(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の感光ドラムと、各感光ドラムを同時に回転可能な単一の回転駆動部及び各感光ドラムと前記回転駆動部間に配した複数の電磁クラッチを有するドラム駆動機構部と、各感光ドラムにトナーを付着させる複数のヘッドと、各感光ドラムのトナーが転写され、かつ転写されたトナーを被転写材に転写する転写ベルトとを備えてなる画像形成装置であって、各感光ドラムの1周をNゾーンに等分割し、かつ各ゾーンに対応する調整用パッチを用いた調整パターンを形成するトナーを前記転写ベルトに転写するパターン転写手段と、当該転写ベルト上の調整用パッチを検出するパターン検出手段と、各感光ドラム毎に調整用パッチの検出時間から相隣るゾーン間毎の所要時間を求め、かつ各感光ドラム毎に最短(又は最長)となる所要時間のゾーン(以下、特定ゾーン)を判定するとともに、任意に選択した感光ドラムの特定ゾーンに対して他の感光ドラムの特定ゾーンが時間軸上で同期して停止(又は回転開始)するように各電磁クラッチを制御する制御手段を備え、
該制御手段は、前記任意に選択した感光ドラムの特定ゾーンと他の感光ドラムの特定ゾーン間におけるゾーン数の差をmとし、感光ドラム間の位相が一つのゾーン分ずれている場合の調整に必要な時間をTsとしたときに、mにTsを乗じて得られる調整時間、及び、(N−m)にTsを乗じて得られる調整時間のうち、より短い調整時間に応じて各電磁クラッチを制御することを特徴とする画像形成装置。
複数の感光ドラムと、各感光ドラムを同時に回転可能な単一の回転駆動部及び各感光ドラムと前記回転駆動部間に配した複数の電磁クラッチを有するドラム駆動機構部と、各感光ドラムにトナーを付着させる複数のヘッドと、各感光ドラムのトナーが転写され、かつ転写されたトナーを被転写材に転写する転写ベルトとを備えてなる画像形成装置の制御方法であって、ドラム調整モードにより、各感光ドラムの1周をNゾーンに等分割し、かつ各ゾーンに対応する調整用パッチを用いた調整パターンを形成するトナーを前記転写ベルトに転写するとともに、当該転写ベルト上の調整用パッチを検出し、各感光ドラム毎に当該調整用パッチの検出時間から相隣るゾーン間毎の所要時間を求めたなら、各感光ドラム毎に最短(又は最長)となる所要時間のゾーン(以下、特定ゾーン)を判定し、任意に選択した感光ドラムの特定ゾーンに対して他の感光ドラムの特定ゾーンが時間軸上で同期して停止(又は回転開始)するように各電磁クラッチを制御し、各電磁クラッチを制御する際には、前記任意に選択した感光ドラムの特定ゾーンと他の感光ドラムの特定ゾーン間におけるゾーン数の差をmとし、感光ドラム間の位相が一つのゾーン分ずれている場合の調整に必要な時間をTsとしたときに、mにTsを乗じて得られる調整時間、及び、(N−m)にTsを乗じて得られる調整時間のうち、より短い調整時間に応じて各電磁クラッチを制御することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
前記各感光ドラム毎に最長(又は最短)となる所要時間を求め、かつ前記最短(又は最長)となる所要時間との時間差を求めるとともに、この時間差が予め設定した閾値(第一閾値)を越えているときのみ、各電磁クラッチを制御することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置の制御方法。
前記ドラム調整モードの実行時には、転写ベルトのトナーを被転写材に転写するためのプラテンをリリース状態にして当該転写を解除するとともに、転写ベルトのトナーはクリーナによりクリーニングすることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の画像形成装置の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1で開示される画像形成装置における位相ずれの補正は、各感光ドラムによりテストパッチのパターンを転写ベルトに転写し、このテストパッチの間隔を測定するとともに、各感光ドラムにおけるテストパッチの間隔が一致するように補正するため、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
