(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744315
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器、変換器アッセンブリおよび変換器を制御する方法
(51)【国際特許分類】
F03B 13/14 20060101AFI20150618BHJP
F03D 9/00 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
F03B13/14
F03D9/00 F
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-503025(P2014-503025)
(86)(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公表番号】特表2014-515075(P2014-515075A)
(43)【公表日】2014年6月26日
(86)【国際出願番号】EP2012001489
(87)【国際公開番号】WO2012136359
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2013年12月9日
(31)【優先権主張番号】102011016592.4
(32)【優先日】2011年4月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ヴァーデジェム
【審査官】
山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−142498(JP,A)
【文献】
特表2006−522273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/14
F03D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器であって、該変換器が、自然力により駆動されるパワーテイクオフ装置(2)を備えており、該パワーテイクオフ装置(2)が、ポンプ(4,4’)を有しており、パワーテイクオフ装置(2)に液圧アキュムレータユニット(38)が対応配置されており、パワーテイクオフ装置(2)が、第1の液圧機械(32,32’)に作用接続されており、該第1の液圧機械(32,32’)が、電気機械を駆動するようになっている変換器において、該変換器が、第2の液圧機械(26,26’)を有しており、該第2の液圧機械(26,26’)を介して電気機械が駆動可能であり、該電気機械において取り出される電力を均一化するために、両液圧機械(32,32’;26,26’)の圧送/押退け容積が調整可能に形成されており、
両液圧機械(32,26;32’,26’)が、液圧的に直列に接続されており、第2の液圧機械(26,26’)が上流側に配置されており、液圧アキュムレータユニット(38)に第1の液圧機械(32,32’)と第2の液圧機械(26,26’)との間の圧力が加えられていることを特徴とする、液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器。
【請求項2】
液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器であって、該変換器が、自然力により駆動されるパワーテイクオフ装置(2)を備えており、該パワーテイクオフ装置(2)が、ポンプ(4,4’)を有しており、パワーテイクオフ装置(2)に液圧アキュムレータユニット(38)が対応配置されており、パワーテイクオフ装置(2)が、第1の液圧機械(32,32’)に作用接続されており、該第1の液圧機械(32,32’)が、電気機械を駆動するようになっている変換器において、該変換器が、第2の液圧機械(26,26’)を有しており、該第2の液圧機械(26,26’)を介して電気機械が駆動可能であり、該電気機械において取り出される電力を均一化するために、両液圧機械(32,32’;26,26’)の圧送/押退け容積が調整可能に形成されており、
変換器が、さらに別のパワーテイクオフ装置(2’)を備えており、該パワーテイクオフ装置(2’)に、さらに別の第3の液圧機械(44,44’)が対応配置されており、該第3の液圧機械(44,44’)が、同じく電気機械に作用接続されていて、第2の液圧機械(26,26’)に対して液圧的に並列に接続されており、第2の液圧機械(26,26’)のポート(B)と第3の液圧機械(44,44’)のポート(B)とが、第1の液圧機械(32,32’)のポート(A)に接続されていることを特徴とする、液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器。
