特許第5744412号(P5744412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744412
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】フロセミド製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/341 20060101AFI20150618BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20150618BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20150618BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20150618BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20150618BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20150618BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20150618BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   A61K31/341
   A61K9/20
   A61K9/16
   A61K9/14
   A61K47/38
   A61K47/02
   A61K47/32
   A61P13/02
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-72339(P2010-72339)
(22)【出願日】2010年3月26日
(65)【公開番号】特開2011-201830(P2011-201830A)
(43)【公開日】2011年10月13日
【審査請求日】2012年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208145
【氏名又は名称】テバ製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 浩二
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智倫
(72)【発明者】
【氏名】桂 真治
(72)【発明者】
【氏名】山田 信夫
【審査官】 牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/010847(WO,A1)
【文献】 特表2008−504322(JP,A)
【文献】 特開2008−169173(JP,A)
【文献】 特開2007−182451(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/052592(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/114859(WO,A1)
【文献】 医療薬学, 2009, 35(6), p.395-402
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00− 31/80
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00− 47/48
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロセミドを含有する固形製剤の表面を、水溶性高分子と酸化された金属を含有するコーティング剤でフィルムコーティングしてなるフロセミド製剤(但し、コーティング剤中にポリビニルアルコール−ポリエーテルグラフト共重合体を含有するものを除く)。
【請求項2】
固形製剤が、錠剤、顆粒剤、細粒剤または散剤である請求項1記載のフロセミド製剤。
【請求項3】
水溶性高分子がヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項1または2記載のフロセミド製剤。
【請求項4】
酸化された金属が、酸化チタンである請求項1ないし3のいずれかの項記載のフロセミド製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフロセミド製剤に関し、更に詳細には、経時的に生じる着色を抑制した固形のフロセミド製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フロセミド(Furosemide;化学名 5−(アミノスルホニル)−4−クロロ−2−[(2−フラニルメチル)アミノ]安息香酸)は、ループ利尿薬のひとつであり、ヘンレのループの太い上行脚の管腔側の膜のNa・K・2Cl共輸送担体を抑制することにより、NaCl、Kの再吸収を抑制し、速効性かつ強力な利尿作用を示す薬剤である。
【0003】
このフロセミドは光に対して着色することが知られており、フロセミドを含む製剤はすでに市販されているが、その素錠状態では経時的に着色が発生している。しかし、昨今、自動分封機のような光を遮断する容器にフロセミドを含有した錠剤を保管した場合にも、光に対して着色したと同じように着色することが確認されている(非特許文献1)。
【0004】
このようなフロセミド製剤の着色は商品的には着色は望ましくない現象であり、この着色の原因を見出し、着色を防止する手段の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「医療薬学」、第35巻、第6号、p.395−402、寺岡麗子他4名、「フロセミド錠の光安定に及ぼす着色PTP包装材料の影響」(2009年6月10日財団法人日本医療薬学会発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、フロセミドを含有しながら、着色が防止された固形製剤の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、まずフロセミド含有固形製剤での着色の原因と目される要因について広く検討した結果、この着色成分は、微量のフロセミドの加水分解物であることが明らかになった。そして更に、この着色を防止する手段に関し研究を行った結果、フロセミドを含有する固形製剤を、水溶性高分子と酸化された金属を含む皮膜で被覆することにより、上記着色は防止しうることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、フロセミドを含有する固形製剤の表面を、水溶性高分子と酸化された金属を含有するコーティング剤で被覆してなるフロセミド製剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフロセミド製剤は、経時的に着色することがないので、特殊な容器を必要とせず、更に、複数の薬剤を一つの袋に包装するワンドースパッケージが可能となり、商品性の高い医薬品とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のフロセミド製剤は、フロセミドを含有する固形製剤の表面を、水溶性高分子と酸化された金属を含有するコーティング剤で被覆することにより調製される。
【0011】
フロセミドを含有する固形製剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等が挙げられるが、錠剤が好ましい。またこの固形製剤中に含有されるフロセミド量は特に制限はないが、好ましくは1ないし50質量%(以下、単に「%」で示す)、更に好ましくは2.5ないし30%が好ましい。
【0012】
この固形製剤は、フロセミドを含有する以外は、常法により製造することができる。すなわち、公知の賦形剤とフロセミドを混合して固形製剤用組成物とし、これを常法に従って製剤化すればよい。使用される賦形剤の例としては、例えば、乳糖、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール、精製白糖、結晶セルロース、粉末セルロース、デキストラン、デキストリン、ブドウ糖、粉糖、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン等が挙げられる。
