特許第5744326号(P5744326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744326
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】燃料ポンプの改良
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/18 20060101AFI20150618BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20150618BHJP
   F02M 59/26 20060101ALI20150618BHJP
   F02M 59/10 20060101ALI20150618BHJP
   F04B 53/14 20060101ALI20150618BHJP
   F04B 9/04 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   F04B21/00 A
   F02M59/44 K
   F02M59/44 J
   F02M59/26 330J
   F02M59/26 330K
   F02M59/10 A
   F04B21/04 Z
   F04B9/04 A
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-513107(P2014-513107)
(86)(22)【出願日】2012年5月16日
(65)【公表番号】特表2014-518983(P2014-518983A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2012059177
(87)【国際公開番号】WO2012163686
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2014年1月27日
(31)【優先権主張番号】11168571.5
(32)【優先日】2011年6月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514160386
【氏名又は名称】デルファイ・インターナショナル・オペレーションズ・ルクセンブルク・エス・アー・エール・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ロス,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヨラッハ,ライネル
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−276508(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3133205(JP,U)
【文献】 特表2006−527329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/18
F02M 59/10
F02M 59/26
F02M 59/44
F04B 9/04
F04B 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンで使用するための高圧燃料ポンプ組立体(200)であって、
プランジャーポンピングストロークの間に、ポンプチャンバー(220)の中の燃料を加圧するためのポンピングプランジャー(201;1200)であって、プランジャー穴(216)の中に摺動可能に受け入れられている、ポンピングプランジャー(201;1200)と、
駆動部と協働可能なライダー部材(206)と、
前記プランジャーポンピングストロークを行うために、前記ライダー部材(206)から前記ポンピングプランジャー(201;1200)へ駆動力を付与するためのインターフェース部材(250)であって、前記ライダー部材(206)と協働可能である境界面側面(256;1204)を有している、インターフェース部材(250)と
を備え、
前記ポンピングプランジャー(201;1200)が、前記ポンプチャンバー(220)から前記ポンピングプランジャー(201;1200)の1つまたは複数の接触表面(227、238;1206、1222)へ燃料を送達することによって前記接触表面(227、238;1206、1222)を潤滑するための流体送達手段(228、230、232、234、236;1216、1220、1224)を備えており、
前記インターフェース部材が、前記ポンピングプランジャー(201)の接触面(227)と協働するプランジャー接触表面(258)を有するタペット(250;1150)を備えており、
前記流体送達手段(228、230、232)が、前記ポンプチャンバー(220)から前記ポンピングプランジャー(201)の前記接触面(227)へ燃料を送達するように作用し、これにより、前記ポンピングプランジャー(201)の前記接触面(227)と前記タペット(250;1150)の前記プランジャー接触表面(258)との間の潤滑を提供する、
ポンプ組立体(200)。
【請求項2】
前記流体送達手段が、前記ポンピングストロークの間に、前記流体送達手段(228、232、234、236)の中の燃料の圧力を制限するための制限器(230)を含む、請求項1に記載のポンプ組立体。
【請求項3】
前記制限器(230)が、前記接触表面(227、238)またはそれぞれの接触表面(227、238)から離れている、請求項2に記載のポンプ組立体。
【請求項4】
前記ポンピングプランジャー(201)の第1の端部(224)が、前記ポンプチャンバー(220)の中に受け入れられており、前記制限器(230)が、前記ポンピングプランジャー(201)の前記第1の端部(224)において、前記ポンプチャンバー(220)内へ開口している、請求項3に記載のポンプ組立体。
【請求項5】
前記流体送達手段が、前記ポンプチャンバー(220)から前記ポンピングプランジャー(201)の前記接触面(227)へ燃料を送達するために、前記ポンピングプランジャー(201)の中に軸方向に延びる通路(228)を含む、請求項1に記載のポンプ組立体。
【請求項6】
前記タペット(1150)が、前記プランジャー接触表面(258)と前記タペット(250)の前記境界面側面(256)との間の流体連通を提供することにより前記タペット(250)の前記境界面側面(256)と前記ライダー部材(206)との間の潤滑を提供するための通路手段(1052;1152)を含む、請求項1に記載のポンプ組立体。