【請求項3】
第1の液圧機械(32,32’)のポート(B)が、タンク(T)または低圧に接続されている、請求項1または2記載の変換器。
【請求項4】
液圧アキュムレータユニット(38)に、該液圧アキュムレータユニット(38)を介して駆動可能である、付加発電機(50)と付加液圧機械(52)とを備えた付加的なモータ/発電機ユニット(48)が対応配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の変換器。
【請求項5】
少なくとも第2の液圧機械(26,26’)が、液圧的に閉じられた回路に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の変換器。
【請求項6】
変換器が、液圧機械(26,26’)により駆動されるチャージポンプ(62)を備えている、請求項5記載の変換器。
【請求項7】
パワーテイクオフ装置(2)が波力運転式であるかまたは風力運転式である、請求項1から6までのいずれか1項記載の変換器。
【請求項8】
液圧アキュムレータユニット(38)が、並列に接続された複数の液圧アキュムレータを有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の変換器。
【請求項9】
電気機械が発電機(30,30’)である、請求項1から8までのいずれか1項記載の変換器。
【請求項10】
変換器アッセンブリにおいて、該変換器アッセンブリが、請求項1から9までのいずれか1項記載の複数の変換器を備えており、それぞれ2つの変換器(1,1’)に1つの液圧アキュムレータユニット(38)が対応配置されていることを特徴とする、変換器アッセンブリ。
【請求項11】
液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器を制御する方法において、変換器が、自然力により駆動されるパワーテイクオフ装置(2)を備えており、該パワーテイクオフ装置(2)が、ポンプ(4,4’)を有しており、パワーテイクオフ装置(2)に液圧アキュムレータユニット(38)が対応配置されており、パワーテイクオフ装置(2)が、第1の液圧機械(32,32’)に作用接続されており、該第1の液圧機械(32,32’)が、電気機械を駆動するようになっており、変換器が、さらに、第2の液圧機械(26,26’)を備えており、該第2の液圧機械(26,26’)を介して電気機械が同じく駆動可能であり、調節可能な両液圧機械(32,26;32’,26’)の圧送/押退け容積を、パワーテイクオフ装置(2)に取り込まれた出力に関連して調整して、電気機械においてほぼ一定の電力を取り出し、
両液圧機械(32,26;32’,26’)が、液圧的に直列に接続されており、第2の液圧機械(26,26’)が上流側に配置されており、液圧アキュムレータユニット(38)に第1の液圧機械(32,32’)と第2の液圧機械(26,26’)との間の圧力が加えられていることを特徴とする、液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器を制御する方法。
【請求項12】
液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器を制御する方法において、変換器が、自然力により駆動されるパワーテイクオフ装置(2)を備えており、該パワーテイクオフ装置(2)が、ポンプ(4,4’)を有しており、パワーテイクオフ装置(2)に液圧アキュムレータユニット(38)が対応配置されており、パワーテイクオフ装置(2)が、第1の液圧機械(32,32’)に作用接続されており、該第1の液圧機械(32,32’)が、電気機械を駆動するようになっており、変換器が、さらに、第2の液圧機械(26,26’)を備えており、該第2の液圧機械(26,26’)を介して電気機械が同じく駆動可能であり、調節可能な両液圧機械(32,26;32’,26’)の圧送/押退け容積を、パワーテイクオフ装置(2)に取り込まれた出力に関連して調整して、電気機械においてほぼ一定の電力を取り出し、
変換器が、さらに別のパワーテイクオフ装置(2’)を備えており、該パワーテイクオフ装置(2’)に、さらに別の第3の液圧機械(44,44’)が対応配置されており、該第3の液圧機械(44,44’)が、同じく電気機械に作用接続されていて、第2の液圧機械(26,26’)に対して液圧的に並列に接続されており、第2の液圧機械(26,26’)のポート(B)と第3の液圧機械(44,44’)のポート(B)とが、第1の液圧機械(32,32’)のポート(A)に接続されていることを特徴とする、液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器を制御する方法。
