特許第5744427号(P5744427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744427
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】造粒蓄熱材および蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/06 20060101AFI20150618BHJP
   F02M 25/08 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C09K5/06
   F02M25/08 311D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-158753(P2010-158753)
(22)【出願日】2010年7月13日
(65)【公開番号】特開2012-21059(P2012-21059A)
(43)【公開日】2012年2月2日
【審査請求日】2012年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 正浩
【審査官】 松波 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0196480(US,A1)
【文献】 特開2009−287397(JP,A)
【文献】 特開2011−062693(JP,A)
【文献】 特開2011−064101(JP,A)
【文献】 特開2008−088376(JP,A)
【文献】 特開昭63−217196(JP,A)
【文献】 特開2005−233106(JP,A)
【文献】 特開2009−286811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/06
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質をマイクロカプセル中に封入してなる微細な蓄熱カプセルを、熱硬化性樹脂からなるバインダとともに造粒して粒状とした造粒蓄熱材であって、
造粒蓄熱材本体内に高熱伝導性材料からなる伝熱部材が配置され、
前記伝熱部材は、前記造粒蓄熱材本体の中心部に配置され、多数の蓄熱カプセルで取り囲まれるように埋設され
前記伝熱部材の形状は、鱗片状、条線状、粒状、柱状又は筒状である
ことを特徴とする造粒蓄熱材。
【請求項2】
温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質をマイクロカプセル中に封入してなる微細な蓄熱カプセルを、熱硬化性樹脂からなるバインダとともに造粒して粒状とした造粒蓄熱材であって、
造粒蓄熱材本体内に高熱伝導性材料からなる伝熱部材が配置され、
前記伝熱部材は多数の蓄熱カプセル及びバインダとともに混練された状態で配置され
前記伝熱部材は、繊維状の伝熱部材であり、前記造粒蓄熱材本体の中心部から表面側に向かって連続的に配置され、前記造粒蓄熱材本体の中心部及び表面側に存在する
ことを特徴とする造粒蓄熱材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の造粒蓄熱材であって、
前記伝熱部材の高熱伝導性材料は、金属材料あるいは炭素繊維材料であることを特徴とする造粒蓄熱材。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1つに記載の造粒蓄熱材と粒状の吸着材とを混合してケース内に充填したことを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車用内燃機関の蒸発燃料の処理などに用いられる造粒蓄熱材および蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用内燃機関においては、車両の燃料タンク内で蒸発した蒸発燃料(燃料蒸気、ベーパ、ガソリンベーパ等とも呼ばれる)の外部への放出を防止するために、蒸発燃料の吸着および脱離が可能な活性炭等の吸着材を充填した蒸発燃料処理装置(キャニスタとも呼ばれる)が設けられている。蒸発燃料処理装置は、車両停止等に発生する蒸発燃料を一時的に吸着材に吸着し、かつ、その後の運転中に、新気とともに吸着材から蒸発燃料を脱離させて内燃機関で燃焼処理するようになっている。ここで、活性炭等の吸着材を用いた蒸発燃料処理装置においては、吸着材が蒸発燃料を吸着する際には、いわゆる発熱反応であるため、吸着材の温度が上昇し、その温度上昇に伴って吸着性能が低下する。逆に、吸着材から蒸発燃料が脱離する際には、いわゆる吸熱反応であるため、吸着材の温度が低下し、その温度低下に伴って脱離性能が低下するという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、特許文献1には、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質をマイクロカプセル中に封入してなる微細な蓄熱剤(本明細書でいう「蓄熱カプセル」に相当する)を、バインダとともに成形して粒状の成形蓄熱材(同、「造粒蓄熱材」)とし、この成形蓄熱材を粒状の吸着材と混合してケース内に充填したキャニスタ(同、「蒸発燃料処理装置」)が開示されている。