第一に、各感光ドラム間における相対的な位相ずれを、50μm程度に抑える補正、具体的には、補正する感光ドラムのクラッチをオン・オフさせるとともに、このオン・オフの動作を繰り返しながら位相ずれを50μm程度まで、いわば追い込む処理を行うため、補正の処理にはかなりの長い時間を費やしてしまう。
【0007】
第二に、補正する感光ドラムのクラッチをオン・オフさせる動作を繰り返す処理を行うため、制御系の構成や補正のための処理(制御手順,動作)が煩雑となる。したがって、制御系全体のコストアップ要因になるとともに、クラッチの耐久性の低下及び騒音の発生などの不具合、更には、機械的なガタツキの発生や動作精度の低下を招きやすい。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した画像形成装置及びその制御方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像形成装置1は、上述した課題を解決するため、複数の感光ドラム2k…と、各感光ドラム2k…を同時に回転可能な単一の回転駆動部3d及び各感光ドラム2k…と回転駆動部3d間に配した複数の電磁クラッチ3k…を有するドラム駆動機構部3と、各感光ドラム2k…にトナーを付着させる複数のヘッド4k…と、各感光ドラム2k…のトナーが転写され、かつ転写されたトナーを被転写材Pに転写する転写ベルト5とを備えてなる画像形成装置であって、各感光ドラム2k…の1周をNゾーンZ1…に等分割し、かつ各ゾーンZ1…に対応する調整用パッチMk…を用いた調整パターンMを形成するトナーを転写ベルト5に転写するパターン転写手段Fjと、当該転写ベルト5上の調整用パッチMk…を検出するパターン検出手段Fdと、各感光ドラム2k…毎に各調整用パッチMk…の検出時間tk1…から相隣るゾーンZ1…間毎の所要時間Tk1…を算出し、かつ各感光ドラム2k…毎に最短(又は最長)となる所要時間Tk1…のゾーン(以下、特定ゾーン)を判定するとともに、任意に選択した感光ドラム2k…の特定ゾーンZ1…に対して他の感光ドラム2c…の特定ゾーンZ2…が時間軸上で同期して停止(又は回転開始)するように各電磁クラッチ3k…を制御する制御手段Fcを備え
、該制御手段Fcは、前記任意に選択した感光ドラム2k…の特定ゾーンZ1…と他の感光ドラム2c…の特定ゾーンZ2…間におけるゾーン数の差をmとし、感光ドラム2k…間の位相が一つのゾーン分ずれている場合の調整に必要な時間をTsとしたときに、mにTsを乗じて得られる調整時間、及び、(N−m)にTsを乗じて得られる調整時間のうち、より短い調整時間に応じて各電磁クラッチ3k…を制御することを特徴とする。
【0010】
一方、本発明に係る画像形成装置1の制御方法は、上述した課題を解決するため、複数の感光ドラム2k…と、各感光ドラム2k…を同時に回転可能な単一の回転駆動部3d及び各感光ドラム2k…と回転駆動部3d間に配した複数の電磁クラッチ3k…を有するドラム駆動機構部3と、各感光ドラム2k…にトナーを付着させる複数のヘッド4k…と、各感光ドラム2k…のトナーが転写され、かつ転写されたトナーを被転写材Pに転写する転写ベルト5とを備えてなる画像形成装置の制御方法であって、ドラム調整モードにより、各感光ドラム2k…の1周をNゾーンZ1…に等分割し、かつ各ゾーンZ1…に対応する調整用パッチMk…を用いた調整パターンMを形成するトナーを転写ベルト5に転写するとともに、当該転写ベルト5上の調整用パッチMk…を検出し、各感光ドラム2k…毎に各調整用パッチMk…の検出時間tk1…から相隣るゾーンZ1…間毎の所要時間Tk1…を検出したなら、各感光ドラム2k…毎に特定ゾーンZ1…を判定し、任意に選択した感光ドラム2k…の特定ゾーンZ1…に対して他の感光ドラム2c…の特定ゾーンZ2…が時間軸上で同期して停止(又は回転開始)するように各電磁クラッチ3k…を制御
し、各電磁クラッチ3k…を制御する際には、前記任意に選択した感光ドラム2k…の特定ゾーンZ1…と他の感光ドラム2c…の特定ゾーンZ2…間におけるゾーン数の差をmとし、感光ドラム間の位相が一つのゾーン分ずれている場合の調整に必要な時間をTsとしたときに、mにTsを乗じて得られる調整時間、及び、(N−m)にTsを乗じて得られる調整時間のうち、より短い調整時間に応じて前記各電磁クラッチ3k…を制御するようにしたことを特徴とする。
【0011】
他方、本発明は好適な実施の態様により、各感光ドラム2k…の1周は、四つのゾーンZ1…に等分割することが望ましい
