特許第5744356号(P5744356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5744356ローラープレス装置およびローラープレス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5744356
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】ローラープレス装置およびローラープレス方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/06 20060101AFI20150618BHJP
   B32B 37/10 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C09J5/06
   B32B31/20
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-13392(P2015-13392)
(22)【出願日】2015年1月27日
【審査請求日】2015年1月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 試験日:平成26年8月26日〜平成26年8月28日、平成26年9月11日〜平成26年9月12日 試験場所:山本ビニター株式会社 八尾工場(大阪府八尾市渋川町1丁目3番21号) 試験日:平成26年10月30日、平成26年11月4日、平成26年11月10日、平成26年11月12日 試験場所:有限会社三和機工(福岡県大川市向島上野916−3)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500331091
【氏名又は名称】株式会社イシモク・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】高松 守
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−072019(JP,A)
【文献】 特開平08−276524(JP,A)
【文献】 特開平09−267391(JP,A)
【文献】 特開平11−042755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 5/00、5/06
B32B 37/10
B32B 65/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体により形成されたローラーであり、芯材の表面に接着剤を介して面状部材を配置した対象物を挟持して搬送する複数のローラーと、
前記対象物の表面に沿って前記複数のローラー間にそれぞれ配設される複数の電極と、
前記複数のローラーと前記複数の電極との間に高周波電圧を印加するための高周波発振器と
を含むローラープレス装置。
【請求項2】
前記複数の電極は、それぞれ前記複数のローラーの回転軸と平行に延びる棒状の電極である請求項1記載のローラープレス装置。
【請求項3】
芯材の表面に接着剤を介して面状部材を配置した対象物を導電体により形成された複数のローラーにより挟持して搬送すること、
前記対象物の表面に沿って前記複数のローラー間にそれぞれ配設された複数の電極と前記複数のローラーとの間に高周波発振器から高周波電圧を印加すること
を含むローラープレス方法。
【請求項4】
前記接着剤は水系接着剤である請求項3記載のローラープレス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材の表面に接着剤を介して面状部材を配置した対象物をローラー間に挟持して搬送しながら連続的に高周波電圧を印加することにより芯材に面状部材を接着するローラープレス装置およびローラープレス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、図5に示すように、芯材120の表面を接着剤121を介して表面材122で囲繞した被加工材102を、多数位置に配置した上ローラー110aと下ローラー110bの双方もしくはいずれか一方を昇降させることによって狭圧しながら先方へ移送し、芯材120と表面材122とを接着するローラープレスにおいて、多数位置にある下ローラー110bのローラー間に、一定間隔を隔てた電源電極111aおよびアース電極111bで構成する下面加熱用高周波電極111を配置するとともに、多数位置にある上ローラー110aのローラー間に、一定間隔を隔てた電源電極112aおよびアース電極112bで構成する上面加熱用高周波電極112を配置し、下面加熱用高周波電極111および上面加熱用高周波電極112は、それぞれ同じ側の下ローラー110bおよび上ローラー110aの昇降に連動して昇降するようにした高周波加熱ローラープレス100が記載されている。
【0003】