【請求項13】
ポンプ(4,4’)の出口における目下の体積流量(FlowW)を決定し、
第1の液圧機械(32,32’)の圧送/押退け容積(Disp1)を算出し、
ポンプ(4,4’)の出口における所要の相応の減衰圧(Press1)を決定し、
液圧アキュムレータユニット(38)内の圧力(Press2)を検知し、
圧送/押退け容積(Disp1)と、液圧アキュムレータユニット(38)内の圧力(Press2)と減衰圧(Press1)との間の圧力差とから所要のトルク(Torque1)を算出し、
電気機械の所要の電力取出し量(Power Output)を決定し、
電気機械に所望の電力取出し量(Power Output)が生じるまで、第2の液圧機械(26,26’)の圧送/押退け容積(Disp2)を調整する、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
電気機械が発電機(30,30’)である、請求項11から13までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載した液電式の変換器、つまり、液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器、このような変換器を備えた変換器アッセンブリならびにこのような変換器を制御する方法に関する。
【0002】
このような変換器は、たとえば米国特許第6300698号明細書に記載されているような波力エネルギプラントにおいて使用される。この公知の波力エネルギプラントは液圧シリンダを有している。この液圧シリンダはブイに作用結合されており、これによって、液圧シリンダが、海況と、これに対応したブイの運動とによって操作され、ひいては、ポンプとして圧力媒体を液圧回路に圧送し、その結果、後置された液圧アキュムレータが加圧され、また、液圧機械が駆動されるようになっている。この液圧機械の出力軸は発電機に結合されており、これによって、液圧エネルギが電気エネルギに変換される。海況は、波の高さに関しても、周波数に関しても、激しく変化するので、発電機出口電圧を均一化するために、手間のかかる電子回路が設けられなければならない。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102007018600号明細書には、改善された変換器が提案されている。この変換器では、取り出される電力の相応の変動を結果的に招く前述した波動の変動を均一化するために、液圧機械が、調整可能なもしくは可変の圧送/押退け容積を備えて形成されていて、回転数調整されて運転される。
【0004】
本出願人のドイツ連邦共和国特許出願公開第102008021576号明細書には、相応の変換器が開示されている。この変換器では、機械的な過負荷を回避するために、揺動体(ブイ)に制動装置が対応配置されており、これによって、揺動体が、予め規定された加速度、周波数または速度の超過時に制動されるようになっている。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102007056400号明細書に示された変換器では、ポンプとして作用する液圧シリンダのピストンに、予め規定された減衰力および予め規定された圧力差が加えられているように、液圧機械が調節可能である。この解決手段でも、ポンプを介して液圧アキュムレータが加圧される。
【0006】
前述した公知先行技術では、変換器が波力エネルギプラントの一部を成しているものの、本発明は、決してこのような用途に限定されるものではない。原理的には、このような変換器は、別のシステム、有利には自然力により駆動されるシステムでも使用することができる。したがって、ポンプが、風車、潮位差またはこれに類するものを介して駆動されてもよい。
【0007】
前述した変換器には全て、波動または風力エネルギプラントを駆動する風の前述した不均一さ(むら)に基づき、発電機において取出し可能な電力も相応に変動してしまい、その結果、調整技術的に多大な手間をかけてしか、十分に均一な電力取出しを実現することができないという問題が共通している。
【0008】
液圧アキュムレータを備えて形成されたこのような変換器の更なる問題は、ポンプにより発生させられた圧力が液圧アキュムレータ内の圧力よりも高い場合にしか、液圧アキュムレータの加圧が可能とならないことにある。このシステムでは、液圧アキュムレータの最高圧がシステム圧も制限するので、駆動媒体に蓄えられたエネルギ(波力エネルギ、風力エネルギ、・・・)を電気エネルギに十分に変換することが不可能となってしまう。さらに、この問題は、比較的制限された液圧アキュムレータ圧に基づき、波力エネルギまたは風力エネルギにより駆動されるポンプの液圧的な減衰が、制限されてしか可能とならないことによって増大させられる。