。さらに、各感光ドラム2k…毎に最長(又は最短)となる所要時間Tk1…を算出し、かつ最短(又は最長)となる所要時間Tk2…との時間差Ted…を算出するとともに、この時間差Ted…が予め設定した閾値(第一閾値)Tesを越えているときのみ、各電磁クラッチ3k…を制御することができる。この場合、必要により、時間差Ted…が、予め設定した第一閾値Tesよりも大きい第二閾値Teuを越えているときは、エラー処理を行うことも可能である。また、ドラム調整モードの実行時には、転写ベルト5のトナーを被転写材Pに転写するためのプラテン6をリリース位置にして当該転写を解除するとともに、転写ベルト5のトナーはクリーナ7によりクリーニングすることができる。なお、ドラム調整モードは正規の動作モードの開始前に実行し、正規の動作モードはドラム調整モードの終了後に開始することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明に係る画像形成装置1及びその制御方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 各感光ドラム2k…の1周をNゾーンZ1…に等分割し、かつ各ゾーンZ1…に対応する調整用パッチMk…を用いた調整パターンMを形成するトナーを転写ベルト5に転写するとともに、当該転写ベルト5上の調整用パッチMk…を検出し、各感光ドラム2k…毎に各調整用パッチMk…の検出時間tk1…から相隣るゾーンN1…間毎の所要時間Tk1…を算出したなら、各感光ドラム2k…毎に特定ゾーンを判定し、任意に選択した感光ドラム2k…の特定ゾーンZ1…に対して他の感光ドラム2c…の特定ゾーンZ2…が時間軸上で同期して停止(又は回転開始)するように各電磁クラッチ3k…を制御するようにしたため、各感光ドラム2k…を同期させる調整、即ち、各感光ドラム2k…間の相対的な回転ムラのバラツキを低減させる調整を容易かつ極めて短時間に行うことができる。
【0014】
(2) 調整を行うに際し、従来のように、感光ドラムのクラッチをオン・オフさせる動作を繰り返して行う必要がないため、制御系全体の構成及び調整のための処理(制御手順,動作)を単純化させることができる。この結果、制御系全体のコストダウンに寄与できるとともに、クラッチの耐久性の低下及び騒音の発生などの不具合、更には、機械的なガタツキの発生や動作精度の低下を回避することができる。
【0015】
(3) 好適な態様により、各感光ドラム2k…の1周を、四つのゾーンZ1…に等分割すれば、調整を容易化して時間を短縮化する観点と各感光ドラム2k…の回転ムラのバラツキを低減化する観点の双方を、実用的観点から良好にバランス(最適化)させることができる。
【0016】
(4) 好適な態様により、任意に選択した感光ドラム2k…の特定ゾーンZ1…と他の感光ドラム2c…の特定ゾーンZ2…間におけるゾーン数の差を算出し、このゾーン数の差に対応する予め設定した調整時間Tsにより各電磁クラッチ3k…を制御する制御手段Fcを設ければ、複雑な演算処理は不要となるため、調整処理の更なる容易化及び確実化に寄与できる。
【0017】
(5) 好適な態様により、各感光ドラム2k…毎に最長(又は最短)となる所要時間Tk1…を算出し、かつ最短(又は最長)となる所要時間Tk2…との時間差Ted…を算出するとともに、この時間差Ted…が予め設定した閾値(第一閾値)Tesを越えているときのみ、各電磁クラッチ3k…を制御する制御手段Fcを設ければ、回転ムラの大きさが無視できない調整のみを行うことができるため、無用な動作を回避し、調整処理のシンプル化を図ることができる。
【0018】
(6) 好適な態様により、時間差Ted…が、予め設定した第一閾値Tesよりも大きい第二閾値Teuを越えているときに、エラー処理を行うようにすれば、感光ドラム2k…の変形や故障等を容易かつ速やかに発見し、必要な対策を講じることができる。
【0019】
(7) 好適な態様により、ドラム調整モードの実行時に、転写ベルト5のトナーを被転写材Pに転写するためのプラテン6をリリース位置にして当該転写を解除するとともに、転写ベルト5のトナーをクリーナ7によりクリーニングするようにすれば、ドラム調整モードの実行により、印刷用紙等の被転写材Pが無駄になる不具合を回避できる。
【0020】
