(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ダクト中にエリミネータを設置する場合は、下記のような不具合がある。
エリミネータは、一般的に2〜5m/sの面速で設計製作される。これは、面速が遅いとエリミネータにおける遮りによるガス中の微水滴のたたき落とし効果が発揮できず、逆に面速が高いと、いくら遮りを行っても、一度エリミネータで捕捉された水滴が再び高速気流により同伴されてしまうからである。RTOを採用したVOC処理システムでは、処理対象となる排ガスは大風量(約3,000m
3/min)であるから、必要な面積は25〜10m
2である。ダクトを2m×2mを基準に設計すると、断面積が4m
2となり、2.5〜6.25倍の断面積が必要となる。
例えば、一般的な脱臭装置の処理風量50m
3タイプ(エレメント寸法0.5m×0.5m)では、3000÷50=60個、10×6個(計60個)とすると、5.0m×3.0m=15m
2となり、ダクトの3.75倍の断面積になる。
【0008】
このように、排ガスの風速を抑えるため、ダクトを非常に大きくする必要がある。即ち、ダクト中にエリミネータを設置するためには、設置スペースを大きくする必要があるという問題点があった。
また、エリミネータによる同伴水滴のたたき落としでは、その後加熱などを行わないと、過飽和空気を飽和空気状態(100%相対湿度)に持っていくのがやっとで、効果が不十分になりがちであるという問題点もあった。
【0009】
次に、ダクト中に除湿機を設置する場合は、凝縮除湿するための冷熱源、又は吸着除湿するための吸着剤及び再生用加熱源などのユーティリティが大々的に必要となる。また、熱交換器の実務的伝熱面積設計のための面速や、吸着の除去効率を高めるための適切な線速度を保持するため、一般的に2〜3m/sの面速で設計作成される。よって、排ガスの面速を抑えるためにダクトを非常に大きくする必要がある。即ち、設置スペースを大きくする必要があるという問題点があった。
しかも、除湿器の冷却コイルの面速は、空気調和衛生工学便覧第12版2汎用機器・空調機器編第526頁〜第527頁に記載のように、通過風速2〜3m/sであるから、エリミネータよりさらに制限が厳しくなるという問題点もあった。
【0010】
次に、ダクト中に加熱源(バーナ/加熱炉またはヒータ/電気)を設ける加熱炉または電気ヒータの場合は、下記のような不具合がある。
加熱炉では、バーナユニットの追加で制御やユーティティの供給が必要となり、さらに、安全対策、防火・防爆対策が必要な場合もあり得るという問題点があった。
一方、電気ヒータは、シーズ線が細くコイル状にして伝熱面積を稼ぐと熱が逃げる箇所が発生し、また、大風量向きに空気のバイパスファクタを小さくしようとするとシーズ線を莫大に敷設しなければならず、大風量には不向きであるという問題点があった。さらに、VOCが可燃性ガスであることが多いので、安全対策、防火・防爆対策が必要な場合もあり得る。
加えて、これらは、何れも加熱源のエネルギーが必要になる上に、大掛かりになり、しかもコストが大幅に掛かるという問題点があった。
【0011】
また、特許文献2に記載のように、濃縮装置の入口に吸着材や凝縮によって水分を除去する水分除去部を設けると、下記のような不具合がある。
先ず、吸着材による問題点は、温度が高くなると効率が悪くなる、破過すると吸着できなくなるの主に2点である。
前者は、吸着は物質どうしの引力によるものなので、温度が高くなると分子(ここでは排ガス中のVOC等)の運動が激しくなり、吸着しにくくなる。高温で再生(脱着)するのは、この現象を逆に利用したものである。
後者は、排ガス等の分子は吸着材の表面にくっつくので、表面積が多い方が吸着できる場所が増えて効果があるが、限界もあり最初から最大の吸着量が決まっているので、これを超え(破過、飽和、平衡等と呼ぶ)て吸着できない。
【0012】
次に、凝縮による問題点は、冷媒循環等の装置が複雑になる、エネルギー(低温を造る)が掛かる、装置等のメインテナンスが必要、等である。
ただ、吸着のような温度の条件による制約は少なくなる。また、圧損(圧力損失)も若干少なくできるため、有利にできる。