【0009】
原理的には、液圧アキュムレータを備えて形成された変換器の代わりに、さらに、波力エネルギまたは風力エネルギにより駆動されるポンプを、発電機を駆動する調節可能な液圧機械に直接連結するかまたは発電機を揺動体に直接連結する可能性が存在する。このようなシステムは、たとえば「Wave−Swing」プロジェクトに基づき公知である。このような直接連結されるシステムには、出力取出し量が、同じく自然力(波力エネルギ、風力エネルギ、・・・)の変動に関連して変動してしまい、エネルギ過多の場合にエネルギを蓄えるために、フライホイール等が使用されなければならないという欠点がある。このフライホイール等は、かなりの構成スペースを必要とし、その上、装置技術的な手間を増大させることになる。
【0010】
このようなPTO(パワーテイクオフ装置)を介して取り出される運動学的な出力(動力)は、原理的には、PTOの運動に対する減衰力と、運動速度との積である。最適な出力取出し量を獲得するためには、浮体またはこれに類するものの各運動速度への最適な適合を実施する目的で、減衰力と運動速度とが波の周期の間に変えられ、逆転されなければならない。これにより、このような変換器では、最適な出力取出しを可能にするために、減衰力と運動速度とが調整されなければならない。これに相応して、波力エネルギプラントの場合には、この出力取出し量が、波の各周期の間に2回、波頂もしくは海況における最高値と、その間に位置する両ゼロ交点との間で変化してしまう。
【0011】
したがって、本発明の課題は、液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器、このような変換器を備えた変換器アッセンブリおよびこのような変換器を制御する方法を改良して、取り込まれる出力またはエネルギの変動時でも、均一化された電力取出しが可能となるようにすることである。
【0012】
この課題は、液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器に関しては請求項1の特徴組合せによって解決され、変換器アッセンブリに関しては請求項10の特徴組合せによって解決され、方法に関しては請求項11の特徴組合せによって解決される。
【0013】
本発明の有利な改良態様は、従属請求項の対象である。
【0014】
液圧エネルギを電気エネルギに変換するための本発明に係る変換器は、ポンプを備えた、有利には自然力により駆動されるユニット(以下、PTO:パワーテイクオフ装置と呼ぶ)を有している。このPTOには、液圧アキュムレータユニットが対応配置されている。この液圧アキュムレータユニットは、液圧機械に作用結合されている。この液圧機械は、電気機械、有利には発電機を駆動する。本発明によれば、この電気機械を同じく駆動することができる第2の液圧機械が設けられており、取り出される電力を均一化するために、両液圧機械の圧送/押退け容積が調整可能、つまり、可変である。両液圧機械のこの調節によって、本発明に係る変換器では、ポンプに作用する減衰圧が調整され、ポンプを駆動する自然力の変動を均一化することができる。さらに、取り出される電力を均一化するために、両液圧機械の適切な制御によって、液圧アキュムレータからの圧力媒体流れおよび液圧アキュムレータへの圧力媒体流れを調整することができる。
【0015】
調節可能な液圧機械は、有利には、4象限運転において、液圧機械の出力軸の回転方向と回転速度とを一定にしたまま運転することができるように形成されている。
【0016】
このような切換によって、たとえば、第1の液圧機械により供給されるトルクが、予め規定されたトルクを発電機に加えるために十分でない場合には、第2の液圧機械をモータとして運転することが可能となる。しかし、第1の液圧機械を介してトルク過多が提供される場合には、第2の液圧機械がポンプとして運転されてもよく、これによって、第2の液圧機械を介して、液圧アキュムレータの加圧が行われる。その後、この液圧アキュムレータは、のちの時点で発電機を駆動するために放圧されてよい。
【0017】
本発明に係る変換器アッセンブリは、このような複数の変換器を有している。これらの変換器には、1つの共通の液圧アキュムレータユニットが対応配置されている。
【0018】
液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器を制御する本発明に係る方法では、両液圧機械の圧送/押退け容積が、ポンプからの圧力媒体体積流量またはポンプへの圧力媒体体積流量、液圧アキュムレータユニットからの圧力媒体体積流量または液圧アキュムレータユニットへの圧力媒体体積流量、タンクからの圧力媒体体積流量またはタンクへの圧力媒体体積流量、ポンプの出口圧、液圧アキュムレータユニットの圧力、タンク圧、液圧モータおよび電気機械(発電機)の回転数または液圧機械および発電機におけるトルクに関連して調整される。