したがって、蒸発燃料が吸着される際の吸着材の温度上昇が、造粒蓄熱材の蓄熱カプセルの相変化物質が固相から液相へ変化する際の潜熱(融解熱)によって抑制される一方、蒸発燃料が脱離される際の吸着材の温度低下が、前記相変化物質が液相から固相へ変化する際の潜熱(凝固熱)によって抑制される。これにより、蒸発燃料の吸着および脱離にともなう吸着材の温度変化が抑制されるため、吸着材による蒸発燃料の吸着性能および脱離性能の向上が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−233106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1のキャニスタによると、バインダとしてフェノール樹脂やアクリル樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられている。このように熱硬化性樹脂を用いたバインダでは、熱伝導率が悪い(低い)ため、断熱材になってしまう。したがって、成形蓄熱材の中心部の蓄熱剤の潜熱が表面側に伝達されにくく、蓄熱剤が有する潜熱を有効に利用することができないという問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、蓄熱カプセルの潜熱を有効に利用することのできる造粒蓄熱材および蒸発燃料処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質をマイクロカプセル中に封入してなる微細な蓄熱カプセルを、バインダとともに造粒して粒状とした造粒蓄熱材であって、造粒蓄熱材本体内に高熱伝導性材料からなる伝熱部材が配置されている。したがって、造粒蓄熱材本体内に配置された伝熱部材によって、造粒蓄熱材本体内の熱の伝達効率を向上することができる。これにより、蓄熱カプセルの潜熱を有効に利用することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、伝熱部材は、造粒蓄熱材本体の中心部に配置されている。したがって、造粒蓄熱材本体の中心部に配置された伝熱部材によって、造粒蓄熱材本体の中心部における熱の伝達効率を向上することができる。
【0008】
第3の発明は、第1の発明において、伝熱部材は、造粒蓄熱材本体に中心部から表面側に向かって連続的に配置されている。したがって、造粒蓄熱材本体に中心部から表面側に向かって連続的に配置された伝熱部材によって、造粒蓄熱材の中心部の蓄熱カプセルの潜熱を表面側に速やかに伝達させることができる。また、造粒蓄熱材の表面側の熱を伝熱部材によって中心部に速やかに伝達させることができる。
【0009】
第4の発明は、第1の発明において、伝熱部材は、造粒蓄熱材本体に分散的に配置されている。したがって、造粒蓄熱材本体に分散的に配置された伝熱部材によって、造粒蓄熱材本体内の熱の伝達効率を向上することができる。
【0010】
第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明において、伝熱部材の形状は、鱗片状、繊維状、条線状、粒状、粉状、柱状、筒状のうちの少なくとも1つである。したがって、伝熱部材の形状が鱗片状、繊維状、条線状、柱状、筒状であると、伝熱部材に対する蓄熱カプセルの接触量を増大することができる。また、伝熱部材の形状が繊維状、条線状であると、伝熱部材が蓄熱カプセルの外形になじむように変形することができる。また、伝熱部材の形状が鱗片状、粒状、柱状、筒状であっても塑性変形可能に形成されていれば、伝熱部材が蓄熱カプセルの外形になじむように変形することができる。また、伝熱部材の形状が粒状、粉状であると、伝熱部材と蓄熱カプセルとの混合がしやすく、造粒蓄熱材の成形性を向上することができる。
【0011】
第6の発明は、第1〜5のいずれかの発明において、伝熱部材の高熱伝導性材料は、金属材料あるいは炭素繊維材料である。したがって、金属材料あるいは炭素繊維材料により伝熱部材を形成することができる。
【0012】
第7の発明は、第1〜6のいずれかの発明の造粒蓄熱材と粒状の吸着材とを混合してケース内に充填した蒸発燃料処理装置である。したがって、蓄熱カプセルの潜熱を有効に利用することのできる造粒蓄熱材を粒状の吸着材と混合してケース内に充填することにより、吸着材による蒸発燃料の脱離性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1にかかる蒸発燃料処理装置を示す断面図である。
図2】造粒蓄熱材を示す構成図である。
図3】実施の形態2にかかる造粒蓄熱材を示す構成図である。
図4】実施の形態3にかかる造粒蓄熱材を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