さらに、特許文献2では、先ず、気化させるためにヒータで加熱して、その後、また、ヒータで可燃性ガスを燃焼させるので、機器の無駄があり、加えて時間(タイミング)的にもうまく制御することが困難である。
【0013】
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、排ガス中の相対湿度が大なる(例えば、90〜100%RH)VOCを含む排ガスを相対湿度を低く(例えば、80%RH以下)して濃縮装置に供給することを可能とする排ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明は、揮発性有機化合物を含み、相対湿度が大なる排ガスを送風機を介して供給する排ガス供給路と、前記排ガス供給路に接続し前記排ガスを通過させる熱交換器と、前記熱交換器を通過した排ガス中の揮発性有機化合物を吸着する吸着部と、前記吸着部に吸着された前記揮発性有機化合物を
加熱ガスの熱により離脱させ前記揮発性有機化合物濃度の高い濃縮したガスを発生する再生部とを有する濃縮装置と、前記吸着部を通過した清浄空気を大気へ排気する排気路と、前記再生部を通過し前記揮発性有機化合物濃度の高い濃縮したガスを燃焼処理し浄化した
燃焼処理後ガス及び
前記加熱ガスを排出する熱処理装置と、
前記燃焼処理後ガスを前記熱交換器に供給する燃焼処理後ガス流路と、
前記加熱ガスを前記再生部に供給する加熱ガス供給路とを備え、前記燃焼処理後ガス流路は、
前記燃焼処理後ガスを外部へ一部放出するためのダンパを備えたバイパス路を前記熱交換器上流側に設け、前記排ガス供給路内の濃縮装置排ガス入口温度計の計測値が前記排ガス供給路内の熱交換器排ガス入口温度計の計測値より所定温度高くなるように前記ダンパを開閉制御することにより、前記熱交換器への
前記燃焼処理後ガスの供給量を調整し、前記吸着部に供給される前記排ガスの相対湿度を所定値に制御することを特徴とする。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の排ガス処理装置において、前記排ガス供給路は、排ガスを水洗する塗装ミスト除去装置を介して有機溶剤系塗料の塗装ゾーンに接続されることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の排ガス処理装置において、前記排ガス供給路は、水溶剤系塗料の塗装ゾーンに接続されることを特徴とする
。
【発明の効果】
【0016】
本発明において、RTOで処理されVOCを燃焼除去された処理ガスは、蓄熱部に熱を与えて尚未だ余熱に利用できるだけの熱を充分有しており(例えば、100℃のガス温度)、風量は、濃縮部へ導入される導入側塗装ゾーン排ガス量に比して、濃縮部での濃縮排ガスになるので、1/5〜1/20の風量となるが、導入側のガス温度を約5℃加熱するには充分な熱量を有しており、よって、濃縮装置の前段に設けた気体−気体熱交換器によって熱回収を行うことによって確実に達成することが可能である。
そのため、本発明によれば、濃縮装置の前段に気体−気体熱交換器を設け、RTOで処理された例えば100℃のガス温度を有する排ガスを、この気体−気体熱交換器を通過させることによって熱回収を行い、濃縮装置に導入される排ガスを5℃加熱するようにしたので、排ガスの相対湿度90〜100%RHを80%RH以下に低下させることが可能となり、濃縮装置の吸着剤性能低下による処理効率低下を防止できることとなった。
【0017】
また、本発明によれば、気体一気体熱交換器の前段に送風機を配置させることで、送風機のファンの駆動動力の熱に変化するファン発熱を利用して、排ガス温度を1〜2℃上昇させることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る排ガス処理装置10を示す。
本実施形態に係る排ガス処理装置10は、塗装設備1から排出される排ガス中に含まれるVOCを除去することを目的とする。
本実施形態において、塗装設備1は、塗装ゾーン内で自動車の部品(被塗装物)の塗装を行う設備である。
【0020】