【0019】
変換器の1つの態様では、両液圧機械が直列に接続されており、第2の液圧機械が、第1の液圧機械の上流側に配置されており、液圧アキュムレータユニットに第1の液圧機械と第2の液圧機械との間の圧力が加えられている。
【0020】
本発明によれば、第1の液圧機械の低圧ポートが、タンクまたは低圧に接続されていてよい。
【0021】
本発明の1つの態様では、さらに別のPTOが設けられており、このPTOに第3の液圧機械が対応配置されており、この第3の液圧機械が、同じく電気機械に作用結合されていてよい。第3の液圧機械は、有利には、第2の液圧機械に対して液圧的に並列に接続されており、第1の液圧機械が、第2の液圧機械にも第3の液圧機械にも対応配置されていて、ひいては、第2の液圧機械および第3の液圧機械にそれぞれ直列に接続される。
【0022】
本発明の1つの変化態様では、液圧アキュムレータユニットに、冒頭で説明した液圧機械に左右されずに液圧アキュムレータユニットを介して駆動可能である、付加発電機と付加液圧機械とを備えた電気式の付加ユニットが対応配置されていてよい。
【0023】
少なくとも第2の液圧機械は、開いたかまたは閉じられた液圧回路に配置されていてよい。
【0024】
閉じられた回路の態様では、漏れを補償するために、チャージポンプが設けられてよい。
【0025】
上述したように、PTOは、波力運転式でもよいし、風力運転式でもよいし、その他の再生可能なエネルギによって駆動されていてもよい。
【0026】
液圧アキュムレータユニットは、並列に接続された複数の液圧アキュムレータ(液圧アキュムレータ列)から成っていてよい。
【0027】
液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器を制御する方法では、まず、ポンプの出口における目下の圧力媒体体積流量が決定されるように、液圧機械の圧送/押退け容積の調整が行われるようになっている。その後、PTOのこの出口値に関連して、第1の液圧機械の圧送/押退け容積が算出され、これに基づき、PTOのポンプの出口において調整されなければならない目下の相応の減衰圧が決定される。さらに、液圧アキュムレータユニット内の圧力が決定され、予め決定された減衰圧とシステムのタンク圧との間の圧力差と、第1の液圧機械の決定された圧送/押退け容積とから、第1の液圧機械のトルクが決定される。その後、電気機械に所望のトルクひいては所望の電力が生じるように、電気機械の所望の電力放出量と、第1の液圧機械の予め算出されたトルクとから、第2の液圧機械の圧送/押退け容積が調整される。このアルゴリズムが絶えず繰り返され、これによって、PTOに取り込まれる運動エネルギの変動が激しい場合でも、電気機械において、十分に一定の電力を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器の第1の実施の形態の回路図である。
【
図2】PTOを介して取り込まれた運動学的な出力と、電気機械において取り出された均一化された電力(電気的な出力)とを示すための線図である。
【
図3】2つのPTOを備えた変換器の実施の形態を示す図である。
【
図4】付加的な発電機・液圧機械ユニットを備えた変換器の実施の形態を示す図である。
【
図5】閉じられた液圧回路を備えた変換器の実施の形態を示す図である。
【
図6】
図5に示した変換器に対する択一的な実施の形態を示す図である。
【
図7】
図3に示した実施の形態に類似して2つの変換器を備えた変換器アッセンブリを示す図である。
【0029】
本発明の有利な実施の形態を以下に概略図につき詳しく説明する。
【0030】
図1には、運動エネルギ、たとえば波力エネルギ、潮位差または風力エネルギを電気エネルギに変換する本発明に係る変換器1の第1の実施の形態の著しく簡単な回路図が示してある。説明を簡単にするために、本発明にとって重要でない構成エレメント、たとえば圧力、体積流量、トルク、回転速度等を検出するためのセンサ、液圧式の調整/制御エレメントおよび制御オイルポンプ等は省略してあり、本発明にとって重要な構成エレメントだけが図示してある。
【0031】
すでに冒頭で述べたように、たとえば波力エネルギプラントはPTO2を有している。このPTO2は、
図1に示していない浮体(ブイ)を備えている。この浮体は海況によって揺動運動を実施する。この揺動運動は伝達手段(図示せず)を介してポンプ4に伝達される。このポンプ4は、
図1に示した実施の形態では、差動シリンダとして形成されている。PTO2は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102009016916号明細書に説明されているように、波動によって旋回させられる、いわゆる「ウェーブプレート」として形成されていてもよい。