(8) 好適な態様により、ドラム調整モードを、正規の動作モードの開始前に実行し、当該正規の動作モードを、ドラム調整モードの終了後に開始するようにすれば、ドラム調整モードの実行タイミングを自動化できるため、常に、感光ドラム2k…の回転ムラを無視できる状態で正規の動作モードを実行させることができる。これにより、画像形成に係わる画質の高品質化及び均質化を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係る画像形成装置1の構成について、
図2〜
図4を参照して具体的に説明する。
【0024】
なお、例示の画像形成装置1は印刷装置である。
図2は、画像形成装置(印刷装置)1に備えるフルカラー印刷部Uを示す。フルカラー印刷部Uは、主要構成として露光部Ue及び転写部Utを備える。転写部Utは、上側に配した駆動ローラRd,下側に配したガイドローラRg,Rh及び転写ローラRt間に架け渡した転写ベルト5を備える。また、印刷(二次転写)される印刷用紙(被転写材)Pを、転写ローラRtの周面に位置する転写ベルト5に圧接させるプラテン(プラテンローラ)6を備える。この場合、プラテンローラ6はリリース機構11によりリリース位置に下降させ、転写ベルト5による印刷用紙Pに対する転写を解除できる。7は転写ベルト5上のトナーをクリーニングするクリーナを示す。
【0025】
露光部Ueは、駆動ローラRdとガイドローラRg間に位置する転写ベルト5に沿って配設する。フルカラー印刷部Uは、転写ベルト5の移送方向Dm前側(
図2中、上側)から、所定間隔おきに配した四つの現像器、即ち、ブラック現像器12k,シアン現像器12c,マゼンタ現像器12m及びイエロー現像器12yを備えるとともに、対応する感光ドラム(半導体ドラム)2k,2c,2m,2yを備える。なお、Rk,Rc,Rm,Ryは、転写ベルト5を感光ドラム2k…の周面に当接させる一次転写ローラを示す。また、4k,4c,4m,4yは、各感光ドラム2k…の周面に対向させて配したLEDを用いたヘッド(プリントヘッド)である。
【0026】
一方、各感光ドラム2k…を回転可能なドラム駆動機構部3を備える。ドラム駆動機構部3は、各感光ドラム2k…を同時に回転可能な単一の回転駆動部3d及び各感光ドラム2k…と回転駆動部3d間にそれぞれ配した複数の電磁クラッチ3k,3c,3m,3yを備える。この場合、回転駆動部3dは、単一の駆動モータ部13,この駆動モータ部13の回転を伝達ベルトにより感光ドラム2kに伝達する第一回転伝達機構14及び四つの感光ドラム2k,2c,2m,2yを同時に回転させる伝達ベルトを用いた第二回転伝達機構15を備える。各電磁クラッチ3k…は、オンにより回転駆動部3dの回転を各感光ドラム2k…に伝達し、オフにより回転駆動部3dからの各感光ドラム2k…に対する回転の伝達を解除する。なお、駆動モータ部13は前述した駆動ローラRdの回転駆動にも用いる。
【0027】
また、転写ベルト5に対面させて配設した反射型の濃度センサ21を備える。濃度センサ21は、赤外線LEDを用いた発光部及びフォトダイオードを用いた受光部を有し、転写ベルト5上に一次転写されたトナーの濃度を検出し、後述する調整パターンMを構成する各調整用パッチMk,Mc,Mm,Myをそれぞれ識別して検出できる。したがって、この濃度センサ21は、転写ベルト5上の調整用パッチMk…を検出するパターン検出手段Fdを構成する。
【0028】
さらに、22は、画像形成装置1の全体の制御を司る制御系であり、CPU,ROM,RAM等のハードウェアを含むコンピュータ機能を有するコントローラ23を備える。コントローラ23には、特に、本発明に係る画像形成装置1の制御方法を実行するドラム調整モードプログラム23pが格納されている。そして、コントローラ23のセンサ入力ポートには上述した濃度センサ21を接続するとともに、コントローラ23の出力ポートには、駆動モータ部13、ヘッド4k…、現像器12k…、感光ドラム2k…、電磁クラッチ3k…、リリース機構11及びクリーナ7等を接続する。
【0029】
一方、画像形成装置1には、ドラム調整モードの実行時に用いられるパターン転写手段Fjを備える。このパターン転写手段Fjは、
図3に示すように、感光ドラム2k(他の感光ドラム2c…も同じ)の1周をNゾーンZ1…に等分割し、かつ各ゾーンZ1…に対応する調整用パッチMk…を形成するトナーを転写ベルト5に転写する機能を備える。この場合、NゾーンZ1…におけるNは整数であり、例示は、N=四とし、四つのゾーンZ1,Z2,Z3,Z4に等分割した。なお、
