特許第5744324号(P5744324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744324
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】板状ガスケット及びシール構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20150618BHJP
   F16J 15/14 20060101ALI20150618BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   F16J15/08 N
   F16J15/14 C
   F02F11/00 L
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-509900(P2014-509900)
(86)(22)【出願日】2012年4月9日
(86)【国際出願番号】JP2012002475
(87)【国際公開番号】WO2013153570
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2014年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230261
【氏名又は名称】日本メタルガスケット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】植田 耕作
(72)【発明者】
【氏名】岡野 順
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−336901(JP,A)
【文献】 特開平11−336902(JP,A)
【文献】 特開2005−233222(JP,A)
【文献】 特開2008−75483(JP,A)
【文献】 特開2005−16552(JP,A)
【文献】 特開2000−145972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08、15/14
F02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材の第1接合面と第2部材の第2接合面との間に板状ガスケットが挟持されると共に、第1部材の側面及び第2部材の側面と第3部材とが付き合わせてなる3面合わせ部に液状ガスケットが介装されてなるシール構造で使用される上記板状ガスケットであって、
第3部材側に開放される領域を区画するように外周側のビードが延在し、その外周側のビードは、上記3面合わせ部に向けて延びて端面が上記第3部材に対向して上記液状ガスケットが充填される端面側ビード部を備え、
上記端面側ビード部は、ビード凸部裏面側の空間が、上記3面合わせ部に連続し且つ上記端面に向かうにつれて拡大するようにビード形成された拡大部を有することを特徴とする板状ガスケット。
【請求項2】
上記端面側ビード部は、ハーフビードであり、上記拡大部は、平面視において、ビードの延在方向が上記3面合わせ部側に向かうにつれて当該3面合わせ部側に向かう方向と直交する方向に変化することで、ビード凸部裏面側の空間が拡大することを特徴とする請求項1に記載した板状ガスケット。
【請求項3】
上記端面側ビード部は、幅方向に並ぶ2つのハーフビードで構成されることで、上記ビード凸部裏面側の空間が凹形状に画成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した板状ガスケット。
【請求項4】
複数の基板が積層されて構成され、上記複数の基板の少なくとも2つの基板に上記端面側ビード部を備える外周側のビードが形成され、上記2以上の端面側ビード部の少なくとも一つの端面側ビード部に上記拡大部を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した板状ガスケット。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の板状ガスケットを、第1部材の第1接合面と第2部材の第2接合面との間に挟持し、第1部材の端面及び第2部材の端面と第3部材とが付き合わせてなる3面合わせ部に液状ガスケットが介装されてなることを特徴とするシール構造。
【請求項6】