【請求項7】
前記インターフェース部材が、前記ポンピングプランジャー(1200)の足部(1208)を含み、前記流体送達手段(1216、1220、1224)が、前記ポンプチャンバー(220)から前記ポンピングプランジャー(201)の前記境界面側面(1204)へ燃料を送達するように作用し、これにより、前記ポンピングプランジャー(1200)の前記境界面側面(1204)と前記ライダー部材(206)との間の潤滑を提供する、請求項1から4のいずれか一項に記載のポンプ組立体。
【請求項8】
前記流体送達手段(228、234;1216、1220)が、前記ポンプチャンバー(220)から前記ポンピングプランジャー(201;1200)の側面(238;1222)へ燃料を送達するように作用し、これにより、前記ポンピングプランジャー(201;1200)の前記側面(238;1222)と前記プランジャー穴(216)との間の潤滑を提供する、請求項1から7のいずれか一項に記載のポンプ組立体。
【請求項9】
前記流体送達手段が、前記側面(238;1222)に燃料を送達するために、前記ポンピングプランジャー(201;1200)の中に1つまたは複数の半径方向に延びる通路(234;1220)を含む、請求項8に記載のポンプ組立体。
【請求項10】
前記流体送達手段が、前記側面(238)に環状の溝部(302)を含む、請求項8または9に記載のポンプ組立体。
【請求項11】
前記流体送達手段が、前記ポンピングプランジャー(201)の前記接触表面のうちの少なくとも1つ(227、238)に、少なくとも1つの凹部(232、236)を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のポンプ組立体。
【請求項12】
使用に際して前記ポンピングプランジャー(201)の前記接触表面(227、238;1206、1222)、またはそれぞれの接触表面(227、238;1206、1222)において作用する前記潤滑の様式は、境界潤滑または弾性流体潤滑である、請求項1から11のいずれか一項に記載のポンプ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンのコモンレール燃料噴射システムでの使用に適したポンプ組立体に関する。詳細には、本発明は、それに限定しないが、高圧燃料ポンプのための改善されたポンピングプランジャー、およびエンジン駆動のカムまたは他の適当な駆動装置によって駆動される少なくとも1つのポンピングプランジャーを有するタイプの改善された燃料ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ラジアルポンプ設計のコモンレール燃料ポンプの例が、例えば、EP−B−1705368およびEP−A−2050952から知られている。添付の図面の図1は、1つの既知のラジアル燃料ポンプの断面図であり、ここで、従来技術を示すためにこれについて説明することとする。
【0003】
図1のポンプ100は、3つのポンピングプランジャー102を備え、これらの3つのポンピングプランジャー102は、エンジン駆動のカム104の周りに等角度に間隔を置かれた場所に配置されている。それぞれのプランジャー102は、それぞれのポンプヘッド107のハウジング107aの中に設けられたプランジャー穴106の中に取り付けられている。ポンプヘッド107は、ポンプ100の主ポンプハウジング108に取り付けられている。
【0004】
使用に際してカム104が駆動されると、プランジャー102が、同期させられた周期的な(phased, cyclical)方式で、その穴106の中で往復運動させられる。プランジャー102は、往復運動すると、それぞれが、関連するプランジャー穴106の一端部に画定されているポンプチャンバー109の中に燃料の加圧を生じさせる。ポンプチャンバーから共通の高圧供給ライン(図示せず)への燃料の送達が、送達弁(図示せず)によって制御される。高圧ラインは、下流のコモンレール燃料システムのインジェクターへの送達のために、コモンレール、または他のアキュムレーター容量部に燃料を供給する。
【0005】
カム104は、カムリングまたはカムライダー110を支持しており、カムリングまたはカムライダー110には、複数の平坦部112が、それぞれのプランジャー102に対して1つずつ設けられている。タペット114の形態の中間部材が、カムライダー110の上の平坦部112のそれぞれと協働し、関連するプランジャー102に連結しており、カム104が回転するときにタペット114が駆動されると、駆動が、プランジャー102に付与される。それぞれのタペット114が、半径方向外向きに駆動されると、そのそれぞれのプランジャー102が、ポンプチャンバーの容積を低減させるように駆動される。ポンピングサイクルのこの部分は、プランジャー102のポンピングストロークと称され、ポンピングストロークの間に、関連するポンプチャンバーの中の燃料は、相対的に高いレベルに加圧される。
【0006】
ライダー110が、カム104の上に載って、タペット114に軸方向に駆動を付与するので、それぞれのタペット114の基部表面は、ライダー110の関連する平坦部112の協働領域にわたって水平方向に並進させられる。ライダー110に対するタペット114のこの並進は、タペット114およびライダー110の摩擦摩耗を生じさせる。摩擦摩耗は、とりわけ、タペット114の外側縁部において発生する。
【0007】
ライダー110は、作動中にその軸上で回転しようとし、平坦部112は、それぞれのポンピングプランジャー102の軸に対して垂直方向に離れようとするようになっている。このことは、タペット114の基部表面が、傾斜した角度で平坦部に接する傾向にあるということを意味している。このことは、タペット114とライダー110との間のエッジ接触を引き起こし、それは、摩擦摩耗の問題を悪化させる可能性がある。とりわけ、エッジ接触は、結果として局所的な温度上昇を生じさせ、それは、望ましくないことに、燃料ポンプ組立体の中の他の構成要素を加熱する。
【0008】