図3中、Drは感光ドラム2kの回転方向を示すとともに、tk1,tk2,tk3,tk4が調整用パッチMk…の転写タイミングを示している。
【0030】
また、
図4において、Mは、調整用パッチMk…,Mc…,Mm…,My…を用いた調整パターンを示す。調整パターンMにおいて、各調整用パッチMk…,Mc…,Mm…,My…は、重なることがないようにそれぞれ位相をずらしている。即ち、同一色の調整用パッチMk…同士の間隔をWとした場合、任意の色の調整用パッチMk…と次の色の調整用パッチMc…の間隔はW/4となるように設定する。これにより、四色の各調整用パッチMk…,Mc…,Mm…,My…がそれぞれ各ゾーンZ1,Z2,Z3,Z4に対応して配列する調整パターンMが転写される。このように、各感光ドラム2k…の1周を、四つのゾーンZ1…に等分割すれば、調整を容易化して時間を短縮化する観点と各感光ドラム2k…の回転ムラのバラツキを低減化する観点の双方を、実用的観点から良好にバランス(最適化)させることができる利点がある。
【0031】
さらに、画像形成装置1には、ドラム調整モードの実行時に用いられる制御手段Fcを備える。この制御手段Fcは、少なくとも、各感光ドラム2k…毎に各調整用パッチMk…の検出時間tk1…から相隣るゾーンZ1…間毎の所要時間Tk1…,Tc1…,Tm1…,Ty1…を算出し、かつ各感光ドラム2k…毎に最短となる所要時間Tk1…の特定ゾーンZ1…を判定するとともに、任意に選択した感光ドラム2k…の特定ゾーンZ1…に対して他の感光ドラム2c…の特定ゾーンZ2…が時間軸上で同期して停止するように各電磁クラッチ3k…を制御する機能を備える。
【0032】
次に、画像形成装置1の動作を含む本実施形態に係る制御方法について、
図1〜
図6を参照して説明する。
【0033】
最初に、画像形成装置(印刷装置)1の基本的な動作について説明する。正規の動作モードでは、駆動モータ部13が回転し、この回転は第一回転伝達機構14を介して第二回転伝達機構15に伝達され、四つの感光ドラム2k,2c,2m,2yが同時に回転するとともに、駆動モータ部13の回転は、駆動ローラRdにも伝達され、転写ベルト5が
図2中、矢印Dm方向に移送される。
【0034】
一方、各プリントヘッド4k,4c,4m,4yには、コントローラ23から印刷データ(画像データ)に対応した制御信号が付与され、各プリントヘッド4k,4c,4m,4yのストローブ時間が制御される。そして、このストローブ時間に対応した濃度のトナーがそれぞれ対応する感光ドラム2k,2c,2m,2yに付着するとともに、感光ドラム2k,2c,2m,2y上の各トナーは、転写ベルト5上に、位置合わせされて一次転写され、転写ベルト5上にトナー画像が形成される。また、トナー画像は、転写ベルト5により転写ローラRtまで移送されることにより、搬送路を矢印Dc方向に搬送される印刷用紙等の被転写材Pに印刷(二次転写)される。
【0035】
次に、本実施形態に係る画像形成装置1の制御方法について、
図1に示すフローチャートを参照して説明する。
【0036】
まず、予めドラム調整モードに係わる設定、具体的には、調整時間Tsと閾値(第一閾値)Tesを設定する(ステップS1)。なお、必要により第二閾値Teuを設定することができる。
【0037】
調整時間Tsは、各感光ドラム2k…間の位相が一つのゾーン分ずれている場合の調整に必要な時間である。この調整時間Tsは次のように設定できる。今、感光ドラム2k…の径をA〔mm〕、感光ドラム2k…の回転数をX〔rpm〕、ゾーン数をNとすれば、調整時間Ts〔ms〕は、
Ts=(1000/(X・N))・60 … 〔1〕
により得ることができる。例示の場合は、四つのゾーンとしたため、一例として、Xが78.7833〔rpm〕、Aが30.06〔mm〕であるとすれば、〔1〕式から、調整時間Tsは、190〔ms〕として求められる。調整時間Tsを設定するに際しては、一つの調整時間Tsのみを設定し、使用時に、二つのゾーン分のずれを調整する際には調整時間Tsを2倍にし、三つのゾーン分のずれを調整する際には調整時間Tsを3倍にして使用してもよいし、或いは、予め、三つの調整時間、即ち、調整時間Ts,(調整時間Ts×2),(調整時間Ts×3)を設定し、使用時に、選択して使用してもよい。このような調整時間Tsを用いれば、複雑な演算処理は不要となるため、調整処理の容易化及び確実化に寄与できる。
【0038】