【0032】
風力エネルギプラントに用いられる変換器の場合には、あとで詳しく説明するように、PTO2が、ポンプを相応に駆動する風車を備えて形成される。
【0033】
図1に示した液圧シリンダ(ポンプ4)に設けられた圧力室は、液圧式の整流器6を介して吐出し管路8とタンク管路10とに接続されている。後者、つまり、タンク管路10はタンクT内に開口している。図示の実施の形態では、液圧式の整流器6が、4つの逆止弁12,14,16,18を備えた逆止弁ユニットによって形成されている。液圧シリンダの底側の圧力室20は逆止弁14,18を介して、また、液圧シリンダの環状室22は他方の両逆止弁12,16を介して、吐出し管路8もしくはタンク管路10に接続されている。逆止弁12,14は、吐出し管路8から対応配置された圧力室22,20の方向への圧力媒体流れを遮断し、逆止弁16,18は、対応配置された圧力室22,20からタンク管路10の方向への圧力媒体流れを遮断する。したがって、逆止弁ユニットによって、液圧シリンダのピストン24の運動方向に関係なく、圧力媒体が吐出し管路8内に圧送され、タンク管路10から吸い込まれる。
【0034】
吐出し管路8は、以下で第2のまたは上流側の液圧機械26と呼ぶ液圧機械のポートAに接続されている。液圧機械26は、たとえばラジアルピストン機械またはアキシャルピストン機械として形成されていてよく、トルク・回転数逆転を伴う4象限運転で運転することができる。第2の液圧機械26の出力軸28は、以下で発電機30と呼ぶ電気機械を駆動する。出力軸28には、第1の液圧機械32が間接的にまたは直接的に連結されている。この第1の液圧機械32の構造は、第2の液圧機械26の構造に対応していてよい。すなわち、第1の液圧機械32も回転方向およびトルクの逆転を許容している。第1の液圧機械32の入口ポートAは、第2の液圧機械26の出口ポートBに流入管路34を介して接続されている。この流入管路34から、アキュムレータ管路36が分岐している。このアキュムレータ管路36は液圧アキュムレータユニット38に通じている。この液圧アキュムレータユニット38は、並列に接続された複数の液圧アキュムレータから形成することができる。これらの液圧アキュムレータは、たとえばガス圧式アキュムレータまたはばね式アキュムレータとして形成されていてよい。
【0035】
また、第1の液圧機械32の低圧ポートBはタンク管路10に接続されている。
【0036】
以下にさらに詳しく説明するように、両液圧機械26,32の圧送/押退け容積は、発電機30において、波形に追従した前述した変動する電力が取り出されるのではなく、均一な電力取出しが行われるように、制御ユニット40を介して調整される、つまり、変化させられる。このことは、吐出し管路8内の減衰力ひいてはPTO2の運動速度の調整によって行われる。
【0037】
本発明に係るこの制御法を以下に説明する。第1の方法ステップでは、PTO2のポンプ4を介して吐出し管路8内に発生させられる、ポンプ4へのもしくはポンプ4からの目下の圧力媒体体積流量FlowWが決定される。この目下の体積流量FlowWは、測定されてもよいし、PTO2の運動に基づくアルゴリズムを介して設定されてもよい。
【0038】
続くステップでは、第1の液圧機械32の圧送/押退け容積が、以下の公式1
Disp1=FlowW×1000/Speed・・・公式1
により決定される。ここで、Disp1は、第1の液圧機械32の圧送/押退け容積(cm
3/回転)であり、Speedは、出力軸28の回転速度(回転/分)である。
【0039】
第3のステップでは、設定されたアルゴリズムから、必要となる減衰力Press1が決定される。
【0040】
さらに、液圧アキュムレータユニット38内の圧力が決定され、その後、第1の液圧機械32により加えるべきトルクTorque1が、以下の公式
Torque1=Disp1×(Press1-Press2)/(20×π)・・・公式2
により算出される。
【0041】
システムの所望の電力取出し量は、発電機30に作用するトルクTorqueGenを、以下の公式
Power Output=2×π×TorqueGen×Speed/60000・・・公式3
に従って算出して決定する。ここで、「Power Output」は、発電機30における電力取出し量である。
【0042】
この電力取出し量を達成するために、第2の液圧機械26の圧送容積または押退け容積は、両液圧機械26,32を介して供給されるトルクの総和から、発電機30における所望のトルクが得られるように調整される。このトルクバランスは、以下の公式
TorqueGen=Torque1+Torque2・・・公式4