本実施形態に係る排ガス処理装置10は、排気用の送風機12及びプレフィルタ13を備えた排気供給路11を塗装設備1の排気口に接続されている。塗装設備1から排出される排ガスは、例えば、塗装ミスト除去装置を通過するため、水のカーテンミストを含んでいる。そのため、排ガス中の相対湿度は、90%RH〜100%RHと高い。最近熱硬化型塗料として水系塗料が使用されることもあるが、その場合、ミスト除去装置が無くても、排ガス中の相対湿度は、90%RH〜100%RHと高い。
排気供給路11は、塗装設備1内における被塗装部の塗装時に発生したVOC、塗料ミスト、塗料かす等を含む排ガスを排気用の送風機12で排出し、内部にガラス繊維製ろ材自動更新一次フィルタ13aとポケット状に加工した吹き流し型の二次フィルタ13bとを備えるプレフィルタ13で塗料かす等を除去する。排気供給路11には、排気用の送風機12とプレフィルタ13との間に大気へ放出するバイパスラインへの分岐管路11aが設けられている。
【0021】
なお、プレフィルタ13は、一次フィルタ13a、二次フィルタ13bともろ過式としたが、本発明はこれに限らず、静電式、ろ過式(ガラス繊維、合成繊維、中性能、高性能)等であれば良く、その組合せ等は任意である。
排気供給路11のプレフィルタ13の出口側には、処理用の送風機14、プレート式の気体−気体熱交換器15、活性炭フィルタ16、濃縮装置17が配置されている。
上述したように、塗装設備1の排ガスは、常温20〜25℃であるが、相対湿度が約100%RHと高いため、濃縮装置17における処理効率の低下が懸念される。濃縮装置17において、吸着材による対象VOCの空気からの分離処理効率90%以上とするには、濃縮装置17の排ガス入り口条件として、常温付近で相対湿度80%RH以下が必要である。
【0022】
そのため、本実施形態では、処理用の送風機14から供給されるプレフィルタ13を通過した排ガスは、気体−気体熱交換器15において排ガス中の相対湿度を80%RH以下に低減された後、活性炭フィルタ16及び濃縮装置17へ供給されるように構成されている。
気体−気体熱交換器15は、
図2に示すように、器体内をX方向の気体の複数の流路15xとY方向の気体の複数の流路15yとを相互に混じり合わないようにそれぞれ金属製のプレート15pによって交互に直交させ、一方の流路を流れる気体の熱を他方の流路を流れる気体の熱と交換するように構成されている。金属製のプレート15pは、両端が開口するように2つの板材で筒形状に形成されている。
【0023】
本実施形態において、例えば、
図1に示すように、気体−気体熱交換器15は、X方向の気体の複数の流路15xを、処理用の送風機14によって供給される塗装設備1からの排ガスの流路15aとし、Y方向の気体の複数の流路15yを、後述するRTO(蓄熱燃焼式排ガス処理装置)23からの気体の流路15bとする。
気体−気体熱交換器15のX方向の排ガスの流路15aは、活性炭フィルタ16の吸気口16aに接続されている。気体−気体熱交換器15のY方向のガスの流路15bは、大気に放出される。
活性炭フィルタ16は、活性炭、シリカゲル、ゼオライト等の吸着材を備え、塗装設備1から排出された排ガス中に含まれる高沸点物質等を吸着する。
【0024】
濃縮装置17は、例えば、
図3、
図4に示すように、ハニカム構造の筒状吸着体(例えば、吸着材に疎水性ゼオライトを使用)からなる濃縮ロータ18を駆動モータ18dによって回転させるチェーン18eを介して例えば、2.0〜8.0rphで回転され、装置内において濃縮ロータ18を吸着部18aと再生部18bとに区分させる機構を備えている。
活性炭フィルタ16を通過したVOCを含んだ処理ガスAが入口17aから濃縮装置17に導入されると、処理ガスAは、
図4に示すように、濃縮ロータ18の吸着部18aへ供給される流路と濃縮ロータ18の冷却部18cに供給される流路とに分離される。
そして、濃縮ロータ18の吸着部18aへ供給された処理ガスAは吸着部18aを通過し、VOCが除去された清浄ガスA’(清浄空気)となり、流路19を介して大気へ放出される。
【0025】
また、濃縮装置17の冷却部18cへ供給された処理ガスは、濃縮ロータ18の冷却部18cを通過して冷却出口ガスD’として流路21から導出される。