[実施の形態1]
本実施の形態では、造粒蓄熱材を備え、かつ、自動車等の車両に搭載される蒸発燃料処理装置について例示する。図1は蒸発燃料処理装置を示す断面図である。説明の都合上、図1の状態を基準として蒸発燃料処理装置の左右を定め、図1における上側を前側、同じく下側を後側と定めることにする。
【0015】
図1に示すように、キャニスタとしての蒸発燃料処理装置10は、樹脂製のケース12を備えている。ケース12は、前端面(図1において上端面)を閉塞しかつ後端面(図1において下端面)を開口する有底筒状のケース本体13と、ケース本体13の後端面を閉塞する蓋部材14とにより構成されている。ケース本体13内は、隔壁15により左右二室に仕切られており、左側に主室17が形成され、また右側に副室18が形成されている。主室17と副室18とは、蓋部材14の内側すなわちケース本体13の後端部に形成された連通路20によって相互に連通されている。
【0016】
前記ケース本体13の前側面(図1において上面)には、前記主室17に連通するタンクポート22およびパージポート23と、前記副室18に連通する大気ポート24が形成されている。タンクポート22は、蒸発燃料通路26を介して燃料タンク27内の気層部に連通されている。また、パージポート23は、パージ通路30を介して内燃機関31の吸気管32に連通されている。また、吸気管32には、吸入空気量を制御するスロットルバルブ33が設けられている。また、パージ通路30は、吸気管32に対してスロットルバルブ33の下流側において連通されている。また、パージ通路30の途中には、パージ弁34が介装されている。また、大気ポート24は大気に連通されている。
【0017】
前記主室17内および前記副室18内のそれぞれの前端面には、前側のフィルタ36がそれぞれ設けられている。また、主室17内および副室18内のそれぞれの後端面には、後側のフィルタ37がそれぞれ設けられている。前後の両フィルタ36,37は、例えば樹脂製の不織布、発泡ウレタン等により形成されている。また、主室17内および副室18内におけるそれぞれの後側のフィルタ37の後側(図1において下側)には、多孔板38が積層状に設けられている。また、各多孔板38と蓋部材14との間には、コイルバネからなるバネ部材40がそれぞれ介装されている。
【0018】
前記主室17内および前記副室18内における前側のフィルタ36と後側のフィルタ37との間には、粒状の吸着材42と、粒状の造粒蓄熱材44とが混合された状態でそれぞれ充填されている。吸着材42としては、前記特許文献1等に開示されている公知のものを用いることができるためここでの説明を省略するが、例えば粒状の活性炭を用いることができる。さらに、粒状の活性炭としては、破砕した活性炭(破砕炭)、粒状あるいは粉末状の活性炭をバインダともに造粒した造粒炭等を用いることができる。なお、図2は造粒蓄熱材を示す構成図である。
【0019】
図2に示すように、前記造粒蓄熱材44は、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質をマイクロカプセル中に封入してなる微細な蓄熱カプセル46を、バインダ(図示省略)とともに粒状に成形(造粒)することにより形成されたものである。蓄熱カプセル46としては、前記特許文献1等に開示されている公知のものを用いることができるため、ここでの説明を省略する。また、バインダとしては、種々のものを用いることができるが、蒸発燃料処理装置10として要求される温度や溶媒に対する安定性ならびに強度の上から、フェノール樹脂やアクリル樹脂等の熱硬化性樹脂が好適である。また、前記造粒蓄熱材44および前記吸着材42の単位体積あたりの重さつまり充填密度は、0.1〜1.5g/ccであることが望ましい。また、前記造粒蓄熱材44と前記吸着材42との配合割合は、造粒蓄熱材44と吸着材42との総量に対して、造粒蓄熱材44が5〜40重量%の割合を有することが望ましい。また、造粒蓄熱材44の成形方法についても、前記特許文献1等に開示されている公知のものを用いることができる。造粒蓄熱材44は、例えば、押出成形したものを所定寸法に切断することによって容易に形成することができる。このため、造粒蓄熱材44は、円柱状(丸軸状、丸棒状)、角柱状(角軸状、角棒状)等の柱状を基本的形状としている。
【0020】
ところで、前記造粒蓄熱材44の主体をなす造粒蓄熱材本体45の中心部には、高熱伝導性材料からなる鱗片状(フレーク状)の1枚の伝熱部材47が配置されている(図2参照)。すなわち、伝熱部材47を中心として多数の蓄熱カプセル46が取り囲むように配置されている。また、伝熱部材47は、造粒蓄熱材44の成形時において造粒蓄熱材本体45の中心部に埋設されていることによって、造粒蓄熱材本体45に配置されている。また、伝熱部材47の高熱伝導性材料としては、金属材料、例えば純アルミ材料が用いられている。
【0021】