上記第1部材はシリンダブロックであり、第2部材はシリンダヘッドであり、第3部材はチェーンケースであることを特徴とする請求項5に記載したシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つの組付け部材が付き合わされて構成される3面合わせ部をシールする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用などに搭載されるエンジンにおいては、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に板状ガスケットが介挿され、その板状ガスケットによって、エンジンの燃焼ガスや冷却水、オイル等に対する密封性を保っている。例えば、OHCエンジンでは、シリンダヘッドの上部に設けられたカムシャフト用のチェーンケースが、シリンダヘッド及びシリンダブロックの側面に配置されることで、上記3つの組付け部材の対向部位置に対し、当該3つの組付け部材が付き合わされて構成される3面合わせ部が形成される。
【0003】
そして、上記3面合わせ部を形成するシリンダヘッド及びシリンダブロックの側面とチェーンケースとの間の隙間に液状ガスケットが介装されて当該3面合わせ部をシールする。このとき、板状ガスケットは、例えば、チェーンケースとの境界部(チェーンケースと対向する部分)が僅かに内側(チェーンケースから離れる方向)にオフセットして配置されることで、チェーンケースとの境界部分に形成された空間に液状ガスケットが充填されることとなる。逆に、板状ガスケットは、チェーンケース側に僅かに突き出るように設定されることもある。
【0004】
ところが、近年、エンジンの高性能化に伴って、板状ガスケットとして、ステンレス製などの薄板金属板を組み合わして構成された金属ガスケットが多く採用されており、このため、ガスケットの締付け厚さが従来に比べて小さくなってきている。したがって、上記液状ガスケットが充填される空間が狭くなって十分な液状ガスケット量を配置出来ないおそれがあったり、金属ガスケット断面と液状ガスケットとの接触面積が小さく、エンジン稼働時のシリンダブロック、シリンダヘッド、チェーンケースの位置変動や熱膨張差によって発生する部材間の相対変位が大きい場合に、液状ガスケットが金属ガスケットから剥離するおそれがあったりする。このような不具合は、エンジンオイルが外部に漏れる等の不具合に繋がるおそれがある。
このような不具合に鑑みて、シリンダヘッド及びシリンダブロックの側面に形成された3面合わせ部のシール構造としては、例えば特許文献1及び2に記載されるシール構造がある。
【0005】
特許文献1に記載のシール構造では、金属薄板を3枚以上積層して板状ブラケットとし、その積層した3枚以上の金属薄板のうちの中間位置の金属薄板に対し、3面合わせ部に隣接する部位に切欠部を形成する。そして、その切欠部には、高圧縮特性を有する弾性部材が、エンジンに装着されたときにフロントカバーとシリンダヘッド及びシリンダブロックとの間を充填するように設けられている。
また特許文献2には、3面合わせ部において、シリンダヘッド及びシリンダブロックの接合面に対し傾斜部を設けたガスケットシール構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−336901号公報
【特許文献2】特開2005−233222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の技術では、3面合わせ部でのシール構造が液状ガスケット(弾性部材)の圧縮復元性に依存するものであるため、十分な復元量を得るには所要の厚さが必要であり、薄肉の板状ガスケットに適用することが困難である。
また、特許文献2に記載の技術は、接合面の傾斜面を形成することで液状ガスケットを保持する空間を設けたものであるが、3面合わせ部を構成する部材側に傾斜面を形成するような特別な加工が必要となる。
【0008】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、薄肉の金属ガスケットを採用しても、3面合わせ部において液状ガスケットを保持しうる隙間量を増やして、3面合わせ部での液状ガスケットの密着性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、第1部材の第1接合面と第2部材の第2接合面との間に板状ガスケットが挟持されると共に、第1部材の側面及び第2部材の側面と第3部材とが付き合わせてなる3面合わせ部に液状ガスケットが介装されてなるシール構造で使用される上記板状ガスケットであって、
第3部材側に開放される領域を区画するように外周側のビードが延在し、その外周側のビードは、上記3面合わせ部に向けて延びて端面が上記第3部材に対向して上記液状ガスケットが充填される端面側ビード部を備え、
上記端面側ビード部は、ビード凸部裏面側の空間が、上記3面合わせ部に連続し且つ上記端面に向かうにつれて拡大するようにビード形成された拡大部を有することを特徴とする。