ライダー110の回転運動に起因して、タペット114は、トルクを受け、次いで、トルクは、プランジャー102に作用する側方荷重を引き起こす。結果として、それぞれのプランジャー102がそのそれぞれのタペット114に係合する場所にも、摩擦摩耗が発生する。プランジャー102は、穴106の中を案内されており、タペット114に作用するトルクが、タペット114をプランジャー102に対して傾斜させるようになっている。したがって、また、それぞれのプランジャー102の端部と対応するタペット114との間の接触も、エッジ接触であり、それは、やはり、高い摩耗速度および局部的な発熱につながる可能性がある。
【0009】
また、プランジャー102に作用する側方荷重も、プランジャー102とヘッドハウジング107aの中の穴106との間の境界面に摩耗を引き起こす。プランジャーと穴との境界面における摩耗は、ポンプの容積効率の損失を結果として生じさせる可能性があり、深刻な場合では、プランジャーの焼付き、およびポンピング機能の損失を結果として生じさせる可能性がある。
【0010】
ライダー110とタペット114との間、タペット114とプランジャー102との間、およびプランジャー102とヘッド穴106との間に摩耗が発生したときに起こる追加的な問題は、摩耗破片が生み出される可能性があるということである。そのような破片が、境界面(例えば、タペット114とライダー110との間)に取り込まれるようになる場合には、摩耗速度の劇的な増加が発生する可能性があり、それは、ポンプの破滅的な故障につながる可能性がある。
【0011】
いくつかの燃料ポンプにおいて、タペットを省略し、その代わりに、例えば、EP−A−2048359に説明されているような足部の形態の一体型のインターフェース部材をポンピングプランジャーに提供することが知られている。これらの場合では、上記に説明されているようなものと同様の摩耗の問題が、プランジャーと穴との間の境界面で、ならびにプランジャー足部とライダー平坦部との間の境界面で起こる。
【0012】
従来技術において、燃料ポンププランジャーの側面接触表面を潤滑するために燃料を使用することが知られている。例えば、特開2002−276508には、燃料ポンプが説明されており、その燃料ポンプでは、燃料入口通路からの燃料を方向付けてプランジャーの側面接触表面を潤滑する溝部が、ポンピングプランジャーに設けられている。EP−A−2088309には、燃料ポンプが説明されており、その燃料ポンプでは、燃料が、ポンプチャンバーから、プランジャーとその対応する穴との間に漏洩し、ある程度の潤滑を側面接触表面に提供し、通路の配置が、ポンプハウジングの中に提供され、漏洩燃料がドレンに戻ることを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この背景に対し、上述の問題が低減または軽減される燃料ポンプ組立体を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様から、本発明は、内燃エンジンで使用するための高圧燃料ポンプ組立体に存在する。燃料ポンプ組立体は、プランジャーポンピングストロークの間に、ポンプチャンバーの中の燃料を加圧するためのポンピングプランジャーであって、プランジャー穴の中に摺動可能に受け入れられている、ポンピングプランジャーと、駆動部と協働可能なライダー部材と、プランジャーポンピングストロークを行うために、ライダー部材からポンピングプランジャーへ駆動を付与するためのインターフェース部材(換言すれば、中間部材)であって、インターフェース部材は、ライダー部材と協働可能である境界面側面を有している、インターフェース部材とを備える。ポンピングプランジャーが、ポンプチャンバーからポンピングプランジャーの1つまたは複数の接触表面へ燃料を送達するための流体送達手段を備え、それによって、接触表面を潤滑する。
【0015】
ポンピングプランジャーの接触表面に流体を送達することによって、ポンピングプランジャーの潤滑は、本発明において、かなり改善されている。結果として、本発明のポンプ組立体における摩耗速度は、以前から知られているポンプ設計のものよりも低く、ポンプ組立体の耐久性および信頼性が改善されている。そのうえ、本発明によって提供される潤滑および冷却の増大に起因して、ポンピングプランジャーなど、ポンプ組立体の構成要素をコーティングする必要も、または別の形で処理する必要もなく、したがって、製造コストを節約することができる。
【0016】
上述の既知の構成と異なり、本発明では、燃料送達手段が、ポンピングプランジャーの中に構成されており、かつポンプチャンバーと連通しており、ポンピングプランジャーの接触表面が、加圧された燃料によって潤滑され、加圧された燃料は、ポンプチャンバーから調達され、かつ燃料送達手段によって接触表面へ方向付けされるようになっている。加圧された燃料の損失を回避するために、流体送達手段は、好ましくは、ポンピングプランジャーの接触表面に燃料を送達し、ポンピングプランジャーの接触表面は、隣接する表面と摺動するか、当接するか、または他には密接接触する。別の言い方をすれば、本発明では、ポンプチャンバーから、流体送達手段を経由して、接触表面へ、燃料の最小限の流れが存在する。
【0017】
好ましくは、流体送達手段が、ポンピングストロークの間に、流体送達手段の中の燃料の圧力を制限するための制限器を含む。制限器が、接触表面、または接触表面のそれぞれから離れていることが可能である。一実施形態では、例えば、ポンピングプランジャーの第1の端部が、ポンプチャンバーの中に受け入れられており、制限器が、ポンピングプランジャーの第1の端部において、ポンプチャンバーの中へ開口している。ポンピングストロークの間に、圧力、したがって、燃料送達手段の中の燃料の量を制限することによって、制限器は、効率の損失を限定し、そうでなければ、流体送達手段の中の燃料がポンプチャンバーの中の燃料と同じ圧力まで加圧された場合には、効率の損失が結果的に生じることとなる。
【0018】
本発明の一実施形態では、インターフェース部材が、ポンピングプランジャーの接触面との協働のための、プランジャー接触表面を有するタペットを含む。流体送達手段が、ポンプチャンバーからポンピングプランジャーの接触面へ燃料を送達する機能を果たし、それによって、ポンピングプランジャーの接触面とタペットのプランジャー接触表面との間の潤滑を提供することが可能である。流体送達手段が、例えば、ポンプチャンバーからポンピングプランジャーの接触面へ燃料を送達するために、ポンピングプランジャーの中に軸方向に延びる通路を含むことが可能である。このように、ポンピングプランジャーがタペットと交わる境界面における摩耗の問題は、軽減または回避されることが可能である。
【0019】
