【0009】
本発明のNK細胞活性化剤は、酸性多糖類、好ましくはリン酸化多糖類を有効成分とする。リン酸化多糖類には、多糖類を産生する乳酸菌の培養物、該培養物から精製した多糖類、多糖類を化学的又は酵素的にリン酸化して得られた多糖類などが挙げられる。リン酸化多糖類中のリン含有量は0.01%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがさらに好ましい。また、本願発明でいう多糖類には、当該多糖を化学的又は酵素的に分解して得られたオリゴ糖を含む。
本発明に用いられる乳酸菌としては、多糖類を生産する乳酸菌であれば、種類を問わない。酸性多糖類は単独で、または種類の異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乳酸菌としては、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、またはラクトコッカス・ラクティス・クレモリス(Lactococcus lactis ssp. cremoris) 等が、単独でまたは組み合わせて用いられる。これらの中でもLactococcus lactis ssp. cremoris KVS20株(Kitazawa H, Yamaguchi T, Miura M, Saito T, Itoh T, J Dairy Sci,76,1514-9(1993)), Lactobacillus bulgaricusOLL1073R-1株(FERM P-17227)が好適である。
【0010】
多糖類を培養物そのままを用いても構わないが、特開2000-247895号公報記載の方法で中性多糖類を除く、または、必要に応じて下記の様にして精製したものを用いても構わない。尚、下記の工程の一部を省略、追加しても構わない。
1、遠心分離による培養物からの菌体の除去
2、エタノール沈殿によって高分子量の多糖類、タンパク質を沈殿として回収
3、タンパク質の除去
a)final 5-10%程度のトリクロロ酢酸でタンパク沈殿、遠心
b)boilすることによりタンパク質を熱変性、遠心
c)b)のあとにプロテイナーゼによるタンパク分解、あるいはDNAaseによる核酸の分解処理等も行い、透析
4、陰イオン交換樹脂による酸性多糖体類の吸着と溶出による回収
5、ゲルろ過により分子量100万以上の物質として酸性多糖体を精製する。
この時、酸性かつ分子量が近いタンパク質が混合していた場合は、ゲルろ過の前、あるいは後に何らかのタンパク除去操作を加えることも可能である。
【実施例】
【0014】
〔実施例1〕
乳酸菌由来多糖の製造
1.乳酸菌の培養
10%乳清をプロテアーゼで55℃、8時間処理した後酵母エキスを0.5%添加、pH7.0に調製したものにLactobacillus bulgaricusOLL1073R-1株(FERM P-17227)を接種し、37℃、24時間の静置培養を行った。
2、多糖の精製
10-20Lの培養液より菌体を遠心分離(22800 x g,4℃,20min)した後、エタノール沈殿(60-70%(v/v))を2回行った。沈殿物はMilliQ水に溶解し、トリクロロ酢酸(final 10%)によるタンパク変性、遠心分離(22800 x g,4℃,20min)による不溶物の除去を行った。
MilliQ水に対する透析、凍結乾燥を行った後、0.02M Tris-HCl(pH8.6)に溶解し、陰イオン交換樹脂であるDEAE-Sepharose(Amersham Biosciences)を用いて中性多糖と酸性多糖の分離を行った(
図1)。中性多糖はPass画分として回収し、酸性多糖はNaClを用いて0-0.5Mイオン強度勾配による溶出で回収した。
回収された酸性多糖はSephacryl S-400HR(Amersham Biosciences)を用いてゲルろ過を行い、分子量による分離を行った。本多糖は分子量1×10
6Da以上の画分と分子量がより小さい画分に分離され、分子量1×10
6Da以上の画分について分取した(
図2)。
分取した多糖はMilliQ水に対して透析後、凍結乾燥し、酸性多糖精製品を得た。
なお、多糖はグルコースを標準物質としてフェノール・硫酸法を用いて検出・定量した。
また、文献記載(Uemura J, Milchwissenschaft,53(8),443-6(1998))の方法で当該多糖を分析したところ、リン酸化多糖を含有していることが確認された。
【0015】
〔実施例2〕
多糖のNK活性
1.多糖のマウスへの経口投与試験
マウスBALB/c(雄、8週齢、SLC社)30匹を1群10匹で3群に分け、以下の投与物を3週間、ゾンデにより強制経口投与を行った。
1) 蒸留水投与群:0.5ml/body/day
2) 実施例1で得た酸性多糖投与群:5mg/kg/day
