特許第5744314号(P5744314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744314
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】タービン燃焼システムの冷却スクープ
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/18 20060101AFI20150618BHJP
   F23R 3/42 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   F02C7/18 C
   F23R3/42 C
   F23R3/42 A
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-502578(P2014-502578)
(86)(22)【出願日】2012年3月1日
(65)【公表番号】特表2014-509710(P2014-509710A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】US2012027262
(87)【国際公開番号】WO2012134698
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2014年3月17日
(31)【優先権主張番号】61/468,678
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/241,391
(32)【優先日】2011年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ナルカス、アンドリュー アール
(72)【発明者】
【氏名】ジェント、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】サーリエン、ニール
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−285231(JP,A)
【文献】 特開2010−256005(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0180827(US,A1)
【文献】 特開2008−169840(JP,A)
【文献】 特開2007−132640(JP,A)
【文献】 特開2002−155759(JP,A)
【文献】 特開2005−345093(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0145099(US,A1)
【文献】 特開2000−74333(JP,A)
【文献】 特開2007−154901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/18
F23R 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状筒形ガスタービンエンジンにおける冷却剤流中に配置されたトランジションダクト壁と、
隣り合った前記トランジションダクト壁の間の最小距離に該当する領域の上流域において前記トランジションダクト壁に形成された複数の第1の冷却剤流入孔のそれぞれの上に配置された複数の第1スクープと、
を備え、
前記各第1スクープは、
前記各第1の冷却剤流入孔の上に張り出した中央突出、及び、該突出と前記トランジションダクト壁に装着された当該第1スクープの装着底縁との間における前記突出両側のアンダーカット、を設けた前縁、を有また、
前記隣り合ったトランジションダクト壁の間の最小距離に該当する領域の下流域において前記トランジションダクト壁に形成された複数の第2の冷却剤流入孔のそれぞれの上に配置された複数の第2スクープをさらに備え、
該各第2スクープは、前記各第2の冷却剤流入孔周囲の前記トランジションダクト壁の面に対し鋭角をなす平面にある平坦な前縁を有する、
ことを特徴とする、冷却流体を配向する冷却器具。
【請求項2】
前記装着底縁が前記トランジションダクト壁の外側面に装着されて前記第1の冷却剤流入孔を部分的に囲む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の冷却器具。
【請求項3】
前記第1スクープは、球形で、前記装着底縁がその赤道に沿う、請求項に記載の冷却器具。
【請求項4】
前記トランジションダクト壁がガスタービンの二重壁トランジションダクトの外壁であり、
前記冷却が前記第1スクープにより配向されて前記第1の冷却剤流入孔を通り、前記トランジションダクトの内壁に対する衝突噴流を生成する、
請求項に記載の冷却器具。
【請求項5】
前記中央突出は、遠位の尖った先端部分へ向かう先細りである、請求項に記載の冷却器具。
【請求項6】
前記装着底縁の最後尾部位が、前記第1の冷却剤流入孔の最後尾部位から後退した位置にある、請求項に記載の冷却器具。