によって得られる。ここで、Torque2は、以下の公式
Torque2=Disp2×(Press2-PressT)/(20×π)・・・公式5
により算出される。ここで、Press2は、液圧アキュムレータユニット38内の圧力を表しており、PressTは、たとえば4〜5barの範囲内であってよいタンク圧を表している。
【0043】
その後、続く調整ステップでは、以下の等式
FlowB=Disp2×Speed/1000・・・公式6
により、第2の液圧機械26を介した圧力媒体体積流量が決定され、最終的に以下の等式
FlowA=FlowW-FlowB・・・公式7
により、液圧アキュムレータユニット38への正味体積流量または液圧アキュムレータユニット38からの正味体積流量ひいては液圧アキュムレータユニット38の加圧状態が決定される。
【0044】
こうして、波動またはその他の自然力に関連して変動するPTO2の運動エネルギを、発電機30において取り出されるほぼ一定の電力に変換することができる。
【0045】
このことを
図2に基づき説明する。
図2には、PTO2から変換器1に供給された入口側の運動学的な出力(動力)と、発電機30において取り出された電気的な出力(電力)とを比較した線図が示してある。PTO2を介して取り込まれた出力は、整流器6があるにもかかわらず、波動に相応して比較的強く変動しているが、発電機30において取り出された電気的な出力は、ほぼ一定のままであることが認められる。このとき、液圧アキュムレータユニット38の加圧状態は、その都度システムに取り込まれる出力に対して最適に調整されている。したがって、前述した調整法では、PTO2において取り込まれた入口側の出力に関連して、液圧機械32を介して、液圧アキュムレータユニット38内の圧力Press2ひいては圧力差も変化させられる。
【0046】
図3には、
図1に示した実施の形態の変化形態が示してある。この変化形態では、2つのPTO2,2’が並列に接続されている。両PTO2,2’の各々は、
図3によれば、1つのポンプ4;4’を備えて形成されている。一方のポンプ4と、両液圧機械26,32、液圧アキュムレータユニット38および発電機30との接続は、
図1に示した実施の形態に対応しているので、これに関しては、前述した記載を参照することにする。他方のPTO2’のポンプ4’も同じく液圧シリンダとして液圧式の整流器6’を備えて前述した構造で形成されている。液圧ポンプ4’の吐出し側は、別の吐出し管路42を介して第3の液圧機械44の入口ポートAに接続されている。第3の液圧機械44も同じく出力軸28に作用接続されていて、ひいては、所定の割合のトルクに寄与する。第3の液圧機械44のポートBは流入管路34に接続されており、これによって、第3の液圧機械44のポートBと、第2の液圧機械26のポートBと、液圧アキュムレータユニット38と、第1の液圧機械32のポートAとが圧力媒体接続されている。これにより、第1の液圧機械32と、液圧アキュムレータユニット38と、発電機30とが、両PTO2,2’に対応配置されている。吐出し管路8,42内の減衰力とPTO2,2’の運動速度との制御は、前述した調整アルゴリズムに従って行われる。
【0047】
図4には、
図1に示した実施の形態の変化形態が示してある。この変化形態では、アキュムレータ管路36からアキュムレータ分岐管路46が分岐している。このアキュムレータ分岐管路46は、別のモータ・発電機ユニット48に圧力媒体を供給する。このモータ・発電機ユニット48は、原理的には、付加発電機50と付加液圧機械52とから成っている。この付加液圧機械52は、ポートAを介してアキュムレータ分岐管路46に接続されていて、ポートBを介してタンクTに接続されている。付加発電機50と付加液圧機械52との構造は、前述した実施の形態の相応の構成エレメントに対応していてよい。
【0048】
付加的なモータ・発電機ユニット48は、PTO2を介して取り込まれた出力が、発電機30において取り出される電力を上回っていて、液圧アキュムレータユニット38が相応に加圧されている場合に、制御ユニット40を介して制御される。前述した実施の形態では、少なくともポンプ4,4’と、対応配置された液圧機械26,44とが、開いた液圧回路において運転される。
【0049】
図5に示した実施の形態では、ポンプ4と第2の液圧機械26とが、閉じられた液圧回路において運転される。この液圧回路は、
図5に極めて簡単に示してある。図示の実施の形態では、ポンプ4が両ロッドシリンダとして形成されている。この両ロッドシリンダの、等しい横断面を備えて形成された圧力室54,56は、液圧式の整流器(図示せず)と作業管路58,60とを介して第2の液圧機械26のポートA,Bに接続されており、これによって、両液圧機械26,32の旋回角の相応の調整によって、PTO2に作用する減衰力を前述した形式で調整することができる。