一方、第一閾値Tesは、各感光ドラム2k…毎に算出する各ゾーンZ1…間の所要時間Tk1…における最短の所要時間Tk1…と最長の所要時間Tk2…との時間差Ted…の大きさを判定するための閾値である。したがって、得られる時間差Ted…が第一閾値Tesを越えているときのみ、各電磁クラッチ3k…を制御して調整を行い、時間差Ted…が第一閾値Tes以下のときは調整を行わない。これにより、回転ムラの大きさが無視できない調整のみを行うことができるため、無用な動作を回避し、調整処理のシンプル化を図ることができる。
【0039】
なお、必要により、第二閾値Teuを設定し、時間差Ted…が異常値の領域にあることを検出できる。時間差Ted…は、最短の所要時間Tk1…と最長の所要時間Tk2…との差であり、時間差Ted…が過度に大きいことは異常であると考えられるため、この異常を検出するために設定できる。したがって、第二閾値Teuは、少なくとも第一閾値Tesよりも大きい値を設定する。これにより、時間差Ted…が、第二閾値Teuを越えていれば、アラームを出力するなどのエラー処理を行うことができるため、感光ドラム2k…の変形や故障等を容易かつ速やかに発見し、必要な対策を講じることができる。
【0040】
次に、ドラム調整モードによる実際の動作について説明する。まず、画像形成装置1の電源をONにすれば、最初に、ドラム調整モードが立ち上がり、ドラム調整モードが実行される(ステップS2)。なお、プラテンローラ6はリリース機構11により下降させたリリース位置にある。これにより、プラテンローラ6は転写ベルト5から離間し、転写ベルト5による転写が解除されるため、ドラム調整モードの実行により印刷用紙等の被転写材Pが無駄になる不具合は回避される。
【0041】
次いで、転写ベルト5に対して
図4に示す調整パターンMの転写が行われる(ステップS3)。この場合、駆動モータ部13の回転により転写ベルト5が矢印Dm方向に移送されるとともに、各プリントヘッド4k…に、コントローラ23から調整パターンMに対応する画像書込信号がそれぞれ付与される。これにより、各画像書込信号に基づくトナーが各感光ドラム2k…にそれぞれ付着され、この後、各感光ドラム2k…上のトナーが転写ベルト5に転写される。この結果、転写ベルト5上には、
図4に示す調整パターンM、即ち、調整用パッチMk(ブラック)…,Mc(シアン)…,Mm(マゼンタ)…,My(イエロー)…が順次配列する調整パターンMに係わるトナー画像が形成される。各調整用パッチMk…,Mc…,Mm…,My…はそれぞれ各ゾーンZ1,Z2,Z3,Z4に対応する。
【0042】
例示の場合、前述したように、感光ドラム2k…の径Aが30.06〔mm〕であるため、例えば、感光ドラム2kから転写されるブラックの調整用パッチMk,Mk…の間隔Wは、(30.06×π)/4=23.56〔mm〕になるとともに、相隣る調整用パッチMkとMc…相互間の間隔W/4は、23.56/4=5.89〔mm〕となる。なお、調整パターンMは、感光ドラム一回転分の調整用パッチMk…を含めれば十分であるが、必要により、複数回転分の調整用パッチMk…を含め、得られる複数の検出値を平均して利用できるようにしてもよい。
【0043】
一方、転写ベルト5上の調整パターンMは、転写ベルト5により移送され、この調整パターンMの各調整用パッチMk…は、濃度センサ21により検出される。そして、検出信号は、コントローラ23に付与される(ステップS4)。コントローラ23は、調整パターンMの最初の調整用パッチMkの、例えば、立上がりエッジを検出した時点tk1を0とし、次の調整用パッチMc…を検出した時点を検出時間tc1…として、順次、調整用パッチMk,Mc…の検出時間tk1,tc1を取り込むとともに、各感光ドラム2k…毎に、各調整用パッチMk…の検出時間tk1…から相隣るゾーンZ1…間毎の所要時間Tk1…を算出する(ステップS5)。
【0044】
図4には、一部となるが、感光ドラム2kによる調整用パッチMk…に対する検出時間tk1(Z1),tk2(Z2),tk3(Z3),tk4(Z4)と、感光ドラム2cによる調整用パッチMc…に対する検出時間tc1(Z1),tc2(Z2),tc3(Z3),tc4(Z4)を示すとともに、感光ドラム2cにおける調整用パッチMc…の検出時間tc1,tc2,tc3から相隣るゾーンZ1,Z2,Z3間毎の所要時間を、Tc1(tc2−tc1),Tc2(tc3−tc2)で示している。したがって、Tc1は、Z1とZ2間の所要時間となり、Tc2は、Z2とZ3間の所要時間となる。