一方、VOCを吸着した濃縮ロータ18は再生部18bへ移り、ここで、後述するRTO23からの加熱ガスと冷却出口ガスD’とを混合した再生ガスB(高温空気)が吹き付けられ、濃縮ロータ18に吸着したVOCを脱着、濃縮したガスC(再生部を通過した排ガス)としてRTO23の入口に連絡する流路20へ送り出される。なお、濃縮装置17には、冷却ガスに大気を使用する方式もある。
流路20は、燃焼装置用の送風機22に繋がり、燃焼装置用の送風機22は、RTO23に接続されている。
【0026】
RTO23は、例えば、
図5に示すように、3つの塔式のケース23a,23b,23c内にそれぞれ多数のハニカムセラミックス蓄熱体から成る蓄熱部24a,24b,24cを配置し、蓄熱部24a,24b,24cの上部側にバーナ(ガスバーナ又はオイルバーナ)25aを備え、800℃以上の高温でVOC成分を分解する燃焼室25を形成し、下部に燃焼処理前ガスを導入するためのダンパ27a,27b,27c及び燃焼処理後ガスを導出するためのダンパ27d,27e,27fを備えるホッパ26a,26b,26cを設けている。
【0027】
RTO23は、例えば、下記のような3つの運転サイクルによって連続的に運転できるように構成されている。
第一の運転:
1つ目のケース23aは、ダンパ27aを開き、ダンパ27dを閉じて燃焼処理前ガスCを導入して蓄熱部24aにより昇温し、2つ目のケース23bは、ダンパ27bを閉じ、ダンパ27eを開いて燃焼処理後ガスを冷却して排気し、3つ目のケース23cは、ダンパ27c及びダンパ27fを閉じて蓄熱部24cの下部のホッパ26c内の残留未処理ガスをパージ吸引して、燃焼装置用の送風機の吸込み側に戻して燃焼処理ガスに導入する。
【0028】
第二の運転:
1つ目のケース23aは、ダンパ27a及びダンパ27dを閉じて蓄熱部24aの下部のホッパ26a内の残留未処理ガスをパージ吸引して、燃焼装置用の送風機の吸込み側に戻して燃焼処理ガスに導入する。2つ目のケース23bは、ダンパ27bを開き、ダンパ27eを閉じて燃焼処理前ガスCを導入して蓄熱部24bにより昇温し、3つ目のケース23cは、ダンパ27cを閉じ、ダンパ27fを開いて燃焼処理後ガスを冷却して排気する。
【0029】
第三の運転:
1つ目のケース23aは、ダンパ27aを閉じ、ダンパ27dを開いて燃焼処理後ガスを冷却し、2つ目のケース23bは、ダンパ27b及びダンパ27eを閉じて蓄熱部24bの下部のホッパ26b内の残留未処理ガスをパージ吸引して、燃焼装置用の送風機の吸込み側に戻して燃焼処理ガスに導入する。3つ目のケース23cは、ダンパ27cを開き、ダンパ27fを閉じて燃焼処理前ガスCを導入して蓄熱部24cにより昇温する。
【0030】
RTO23は、燃焼室25にホットバイパスダンパ28を設け、ホットバイパスダンパ28によって、VOCの濃度が高く、燃焼室25内の温度が高くなり過ぎた場合には、熱を逃がす構造になっている。
加熱ガス供給路29は、燃焼室25の加熱ガスをVOCを吸着した濃縮ロータ18の再生部18bへ吹き付けるために、再生用の送風機30が設けられ、再生用の送風機30の上流側では、濃縮ロータ18を通過して冷却出口ガスD’を導出する流路21が接続されている。また、流路21との接続部より上流側には、再生用の送風機30の下流側に設けた温度制御制御器T3によって開閉される再生ガス用ダンパ31が設けられている。
【0031】
RTO23のダンパ27d,27e,27fには、燃焼処理後ガスを気体−気体熱交換器15へ導くための
燃焼処理後ガス流路32
(以下、流路32と称する)が接続されている。流路32には、気体−気体熱交換器15の上流側で燃焼処理後ガスをバイパスするためのバイパス路33を備えている。バイパス路33には、ダンパ34が設けられている。ダンパ34の開閉は、活性炭フィルタ16の入口に設けた温度計T2と、排気供給路11のプレフィルタ13の出口側と処理用の送風機14との間の流路に設けた温度計T1との差(ΔT=T2−T1)が5℃となるように調整される。即ち、排ガスの相対湿度が100%RHから80%RH以下となるように調整される。
【0032】
次に、本実施形態の作用を説明する。
先ず、塗装設備1から排出されるVOCを含む相対湿度が約100%RHの排ガスが、排気用の送風機12によって排気供給路11を流下し、プレフィルタ13にて塗料かす等が除去される。