タペットが、プランジャー接触表面とタペットの境界面側面との間の流体連通を提供するための通路手段を含み、それによって、タペットの境界面側面とライダー部材との間の潤滑を提供することが可能である。そのような構成では、プランジャーの中の流体送達手段は、タペットの中の通路手段に連通することが可能である。このようにして達成された追加的な潤滑は、タペットとライダー部材との間の境界面における摩耗の問題を低減または回避することを支援する。
【0020】
代替的な実施形態では、タペットは設けられておらず、インターフェース部材が、ポンピングプランジャーの足部を含むことが可能であり、流体送達手段が、ポンプチャンバーからポンピングプランジャーの境界面側面へ燃料を送達する機能を果たし、それによって、ポンピングプランジャーの境界面側面とライダー部材との間の潤滑を提供することが可能である。
【0021】
流体送達手段が、ポンプチャンバーからポンピングプランジャーの側面へ燃料を送達する機能を果たし、それによって、ポンピングプランジャーの側面とプランジャー穴との間の潤滑を提供することが可能である。このように、ポンピングプランジャーとプランジャー穴との間の滑り境界面における摩耗の問題は、低減または回避されることが可能である。1つの例では、流体送達手段が、ポンピングプランジャーの側面に燃料を送達するために、ポンピングプランジャーの中に1つまたは複数の半径方向に延びる通路を含む。
【0022】
流体送達手段が、ポンピングプランジャーの側面に環状の溝部を含むことが可能であり、それは、潤滑剤のための貯蔵部としての役割を果たすことによって、境界面に潤滑剤を保持することを支援し、改善された冷却および潤滑の利益をさらに増加させる。半径方向に延びる通路は、存在するとき、環状の溝部に連通するか、または環状の溝部の中へ開口することが可能である。
【0023】
同様に、本発明の他の実施形態では、流体送達手段が、ポンピングプランジャーの接触表面に、または接触表面のうちの少なくとも1つに、少なくとも1つの凹部を含むことが可能である。凹部またはそれぞれの凹部は、流体送達手段によって燃料を給送され、潤滑剤のための貯蔵部としての役割を果たすことによって、接触表面における潤滑および冷却を支援する機能を果たす。
【0024】
使用に際してポンピングプランジャーの接触表面、またはそれぞれの接触表面において作用する潤滑の様式は、好ましくは、境界潤滑または弾性流体潤滑であり、境界潤滑では、接触表面と隣接する表面との間の荷重は、表面接触(具体的には、アスペリティ(asperity)接触)によって支えられ、弾性流体潤滑では、接触表面と隣接する表面との間の荷重は、いくつかの表面接触に加えて、潤滑剤の粘性抵抗によって支持される。好ましくは、表面同士の間の荷重を受ける潤滑剤の薄膜によって表面が分離されている、流体静力学的なおよび流体力学的な潤滑などの流体薄膜潤滑様式は、ポンピングプランジャーの接触表面では作用しない。
【0025】
本発明の第2の態様では、高圧燃料ポンプのポンプチャンバーの中の燃料を加圧するためのポンピングプランジャーが、提供される。ポンピングプランジャーは、ポンピング端部と、1つまたは複数の接触表面と、ポンプチャンバーから接触表面へ、またはそれぞれの接触表面へ燃料を送達するための流体送達手段とを含む。流体送達手段が、接触表面またはそれぞれの接触表面から離れている制限器を含む。
【0026】
一実施形態では、ポンピングプランジャーが、第1の端部および反対側の第2の端部を有する円筒形状のプランジャーステムを含み、第1の端部が、ポンピング端部で構成され、第2の端部が、接触表面か、または接触表面のうちの1つを画定している。接触表面が、使用に際してタペットと協働し、流体送達手段が、ポンプチャンバーから接触表面へ燃料を送達するように構成され、プランジャーステムとタペットとの間の接触を潤滑する。
【0027】
本発明の第1の態様の燃料ポンプ組立体は、本発明の第2の態様によるポンピングプランジャーを含むことが可能である。
【0028】
本発明の第1の態様の好適なおよび/または最適な特徴は、単独で、または適当な組み合わせで、本発明の第2の態様にも含まれることが可能であり、その逆も同様である。
【0029】
次に、本発明を、ほんの一例として、残りの添付の図面を参照して説明することとする。図面において、同様の参照数字は、同様の特徴に関して使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】上記に既に参照された既知の燃料ポンプ組立体の断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態による、ポンピングプランジャーを有する燃料ポンプ組立体の一部の断面図である。
図3図3(a)は図2の燃料ポンプ組立体のポンピングプランジャーの断面図である。図3(b)は図2の燃料ポンプ組立体のポンピングプランジャーの切欠き斜視図である。図3(c)は図2の燃料ポンプ組立体のポンピングプランジャーの側面図である。
図4図4(a)は本発明の第2の実施形態で使用するためのポンピングプランジャーの断面図である。図4(b)は本発明の第2の実施形態で使用するためのポンピングプランジャーの側面図である。
図5図5(a)は本発明の第3の実施形態で使用するためのポンピングプランジャーの断面図である。図5(b)は本発明の第3の実施形態で使用するためのポンピングプランジャーの側面図である。
図6】本発明の第4の実施形態で使用するためのポンピングプランジャーの断面図である。
図7】本発明の第5の実施形態で使用するためのポンピングプランジャーの断面図である。
図8】本発明の第6の実施形態で使用するためのポンピングプランジャーの断面図である。
図9】本発明の第7の実施形態で使用するためのポンピングプランジャーの断面図である。
図10】本発明の第8の実施形態で使用するためのポンピングプランジャーの断面図である。
図11】本発明の第9の実施形態で使用するためのポンピングプランジャーおよびタペット組立体の断面図である。
図12】本発明の第10の実施形態で使用するためのポンピングプランジャーおよびタペット組立体の断面図である。
図13】本発明の第11の実施形態で使用するためのポンピングプランジャーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図2は、圧縮点火内燃エンジンの燃料噴射システムで使用するのに適した高圧燃料ポンプ200の一部を示している。とりわけ、燃料ポンプ200は、コモンレール燃料噴射システム(図示せず)のコモンレールに高圧燃料を送達するときの使用に適している。