次に、前記蒸発燃料処理装置10を備えた蒸発燃料システムの作用について説明する(図1参照)。なお、蒸発燃料処理システムは、蒸発燃料処理装置10、蒸発燃料通路26、燃料タンク27、パージ通路30、吸気管32、パージ弁34等によって構成されている。
まず、車両の内燃機関31が停止している状態では、燃料タンク27等で発生した蒸発燃料が蒸発燃料通路26を介して主室17に導入される。導入された蒸発燃料は、主室17内の吸着材42に吸着される。主室17内の吸着材42に吸着されなかった蒸発燃料は、連通路20を通り、副室18に導入され、副室18内の吸着材42に吸着される。このとき、吸着材42が蒸発燃料を吸着する際の発熱反応による吸着材42の温度上昇は、造粒蓄熱材44の蓄熱カプセル46(図2参照)の相変化物質が固相から液相へ変化する際の潜熱(融解熱)によって抑制される。これにより、吸着材42が蒸発燃料を吸着する吸着性能が向上される。
【0022】
一方、内燃機関31の運転中においては、パージ弁34が開弁されることで、蒸発燃料処理装置10内に吸気負圧が作用する。これにともない、大気ポート24から大気中の空気(新気)が副室18に導入される。副室18に導入された空気は、副室18内の吸着材42から蒸発燃料を脱離させた後、連通路20を介して主室17に導入され、主室17内の吸着材42から蒸発燃料を脱離させる。このとき、吸着材42から蒸発燃料が脱離される際の吸熱反応による吸着材42の温度低下は、造粒蓄熱材44の蓄熱カプセル46(図2参照)の相変化物質が液相から固相へ変化する際の潜熱(凝固熱)によって抑制される。これにより、吸着材42が蒸発燃料を脱離する脱離性能が向上される。そして、吸着材42から離脱された蒸発燃料を含んだ空気は、パージ通路30を介して吸気管32に排出すなわちパージされることにより、内燃機関31で燃焼処理される。
【0023】
前記した蒸発燃料処理装置10(図1参照)に備えた造粒蓄熱材44(図2参照)によると、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質をマイクロカプセル中に封入してなる微細な蓄熱カプセル46を、バインダとともに造粒して粒状とした造粒蓄熱材44であって、造粒蓄熱材本体45内に高熱伝導性材料からなる伝熱部材47が配置されている。したがって、造粒蓄熱材本体45内に配置された伝熱部材47によって、造粒蓄熱材本体45内の熱の伝達効率を向上することができる。これにより、蓄熱カプセル46の潜熱を有効に利用することができる。
【0024】
また、伝熱部材47は、造粒蓄熱材本体45の中心部に配置されている。したがって、造粒蓄熱材本体45の中心部に配置された伝熱部材47によって、造粒蓄熱材本体45の中心部における熱の伝達効率を向上することができる。詳しくは、伝熱部材47によって、造粒蓄熱材44の中心部の蓄熱カプセル46の潜熱を表面側に速やかに伝達させることができる。なお、伝熱部材47は、1枚に限らず、複数枚としてもよい。
【0025】
また、伝熱部材47の形状は、鱗片状である。したがって、伝熱部材47に対する蓄熱カプセル46の接触量を増大することができる。なお、伝熱部材47の形状は、鱗片状に代え、条線状、粒状、柱状、筒状等に代えることもできる。また、鱗片状には、プレート状も含まれる。また、伝熱部材47が塑性変形可能であれば、伝熱部材47をその周囲の多数の蓄熱カプセル46の外形になじむように変形することができる。
【0026】
また、伝熱部材47の高熱伝導性材料は、金属材料、例えば純アルミ材料である。したがって、金属材料により伝熱部材47を形成することができる。なお、伝熱部材47の高熱伝導性材料は、純アルミ材料に限らず、アルミ合金、純銅、銅合金等の金属材料を用いることもできる。また、高熱伝導性材料は、金属材料に代え、炭素繊維材料(例えばカーボンナノチューブ)を用いることもでき、高熱伝導性を有するものであればよい。
【0027】
また、前記した蒸発燃料処理装置10(図1参照)によると、造粒蓄熱材44と粒状の吸着材42とを混合してケース12内に充填したものである。したがって、蓄熱カプセル46の潜熱を有効に利用することのできる造粒蓄熱材44を粒状の吸着材42と混合してケース12内に充填することにより、吸着材42による蒸発燃料の脱離性能を向上することができる。
【0028】
[実施の形態2]
実施の形態2を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1の造粒蓄熱材44に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図3は造粒蓄熱材を示す構成図である。
図3に示すように、本実施の形態は、前記実施の形態1における造粒蓄熱材44の伝熱部材47を、繊維状の伝熱部材48に変更したものである。伝熱部材48は、造粒蓄熱材本体45に中心部から表面側に向かって連続的に配置されている。また、伝熱部材48は、造粒蓄熱材44の成形時において多数の蓄熱カプセル46及びバインダとともに混錬されることによって、造粒蓄熱材本体45に配置されている。このため、伝熱部材48は、造粒蓄熱材本体45内だけでなく、表面側にも配置される場合もある。また、伝熱部材48の高熱伝導性材料は、金属材料あるいは炭素繊維材料である。本実施の形態の金属材料としては、例えば、純アルミ、アルミ合金、純銅、銅合金等を挙げることができる。また、炭素繊維材料としては、例えば、カーボンナノチューブを挙げることができる。