【0010】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記端面側ビード部は、ハーフビードであり、上記拡大部は、平面視において、ビードの延在方向が上記3面合わせ部側に向かうにつれて当該3面合わせ部側に向かう方向と直交する方向に変化することで、ビード凸部裏面側の空間が拡大することを特徴とする。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、上記端面側ビード部は、幅方向に並ぶ2つのハーフビードで構成されることで、上記ビード凸部裏面側の空間が凹形状に画成されることを特徴とする。
【0011】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した構成に対し、複数の基板が積層されて構成され、上記複数の基板の少なくとも2つの基板に上記端面側ビード部を備える外周側のビードが形成され、上記2以上の端面側ビード部の少なくとも一つの端面側ビード部に上記拡大部を形成したことを特徴とする。
【0012】
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の板状ガスケットを、第1部材の第1接合面と第2部材の第2接合面との間に挟持し、第1部材の端面及び第2部材の端面と第3部材とが付き合わせてなる3面合わせ部に液状ガスケットが介装されてなることを特徴とするシール構造を提供するものである。
次に、請求項6に記載した発明は、請求項5に記載した構成に対し、上記第1部材はシリンダブロックであり、第2部材はシリンダヘッドであり、第3部材はチェーンケースであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、3面合わせ部に向かう上記端面側ビード部は、端面に向かうにつれて拡大するようにビード形成された拡大部によって、当該拡大部の位置は、他の位置よりもバネ剛性が相対的に高く設定される。この結果、ボルト締付けされた場合に、端面側ビード部の少なくとも拡大部よりも端面側のビードの潰れ代が、上記拡大部が無い場合に比べて小さくなる。さらに、上記拡大部によって、液状ガスケットが入り込む(充填される)ビード凸部裏面側の空間が大きく設定される。そして、これら2つの相乗効果によって、3面合わせ部における端面側ビード部側に充填される液状ガスケットが増加して、板状ガスケットと液状ガスケットとの密着性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に基づく実施形態に係る金属ガスケットを説明するための平面図である。
図2】外側のビードの別の例を示す平面図である。
図3】外側のビードを説明する図であり、(a)は図1におけるA−A断面図を、(b)は、図1におけるB−B断面図である。
図4】拡大部を説明する斜視図であり、(a)は液状ガスケットが充填される前の図を、(b)は液状ガスケットが充填されたときの図である。
図5】端面側ビード部の端面側からみた図である。
図6】3面合わせ部を説明する図である。
図7】拡大部の別の例を説明する平面図である。
図8】別例における端面側ビード部の端面側からみた図である。
図9】別例における拡大部を説明する斜視図であり、(a)は液状ガスケットが充填される前の図を、(b)は液状ガスケットが充填されたときの図である。
図10】拡大部の別の例を説明する平面図である。
図11】2枚の基板で構成する場合における端面側ビード部の端面側からみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る金属ガスケット(板状ガスケット)を説明する平面図である。
本実施形態は、シリンダブロック及びシリンダヘッドの側面とチェーンケースとによって3面合わせ部が形成される場合を例に説明する。本発明は、3つの組付け部材が付き合わされて構成される3面合わせ部が構成され、且つ3つの組付け部材のうちの2つの組付け部材間に板状ガスケットが介挿されるシール構造であれば適用可能である。
【0016】
(板状ガスケット)
本実施形態では、板状ガスケットが、シリンダブロック20の接合面とシリンダヘッド30の接合面との間に介装される。本実施形態の板状ガスケットは、金属ガスケットから構成される。金属ガスケットは、ステンレス鋼材などバネ力を発生可能な弾性金属板である基板1を備える。
【0017】