【0032】
図2の燃料ポンプ200の多くの態様が、例えば、図1に示されているタイプの燃料ポンプ、ならびにEP−B−1705368、EP−A−2050952、およびEP−A−2048359に説明されているタイプの燃料ポンプから知られており、これらの部品は、簡単にだけ説明されることとなる。しかし、燃料ポンプ200は、改善されたポンピングプランジャー201を含み、それは、ポンプの中の摩擦摩耗を低減させることを助ける。有利には、摩擦摩耗を低減させることによって、ポンプ200は、既知のポンプ設計で可能な出力圧力を超える出力圧力で作動することが可能であり、ポンプ200の耐久性および信頼性が、改善されることが可能である。
【0033】
ポンプ200の概括的な構成は、図1に示されている通りである。したがって、図2のポンプ200は、主ポンプハウジング202を含み、主ポンプハウジング202を通って、エンジン駆動の駆動シャフト(図示せず)が延在している。駆動シャフトは、円筒形状のカム204(図2では部分的にだけ示されている)を担持しており、カム204は、図面の紙面に対して垂直方向に延びる中心カム軸に沿って延在している。カム204は、カムライダー(またはカムリング)206(繰り返しになるが、図2において部分的にだけ示されている)の形態のライダー部材を担持しており、カムライダー206には、複数の平坦部206aが設けられており、そのうちの1つだけが図2に示されている。
【0034】
複数のポンプヘッド208a(そのうちの1つだけが図2に示されている)が、カム軸の周りの半径方向の場所において、主ポンプハウジング202に取り付けられており、カム204が、主ポンプハウジング202の中に設けられている内部チャンバーまたは容量部210を通って延在している。それぞれのポンプヘッド208aが、それぞれのポンプヘッドハウジング212aを含む。
【0035】
この例では、3つのポンプヘッドが、(図1に示されているように)設けられており、ポンプヘッドは、互いに実質的に同一である。1つのポンプヘッド208aの構造が、ここで説明されることとなり、当業者は、この説明が他のポンプヘッドにも適用されるということを認識することとなる。
【0036】
ポンプヘッド208aは、ポンピングプランジャー201を含み、ポンピングプランジャー201は、有底のプランジャー穴216の中で往復運動可能であり、ポンピングストローク(または前進ストローク)と、ばねを使った戻りストロークとを有するポンピングサイクルを実施する。プランジャー穴216は、部分的にポンプヘッドハウジング212aの中に画定されており、かつ部分的にプランジャー支持チューブ(換言すれば、管状部材)218の中に画定されており、プランジャー支持チューブ218は、ポンプヘッドハウジング212aの下側表面から延在している。穴216の有底の端部は、ポンプヘッドハウジング212aと一緒に、ポンプチャンバー220を画定している。穴216の中のプランジャー201の往復運動は、ポンピングストロークの間にポンプチャンバー220の中の燃料の加圧を生じさせる。燃料は、プランジャー201の充填ストロークの間に入口弁(図示せず)を通してポンプチャンバー220に入れられ、燃料は、ポンピングストロークの間に出口弁(図示せず)を通してポンプチャンバー220から高圧で送達される。
【0037】
図3(a)、図3(b)、および図3(c)を追加的に参照すると、プランジャー201は、概括的に、プランジャー軸A(図3(a)参照)を画定する概して円筒形状のステム222を含む。プランジャー201の第1の端部または上側端部224は、ポンプチャンバー220に面し、第1の端部の反対側の、プランジャー201の第2の端部または下側端部226は、接触面227を画定しており、接触面227は、以下により詳細に説明されることとなるように、タペット250の形態の中間駆動部材と協働する。
【0038】
図示されている例では、ステム222の直径は、おおよそ6.5mmであるが、異なるステム直径が選択されることも可能である。例えば、別の実施形態は、おおよそ7.5mmのプランジャーステム直径を有する。一般的に、プランジャーステム直径は、好ましくは、おおよそ6mmからおおよそ8mmの間である。
【0039】
プランジャー201は、炭素鋼(例えば、16MnCr5)、合金鋼(例えば、EN ISO 683−17 100Cr6+AC)、または高速度鋼(例えば、M50、M2)から作製されており、より耐摩耗性にし、かつ摩擦を低減させるために、ダイヤモンド状炭素(DLC)コーティングでコーティングされることが可能である。コーティングは常に必須ではないが、高圧または高速ポンプにおいてとりわけ有益である。また、代替的な材料およびコーティングも、ポンプの構造およびその用途に応じて、適当なものとして使用されることが可能である。
【0040】
プランジャー201は、軸方向に延びる貫通穴または軸方向通路228を含む。制限オリフィスまたは制限器230は、軸方向通路228の低減された直径断面を含んでおり、プランジャー201の第1の端部224に隣接して設けられており、制限器230がポンプチャンバー220の中へ開口するようになっている。プランジャー201の第2の端部226では、軸方向通路228が、プランジャー201の接触面227に設けられている切欠き部または凹部232の中へ開口している。また、プランジャー201は、第1のクロス(換言すれば、交差)通路234も含み、第1のクロス通路234は、プランジャーステム222の幅を横切って延在しており、プランジャーステム222の幅は、プランジャー軸Aに対して垂直であり、プランジャー軸Aと交差している。したがって、クロス通路234は、軸方向通路228と交差している。その端部のそれぞれにおいて、クロス通路234は、プランジャー201のステム222の概して円柱形状の側面238にあるそれぞれの凹部236の中へ開口している。
【0041】
第2のクロス通路234a(図3(c)に見ることができる)は、図2および図3(a)の紙面に垂直の方向に、第1のクロス通路234と軸方向通路228の両方に対して垂直方向に延在している。第2のクロス通路234aは、第1のクロス通路234と同じ軸方向位置において、軸方向通路228と交差している。第1のクロス通路234に関して、第2のクロス通路234aは、その端部のそれぞれにおいて、プランジャーステム222の側面238にある凹部236の中へ開口している。
【0042】