【0029】
本実施の形態の造粒蓄熱材44によっても、前記実施の形態1と同様の作用・効果を得ることができる。また、伝熱部材48は、造粒蓄熱材本体45に中心部から表面側に向かって連続的に配置されている。したがって、造粒蓄熱材本体45に中心部から表面側に向かって連続的に配置された伝熱部材48によって、造粒蓄熱材44の中心部の蓄熱カプセル46の潜熱を表面側に速やかに伝達させることができる。また、造粒蓄熱材44の表面側の熱を伝熱部材48によって中心部に速やかに伝達させることができる。また、造粒蓄熱材44と粒状の吸着材42とを混合してケース12内に充填した蒸発燃料処理装置10(図1参照)によると、吸着材42による蒸発燃料の脱離性能及び吸着性能を向上することができる。
【0030】
また、伝熱部材48の形状は、繊維状である。したがって、伝熱部材48に対する蓄熱カプセル46の接触量を増大することができる。また、伝熱部材48が蓄熱カプセル46の外形になじむように変形することができる。なお、伝熱部材48の形状は、繊維状に代え、条線状、柱状、筒状、粒状、粉状等に代えることもできる。また、造粒蓄熱材本体45に中心部から表面側に向かって連続的に配置される伝熱部材48は、単数又は複数であればよく、また、複数の場合、隣り合う伝熱部材48が相互に接触しているとよいが、近接関係あるいは離隔関係にあってもよい。
【0031】
[実施の形態3]
実施の形態3を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1の造粒蓄熱材44に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図4は造粒蓄熱材を示す構成図である。
図4に示すように、本実施の形態の造粒蓄熱材44は、前記実施の形態1における伝熱部材47に代えて、粒状及び/又は粉状の伝熱部材49を用いたものである。伝熱部材49は、造粒蓄熱材本体45に分散的に配置されている。また、伝熱部材49は、造粒蓄熱材44の成形時において多数の蓄熱カプセル46及びバインダとともに混錬されることによって、造粒蓄熱材本体45に配置されている。また、伝熱部材49の高熱伝導性材料は、金属材料あるいは炭素繊維材料である。本実施の形態の金属材料としては、例えば、純アルミ、アルミ合金、純銅、銅合金等を挙げることができる。また、炭素繊維材料としては、例えば、カーボンナノチューブを挙げることができる。なお、繊維材料であっても、粒状とすることで、本実施の形態に適用することができる。
【0032】
本実施の形態の造粒蓄熱材44によっても、前記実施の形態1と同様の作用・効果を得ることができる。また、伝熱部材49は、造粒蓄熱材本体45に分散的に配置されている。したがって、造粒蓄熱材本体45に分散的に配置された伝熱部材49によって、造粒蓄熱材本体45内の熱の伝達効率を向上することができる。
【0033】
また、伝熱部材49の形状は、粒状及び/又は粉状である。したがって、伝熱部材49と蓄熱カプセル46との混合がしやすく、造粒蓄熱材44の成形性を向上することができる。なお、伝熱部材49の形状は、粒状及び/又は粉状に代え、鱗片状、繊維状、条線状、柱状、筒状等に代えることもできる。
【0034】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明の造粒蓄熱材44は、蒸発燃料処理装置の他、蓄熱機能を必要とする用途、例えばエンジン冷却水、エンジンオイル、トランスミッションオイル、空調用空気等の蓄熱用として適用することが考えられる。また、前記実施の形態1では、吸着材42から脱離された蒸発燃料を吸気負圧によりパージさせたが、吸着材42から脱離された蒸発燃料を吸引ポンプにより所定部位(例えば、蒸発燃料の燃料成分を液化するための液化回収装置)へパージさせることもできる。また、伝熱部材の形状は、鱗片状、繊維状、条線状、粒状、粉状、柱状、筒状のうちの少なくとも1つであればよく、その伝熱部材は単独形状であるいは各種の形状の組合せによって技術的有用性を発揮するものである。また、伝熱部材の形状は、鱗片状、繊維状、条線状、柱状、筒状の他、例えばC字状、H字状、L字状、X字状、格子状等でもよく、種々の形状に変更することが可能である。また、伝熱部材の高熱伝導性材料についても、金属材料あるいは炭素繊維材料であればよく、その伝熱部材は単独材料あるいは複数の材料の組合せによって技術的有用性を発揮するものである。
【符号の説明】
【0035】
10…蒸発燃料処理装置
12…ケース
44…造粒蓄熱材
45…造粒蓄熱材本体
46…蓄熱カプセル
47…伝熱部材
48…伝熱部材
49…伝熱部材
42…吸着材
図1
図2
図3
図4