この高周波加熱ローラープレス100では、下面加熱用高周波電極111の中心の電源電極111aと左右のアース電極111b,111b間において高周波電圧113を印加することにより被加工材102の下表面から浅い所、および、上面加熱用高周波電極112の中心の電源電極112aと左右のアース電極112b,112b間において高周波電圧113を印加することにより被加工材102の上表面から浅い所、すなわち芯材120と表面材122との上下それぞれの接着面を効率的に誘電加熱することになり、接着剤121として熱硬化性の接着剤を利用し、接着面を効果的かつ製造工程の流れの中で迅速に加熱させることができ、直ちに一定値以上の接着強度を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−267391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記構成の高周波加熱ローラープレス100では、多数位置にある上ローラー110aおよび下ローラー110bのそれぞれのローラー110a,110b間でのみ高周波電圧113が印加されて芯材120と表面材122の接着面が誘電加熱されている。すなわち、芯材120と表面材122の接着面の誘電加熱は、上ローラー110aおよび下ローラー110bのない部分でのみ間欠的に行われている。そのため、上ローラー110aおよび下ローラー110bによって狭圧している間は芯材120と表面材122の接着面が加熱されず、この間に冷えてしまうことになるため、温度上昇効率が悪く、搬送速度が遅くなってしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明においては、芯材の表面に接着剤を介して面状部材を配置した対象物をローラー間に挟持して搬送しながら連続的に高周波を印加することにより効率良く加熱して芯材に面状部材を接着するローラープレス装置およびローラープレス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のローラープレス装置は、導電体により形成されたローラーであり、芯材の表面に接着剤を介して面状部材を配置した対象物を挟持して搬送する複数のローラーと、対象物の表面に沿って複数のローラー間にそれぞれ配設される複数の電極と、複数のローラーと複数の電極との間に高周波電圧を印加するための高周波発振器とを含むものである。
【0008】
また、本発明のローラープレス方法は、芯材の表面に接着剤を介して面状部材を配置した対象物を導電体により形成された複数のローラーにより挟持して搬送すること、対象物の表面に沿って複数のローラー間にそれぞれ配設された複数の電極と複数のローラーとの間に高周波発振器から高周波電圧を印加することを含むことを特徴とする。
【0009】
これらの発明によれば、複数のローラーと、この複数のローラー間にそれぞれ配設される複数の電極との間に高周波電圧を印加することで、芯材の表面に面状部材を配置した対象物を複数のローラーによって挟持して搬送している間、途切れることなく連続的に高周波を接着剤に印加することができ、効率良く加熱して芯材に面状部材を接着することが可能となる。
【0010】
ここで、複数の電極は、それぞれ複数のローラーの回転軸と平行に延びる棒状の電極であることが望ましい。これにより、ローラーの回転軸方向に均一に高周波を出力することが可能となり、ローラーの回転軸方向に幅がある対象物を高周波により均一に加熱して芯材に面状部材を接着することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、芯材の表面に接着剤を介して面状部材を配置した対象物をローラー間に挟持して搬送しながら連続的に高周波電圧を印加し、効率良く加熱して芯材に面状部材を接着することができるため、搬送速度を速くして大量生産を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態におけるローラープレス装置の斜視図である。
図2図1のローラープレス装置の正面図である。
図3図1のローラープレス装置に高周波電圧を印加して対象物を挟持して搬送する様子を示す説明図である。
図4】新投入方式のローラープレス装置の配置図である。
図5】従来の高周波加熱ローラープレスを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の実施の形態におけるローラープレス装置の斜視図、図2図1のローラープレス装置の正面図、図3図1のローラープレス装置に高周波電圧を印加して対象物を挟持して搬送する様子を示す説明図である。
【0014】
図1および図2において、本発明の実施の形態におけるローラープレス装置1は、対象物2を挟持して搬送する複数のローラー(以下、対象物の上側のローラーを「上ローラー10a」、下側のローラーを「下ローラー10b」と称す。)と、複数の上ローラー10a間および複数の下ローラー10b間にそれぞれ配設される複数の電極(以下、上ローラー10a間の電極を「上電極11a」、下ローラー10b間の電極を「下電極11b」と称す。)と、上ローラー10aと上電極11aとの間および下ローラー10bと下電極11bとの間に高周波電圧13(図3参照。)を印加するための高周波発振器12とを有する。
【0015】
対象物2は、芯材20の表面に接着剤21を介して面状部材22を配置したものである。芯材20は、木、MDF(中密度繊維板)、LVL(単板積層材)やパーティクルボード等の板状の木質材料であり、いわゆるフラッシュ構造やベタ芯構造等の構造形態を問わない。なお、芯材20として木質材料以外の材料を用いることも可能である。接着剤21は、酢酸ビニールや塩化ビニールなどの熱可塑性樹脂や、フェノール、レジルシノール、ユリヤやメラミンなどの熱硬化性樹脂などの合成樹脂を用いた水系接着剤である。面状部材22は、芯材20の表面を覆うための板材やシート材等の化粧材や断熱材等の厚さ0.05mm〜3mm程度の表層材である。
【0016】
上ローラー10aおよび下ローラー10bは、導電体により形成されている。本実施形態においては、上ローラー10aおよび下ローラー10bは鉄鋼製である。上ローラー10aと下ローラー10bとの間隔は対象物2の厚さよりも若干狭く設定されている。そのため、対象物2は上ローラー10aおよび下ローラー10bに挟持されることで加圧された状態となる。
【0017】
上電極11aおよび下電極11bは、導電体により形成されている。本実施形態においては、上電極11aおよび下電極11bは銅製である。上電極11aおよび下電極11bは、それぞれ上ローラー10aおよび下ローラー10bの回転軸と平行に延びる棒状の電極であり、対象物2の表面に沿って上下にそれぞれ配設されている。上電極11aは上ローラー10aと交互に、下電極11bは下ローラー10bと交互に配設されている。