図2を再び参照すると、また、上述されているように、プランジャー201の接触面227が、プランジャー201とライダー206との間で中間駆動部材としての機能を果たすタペット250と協働する。タペット250は、概してカップ形状であり、円盤状のベース部材252と、ベース部材252から直立する概して円筒形状の壁部材254とを含む。ベース部材252は、ライダー接触表面256と、対向するプランジャー接触表面258とを画定している。ライダー接触表面256は、ライダー206と滑り接触しており、プランジャー201の接触面227は、プランジャー接触表面258に当接している。このように、タペット250のベース部材252は、ライダー206からプランジャー201へ駆動を伝達する。
【0043】
環状のインサートまたはワッシャーの形態のばね座部材260が、タペット250の中に受け入れられている。プランジャーの第2の端部226は、ばね座部材260を通って延在し、タペット250のベース部材252に接触している。ばね座部材260は、らせんばね234を受け入れるための段付きのばね座を画定している。ばね234は、ばね座部材260とポンプヘッドハウジング212aとの間に配設されている。ばね234は、ポンピングプランジャー201が、ポンピングストロークに続いて、戻りまたは充填ストロークを行うことを支援する。
【0044】
タペット250の壁部材254は、容量部262を画定しており、容量部262の中に、ばね234が部分的に受け入れられている。壁部材254は、主ポンプハウジング202の中の穴264の中で滑り嵌めされている。壁部材254と穴264との間の間隙は、製造公差に依存するが、好ましくは、おおよそ40μmから80μmの間である。
【0045】
ポンプ200の使用時に、主ポンプハウジングの内部容量部210が、燃料を含有し、燃料が、ポンプ200の構成要素のための潤滑剤としての機能を果たす。この目的のために、タペット250は、ベントスロット266を含み、ベントスロット266は、主ポンプハウジングの内部容量部210とタペット250の内部の容量部262との間を燃料が流れることを可能にする。それによって、燃料は、プランジャーステム222とプランジャー穴216との間の滑り境界面、ならびにプランジャー201の接触面227とタペット250のプランジャー接触表面258との間の境界面を潤滑する機能を果たす。
【0046】
ポンプ200の作動中に、カムライダー206がエンジン駆動のカム204の上に乗せられているので、軸方向の駆動が、タペット250のベース部材252に付与され、プランジャー201をプランジャー穴216の中で往復運動させる。ポンピングストロークの間に、プランジャー201は、シャフトから半径方向外向きに駆動され、ポンプチャンバー220の容積を低減させる。ばね234によって達成されるプランジャー戻りストロークの間に、プランジャー201は、半径方向内向きの方向に押圧され、ポンプチャンバー220の容積を増加させる。
【0047】
タペット250のライダー接触表面256が、半径方向外向きの方向に駆動され、その中心軸Aに沿ったプランジャー201の運動をもたらすと、ある程度の相対的に横方向のライダー接触表面256の滑り運動が、ライダー206の平坦部206aを横切って、往復方式で発生する。この運動は、従来技術において周知であり、カムライダー206を担持するカム204の運動から生じる。タペット250は、戻りストロークの間に、同様の方式で平坦部206aを横切って摺動する。
【0048】
本発明では、プランジャー201の中に設けられている軸方向通路228およびクロス通路234、234a、ならびに対応する凹部232、236は、共に流体送達手段を備え、特定のおよび方向性のある(directed)方式で潤滑燃料を境界面に供給することによって、プランジャー201とタペット250との間の境界面、ならびにプランジャー201とプランジャー穴216との間の境界面を潤滑することを支援する。
【0049】
とりわけ、プランジャー201のポンピングストロークの間に、ポンプチャンバー220の中の燃料圧力の増加は、燃料を、制限器230を経由して軸方向通路228の中へ押し込む。軸方向通路228から、燃料が、プランジャー201の下側端部226において、接触面227にある凹部232に送達され、したがって、プランジャー201とタペット250のプランジャー接触面258との間の接触範囲を潤滑することを助ける。このように、有利には、本発明は、例えば、使用中のプランジャー201に対するタペット250の傾斜によって生じさせられ得るような、プランジャーがタペットと接する場所において、摩耗および局部的な加熱を低減させる。
【0050】
同様に、燃料が、クロス通路234、234aを経由して、プランジャーステム222の側面238にある凹部236に送達され、それによって、プランジャー201の側面238とプランジャー穴216との間の滑り接触を潤滑する機能を果たす。このように、有利には、本発明は、例えば、使用中にプランジャー201に作用する側方荷重によって生じさせられ得るような、プランジャー201がプランジャー穴216の中で摺動する場所において、摩耗および局部的な加熱を低減させる。
【0051】
図2では、ポンプ200は、ポンピングストロークの始まり(または同等には、戻りストロークの終わり)に対応する位置にあるプランジャー201とともに示されているということが留意されるべきである。この位置では、クロスドリル穴234、234aが、プランジャー支持チューブ218の下側端部を越えて位置付けられている。しかし、プランジャー201が、ポンピングストロークの間に、ポンプチャンバー220の容積を低減させるように移動すると、クロスドリル穴234、234aは、プランジャー穴216の中へ上向きに移動し、プランジャー201の上の側方荷重がそのピーク時にあるときに、燃料が、ポンピングストロークの間に、プランジャーと穴との境界面に送達されることが可能であるようになっている。
【0052】
プランジャー201の接触面227は、タペット250のプランジャー接触表面258と密接な接触をしている。さらに、プランジャー201が、そのポンピングストロークにおいて移動すると、接触面227は、ポンプチャンバー220の中の燃料の弾性力に対抗して、タペット250のプランジャー接触表面258に対して、より強く押し付けられる。したがって、燃料の最小限の漏洩が、ポンピングストロークの間に、プランジャー201の接触面227とタペット250のプランジャー接触表面258との間に発生する。したがって、ポンプ200の容積効率は、ポンプチャンバー220をプランジャー201の接触面227に接続する制限器230、軸方向通路228、および凹部232の形態の流体送達手段を提供することによって、過度に妥協されることはない。