次に、プレフィルタ13を通過した排ガスは、処理用の送風機14によって気体−気体熱交換器15のX方向の気体の流路15aを通過し、処理される排ガスの相対湿度が80%RH以下に低減される。この際、気体−気体熱交換器15のY方向の気体の流路15bには、RTO23の燃焼処理後の約100℃の清浄ガスが流路32を介して供給されている。
【0033】
なお、RTO23の燃焼処理後の清浄ガスは、プレフィルタ13と処理用の送風機14との間の流路の温度を検出する温度計T1と活性炭フィルタ16の入口の温度を検出する温度計T2との差(ΔT=T2−T1=5℃)となるように、流路15bを流れる清浄ガスの流量をダンパ34を開閉することによって調整されている。
次に、相対湿度が80%RH以下に低減された処理される排ガスは、活性炭フィルタ16に吸気口16aから送り込まれ、塗装設備1から排出された排ガス中に含まれる高沸点物質等が吸着により除去される。
【0034】
次に、例えば、
図3、
図4に示すように、活性フィルタ16を通過したVOCを含んだ処理ガスAが入口17aから濃縮装置17に導入されると、処理ガスAは、
図4に示すように、濃縮ロータ18の吸着部18aに供給される流路と濃縮ロータ18の冷却部18cに供給される流路とに分離され、濃縮ロータ18の吸着部18aに供給された処理ガスAは吸着部18aを通過し、VOCが除去された清浄ガスA’となり、流路19を介して大気へ放出され、濃縮装置17の冷却部18cへ供給された処理ガスは、濃縮ロータ18の冷却部18cを通過して冷却出口ガスD’として流路21から導出され、RTO23の燃焼室25に接続する加熱ガス供給路29と合流されている。
【0035】
次に、VOCを吸着した濃縮ロータ18が再生部18bへ移ると、ここでRTO23からの加熱ガスと冷却出口ガスD’とが加熱ガス供給路29で混合され、混合された再生ガスBが濃縮ロータ18の再生部18bに吹き付けられ、濃縮ロータ18に吸着したVOCを脱着、濃縮したガスCとしてRTO23の入口に連絡する流路20へ送り出される。
なお、加熱ガス供給路29を流れる加熱ガスの温度は、再生用の送風機30の下流側に設けた温度制御制御器T3によって流路21との接続部より上流側に設けた再生ガス用ダンパ31を開閉することによって、RTO23からの加熱ガスと冷却出口ガスD’との混合を調整することによって調整されている。
【0036】
次に、流路20を介して燃焼装置用の送風機22でRTO23へ導入されると、RTO23では、上述した第一の運転、第二の運転及び第三の運転を、第一の運転→第二の運転→第三の運転→第一の運転→第二の運転→第三の運転→の運転サイクルによって繰り返すことによって、VOCを含んだガスを燃焼室25で燃焼し、清浄化したガスを流路32を介して気体−気体熱交換器15のY方向のガスの流路15bへ送り出し、燃焼室25で燃焼したガスを加熱ガス供給路29へ送り出す。
【0037】
以上のように、本実施形態では、排ガス処理装置としてRTO23を採用したため、流路32から排ガスとして排出される燃焼処理後の清浄ガスの熱が余る。本実施形態において、受熱側は大風量(約3,000m
3/min)であるが、相対湿度を20%RH下げるには5℃増加させればよい。
これに対し、放熱側のRTO23の排ガスは小風量(約150m
3/min)であるが、温度が約100℃と大きく熱量的には十分である。このように、本実施形態では、燃焼処理後ガスの熱の有効利用を極限まで使用し、環境保護の面で有意義である。
【0038】
このため、気体−気体熱交換器15を導入することで、外部からの熱供給や付加装置もなく有効利用のみで目的を達成することができる。また、気体−気体熱交換器15には可動部がなくメインテナンス上、有利である。
また、気体−気体熱交換器15の前段に処理用の送風機14を設置したことで、断熱圧縮の温度上昇により、ここで、2℃の上昇も確保することができる。
また、本実施形態では、付加装置を全く使用しない点は初期費用やランニングコストを低減できる。
【0039】
本実施形態によれば、温度制御も気体−気体熱交換器15への流路32にバイパス路33を設置し、処理用の送風機14の入口温度T1と活性炭フィルタ13の入口温度T2との温度差に基づくフィードバック制御を行い、常に5℃の温度差を確保できるようにし、安定運転が容易にできる。