【請求項7】
前記第2スクープは、C形又はU形の装着底縁と、該装着底縁から平坦な前縁に延伸する側部と、を有し、
記平坦な前縁が、前記装着底縁の面に対し鋭角をなす面にある、
請求項1に記載の冷却器具。
【請求項8】
前記第1スクープは、C形又はU形の装着底縁と、該装着底縁から延伸する湾曲側部と、該湾曲側部から前方へ延伸する中央舌状部位と、を有し、
前記湾曲側部が、前記中央舌状部位と前記装着底縁との間における前記舌状部位両側で前記装着底縁に対しアンダーカットされ、流線形のスクープ形状を画定している、
ことを特徴とする、請求項1に記載の冷却器具。
【請求項9】
前記中央舌状部位は、遠位の尖った先端部分へ向かう先細りである、請求項に記載の冷却器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許出願61/468,678の出願日、2011年3月29日の利益を主張する。当該出願は、参照することで本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、ガスタービン燃焼チャンバ及びトランジションダクトの冷却、具体的には、スクープ(Scoop:取入口)で補助した衝突冷却に関する。
【背景技術】
【0003】
ガスタービンエンジンにおいて、空気は、初期段階で圧縮されてから燃焼チャンバで加熱される。その結果の高温作動ガスが、エアコンプレッサの回転を含めた動作を実行するタービンを駆動する。
【0004】
通常の産業用ガスタービン構造においては、複数の燃焼チャンバが、ガスタービンエンジンのシャフト(軸)を中心にした円形アレイとして「管状筒形」の構成で配置される。アレイのトランジションダクトがそれぞれ、各燃焼器の流出側をタービンの流入口へ接続する。各トランジションダクトは、燃焼チャンバとタービンとの間の高温ガス経路を取り囲んだ、ほぼ管状の壁構造(囲い)である。燃焼チャンバ及びトランジションダクトの壁は、被燃焼及び燃焼ガスによる高温に曝される。これらの壁は、他の動部品の間におけるその位置、温度サイクル、その他の要因に従って、低サイクル疲労を受ける。これが、部品耐用年数に関わる主要な設計検討事項である。
【0005】
燃焼チャンバの壁及びトランジションダクトの壁は、タービンコンプレッサからの圧縮空気を使用する開放又は密閉冷却、蒸気、又はその他のアプローチによって、冷却可能である。これらの壁−その内側面に当分野で既知の耐熱被覆が施されている−における冷却流体の流路に関して各種のチャンネル設計が周知である。
【0006】
例えば特許文献1にトランジションダクトを冷却する取り組みが示されている。トランジションダクトを包むスリーブが、その孔により生成される衝突噴流を提供するように構成されている。特許文献2は、衝突冷却孔を穿孔した囲繞スリーブによるトランジションダクトの冷却を開示している。冷却空気がその孔を通ってトランジションダクト内壁に衝突する。冷却流に対面するエアスクープ(Air Scoop:空気取入口)が衝突孔の一部に追加され、衝突噴流の速度を増加させる。特許文献3,4は、トランジションダクトの衝突冷却に関連するスクープを開示している。これら及びその他の取り組みがあるが、燃焼器及びトランジションダクトの冷却効果を高める必要性は消えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許4,719,748
【特許文献2】米国特許6,494,044
【特許文献3】米国特許公開2009/0145099
【特許文献4】米国特許公開2010/0000200
【図面の簡単な説明】
【0008】
次の図面を参照する以下の説明によって、本発明を説明する。
図1】通常のガスタービンエンジンの概略図。
図2】従来のトランジションダクトの斜視図。
図3】従来の二重壁トランジションダクトの概略断面図。
図4】本発明に係る冷却剤スクープの一例を示す斜視図。
図5図4の例示スクープの側方断面図。
図6】異なった孔位置にあるスクープの一例を示す側方断面図。
図7】本発明の一実施形態に係るトランジションダクトの斜視図。
図8】部分スクープの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、通常のガスタービンエンジン20の概略図で、コンプレッサ22、キャップアセンブリ24内に位置した燃料噴射器、燃焼チャンバ26、トランジションダクト28、タービン30、タービン30がコンプレッサ22を駆動するためのシャフト32、が含まれている。複数の燃焼器アセンブリ24,26,28が円形アレイとして、当分野で周知の管状筒形設計で配置されている。運転中、コンプレッサ22が空気33を吸気し、圧縮空気37の流れを、ディフューザ34及び燃焼器プレナム36を介して燃焼器流入口23へ提供する。キャップアセンブリ24内の燃料噴射器が燃料を圧縮空気に混合する。この混合気が燃焼チャンバ26内で燃焼し、高温燃焼ガス38が生成されてトランジションダクト28を通りタービン30へ送られる。ディフューザ34とプレナム36は、シャフト32の周りに環状に延伸する。燃焼器プレナム36の中の圧縮空気流37は、燃焼チャンバ26及びトランジションダクト28の中の作動ガス38よりも高圧である。