【0053】
同様に、プランジャーステム222の側面238は、プランジャー穴216の表面と密接な滑り接触をしている。プランジャー穴216に対するプランジャーステム222の間隙は、製造公差に依存するが、好ましくは、おおよそ3.5からおおよそ7.5μmの間である。したがって、ポンプチャンバー220をプランジャーステム222の側面238に接続する、制限器230、軸方向通路228、クロス通路234、234a、および凹部236の形態の流体送達手段の提供の結果として、ポンプチャンバー220からの燃料の最小限の追加的な漏洩だけが発生する。
【0054】
したがって、本発明では、プランジャー201の中に設けられている流体送達手段は、ポンプチャンバー220から出てくる燃料の相当な量の流れを引き起こさないということが留意されるべきである。その代わりに、流体送達手段は、少量の潤滑燃料をそれぞれのプランジャー表面に送達し、対応する境界面を潤滑することを支援する機能だけを果たす。しかし、境界面における潤滑のタイプまたは様式は、好ましくは、流体送達手段の存在によって変化していない。例えば、プランジャー201とタペット250との間の境界面における潤滑様式は、好ましくは、境界潤滑または弾性流体潤滑である。追加的な潤滑剤を境界面に供給する流体送達手段の存在は、潤滑の有効性を改善する機能を果たすが、境界面において流体静力学的な流体薄膜潤滑条件を作り出すことはない。
【0055】
通路228、234、234a、および凹部232、236は、ポンプチャンバー220に流体連通しているので、通路228、234、234a、および凹部232、236の中に収容されている量の燃料は、ポンピングストロークの間に、ポンプチャンバー220の中の燃料とともに加圧されている。しかし、通路228、234、234a、および凹部232、236の中の燃料は、その後にポンプ200の出力として送達されないので、通路228、234、234a、および凹部232、236によって画定される容量部は、ポンプの効率を低減させる、いわゆる「死容積」である。制限器230は、軸方向通路228への進入点において圧力降下を作り出すことによって、この効率の低減を最小化する機能を果たす。このように、高いポンピング圧力は、ポンプチャンバー220に閉じ込められ、通路228、234、234a、および凹部232、236の中の圧力上昇は、それに対応して低くなる。別の言い方をすれば、制限器230は、ポンプチャンバー220から軸方向通路228、234、234a、および凹部232、236に到達する燃料の量を制限する。
【0056】
図示されている例では、軸方向通路228は、おおよそ1mmの直径を有しており、制限器は、おおよそ0.5mmの直径を有している。他の例では、制限器は、ポンプ作動パラメーターおよび所望の性能要件に応じて、例えば、おおよそ0.05mmからおおよそ0.5mmの範囲にある値の異なる直径を有することが可能である。
【0057】
通路228、234、234aがその中に開口している、プランジャー表面にある凹部232、236は、境界面において潤滑剤の貯蔵部を提供することによって、境界面の冷却および潤滑を支援する。追加的に、凹部232、236は、接触している表面の上に潤滑燃料を広げることを助けるように形状付けされることが可能である。
【0058】
本発明の多くの変形例および修正例が可能である。例として、本発明のいくつかの代替的な実施形態および変形形態が、ここで、説明されることとなる。
【0059】
図4(a)および図4(b)は、本発明の第2の実施形態で使用するためのポンピングプランジャー301を示しており、それは、第2の実施形態では、クロスドリル穴234、234aが、プランジャーステム222の周りに延在する環状の凹部または溝部302の中へ開口しているという点を除いて、本発明の第1の実施形態のポンピングプランジャー201と同様である。この実施形態では、環状の溝部302は、図2のプランジャー201にある凹部236と同様の方式で作用し、プランジャーステム222とプランジャー穴との間の境界面において潤滑燃料の貯蔵部を提供している。
【0060】
図4のプランジャーの残りの特徴は、図3のプランジャーを参照して説明されている通りのものである。
【0061】
図5(a)および図5(b)は、本発明の第3の実施形態で使用するためのプランジャー401を示している。この実施形態では、軸方向通路228が、プランジャーステム222の第2の端部226において、接触面227の上に直接的に開口している。凹部または同様の特徴は、設けられていない。同様に、クロス通路234、234aは、凹部、溝部、または同様の特徴がない状態で、プランジャーステム222の側面238の上に直接的に開口している。接触表面に凹部がないことに起因して、図5のプランジャー401は、潤滑の観点から、図3および図4のプランジャー201、301よりも少ない利益を与えることとなる。しかし、従来技術(例えば、図1)を上回る改善は、依然として相当な量であり、図5のプランジャー401は、より低コストで製造することができる。
【0062】
図5のプランジャーの残りの特徴は、図3のプランジャーを参照して説明されている通りのものである。
【0063】
図6から図8は、本発明の3つのさらなる実施形態で使用するためのポンピングプランジャーを示している。それぞれの場合では、プランジャーには、クロス通路234との交差点までだけに延びる軸方向通路328が設けられている。したがって、これらの実施形態では、プランジャーステム222の側面238だけが、追加的な潤滑剤を供給される。プランジャーステム222の第2の端部226における接触面227は、追加的な潤滑剤を供給されない。この構成は、プランジャーとタペットとの間の境界面において、本来的に低い摩耗速度を有する用途において有用である可能性があり、その境界面における追加的な潤滑が必要でないようになっている。
【0064】
具体的には、図6は、本発明の第4の実施形態で使用するためのプランジャー501を示しており、第4の実施形態では、クロス通路234(図6では、そのうちの1つだけを見ることができる)が、図5に示されている本発明の第4の実施形態のように、プランジャーステム222の側面238の上に直接的に開口している。