基板1には、図1に示すように、シリンダブロック20の燃焼室に対応して設けられた複数の燃焼室孔2が予め設定した並列方向に沿って開口している。また基板1には、燃焼室孔2を無端状に囲繞するように、燃焼室孔側ビード3が成型されている。燃焼室孔側ビード3は、基板1を構成する金属板を上面側に凸となるように屈曲成型して形成されたフルビードである。上記燃焼室孔側ビード3よりも外周側の基板1部分には、シリンダブロック20の冷却水領域(冷却水が通過する空間)と板厚方向で対向する位置に、複数の冷却水孔4が複数形成されている。なお、図1中、符号5はボルト孔であり、符号6は油孔である。基板1の外周側には、冷却水孔4を囲うようにその外周に沿ってハーフビードからなる外周側ビード7が形成されている。また、ボルト孔5や油孔6を囲むようにしてビード8が形成されている。
【0018】
また、基板1におけるチェーンケース40側の端縁部(図1中左側)は、対応するシリンダブロック20及びシリンダヘッド30のチェーンケース40側の端縁部と同じ若しくは近似した形状となっている。すなわち、基板1におけるチェーンケース40側の端縁部は、その両端部がそれぞれチェーンケース40側に張り出す張出部1Aを有する。そして、その端縁部に沿って、外周側のビード10が延在すると共に、その外周側のビード10の両側は、上記張出部1Aに沿って延在する。その張出部1Aに沿って延在ビード部分が端面側ビード部11を構成する。
【0019】
ここで、上記外周側のビード10は、基板1の端縁部に完全に沿った形に延在する必要は無く、図2に示すような形状で延在していても良い。要は、第3部材を構成するチェーンケース40側に開放される領域を区画して当該領域からシールするように延在していれば良い。
上記外周側のビード10は、図1のA−A断面である図3(a)のように、1本のハーフビードで構成される。なお、このハーフビードは、下側に凸となるようにビードが形成されているため、凸部裏面側の空間Sは上側に形成されている。
【0020】
ただし、外周側のビード10のうち、上記端面側ビード部11を含む両側部分のビードは、図1及び図1のB−B断面図である図3(b)に示すように、幅方向に並ぶ2つのハーフビード11aで構成される。すなわち、少なくとも端面側ビード部11は、上記2つのハーフビード11aで構成されることで、ビード凸部裏面側の空間Sが凹形状に画成される。
【0021】
上記端面側ビード部11には、ビード凸部裏面側の空間Sが、上記端面に向かうにつれて拡大するようにビード形成された拡大部11Aを有する。本実施形態では、上記拡大部11Aが、ビード端面に形成されている。
上記拡大部11Aは、図1図4図5に示すように、平面視において、ビードの延在方向が上記3面合わせ部側に向かうにつれて当該3面合わせ部側に向かう方向と直交する方向(端面と平行な方向)に変化するように延びる。つまり、拡大部では、上記端面側に向かうにつれて延在方向がビードの幅に変化することで空間Sが拡大している。すなわち、拡大部11Aでは、平面視で、ビードの延在方向が曲がるように曲線形状となることで、上記ビード凸部裏面側の空間Sが拡大する。
【0022】
本実施形態では、幅方向に並ぶ2つのハーフビード11aの対向する立上り壁部が離れる方向に変化することで、拡大部でビード凸部裏面側の空間Sが拡大する方向に変化する。
なお、燃焼室周りには、シム板が基板1に積層されている。シム板の外縁部は、冷却水領域までである。
【0023】
(シール構造)
3面合わせ部近傍を表す図6に示すように、上記構成の基板1を有する金属ガスケットが、シリンダブロック20の接合面とシリンダヘッド30の接合面との間に介挿されることで、当該金属ガスケットが、シリンダブロック20の接合面とシリンダヘッド30の接合面との間に挟持される。そして、不図示のボルトでシリンダブロック20とシリンダヘッド30とを金属ガスケットを間に挟んだ状態で締結する。
【0024】
さらに、上記シリンダブロック20及びシリンダヘッド30の側面に対し、横方向からチェーンケース40を近接する。そして、上記シリンダブロック20、シリンダヘッド30の張出部1A側面と、チェーンケース40の対向面との間で形成される3面合わせ部に対し液状ガスケット50を充填したのちに、当該チェーンケース40を、不図示のボルトで、シリンダブロック20、シリンダヘッド30にボルト締結して固定する。
ここで、シリンダブロック20が第1部材を構成し、シリンダヘッド30が第2部材を構成し、チェーンケース40が第3部材を構成する。
【0025】
(作用効果について)
上記外周側のビード10の両端部側に形成された端面側ビード部11は、拡大部11Aの位置が相対的にバネ剛性が高く設定される。すなわち、拡大部11Aは、ビード端面(3面合わせ部側)に向かうにつれて上記空間Sが拡大するようにビードの幅が広くなるように変化することで、ハーフビードが直線状に延在している場合に比べてバネ剛性が高くなる。特に、本実施形態では、段差的にビード形状を変化させているのでよりバネ剛性が高く設定されている。
【0026】