図5に示した実施の形態では、さらに、出力軸28を介して駆動されるチャージポンプ62が設けられている。このチャージポンプ62は、閉じられた液圧回路に予圧を発生させるかまたはシステムの制御素子(図示せず)を制御するための制御圧を提供するために使用することができる。
【0050】
図6には、風力エネルギプラントまたは流体流れを利用するその他のプラントにおいて使用することができる変換器1の実施の形態が示してある。この実施の形態では、風車64が、一定の圧送/押退け容積を備えて形成された液圧機械66を自体公知の形式で直接駆動する。この液圧機械66は、閉じられた回路において第2の液圧機械26に前述した形式で接続されている。風車64の駆動時には、定容量型の液圧機械66が、前述した実施の形態同様、ポンプとして作用し、第2の液圧機械26を駆動する。閉じられた液圧回路の加圧のために、やはり、チャージポンプ62が設けられていてよい。発電機30、液圧機械32および液圧アキュムレータ38に関して、この実施の形態は、
図5に示した実施の形態に対応しているので、詳しい説明は省略する。
【0051】
図6に示した実施の形態では、互いに液圧的に接続された両液圧機械26,66によって、流体静力学式の伝動装置が実現される。この流体静力学式の伝動装置の代わりに、機械式の伝動装置が設けられている場合でも、
図5および
図6に示した形式で、液圧機械32と液圧アキュムレータ38とを使用することができる。この場合には、液圧機械32が、
図5および
図6のように、機械式の伝動装置の出力軸28と発電機30との間の機械的な結合部に挿入されていてもよいし、機械式の伝動装置の動力取出し装置に装着されていてもよい。
【0052】
図7には、前述した変換器のうちの2つの変換器1,1’が共に1つの液圧アキュムレータ38に対応配置されている変換器アッセンブリが示してある。
図3に示した実施の形態に類似して、各変換器1,1’は、調節可能な3つの液圧機械32,26,44;32’,26’,44’を備えて形成されている。これらの液圧機械32,26,44;32’,26’,44’は、1つの共通の出力軸28,28’を介して、それぞれ対応配置された発電機30,30’に作用接続されている。ポンプ4の吐出し側は吐出し管路8を介して、一方では、第3の液圧機械44’のポートAに接続されていて、他方では、変換器1の液圧機械44のポートAに接続されている。相応して、ポンプ4’の吐出し管路42は変換器1,1’の第2の液圧機械26,26’のポートAに接続されている。言い換えると、各吐出し管路8,42が分岐して、第2の液圧機械26,26’もしくは第3の液圧機械44,44’の入口ポートAに通じている。液圧機械26,44,26’,44’の別のポートBは、前述した実施の形態に相応して、それぞれ変換器1;1’の対応配置された流入管路34,34’に接続されている。変換器1の、第1の液圧機械32のポートAに接続された流入管路34から、
図1および
図3に示した実施の形態同様、液圧アキュムレータユニット38に接続されたアキュムレータ管路36が分岐している。相応して、変換器1’の流入管路34’から、アキュムレータ接続管路68が分岐している。このアキュムレータ接続管路68はアキュムレータ管路36に開口しており、これによって、液圧アキュムレータユニット38が、第1の液圧機械32,32’のポートAと、第2の液圧機械26,26’のポートBと、第3の液圧機械44,44’のポートBとに圧力媒体接続されている。複数の制御ユニット40,40’または1つの共通の制御ユニット40を介して、前述した液圧機械32,26,44,32’,26’,44’の旋回角が、前述した方法に類似して調整され、これによって、各発電機30,30’において、ほぼ一定の電力が取り出される。その際には、吐出し管路8,42内の相応の減衰圧が調整される。
【0053】
当然ながら、
図7に示した変換器アッセンブリは、2つよりも多くの変換器を備えて形成されていてもよい。
【0054】
原理的には、
図1〜
図6に示した変化形態が、
図7に示した変換器アッセンブリに転用されてもよい。
【0055】
液電式の変換器、つまり、液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器、このような複数の変換器を備えた変換器アッセンブリおよび液圧エネルギを電気エネルギに変換するための変換器を制御する方法が開示されている。本発明に係る変換器、変換器アッセンブリおよび方法では、各変換器の2つの調節可能な液圧機械が制御されて、PTOに設けられたポンプの吐出し管路内で、予め規定された減衰圧が、PTOに取り込まれた機械的な出力に関連して調整されるようになっている。