図5(a)に、全感光ドラム(OPC)2k,2c,2m,2yによる各ゾーンZ1…間の所要時間〔ms〕の一例を一覧表で示す。
【0045】
そして、全感光ドラム2k…における各ゾーンZ1…間の所要時間Tk1…が得られたなら、各感光ドラム2k…における所要時間Tk1…が最短となるゾーンZ1…と最長となるゾーンZ2…を判定する(ステップS6,S7)。
図5(b)に、
図5(a)に例示した所要時間Tk1…に対する判定結果を一覧表で示す。また、各感光ドラム2k…毎に、判定結果に対応するゾーンZ1…における最長の所要時間Tk1…と最短の所要時間Tk2…の時間差Ted…を算出する(ステップS8,S9)。
図5(c)に、
図5(a)に示した所要時間Tk1…及び
図5(b)に示した判定結果に対応して算出した各感光ドラム2k…毎の時間差Ted…を一覧表で示す。
【0046】
全感光ドラム2k…に対する各感光ドラム2k…毎の時間差Ted…が得られたなら、調整を行うか否かの判定を行う(ステップS10,S11)。この場合、得られた各時間差Ted…を予め設定した閾値(第一閾値)Tesと比較し、各時間差Ted…が第一閾値Tesを越えているときのみ、各電磁クラッチ3k…を制御する調整処理を行う。特に、各時間差Ted…の全てが第一閾値Tes以下のときは調整処理を行うことなくドラム調整モードを終了させ、正規の動作モードに切換える(ステップS12,S15)。したがって、この後は、正規の動作モードによる印刷処理を行うことができる。これに対して、調整の必要がある感光ドラム2k…が一つでも存在すれば、ドラム調整モードを継続させる。例示する
図5(c)の場合、全ての時間差Ted…が第一閾値Tesを越えるため、調整処理に移行する(ステップS12)。
【0047】
以下、具体的な調整処理の手順について、
図5及び
図6を参照して説明する。各感光ドラム2k…において所要時間Tk1…が最短となるゾーンZ1…を特定ゾーンとする。したがって、
図5(c)において、感光ドラム2kにおけるゾーンZ1,感光ドラム2cにおけるゾーンZ4,感光ドラム2mにおけるゾーンZ4,感光ドラム2yにおけるゾーンZ2がそれぞれ特定ゾーンとなる。そして、任意の特定ゾーン、望ましくは、四つの特定ゾーンZ1…の中で所要時間が最も最短となる特定ゾーンを基準ゾーンとし、この基準ゾーンに対して他の特定ゾーンに対する調整を行う。
図5(c)の場合、感光ドラム2cにおける特定ゾーンZ4が基準ゾーンとなる。他方、他の感光ドラム2k…において、感光ドラム2kにおける特定ゾーンZ1は、基準ゾーンZ4に対して、Z4−Z1=3により三つのゾーン数の差がある。また、感光ドラム2mにおける特定ゾーンZ4は、基準ゾーンZ4に対して、Z4−Z4=0によりゾーン数の差は0となる。さらに、感光ドラム2yにおける特定ゾーンZ2は、基準ゾーンZ4に対して、Z4−Z2=2により二つのゾーン数の差がある。したがって、感光ドラム2kに対しては三つのゾーン分、感光ドラム2yに対しては二つのゾーン分の位相差をそれぞれ調整すればよいことになる。
【0048】
図6に、具体的な調整方法を示す。なお、
図6は一例であり、
図5(c)に対応したものではない。
図6(a)は、感光ドラム2cの基準ゾーンZ1に対して、感光ドラム2kの特定ゾーンZ2がゾーン一つ分遅れている状態を示している。この場合、調整を行うには、最初に、基準ゾーンZ1を有する感光ドラム2cの電磁クラッチ3cをオフにしてtsc時点で停止させる。この後、感光ドラム2kに対しては、一つのゾーン分を調整すればよいため、前述した調整時間Ts(=190〔ms〕)が経過した時点tskにおいて、感光ドラム2kの電磁クラッチ3kをオフにして停止させればよい。
【0049】
一方、
図6(b)は、感光ドラム2cの基準ゾーンZ4に対して、感光ドラム2kの特定ゾーンZ1がゾーン三つ分進んでいる状態を示している。この場合、調整を行うには、一周分となるゾーン四つ分からゾーン三つ分を差し引いたゾーン一つ分が遅れてい状態と同じになる。したがって、最初に、基準ゾーンZ1を有する感光ドラム2cの電磁クラッチ3cをオフにしてtsc時点で停止させる。この後、感光ドラム2kに対しては、一つのゾーン分を調整すればよいため、前述した調整時間Ts(=190〔ms〕)が経過した時点tskにおいて、感光ドラム2kの電磁クラッチ3kをオフにして停止させればよい。
【0050】