【0010】
図2は、高温ガス流路42を区画する壁40を備えた環状囲いを含む従来のトランジションダクト28の斜視図である。上流端44は円形であり、下流端46は、タービンと整合する湾曲をもったほぼ矩形である。図3は、ダクト28の側方断面を概略的に示し、壁40として内壁40Aと外壁(スリーブ)40Bとが含まれている。外壁40Bには孔48が穿孔されており、内壁40Aに向かう衝突噴流50を生成する冷却空気を通す。衝突後、冷却剤は少なくとも、当分野で周知の膜冷却52用に内壁40Aの膜冷却孔を通過するか又は燃焼チャンバへ流れる。同様の二重壁構造が燃焼チャンバ26にも使用され得るので、これにも同じく本発明を適用することができる。図2は、当分野において使用されるトリップ(つまづき)ストリップ49を示しており、これは、隣り合ったダクト28の間を通過する流れ37の最大収縮域(境界)の間近に置かれる。最大収縮域の上流側の流れ37は、隣り合ったダクトの間の空間が減少するので、前進するにつれて圧縮される。隣り合ったトランジションダクトの間の最大収縮域の下流側の流れ37は、拡散して局所的に不安定となるため、該不安定流れ域の孔48の有効性に影響する。トリップストリップ49は、予定の所で流れ37の分離を確実に生じさせるために使用される。
【0011】
燃焼器プレナム36の中の圧縮空気流37は作動ガス38よりも高圧であるが、この差を大きくして衝突噴流50を増速することが有益である。このことは、少なくとも一部の衝突孔48のそれぞれにエアスクープを使用することで実現される。スクープは、冷却剤流の一部を孔48に配向する。スクープは、冷却剤の一部の風圧を孔48での静圧に転換し、差圧を増加させる。
【0012】
図4は、本発明に係るエアスクープ54の実施形態を示す。スクープ54は、孔48の上に張り出した略中央の前方突出(舌状部位)56と、この舌状部位とC形又は概略U形の装着底縁53との間における舌状部位両側のアンダーカット、例えば湾曲アンダーカット58と、を設けた前縁を有する。スクープ54の前縁形状は、空力抵抗及び下流の乱流を減らすために流線形である。スクープ54は、赤道に沿って装着底縁53を設けた球形を有していてよい。当該形状は、空力抵抗、特に、無駄な又は二次的な抵抗を抑制する。
【0013】
図5は、図4の断面図である。壁40Bの外側面41及びスクープ54の内側面55が示されている。前縁56,58、又は少なくとも舌状部位56は、流線形をなすために、遠位の尖った先端部分に向かう先細りである。図6は、図4のスクープ同様のスクープ54の断面図であるが、異なる孔径と該孔48に対するスクープ54の位置を示している。本例のような冷却スクープ54のデザインは、燃焼システムの衝突特性に使う空気流を配向する能力を向上させる。この例において、スクープ54は、内側面が装着底縁で孔48の最後尾部位と円滑に整列するようにして装着される。一方の図5の例では、装着底縁が孔の最後尾部位から若干後退して位置する。
【0014】
図7は、図5及び図6に示したようなスクープ54を多数含んだトランジションダクト60の斜視図である。ダクト60はさらに、部分スクープ62も多数含んでいる。「部分スクープ」については、1つの衝突孔48の周りに配置された1つの部分スクープ62の拡大斜視図である図8に、より詳しく示してある。部分スクープ62は、ダクト壁40Bの局所表面(なお、この局所表面はわずかに湾曲している)に該当する面に対して鋭角A(90°未満)をなす面にあるほぼ平坦な前縁64を含む。図7の例において、部分スクープ62は、隣り合ったトランジションダクトの間にある最大収縮域(すなわち、従来のトリップストリップの位置する境界)の下流箇所に配置される。最大収縮域上流側のスクープ54と最大収縮域下流側の部分スクープ62との組み合わせは、トリップストリップが無くとも十分な冷却をもたらすことが確認されている。
【0015】
本発明の種々の実施形態について図示し説明してきたが、これら実施形態が例示のためだけに提供されていることは当然である。本発明から逸脱することなく様々な派生、変更、置換が可能である。したがって、本発明は特許請求の範囲に係る思想及び範囲によってのみ特定されるべきである。
【符号の説明】
【0016】
37 圧縮空気(流)
40 トランジションダクトの壁(二重壁)
40A 内壁
40B 外壁(スリーブ)
41 外側面
42 高温(燃焼)ガス流路
44 上流端
46 下流端
48 孔(衝突孔)
53 装着底縁
54 スクープ(エアスクープ)
55 内側面
56 前方突出(舌状部位)(前縁)
58 アンダーカット(前縁)
60 トランジションダクト
62 部分スクープ
64 前縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8