【0040】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
本実施例では、排気用の送風機12から活性炭フィルタ16の入口までのダクトにおけるシミュレーションを行い、ダクト中の温度を試算した。
試算条件としては、冬期、中間期、夏期の3パターンとして、それぞれ外気温度は0℃、23℃、35℃、排ガス温度は20℃、23℃、25℃とした。なお、本実施例では、シミュレーションはモデルとして、ダクト風速は代表的な13.5m/S、送風機14の出口と気体−気体熱交換器15の入口とは同じ位置、気体−気体熱交換器15の出口を濃縮装置17の入口としてある。
【0041】
また、排気用の送風機14の温度上昇は、排ガスの断熱圧縮によるものとし、つぎの計算式により求めた。
【0043】
ここで、T
2:吐出し絶対温度〔K〕
T
1:吸込絶対温度〔K〕
P
2:吐出し絶対圧〔Pa〕
P
1:吸込絶対圧〔Pa〕
κ:比熱比 ※空気の場合=1.4
η
ad:断熱効率 ※ファン効率(全断熱効率)より数%くらい高い値
【0044】
なお、処理用の送風機14における発熱による排ガスの昇温は、例えば、下記表1における処理用の送風機14の入口温度について説明すると、冬期17.30℃の場合は約3.00℃、中間期23.0℃の場合、約3.06℃、夏期26.37の場合、約3.09℃であった。
以上から、処理用の送風機14による排ガスの断熱圧縮により、約3.0℃程度の温度上昇が得られることが確認された。
また、気体−気体熱交換器15の温度上昇は、RTO23の排ガスとの熱交換とした。
表1に試算条件とシミュレーション結果を示す。
【0046】
冬期は、排ガス20℃がダクト間で外気0℃により、処理用の送風機14の入口では17.30℃まで低下した。
処理用の送風機14の温度上昇3.00℃により、処理用の送風機14の出口(=気体−気体熱交換器15の入口)では20.30℃、気体−気体熱交換器15の温度上昇2.28℃により、気体−気体熱交換器15の出口(=濃縮装置17の入口)では22.58℃になる。
【0047】
図6に示すように、T−X空気線図上のプロットから、気体−気体熱交換器15入口の、17.3℃DB、100%RHの状態の排ガスは、濃縮装置17の入口における相対湿度は約73%RHになる。ダクト間の温度変化は、絶対湿度が減少するので結露水が生じ、0.0148kg/kgから0.0124kg/kgの減少から、排水量は1時間当たり544Lになる。
中間期は、排ガスと外気温度が等しいため温度変化は起こらず、処理用の送風機14の入口では23.00℃になる。
【0048】
処理用の送風機14の温度上昇3.06℃により、処理用の送風機14の出口(=気体−気体熱交換器15の入口)では26.06℃、気体−気体熱交換器15の温度上昇2.12℃により、気体−気体熱交換器15の出口(=濃縮装置17の入口)では28.18℃になる。
図7に示すように、T−X空気線図上にプロットから、気体−気体熱交換器15入口の、26.06℃DB、100%RHの状態の排ガスは、濃縮装置17の入口における相対湿度は約74%RHになる。ダクト間の温度変化がないため、絶対湿度も変化せず、結露水は生じない。
【0049】
夏期は、排ガス25℃がダクト間で外気35℃により、処理用の送風機14の入口では26.37℃まで上昇する。
処理用の送風機14の温度上昇3.09℃により、処理用の送風機14の出口(=気体−気体熱交換器15の入口)では29.47℃、気体−気体熱交換器15の温度上昇2.03℃により、気体−気体熱交換器15の出口(=濃縮装置17の入口)では31.50℃になる。
【0050】
図8に示すように、T−X空気線図上のプロットから、気体−気体熱交換器15入口の、29.47℃DB、100%RHの状態の排ガスは、濃縮装置17の入口における相対湿度は約69%RHになる。ダクト間で温度低下がないため、絶対湿度も低下せず、結露水は生じない。
いずれの期間においても、濃縮装置17の入口では相対湿度80%RH以下が確保でき、処理効率は90%以上になると考えられる。ダクト中の排水は、絶対湿度の低下が生じる冬期のみ生成する。