以上の調整処理により、感光ドラム2cの基準ゾーンZ4に対して、他の感光ドラム2k,2m,2yにおける特定ゾーンZ1,Z4,Z2を、時間軸上で同期させて停止させることができる。調整処理が終了すれば、ドラム調整モードを終了させ、正規の動作モードに切換える(ステップS14,S15)。したがって、この後は、正規の動作モードによる印刷処理を行うことができる。正規の動作モード時には、全ての感光ドラム2c…を同時に回転させればよく、これにより、各感光ドラム2c…の回転は、相対的に位相ずれ(回転ムラ)のない回転動作が実現される。このように、ドラム調整モードを、正規の動作モードの開始前に実行し、当該正規の動作モードを、ドラム調整モードの終了後に開始するようにすれば、ドラム調整モードの実行タイミングを自動化できるため、常に、感光ドラム2k…の回転ムラを無視できる状態で正規の動作モードを実行させることができる。これにより、画像形成に係わる画質の高品質化及び均質化を確保することができる。
【0051】
よって、このような本実施形態に係る画像形成装置1及びその制御方法によれば、各感光ドラム2k…の1周を四つのゾーンZ1…に等分割し、かつ各ゾーンZ1…に対応する調整用パッチMk…を用いた調整パターンMを形成するトナーを転写ベルト5に転写するとともに、当該転写ベルト5上の調整用パッチMk…を検出し、各感光ドラム2k…毎に各調整用パッチMk…の検出時間tk1…から相隣るゾーンN1…間毎の所要時間Tk1…を算出したなら、各感光ドラム2k…毎に所要時間Tk1…が最短(又は最長)となる特定ゾーンを判定し、任意に選択した感光ドラム2k…の特定ゾーンZ1…に対して他の感光ドラム2c…の特定ゾーンZ2…が時間軸上で同期して停止するように各電磁クラッチ3k…を制御するようにしたため、各感光ドラム2k…を同期させる調整、即ち、各感光ドラム2k…間の相対的な回転ムラのバラツキを低減させる調整を容易かつ極めて短時間に行うことができる。また、調整を行うに際し、従来のように、感光ドラムのクラッチをオン・オフさせる動作を繰り返して行う必要がないため、制御系全体の構成及び調整のための処理(制御手順,動作)を単純化させることができる。この結果、制御系全体のコストダウンに寄与できるとともに、クラッチの耐久性の低下及び騒音の発生などの不具合、更には、機械的なガタツキの発生や動作精度の低下を回避できる。
【0052】
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,数値,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0053】
例えば、各感光ドラム2k…の1周を、四つのゾーンZ1…に等分割した場合を例示したが、任意の数(N)に等分割できる。また、各感光ドラム2k…毎に最長(又は最短)となる所要時間Tk1…を算出し、かつ最短(又は最長)となる所要時間Tk2…との時間差Ted…を算出するとともに、この時間差Ted…が予め設定した閾値(第一閾値)Tesを越えているときのみ、各電磁クラッチ3k…を制御するようにしたが、基本的には、転写ベルト5上の調整用パッチMk…を検出し、各感光ドラム2k…毎に各調整用パッチMk…の検出時間tk1…から相隣るゾーンZ1…間毎の所要時間Tk1…を検出したなら、各感光ドラム2k…毎に最短(又は最長)となる所要時間Tk1…の特定ゾーンZ1…を判定し、任意に選択した感光ドラム2k…の特定ゾーンZ1…に対して他の感光ドラム2c…の特定ゾーンZ2…が時間軸上で同期して停止するように各電磁クラッチ3k…を制御すればよい。さらに、調整処理として、得られた調整時間Tsに基づいて停止させる制御を例示したが、得られた調整時間Tsを記憶し、回転開始時に、記憶した調整時間Tsに基づいて順次回転開始するように制御してもよい。一方、第二閾値Teuを例示したが必ずしも設定することを要しない。ドラム調整モードの実行時には、転写ベルト5のトナーを被転写材Pに転写するためのプラテン6をリリース位置にして当該転写を解除するとともに、転写ベルト5のトナーはクリーナ7によりクリーニングする場合を例示したが、印刷用紙等の被転写材Pに転写してもよく、この場合には、調整パターンMを目視により確認することができる。なお、ドラム調整モードは正規の動作モードの開始前に実行し、正規の動作モードはドラム調整モードの終了後に開始することが望ましいが、ドラム調整モードの選択キーを設け、必要に応じて実行させることができる。