このため、シリンダブロック20とシリンダヘッド30をボルト締付けした際に、当該拡大部11Aでのビードの潰れ代が相対的に小さくなる。つまり、拡大部11Aよりも端面側に位置する端面側ビード部11部のビード潰れ代が小さくなる。
また、拡大部11Aによって、液状ガスケット50が入り込む、つまり液状ガスケット50が充填されるビード凸部裏面側の空間Sが大きく設定される。なお、ビード凸部表面側のビード近傍の空間も、相対的に広くなることで確保できる。
【0027】
これら2つ作用の相乗効果によって、3面合わせ部における、端面側ビード部11部側に充填される液状ガスケット50が増えて、板状ガスケットと液状ガスケット50との密着性が向上すると共に、その量を増やすことが可能となる。図1図4(b)に、液状ガスケット50が充填された位置を示している。
以上の結果、エンジン稼働による隙間変動や熱膨張による変位に対して追従可能な量の液状ガスケット50がビード側に充填されることとなり、液状ガスケット50によるシール性が向上する。
【0028】
上記拡大部11Aでの空間Sの拡大量は、バネ剛性を高くする観点から、ビード高さより大きな変化量であることが好ましい。本実施形態では、ビード高さの2倍以上4倍以下となるように設定している。また上記拡大部11Aを形成する位置は、端面側ビード部11における端面から10mm以内に形成されることが好ましい。拡大部11A位置を端面から余り離し過ぎると、端面でのビードの開口の断面積が拡大部11Aでの断面積よりも小さくなる可能性がある。
【0029】
ここで、上記実施形態では、幅方向で並ぶ2つのハーフビード11aに上記拡大部11Aを形成して、端面側ビード部11の端面側の形状を、平面視でT字状の形状とした。ただし、本実施形態はこれに限定されない。
例えば、図7図9に示すように、幅方向で並ぶ2つのハーフビードのうちの一方のハーフビード11aに対してだけ拡大部11Aを形成して、端面側ビード部11の端面側の形状を、平面視で、L字状の形状としても良い。
【0030】
また、上記実施形態では、拡大部11Aを、端面に向けて平面視で段差状に幅が広がるように形成する場合で説明したが、拡大部11Aを、図10に示すように、端面に向けて連続した曲線状に幅が広がるようにビード形成しても良い。但し、幅を広げる量がビード高さ以上となるように設定する。
また、上記板状ガスケットでは、端面側ビード部11の凸部が下側(シリンダガスケット側)に突出する場合で説明しているが、端面側ビード部11の凸部は、上側に突出していても良い。
【0031】
また、上記実施形態では、端面側ビード部11が幅方向で並ぶ2つのハーフビード11aで構成される場合で説明した。端面側ビード部11は、一本のハーフビードで構成されていても良い。この場合でも、拡大部11Aは、空間Sが拡大するようにビードの延在方向が上記3面合わせ部側に向かうにつれて当該3面合わせ部側に向かう方向と直交する方向に変化させたビードを形成すれば本発明の効果を奏する。
【0032】
また、上記説明では、板状ガスケットである金属ガスケットが、1枚の基板1で構成する場合で説明している。金属ガスケットは、積層されてなる複数枚の基板1で構成されていても良い。各基板1は、上述のとおり薄板金属板とする。
そして、上記複数の基板1のうちの2以上の基板1に対して上記端面側ビード部11を形成し、その複数の端面側ビード部11のうちの少なくとも1つの端面側ビード部11に上記拡大部11Aを形成するようにしても良い。複数枚の基板1に対して端面側ビード部11を形成する場合には、図11に示すように、積層方向で隣り合う2つの基板1に上記端面側ビード部11を形成することが好ましい。
【0033】
また、上記実施形態の拡大部11Aは、ビード幅を拡大することでビード凸部裏面側の空間Sが拡大する場合を例示した。拡大部11Aを構成するビード形成はこれに限定されない。拡大部11Aは、ビード幅の拡大と共に、又はビード幅の拡大の代わりにビード高さが端面に向けて高くなるようにビード形成することで、ビード凸部裏面側の空間Sが大きくなるように設定しても良い。
端面側ビード部11の一部のビード高さが、端面(チェーンケース側)に向けて段差的に若しくは連続的に高くなるように変化することで、拡大部11Aのバネ剛性が相対的に高く設定される結果、上記作用効果を奏することが出来る。
【符号の説明】
【0034】
1 基板
1A 張出部
10 外側のビード
11 端面側ビード部
11A 拡大部
11a ハーフビード
20 シリンダブロック
30 シリンダヘッド
40 チェーンケース
50 液状ガスケット
S ビード凸部裏面側の空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11