【0051】
次に、濃縮装置17をさらに具体的に説明する。
本例では、φ4,200×D400mmの濃縮ロータ18を2つ使用した。ロータの回転数を、2.0〜8.0rpmとした。
処理用の送風機14に供給される排ガスを一例としては、風量2,880.0Nm
3/min(Q
1)、VOC濃度83ppm、排ガス温度25℃とする。
活性炭フィルタ16を通過し、吸着部18aへ供給されるガスは、風量2,761.8Nm
3/min、VOC濃度83ppm、排ガス温度25℃とする。
活性炭フィルタ13を通過し、冷却部18cへ供給されるガスは、風量118.2Nm
3/min、VOC濃度83ppm、排ガス温度25℃とする。
【0052】
RTO23からの加熱ガスの温度は825℃、風量25.8Nm
3/minとする。
吸着部18aを通過した処理ガスは、風量2,761.8Nm
3/min、VOC濃度8.3ppm、効率≧90.0%、排ガス温度27〜29℃となる。
冷却部18cを通過したガスは、風量118.2Nm
3/min、VOC濃度83ppm、排ガス温度90〜130℃となる。
再生用の送風機30から供給される再生用のガスは、風量144.0Nm
3/min(Q
2)、VOC濃度83ppm、排ガス温度200℃とする。
再生部18bを通過し、燃焼装置用の送風機22から供給される処理ガスは、風量144.0Nm
3/min、VOC濃度1,500ppm、排ガス温度約60℃となる。
【0053】
その結果、濃縮倍率は、Q
1:Q
2=2,880.0Nm
3/min:144.0Nm
3/min=20:1である。
以上の結果から、気体−気体熱交換器15のY方向のガスの流路15bへ送り出される空気の風量は118.2Nm
3/min、温度は約105℃となる。
従って、T2−T1=5℃とするためには、バイパス路33のダンパ34によって、風量を118.2Nm
3/min−αとなるように調整される。
【0054】
本実施例では、濃縮装置17の倍率(風量比)について、Q
1:Q
2=2,880:144=20:1として説明したが、5:1〜20:1であればよい。下限値側は、技術的な問題はないが、風量を小さくしないのは、濃縮装置としてのメリットがなくなるからである。ただし、濃縮しすぎると爆発の危険があるので、濃縮対象物質の爆発限界は必ず確認する。各物質の爆発限界の1/4以下が一般的な慣例である。上限値側は、技術的に限界があり、30倍まで可能とされるが、再生に必要な熱量を与えるためには、20:1程度が望ましい。
【0055】
なお、上記実施形態では、RTO23を3つの塔を有する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、2つの塔を有するもの又は3つ以上の塔を有するものとしてもよい。
また、上記実施形態では、RTO23を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、回転蓄熱燃焼式排ガス処理装置(RRTO: Rotary Regenerative Thermal Oxidizer)、触媒燃焼式排ガス処理装置(CTO: Catalytic Thermal Oxidizer)、直接燃式排ガス処理装置(DTO: Direct Thermal Oxidizer)を用いてもよい。
【0056】
触媒燃焼式排ガス処理装置では、例えば、約200℃の清浄ガスを取り出すことができる。直接燃焼式排ガス処理装置では、例えば、約400℃の清浄ガスを取り出すことができる。
何れの場合も、気体−気体熱交換器15に100℃以上の高温の清浄ガスを供給することができ、塗装用設備1から排出されるVOCを含む処理ガスの相対湿度を100%RHから80%RH以下に確実に低減することが可能となる。
【0057】
また、上記実施形態では、自動車の部品の塗装を行う塗装設備1に対応する排ガス処理装置について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、冷蔵庫や洗濯機等の家電に塗装を施す塗装設備や紙等の媒体にインクを転写する印刷設備や半導体、液晶パネルの製造ライン等に適用することも可能である。