【0013】
また、必要によって、適宜、従来公知の任意成分、例えば、種々の滑沢剤、可溶化剤、緩衝剤、吸着剤、結合剤、懸濁化剤、抗酸化剤、充填剤、pH調整剤、分散剤、崩壊剤、崩壊補助剤、防湿剤、防腐剤、溶剤、溶解補助剤、流動化剤等を加えることができる。このうち崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファー化デンプン、クロスポビドン等を挙げることができる。結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルメロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。流動化剤として、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミ、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。滑択剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルアルコール、タルク、マクロゴール等を挙げることができる。
【0014】
上記固形製剤用組成物を用い、錠剤(素錠)を調製するには、必要によりこの組成物を顆粒化した後、常法により圧縮成型をすればよい。
【0015】
顆粒化する方法としては、通常用いられる方法で実施すればよい。具体的には、流動層造粒、攪拌造粒、押出造粒、ワースター式造粒若しくはこれらを組み合わせた方法が挙げられる。なお、これ以外の方法でも、次工程の圧縮成型に支障を来たさないようであれば、別の方法でも特段問題ない。
【0016】
圧縮成型の方法としては、錠剤を形成できればどのような方法でも特段問題はない。具体的には、例えば、ロータリー打錠機、単発打錠機などが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0017】
以上のようにして調製される固形製剤は、次に水溶性高分子と酸化された金属を含有するコーティング剤で被覆される。
【0018】
コーティング剤に配合される水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、このうちヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。また、酸化された金属としては、例えば、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等が挙げられ、このうち酸化チタンが好ましい。
【0019】
上記コーティング剤は、前記水溶性高分子と酸化された金属を、精製水、エチルアルコール、プロパノール、塩化メチレン、メタノール等若しくはこれらの混合溶液の溶媒に溶解ないし懸濁することにより調製されるが、この溶媒をのぞいた皮膜形成成分中の水溶性高分子の量は、50ないし90%程度であり好ましくは60ないし70%である。酸化された金属の量は、1ないし40%程度であり、好ましくは5ないし30%である。
【0020】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤等についてもコーティング剤中に添加することが出来る。具体的には、可塑剤、光沢剤、着色剤等を添加することも出来る。可塑剤としては、例えばマクロゴール、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、トリアセチン、ひまし油、ポリソルベート、プロピレングリコール等を含有することが出来る。また、着色剤として、先に記載した酸化された金属以外にも、例えば、黄色5号、黄色4号アルミニウムレーキ、青色1号、赤色2号等のレーキ色素、銅クロロフィル、フェノールレッド、メチレンブルー、ベータカロチン、カラメル等を含有することが出来る。また、光沢剤としては、例えば、セタノール、硬化油、サラシミツロウ、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、マクロゴール等を含有することができる。
【0021】
これらのコーティング液はコーティングを実施する直前に調整することが可能であるが、市販されている調整済みのコーティング液を使用することも出来る。具体的には、オパドライ(日本カラコン)等が挙げられる。
【0022】
前記固形製剤をコーティング剤で被覆する方法も公知の方法で良く、例えば、流動層造粒、ドリップ型コーティング、パンコーティング
等の方法を適宜利用することができる。この被覆に当たっての、固形製剤とコーティング剤の使用割合は、固形製剤の具体的形態によっても相違するが、錠剤の場合、固形製剤100部に対し、コーティング剤を1ないし20部程度、好ましくは3ないし10部程度とすればよい。
【0023】
また、水溶性高分子と酸化された金属を含有したフィルムコーティングを行った後、発明の効果を損なわない範囲で、持続性を付与させたり、胃溶性、腸溶性を保持させたりすることが出来る。また、コーティングの後、糖を用いた糖衣錠にすることも可能である。
【実施例】
【0024】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0025】
実 施 例 1
フロセミド製剤(錠剤)の調製:
下記の製剤処方により、医薬組成物を調製し、これを流動層造粒機にて造粒を実施して、得られた顆粒を用い、打錠を使用して直径6.1mm、厚さ2.9mmおよび重さ90mgの素錠を調製した。得られた素錠に対し、下記組成のコーティング剤を、精製水に懸濁し、乾燥後の皮膜が1錠あたり7mgとなるようドリアコーター中で噴霧し、フィルムコーティング剤を調製した。
【0026】
< 製剤処方 >
成 分 名 配合量(mg)
フロセミド 20.0
乳糖水和物 19.0
トウモロコシデンプン 19.5
結晶セルロース 18
軽質無水ケイ酸 0.9
部分アルファー化デンプン 9
アルファー化デンプン 1.8
軽質無水ケイ酸 0.9
ステアリン酸マグネシウム 0.9
計 90.0
【0027】
< コーティング剤処方 >
成 分 名 配合量(mg)
ヒドロキシプロピルメチル 4.5
セルロース*1
マクロゴール6000 0.7
酸化チタン 1.8
カルナウバロウ 微 量
計 7
*1 粘度:6.0mPa/s
【0028】
試 験 例 1
着色防止性試験(1):
実施例1により作成した素錠(直径6.1mm、厚さ2.9mm)およびそのフィルムコーティング錠並びにオイルプレスにより上記と同様の大きさの錠剤状に成型した原薬(フロセミド)について、次のようにして着色の有無を評価した。
【0029】
まず、上記の素錠、フィルムコーティング錠および錠剤状原薬の各5錠を取り、シャーレ中においた。これらに対して送風装置(扇風機)で2週間空気を送風した。次いで、空気接触面における色差(ΔE)を分光色彩計(SE−2000;日本電色工業(株)製)を用いて調べた。なお、ΔEの基準値であるLabは、試験開始時の各錠剤の値を用いた。また、試験結果は、各錠剤5錠の平均値とした。この結果を表1に示す。
【0030】
< 試験条件 >
温 度 25℃ 暗室
風 5.4m/sec
試験期間 1週間若しくは2週間
【0031】
< 結 果 >
【表1】
【0032】
この結果から明らかなように、フロセミドを含有した素錠よりも、これにフィルムコーティングを施した錠剤ほうが色差の変化が少ないことが判明した。
【0033】
試 験 例 2
着色防止性試験(2):
着色が単にフィルムコーティングで隠されているだけであり、素錠は着色している可能性もあるので、試験例1で2週間送風を受けた後のフィルムコーティング錠について、内部の着色状況を調べた。
【0034】
調査は、フィルムコーティング錠からコーティングフィルムをはぎ取り、素錠の状態とした後、分光色彩計(SE−2000)を用いてΔEの確認を行った。なお、ΔEの基準値は、製造直後のフィルムコーティング錠のコーティングフィルムをはいだときの値を用いた。試験結果については1錠の測定における繰り返し回数3の平均値を用いた。この結果、着色防止試験を受けたフィルムコーティング剤の内部の素錠のΔEは、0.68であり、ほとんど着色していないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のフロセミド製剤は、経時的に着色することがないので、商品性の高い医薬品として利用することができる。