で、免震層11aに変位計1A,1B…が設けられているが、構造物11は免震構造物でなくてもよく、構造物11が免震構造物の場合も変位計1A,1B…免震層11a以外に設けられていてもよい。なお、変位計1A,1B…は、構造物11が免震構造物の場合は、免震層11aや1階、地下1階等の地盤面に近い層に設置されることが好ましく、構造物11が免震構造物でない場合は、1階、地下1階等の地盤面に近い層に設置されることが好ましい。
また、本実施形態による構造物の振動測定方法では、地震や風圧などによる構造物の変位だけでなく、構造物の経年的な変位を測定する際に用いられてもよい。
【0054】
また、上記の実施形態では、変位計1A,1B…が測定した構造物11の水平方向の変位量および変位計1A,1B…が設置された位置から構造物11のねじれ振動を算出し、これらの変位計1A,1B…が測定した構造物11の鉛直方向の変位量および変位計1A,1B…が設置された位置から構造物11のロッキング振動を算出するように構成されている。
これに対し、本発明では、変位計1A,1B…が測定した構造物11の水平方向の変位量および変位計1A,1B…が設置された位置から構造物11のねじれ振動のみを算出するように構成されていてもよい。
また、本発明では、変位計1A,1B…が測定した構造物11の鉛直方向の変位量および変位計1A,1B…が設置された位置から構造物11のロッキング振動のみを算出するように構成されていてもよい。
【0055】
また、構造物11のロッキング振動を測定する場合は、例えば、図12に示すように、水平方向に間隔をあけた位置において、それぞれ構造物11の外壁15に取り付けられた変位計1E,1Fによって、構造物11の鉛直方向の変位量を測定可能に構成されていてもよい。
なお、図12に示す形態では、変位計1E,1Fは外壁15に取り付けられた支持部材16Aによって地盤面に沿って移動可能に支持されている。この支持部材16Aは、外壁15に剛接合された第1棒材161と、上部側が第1棒材161にピン接合されて下部側が変位計1E,1Fに接合された第2棒材162と、を有している。
また、構造物11のロッキング振動を測定する場合は、例えば、図13に示すように、水平方向に間隔をあけた位置において、それぞれ構造物11の内壁17に取り付けられた変位計1G,1Hによって、構造物11の鉛直方向の変位量を測定可能に構成されていてもよい。
なお、図13に示す形態では、変位計1G,1Hは内壁17に取り付けられた支持部材16Bによって構造物11の床面12に沿って移動可能に支持されている。この支持部材16Bは、内壁17に剛接合された第1棒材163と、上部側が第1棒材163にピン接合されて下部側が変位計1F,1Gに接合された第2棒材164と、を有している。
【符号の説明】
【0056】
1A〜1H 変位計
11 構造物
11a 免震層
12 床面
【要約】
【課題】地震などによって生じる構造物のねじれ振動を容易に測定できる構造物の振動測定方法を提供する。
【解決手段】構造物11の水平方向の変位量をそれぞれ測定する複数の変位計1A,1Bを構造物11の床面(水平設置面)12に間隔をあけて設置し、複数の変位計1A,1Bがそれぞれ設置された箇所において測定した構造物11の水平方向の変位量と、複数の変位計1A,1Bの設置された間隔(設置間隔L)から構造物11のねじれ振動を算出する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13