【0018】
高周波発振器12は、対象物2を誘電加熱するのに必要な高周波電圧を発生させるものである。上ローラー10aおよび下ローラー10bは高周波発振器12の電源端子12aに、上電極11aおよび下電極11bは高周波発振器12のアース端子12bに、それぞれ接続されている。なお、図2においては高周波発振器12を一つのみ図示しているが、複数の高周波発振器12を直列または並列に接続しても良い。
【0019】
上記構成のローラープレス装置1では、芯材20の表面に接着剤21を介して面状部材22を配置した対象物2を導電体により形成された複数の上ローラー10aおよび下ローラー10bにより挟持して搬送し、対象物2の表面に沿って複数の上ローラー10a間および下ローラー10b間にそれぞれ配設された複数の上電極11aおよび下電極11bと複数の上ローラー10aおよび下ローラー10bとの間に高周波発振器12から高周波電圧13を印加する。
【0020】
これにより、複数の上電極11aと複数の上ローラー10aとの間、および、複数の下電極11bと複数の下ローラー10bとの間において、それぞれ対象物2の浅い位置で誘電体である対象物2の内部発熱が起こり、この熱により芯材20と面状部材22との間の接着剤21が乾燥して芯材20と面状部材22とが接着される。ここで、本実施形態においては、接着剤21が水系接着剤であるため、接着剤21中の水分が蒸発して乾燥し、芯材20と面状部材22とが接着される。なお、接着剤21としては水系接着剤の他、水系の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などを使用することも可能である。
【0021】
このとき、本実施形態におけるローラープレス装置1では、複数の上ローラー10aおよび下ローラー10bと、この複数の上ローラー10aおよび下ローラー10b間にそれぞれ配設される複数の上電極11aおよび下電極11bとの間に高周波電圧を印加することで、図3に示すように、対象物2を複数の上ローラー10aおよび下ローラー10bによって挟持して搬送している間、途切れることなく連続的に高周波電圧13を接着剤21に印加することができ、効率良く加熱して芯材20に面状部材22を接着することができるため、搬送速度を速くして大量生産を行うことが可能となっている。特に、本実施形態におけるローラープレス装置1では、それぞれの上ローラー10aおよび下ローラー10bによって加圧される部分30が高周波電圧の印加により加熱されるので、この部分30で接着剤21が乾燥され、芯材20に面状部材22を強固に接着することが可能となっている。
【0022】
また、本実施形態におけるローラープレス装置1では、複数の上電極11aおよび下電極11bが、それぞれ複数の上ローラー10aおよび下ローラー10bの回転軸と平行に延びる棒状の電極であることにより、上ローラー10aおよび下ローラー10bの回転軸方向に均一に高周波電圧13を印加することが可能となっており、上ローラー10aおよび下ローラー10bの回転軸方向に幅がある対象物2を高周波により均一に加熱して芯材20に面状部材22を接着することが可能となっている。
【実施例】
【0023】
上記構成のローラープレス装置1を用いて対象物の接着試験を行った。ローラープレス装置1はライン幅(図1の奥行き方向の幅)1200mm、ライン長さ(図1の左右方向の長さ)1000mmのものを4台直列に配置した。使用した高周波発振器12の容量は15kW、2.2Aである。試験結果を表1に示す。なお、表1中、「新投入方式」とは、図4に示すように、ローラープレス装置1を平面視でL字状に配置して、対象物2を流す方式である。
【0024】
【表1】
【0025】
ローラープレス装置1では、対象物2の長さ方向(上ローラー10aおよび下ローラー10bの回転軸に対して垂直方向、すなわち対象物2の流れ方向)に対しては表面温度が上昇しやすく、幅方向(上ローラー10aおよび下ローラー10bの回転軸方向)は表面温度が上昇しにくい傾向にあるため、新投入方式では対象物2の方向を途中で90°変えることによりそれぞれの方向に対してほぼ均等に表面温度を上昇させることが可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のローラープレス装置およびローラープレス方法は、木、MDF、LVLやパーティクルボード等の芯材の表面に接着剤を介して板材やシート材等の化粧材等の面状部材を接着する装置および方法として有用である。
【符号の説明】
【0027】
1 ローラープレス装置
2 対象物
10a 上ローラー
10b 下ローラー
11a 上電極
11b 下電極
12 高周波発振器
13 高周波電圧
20 芯材
21 接着剤
22 面状部材
【要約】
【課題】芯材の表面に接着剤を介して面状部材を配置した対象物をローラー間に挟持して搬送しながら連続的に高周波電圧を印加することにより効率良く加熱して芯材に面状部材を接着すること。
【解決手段】導電体により形成されたローラーであり、芯材20の表面に接着剤21を介して面状部材22を配置した対象物2を挟持して搬送する複数の上ローラー10aおよび下ローラー10bと、対象物2の表面に沿って複数の上ローラー10aおよび下ローラー10b間にそれぞれ配設される複数の上電極11aおよび下電極11bと、複数の上ローラー10aおよび下ローラー19bと複数の上電極11aおよび下電極11bとの間に高周波電圧を印加するための高周波発振器12とを含むローラープレス装置1である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5