【0065】
図7は、本発明の第5の実施形態で使用するためのプランジャー601を示しており、第5の実施形態では、クロス通路234(図7では、そのうちの1つだけを見ることができる)が、図3に示されている本発明の第1の実施形態のように、プランジャーステム222の側面238にある凹部236の中へ開口している。
【0066】
図8は、本発明の第6の実施形態で使用するためのプランジャー701を示しており、第6の実施形態では、クロス通路234(図8では、そのうちの1つだけを見ることができる)が、図4に示されている本発明の第2の実施形態のように、プランジャーステム222の側面238にある環状の溝部302の中へ開口している。
【0067】
本発明の第4、第5、または第6の実施形態で使用するためのプランジャーの短い(truncated)軸方向通路328を形成する1つの方法は、第一に、プランジャーステム222の下側端部226まで延びる軸方向通路を形成し、次いで、例えば鋼製の適切な盲栓(blanking)プラグで、クロス通路234と下側端部226との間に延びる通路の部分を塞ぐことである。次いで、ステム222の下側端部226は、接触面227を形成させるために研磨されることが可能である。
【0068】
図6から図8のプランジャーの残りの特徴は、図3のプランジャーを参照して説明されている通りのものである。
【0069】
図9および図10は、本発明の2つのさらなる実施形態で使用するためのプランジャーを示している。これらの場合では、本発明の先述の実施形態のクロス通路が、省略されており、その代わりに、潤滑燃料が、プランジャーシャフト222の下側端部226における接触面227にだけ送達されている。本発明のこれらの実施形態は、例えば、プランジャーの上の側面荷重が相対的に低い用途で有用であり、プランジャーとプランジャー穴との間の追加的な潤滑が必要でないようになっている。
【0070】
具体的には、図9は、本発明の第7の実施形態で使用するためのプランジャー801を示しており、第7の実施形態では、軸方向通路228が、図5に示されている本発明の第3の実施形態のように、プランジャーステム222の接触面227に延在し、その上に開口している。
【0071】
図10は、本発明の第8の実施形態で使用するためのプランジャー901を示しており、第8の実施形態では、軸方向通路228が、図3に示されている本発明の第1の実施形態のように、プランジャーステム222の接触面227にある凹部232の中へ開口している。
【0072】
図9および図10のプランジャー残りの特徴は、図3のプランジャーを参照して説明されている通りのものである。
【0073】
図11は、本発明の第9の実施形態で使用するためのプランジャーおよびタペット組立体1000を示している。組立体1000は、本発明の第1の実施形態によるポンピングプランジャー201と、タペット1050とを組み合わせて含む。
【0074】
タペット1050は、図2を参照して説明されているタペット250と多くの特徴を共有しており、それらの特徴は、さらに説明しないこととする。追加的に、本発明の実施形態では、タペット1050は、流体通路1052を含み、流体通路1052は、ベース部材252を通って軸方向に延在しており、プランジャー接触表面258をライダー接触表面256に接続している。
【0075】
組立体1000では、タペット1050の中の流体通路1052は、プランジャー201の軸方向通路228に流体連通している。したがって、タペット1050の中の流体通路1052は、追加的な潤滑剤をタペット1050とライダーとの間の境界面に送達するように作用し、さらに、ポンプの摩耗性能を改善する。プランジャー201の接触面227にある凹部232は、プランジャー201とタペット1050との間の任意の軸方向の不整合が生じた場合には、プランジャー201の軸方向通路228とタペット1050の通路1052との間の流体連通を維持することを助ける。
【0076】
図12は、本発明の第10の実施形態で使用するためのプランジャーおよびタペット組立体1100を示している。組立体1100は、本発明の第1の実施形態によるポンピングプランジャー201と、タペット1150とを組み合わせて含んでおり、タペット1150は、図12のタペット1150の中の流体通路1152がベース部材252のライダー接触表面256にある凹部1154の中へ開口しているという点を除いて、図11に示されているタペット1050と同一である。
【0077】
図13は、本発明の第11の実施形態で使用するためのプランジャー1200を示している。プランジャー1200は、タペットはないが、図2に示されているようなポンプで使用するために設計されている。その代わりに、プランジャー1200は、プランジャー足部1202の形態の一体型のインターフェース部材を含む。足部1202は、下側側面1204と上側側面1208とを有し、下側側面1204は、接触面1206を含み、接触面1206は、使用に際してポンプのライダーに滑り接触しており、上側側面1208は、戻りばねのために段付きのばね座1210を提供している。
【0078】
プランジャー1200は、プランジャーステム1212をさらに含み、プランジャーステム1212は、足部1202の上側側面1208から延在している。ステム1212の上側端部1214は、ポンプチャンバーの中に受け入れられる。
【0079】
プランジャー1200は、プランジャー1200の上側端部1214から足部の下側側面1204へ延びる軸方向通路1216の形態の流体送達手段を含む。軸方向通路1216は、接触面1206の上に開口し、追加的な潤滑燃料をプランジャーとライダーとの境界面に送達する。
【0080】
また、流体送達手段は、2つの垂直方向のクロス通路1220(図13には、その1つだけが示されている)も含み、クロス通路1220は、プランジャーステム1212の側面1222の上に開口し、追加的な潤滑流体をプランジャーと穴との境界面に送達する。
【0081】
本発明の先述の実施形態にあるように、制限器1224が、プランジャー1200の上側端部1214に隣接して、軸方向通路1216の端部に設けられている。
【0082】
また、上記には明確に説明されていないさらなる修正例および変形例も、添付の特許請求の範囲に定義されているような本発明の範囲を逸脱することなくなされることが可能である。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13