3) 実施例1で得た酸性多糖投与群:30mg/kg/day
多糖は各濃度で蒸留水に溶解し、0.5ml/body/dayで投与を行った。
2.NK活性測定
3週間の投与終了後、個々のマウスよりそれぞれ脾臓を取り出し、細胞をRPMI1640(10%FCS)に懸濁することにより脾臓細胞懸濁液(1×10
7cells/ml)を調製した。
この脾臓細胞をエフェクター細胞、YAC-1細胞をターゲット細胞としてNK活性をfluorescence activated cell sorter(以下FACSとする)を用いて測定した。ターゲット細胞であるYAC-1は3,3’-dioctadecyloxacarbocyanine perchlorate(以下Dioとする)により蛍光染色した後、脾臓細胞とともに96穴マイクロプレート(丸底)を用いて37℃、5%CO
2条件下で4時間培養を行った。培養終了前にPropidium Iodide(以下PIとする)を培養液に加え、死細胞を染色した。培養終了後、Johannの論文を参考にFACSを用いてDio、PIともに染色された細胞を死滅したYAC-1細胞として検出した(Johann S, Blumel G, Lipp M, Forster R,J Immunol Methods,185(2),209-16(1995))。なお、エフェクター細胞とターゲット細胞の比率は40:1とした。
その結果、酸性多糖30mg/kg/day投与群の脾臓細胞NK活性はコントロールである水投与群に比べ有意に高かった(P<0.01)。また、酸性多糖5mg/kg/day投与群においてもコントロールに比べ高い傾向(P<0.1)が見られた(
図3)。
【0016】
〔実施例3〕
多糖産生乳酸菌を利用した発酵乳の作製
NK活性上昇作用を有する酸性多糖体を産生するL. bulgaricus OLL1073R-1を用いて発酵乳を作製した。生乳、脱脂粉乳、砂糖を使用し、SNF9.7%、FAT3.05%、砂糖3.0%に調製した溶液(以下発酵乳Mix)にL. bulgaricus OLL1073R-1、S. thermophilus OLS3059(FERM P-15487)をスターター菌として加え、43℃で発酵を行った。酸度0.7で発酵を終了し、4℃で1日保存することで最終酸度0.78となった。また、対照発酵乳としてL. bulgaricus OLL1256及びS. thermophilus OLS3295をスターター菌として用いた発酵乳についても作製した。
【0017】
〔実施例4〕
多糖産生乳酸菌を利用した発酵乳のNK活性
1.多糖産生乳酸菌を利用した発酵乳のマウスへの経口投与試験
マウスBALB/c(雄、11週齢、SLC社)32匹を1群8匹で4群に分け、以下の投与物を4週間、ゾンデにより強制経口投与を行った。
1) 蒸留水投与群 1.0ml/body/day
2) L. bulgaricus OLL1073R-1発酵乳(実施例3)投与群 200mg/body/day
3) 対照発酵乳(実施例3)投与群 200mg/body/day
4) 発酵乳Mix(実施例3)投与群 200mg/body/day
発酵乳、発酵乳Mixは凍結乾燥物を用い、投与時に200mg/mlで蒸留水に懸濁した。
2.NK活性測定
4週間の投与終了後、個々のマウスよりそれぞれ脾臓を取り出し、細胞をRPMI1640(10%FCS)に懸濁することにより脾臓細胞懸濁液(1×10
7cells/ml)を調製した。
この脾臓細胞をエフェクター細胞、YAC-1細胞をターゲット細胞としてNK活性をfluorescence activated cell sorter(以下FACSとする)を用いて測定した。ターゲット細胞であるYAC-1は3,3’-dioctadecyloxacarbocyanine perchlorate(以下Dioとする)により蛍光染色した後、脾臓細胞とともに96穴マイクロプレート(丸底)を用いて37℃、5%CO
2条件下で4時間培養を行った。培養終了前にPropidium Iodide(以下PIとする)を培養液に加え、死細胞を染色した。培養終了後、Johannの論文を参考にFACSを用いてDio、PIともに染色された細胞を死滅したYAC-1細胞として検出した(Johann S, Blumel G, Lipp M, Forster R,J Immunol Methods,185(2),209-16(1995))。なお、エフェクター細胞とターゲット細胞の比率は40:1とした。
その結果、発酵乳投与では多糖体産生菌であるL. bulgaricus OLL1073R-1を使用した発酵乳投与群においてNK活性がコントロールである蒸留水投与群に比べ有意に高く(p<0.05)、発酵乳Mixと対照発酵乳に対しては高い傾向(p<0.1)が見られた(
図4)。
。